(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053930
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220330BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/42
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160828
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】大橋直史
(72)【発明者】
【氏名】松井俊
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030BA40
4K030JA05
4K030JA10
5F045AA08
5F045AB33
5F045AC05
5F045AC12
5F045AC15
5F045BB02
5F045DP03
5F045EF05
5F045EH14
5F045EK07
5F045GB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板を加熱処理する基板処理装置において、基板間の処理環境が変化しても基板間の膜質を均一にする。
【解決手段】基板処理装置100における半導体装置の製造方法であって、処理室201に基板を搬入する搬入工程と、処理室の上流に設けられたシャワーヘッド230が備えた分散板234を整流板270に設けられたシャワーヘッドヒータで加熱しつつ、分散板を介して処理室内の基板Sにガスを供給すると共に、処理室からガスを排気する膜処理工程と、基板を処理室から搬出する搬出工程と、次に処理する基板の搬入前にシャワーヘッドの温度を測定する温度測定工程と、温度測定工程の後、シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、その差分が所定値よりも大きい場合、シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、予め設定された温度に近づけるよう制御する温度調整工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室に基板を搬入する搬入工程と、
前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドが備えた分散板をシャワーヘッドヒータで加熱しつつ、前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給すると共に、前記処理室から前記ガスを排気する膜処理工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する搬出工程と、
次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定する温度測定工程と、
前記温度測定工程の後、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、その差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する温度調整工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程での前記分散板のエッジ部の温度が、前記温度調整工程の前記エッジ部の温度よりも高くなるよう加熱する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程での前記分散板の中心温度が、前記膜処理工程での前記分散板のエッジ部の温度よりも低くなるよう加熱する
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程では、前記分散板のエッジ部の温度を中央の温度よりも高くなるよう加熱する請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シャワーヘッドヒータは、
前記温度調整工程では、前記分散板の中央の温度がエッジ部よりも高くなるよう加熱する請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記シャワーヘッドのうち、前記分散板の上方には電極が設けられ、
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程では、前記電極の下方領域は他の領域よりも温度が高くなるよう制御される請求項1から請求項5のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記膜処理工程で処理される前記基板は第nロットの基板であり、次に処理される前記基板は第n+1ロットの基板である請求項1から請求項5のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記膜処理工程で処理される前記基板と、次に処理される前記基板との間ではメンテナンス工程が行われる請求項1から請求項7のうち、いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板を処理する処理室と、
前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドに備えられた分散板と、
前記分散板を加熱可能なシャワーヘッドヒータと、
前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給するガス供給部と、
前記処理室から前記ガスを排気する排気部と、
前記シャワーヘッドの温度を測定する温度測定部と、
次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定し、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、それらの差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項10】
処理室に基板を搬入する手順と、
前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドが備えた分散板をシャワーヘッドヒータで加熱しつつ、前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給すると共に、前記処理室から前記ガスを排気する膜処理手順と、
前記基板を前記処理室から搬出する手順と、
次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定する手順と、
前記温度を測定する手順の後、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、その差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する手順とを、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する装置としては、基板を一枚ごとに処理する枚葉装置が存在する(例えば特許文献1)。枚要装置では、例えば基板を加熱すると共に、基板上にガスを供給することで、半導体デバイスの一部を構成する膜を形成する。
【0003】
