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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053560
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】ウェアラブルデバイス用基材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20220330BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEW
C08L27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019027789
(22)【出願日】2019-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜田 智明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳文
(72)【発明者】
【氏名】本多 誠
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA38A
4F074AA39A
4F074AC02
4F074AG01
4F074BA13
4F074BB02
4F074BB28
4F074CA24
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA12
4F074DA13
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA47
4J002BD12W
4J002BD12X
4J002BD13X
4J002BD14W
4J002BD14X
4J002BD15W
4J002BD15X
4J002BD16W
4J002BD16X
4J002BE04X
4J002CP03Y
4J002CP14Y
4J002DA039
4J002DE069
4J002DE079
4J002DE089
4J002DE099
4J002DE109
4J002DE139
4J002DE238
4J002DE249
4J002DJ019
4J002EE059
4J002EF118
4J002EG019
4J002EH148
4J002EK037
4J002EK047
4J002EK057
4J002EK087
4J002EP028
4J002EQ016
4J002EQ026
4J002ES006
4J002ES018
4J002EU028
4J002EU029
4J002EU119
4J002EU139
4J002EU186
4J002EU188
4J002EU198
4J002EV216
4J002EX038
4J002FD01X
4J002FD099
4J002FD147
4J002FD158
4J002FD15Y
4J002FD209
4J002FD326
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】断熱性および透湿性を有する、ウェアラブルデバイス用基材の提供。
【解決手段】含フッ素発泡ゴムを有し、前記含フッ素発泡ゴムが含フッ素弾性共重合体の架橋物を含み、前記含フッ素発泡ゴムの連続気泡率が20~70%である、ウェアラブルデバイス用基材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素発泡ゴムを有し、
前記含フッ素発泡ゴムが、含フッ素弾性共重合体の架橋物を含み、
前記含フッ素発泡ゴムの連続気泡率が、20~70%である、ウェアラブルデバイス用基材。
【請求項2】
気泡率が20~90%である、請求項1に記載のウェアラブルデバイス用基材。
【請求項3】
前記含フッ素弾性共重合体が、含フッ素単量体に基づく単位を含有し、
前記含フッ素単量体がテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、下式(1)で表される化合物、および、クロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のウェアラブルデバイス用基材。
CF=CFOR・・・(1)
ただし、式(1)において、Rは炭素原子数1~9のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数2~9のパーフルオロ(オキサアルキル)基である。
【請求項4】
前記含フッ素発泡ゴムがさらに添加剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス用基材。
【請求項5】
厚さが0.3~5mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス用基材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス用基材を含む、ウェアラブルデバイス。
【請求項7】
含フッ素弾性共重合体100質量部に対し、発泡剤を0.5~10質量部含み、架橋剤を0.05~10質量部含み、架橋助剤を0~0.3質量部含む、ウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物。
【請求項8】
前記含フッ素弾性共重合体が、含フッ素単量体に基づく単位を含有し、
前記含フッ素単量体がテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、下式(1)で表される化合物、および、クロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物。
CF=CFOR・・・(1)
ただし、式(1)において、Rは炭素原子数1~9のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数2~9のパーフルオロ(オキサアルキル)基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルデバイス用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、曲線を有する生体に直接装着することができる、いわゆるウェアラブルデバイスの開発が活発に行われている。ウェアラブルデバイスは、演算素子や給電素子等がウェアラブルデバイス用基材に設置されていることが多い。ウェアラブルデバイス用基材としては、フレキシブルで、皮脂等の汚れによって劣化しにくい素材が適している。
