(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022053985
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20220330BHJP
【FI】
A23L7/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160914
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 肇
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
(72)【発明者】
【氏名】町田 多恵
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB09
4B046LC02
4B046LE15
4B046LE18
4B046LG04
4B046LG21
4B046LG29
4B046LG33
4B046LG60
4B046LP01
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】冷蔵保管時に中華麺の弾力性ある食感を維持できるとともに電子レンジ加熱時に乾燥しにくい電子レンジ加熱用冷蔵調理麺食品を提供すること。
【解決手段】容器内に、スープと、調理済み中華麺の麺塊と、該麺塊の上部に位置する具材とが配置された容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品であって、
前記麺塊の厚さ方向に該麺塊及び前記具材を投影視したとき、該麺塊の全面積中、70%以上を該具材が覆っており、
前記中華麺は、水分量が52~58質量%であり、且つ該中華麺の乾燥質量における粗タンパク質の割合が16.5~23質量%である、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に、スープと、調理済み中華麺の麺塊と、該麺塊の上部に位置する具材とが配置された容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品であって、
前記麺塊の厚さ方向に前記麺塊及び前記具材を投影視したとき、該麺塊の全面積中、70%以上を該具材が覆っており、
前記中華麺は、水分量が52~58質量%であり、且つ該中華麺の乾燥質量における粗タンパク質の割合が16.5~23質量%である、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【請求項2】
前記具材と前記中華麺との質量比が1:3~1:1である、請求項1記載の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【請求項3】
前記具材は、野菜類を主体とする、請求項1又は2に記載の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【請求項4】
前記中華麺は、乾物換算で、かんすいを0.1~1.8質量%含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【請求項5】
前記粗タンパク質中、小麦由来の粗タンパク質の割合が80質量%以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【請求項6】
ゲル化した前記スープの上面に前記麺塊が直接接した状態で配置されており、前記具材が該麺塊の上面に直接接した状態で配置されている、請求項1~5の何れか1項に記載の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品。
【請求項7】
容器内にスープと調理済み中華麺と具材とが配置された容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の製造方法であって、
前記調理済み中華麺として、水分量が52~58質量%であり且つ乾燥質量における粗タンパク質の割合が16.5~23質量%であるものを用い、
容器内に前記スープ及び前記中華麺の麺塊を配置する第1の工程と該容器内の該麺塊の上部に前記具材を配置する第2の工程とを有し、
前記第2の工程において、該第2の工程の後に前記麺塊の厚さ方向に前記麺塊及び前記具材を投影視したとき、該麺塊の全面積の70%以上を該具材が覆うように、該麺塊の上部に該具材を配置する、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品及びその製造方法に関する。
【0002】
従来、α化した乾麺と共に乾燥した具類を収納したカップやどんぶりに、熱湯を注いで戻すカップ麺が長年広く利用されてきた。一方で、近年、茹で麺又は蒸し麺などの調理麺とスープとが合成樹脂製の容器内に収容されて冷蔵され、電子レンジを使用して加熱して喫食される容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品も存在する。このような容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品は、茹で麺又は蒸し麺等の調理麺を使用し、電子レンジで温めるだけで専門店の味により近いものができるとして広く利用されるようになってきた。
【0003】