複数の基板に対して同じ種類の膜を形成する場合、温度条件を同じにすることが望ましい。基板温度は、ヒータや処理室壁に影響される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の基板を処理する場合、基板の入れ替えを行う必要がある。ところが、入れ替える際に処理室の温度が低下する等、その前後で処理環境が変わることがある。その結果、基板間で膜質のばらつきが起きる。
【0006】
本開示は、基板を加熱処理する基板処理装置において、基板間の処理環境が変化しても基板間の膜質を均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
処理室に基板を搬入する搬入工程と、前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドが備えた分散板をシャワーヘッドヒータで加熱しつつ、前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給すると共に、前記処理室から前記ガスを排気する膜処理工程と、前記基板を前記処理室から搬出する搬出工程と、次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定する温度測定工程と、前記温度測定工程の後、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、その差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する温度調整工程とを有する技術を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、基板を加熱処理する基板処理装置において、基板を加熱処理する基板処理装置において、基板間の処理環境が変化しても基板間の膜質を均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一態様に係る基板処理装置の概略構成例を示す説明図である。
【
図2】本開示の一態様に係る基板処理装置が備えるガス供給部を説明する説明図である。
【
図3】本開示の一態様に係る基板処理装置が備えるシャワーヘッドヒータを説明する説明図である。
【
図4】本開示の一態様に係る基板処理装置が備えるシャワーヘッドヒータとその周辺構成を説明する説明図である。
【
図5】本開示の一態様に係る基板処理装置のコントローラを説明する説明図である。
【
図6】本開示の一態様に係る基板処理装置が備えるコントローラが有するテーブルを説明する説明図である。
【
図7】本開示の一態様に係る基板処理装置が備えるコントローラが有するテーブルを説明する説明図である。
【
図8】本開示の一態様に係る基板処理装置が備えるコントローラが有するテーブルを説明する説明図である。
【
図9】本開示の一態様に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
【
図10】本開示の一態様に係る膜処理工程を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の態様について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
[第一態様]
先ず、第一態様について説明する。
【0012】
図1は本態様に係る基板処理装置を説明する説明図である。以下に、
図1の基板処理装置100を例に各構成を具体的に説明する。
【0013】
基板処理装置100は容器202を備えている。容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。容器202内には、シリコンウエハ等の基板Sを処理する処理空間205と、基板Sを処理空間205に搬送する際に基板Sが通過する搬送空間206とが形成されている。容器202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板208が設けられる。処理空間205を構成する構造を処理室201と呼ぶ。本態様においては、主に後述する分散板234と基板載置台212とで構成される。
【0014】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ149に隣接した基板搬入出口148が設けられており、基板Sは基板搬入出口148を介して搬送室(図示せず)との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。更に、下部容器202bは接地されている。
【0015】
処理空間205には、基板Sを支持する基板支持部210が配される。基板支持部210は、基板Sを載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212、基板載置台212内に設けられた加熱源としてのヒータ213を主に有する。ヒータ213は基板載置台ヒータとも呼ぶ。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0016】
基板載置台212内には、ヒータ213の温度を測定する第一の温度測定器である温度測定器216を有する。温度測定端器216は、配線220を介して第一の温度測定部である温度測定部221に接続される。
【0017】
ヒータ213には、電力を供給するための配線222が接続される。温度測定器216はヒータ制御部223に接続される。
【0018】
温度測定部221、ヒータ制御部223は後述するコントローラ400に電気的に接続されている。コントローラ400は、温度測定部221で測定した温度情報をもとにヒータ制御部221に制御情報を送信する。ヒータ制御部223は受信した制御情報を参照し、ヒータ213を制御する。
【0019】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、容器202の底部を貫通しており、さらに容器202の外部で昇降部218に接続されている。
【0020】
昇降部218はシャフト217を支持する支持軸218aと、支持軸218aを昇降させたり回転させたりする作動部218bを主に有する。作動部218bは、例えば昇降を実現するためのモータを含む昇降機構218cと、支持軸218aを回転させるための歯車等の回転機構218dを有する。
【0021】
昇降部218には、昇降部218の一部として、作動部218bに昇降・回転指示するための指示部218eを設けても良い。指示部218eはコントローラ400に電気的に接続される。指示部218eはコントローラ400の指示に基づいて、作動部218bを制御する。
【0022】
昇降部218を作動させてシャフト217および基板載置台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置される基板Sを昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、これにより処理空間205内は気密に保持されている。
【0023】
基板載置台212は、基板Sの搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口148に対向するポジションまで下降し、基板Sの処理時には、
図1で示されるように、基板Sが処理空間205内の処理位置となるまで上昇する。
【0024】
