(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053550
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】共役系高分子化合物及びその製造方法、並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20220330BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220330BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220330BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220330BHJP
C07D 513/22 20060101ALN20220330BHJP
【FI】
C08G61/12
H01L29/78 618B
H01L29/28 100A
H01L29/28 250H
C07D513/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019017463
(22)【出願日】2019-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 卓司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 泰士
(72)【発明者】
【氏名】チャタジー シュレーヤム
(72)【発明者】
【氏名】森山 太一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊
【テーマコード(参考)】
4C072
4J032
5F110
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072AA07
4C072BB04
4C072BB06
4C072CC04
4C072CC18
4C072EE12
4C072FF13
4C072GG01
4C072HH02
4C072HH06
4C072UU03
4J032BA20
4J032BB03
4J032BC03
4J032BD02
4J032CG01
5F110AA01
5F110BB01
5F110CC01
5F110CC03
5F110CC05
5F110CC07
5F110CC10
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD05
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE07
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF36
5F110GG05
5F110GG25
5F110GG42
5F110GG43
5F110GG44
5F110GG58
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK07
5F110NN02
5F110NN22
5F110NN27
5F110QQ01
5F110QQ06
5F110QQ09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた半導体特性を有する共役系高分子化合物及びその製造方法、並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスの提供。
【解決手段】共役系高分子化合物は、式(1):
(式(I)中、A
1及びA
2は互いに独立して、CR
1又はNであり;R
1は、H、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、又はDで置換されていてもよいアルキルチオであり;X
1及びX
2は互いに独立して、O、S、Se、NR、不飽和基であり、nは2以上の整数である)で表される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I);
【化1】
(式(I)中、A
1及びA
2は互いに独立して、CR
1又はNであり;R
1は、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、又はDで置換されていてもよいアルキルチオであり;X
1及びX
2は互いに独立して、
【化2】
であり、R
2~R
4は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、Dで置換されていてもよいアリールチオ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R
3及びR
4は、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;nは2以上の整数であり;*は結合手である)
で表される共役系高分子化合物。
【請求項2】
式(II):
【化3】
(式(II)中、A
1、A
2、X
1、X
2、n及び*は請求項1に記載した式(I)における定義と同じであり、J
1及びJ
2は互いに独立して、ドナー性ユニット、アクセプタ性ユニット、及び単結合からなる群から選択される少なくとも一種である)
で表される請求項1に記載の共役系高分子化合物。
【請求項3】
前記ドナー性ユニットが、
【化4】
【化5】
(式中、R
j~R
wは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、メルカプト、シアノ、スルホ基、ニトロ、イミノ基、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、Dで置換されていてもよいアリールチオ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R
j及びR
k、又はR
l及びR
mは、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;*は結合手である)
からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の共役系高分子化合物。
【請求項4】
前記アクセプタ性ユニットが、
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(式中、R
j~R
wは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、メルカプト、シアノ、スルホ基、ニトロ、イミノ基、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、Dで置換されていてもよいアリールチオ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R
j及びR
k、又はR
l及びR
mは、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;*は結合手である)
からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の共役系高分子化合物。
【請求項5】
前記ドナー性ユニットが、
【化14】
(式中、R
j~R
q及び*は、請求項3に記載の通りである)
である、請求項3に記載の共役系高分子化合物。
【請求項6】
前記アクセプタ性ユニットが、
【化15】
(式中、R
j、R
k及び*は請求項4に記載の通りである)
である、請求項4に記載の共役系高分子化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の共役系高分子化合物を含有する有機半導体材料。
【請求項8】
請求項7に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体デバイス。
【請求項9】
式(1):
【化16】
(式(1)中、A
1及びA
2は互いに独立して、CR
1又はNであり、R
1は、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、又はDで置換されていてもよいアルキルチオであり;Q
1及びQ
2は互いに独立して、ハロゲン原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;X
1及びX
2は互いに独立して、
【化17】
であり、R
2~R
4は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R
3及びR
4は、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;nは2以上の整数である)
で表される化合物を重合させることを特徴とする共役系高分子化合物の製造方法。
【請求項10】
式(2):
【化18】
(式(2)中、A
1、A
2、X
1及びX
2は請求項9に記載した式(1)における定義と同じであり、J
a及びJ
bは互いに独立して、ドナー性ユニット、及びアクセプタ性ユニットからなる群から選択される少なくとも一種である)
で表される化合物を重合させることを特徴とする請求項9に記載の共役系高分子化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体特性を有する共役系高分子化合物及びその製造方法、並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタや有機薄膜太陽電池、有機発光ダイオード等の研究開発が盛んに行われている。このような有機半導体デバイスにおいては、有機半導体層を作製する方法として、印刷法、スピンコート法等のウエットプロセスが、蒸着等のドライプロセスに比べて製造コストが安く簡便な方法で、薄く柔軟性に優れる薄膜状の有機半導体層を作製することができる。そこで、ウエットプロセスに用いることができる有機半導体高分子材料の研究開発が進められている。例えば、非特許文献1や非特許文献2には、様々な高分子化合物がトランジスタや太陽電池の有機半導体層の材料として作動することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Longxian Shi et al., Mater. Chem. Front., 1, 2423-2456 (2017)
【非特許文献2】Luyao Lu et al., Chem. Rev., 115, 12666-12731 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1や非特許文献2に記載の高分子化合物の性能は、有機半導体層の厳しい作製条件下でしか達成されないという問題がある。そこで、新しい有機半導体材料となる高分子化合物、特に、有機半導体層の様々な作製条件において良好な電荷輸送特性、エネルギーレベルの調整、半導体特性を有する高分子化合物、更には作製した有機半導体デバイスが良好な安定性を有する高分子化合物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、有機半導体特性を示す高分子化合物としてより高い特性を有し、特にトランジスタや太陽電池として用いた際に良好なキャリア移動度や発電効率の達成に寄与し得る高分子化合物を探索した結果、下記式(I)で示される共役系高分子化合物が所望の効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、優れた半導体特性を有する共役系高分子化合物及びその製造方法、並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物は、式(I)で表される共役系高分子化合物であることを特徴とする。
【0008】
式(I);
【0009】
【0010】
式(I)中、A1及びA2は互いに独立して、CR1又はNであり;R1は、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、又はDで置換されていてもよいアルキルチオであり;X1及びX2は互いに独立して、
【0011】
【0012】
であり、R2~R4は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、Dで置換されていてもよいアリールチオ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R3及びR4は、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;nは2以上の整数であり;*は結合手である。
【0013】
本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物は、式(II):
【0014】
【0015】
(式(II)中、A1、A2、X1、X2、n及び*は前記式(1)における定義と同じであり、J1及びJ2は互いに独立して、ドナー性ユニット、アクセプタ性ユニット及び単結合からなる群から選択される少なくとも一種である)
で表される共役系高分子化合物であることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物は、前記ドナー性ユニットが、
【0017】
【0018】
【0019】
(式中、Rj~Rwは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、メルカプト、シアノ、スルホ基、ニトロ、イミノ基、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、Dで置換されていてもよいアリールチオ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;Rj及びRk、又はRl及びRmは、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;*は結合手である)
からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物は、前記アクセプタ性ユニットが、
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