容器入りレンジ加熱用冷蔵麺食品の形態としては種々の製品が知られている。例えば特許文献1には、マイクロ波の吸収効率が低い食材にプルランなどのマイクロ波吸収促進剤を添加した冷蔵又は冷凍麺食品が記載されている。特許文献2には、孔の空いた中皿に凝固したスープを収容するとともに底部に生麺を収容し、電子レンジ加熱とともに、加熱されたスープが底部に移動して生麺を調理するようになされた電子レンジ用チルド麺が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-315553号公報
【特許文献2】特開2015-080439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子レンジ加熱用冷蔵調理麺食品として、中華麺を用いた食品が近年流通されている。中華麺は特に弾力性のある食感が求められる。ところが、電子レンジ加熱用冷蔵調理麺食品では茹で麺又は蒸し麺等の調理麺が冷蔵状態で一定期間保管されるところ、これらは茹でたて又は蒸したての麺と比較すると保管期間中に弾力感が低下してしまう問題がある。また調理麺はマイクロ波を吸収しやすく、電子レンジ加熱時に過加熱により部分的に乾燥しやすいという問題がある。
上記の課題は、特許文献1記載の技術によって十分解決できるものではない。
一方、特許文献2記載の技術では、生麺を用いるため、調理麺を電子レンジ加熱することに起因した上記の課題は生じないが、電子レンジで生麺を茹でるために長時間の調理が必要となり、消費者の手間が大きい問題がある。
【0006】
従って本発明の課題は、冷蔵保管時に中華麺の弾力性に優れた食感を維持できるとともに電子レンジ加熱時に乾燥しにくい電子レンジ加熱用冷蔵調理麺食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特に中華麺を用いた電子レンジ加熱用冷蔵調理麺食品について、弾力性を冷蔵保管時に維持しやすく且つ電子レンジの加熱時に乾燥しにくくするための構成を鋭意検討した。その結果、冷蔵保管時の弾力性の維持及び電子レンジ加熱による乾燥への耐性は、具材による中華麺の被覆の程度と、麺の水分量、麺中のタンパク質含量と関係があることを見出した。更に検討したところ、具材による中華麺の被覆の程度と、麺の水分量、麺中のタンパク質含量をそれぞれ特定の範囲とすることで、驚くべきことに麺の弾力性及び電子レンジ加熱による乾燥耐性を顕著に優れたものとできることを知見した。
【0008】
本発明は上記知見に基づくものであり、容器内に、スープと、調理済み中華麺の麺塊と、該麺塊の上部に位置する具材とが配置された容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品であって、
前記麺塊の厚さ方向に前記麺塊及び前記具材を投影視したとき、該麺塊の全面積中、70%以上を該具材が覆っており、
前記中華麺は、水分量が52~58質量%であり、且つ該中華麺の乾燥質量における粗タンパク質の割合が16.5~23質量%である、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品を提供するものである。
【0009】
また本発明は、容器内にスープと調理済み中華麺と具材とが配置された容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の製造方法であって、
容器内にスープと調理済み中華麺と具材とが配置された容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の製造方法であって、
容器内に前記スープ及び前記中華麺の麺塊を配置する第1の工程と、該第1の工程の後に該容器内の該麺塊の上部に前記具材を配置する第2の工程とを有し、
前記第2の工程において、該第2の工程の後に前記麺塊の厚さ方向に前記麺塊及び前記具材を投影視したとき、該麺塊の全面積の70%以上を該具材が覆うように、該麺塊の上部に該具材を配置する、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、特殊な容器を用いずとも、短時間の加熱で喫食できる利便性を有し、冷蔵保管時における麺の弾力性の維持と、電子レンジ加熱時による乾燥への耐性向上とを両立できる電子レンジ加熱用冷蔵調理麺食品を提供できる。また本発明の製造方法は、前記の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品を首尾よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず本発明の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品をその好ましい実施形態に基づき説明する。
容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品は容器として、上部開口を有する有底の容器本体を有する。容器本体は、カップ状、どんぶり状などの形状に形成することができる。また容器本体は、後述する麺、スープ及び具材を充分に収納することができる大きさに形成される。容器は更に、容器本体の開口部を閉塞可能な蓋体を有している。通常、容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品は蓋体を閉塞させた状態にて電子レンジで加熱されて喫食される。本発明の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品は、具材と中華麺との間にプラスチック製のシート又は中皿が介在しておらず、消費者に当該シート又は中皿を除去する手間を取らせないものである。冷蔵調理麺食品は冷蔵状態で保存される。冷蔵温度は通常0℃超10℃以下である。