処理空間205の上部(上流側)には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド(SHとも呼ぶ)230が設けられている。シャワーヘッド230の蓋231には貫通孔231aが設けられる。貫通孔231aは後述する共通ガス供給管242と連通する。シャワーヘッド230内には、バッファ空間232が構成される。
【0025】
バッファ空間232には、整流板270が設けられている。整流板270は、ガス導入口241を中心としてウエハ200の径方向に向かうにつれ径が広がる円錐形状である。整流板270のエッジ下端は、基板Sの端部よりも外周に位置する様に構成される。整流板270は、供給されたガスを後述する分散板234方向に効率よく移動させる構成である。整流板270の詳細は後述する。
【0026】
シャワーヘッド230には電極251が設けられる。電極251は金属製であり、分散板234よりも熱伝導率が高い構成となっている。電極251は、貫通孔231aを中心に円周状に構成される。
【0027】
電極251には配線252を介してプラズマ制御部283が接続される。プラズマ制御部253からの指示によりシャワーヘッド230内処理空間205中に、後述するクリーニングガスのプラズマを生成する。
【0028】
上部容器202aはフランジを有し、フランジ上に支持ブロック233が載置され、固定される。支持ブロック233はフランジ233aを有し、フランジ233a上には分散板234が載置され、固定される。更に、蓋231は支持ブロック233の上面に固定される。
【0029】
続いて、
図2を用いてガス供給系を説明する。
共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245a、第四ガス供給管248aが接続されている。
【0030】
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。
【0031】
第一ガス源243bは第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、例えばシリコン含有ガスである。本態様では、シリコン含有ガスとして、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6。HCDとも呼ぶ。)ガスを用いる例を説明する。
【0032】
主に、第一ガス供給管243a、マスフローコントローラ243c、バルブ243dにより、第一ガス供給系243(シリコン含有ガス供給系ともいう)が構成される。
【0033】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管244aには、上流方向から順に、第二ガス源244b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)244c、及び開閉弁であるバルブ244dが設けられている。
【0034】
第二ガス源244bは第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。
【0035】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本態様では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスであり、アンモニア(NH3)ガスを用いる例を説明する。
【0036】
基板Sをプラズマ状態の第二ガスで処理する場合、第二ガス供給管にリモートプラズマユニット244eを設けてもよい。
【0037】
主に、第二ガス供給管244a、マスフローコントローラ244c、バルブ244dにより、第二ガス供給系244(反応ガス供給系ともいう)が構成される。第二ガス供給系244にプラズマ生成部を含めてもよい。
【0038】
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び開閉弁であるバルブ245dが設けられている。
【0039】
第三ガス源245bは不活性ガス源である。不活性ガスは、例えば、窒素(N2)ガスである。
【0040】
主に、第三ガス供給管245a、マスフローコントローラ245c、バルブ245dにより、第三ガス供給系245が構成される。
【0041】
不活性ガス源245bから供給される不活性ガスは、基板処理工程では、容器202やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。
【0042】
第四ガス供給管248aには、上流方向から順に、第四ガス源248b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)248c、及び開閉弁であるバルブ248dが設けられている。
【0043】
第四ガス源248bはクリーニングガス源である。クリーニングガスは、例えばNF3やF2ガスである。
【0044】
主に、第四ガス供給管248a、マスフローコントローラ248c、バルブ248dにより、第三ガス供給系248が構成される。
【0045】
第四ガス源248bから供給されるクリーニングガスは、処理室201やシャワーヘッド230内をクリーニングする際にプラズマ状態とされる。プラズマ状態のクリーニングガスは容器202やシャワーヘッド230内に留まった副生成物を除去する。
【0046】
処理空間205は、排気バッファ構造261を介して排気管262が連通される。排気バッファ構造261は基板Sの外周を囲むように円周状に設けられれる。本態様においては、仕切り板208と上部容器202aの間に配される。
【0047】
排気管262は、排気バッファ構造261を介して処理空間205に連通するよう、排気バッファ構造261の上部側であって、上部容器202aに接続される。排気管262には、処理空間205内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)266が設けられる。APC266は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ400からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。
【0048】
排気管262においてAPC266の上流側にはバルブ267が設けられる。排気管262とバルブ267、APC266をまとめて排気系と呼ぶ。さらに、排気管262の下流には、DP(Dry Pump。ドライポンプ)269が設けられる。DP269は、排気管262を介して、処理空間205の雰囲気を排気する。
【0049】
分散板234を介して処理空間205に供給されたガスは、基板Sに接触した後に、排気バッファ構造261に移動され、排気管262から排気される。このガスの流れにおいては、分散板234の中心部下方の圧力は、分散板234のエッジ部下方の圧力よりも高くなる。中心部下方の場合、排気バッファ空間261にガスが逃げにくいために滞留し、エッジ部下方では排気ポンプ269の影響でガスが逃げやすいためである。このように分散板234の中心部下方ではガスが滞留するため、加熱されたガスの影響を受けて温度が高くなる。分散板234のエッジ部下方と比べた場合、エッジ部の温度は中心温度よりも低くなる。
【0050】
続いて、
図3、