(式中、Rj~Rwは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、メルカプト、シアノ、スルホ基、ニトロ、イミノ基、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアシルオキシ、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ、Dで置換されていてもよいアルキルチオ、Dで置換されていてもよいアリールチオ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;Rj及びRk、又はRl及びRmは、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;*は結合手である)
からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物としては、前記ドナー性ユニットが、
【0031】
【0032】
(式中、Rj~Rq及び*は、前述の通りである)
である共役系高分子化合物が特に好ましく、また、前記アクセプタ性ユニットが、
【0033】
【0034】
(式中、Rj、Rk及び*は、前述の通りである)
である共役系高分子化合物が特に好ましい。
【0035】
本発明に係る第2の態様に係る有機半導体材料は、本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物を含有することを特徴とする。
【0036】
本発明に係る第3の態様に係る有機半導体デバイスは、本発明の第2の態様に係る有機半導体材料を含有することを特徴とする。
【0037】
本発明に係る第4の態様に係る共役系高分子化合物の製造方法は、式(1)で表される化合物を重合させることを特徴とする。
【0038】
式(1):
【0039】
【0040】
式(1)中、A1及びA2は互いに独立して、CR1又はNであり、R1は、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、又はDで置換されていてもよいアルキルチオであり;Q1及びQ2は互いに独立して、ハロゲン原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;X1及びX2は互いに独立して、
【0041】
【0042】
であり、R2~R4は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R3及びR4は、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;nは2以上の整数である。
【0043】
本発明に係る第4の態様に係る共役系高分子化合物の製造方法は、式(2)で表される化合物を重合させることが好ましい。
【0044】
式(2):
【0045】
【0046】
式(2)中、A1、A2、X1及びX2は前記式(1)における定義と同じであり、Ja及びJbは互いに独立して、ドナー性ユニット、及びアクセプタ性ユニットからなる群から選択される少なくとも一種である。
【発明の効果】
【0047】
本発明の共役系高分子化合物は、繰り返し単位としてナフタレンの両側に5員環の複素芳香環が縮合したアクセプタ性ユニット(縮合構造)を有しており、平面性に優れており、光電変換効率や電荷移動度が向上し、優れた半導体特性を有する。
【0048】
また、本発明の共役系高分子化合物を用いた有機半導体材料は、光電変換効率や電荷移動度が高く、優れた半導体特性を有するため、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(電界効果トランジスタ等)、発光デバイス等の種々の有機半導体デバイスに用いられる。
【0049】
本発明の製造方法は、本発明の共役系高分子化合物を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】第1実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図2】第2実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図3】第3実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図4】第4実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図5】第5実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図6】第6実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図7】第7実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
【
図8】第8実施形態の有機薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
【
図9】第9実施形態の有機薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
【
図10】第10実施形態の有機薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
【
図11】実施例1の有機薄膜太陽電池における電流密度-電圧特性を示すグラフである。
【
図12】実施例2の有機薄膜太陽電池における電流密度-電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。尚、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0052】
以下、本発明の一実施形態に関して、詳細に説明する。本発明の共役系高分子化合物は、前記式(I)で表される共役系高分子化合物である。この化合物中には、以下に示す部分構造が包含される。この部分構造はアクセプタ性ユニット(縮合構造)として機能する。
【0053】
【0054】
(部分構造の式中、A1、A2、X1及びX2は前記式(I)における定義と同じであり、*は結合手を表す)。
【0055】
この部分構造を有するアクセプタ性ユニットの好ましい形態を以下に例示する。例示したこれら部分構造の式中、R、R’は互いに独立して、アルキル又はハロアルキルを表し、*は結合手を表す。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
本明細書中で、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる(以下、本明細書において「ハロゲン原子」とは、特に断りのない限り、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる少なくとも一種を表す)。
【0062】
本明細書中で、アルキルとしては炭素原子数1~30が好ましく、6~30がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルコキシとしては、炭素原子数1~30が好ましく、1~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルキルエステルとしては、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルコキシカルボニルとしては、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルキルアミノカルボニルとしては、炭素原子数2~40が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アシルは、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アシルアミノとしては、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アリール又は各置換基中のアリール部分としては、炭素原子数6~30が好ましく、6~12がより好ましく、フェニルが特に好ましい。シクロアルキル又は各置換基中のシクロアルキル部分としては、炭素原子数3~40が好ましく、4~20がより好ましい。複素環基としては、炭素原子数3~30が好ましく、3~12がより好ましく、チエニルが特に好ましい。
【0063】
一般に、同じπ電子数を有する炭化水素芳香環(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等)よりもLUMO準位又はHOMO準位が深くなるような部分構造(ユニット)を「アクセプタ性ユニット」という。一方、同じπ電子数を有する炭化水素芳香環(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン)よりもLUMO準位又はHOMO準位が浅くなるような部分構造(ユニット)を「ドナー性ユニット」という。本発明の共役系高分子化合物は、(1)アクセプタ性ユニットを1種以上含むアクセプタ性ユニット群のみからなる共役系高分子化合物であってもよいし、(2)アクセプタ性ユニットを1種以上含むアクセプタ性ユニット群と、ドナー性ユニットを1種以上含むドナー性ユニット群とが交互に配列してなる共役系高分子化合物であってもよい。なお、本発明の共役系高分子化合物に含まれるアクセプタ性ユニットは、前記部分構造のみをアクセプタ性ユニットとしてもよいし、他のアクセプタ性ユニットを含んでいてもよい。
【0064】
本発明の共役系高分子化合物に含まれ得るドナー性ユニットとしては、同じπ電子数を有する炭化水素芳香環(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等)よりもLUMO準位又はHOMO準位が浅くなるようなユニットであれば、制限なく使用できる。例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、シクロペンタジエン、シラシクロペンタジエン等の複素5員環、及びこれらの縮合環を含むユニットである。
【0065】
ドナー性ユニットの好ましい形態としては、本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物のドナー性ユニットとして好ましいものとして列記した群から選択される少なくとも1種のものが挙げられる。また、本実施形態において、ドナー性ユニットを1以上含む限りにおいて、ドナー性ユニットの数に特に制限はなく、1種のドナー性ユニットのみからなっていてもよいし、2種以上のドナー性ユニットからなっていてもよい。
【0066】
本発明の共役系高分子化合物に含まれ得るアクセプタ性ユニットとしては、同じπ電子数を有する炭化水素芳香環(ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等)よりもLUMO準位又はHOMO準位が深くなるようなユニットであれば、制限なく使用できる。例えば、チアゾール環、チアジアゾール環、環状イミド等の複素5員環、及びこれらの縮合環を含むユニットである。アクセプタ性ユニットの好ましい形態としては、本発明の第1の態様に係る共役系高分子化合物のアクセプタ性ユニットとして好ましいものとして列記した群から選択される少なくとも1種のものが挙げられる。また、本実施形態において、アクセプタ性ユニットを1以上含む限りにおいて、アクセプタ性ユニットの数に特に制限はなく、1種のアクセプタ性ユニットのみからなっていてもよいし、2種以上のアクセプタ性ユニットからからなっていてもよい。
【0067】
(半導体特性を有する共役系高分子化合物)
本発明の共役系高分子化合物としては、本発明の第1の態様に係る前記式(I)、式(II)で表される高分子化合物が挙げられ、式中のnは、2以上の整数であり、その条件は特に限定されないが、例えば100以下の整数が好ましく、より好ましくは5~100であり、更に好ましくは20~60である。分子量は特に限定されないが、数平均分子量は例えば3,000~100,000であり、重量平均分子量は例えば5,000~1,000,000である。
【0068】
本発明の共役系高分子化合物は、具体的には、以下に化合物1~48として示す共役系高分子化合物であることが特に好ましい(式中、*は結合手を表す)。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
本発明の共役系高分子化合物は、以下の製造方法、並びに通常の高分子化合物の製造方法に従って製造することができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0076】
(製法1)
前記式(I)で表される共役系高分子化合物は、式(1):
【0077】
【0078】
(式(1)中、A1及びA2は互いに独立して、CR1又はNであり、R1は、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、シアノ、Dで置換されていてもよいアルコキシ、又はDで置換されていてもよいアルキルチオであり;Q1及びQ2は互いに独立して、ハロゲン原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;X1及びX2は互いに独立して、
【0079】
【0080】
であり、R2~R4は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Dで置換されていてもよいアルキル、Dで置換されていてもよいアルコキシ、Dで置換されていてもよいアルキルエステル、Dで置換されていてもよいアルコキシカルボニル、Dで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル、Dで置換されていてもよいアシル、Dで置換されていてもよいアミノ、Dで置換されていてもよいアシルアミノ、Dで置換されていてもよいアリール又はDで置換されていてもよい複素環基であり;R3及びR4は、一緒になって環を形成していてもよく;Dはアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、スルホニル、スルフィニル、ウレイド、リン酸アミド、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、スルホ基、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;nは2以上の整数である)
で表される化合物を重合させることによって製造することができる。
【0081】