【0003】
含フッ素ゴムは、耐薬品性、耐油性等に優れる素材であり、特に皮脂等の汚れによって劣化しにくい点で、ウェアラブルデバイス用基材に適しているといえる。
含フッ素ゴムとしては、例えば、フッ化ビニリデンに基づく単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを有する共重合体の架橋物、テトラフルオロエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを有する共重合体の架橋物、テトラフルオロエチレンに基づく単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位とを有する共重合体の架橋物等が知られている。
【0004】
また、含フッ素ゴムの中でも、フレキシブルな素材として、含フッ素発泡ゴムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5967080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体に直接装着するウェアラブルデバイスにおいて、演算素子や給電素子を駆動させた際の発熱が問題となっている。そこで、各種素子と生体の間にある基材の厚みを大きくしたり、基材内部に独立気泡を形成したりすることで、基材の断熱性を向上させ、発熱の影響を低減することができる。しかし、いずれの方法をとっても透湿性は低下するため、過剰の水分によって測定精度の低下を招く可能性がある。また、蒸れることにより、快適性も損なわれる。特に、ウェアラブルデバイスを長時間装着する場合、これらの問題は顕著なものになると考えられる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、断熱性および透湿性を有する、ウェアラブルデバイス用基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]含フッ素発泡ゴムを有し、前記含フッ素発泡ゴムが、含フッ素弾性共重合体の架橋物を含み、前記含フッ素発泡ゴムの連続気泡率が、20~70%である、ウェアラブルデバイス用基材。
[2]気泡率が20~90%である、[1]に記載のウェアラブルデバイス用基材。
[3]前記含フッ素弾性共重合体が、含フッ素単量体に基づく単位を含有し、
前記含フッ素単量体がテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、下式(1)で表される化合物、および、クロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載のウェアラブルデバイス用基材。
CF=CFOR・・・(1)
ただし、式(1)において、Rは炭素原子数1~9のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数2~9のパーフルオロ(オキサアルキル)基である。
[4]前記含フッ素発泡ゴムがさらに添加剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のウェアラブルデバイス用基材。
[5]厚さが0.3~5mmである、[1]~[4]のいずれかに記載のウェアラブルデバイス用基材。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のウェアラブルデバイス用基材を含む、ウェアラブルデバイス。
[7]含フッ素弾性共重合体100質量部に対し、発泡剤を0.5~10質量部含み、架橋剤を0.05~10質量部含み、架橋助剤を0~0.3質量部含む、ウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物。
[8]前記含フッ素弾性共重合体が、含フッ素単量体に基づく単位を含有し、前記含フッ素単量体がテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、下式(1)で表される化合物、および、クロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[7]に記載のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物。
CF=CFOR・・・(1)
ただし、式(1)において、Rは炭素原子数1~9のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数2~9のパーフルオロ(オキサアルキル)基である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、断熱性および透湿性を有する、ウェアラブルデバイス用基材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「含フッ素発泡ゴム」について、特に成形体であることを強調する場合には含フッ素発泡ゴム成形体ということもある。
また、オキサアルキル基とは、アルキル基の炭素原子(末端炭素原子以外の炭素原子)の1個以上が酸素原子に置換されたアルキル基をいう。ただし、酸素原子に置換される炭素原子が2個以上の場合、それらの置換される炭素原子は隣接していないものとする。さらに、オキサアルキル基の炭素原子数は酸素原子に置換された炭素原子を含まない数を意味する。
さらに、「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。「単量体に基づく単位」は、以下、単に「単位」ともいう。
【0011】
本発明のウェアラブルデバイス用基材は、後述する含フッ素発泡ゴムを有し、後述する通り、該含フッ素発泡ゴムの連続気泡率は、20~70%である。
【0012】
<含フッ素発泡ゴムの気泡>
後述する含フッ素発泡ゴムの気泡は、「独立気泡」と「連続気泡」の2種類に分けられる。
【0013】
独立気泡は、含フッ素発泡ゴムの外部空間に繋がっていない状態の気泡である。一方、連続気泡は、含フッ素発泡ゴムの外部空間に繋がっている状態の気泡である。
換言すると、下記連続気泡率の測定方法において、その内部を水で置換される気泡は連続気泡であり、その内部を水で置換されない気泡が独立気泡である。
【0014】