図4を用いて整流板270の詳細構造を説明する。整流板270には、シャワーヘッドヒータ271が設けられており、整流板270、バッファ空間232内の雰囲気、分散板234、蓋231の少なくとも何れかを加熱可能に構成される。シャワーヘッドヒータ271はシャワーヘッドヒータまたは整流部加熱部とも呼ぶ。
【0051】
図3に示す様に、シャワーヘッドヒータ271は分割されて構成され、ゾーン毎(中心部271a,中間部271b,エッジ部271c)に加熱可能に構成される。
【0052】
図3の下図は整流板270に設けられたシャワーヘッドヒータ271をウエハ200側から見た図を示す。図のように、シャワーヘッドヒータ271は、複数のゾーンで構成される。そのうちの一つのゾーン、例えば中間部271bは電極251の下方に配されるよう構成される。このような構成とすることで、電極251の下方部分で局地的に温度が異なったとしても、分散板234の表面(基板Sと向かい合う面)の温度が均一になるよう制御される。
【0053】
続いて、
図4を用いてシャワーヘッドヒータ271の周辺の構成について説明する。シャワーヘッドヒータ271には、ゾーンごとに電力供給線2811が接続されており、ゾーンごとにシャワーヘッドヒータ271の温度を制御可能としている。電力供給線2811はシャワーヘッドヒータ271に電力を供給する電力供給制御部2812に接続される。
【0054】
具体的には、中心部271aには電力供給線2811aが接続され、中間部217bには電力供給線2811bが接続され、エッジ部271cには電力供給線2811cが接続される。更に、電力供給線2811aは電力供給制御部2812aに接続され、電力供給線2811bは電力供給制御部2812bに接続され、電力供給線2811cは電力供給制御部2812cに接続される。
【0055】
温度制御部としての電力制御部2812(電力供給制御部2812a、電力供給制御部2812b、電力供給制御部2812c)は、配線2813を介してコントローラ400に電気的に接続される。コントローラ400は電力制御部2812に対して、シャワーヘッドヒータを制御するための電力値(設定温度データ)を送信し、それを受信した電力制御部2812はその情報に基づいた電力をシャワーヘッドヒータ(中心部271a、中間部217b、エッジ部271c)に供給し、シャワーヘッドヒータの温度を制御する。
【0056】
更には、シャワーヘッドヒータ271の近傍には、各ゾーンに対応した温度検出部2821が設けられる。温度検出部2821は、配線2822を介して温度測定部2823に接続されており、ゾーンごとの温度を検出可能としている温度測定部2823は、配線2824を介してコントローラ400に接続される。
【0057】
具体的には、中心部271a近傍には温度検出部2821aが設けられる。温度検出部2821aは、配線2822aを介して第2温度測定部2823aに接続される。中間部271b近傍には温度検出部2821bが設けられる。温度検出部2821bは、配線2822bを介して第2温度測定部2823bに接続される。エッジ部271c近傍には温度検出部2821cが設けられる。温度検出部2821cは、配線2822cを介して第3温度測定部2823cに接続される。
【0058】
基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ400を有している。
【0059】
コントローラ400の概略を
図5に示す。制御部(制御手段)であるコントローラ400は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、記憶装置としての記憶部403、I/Oポート404を備えたコンピュータとして構成されている。RAM402、記憶部403、I/Oポート404は、内部バス405を介して、CPU401とデータ交換可能なように構成されている。基板処理装置100内のデータの送受信は、CPU401の一つの機能でもある送受信指示部406の指示により行われる。
【0060】
上位装置294にネットワークを介して接続されるネットワーク送受信部293が設けられる。ネットワーク送受信部293は、ロット中の基板Sの処理履歴や処理予定に関する情報等を受信することが可能である。
【0061】
記憶部403は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶部403内には、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ409や、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム410が読み出し可能に格納されている。さらに、後述する第一シャーヘッド温度テーブル411、第二シャーヘッド温度テーブル412、制御値テーブル413が読み書き可能に格納されている。
【0062】
なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ400に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM402は、CPU401によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0063】
I/Oポート404は、ゲートバルブ149、昇降機構218、各圧力調整器、各ポンプ、ヒータ制御部223、プラズマ制御部253等、基板処理装置100の各構成に接続されている。
【0064】
CPU401は、記憶部403からの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置291からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部403からプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU401は、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ149の開閉動作、昇降機構218の昇降動作、温度測定部221、ヒータ制御部223、プラズマ制御部283、各ポンプのオンオフ制御、マスフローコントローラの流量調整動作、バルブ等を制御可能に構成されている。
【0065】
なお、コントローラ400は、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、DVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)292を用いてコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本技術に係るコントローラ400を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置292を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置292を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶部403や外部記憶装置292は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部403単体のみを含む場合、外部記憶装置292単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0066】
続いて、