前記式(1)で表される化合物を触媒の存在下で重合させることにより、式(I)で表される共役系高分子化合物を生成させることができる。この場合、前記式(1)で表される化合物と、必要に応じてドナー性ユニットになる化合物及び/又はアクセプタ性ユニットとなる化合物とを触媒の存在下で重合させることにより、式(I)で表される共役系高分子化合物を生成させることもできる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。重合反応にはSuzukiカップリングやStilleカップリング等を利用することが好ましく、重合反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、反応温度は、例えば80℃~200℃とすることができる。得られた式(I)で表される共役系高分子化合物は精製してもよい。
【0082】
(製法2)
前記式(II)で表される共役系高分子化合物は、式(2):
【0083】
【0084】
(式(2)中、A1、A2、X1及びX2は前述の定義と同じであり、Ja及びJbは互いに独立して、ドナー性ユニット及びアクセプタ性ユニットからなる群から選択される少なくとも一種である)
で表される化合物を重合させることによって製造することができる。
【0085】
前記式(2)で表される化合物は、前記式(1)で表される化合物に、ドナー性ユニットとなる化合物及び/又はアクセプタ性ユニットとなる化合物を予め反応させた化合物であって、それを触媒存在下で反応させることにより、高分子化合物を生成させることができる。前記式(2)で表される化合物と、必要に応じて別のドナー性ユニットになる化合物及び/又はアクセプタ性ユニットとなる化合物を触媒存在下で重合させることにより、式(II)で表される共役系高分子化合物を生成させることができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3等が挙げられる。配位子として、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを添加してもよい。重合反応にはSuzukiカップリングやStilleカップリング等を利用することが好ましく、重合反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、DMF、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、重合反応の温度は、例えば80℃~200℃とすることが好ましい。得られた式(II)で表される共役系高分子化合物は精製してもよい。
【0086】
(中間体化合物の製造方法)
上述した製法1における式(1)で表される中間体化合物(1)の製造方法は特に限定されないが、一例として、市販されている化合物から下記式(A1)で表される化合物を合成し、チオフェン環を縮環したナフトビスチアジアゾールを製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明し、より具体的な一例は、後述の実施例に記載する。
【0087】
(中間体化合物(1)の製造方法1)
【0088】
【0089】
<工程A>
工程Aでは、市販の式(i)で表されるナフタレンから、国際公開第2018/123207号に記載の実施例に基づき、式(A1)で示される化合物(以下「化合物(A1)」という)を製造する。化合物(A1)中、Halは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。
【0090】
<工程B>
次いで、化合物(A1)から、式(A2)で示される化合物(以下「化合物(A2)」という)を製造する(工程B)。式(A2)中、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0091】
工程Bでは、具体的には、例えば、化合物(A1)とトリアルキルシリルアセチレンとを触媒存在下で反応させて化合物(A2)を生成させる。トリアルキルシリルアセチレンとしては、当該反応が進行すれば特に限定はなく、例えば、トリメチルシリルアセチレン、トリエチルシリルアセチレン等が挙げられる。トリアルキルシリルアセチレンは、化合物(A1)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられる。工程Bの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はない。塩基は、化合物(A1)に対して、1~40当量が好ましく、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定はない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A2)は、工程Cに供する前に精製することが好ましい。
【0092】
<工程C>
次いで、化合物(A2)から、式(A3)で示される化合物(以下「化合物(A3)」という)を製造する(工程C)。式(A3)中、R10及びR11は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基を表し、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0093】
工程Cでは、具体的には、例えば、化合物(A2)と硫化物塩とを反応させて化合物(A3)を生成させる。硫化物塩としては、当該反応が進行すれば特に限定はなく、例えば、ナトリウムチオメトキシド、ナトリウムチオエトキシド等が挙げられる。硫化物塩は、化合物(A2)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Cの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A3)は、工程Dに供する前に精製することが好ましい。
【0094】
<工程D>
次いで、化合物(A3)から、式(1-1a)で示される化合物(以下「化合物(1-1a)」という)を製造する(工程D)。式(1-1a)中、Halは前述の通りであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0095】
工程Dでは、具体的には、例えば、化合物(A3)とハロゲン又はハロゲン化物塩とを反応させて化合物(1-1a)を生成させる。ハロゲン又はハロゲン化物塩としては、当該反応が進行すれば特に限定はなく、例えば、臭素、ヨウ素等が挙げられる。ハロゲン又はハロゲン化物塩は、化合物(A3)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Dの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-1a)は精製してもよい。化合物(1-1a)は、工程Eに供する前に精製することが好ましい。
【0096】
<工程E>
次いで、化合物(1-1a)から、式(1-2a)で示される化合物(以下「化合物(1-2a)」という)を製造する(工程E)。式(1-2a)中、R1は前述の通りであり、二つのR1は同一であっても、異なっていてもよく、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0097】
工程Eでは、具体的には、例えば、化合物(1-1a)とホウ素化合物とを触媒存在下で反応させて化合物(1-2a)を生成させる。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定はなく、例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、トリフルオロボレート塩基、又は、トリオールボレート塩基等が挙げられる。ホウ素化合物は、化合物(1-1a)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられる。工程Eの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はない。塩基は、化合物(1-1a)に対して、1~40当量が好ましく、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定はない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-2a)は精製してもよい。化合物(1-2a)は、工程Fに供する前に精製することが好ましい。
【0098】
<工程F>
次いで、化合物(1-2a)から、式(1-3a)で示される化合物(以下「化合物(1-3a)」という)を製造する(工程F)。式(1-3a)中、R1は前述の定義と同じであり、Q1a及びQ2aは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。なお、化合物(1-3a)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0099】
工程Fでは、具体的には、例えば、化合物(1-2a)とハロゲン又はハロゲン化物塩とを反応させて化合物(1-3a)を生成させる。ハロゲン又はハロゲン化物塩としては、当該反応が進行すれば特に限定はなく、例えば、臭素、ヨウ素等が挙げられる。ハロゲン又はハロゲン化物塩は、化合物(1-2a)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Fの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-3a)は精製してもよい。化合物(1-3a)は、精製することが好ましい。
【0100】
<工程G>
次いで、化合物(1-3a)から、式(1-4a)で表される化合物(以下、「化合物(1-4a)」と称する)を製造する(工程G)。式(1-4a)中、R1は前述の通りであり、Q1b及びQ2bは互いに独立して、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基を表す。なお、化合物(1-4a)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0101】
工程Gは、具体的には、例えば、化合物(1-3a)とホウ素化合物又はスズ化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-4a)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ピナコールボラン等のヒドロホウ素化合物、ビス(ピナコラト)ジボロン等のジボラン化合物、アリールボロン酸、アリールボロン酸エステル、アリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、アリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル等が挙げられる。スズ化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ビス(トリメチルスズ)やビス(トリブチルスズ)等の二スズ化合物、トリアルキルアリールスズ、トリアルキルヘテロアリールスズ等が挙げられる。ホウ素化合物又はスズ化合物はそれぞれ独立して、化合物(1-3a)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられる。工程Gの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-3a)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-4a)は精製してもよい。
【0102】
(中間体化合物(1)の製造方法2)
化合物(1)(中間体化合物)の製造方法は、前述した製造方法1に限定されない。他の一例として、前記工程Aにより式(A1)で表される化合物を合成し、チオフェン環を縮環したナフトビスチアジアゾールを製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明する。
【0103】
【0104】
<工程H>
化合物(A1)から、式(A4)で表される化合物(以下、「化合物(A4)」と称する)を製造する(工程H)。式(A4)中、Halは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。
【0105】
工程Hは、具体的には、例えば、化合物(A1)と還元剤とを反応させて化合物(A4)を生成させる工程である。還元剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等が挙げられる。還元剤は、化合物(A1)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A4)は、下記工程Iに供する前に精製することが好ましい。
【0106】
<工程I>
化合物(A4)から、式(A5)で表される化合物(以下、「化合物(A5)」と称する)を製造する(工程I)。式(A5)中、Hal、X1及びX2は前述の通りである。
【0107】
工程Iは、具体的には、例えば、化合物(A4)とカルコゲン化剤、窒素化剤、又は1,2-ジケトンとを反応させて化合物(A5)を生成させる工程である。カルコゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、過酸化水素、塩化チオニル、塩化セレニド等が挙げられる。カルコゲン化剤は、化合物(A4)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。窒素化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。窒素化剤は、化合物(A4)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。1,2-ジケトンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、アセチル、ベンジル、塩化オキサリル、臭化オキサリル等が挙げられる。1,2-ジケトンは、化合物(A4)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。前記反応においては、適宜、塩基を使用することもできる。当該塩基は、前記反応が進行する塩基であれば特に限定されない。溶媒は、前記反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエタノールアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A5)は、下記工程Jに供する前に精製することが好ましい。