【0012】
上記容器本体及び蓋体は、電子レンジによる加熱に対して耐えることができる合成樹脂で形成される。例えば、発泡ポリスチレン、二軸延伸ポリスチレン等のポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドその他の合成樹脂で形成することができる。
【0013】
容器本体の内部には、中華麺、具材及びスープが収容されている。本発明においてスープの形状は、液状、ゲル状等が挙げられ、持ち運びされる用途が多いことから、ゲル状であることが好ましい。ゲル状スープは、液状のスープをゲル化剤によりゲル状にしたものであり、マイクロ波を用いた再加熱時に液化する。本発明の麺食品の種類としては通常、大分類としてラーメンに含まれるものであり、具体例としては、ちゃんぽん、ラーメン、タンメン、札幌ラーメン、博多ラーメン、喜多方ラーメン、担々麺、等複数の麺食品が挙げられる。
【0014】
本発明では、調理麺として調理済み中華麺の麺塊を用いる。調理済みとは、茹で又は蒸し等のα化処理がなされたものであることを指す。麺塊は、調理済みの中華麺の麺線の集合体であればよく、ほぐれの程度や平面視形状は限定されない。
【0015】
麺塊は、電子レンジ加熱に伴い少なくともその一部が液状のスープに浸漬可能な状態で存在していることが、電子レンジ加熱時の麺の乾燥を防止しやすい点や麺塊のほぐれやすさの点で好ましい。そのような状態としては、例えば上述したようにゲル化したスープに麺塊が隣接して配置された状態や、レンジ加熱に伴い可溶化するシートによりスープと麺塊とが分離されて配置された状態、孔の空いた中皿にゲル状のスープが配置され、その下部に麺塊が配された状態などが挙げられる。
【0016】
とりわけ本発明では、ゲル化したスープに麺塊が隣接して配置された状態であることが好ましい。これは電子レンジ加熱時の麺の乾燥が効果的に抑制できるほか、特殊なシートや中皿が不要であり、製造コストを低減できるほか、温めるだけでスープに麺塊が浸漬して喫食が容易である、麺塊がほぐれやすい等の利点があるためである。麺塊とスープが隣接している状態としては、両者が非混合状態で隣接した状態が挙げられ、例えばゲル化されたスープの上面側又は下面側に、麺塊がスープと接触した状態で配置されている状態が挙げられるが、とりわけゲル化した前記スープの上面に前記麺塊が直接接した状態で配置されていることが、麺塊へのゲル状スープからの水分移行を特に効果的に防止できる点で好ましい。
【0017】
スープのゲル化に用いるゲル化剤としては、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、その他の加熱によって溶解することができるものが使用される。後記するように電子レンジによる加熱によって容易に溶けるようにするにはゼラチンを使用すると好ましい。ゲル化剤はスープの量に対して、0.5~4質量%の量で使用することが、電子レンジ加熱における溶解を円滑に行う点、及び加熱後にスープ粘度が増加しすぎない点、喫食時の呈味への影響が少ない点で好ましく、より好ましくは、1~2質量%の量である。
【0018】
スープは水分量が60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
中華麺は通常、穀粉類を主体とする原料粉にかんすいを加えて混捏し、製麺機等により圧延した後、切り出しされて、蒸し又は茹で等の加熱調理をなされて製造される。穀粉類とは、穀粉及び澱粉の総称であり、一般的な麺類の主原料として通常用いられる穀粉類を特に制限無く用いることができる。穀粉としては、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉等、及びこれらの穀物粒の全粒紛やふすま等が挙げられる。澱粉としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、前記各種澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。これらの穀粉類は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中華麺は、穀粉類を主成分として含有することが好ましい。中華麺が穀粉類を主成分とするとは、中華麺中、乾物換算において、穀粉類の割合が、50質量%超であることを意味することが好ましく、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0020】
本発明においては、特に穀粉類の中でも、小麦粉を用いることが中華麺らしい硬さや弾力感ある食感をつくる点で好ましい。本発明では中華麺中、小麦粉の割合は、乾物換算にて、50質量%超であることが好ましく、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0021】
本発明において、中華麺は粗タンパク質が多い特定量であり、且つ水分量が特定であることに特徴の一つを有する。本発明者は特定条件の粗タンパク質含量及び水分量を採用することで電子レンジ加熱用冷蔵調理麺としたときに効果的に麺の弾力性を向上させることができ、且つ電子レンジ加熱による乾燥耐性も優れていることを見出した。
【0022】