連続気泡率の高さは、含フッ素発泡ゴムの透湿性に寄与する。連続気泡の中には、1か所のみが外部空間に繋がっている気泡も含まれ、そのような気泡は必ずしも含フッ素発泡ゴムの透湿性に寄与するとは言えないが、連続気泡率が高い含フッ素発泡ゴムでは、生体と含フッ素ゴムの外部空間を繋ぐ気泡の割合が増え、良好な透湿性を発揮すると考えられる。
【0015】
含フッ素発泡ゴムの気泡率Ftは、20~90%が好ましく、20~85%がより好ましく、30~80%がさらに好ましく、45~75%が最も好ましい。気泡率は後述する通り、例えば、発泡剤および架橋剤の使用量、成形温度や成形時間などの成形条件によって調整できる。
【0016】
含フッ素発泡ゴムの気泡率Ft(%)は、含フッ素発泡ゴムの体積V1(外寸から求められるみかけ容積)に対する気泡の体積の割合である。含フッ素発泡ゴムの厚みと面積から体積V1を求め、含フッ素発泡ゴムの質量W1と前記含フッ素ゴムの素となる含フッ素弾性共重合体組成物から発泡剤を除いた組成物から製造されたフッ素ゴムの密度D1から式(3)を用いて気泡率Ftを算出した。
Ft(%)=[1-{(W1/D1)/V1}]×100 ・・・式(3)
【0017】
含フッ素発泡ゴムにおける連続気泡率は、20~70%であり、30~70%がより好ましく、40~65%がさらに好ましい。連続気泡率が20%以上であると、透湿性に優れる。連続気泡率が70%以下であると、演算素子や給電素子を駆動させた際に発生した熱を通しにくく、やけどを発生させにくい、すなわち、断熱性に優れる。
【0018】
含フッ素発泡ゴムの連続気泡率Fo(%)は式(4)から求める事ができる。体積V1で質量W1の含フッ素発泡ゴムを50mmHgに減圧した水中に固定して5分間保持した後、常圧に戻して5分間保持する工程を2回繰り返し、連続気泡中の気体を水で置換した。水で置換した後の含フッ素発泡ゴムの質量W2を測定し、連続気泡率Fo(%)を算出した。Dwは水の比重である。
Fo(%)=[{(W2-W1)/(Dw×V1)]×100 ・・・式(4)
【0019】
含フッ素発泡ゴムにおける独立気泡率は、0~70%であることが好ましく、5~65%がより好ましく、5~55%がさらに好ましく、15~45%が最も好ましい。独立気泡率が5%以上であると、断熱性に優れる。独立気泡率が70%以下であると、透湿性を有する。
【0020】
含フッ素発泡ゴムの独立気泡率Fc(%)は式(5)から求める事ができる。
Fc(%)=Ft-Fo ・・・式5
【0021】
後述する通り、発泡反応と架橋反応の速度を調節したり、独立気泡を潰して連続気泡としたりすることにより、連続気泡率と独立気泡率の割合を調整することができる。
【0022】
透湿性とは、水蒸気を透過する性質をいう。透湿性の程度は、透湿度で表すことができる。透湿度は、JIS Z0208に規定された方法により、測定・算出することができる。具体的には、40℃において、測定対象となる厚さ2mmの試料を境界面とし、一方の側の空気を相対湿度90%、他方の側の空気を吸湿剤によって乾燥状態に保ったときに、24時間に試料を通過する水蒸気の質量(g)を求め、その基材の1m当たりに換算した値を、透湿度とする。
【0023】
本発明の含フッ素発泡ゴムの透湿度は、特に限定されないが、装着した場合の快適性を考慮して、50g/m・24h以上とすることが好ましい。100g/m・24h以上とすることが好ましく、200g/m・24h以上とすることがより好ましい。含フッ素発泡ゴムの透湿度は、気泡率、連続気泡率・独立気泡率、厚み等を調整することにより、適宜設計できる。
【0024】
<含フッ素発泡ゴム>
本発明における含フッ素発泡ゴムは、含フッ素弾性共重合体の架橋物を含む。含フッ素発泡ゴムとしては、後述するウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物を発泡し、且つ該ウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物に含まれる含フッ素弾性共重合体を架橋して得られる含フッ素発泡ゴムが好ましい。
【0025】
<ウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物>
本発明のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物(以下、単に「含フッ素弾性共重合体組成物」ともいう。)は、含フッ素発泡ゴムの製造に用いられるものであって、含フッ素弾性共重合体と、発泡剤と、過酸化物からなる架橋剤を必須成分として含有する。架橋助剤は含有しないか、または架橋助剤を少量だけ含有することが好ましい。含フッ素弾性共重合体は、1種のみを用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(含フッ素弾性共重合体)
本発明において、含フッ素弾性共重合体は、分子量が2,000超の含フッ素弾性共重合体であることが好ましい。
【0027】
本発明における含フッ素弾性共重合体は、ガラス転移点が20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましく、5℃以下であることが特に好ましい。上記の範囲であることによって、含フッ素弾性共重合体を含む含フッ素発泡ゴムが柔軟性に優れるため、低気温下でも本発明のウェアラブルデバイス用基材を含むウェアラブルデバイスを快適に使用できる。
【0028】
また含フッ素弾性共重合体のJIS K6300に準じた100℃でのムーニー粘度(LM1+4100℃)は、1~200が好ましく、5~190がより好ましく、10~180が特に好ましい。
【0029】
[含フッ素単量体]
含フッ素弾性共重合体は、含フッ素単量体に基づく単位を含有する。
該含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記すこともある。)、フッ化ビニリデン(以下、VdFと記すこともある。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと記すこともある。)、下式(1)で表される化合物、および、クロロトリフルオロエチレンから選ばれることが好ましい。含フッ素弾性共重合体に含有される含フッ素単量体に基づく単位が、これら単量体からなる群より選ばれる1種以上の含フッ素単量体に基づく単位であると、含フッ素弾性共重合体が耐熱性、耐薬品性に優れるので好ましい。
【0030】
CF=CFOR・・・(1)
式(1)において、Rは炭素原子数1~9のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数2~9のパーフルオロ(オキサアルキル)基である。