図6用いて第一シャワーヘッド温度テーブル411について説明する。縦軸がロット番号を示し、横軸が基板番号に対応したSH温度を示す。テーブル中には、温度測定部2823が検出したシャワーヘッドの温度が記録される。ここでは、例えば温度測定部2823のうち、温度測定部2823bで検出したデータが記録される。
【0067】
ここでは、1ロットの処理枚数をm(mは任意数)枚とする。また、ロット数は、n+1(nは任意数)よりも多いことを示している。ところで基板の枚数はロットごとに異なる。例えば、第1ロットはm枚の基板を有しているが、第nロットではm-2枚の基板を有している。
【0068】
テーブル411には、後述する第一の温度測定工程S104で測定したシャワーヘッド230の温度が記録される。第一の温度測定工程S104では、例えばロット中の最後の基板処理にてシャワーヘッド230の温度が測定される。言い換えれば、後述する次ロット処理設定工程S108の前の基板処理で測定される。第1ロットであれば、m枚目の基板処理で測定され、第nロットであればm-2枚目の基板処理で測定される。
【0069】
続いて、
図7を用いて第二シャワーヘッド温度テーブル412について説明する。直前に処理されたロット番号の情報と、それに対応するSH温度情報を示す。SH温度情報は後述する第二の温度測定工程S114で測定したSHの温度情報である。テーブル中には、温度測定部2823が検出したシャワーヘッド230の温度が記録される。
【0070】
続いて、
図8を用いてシャワーヘッドヒータ271の制御値テーブル413を説明する。ここでは後述するΔtに対応するシャワーヘッドヒータ271の制御値を示している。Ca0、Ca1、Ca2、Ca3は中心部271aの制御値、Cb0、Cb1、Cb2、Cb3は中間部271bの制御値、Cc0、Cc1、Cc2、Cc3はエッジ部271cの制御値を示している。Ca0、Cb0、Cc0は初期値である。Ca3、Cb3、Cc3に近づくほどヒータを高い温度で制御する。
【0071】
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて基板S上に薄膜を形成する工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ400により制御される。
【0072】
まず、
図9を用いてロット単位の基板処理工程を説明する。
【0073】
(第nロット処理工程S102)
第nロット処理工程S102を説明する。
ここではn=1以上である。
【0074】
第nロット処理工程S102では、第nロットの基板Sを処理する。ここでは、第nロット中の所定枚数の基板Sを、処理空間205にて成膜処理する。成膜処理する際は、分散板234が面内、具体的には基板Sと対向する面が均一に加熱されるよう、シャワーヘッドヒータ271を所望温度に加熱する。
【0075】
シャワーヘッドヒータ271による加熱は、次のように行われる。前述のように、分散板234のエッジ部は中央に比べて温度が下がりやすい構造となっている。また、分散板234の中心部下方にはガスが滞留するため、分散板234中心部はその影響を受けて熱が高くなることがある。
【0076】
このような状況の中、分散板234を均一に加熱するよう、エッジ部271cの温度が中央部271aよりも温度が高くなるよう、シャワーヘッドヒータ271を制御する。このように制御することで、分散板234のエッジ側の温度の低下を補うことができ、分散板234を均一に加熱できる。
【0077】
各領域は、制御値テーブル413の初期値Ca0、Cb0、Cc0で制御される。
【0078】
成膜が終了したら、次の基板Sと入れ替えるため、処理済みの基板Sを基板処理装置100から搬出し、その後未処理の基板Sを搬入する。成膜処理の詳細は後述する。
【0079】
(第一の温度測定工程S104)
続いて第一の温度測定工程S104を説明する。
第一の温度測定工程S104では、温度検出部2821が第nロット処理工程S102中のシャワーヘッド230の温度を測定する。具体的には、分散板234の温度を測定する。温度測定部2823は温度検出部2821が測定した測定値を、基準データとしてシャワーヘッド温度テーブル411に記録する。ここでは、例えば温度検出部2821bが検出し、温度測定部2823bがシャワーヘッド温度テーブル411に記録する。
【0080】
次に、温度を検出するタイミングについて説明する。
前述のように、第nロット処理工程S102では、複数の基板Sが処理される。本工程は、例えば第nロットの最後の基板処理の直後に行われる。第1ロットであれば、m枚目の基板処理の直後で測定され、第nロットであればm-2枚目の基板処理の直後で測定される。このようなタイミングで検出することで、安定して温度を検出することができる。なお、本工程は、例えばロットの最後の基板処理と並行して行ってもよい。
【0081】
(判定S106)
続いて判定S106を説明する。
第nロット処理工程S102および第一の温度測定工程S104が終了したら、判定S106に移動する。ここでは、所定ロット数処理したか否かを判断する。所定ロット数処理したと判断されたら、処理を終了する。所定ロット数処理していないと判断されたら、次の次ロット処理設定工程S108に移動する。
【0082】
(次ロット処理設定工程S108)
続いて次ロット処理設定工程S108を説明する。
ここでは、次に処理するロットに対応できるよう基板処理装置100を設定する。例えば第nロットを処理していた場合、第n+1ロットを処理可能なよう、設定する。設定の一例としては、第n+1ロットの基板Sが格納されているFOUPに搬送ロボットがアクセス可能なよう切り替える。
【0083】
なお、ここでは第nロットの基板Sを基板処理装置100から搬出した後であるため、基板載置台212は搬送ポジションに待機した状態である。なお、次ロット処理設定工程S108は、単に設定工程とも呼ぶ。
【0084】
(判定S110)
判定S110を説明する。ここでは、基板処理装置100のメンテナンスが必要かどうかを判断する。メンテナンスでは、例えば処理空間205を構成する処理室の壁や分散板234に付着した副生成物等で構成される付着物を除去する。除去することで、基板Sを処理する際に、副生成物の影響を受けないようにする。
【0085】
したがって、本判定では、副生成物の影響を受けないようであればNoと判断し、副生成物の影響を受けるようであればYesと判断する。なお、副生成物の影響に関する定量的な基準としては、例えば基板の処理枚数や、装置の稼働時間、ガスの供給時間等で判断する。
【0086】
判定S110でYesと判断されたら、メンテナンス工程S112に移動する。判定S110でNoと判断されたら、次のロット処理に移る。
【0087】
(メンテナンス工程S112)
判定S110でYesと判断されたら、メンテナンス工程S112に移動する。メンテナンス工程S112では、例えばドライエッチング等にて付着物を除去する。
【0088】
ところで、メンテナンス工程S112の後、シャワーヘッド230の温度が低下する。ヒータ213の稼働を停止したり、あるいは低温の液体やガス等を用いて付着物を除去したりするためである。
【0089】
メンテナンス工程S112にてシャワーヘッド230の温度が低下した場合、第一の態様と同様、前のロット処理と次のロット処理とで処理状況が異なる恐れがある。そこで、本態様では、後に温度調整工程S118を実施する。
【0090】
(第二の温度測定工程S114)
続いて第二の温度測定工程S114を説明する。