【0108】
なお、化合物(A5)において、-X1-及び-X2-が共に-S-の場合が化合物(A1)に該当する。但し、化合物(A1)以外の化合物(A5)を製造するには、工程H及び工程Iを経由することが好ましい。
【0109】
下記工程J~工程Oは、化合物(A5)を用いた場合の工程であって、化合物(A1)を用いた場合の前記工程B~工程Gに相当する。
【0110】
<工程J>
次いで、化合物(A5)から、式(A6)で表される化合物(以下、「化合物(A6)」と称する)を製造する(工程J)。式(A6)中、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0111】
工程Jは、具体的には、例えば、化合物(A5)とトリアルキルシリルアセチレンとを触媒の存在下で反応させて化合物(A6)を生成させる工程である。トリアルキルシリルアセチレンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、トリメチルシリルアセチレン、トリエチルシリルアセチレン等が挙げられる。トリアルキルシリルアセチレンは、化合物(A5)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられる。工程Jの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(A5)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A6)は、下記工程Kに供する前に精製することが好ましい。
【0112】
<工程K>
次いで、化合物(A6)から、式(A7)で表される化合物(以下、「化合物(A7)」と称する)を製造する(工程K)。式(A7)中、R10及びR11は互いに独立して、Dで置換されていてもよいアルキルを表し、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0113】
工程Kは、具体的には、例えば、化合物(A6)と硫化剤とを反応させて化合物(A7)を生成させる工程である。硫化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ナトリウムチオメトキシド、ナトリウムチオエトキシド等の硫化物塩;ローソン試薬;等が挙げられる。硫化剤は、化合物(A6)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Kの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A7)は、下記工程Lに供する前に精製することが好ましい。
【0114】
<工程L>
次いで、化合物(A7)から、式(1-1)で表される化合物(以下、「化合物(1-1)」と称する)を製造する(工程L)。式(1-1)中、Halは前述の通りであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。なお、化合物(1-1)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0115】
工程Lは、具体的には、例えば、化合物(A7)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(1-1)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(A7)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Lの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-1)は精製してもよい。また、化合物(1-1)は、下記工程Mに供する前に精製することが好ましい。
【0116】
<工程M>
次いで、化合物(1-1)から、式(1-2)で表される化合物(以下、「化合物(1-2)」と称する)を製造する(工程M)。式(1-2)中、R1は前述の通りであり、二つのR1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。TASはトリアルキルシリル基を表す。なお、化合物(1-2)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0117】
工程Mは、具体的には、例えば、化合物(1-1)とホウ素化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-2)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、トリフルオロボレート塩基、又は、トリオールボレート塩基等が挙げられる。ホウ素化合物は、化合物(1-1)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられ、適宜、配位子を使用してもよい当該配位子としては、トリフェニルホスフィン、Sphos等が挙げられる。工程Mの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-1)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-2)は精製してもよい。また、化合物(1-2)は、下記工程Nに供する前に精製することが好ましい。
【0118】
<工程N>
次いで、化合物(1-2)から、式(1-3)で表される化合物(以下、「化合物(1-3)」と称する)を製造する(工程N)。式(1-3)中、R1は前述の通りであり、Q1a及びQ2aは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。なお、化合物(1-3)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0119】
工程Nは、具体的には、例えば、化合物(1-2)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(1-3)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(1-2)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Nの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-3)は精製してもよい。また、化合物(1-3)は、下記工程Oに供する前に精製することが好ましい。
【0120】
<工程O>
次いで、化合物(1-3)から、式(1-4)で表される化合物(以下、「化合物(1-4)」と称する)を製造する(工程O)。式(1-4)中、R1は前述の通りであり、Q1b及びQ2bは互いに独立して、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基を表す。なお、化合物(1-4)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0121】
工程Oは、具体的には、例えば、化合物(1-3)とホウ素化合物又はスズ化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-4)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ピナコールボラン等のヒドロホウ素化合物、ビス(ピナコラト)ジボロン等のジボラン化合物、アリールボロン酸、アリールボロン酸エステル、アリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、アリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、アリールトリフルオロボレート塩基、ヘテロアリールボロン酸、ヘテロアリールボロン酸エステル、ヘテロアリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ヘテロアリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、ヘテロアリールトリフルオロボレート塩基、又はトリオールボレート塩基等が挙げられる。スズ化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ビス(トリメチルスズ)やビス(トリブチルスズ)等の二スズ化合物、トリアルキルアリールスズ、トリアルキルヘテロアリールスズ等が挙げられる。ホウ素化合物又はスズ化合物はそれぞれ独立して、化合物(1-3)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられる。工程Oの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-3)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-4)は精製してもよい。
【0122】
(中間体化合物(1)の製造方法3)
化合物(1)(中間体化合物)の製造方法は、前述した中間体化合物(1)の製造方法1,2に限定されない。更に他の一例として、市販の化合物から下記式(A8)で表される化合物を合成し、チアゾール環を縮環したナフトビスチアジアゾールを製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明する。
【0123】
【0124】
<工程P>
工程Pでは、式(i)で表される市販のナフタレンから、国際公開第2018/123207号公報に記載の実施例に基づき、式(A8)で表される化合物(以下、「化合物(A8)」と称する)を製造する。
【0125】
<工程Q>
化合物(A8)から、式(A9)で表される化合物(以下、「化合物(A9)」と称する)を製造する(工程Q)。式(A9)中、X1及びX2は、前述の通りである。
【0126】
工程Qは、具体的には、例えば、化合物(A8)とカルコゲン化剤、窒素化剤又は1,2-ジケトンとを反応させて化合物(A9)を生成させる工程である。カルコゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、過酸化水素、塩化チオニル、塩化セレニド等が挙げられる。カルコゲン化剤は、化合物(A8)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。窒素化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。窒素化剤は、化合物(A8)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。1,2-ジケトンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、アセチル、ベンジル、塩化オキサリル、臭化オキサリル等が挙げられる。1,2-ジケトンは、化合物(A8)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。前記反応においては、適宜、塩基を使用することもできる。当該塩基は、前記反応が進行する塩基であれば特に限定されない。溶媒は、前記反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエタノールアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A9)は、下記工程Rに供する前に精製することが好ましい。
【0127】
下記工程R~工程Uは、化合物(A9)を用いた場合の工程である。
【0128】
<工程R>
次いで、化合物(A9)から、式(A10)で表される化合物(以下、「化合物(A10)」と称する)を製造する(工程R)。
【0129】
工程Rは、具体的には、例えば、化合物(A9)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(A10)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(A9)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A10)は、下記工程Sに供する前に精製することが好ましい。
【0130】
<工程S>
次いで、化合物(A10)から、式(A11)で表される化合物(以下、「化合物(A11)」と称する)を製造する(工程S)。
【0131】
工程Sは、具体的には、例えば、化合物(A10)とアミノ化剤とを反応させて化合物(A11)を生成させる工程である。アミノ化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、アンモニア水溶液、液体アンモニア等が挙げられる。アミノ化剤は、化合物(A10)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A11)は、下記工程Tに供する前に精製することが好ましい。
【0132】
<工程T>
次いで、化合物(A11)から、式(A12)で表される化合物(以下、「化合物(A12)」と称する)を製造する(工程T)。
【0133】
工程Tは、具体的には、例えば、化合物(A11)と硫黄化剤とを反応させて化合物(A12)を生成させる工程である。硫黄化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、キサントゲン酸カリウム等が挙げられる。硫黄化剤は、化合物(A11)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A12)は、下記工程Uに供する前に精製することが好ましい。
【0134】
<工程U>
次いで、化合物(A12)から、式(1-5)で表される化合物(以下、「化合物(1-5)」と称する)を製造する(工程U)。式(1-5)中、Q1及びQ2は互いに独立して、ハロゲン原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基を表す。なお、化合物(1-5)は、前記式(1)で表される中間体化合物(1)に包含される。
【0135】