【0031】
がパーフルオロアルキル基である式(1)で表される化合物(すなわち、パーフルオロアルキルビニルエーテル)を、PAVEと記すこともある。
がパーフルオロ(オキサアルキル)基である式(1)で表される化合物(すなわち、パーフルオロ(オキサアルキルビニルエーテル))を、POAVEと記すこともある。
【0032】
は直鎖状でもよく、分岐を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。Rがパーフルオロアルキル基の場合の炭素原子数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。また、Rがパーフルオロ(オキサアルキル)基の場合の炭素原子数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましい。
【0033】
としてのパーフルオロアルキル基の具体例としては、CF基、C基、C基が好ましい。
としてのパーフルオロ(オキサアルキル)基における酸素原子の数は4個以下が好ましく、2個以下がより好ましい。該パーフルオロ(オキサアルキル)基の具体例としては、COC-基、COC-基、COCOC-基が好ましい。
【0034】
式(1)で表される化合物の具体例としては、CF=CFOCF(以下、PMVEとも記す。)、CF=CFOCFCF(以下、PEVEとも記す。)、CF=CFOCFCFCF(以下、PPVEとも記す。)、CF=CFO(CFCF、CF=CFO(CFCF、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCF、CF=CFO(CFOCFCF、CF=CFOCFCF(CF)OCF、CF=CFOCFCF(CF)O(CFCF、CF=CFO(CFCFO)CFCF、CF=CFO[CFCF(CF)O]CF、CF=CFO[CFCF(CF)O](CFCF等が挙げられる。
【0035】
[炭化水素単量体]
含フッ素弾性共重合体は、含フッ素単量体に基づく単位に加えてさらに炭化水素単量体に基づく単位を含有してもよい。炭化水素単量体は、フッ素原子を含有しない、炭素-炭素不飽和結合を有する炭化水素化合物からなる。
【0036】
炭化水素単量体としては、下式(2)で表される化合物、プロピレン(以下、Pと記すこともある。)およびエチレン(以下、Eと記すこともある。)が好ましい。プロピレンがより好ましい。含フッ素弾性共重合体は、これら炭化水素単量体に基づく単位の2種以上を含有していてもよい。
【0037】
CH=CHOR ・・・(2)
式(2)において、Rは炭素原子数1~8のアルキル基、または炭素原子数2~8のオキサアルキル基である。Rは直鎖状でもよく、分岐を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。オキサアルキル基の炭素原子数は2~6が好ましく、2~4がより好ましい。オキサアルキル基の酸素原子数は1または2が好ましく、1がより好ましい。
【0038】
式(2)で表されるビニルエーテルの具体例としては、メチルビニルエーテル(以下、MVEと記すこともある。)、エチルビニルエーテル(以下、EVEと記すこともある。)、ブチルビニルエーテル(以下、BVEと記すこともある。)、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
含フッ素弾性共重合体が炭化水素単量体に基づく単位を含有する場合、含フッ素弾性共重合体を構成する、含フッ素単量体に基づく単位と炭化水素単量体に基づく単位の合計の100モル%に対して、炭化水素単量体に基づく単位の割合は10~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましく、30~60モル%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると含フッ素発泡ゴムの硬度が上がりすぎることがなく、上限値以下であると耐熱性や耐薬品性に優れる。
【0040】
[架橋性基含有単量体]
本発明における含フッ素弾性共重合体は、上記単量体に基づく単位に加えて、架橋性基含有単量体に基づく単位を含有していてもよい。本明細書において、架橋性基含有単量体とは、同一分子内に後述の架橋性基を1個以上有する化合物であって、分子量2,000以下のものをいう。架橋性基含有単量体における架橋性基は含フッ素弾性共重合体の製造の際には実質的に反応せず、含フッ素弾性共重合体は架橋性基含有単量体に由来する架橋性基を有する。
【0041】
含フッ素弾性共重合体を構成する全単位の100モル%に対して、架橋性基含有単量体に基づく単位の割合は、0.001~10モル%が好ましく、0.001~5モル%がより好ましく、0.01~3モル%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると架橋密度が充分であり、充分な引っ張り強度が発現される。上記の範囲の上限値以下であると、硬度、耐熱性、耐薬品性などのバランスのとれた含フッ素発泡ゴムが得られやすい。
【0042】
架橋性基含有単量体中の架橋性基としては、ハロゲン原子、酸無水物残基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、水酸基などが挙げられる。前記架橋性基のうち、ハロゲン原子が好ましく、その中でもヨウ素原子が特に好ましい。
【0043】
架橋性基含有単量体の好適な具体例としては、(2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル)トリフルオロビニルエーテル、(2-ヨード-1,1,2,2-テトラフルオロエチル)トリフルオロビニルエーテル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘプタフルオロ-4-ペンテンニトリルなどが挙げられる。架橋性基含有単量体は2種以上を使用できる。
【0044】
[含フッ素弾性共重合体の好適な態様]
含フッ素弾性共重合体の好適な態様としては、例えば、TFE/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体、TFE/HFP共重合体、VdF/HFP共重合体、TFE/VdF/HFP共重合体、TFE/PAVE系重合体(具体的には、TFE/PMVE共重合体、TFE/PPVE共重合体、TFE/PEVE共重合体、TFE/PMVE/PPVE共重合体)、TFE/POAVE共重合体(具体的には、TFE/CF=C(OC共重合体)、TFE/MVE共重合体、TFE/EVE共重合体、TFE/BVE共重合体、TFE/EVE/BVE共重合体、VdF/PPVE共重合体、E/HFP共重合体が挙げられる。また、これらの共重合体においてさらに架橋性基含有単量体に基づく単位を含有するものも好ましい。