次ロット処理設定工程S108の後第二の温度測定工程S114を行う。具体的には、次ロットの基板Sを搬入する直前のシャワーヘッド230の温度を測定する。ここでは、温度検出部2821がシャワーヘッド230の一部である分散板234の温度を測定する。温度測定部2823は温度検出部2821が測定した測定値をシャワーヘッド温度テーブル412に記録する。ここでは、第一の温度測定工程S104と同じ検出条件とするよう、第一の温度測定工程S104で使用した温度検出部2821、温度測定部2823を使用する。例えば温度検出部2821bが検出し、温度測定部2823bがシャワーヘッド温度テーブル411に記録する。
【0091】
ところでロット間において、分散板234の温度低下にはばらつきが発生することがある。その理由としては、例えば次ロット処理設定工程S108の時間が異なる場合や、あるいは前のロットである第nロットでの温度にばらつきがある場合等が考えられる。
【0092】
(温度差算出工程S116)
続いて、温度差算出工程S116を説明する。
ここでいう温度差とは、
図8に記載のΔtであり、第一の温度測定工程S104で測定した温度と、第二の温度測定工程S114で測定した温度の温度差をいう。
【0093】
例えば、テーブル411のロット番号nにおける温度と、テーブル412の直前に処理されたロット番号nにおける温度との差分を算出する。
【0094】
(判定S118)
続いて判定S118を説明する。
前述したように、シャワーヘッド230の温度が低下した場合、基板処理状況の再現性について懸念がある。例えば、第nロット処理の最後に処理した基板Sと、第n+1ロットの最初に処理した基板Sとでは、シャワーヘッドの温度が異なってしまう場合がある。
【0095】
シャワーヘッド230は基板Sの近傍に配置されているため、その温度は基板Sに影響を与える。特に分散板234は基板Sの表面と対向するものであり、分散板234の温度が低下すると基板処理に影響を及ぼす。分散板234の温度が部分的に低下した場合、基板Sの面内処理の均一化にも影響を与える。
【0096】
特に、分散板234のエッジ部は排気バッファ構造に近いため熱が奪われやすく、したがって分散板234のエッジ部は、分散板234の中心よりも温度が低くなる。
【0097】
このような影響があるので、シャワーヘッド230の温度が異なると、基板Sの膜質が異なってしまう。そこで、本態様においては、後述する温度調整工程S120を実施する。本工程では、温度調整工程S120の必要性について判定する。
【0098】
温度調整工程S120の必要性については、
図8のテーブルを用いて判定する。例えばΔtが5℃以下であれば、温度のばらつきが基板処理に影響しないとみなし、後述する温度調整工程S120が必要ないと判断する。必要ないと判断されたら、第n+1ロットにおける第nロット処理工程S102に移行し、基板Sの処理を開始する。例えばΔtが5℃より大きい場合、温度調整工程S120が必要であると判断し、温度調整工程S120に移動する。
【0099】
(第一温度調整工程S120)
続いて温度調整工程S120について説明する。
前述のように、次ロットに切り替える際はシャワーヘッド230の温度が低下するため、その後に処理する基板Sの処理状況が、前のロットの処理状況と異なってしまう。そこで本工程では、シャワーヘッド230の温度を、前のロットと同程度の温度に調整する。以下に具体的な方法を説明する。
【0100】
前述のように、Δtが所定温度よりも高い場合、そのΔtに応じてシャワーヘッド230を加熱する。コントローラ400は、読み出された制御値でシャワーヘッドヒータ271を制御して、シャワーヘッド230の温度を所定温度に加熱する。
【0101】
このときΔtに応じて、分散板234中心の下方領域が基板処理に対応した温度であり、分散板234のエッジ部が中心よりも高い温度、すなわち基板処理に対応した温度よりも高い温度となるよう制御する。
【0102】
続いて、本態様の温度調整工程S120を説明する。ここでは、
Δtが所定温度よりも高い場合、そのΔtに応じてシャワーヘッド230を加熱する。コントローラ400は、読み出された制御値でシャワーヘッドヒータ271を制御して、シャワーヘッド230の温度を所定温度に加熱する。このときΔtに応じて、分散板234中心の下方領域が基板処理に対応した温度であり、分散板234のエッジ部が中心よりも高い温度、すなわち基板処理に対応した温度よりも高い温度となるよう、Ca1、Ca2、Ca3、Cb1、Cb2、Cb3、Cc1、Cc2、Cc3は設定される。
【0103】
このように分散板234の上方にヒータ271を設けることで、より確実に分散板234の温度を制御できる。したがって、メンテナンス工程があったとしても基板面内及びロット間での基板温度を調整できるので、より確実にばらつきのない処理が可能となる。分散板234の温度分布が均一になったら、第二温度調整工程S122に移動する。
【0104】
このとき次の理由により分散板234の中心部分の温度をエッジ部よりも高くすることが望ましい。その理由は、シャワーヘッドヒータ271と分散板234との位置関係によるものである。
【0105】
図1に記載のように、整流板270は、分散板234の中心部とエッジ部とでは距離が異なる。具体的には、中心部では距離が遠く、エッジ部では距離が短くなるよう構成されている。このような構造であるため、シャワーヘッドヒータ271は、分散板234の中心では距離が遠く、エッジ部では距離が短くなる。従って、中心部のシャワーヘッドヒータ271の影響は、エッジ部に比べて弱くなる。更に、第一温度調整工程S120は基板載置部210が搬送ポジションに待機しており、分散板234はヒータ213の影響を受けにくい。
【0106】
このような事情から、分散板234の中心部はエッジ部よりも温度が低くなってしまう。そこで、本工程では、分散板234の中心部分の温度をエッジ部よりも高くする。
【0107】
(第二温度調整工程S122)
続いて第二温度調整工程S122を説明する。
第一温度調整工程S122により分散板234の温度分布が均一になったら、シャワーヘッドヒータ271を膜処理工程S102に対応可能なよう設定する。具体的には、分散板234の中心部の温度をエッジ部よりも低くなるよう設定する。例えば、初期値であるCa0、Cb0、Cc0に設定する。このように事前に設定することで、本工程において分散板234のエッジ部の温度が低下しようとしても、分散板234の温度分布を均一にできる。
【0108】
(次ロット処理移行工程S124)
続いて次ロット処理移行工程S124を説明する。第二温度調整工程S122が終了したら、もしくは判定S110、118で温度調整不要と判断されたら、次ロット処理移行工程S124に移動する。
【0109】
ここでは、次ロット処理設定工程S108の設定に基づいて基板処理装置100を制御する。例えば、次ロットの基板Sを基板処理装置100に搬入する。
【0110】
このように、次ロットの最初の基板S(1)を搬入する前に、前に処理したロットの最後の基板S(m)の処理温度に近づけることで、基板Sの処理のばらつきを無くすことができる。
【0111】
特に、第一温度調整工程S120で分散板234の中心部の温度がエッジ部よりも高くなるよう制御しているので、エッジ部が過度に高くなることなく、分散板234を均一に加熱することができる。更に第二温度調整工程S122で分散板234のエッジ部の温度が中心部よりも高くなるよう加熱しているので、膜処理工程S102において基板面内のばらつきをなくすことができ、したがってロット間のばらつきも無くすことができる。