工程Uは、具体的には、例えば、化合物(A12)とハロゲン化剤、ホウ素化合物又はスズ化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-5)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド、臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩等が挙げられる。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ピナコールボラン等のヒドロホウ素化合物、ビス(ピナコラト)ジボロン等のジボラン化合物、アリールボロン酸、アリールボロン酸エステル、アリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、アリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、アリールトリフルオロボレート塩基、ヘテロアリールボロン酸、ヘテロアリールボロン酸エステル、ヘテロアリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ヘテロアリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、ヘテロアリールトリフルオロボレート塩基、又はトリオールボレート塩基等が挙げられる。スズ化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ビス(トリメチルスズ)やビス(トリブチルスズ)等の二スズ化合物、トリアルキルアリールスズ、トリアルキルヘテロアリールスズ等が挙げられる。ハロゲン化剤、ホウ素化合物又はスズ化合物はそれぞれ独立して、化合物(A12)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh3)4、Pd(PPh3)2Cl2、Pd2(dba)3、CuI等が挙げられる。工程Uの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(A12)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-5)は精製してもよい。
【0136】
前記中間体化合物(2)は、前記中間体化合物(1)を製造した後、ドナー性ユニットとなる化合物及び/又はアクセプタ性ユニットとなる化合物を反応させて製造することができる。ドナー性ユニットとなる化合物及び/又はアクセプタ性ユニットの末端にはハロゲン原子、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基等を結合させておくことが好ましい。
【0137】
(有機半導体材料)
式(I)で表される共役系高分子化合物を含有する本発明の有機半導体材料は、上述したように、剛直で高い平面性を持つので、有機半導体材料を製膜して有機半導体層を作製した場合、有機半導体層中における分子間距離が短く、高い電荷移動度や光電変換効率を発揮する。
【0138】
また、本発明の有機半導体材料には、式(I)で表される共役系高分子化合物のほか、有機半導体層の製膜性の向上、ドーピング等のために添加剤や他の半導体材料が混合されていてもよい。
【0139】
(有機半導体デバイス)
上述した本発明の有機半導体材料は、これを備えた有機半導体デバイスとすることができ、基板等の上に有機半導体材料を用いて製膜された活性層を備えることができる。本発明の有機半導体デバイスとして、例えば、有機半導体層を有する光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(電界効果トランジスタ等)、発光デバイス等、種々のデバイスに適用することができる。
【0140】
有機半導体デバイスにおける有機半導体層の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の製造方法を用いることができる。例えば、蒸着法、或いは、スピンコート法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法等の溶液法が挙げられる。
【0141】
(有機半導体膜形成用組成物)
この有機半導体膜形成用組成物は、本発明の共役系高分子化合物を含有し、有機半導体膜の形成に好ましく用いられる。
【0142】
本発明の共役系高分子化合物は、上述の通りであり、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。有機半導体膜形成用組成物の、前記共役系高分子化合物の含有率は、特に限定されず、例えば、後述する溶媒を除いた固形分中の含有率で表すと、後述する有機半導体膜中の共役系高分子化合物の含有率と同じ範囲にすることが好ましい。
【0143】
(バインダーポリマー)
有機半導体膜形成用組成物は、バインダーポリマーを含有していてもよい。この組成物がバインダーポリマーを含有していると、膜質の高い有機半導体膜が得られる。
【0144】
このようなバインダーポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン又はポリプロピレン等の絶縁性ポリマー、又は、これらの共重合体が挙げられる。これら以外にも、例えば、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン-天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー又はポリブタジエンゴム等のゴム、又は、熱可塑性エラストマー重合体が挙げられる。更には、例えば、ポリビニルカルバゾール又はポリシラン等の光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン又はポリパラフェニレンビニレン等の導電性ポリマー、又は、Chemistry of Materials, 2014, 26, 647.等に記載の半導体ポリマー等が挙げられる。
【0145】
バインダーポリマーは、電荷移動度を考慮すると、極性基を含まない構造を有することが好ましい。ここで、極性基とは、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を有する官能基をいう。極性基を含まない構造を有するバインダーポリマーとしては、上述した中でも、ポリスチレン又はポリ(α-メチルスチレン)が好ましい。また、半導体ポリマーも好ましい。
【0146】
バインダーポリマーのガラス転移温度は、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。例えば、有機半導体膜に強固な機械的強度を付与する場合、ガラス転移温度を高くすることが好ましい。一方、有機半導体膜にフレキシビリティーを付与する場合、ガラス転移温度を低くすることが好ましい。
【0147】
バインダーポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。有機半導体膜形成用組成物の、バインダーポリマーの含有率は、特に限定されず、例えば、固形分中の含有率としては、後述する有機半導体膜中のバインダーポリマーの含有率と同じ範囲にすることが好ましい。バインダーポリマーの含有率が前記範囲にある有機半導体膜形成用組成物を用いて有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成すると、キャリア移動度及び耐久性が更に向上する。
【0148】
バインダーポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~1,000万が好ましく、3,000~500万がより好ましく、5,000~300万が更に好ましい。
【0149】
有機半導体膜形成用組成物において、本発明の共役系高分子化合物は、バインダーポリマーに対して、均一に混合していてもよく、本発明の共役系高分子化合物の一部又は全部が相分離していてもよい。塗布容易性又は塗布均一性の点で、少なくとも塗布時に本発明の共役系高分子化合物とバインダーポリマーとが均一に混合していることが好ましい。
【0150】
(溶媒)
有機半導体膜形成用組成物は、溶媒を含有していてもよい。このような溶媒としては、上述の化合物を溶解又は分散させる溶媒であれば特に限定されず、無機溶媒又は有機溶媒が挙げられる。中でも、有機溶媒が好ましい。溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0151】
有機溶媒は、特に限定されないが、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン又はテトラリン等の炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン又はブチロフェノン等のケトン溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、クロロトルエン又は1-フルオロナフタレン等のハロゲン化炭化水素溶媒、ピリジン、ピコリン、キノリン、チオフェン、3-ブチルチオフェン又はチエノ[2,3-b]チオフェン等の複素環溶媒、2-クロロチオフェン、3-クロロチオフェン、2,5-ジクロロチオフェン、3,4-ジクロロチオフェン、2-ブロモチオフェン、3-ブロモチオフェン、2,3-ジブロモチオフェン、2,4-ジブロモチオフェン、2,5-ジブロモチオフェン、3,4-ジブロモチオフェン又は3,4-ジクロロ-1,2,5-チアジアゾール等のハロゲン化複素環溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸-2-エチルヘキシル、γ-ブチロラクトン又は酢酸フェニル等のエステル溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ又はエチレングリコール等のアルコール溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、4-エチルアニソール、ジメチルアニソール(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-、3,6-のいずれか)又は1,4-ベンゾジオキサン等のエーテル溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-イミダゾリジノン又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド又はイミド溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、リン酸トリメチル等のリン酸エステル溶媒、アセトニトリル又はベンゾニトリル等のニトリル溶媒、ニトロメタン又はニトロベンゼン等のニトロ溶媒が挙げられる。
【0152】
中でも、炭化水素溶媒、ケトン溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、複素環溶媒、ハロゲン化複素環溶媒又はエーテル溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、アミルベンゼン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、ジクロロベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1-フルオロナフタレン、3-クロロチオフェン又は2,5-ジブロモチオフェンがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1-フルオロナフタレン、3-クロロチオフェン又は2,5-ジブロモチオフェンが特に好ましい。
【0153】
有機半導体膜形成用組成物中の、溶媒の含有量は90~99.95質量%であることが好ましく、95~99.9質量%であることがより好ましく、96~99.5%質量%であることが更に好ましい。
【0154】
(その他の成分)
有機半導体膜形成用組成物は、本発明の共役系高分子化合物及び溶媒以外の成分を含有してもよい。このような成分として、各種の添加剤等が挙げられる。添加剤としては、有機半導体膜形成用組成物に通常用いられるものを特に制限されることなく、用いることができる。例えば、界面活性剤、酸化防止剤、結晶化制御剤又は結晶配向制御剤等が挙げられる。界面活性剤及び酸化防止剤としては、例えば、特開2015-195362号公報の段落番号0136及び0137の記載のものが挙げられ、この段落の記載がそのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0155】
有機半導体膜形成用組成物の、添加剤の含有率は、特に限定されず、例えば、固形分中の含有率としては、後述する有機半導体膜中の、添加剤の含有率と同じ範囲にすることが好ましい。添加剤の含有率が前記範囲にある有機半導体膜形成用組成物を用いて有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成すると、膜形成性に優れ、キャリア移動度及び耐熱性がより向上する。
【0156】
(調製方法)
有機半導体膜形成用組成物の調製方法としては、特に制限されず、通常の調製方法を採用することができる。例えば、所定量の各成分を混合機や撹拌機等で適宜混合処理することにより、有機半導体膜形成用組成物を調製することができる。
【0157】
必要により、各成分を適宜混合処理中又は後に加熱することもできる。加熱温度は、特に限定されず、例えば、40~150℃の範囲で行うことが好ましい。溶媒を用いる場合は、前記加熱温度の範囲であって溶媒の沸点未満の温度で行うことが好ましい。
【0158】
(有機半導体膜)
次に、有機半導体膜に関して説明する。有機半導体膜は、本発明の共役系高分子化合物を含んでいる。有機半導体膜の膜厚は、1nm~1000nmであることが好ましく、2nm~1000nmであることがより好ましく、5nm~500nmであることが更に好ましく、20nm~200nmであることが特に好ましい。
【0159】
有機半導体膜を製造する工程には、本発明の共役系高分子化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により本発明の共役系高分子化合物を配向させてなる有機半導体膜は、本発明の化合物の主鎖部分又は側鎖部分が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0160】
本発明の共役系高分子化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。液晶の配向手法の中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)、引き上げ塗布法が簡便かつ有用であるために利用し易く、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0161】