【0045】
これらのうちで、TFE/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体、TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP共重合体、TFE/VdF/HFP共重合体が好ましい。また、これらの共重合体においてさらに架橋性基含有単量体に基づく単位を含有するものも好ましい。
【0046】
特にTFE/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体、VdF/HFP共重合体およびTFE/VdF/HFP共重合体が引っ張り強度と耐熱性および耐薬品性のバランスの点でより好ましく、TFE/P共重合体が最も好ましい。
【0047】
上記共重合体における各単量体に基づく単位のモル比は、特に制限なく、要求される特性に応じて適宜選定すればよい。
【0048】
含フッ素弾性共重合体の好適な具体例としては、下記の共重合体が挙げられる。
TFE(40~60モル%)/P(60~40モル%)共重合体、TFE(20~79モル%)/P(79~20モル%)/VdF(1~50モル%)共重合体、TFE(20~80モル%)/HFP(80~20モル%)共重合体、VdF(50~95モル%)/HFP(5~50モル%)共重合体、TFE(1~35モル%)/VdF(45~90モル%)/HFP(5~50モル%)共重合体、TFE(40~70モル%)/PMVE(60~30モル%)共重合体、TFE(40~70モル%)/PPVE(60~30モル%)共重合体、TFE(40~70モル%)/CF=C(OC(60~30モル%)共重合体、TFE(70~30モル%)/MVE(30~70モル%)共重合体、TFE(70~30モル%)/EVE(30~70モル%)共重合体、TFE(70~30モル%)/BVE(30~70モル%)共重合体、TFE(60~30モル%)/EVE(1~69モル%)/BVE(1~69モル%)共重合体、VdF(40~70モル%)/PPVE(60~30モル%)共重合体、E(40~60モル%)/HFP(60~40モル%)共重合体。また、これらの共重合体においてさらに架橋性基含有単量体に基づく単位を、全単位に対して、0.001~10モル%含有する共重合体も好ましい。
【0049】
ここで、TFE(40~60モル%)/P(60~40モル%)共重合体とは、TFE単位とP単位とを40~60モル%:60~40モル%の割合で含有する共重合体を意味しており、他の共重合体も同様の意味である。
【0050】
また、TFE(40~60モル%)/P(60~40モル%)共重合体においてさらに架橋基含有単量体に基づく単位を全単位に対して0.001~10モル%含有する共重合体とは、TFE単位とP単位の割合が40~60モル%:60~40モル%であり、さらに、架橋基含有単量体に基づく単位を全単位に対して0.001~10モル%含有する共重合体を意味しており、他の共重合体も同様の意味である。
【0051】
[含フッ素弾性共重合体の製造方法]
含フッ素弾性共重合体の製造方法は特に限定されないが、乳化重合、溶液重合などを好ましく用いることができ、特に乳化重合が好ましい。
【0052】
(発泡剤)
発泡剤は特に限定されないが、有機系分解性化学発泡剤が好ましく、アゾ系化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン化合物がより好ましい。該有機系分解性化学発泡剤の具体例として、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジン、ヒドラゾジカルボンアミドを例示できる。発泡剤としては、上記化合物の2種以上を用いてもよい。
【0053】
含フッ素弾性共重合体組成物中の発泡剤の含有量は、含フッ素弾性共重合体100質量部に対して、0.1~20質量部であり、0.3~15質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。この範囲にあると、気泡の均一性、成形物の表面平滑性、耐熱性および引っ張り強度に優れた含フッ素発泡ゴムを与える組成物が得られやすい。
【0054】
(架橋剤)
含フッ素弾性共重合体組成物は、有機過酸化物からなる架橋剤を含有する。架橋剤としては、有機過酸化物が好ましい。該有機過酸化物は特に限定されないが、有機過酸化物の半分量が1分間で分解する温度である1分間半減期温度が150~250℃の有機過酸化物が好ましく、150~200℃がより好ましい。
【0055】
該有機過酸化物の具体例としては、ジtert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルへキサン-2,5-ジヒドロキシパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシマレイン酸、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。該有機過酸化物は、2種以上を用いることができる。
【0056】
含フッ素弾性共重合体組成物中の有機過酸化物の含有量は、含フッ素弾性共重合体100質量部に対して、0.05~10質量部であり、0.3~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。この範囲にあると、気泡の均一性、成形体の表面平滑性、耐熱性および引っ張り強度に優れた含フッ素発泡ゴムを与える組成物が得られやすい。
【0057】
(架橋助剤)
本発明のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物は、架橋助剤を含んでもよい。ただし、含フッ素弾性共重合体組成物が架橋助剤を含まないか、または含むとしても少量含有させることが好ましい。これにより、発泡状態が良好で、弾性に富み、耐熱性および耐薬品性にも優れる含フッ素発泡ゴムを再現性良く製造することができる。
【0058】