【0112】
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて、基板S上に薄膜を形成する工程について、
図10を用いて説明する。この工程は、第nロット処理工程S102の内、一枚の基板処理を行う工程である。すなわち、第nロット処理工程S102では、膜処理工程をロットの基板処理枚数分繰り返す。
【0113】
ここでは、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてジクロロシラン(SiH2Cl2、略称DCS)ガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてアンモニア(NH3)ガスを用いて、それらを交互に供給することによって基板S上に半導体系薄膜としてシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。
【0114】
(基板搬入載置工程)
基板載置台212を基板Sの搬送位置(搬送ポジション)まで下降させ、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。これらの動作と並行して、搬送空間206の雰囲気を排気し、隣接する真空搬送室(図示せず)と同圧、あるいは隣接する真空搬送室の圧力よりも低い圧力とする。
【0115】
続いて、ゲートバルブ149を開いて、搬送空間206を隣接する真空搬送室と連通させる。そして、この真空搬送室から図示しない真空搬送ロボット用いて基板Sを搬送空間206に搬入する。
【0116】
(基板処理ポジション移動工程)
所定の時間経過後、基板載置台212を上昇させ、基板載置面211上に基板Sを載置し、さらに
図1のように、基板処理ポジションまで上昇させる。
【0117】
(第一の処理ガス供給工程S202)
基板載置台212が基板処理ポジションに移動したら、排気管262を介して処理室201から雰囲気を排気して、処理室201内の圧力を調整する。
【0118】
所定の圧力に調整しつつ、基板Sの温度が所定の温度、例えば500℃から600℃に到達したら、共通ガス供給管242から第一処理ガスを処理室に供給する。このとき、排気管262を介して雰囲気を排気する。供給されたDCSガスは基板S上にシリコン含有層を形成する。
【0119】
このとき、第二温度調整工程S122に引き続き、分散板234中心の下方領域が基板処理に対応した温度であり、分散板234のエッジ部が中心よりも高い温度、すなわち基板処理に対応した温度よりも高い温度となるよう制御する。
【0120】
(パージ工程:S204)
第一処理ガスの供給を停止した後は、第三ガス供給管245aから不活性ガスを供給し、処理空間205のパージを行う。これにより、第一の処理ガス供給工程S202で基板Sに結合できなかった第一処理ガスは、排気管262を介して処理空間205から除去される。
【0121】
パージ工程S204では、基板S、処理空間205、バッファ空間232に残留した第一処理ガスを排除するために、大量のパージガスを供給して排気効率を高める。
【0122】
(第二の処理ガス供給工程:S206)
バッファ空間232および処理空間205のパージが完了したら、続いて、第二の処理ガス供給工程S206を行う。第二の処理ガス供給工程S206では、バルブ244dを開けて、リモートプラズマユニット244e、シャワーヘッド230を介して、処理空間205内へ第二の処理ガスの供給を開始する。このとき、第二処理ガスの流量が所定流量となるように、MFC244cを調整する。第二処理ガスの供給流量は、例えば1000~10000sccmである。また、第二の処理ガス供給工程S206においても、第三ガス供給系のバルブ245dは開状態とされ、第三ガス供給管245aから不活性ガスが供給される。このようにすることで、第二処理ガスが第三ガス供給系に侵入することを防ぐ。
【0123】
リモートプラズマユニット244eでプラズマ状態とされた第二処理ガスは、シャワーヘッド230を介して、処理空間205内に供給される。供給された第二処理ガスは、基板S上のシリコン含有層と反応する。そして、既に形成されているシリコン含有層が第二処理ガスのプラズマによって改質される。これにより、基板S上には、例えばシリコン窒化層(SiN層)が形成されることになる。
【0124】
第二処理ガスの供給を開始してから所定時間経過後、バルブ244dを閉じ、第二処理ガスの供給を停止する。第二処理ガスの供給時間は、例えば2~20秒である。
【0125】
(パージ工程:S208)
第二処理ガスの供給を停止した後は、上述したパージ工程S204と同様のパージ工程S208を実行する。パージ工程S208における各部の動作は、上述したパージ工程S204と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0126】
(判定工程:S210)
以上の第一の処理ガス供給工程S202、パージ工程S204、第二の処理ガス供給工程S206、パージ工程S208を1サイクルとして、コントローラ400は、このサイクルを所定回数(nサイクル)実施したか否かを判定する。サイクルを所定回数実施すると、基板S上には、例えば所望膜厚のSiN層が形成される。
【0127】
(基板搬出工程)
所望の膜厚の層が形成されたら、基板載置台212を下降させ、基板Sを搬送ポジションに移動する。搬送ポジションに移動後、搬送空間206から基板Sを搬出する。
【0128】
以上説明したように、本態様によれば、メンテナンス工程があったとしても基板面内及びロット間での基板温度を調整できるので、ばらつきのない処理が可能となる。
【0129】
[第二態様]
続いて第二態様を説明する。第二態様は、メンテナンス工程S110と温度調整工程S120が第二態様と異なる。以下、相違点を中心に説明し、第一態様と同じ構成は説明を省略する。
【0130】
続いて、本態様の温度調整工程S120を説明する。
電極251は金属であるため、熱の吸収率が高く、したがって局地的に温度を低くしてしまう場合が考えられる。その場合、電極251下方の領域のシャワーヘッドヒータ271の温度をより高くするよう制御する。例えば、
図1、
図3においては電極251の下方に配されている中間部271bの温度を、電極251によって温度が下がる分、補填するよう制御する。例えば、電極251の下方領域は、他の領域よりも温度が高くなるようシャワーヘッドヒータ271が制御される。
【0131】
以上説明したように、本態様によれば、メンテナンス工程があったとしても基板面内及びロット間での基板温度を調整できるので、ばらつきのない処理が可能となる。
【0132】
[他の態様]
以上に、各態様を具体的に説明したが、上述の各態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0133】
例えば、上述した各態様では、第一の温度測定工程S104、第二の温度測定工程S114において温度検出部2821b、温度測定部2823bを用いてシャワーヘッドの温度を検出したが、それに限るものではなく、複数の温度検出部2821、温度測定部2823を使用してもよい。この場合、より正確に分散板234の温度分布を検出できるので、より確実に分散板234の温度分布を均一にできる。
【0134】