具体的には中華麺は、中華麺の乾燥質量における粗タンパク質の割合が16.5~23質量%である。中華麺の乾燥質量における粗タンパク質の割合がこの範囲であることで、弾力感を効果的に向上させることができる。この観点から、中華麺の乾燥質量における粗タンパク質の割合は17.3~22.0質量%が好ましく、20.4~22.0質量%がより好ましい。
【0023】
乾燥質量とは、常圧加熱乾燥法(日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル[www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1368931.htm]を参照)に従って測定したときの質量をいう。また粗タンパク質含量の測定は日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル記載の燃焼法に基づいて測定することができる。
【0024】
本発明において全粗タンパク質含量のうち小麦由来の粗タンパク質の割合が80質量%以上であることが中華麺らしい硬さや弾力感がある食感をつくる点で好ましい。その他のタンパク質源としては、卵、大豆由来タンパク質が挙げられる。全粗タンパク質含量のうち小麦由来の粗タンパク質の割合は90質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
また、中華麺の乾燥質量における小麦由来の粗タンパク質の割合は、16.5~23質量%であることが好ましい。
【0025】
本発明において中華麺を上記の粗タンパク質含量を有するように調整する方法は種々挙げられるが、例えば原料粉中にグルテンを所定量で含有させる方法が挙げられる。グルテンを用いる場合、グルテンの使用量は、原料の固形分100質量部に対し、3質量部以上9質量部以下であることが上記粗タンパク質含量に調整しやすいため好ましく、7質量部以上9質量部以下であることがより好ましい。グルテンの由来としては穀粉由来が挙げられ、好適なものは小麦グルテンである。ここでいう原料の固形分とは常温常圧下における固形分量を指し、通常、原料中の水分及び液体油以外の成分の合計を指す。
【0026】
本発明では、中華麺は水分量が52~58質量%である。中華麺は上記の粗タンパク質含量を有するとともに水分量が52%以上であることで、電子レンジ加熱時の乾燥を効果的に抑制でき、弾力感の低下を防止できる。また水分量が58質量%以下であることで、弾力感を大幅に向上させることができる。この観点から、中華麺の水分量は好ましくは53質量%以上57質量%以下である。中華麺の水分量は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。なお、ゲル状のスープと中華麺が隣接するなどして局所的に水分が変動している場合、水分量の測定サンプル採取箇所は中華麺におけるスープと未接触の部分とする。
【0027】
本発明の中華麺を上記水分量に調整するためには、例えば中華麺を得る際の茹で時間を調整すればよい。茹で時間を増減することで麺の水分量の増減を容易に得られるため好適である。
【0028】
上述した通り、中華麺は、通常かんすいを用いて製造される。本発明で用いる中華麺の麺生地は、かんすいを液状状態で原料粉と混合して製造されたものでもよく、粉末状のかんすいを原料粉と混合した後に当該混合物と水分とを混合して製造されたものでもよい。液状のかんすいとしては、炭酸カリウム水溶液が知られている。また粉末状のかんすいとしては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、中華麺がかんすいを乾燥質量として、0.1~1.8質量%含有することが弾力性の高い中華麺が得やすい点や中華麺特有の香りの付与する点、中華麺らしい黄色味を与える点で好ましく、0.3~1.5質量%含有することがより好ましい。
【0029】
本発明において麺生地や麺線を作製するための原料としては、穀粉類(主原料)、かんすい及びグルテンに加えて、他の副原料を用いることができる。副原料としては、中華麺の製造に通常用いられるもので、且つ本発明の効果を損なわないものを特に制限なく用いることができ、例えば、大豆タンパク質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等のタンパク質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン等が挙げられ、中華麺の種類や要求する物性等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の他の副原料の量は、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されるものではないが、例えば中華麺100質量部中10質量部以下であることが中華麺らしい硬さや弾力感がある食感をつくる点で好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