かかる効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定される。通常、発泡させずに架橋させる場合は架橋助剤を比較的多く配合することにより架橋密度が向上して良好な物性のゴムが得られる。一方、発泡と架橋を同時に行う場合には、架橋助剤を用いて架橋密度を上げると発泡が抑制されて不安定になる。そのため、架橋助剤を含まないか、少量を含有した組成物を用いることにより、架橋時の含フッ素ゴムの架橋密度の上昇を抑えられることから、発泡状態が良くなると考えられる。
【0059】
含フッ素弾性共重合体組成物における架橋助剤は、同一分子内に反応性官能基を2個以上有する化合物である。反応性官能基としては炭素-炭素二重結合含有基、ハロゲン原子、酸無水物残基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、水酸基が挙げられる。架橋助剤の同一分子内に存在する2個以上の反応性官能基は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
炭素-炭素二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基などのアルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの不飽和アシル基、マレイミド基などが挙げられる。好ましい炭素-炭素二重結合含有基は炭素原子数2~4のアルケニル基であり、特にアリル基が特に好ましい。
【0061】
架橋助剤の例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルトリメリテート、m-フェニレンジアミンビスマレイミド、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、N,N’,N’’,N’’’-テトラアリルテレフタールアミド、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン等のビニル基含有シロキサンオリゴマー等が挙げられる。
【0062】
本発明のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物が架橋助剤を含有する場合は、その架橋助剤としてはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、およびトリメタリルイソシアヌレートからなる群より選ばれる1種以上を使用することがより好ましい。特に架橋反応性の点で、架橋助剤がトリアリルイソシアヌレート(TAIC)であることがさらに好ましく、架橋助剤としてTAICのみを使用することが特に好ましい。
【0063】
架橋助剤を含有する場合に、架橋助剤の含有量は、含フッ素弾性共重合体組成物の100質量部に対して0.4質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましい。架橋助剤の含有量が0.4質量部以下であると、含フッ素弾性共重合体組成物を発泡し、且つ含フッ素弾性共重合体組成物に含まれる含フッ素弾性共重合体を架橋して得られる含フッ素発泡ゴムは、発泡の均一性に優れ、表面平滑性に優れたものとなる。また、該含フッ素発泡ゴムは引張り破断強度などの物性に優れ、かつ耐熱性・耐薬品性に優れる。架橋助剤の含有量の下限値は、含フッ素弾性共重合体組成物の100質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましく、0.01質量部以上が最も好ましい。この範囲にあると架橋助剤を含有することにより、含フッ素発泡ゴムが物性に優れ、かつ耐熱性・耐薬品性に優れる。
本発明のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物は、架橋助剤を含有しないことが最も好ましい。
【0064】
(添加剤)
含フッ素弾性共重合体組成物には、発泡剤、架橋剤、架橋助剤以外の添加剤を必要に応じて含有させることができる。添加剤としては、顔料、充填剤、補強剤、加工助剤、受酸剤が挙げられる。また、その他公知の添加剤を含有させることができる。含フッ素弾性共重合体組成物に発泡反応および架橋反応において消失しない添加剤が含有される場合、前記含フッ素弾性共重合体組成物を発泡し、且つ該含フッ素弾性共重合体組成物に含まれる含フッ素弾性共重合体を架橋して得られたフッ素発泡ゴムは、添加剤を含む。
【0065】
顔料の具体例としては、無置換キナクリドン、ジメチルキナクリドン、アンスラキノニルレッド、ポリアゾ系イエロー、ベンズイミダゾロン系イエロー、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、コバルトフタロシアニンブルーなどが挙げられる。顔料の含有量は、含フッ素弾性共重合体100質量部に対して0.1~50質量部が好ましい。
【0066】
充填剤の具体例としてはクレー、タルク等が挙げられる。充填剤の含有量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して1~100質量部が好ましい。
【0067】
補強剤の具体例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、二酸化ケイ素、および、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、TFE/エチレン共重合体、TFE/6フッ化プロピレン共重合体、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等の含フッ素樹脂、発泡体、繊維を不織布状等に集成してなる繊維集成体等の多孔質部材が挙げられる。前記含フッ素樹脂の溶融温度は20℃超であることが好ましい。補強剤の含有量は、含フッ素弾性共重合体100質量部に対して1~100質量部が好ましい。
【0068】
なお、本発明において、多孔質とは、体積1cmあたり、細孔を少なくとも10個、好ましくは100個以上、より好ましくは1,000個以上含む構造を意味している。この細孔は、連続構造であってもよく、独立構造であってもよい。
【0069】
加工助剤としては、ステアリン酸およびその塩が好ましい。ステアリン酸塩の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。ステアリン酸およびその塩は2種以上を用いることができる。
【0070】
加工助剤の含有量は、含フッ素弾性共重合体100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0071】