例えば、上述した各態様では、基板処理装置が行う成膜処理において、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてDCSガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてNH3ガスを用いて、それらを交互に供給することによって基板S上にSiN膜を形成する場合を例に挙げたが、これに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、DCSガスやNH3ガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、各態様を適用することが可能である。具体的には、第一元素としては、Siではなく、例えばTi、Zr、Hf等、種々の元素であってもよい。また、第二元素としては、Nではなく、例えばAr等であってもよい。
【0135】
また、例えば、上述した各態様では、基板処理装置が行う処理として成膜処理を例に挙げたが、本態様がこれに限定されることはない。すなわち、各態様で例に挙げた成膜処理の他に、各態様で例示した薄膜以外の成膜処理にも適用できる。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、拡散処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理を行う場合にも適用できる。さらに、さらに、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、エッチング装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも適用できる。また、これらの装置が混在していてもよい。また、ある態様の構成の一部を他の態様の構成に置き換えることが可能であり、また、ある態様の構成に他の態様の構成を加えることも可能である。また、各態様の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0136】
以下、本開示の望ましい形態について付記する。
【0137】
(付記1)
処理室に基板を搬入する搬入工程と、
前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドが備えた分散板をシャワーヘッドヒータで加熱しつつ、前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給すると共に、前記処理室から前記ガスを排気する膜処理工程と、
前記基板を前記処理室から搬出する搬出工程と、
次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定する温度測定工程と、
前記温度測定工程の後、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、その差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する温度調整工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0138】
(付記2)
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程での前記分散板のエッジ部の温度が、前記温度調整工程の前記エッジ部の温度よりも高くなるよう加熱する
付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0139】
(付記3)
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程での前記分散板の中心温度が、前記膜処理工程での前記分散板のエッジ部の温度よりも低くなるよう加熱する
付記1または付記2に記載の半導体装置の製造方法。
【0140】
(付記4)
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程では、前記分散板のエッジ部の温度を中央の温度よりも高くなるよう加熱する付記1から付記3のうち、いずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0141】
(付記5)
前記シャワーヘッドヒータは、
前記温度調整工程では、前記分散板の中央の温度がエッジ部よりも高くなるよう加熱する付記1から付記4のうち、いずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0142】
(付記6)
前記シャワーヘッドのうち、前記分散板の上方には電極が設けられ、
前記シャワーヘッドヒータは、
前記膜処理工程では、前記電極の下方領域は他の領域よりも温度が高くなるよう制御される付記1から付記5のうち、いずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0143】
(付記7)
前記膜処理工程で処理される前記基板は第nロットの基板であり、次に処理される前記基板は第n+1ロットの基板である付記1から付記6のうち、いずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0144】
(付記8)
前記膜処理工程で処理される前記基板と、次に処理される前記基板との間ではメンテナンス工程が行われる付記1から付記7のうち、いずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0145】
(付記9)
基板を処理する処理室と、
前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドに備えられた分散板と、
前記分散板を加熱可能なシャワーヘッドヒータと、
前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給するガス供給部と、
前記処理室から前記ガスを排気する排気部と、
前記シャワーヘッドの温度を測定する温度測定部と、
次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定し、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、それらの差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【0146】
(付記11)
処理室に基板を搬入する手順と、
前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドが備えた分散板をシャワーヘッドヒータで加熱しつつ、前記分散板を介して前記処理室内の前記基板にガスを供給すると共に、前記処理室から前記ガスを排気する膜処理手順と、
前記基板を前記処理室から搬出する手順と、
次に処理する前記基板の搬入前に前記シャワーヘッドの温度を測定する手順と、
前記温度を測定する手順の後、前記シャワーヘッドの温度と予め設定された温度情報とを比較し、その差分が所定値よりも大きい場合、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッドヒータを稼働させ、前記予め設定された温度に近づけるよう制御する手順とを、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0147】
100…基板処理装置、 200…基板、400…コントローラ