中華麺の麺線の形状としては、太さを問わず効果は奏されるものの、弾力のある食感と電子レンジ加熱による乾燥への耐性とを一層両立しやすい点から、太麺であることが好ましい。中華麺は、その麺線の長手方向と交差する方向に沿う断面において、短手方向の幅が2mm以上であることが好ましい。断面における短手方向の幅とは、断面の長手方向と直交する方向の幅をいう。断面の長手方向とは、断面を横断する線分のうち最長の線分に沿う方向を指す。例えば、中華麺の断面の短手方向の幅としては、3.5mm以下であることが、喫食時の食べごたえがありすぎることを防ぐ点で好ましい。これらの点から、より好ましくは、中華麺の断面の短手方向の幅は2.0mm以上3.0mm以下である。また中華麺の断面の長手方向の長さは弾力ある食感を高める観点から、3.5mm以上が好ましく、喫食時の食べごたえがありすぎることを防ぐ観点から6.5m以下が好ましい。従って、中華麺が角麺の場合には、好適な角麺サイズとしては、茹で麺の断面の長辺が3.5~6.5mmで短辺2.0~3.5mmの麺が挙げられる。なお、中華麺の断面の短手方向の幅及び長手方向の長さは、任意の10箇所をシックネスゲージで測定した平均値とする。また前記の幅及び長さの測定サンプル採取箇所は中華麺におけるスープと未接触の部分とする。
【0031】
容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品中、中華麺は、スープ100質量部に対し、通常50質量部以上150質量部以下の量で用いられることが好ましく、より好ましくは、60質量部以上120質量部以下である。
【0032】
次いで容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の具材について説明する。
上記の通り本発明では中華麺の水分量が少ないため、過加熱による影響が大きいところ、中華麺を上記の水分量とした場合に具材により麺塊を70%以上の面積比率で被覆することで、電子レンジの過加熱による部分的乾燥を効果的に防止できることを見出した。その理由の一つとして、具材による被覆により、マイクロ波による麺部分の過加熱が抑制され、過剰な水分飛散が防止されるためと考えられる。本発明では、中華麺を上記比率で被覆することで容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品全体を効率的に温めることが可能となる。
【0033】
具材は、麺塊の厚さ方向への投影視において、麺塊の全面積の70%以上を具材が覆っており、麺塊の全面積の80%以上を具材が覆っていることが好ましく、90%以上を具材が覆っていることがより好ましい。麺塊の全面積の100%を具材が覆っていてもよい。
通常、容器内に配置された麺塊は、水平方向に広がった形状を有しており、麺塊の厚さ方向は、容器の高さ方向と一致する。
【0034】
「麺塊の全面積」とは、中華麺を麺塊の厚さ方向への投影視したとき(即ち麺塊の上面を平面視したとき)の麺塊の外縁内部分の全面積(麺線間を含めた面積)を指す。また「麺の全面積の70%以上を具材が被覆している」とは、具材及び麺塊を前記の厚さ方向に投影したときの、具材の投影像のうち、麺塊の投影像(麺線間を含めた麺塊の外縁内部分)と重複する全ての部分の面積の総和が70%以上であることを意味する。
前記の麺塊に対する具材の被覆率は、麺塊及び具材を撮像し、その画像データに基づき、画像解析ソフト(例えばNIH製、商品名「ImageJ」)を用いて常法に従って「麺塊の全面積」及び「麺塊における具材で覆われている部分の面積」を算出し、前者で後者を除することで算出される。
【0035】
具材は一般的なものであれば構わないが、水分量が比較的多く、中華麺を被覆することで中華麺の電子レンジ加熱による乾燥を一層防止しやすい具材として、野菜類を主体とすることが好ましい。野菜類としては、キャベツ、白菜、ほうれん草、シソ、シュンギク、レタス、コマツナ、チンゲンサイ、ブロッコリー等の葉菜類;カイワレ大根、もやし等の新芽菜類:アスパラガス等の茎菜類;にんじん、たまねぎ、ネギ、ショウガ、カブ、大根、ゴボウ、レンコン、にんにく等の根・地下茎・鱗茎類;ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、胡瓜などの果菜類;大豆、グリーンピース、そら豆等の豆類;マイタケ・シイタケ・マツタケ・エノキタケ・ブナシメジ・エリンギ・キクラゲ等のキノコ類;コーン等が挙げられる。
【0036】
野菜類を主体にするとは、野菜類が具材総量の50質量%以上を占めることを意味することが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。また野菜類の中でも、水分量が多い葉物類、新芽菜類の割合が具材総量の50質量%以上を占めることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。中華麺を被覆することで中華麺の電子レンジ加熱による乾燥を一層防止しやすい点から、具材中の水分量は好ましくは70質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上95質量%以下である。
【0037】
具材は、スープとは非混合状態で容器内に配置されることが好ましい。具材は、中華麺の麺塊の上部に配置されている。麺塊と直接接するように麺塊上に配置されていてもよく、ゲル状のスープ等を介して麺塊上に配置されていてもよい。例えば具材がゲル状のスープを介して麺塊上に配置されている場合においても、加熱によりスープが溶解し容器の底面に集まると、麺塊の表面の部分的な乾燥が起こりうるところ、具材により所定面積を被覆しておくことで、麺塊の部分的な乾燥を防止できる。
しかしながら、本発明では、具材は、麺塊と直接接するように麺塊上に配置されていることがゲル状のスープを麺塊上部に配置することで麺塊のなかにゲル状スープが入り込み水分移行してしまうことが特に効果的に抑制されるという理由から好ましい。
【0038】
具材と中華麺100との質量比は、具材:中華麺の質量比が1:3~1:1であることが、上記の被覆率により電子レンジの加熱による乾燥防止効果を一層高める点で好ましく、1:2~1:1であることがより好ましい。