受酸剤としては、金属酸化物及び金属炭酸化合物が挙げられる。該金属酸化物の具体例としては、ZnO、MgO、CaO、TiO、CuO、BaOなどが挙げられる。該金属炭酸化合物の具体例としては、ZnCO、MgCO、CaCOなどが挙げられる。受酸剤の含有量は含フッ素弾性共重合体100質量部に対して0~5質量部が好ましい。
【0072】
<ウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物の製造方法>
本発明のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物は、上記各成分を混合することにより得られる。混合方法としては、種々の混合方法が適用できるが、2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて混練する方法が好ましい。混練する際に発熱が激しい場合は、ロール等の混練機を冷却することが好ましい。混練温度は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。混練温度が100℃を超えると、発泡反応および/または架橋反応を生じるおそれがある。該混練温度の下限値は、特に制限ないが、通常は20℃である。
【0073】
<含フッ素発泡ゴムの製造方法>
本発明の含フッ素発泡ゴムは、本発明のウェアラブルデバイス用基材製造用の含フッ素弾性共重合体組成物を発泡し、且つ該含フッ素弾性共重合体組成物に含まれる含フッ素弾性共重合体を架橋させることにより得ることが好ましい。含フッ素弾性共重合体組成物を発泡および該含フッ素弾性共重合体組成物に含まれる含フッ素弾性共重合体を架橋させる場合、低気泡率の場合のみだけでなく、80%以上という高気泡率であっても、均一で良好な発泡状態を得ることができ、物性が良好な含フッ素発泡ゴムが得られる。
【0074】
含フッ素弾性共重合体組成物を、発泡剤の分解温度以上の温度に加熱すると発泡反応が生じ、架橋剤の分解温度以上の温度に加熱すると架橋反応が生じる。本発明では発泡剤の分解温度以上で、かつ架橋剤の分解温度以上の温度に加熱して、発泡反応と架橋反応を同時に行うことが好ましい。これらの加熱は加圧下で行ってもよく、常圧下で行ってもよい。
【0075】
このとき、発泡反応と架橋反応の速度を調整することで含フッ素発泡ゴムの独立気泡と連続気泡の割合を制御可能である。架橋反応に対して発泡反応を遅くすることで独立気泡が多い成形体を得ることができる。また、架橋反応率が低いうちに発泡を開始させると連続気泡が多い成形体が、架橋反応率が充分に高い段階で発泡を開始させると独立気泡が多い成形体が得られる。
【0076】
また、独立気泡は、例えばロール等で圧力をかけると潰れることがあり、潰れた連続気泡が、連続気泡になることがある。
【0077】
含フッ素発泡ゴム製造時の含フッ素弾性共重合体組成物の加熱温度は、100~300℃の範囲が好ましい。この温度範囲で加熱すると発泡反応と架橋反応がバランス良く進行し、発泡状態の均一性に優れた含フッ素発泡ゴムが得られる。加圧下で成形した場合には表面平滑性に優れた含フッ素発泡ゴム成形体が得られる。また、引張り破断強度などの物性に優れ、かつ耐熱性・耐薬品性に優れる含フッ素発泡ゴムが得られる。
【0078】
また、比較的低温での一次加熱と、比較的高温での二次加熱を組合せると、より良好な発泡状態が得られやすい。一次加熱温度は、100~250℃が好ましい。二次加熱温度は該一次加熱温度よりも高温であり、その二次加熱温度は150~300℃が好ましく、150~250℃がより好ましく、170~250℃が最も好ましい。二次加熱温度は一次加熱温度よりも10℃以上高温であることが好ましく、20℃以上高温であることがより好ましい。また、二次加熱は一次架橋の温度から段階的に昇温して行うこともできる。加熱時間は、適宜選定すればよい。
【0079】
一次加熱と二次加熱の組合せの具体例としては、150~200℃の熱プレスで3~60分間一次加熱を行って、発泡、架橋および成形を行った後、得られた発泡フッ素ゴム成形体を該熱プレス温度よりも高くかつ170~250℃のオーブン内で1~24時間加熱して架橋反応をさらに進行させる方法が好ましい。
【0080】
また、二次加熱を行う際の一次加熱後の含フッ素弾性共重合体組成物の気泡率は、10~80%が好ましく、15~75%がより好ましく、30~60%がより好ましい。二次加熱を行う際の二次加熱後の含フッ素発泡ゴムの気泡率は、10~80%が好ましく、15~75%がより好ましく、30~60%がより好ましい。
【0081】
発泡反応が終了したときに所定の形状となるように、発泡と同時に成形を行い、含フッ素発泡ゴム成形体を得ても良い。架橋反応は、成形と同時に行ってもよいし、成形後に架橋反応させてもよい。成形方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、加圧成形、圧縮成形、押出し成形、射出成形など種々の成形方法が挙げられる。
また、発泡および架橋させた後の含フッ素発泡ゴム成形体(たとえば、シート状成形体)をさらに所定の形状に切り出すなどして成形することも可能である。
【0082】
ウェアラブルデバイス用基材用の含フッ素発泡ゴムの厚さは、0.1mm~5mmが好ましく、0.3mm~4mmが更に好ましく、0.5mm~2mmが最も好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、充分な引っ張り強度を有するウェアラブルデバイス用基材用の含フッ素発泡ゴムが得られる。上記範囲の上限値以下であると、透湿性や生体への追従性に優れる。
【0083】
含フッ素発泡ゴム成形体の表面には、スキン層が存在してもよい。スキン層が存在する場合、肌触りが良くなり、快適性が向上する。
【0084】
<ウェアラブルデバイス用基材の製造方法>
本発明のウェアラブルデバイス用基材は、含フッ素発泡ゴムと他部材との積層体であってもよい。他部材としては、透湿性の点から、発泡体、繊維を不織布状等に集成してなる繊維集成体等の多孔質部材が好ましい。多孔質部材の定義は、前述の通りである。また、多孔質部材は、複数の含フッ素発泡ゴムの間に配されても良い。
【0085】
本発明のウェアラブルデバイス用基材は、透湿性を損なわない範囲で、生体側の面に接着層を有してもよい。
【0086】
本発明のウェアラブルデバイス用基材の透湿度は、特に限定されないが、装着した場合の快適性を考慮して、50g/m・24h以上とすることができる。100g/m・24h以上とすることが好ましく、200g/m・24h以上とすることがより好ましい。基材の材質、厚み等を調整することにより、適宜設計できる。