有機半導体膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、或いは吸収した光によって発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(有機薄膜太陽電池、光センサ等)等の有機半導体デバイスに用いることができる。有機半導体膜をこれら有機半導体デバイスに用いる場合は、本発明の化合物を配向処理により配向させて用いることが、電子輸送性又はホール輸送性を向上させる上でより好ましい。
【0162】
有機半導体膜は、電子輸送性及び動作安定性に優れた有機半導体であり、特に有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、光センサ等の有機半導体デバイスの材料として好適に利用可能である。
【0163】
(有機半導体膜の製造方法)
有機半導体膜の製造方法は、有機半導体膜形成用組成物を、基板上に塗布する工程を有する方法であれば、特に限定されない。
【0164】
この工程においては、上述した、有機半導体膜形成用組成物を用いる。本発明において、有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布するとは、有機半導体膜形成用組成物を基板に直接塗布する態様のみならず、基板上に設けられた別の層を介して基板の上方に有機半導体膜形成用組成物を塗布する態様も含むものとする。有機半導体膜形成用組成物が塗布される別の層(有機半導体膜に接する、有機半導体膜の土台となる層)は、有機薄膜トランジスタの構造により必然的に定まる。例えば、ボトムゲート型の場合、ゲート絶縁膜であり、トップゲート型(トップゲート-ボトムコンタクト型及びトップゲート-トップコンタクト型)の場合、ソース電極又はドレイン電極である。
【0165】
有機半導体膜を形成する際に、基板を加熱又は冷却してもよい。基板の温度を変化させることで、膜質、又は、膜中における本発明の化合物のパッキングを制御することができる。
【0166】
基板の温度としては、特に制限されない。例えば、0~200℃の範囲内で設定されることが好ましく、15~100℃の範囲内で設定されることがより好ましく、20~95℃の範囲内で設定されることが特に好ましい。
【0167】
有機半導体膜を形成する方法は、特に限定されず、真空プロセス又は溶液プロセスが挙げられ、いずれも好ましい。
【0168】
真空プロセスとしては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又は分子ビームエピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法等の物理気相成長法、又は、プラズマ重合等の化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法が挙げられる。中でも、真空蒸着法が好ましい。
【0169】
真空プロセスにおいては、前記溶媒を含有する有機半導体膜形成用組成物を用いることが好ましい。
【0170】
本発明の共役系高分子化合物は、上述のように大気下においても安定である。従って、溶液プロセスは大気下において行うことができ、更には、本発明の有機半導体膜形成用組成物を大面積で塗布することができる。
【0171】
溶液プロセスにおける、有機半導体膜形成用組成物の塗布方法としては、通常の方法を用いることができる。例えば、ドロップキャスト法、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、又はスピンコート法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、又はマイクロコンタクト印刷法等の各種印刷法、又は、Langmuir-Blodgett(LB)法等の方法が挙げられる。中でも、ドロップキャスト法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法又はマイクロコンタクト印刷法が好ましい。
【0172】
溶液プロセスにおいては、好ましくは、基板上に塗布した有機半導体膜形成用組成物を乾燥する。乾燥は徐々に行うことが更に好ましい。
【0173】
有機半導体膜形成用組成物の乾燥は、加熱した基板上で、自然乾燥又は加熱乾燥させてから、減圧乾燥することが、膜質の点で好ましい。自然乾燥又は加熱乾燥時の基板の温度は、20~100℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。自然乾燥又は加熱乾燥時間は0.5~20時間であることが好ましく、1~10時間であることがより好ましい。
【0174】
減圧乾燥時の温度は、20~100℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。減圧乾燥時間は1~20時間であることが好ましく、2~10時間であることがより好ましい。減圧乾燥時の圧力は、10-6~10-2Paであることが好ましく、10-5~10-3Paであることがより好ましい。
【0175】
このようにして乾燥した有機半導体膜形成用組成物を必要により成形等して、所定形状又はパターンとすることもできる。
【0176】
(有機薄膜トランジスタ)
次に、本発明の共役系高分子化合物を用いた上述の有機半導体デバイスの中でも好ましい形態である、有機薄膜トランジスタ(有機TFTともいう)について、説明する。
【0177】
有機薄膜トランジスタは、上述した有機半導体膜を備えている。これにより、本発明の有機薄膜トランジスタは、高いキャリア移動度を示し、しかも大気下に置いても経時による低下を効果的に抑えられ、安定駆動する。
【0178】
本発明において、大気下での周辺温度又は湿度は、有機薄膜トランジスタの使用環境での温度又は湿度であれば特に限定されず、例えば温度としては室温(25±15℃)、湿度としては10~90RH%が挙げられる。
【0179】
本発明の有機薄膜トランジスタは、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor;FET)として用いられることが好ましく、ゲート-チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
【0180】
本発明の有機薄膜トランジスタの厚さは、特に限定されないが、より薄いトランジスタとする場合には、例えば、トランジスタ全体の厚さを0.1~0.5μmとすることが好ましい。
【0181】
有機薄膜トランジスタは、有機半導体膜(有機半導体層又は半導体活性層ともいう)を有し、更に、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜を有することができる。
【0182】
本発明の有機薄膜トランジスタは、基板上に、ゲート電極と、有機半導体膜と、ゲート電極及び有機半導体膜の間に設けられたゲート絶縁膜と、有機半導体膜に接して設けられ、有機半導体膜を介して連結されたソース電極及びドレイン電極とを有する。この有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体膜とゲート絶縁膜が隣接して設けられる。
【0183】
本発明の有機薄膜トランジスタは、前記各層を備えていればその構造については特に限定されない。例えば、ボトムコンタクト型(ボトムゲート-ボトムコンタクト型及びトップゲート-ボトムコンタクト型)、又は、トップコンタクト型(ボトムゲート-トップコンタクト型及びトップゲート-トップコンタクト型)等のいずれの構造を有していてもよい。本発明の有機薄膜トランジスタは、より好ましくは、ボトムゲート-ボトムコンタクト型又はボトムゲート-トップコンタクト型(これらを総称してボトムゲート型という)である。
【0184】
以下、有機薄膜トランジスタの一例について図面を参照して説明する。
【0185】
図1に、第1実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上の一部に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間における絶縁層3の領域を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成されたゲート電極4と、を備えている。
【0186】
図2に、第2実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、ドレイン電極6の一部を覆うようにして有機半導体層2上の一部に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間における絶縁層3の領域を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成されたゲート電極4と、を備えている。
【0187】
図3に、第3実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして有機半導体層2上の一部に形成された絶縁層3と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成されたゲート電極4と、を備えている。
【0188】
図4に、第4実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4を覆うようにして形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように当該絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えている。
【0189】
図5に、第5実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4を覆うようにして形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように当該絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上の一部に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2の一部を覆うと共にソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えている。
【0190】
図6に、第6実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4を覆うようにして形成されている絶縁層3の領域を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2の一部を覆うと共に絶縁層3上に形成されたソース電極5と、有機半導体層2の一部を覆うと共にソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えている。
【0191】
図7に、第7実施形態の有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の断面図を模式的に示す。
図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、全てのゲート電極4を覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2aと、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えている。有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2を構成する材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0192】
前記第1~第7実施形態の有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層2(及び/又は有機半導体層2a)は、上述した好適な本発明の化合物を含んでおり、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となっている。また、ゲート電極4は、電圧が印加されることによって、電流通路(チャネル)となっている有機半導体層2(及び/又は有機半導体層2a)を通る電流量を制御するようになっている。
【0193】
基板1の材料は、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しない材料であればよく、特に限定されない。基板1としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、フレキシブルであってもよいフィルム基板及びプラスチック基板を用いることができる。
【0194】
有機半導体層2の形成においては、塗布が可能なように、有機溶媒に可溶性を示す本発明の化合物を用いることが、有機薄膜トランジスタを製造する上で有利であるので好ましい。本発明の化合物は優れた溶解性を有していることから、上述した有機半導体膜の製造方法を採用することにより、有機半導体層2となる有機薄膜を良好に形成することができる。
【0195】
絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知の材料を用いることができる。絶縁層3の材料としては、例えば、SiOx、SiNx、Ta2O5、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化を達成するという観点から、絶縁層3は、誘電率の高い材料で形成されていることが好ましい。
【0196】
絶縁層3上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2との界面特性を改善するために、絶縁層3の表面をシランカップリング剤等の表面処理剤で処理して表面改質した後に、有機半導体層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、アリールアルキルクロロシラン類、アリールアルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層3の表面をオゾンUV、O2プラズマで処理しておくことも可能である。
【0197】