【0039】
特に限定されるものではないが、本発明の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の典型的な例としては、例えば平面視したときの容器本体の直径(外径)が13.0~20.0cm、特に15.0~18.0cmであり、スープの重量は例えば150~350g、特に200~250gであり、中華麺の重量は100~350g、特に180~300gであり、具材の重量は50~250g、特に100~200gであり、電子レンジ加熱時間は500又は600Wであれば3~9分、特に4~7分である。
【0040】
次いで本発明の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の製造方法を説明する。
本製造方法では、まず調理麺として、水分量が52~58質量%であり且つ乾燥質量における粗タンパク質の割合が16.5~23質量%である中華麺を製造する。
更に本製造方法は、容器内に前記スープ及び前記中華麺の麺塊を配置する第1の工程と、該第1の工程の後に該容器内の該麺塊の上部に前記具材を配置する第2の工程とを有し、前記第2の工程において、該第2の工程の後に前記麺塊の厚さ方向に前記中華麺及び前記具材を投影視したとき、該中華麺の全面積の70%以上を該具材が覆うように、該麺塊の上部に該具材を配置する。
【0041】
上述した本発明の容器入りレンジ加熱用冷蔵調理麺食品の説明は、全て上記本製造方法に該当する。従って、中華麺の原料は上述した成分が挙げられる。中華麺における乾物換算における穀粉類の量、小麦粉の量、かんすいの量として上述した好ましい量を得るためには、原料固形分中の穀粉類の量、小麦粉の量、かんすいの量を、上述した中華麺の好ましい乾物換算量と同様の割合とすればよい。
【0042】
また第1工程において、容器内にはスープ中及び中華麺を配置する順番としてはそれらを配置する上下方向の位置に対応した順序とすればよい。例えばスープ及び中華麺をこの順で容器内の下から順に配置していく場合には、当該順序で容器内に配置すればよい。
【実施例0043】
(実施例1~10、比較例1~11)
中華麺を製造した。具体的には、表1~表3記載の配合の原料粉100質量部と水分(水35質量部及びかんすい(「青かんすい」オリエンタル酵母工業製)1質量部)とを混合し、ミキシング(高速4分間→低速7分間)して麺生地を調製した。該麺生地を製麺ロールにより圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#8角)で切り出して生中華麺(長辺3.8mm、麺厚(短辺)2.2mmの角麺)を製造した。なお原料粉中の粗タンパク質としては小麦グルテンを用いた。
得られた生中華麺を熱湯で、表1~表3記載の水分量となるように茹で、水洗冷却した。耐熱発泡ポリスチレン製の直径(外径)18cmの容器本体に、スープ(水分量85質量%、1.5質量%のゼラチンでゲル状にしたもの)を250g入れ、その上に、上記で得られた中華麺を250g充填した。その上に、茹でたキャベツ、もやし、にんにく、ネギからなる具材を0~150g、表1~表3記載の具材被覆率となるように充填した。具材被覆率は上記の方法で測定した、麺塊の厚さ方向(容器の高さ方向と同じ)に麺塊及び具材を投影視したときの麺塊の全面積中の具材の被覆率を指す。具材はその100質量%が野菜であり、そのうち葉物類、新芽菜類の割合が95質量%であった。具材の水分量は90質量%であった。各実施例及び比較例において、麺塊を被覆する面積当たりの具材量は一定とした。具材被覆率が100%である実施例2の具材量は150gであった。容器本体に蓋(二軸延伸ポリスチレン製)をした状態で、4℃24時間冷蔵静置した時点における中華麺の水分量及び粗タンパク質含量を以下の方法で測定した。また具材の水分量も同様の方法で測定した。
【0044】
(水分量及び乾燥質量の測定方法)
常圧加熱乾燥法(日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル[www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1368931.htm]を参照)に従って測定した。
【0045】
(粗タンパク質含量の測定方法)
粗タンパク質含量の測定は日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル記載の燃焼法に基づいて測定した。
【0046】
(評価)
実施例及び比較例で得られた麺食品について、具材を充填後、容器本体に蓋をした状態で、4℃24時間冷蔵静置した後、電子レンジで喫食可能な状態になるまで加熱した(500Wで6~7分程度)。
得られた加熱後の麺を10名の専門パネラーに喫食してもらい、下記評価基準で評価してもらった。その評価点の平均値を表1~表3に示す。
【0047】
<レンジ耐性>
5点:レンジ加熱による麺の部分的乾燥がみられない。
4点:レンジ加熱による麺の部分的乾燥がほとんどない。
3点:レンジ加熱による麺の部分的乾燥が多少あるが品質的に及第点である。
2点:レンジ加熱による麺の部分的乾燥がやや目立つ。
1点:レンジ加熱による麺の部分的乾燥が顕著である。
【0048】
<食感>
5点:弾力感に非常に優れる。
4点:弾力感に優れる。
3点:弾力感にやや優れる。
2点:弾力感にやや欠ける。
1点:弾力感に欠ける。
【0049】
【0050】
【0051】