【0087】
ウェアラブルデバイス用基材の厚さは、0.3mm~10mmが好ましく、0.5mm~5mmが更に好ましく、0.5mm~3mmが最も好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、充分な引っ張り強度を有するウェアラブルデバイス用基材が得られる。上記範囲の上限値以下であると、ウェアラブルデバイス用基材の透湿性や生体への追従性に優れる。
【0088】
本発明によれば、含フッ素発泡ゴムを使用することで、皮脂等の汚れによって劣化しにくく、耐熱性、耐薬品性、耐油性、断熱性、透湿性に優れ、柔軟性を持つことで、使用感がよく、快適性の高い、ウェアラブルデバイス用基材を得ることができる。
【実施例0089】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。測定方法および評価方法は、以下の方法を用いた。
気泡率の測定方法、連続気泡率の測定方法、独立気泡率の計算方法は、前述の通りである。
【0090】
[引っ張り強度]
厚さ2mmのシート状の含フッ素発泡ゴム成形体を3号ダンベルで打ち抜いたものを試料とし、JIS K6251に準じて引っ張り強度を測定した。5kg/cm以上を○、5kg/cm未満を×とした。
【0091】
[耐薬品性]
・エタノール試験
30mm角に切った厚み2mmのゴムのシートを50℃で12時間、エタノール中に浸漬させた後、表面をふき取り、浸漬前後のシートの質量の変化率を測定した。変化率が3%未満を「〇」、3%以上5%未満を「△」、5%以上を「×」と評価した。
【0092】
・ハンドクリーム試験
30mm角に切ったゴムのシートの表面に尿素10質量%配合のハンドクリームを塗布し、40℃で24時間静置後、クリームを除去し、ゴムの外観を観察した。外観に変化が見られないものを「○」、外観に曇り等が生じたものを「×」と評価した。
【0093】
[透湿性]
測定方法は、前述の通りである。厚み2mmのゴムのシートを用いて透湿度を測定し、100g/m・24h以上を「〇」、50g/m・24h以上、100g/m・24h未満を「△」、50g/m・24h未満を「×」と評価した。
【0094】
[断熱性]
厚み5mmのゴムのシートを100℃に熱したホットプレート上に30分置いた後、シート下面(ホットプレート側)とシート上面(大気側)の温度を測定した。上面と下面の温度差50℃以上を「〇」、50℃未満を「×」と評価した。
【0095】
表に示す各成分は以下の通りである。
・TFE/P共重合体:含フッ素弾性共重合体(TFE単位/P単位のモル比=55/45)、ムーニー粘度60。TFE/P共重合体は、通常の乳化重合、例えば特許5061446号に記載された方法によって得られる。
・TFE/VdF/HFP共重合体:Solvay Solexis社製、製品名:Tecnoflon P959。ムーニー粘度65。
・補強剤:カーボンブラック、Ashland社製、製品名:MT-Carbon United N990。
・架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(TAIC)。
・架橋剤:1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物、化薬アクゾ社製、製品名:パーカドックス14。
・発泡剤:イチイ有限会社製、製品名:VP#600。
組成はアゾジカルボンアミドの50質量部、複合亜鉛華(米庄石灰社製、ZnOとCaCOの組成物)の40質量部、尿酸の10質量部、およびナフテン油(製品名:出光興産社製、NP-24)の5質量部からなる組成物(合計105質量部)。
・加工助剤:ステアリン酸ナトリウム。
・受酸剤:酸化亜鉛、ZnO。
【0096】
(例1)
表1に示す配合で、全成分を2本ロールで混練し、含フッ素弾性共重合体組成物を得た。例1においては、含フッ素弾性共重合体として、TFE/P共重合体を用いた。この含フッ素弾性共重合体組成物を170℃で20分間熱プレスにより一次架橋させ、さらに200℃で4時間二次架橋させ、厚さ2mmの含フッ素発泡ゴムを得た。
この含フッ素発泡ゴムの物性の測定および評価の結果を表1に示す。
【0097】
(例2~5)
表1に示す配合で、例1と同様の方法で含フッ素発泡ゴムを得た。例1と同様の評価および測定を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(例6)
例6においては、含フッ素弾性共重合体として、AFLAS 100S(AGC社製)を用いて、例1と同様の評価および測定を行った。結果を表1に示す。なお、例6の含フッ素弾性共重合体組成物は発泡剤を含まないため、該含フッ素弾性共重合体組成物から製造されるフッ素ゴムは、発泡していない。
【0099】
(例7)
例7においては、含フッ素弾性共重合体の代わりに、シリコーンゴムシート(2-9320)(アズワン社から入手)を用いて、例1と同様の評価および測定を行った。結果を表1に示す。なお、例7のシリコーンゴムシートは、発泡していない。
【0100】
(例8)
(発泡ウレタン)について、
例8においては、含フッ素弾性共重合体の代わりに、低反発ウレタンシート(KTHU-3015)(アズワン社から入手)を用いて、例1と同様の評価および測定を行った。結果を表1に示す。なお、例8の低反発ウレタンシートは、発泡している。
ただし、発泡ウレタンは市販品であるため、D1に相当する値(発泡させなかった場合のウレタンの密度)が不明であるため、気泡率Ftおよび独立気泡率Fcは計算できなかった。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示されるように、連続気泡率が20%以上、70%以下である例1、2、3では、透湿性および耐熱性に優れるウェアラブルデバイス用基材が得られた。
一方、連続気泡率が70以上である例4では、断熱性に優れるウェアラブルデバイス用基材が得られなかった。
さらに、連続気泡率が20%以下である例5では、透湿性に優れるウェアラブルデバイス用基材が得られなかった。
発泡していない材料を用いた例6、7では、断熱性に優れるウェアラブルデバイス用基材が得られなかった。
含フッ素発泡ゴムを有しない例8では、耐薬品性に優れるウェアラブルデバイス用基材が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の発泡フッ素ゴムは、ウェアラブルデバイス用基材として、好適に用いることができる。