ゲート電極4、ソース電極5、ドレイン電極6の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属、及びそれらの半透明膜、透明導電膜が挙げられる。
【0198】
また、作製された有機薄膜トランジスタを保護するために、当該有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により、有機薄膜トランジスタによって駆動する表示デバイスを当該有機薄膜トランジスタ上に形成する工程における、外部からの影響を低減することができる。
【0199】
保護膜の材料としては、例えばUV硬化樹脂、熱硬化樹脂、及び無機化合物であるSiONxが挙げられる。有機薄膜トランジスタを保護する方法としては、例えば、当該有機薄膜トランジスタ表面に、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又はSiONx膜からなる保護膜を形成する(有機薄膜トランジスタを保護膜でカバーする)方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程は、有機薄膜トランジスタを大気に曝すことのない雰囲気下、例えば乾燥した窒素雰囲気下、又は真空下で行うことが好ましい。
【0200】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5-110069号公報に記載の方法に準じて製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開2004-006476号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0201】
(有機薄膜トランジスタの用途)
上述の有機薄膜トランジスタは、その用途については特に限定されず、例えば、電子ペーパー、ディスプレイデバイス、センサ、電子タグ等に使用することができる。
【0202】
(有機薄膜太陽電池)
次に、本発明の共役系高分子化合物を用いた上述の有機半導体デバイスの中でも好ましい形態である、有機薄膜太陽電池(OPVともいう)について、説明する。
【0203】
前記有機半導体素子を用いて有機薄膜太陽電池を作製することができる。有機薄膜太陽電池は、例えば、基板上に電極層、電子輸送層(電子取出層)、光電変換層(光活性層)、正孔輸送層(正孔取出層)、及び電極層を順に積層した構造を有する。本発明に係る化合物を含む有機半導体材料は、例えば、光電変換層(光活性層)を形成する。基板としては、例えば、受光性能を阻害しないよう、光透過性を有する基板が挙げられる。そのような基板としては、例えば、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色又は有色の透明性を有する樹脂を用いてもよい。また、そのような樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、及びポリメチルペンテン等が挙げられる。電極としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)電極、銀電極、アルミニウム電極、金電極、クロム電極、酸化チタン電極、酸化亜鉛電極等が挙げられる。電子輸送層(電子取出層)としては、例えば、フェナントロリン、バソキュプロイン、及びペリレン等の有機半導体分子並びにこれらの誘導体;遷移金属錯体等の有機物;LiF、CsF、CsO、Cs2CO3、TiOx(xは0~2の任意の数字)、及びZnO等の無機化合物;Ca、Ba等の金属;等が挙げられる。正孔輸送層(正孔取出層)としては、例えば、PEDOT(ポリスチレンスルホネート、poly styrene sulfonate)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、及びポルフィリン等の有機半導体分子ならびにこれらの誘導体;遷移金属錯体;トリフェニルアミン化合物及びヒドラジン化合物等の電荷移動剤;TTF(テトラチアフルバレン)のような電荷移動錯体;等の正孔移動度が高い材料が挙げられる。
【0204】
本発明の共役系高分子化合物をp型半導体材料として用いる場合において、ともに用いるn型半導体材料としては、C60フラーレン、C70フラーレン、及びC84フラーレン等が挙げられる。フラーレン誘導体としては、上述したフラーレンに少なくとも一つの置換基が付加した化合物を挙げることができ、例えば、フラーレンの炭素原子の一部に、好ましくは炭素原子数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基;エポキシ基;1~2個程度のジオキソラン構造(ジオキソラン基);インドリン基;ベンゾフラン基等の縮環有機基;等の置換基が結合した化合物が挙げられる。フラーレン誘導体として具体的には、各種フラーレンエポキシド、1,3-ジオキソラン-フラーレン誘導体、フェニルC61酪酸メチルエステル(PC61BM)、フェニルC61酪酸ブチルエステル、フェニルC61酪酸オクチルエステル(PCBO)、フェニルC71酪酸メチルエステル(PC71BM)、インデン付加型フラーレン誘導体(ICMA、ICBA等)、シリルメチル付加型フラーレン誘導体等、及びBis-PCBM等が挙げられる。n型半導体材料として他には、ActivInk N2200(Polyera製)等が挙げられる。
【0205】
本発明の共役系高分子化合物をn型半導体材料として用いる場合において、ともに用いるp型半導体材料としては、ドナー型π共役高分子やドナーアクセプタ型π共役高分子等が挙げられる。ドナー型π共役高分子としては、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリ-アルコキシ-p-フェニレンビニレン、ポリ-9,9-ジアルキルフルオレン等を挙げることができる。ドナーアクセプタ型π共役高分子中のドナーユニットとしては、ベンゾチオフェン、ジチエノシロール、N-アルキルカルバゾールが、またアクセプタ性ユニットとしては、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェン、チオフェンピロールジオン等が挙げられ、具体的には、これらのユニットを組み合わせた、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン-co-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]チオフェン)(PTBxシリーズ)、ポリ(ジチエノ[1,2-b:4,5-b’][3,2-b:2’,3’-d]シロール)-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)類等の高分子化合物が挙げられる。これらのうちで、好ましいものとしては、ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7)、ポリ[4,8-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン]2,6-ジイル-alt-((5-オクチルチエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオン)1,3-ジイル)(PBCTTPD)、ポリ[(4,4’ -ビス(2-エチルヘキシル)ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール)]-2,6-ジイル-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル)(PSBTBT)、ポリ[1-(6-{4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ])-6-メチルベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2-イル}{3-フルオロ-4-メチルチエノ[3,4-b]チオフェン-2-イル}-1-オクタノン](PBDTTT-CF)が挙げられる。
【0206】
有機薄膜太陽電池は、有機半導体膜(有機半導体層又は半導体活性層ともいう)を有し、更に、陽極電極と、陰極電極と、正孔輸送層と、電子輸送層を有することができる。
【0207】
本発明の有機薄膜太陽電池は、前記各層を備えていればその構造については特に限定されない。例えば、順層型、逆層型、又は、タンデム型(多接合型)等のいずれの構造を有していてもよい。
【0208】
以下、有機薄膜太陽電池の一例について図面を参照して説明する。
【0209】
図8は、本発明の一実施形態に係る、順層型の有機光電変換素子を模式的に示す断面図である。具体的には、
図8の有機光電変換素子10は、基板25上に、陽極11、正孔輸送層26、光電変換層14、電子輸送層27、及び陰極12がこの順に積層されてなる構成を有する。なお、基板25は、主に、その上の陽極11を塗布方式で形成するのを容易にするために任意に設けられる部材である。
【0210】
図8に示す有機光電変換素子10の作動時において、光は基板25側から照射される。本実施形態において、陽極11は、照射された光が光電変換層14へと届くようにするため、透明な電極材料(例えば、ITO)で構成される。基板25側から照射された光は、透明な陽極11及び正孔輸送層26を経て光電変換層14へと届く。
【0211】
光電変換層14はp型有機半導体及びn型有機半導体を含むが、この光電変換層14に光が入射されると、p型有機半導体の電子が最高被占有軌道(以下、「HOMO」とも称する)から最低空軌道(以下、「LUMO」とも称する)に励起され、次いでこの電子はn型有機半導体の伝導帯に移動する。その後、当該電子は、電子輸送層27及び陰極12を経た後、外部回路を経由して共役系高分子化合物の伝導帯に移動する。そして、p型有機半導体の伝導帯で生じた電子は、LUMOのレベルに移動する。
【0212】
一方、光電変換層14に光が入射されると、p型有機半導体のHOMOのレベルに発生した正孔は、正孔輸送層26及び陽極11を経た後、外部回路を経由してn型有機半導体の価電子帯に移動する。こうして光電変換層14において光電流が流れ、発電が行われる。このような光電荷分離はp型有機半導体とn型有機半導体の接触界面が大きいほど促進されると考えられていることから、本発明では、p型有機半導体とn型有機半導体とが一様に混合されたバルクヘテロジャンクション型の光電変換層14(図示は省略する)が用いられることが特に好ましい。ただし、このような形態のみには限定されない。
【0213】
なお、正孔輸送層26は、正孔の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で精製した正孔を効率よく陽極11へと輸送する機能を担っている。一方、電子輸送層27は、電子の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した電子を効率よく陰極12へと輸送する機能を担っている。
【0214】
図9は、本発明の他の一実施形態に係る、逆層型の有機光電変換素子を模式的に示す断面図である。
図9の有機光電変換素子20は、
図8の有機光電変換素子10と比較して陽極11と陰極12とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。すなわち、
図9の有機光電変換素子20は、基板25上に、陰極12、電子輸送層27、光電変換層14、正孔輸送層26、及び陽極11がこの順に積層されてなる構成を有している。このような構成を有することにより、光電変換層14のpn接合界面で生成される電子は電子輸送層27を経て陰極12へと輸送され、正孔は正孔輸送層26を経て陽極11へと輸送される。
【0215】
図10は、本発明の他の一実施形態に係る、タンデム型(多接合型)の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に示す断面図である。
図10の有機光電変換素子30は、
図8の有機光電変換素子10と比較して、光電変換層14に代えて、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bと、これら二つの光電変換層の間に介在する電荷再結合層38との積層体が配置されている点が異なる。
図10に示すタンデム型の有機光電変換素子30では、第1の光電変換層14a及び第2の光電変換層14bに、それぞれ吸収波長の異なる光電変換材料(p型有機半導体及びn型有機半導体)を用いることにより、より広い波長域の光を効率よく電気に変換することが可能となる。
【実施例0216】
以下、実施例に基づき、有機半導体材料を構成する各種共役系高分子化合物の合成、共役系高分子化合物を含む有機半導体材料を用いた有機薄膜太陽電池の特性について更に詳しく説明する。なお、これらの記載は本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0217】
<測定条件等>
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMM-ECS400(1H測定時400MHz)」を用いて測定した。ケミカルシフトは、百万分率(ppm)で表される。内部標準(0ppm)には、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで表され、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)、及び広幅線(broad)を表す。また、質量分析(MALDI TOFMS)は、株式会社島津製作所製の商品名「AXIMA」を用いて測定した。元素分析は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製の商品名「JM10」を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名「シリカゲル 60N」(40~50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、又はシグマアルドリッチジャパン株式会社より購入した。
【0218】
(中間体合成例1)
(中間体1の合成)
国際公開第2018/123207号に記載の実施例に基づき中間体1を合成した。
【0219】
(中間体2の合成)
20mL試験管に中間体1(172mg,0.393mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(45mg,0.039mmol)、ヨウ化銅(7mg,0.04mmol)、トリエチルシリルアセチレン(551mg,3.93mmol)、トルエン(7mL)、トリエチルアミン(3.5mL)を加え試験管内を窒素置換した。その後、110℃で18時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後に、反応溶液にクロロホルムを加え、セライトろ過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン:塩化メチレン(10:1)溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して中間体2を得た(黄褐色固体,170mg,収率78%)。反応式を以下に示す。
【0220】
【0221】
得られた中間体2の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=1.15(t,J=8.2Hz,18H),0.81(q,J=8.2Hz,12H)。
【0222】
(中間体3の合成)
200mLナス型フラスコに中間体2(186mg,0.334mmol)を入れテトラヒドロフラン(15mL)に溶解させた。その後、氷浴下でナトリウムチオメトキシド(70mg,1.0mmol)を加え、0℃で3時間撹拌した。その後、反応液に氷水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後溶媒を減圧下で留去して中間体3を得た(赤褐色固体,170mg,収率83%)。反応式を以下に示す。
【0223】
【0224】
得られた中間体3の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=2.76(s,6H),1.17(t,J=7.8Hz,18H),0.83(q,J=7.8Hz,12H)。
【0225】
(中間体4の合成)
200mLナス型フラスコに中間体3(170mg,0.277mmol)を入れ塩化メチレン(50mL)に溶解させた。その後、ヨウ素(353mg,1.39mmol)を加え室温で17時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物にメタノールを加え、析出した固体をろ取しメタノールで洗浄して中間体4を得た(褐色固体,214mg,収率92%)。反応式を以下に示す。
【0226】
【0227】
得られた中間体4の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=1.24(q,J=7.8Hz,12H),1.11(t,J=7.8Hz,18H)。
【0228】
(中間体5の合成)
50mL試験管に中間体4(221mg,0.252mmol)、オクチルボロン酸(199mg,1.26mmol)、SPhos(2-dicyclohexyl phosphino-2’,6’-dimethoxy biphenyl)(8mg,0.02mmol)、酢酸パラジウム(2mg,0.01mmol)、トルエン10mLを加え試験管内を窒素置換した。その後、100℃で16時間撹拌し、反応液を室温まで冷却後に、反応溶液に水を加え、トルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して中間体5を得た(黄色固体,94mg,収率46%)。反応式を以下に示す。
【0229】
【0230】
得られた中間体5の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=3.49-3.45(m,4H),1.82-1.72(m,4H),1.66-1.59(m,4H),1.45-1.33(m,),1.10(s,30H),0.91(t,J=7.0Hz,6H)。
【0231】
(中間体6の合成)
100mLナス型フラスコに中間体5(67mg,0.083mmol)を入れクロロホルム(8mL)に溶解させた。その後、臭素(66mg,0.41mmol)を加え、室温で30分間撹拌した後、40℃で1時間撹拌し、反応液を室温まで冷却後にメタノールを加えた。得られた反応混合物をろ過し、メタノールで洗浄することで中間体6を得た(黄褐色固体,54mg,収率88%)。反応式を以下に示す。
【0232】
【0233】
得られた中間体6の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=3.42(t,J=7.8Hz,4H),1.77(quin,7.8Hz,4H),1.44-1.24(m,16H),0.89(t,J=7.0Hz,6H)。MS(MALDI)m/z=737.79(M+)。
【0234】
(中間体7の合成)
反応容器に中間体6(98mg,0.13mmol)、4-(2-オクチルドデシル)-2-トリブチルスタニルチオフェン(225mg,0.345mmol)、及び、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(15mg,0.013mmol)、トルエン(2mL)を加えた。反応容器を窒素置換した後に、μ-ウェーブリアクターを用いて180℃で10分間反応させた。反応液を室温まで冷却後に、反応混合物にメタノールを加え、ろ過後に得られた残渣を、クロロホルムを移動層とするゲル浸透クロマトグラフィーで分離精製することで中間体7を得た(赤色固体,113mg,収率94%)。反応式を以下に示す。
【0235】
【0236】
得られた中間体7の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=7.19(s,2H),7.02(s,2H),3.43-3.35(m,4H),2.69-2.60(m,4H),1.80-1.65(m,6H),1.5-1.2(m,36H),1.0-0.89(m,18H)。
【0237】
(中間体8の合成)
反応容器に中間体7(163mg,0.125mmol)を入れTHF(6mL)に溶解させた。その後、N-ブロモスクシンイミド(53mg,0.30mmol)を加え、50℃で5時間撹拌し、反応液を室温まで冷却後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して中間体8を得た(黄色固体,171mg,収率94%)。反応式を以下に示す。
【0238】
【0239】
得られた中間体8の物性データは次の通りである。
1HNMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ=7.12(s,2H),3.61-3.51(m,4H),2.58(d,4H,J=6.8Hz),1.88-1.72(m,6H),1.46-1.16(m,36H),0.92-0.79(m,18H)。
【0240】
〔実施例1〕
(化合物1の合成)
反応容器に中間体8(50mg,0.034mmol)、4,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(13mg,0.034mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(2mg,0.007mmol)、リン酸カリウム(136mg,0.641mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(2mg,0.002mmol)、THF(2mL)、及び水(0.1mmol)を加えた。反応容器を窒素置換した後に、μ-ウェーブリアクターを用いて130℃で40分間反応させた。反応液を室温まで冷却後に、反応混合物にメタノールを加えた。析出した固体をろ取し、クロロベンゼンでソックスレー抽出することで化合物1を得た(紫色固体,46mg)。反応式を以下に示す。
【0241】
【0242】
化合物1の数平均分子量は47500であった。
【0243】
〔実施例2〕
(化合物2の合成)
反応容器に中間体6(25mg,0.034mmol)、2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン(22mg,0.034mmol)、アリコート336(製品名;メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド)(1滴)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.0mg,0.001mmol)、トルエン(1.5mL)、及び2Mの炭酸カリウム水溶液(1mL)を加えた。反応容器を窒素置換した後に、μ-ウェーブリアクターを用いて180℃で60分間反応させた。反応液を室温まで冷却後に、反応溶液にメタノール(20mL)と濃塩酸(1mL)を加え室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ取し、クロロホルムでソックスレー抽出することで化合物2を得た(赤色固体,15mg,収率24%)。反応式を以下に示す。
【0244】
【0245】
化合物2の数平均分子量は7000であった。
【0246】
続いて、合成した化合物1及び化合物2を用いて有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率等の性能を評価した。
【0247】
[有機薄膜太陽電池の性能評価]
化合物1をn型有機半導体材料として用いて有機薄膜太陽電池の評価を行った。
【0248】
p型有機半導体材料としてはP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を、電極としてはITO(陰極)及びアルミニウム(陽極)を、正孔輸送材料としてはPEDOT:PSS(ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))を、電子輸送材料としてはCaをそれぞれ用いた。
【0249】
まず、ITO膜がパターニングされたガラス基板をトルエン、アセトン、水、イソプロピルアルコールでそれぞれ15分間超音波洗浄した後、プラズマ洗浄機に入れて、酸素ガスを流入しながら発生したプラズマにより基板表面を20分間洗浄処理した。更に、オゾンUVを90分間照射して表面を洗浄した。その後、スピンコート法製膜装置を用い、前記ITOガラス上にPEDOT:PSS薄膜を形成した。次いで135℃で10分間アニール処理した。形成したPEDOT:PSSの薄膜は30nmであった。更に、スピンコート法製膜装置を用い、事前に調製したP3HTと化合物1(質量比1:1)のオルトジクロロベンゼン溶液(15mg/mL)を前述のPEDOT:PSS薄膜上にスピンコート(800rpm、2分間)し、有機半導体層を形成させて、積層体を得た。その後、120℃で10分間アニール処理した。その後、小型高真空蒸着装置を用い、作製した前記積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、電子輸送層としてCa(20nm)、及び金属電極としてのアルミニウム層(80nm)を順次製膜し、3mm角の有機薄膜太陽電池を作製した。
【0250】
得られた有機薄膜太陽電池に、ソーラーシュミレーター(AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm
2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧とを測定した。
図11に電流密度-電圧特性のグラフを示す。
【0251】
図11に基づいて短絡電流密度Jsc(mA/cm
2)、開放電圧Voc(V)、形状因子FFを求めたところ、Jsc=0.70mA/cm
2、Voc=1.02V、FF=0.43であった。「光電変換効率(η)=(Jsc×Voc×FF)/100」より光電変換効率を算出したところ、0.31%であった。
【0252】
続いて、化合物3をp型有機半導体材料として用いて有機薄膜太陽電池の評価を行った。
【0253】
n型有機半導体材料としてはPC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル)を、電極としてはITO(陰極)及びアルミニウム(陽極)を、正孔輸送材料としてはPEDOT:PSS(ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))を、電子輸送材料としてはCaをそれぞれ用いた。
【0254】
まず、ITO膜がパターニングされたガラス基板をトルエン、アセトン、水、イソプロピルアルコールでそれぞれ15分間超音波洗浄した後、プラズマ洗浄機に入れて、酸素ガスを流入しながら発生したプラズマにより基板表面を20分間洗浄処理した。更に、オゾンUVを90分間照射して表面を洗浄した。その後、スピンコート法製膜装置を用い、前記ITOガラス上にPEDOT:PSS薄膜を形成した。次いで120℃で15分間アニール処理した。形成したPEDOT:PSSの薄膜は30nmであった。更に、スピンコート法製膜装置を用い、事前に調製したPC61BMと化合物3(質量比1:1)のクロロベンゼン溶液(25mg/mL)を前述のPEDOT:PSS薄膜上にスピンコート(3000rpm、1分間)し、有機半導体層を形成させて、積層体を得た。その後、120℃で10分間アニール処理した。その後、小型高真空蒸着装置を用い、作製した前記積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、電子輸送層としてCa(20nm)、及び金属電極としてのアルミニウム層(80nm)を順次製膜し3mm角の有機薄膜太陽電池を作製した。
【0255】
得られた有機薄膜太陽電池に、ソーラーシュミレーター(AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm
2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧とを測定した。
図12に電流密度-電圧特性のグラフを示す。
【0256】
図12に基づいて短絡電流密度Jsc(mA/cm
2)、開放電圧Voc(V)、形状因子FFを求めたところ、Jsc=1.5mA/cm
2、Voc=0.71V、FF=0.44であった。「光電変換効率(η)=(Jsc×Voc×FF)/100」より光電変換効率を算出したところ、0.47%であった。
【0257】
このように、本発明の共役系高分子化合物は、p型又はn型有機半導体材料として、高い電荷移動度又は光電変換効率を達成できることが実証された。
本発明の共役系高分子化合物は、優れた半導体特性を有することから、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(電界効果トランジスタ等)、発光デバイス等の種々の有機半導体デバイスに利用可能である。