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  • 特開-皮革様シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054036
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】皮革様シート
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
D06N3/14 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020160998
(22)【出願日】2020-09-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100189991
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】井上 和正
(72)【発明者】
【氏名】割田 真人
【テーマコード(参考)】
4F055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA03
4F055AA18
4F055AA21
4F055AA27
4F055CA15
4F055DA08
4F055DA16
4F055EA01
4F055EA05
4F055EA11
4F055EA12
4F055EA14
4F055EA21
4F055EA24
4F055FA15
4F055FA18
4F055FA19
4F055FA40
4F055GA02
4F055GA11
4F055GA32
(57)【要約】
【課題】鏡面性、耐摩耗性及び耐屈曲性に優れた金属調外観を呈する層を備える皮革様シートを提供する。
【手段】繊維基材と、繊維基材の一面に積層された接着樹脂層と、中間樹脂層と、中間樹脂層に積層された表面樹脂層と、を備え、表面樹脂層は、蒸着金属薄膜砕片25~50質量%と第1のポリウレタンとを含有する層であり、中間樹脂層は、ミリング薄鱗片化粒子及び蒸着金属薄膜砕片からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉体10~20質量%と第2のポリウレタンとを含有する層であり、表面樹脂層は1~20μmの厚さを有し、中間樹脂層は20~50μmの厚さを有する皮革様シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材と、前記繊維基材の一面に積層された接着樹脂層と、中間樹脂層と、前記中間樹脂層に積層された表面樹脂層と、を備え、
前記表面樹脂層は、蒸着金属薄膜砕片25~50質量%と第1のポリウレタンとを含有する層であり、
前記中間樹脂層は、アトマイズ法により球形化された金属粒子のミリング薄鱗片化粒子及び蒸着金属薄膜砕片からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉体10~20質量%と第2のポリウレタンとを含有する層であり、
前記表面樹脂層は1~20μmの厚さを有し、前記中間樹脂層は20~50μmの厚さを有することを特徴とする皮革様シート。
【請求項2】
前記表面樹脂層は、前記蒸着金属薄膜砕片として蒸着アルミニウム薄膜砕片を含み、前記中間樹脂層は、前記金属粉体としてミリング薄鱗片化アルミニウム粒子を70質量%以上含む請求項1に記載の皮革様シート。
【請求項3】
前記第1のポリウレタン及び前記第2のポリウレタンがそれぞれ60質量%以上のポリエーテル系ポリウレタンを含む請求項1または2に記載の皮革様シート。
【請求項4】
前記表面樹脂層の表面の光沢度が200以上である請求項1~3の何れか1項に記載の皮革様シート。
【請求項5】
前記表面樹脂層は、最表層にある請求項1~4の何れか1項に記載の皮革様シート。
【請求項6】
前記表面樹脂層の算術平均高さ(Sa)が1.7μm以下である請求項1~5の何れか1項に記載の皮革様シート。
【請求項7】
20℃の環境下でフレクソメーターで屈曲性試験を行ったときに前記表面樹脂層にひび割れが発生するサイクルが30万サイクル以上である請求項1~6の何れか1項に記載の皮革様シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属調外観を有する皮革様シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴や衣類,車両や家具の内装材として用いられる人工皮革や合成皮革等の皮革様シートとして、金属調外観を有する皮革様シートが知られている。金属調外観を有する皮革様シートとしては、例えば、不織布等の繊維基材に積層されたポリウレタン層を備え、ポリウレタン層の表面にスパッタリングにより金属膜を形成した皮革様シートが知られている。しかし、スパッタリングで形成された金属膜はポリウレタン層に対する密着性が低く、割れたり剥離したりすることにより、ポリウレタン層が露出して美観を損ないやすいという問題があった。
【0003】
また、別の金属調外観を有する皮革様シートとしては、不織布等の繊維基材に蒸着金属薄膜砕片を配合したポリウレタン層を積層形成させた皮革様シートも知られている。例えば、下記特許文献1は、表面に、蒸着金属薄膜砕片を含有するインキ層を含む金属調意匠層を有することを特徴とする皮革を開示する。また、下記特許文献2は、ポリウレタン層中に蒸着金属薄膜砕片が存在し、蒸着金属薄膜砕片金属膜が投影面積の10~90%の範囲を占め、全体の厚さが0.1~5mmの範囲であることを特徴とする金属加飾シート状物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-224471号公報
【特許文献2】特開2016-182675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蒸着金属薄膜砕片を配合したポリウレタン層は、光輝性が不充分であったために、表面に像がはっきりと映り込むような高い鏡面性を示しにくかった。鏡面性を向上させるために、ポリウレタン層中の蒸着金属薄膜砕片の配合割合を高くし、且つ、ポリウレタン層を厚くして光輝性を向上させようとした場合、蒸着金属薄膜砕片を含むポリウレタン層が脆くなって摩耗しやすくなったり屈曲性が低くなったり、伸びた時や折り曲げたときに面割れするという問題があった。また、蒸着金属薄膜砕片はその製造工程が煩雑であることにより高価であるために、実用上コストが高いという問題もあった。
【0006】
本発明は、鏡面性、耐摩耗性及び耐屈曲性に優れた金属調外観を呈する層を備える皮革様シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、繊維基材と、繊維基材の一面に積層された接着樹脂層と、中間樹脂層と、中間樹脂層に積層された表面樹脂層と、を備え、表面樹脂層は、蒸着金属薄膜砕片25~50質量%と第1のポリウレタンとを含有する層であり、中間樹脂層は、アトマイズ法により球形化された金属粒子のミリング薄鱗片化粒子(以下、単にミリング薄鱗片化粒子とも称する)及び蒸着金属薄膜砕片からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉体10~20質量%と第2のポリウレタンとを含有する層であり、表面樹脂層は1~20μmの厚さを有し、中間樹脂層は20~50μmの厚さを有する皮革様シートである。このような皮革様シートによれば、金属粉体10~20質量%を含む厚い中間樹脂層が、表面樹脂層の表面の光輝性の向上に寄与するとともに耐摩耗性の向上に寄与し、また、蒸着金属薄膜砕片25~50質量%を含む薄い表面樹脂層が光輝性の向上に寄与することにより、鏡面性に優れ、耐摩耗性及び耐屈曲性に優れた金属調外観を呈する表面を備える皮革様シートが得られる。
【0008】
また、表面樹脂層は、蒸着金属薄膜砕片として蒸着アルミニウム薄膜砕片を含み、中間樹脂層は、金属粉体としてミリング薄鱗片化アルミニウム粒子を70質量%以上含むことが、光輝性とコスト性とに優れる点から好ましい。
【0009】
また、第1のポリウレタン及び第2のポリウレタンがそれぞれ60質量%以上のポリエーテル系ポリウレタンを含むことが、とくに高い耐屈曲性を保持させやすい点から好ましい。
【0010】
また、表面樹脂層の表面の光沢度が200以上であることが鏡面性に優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
【0011】
また、表面樹脂層は、最表層にあることが、鏡面性にとくに優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。表面樹脂層の表面にトップコート層がさらに形成されている場合には、鏡面性が低下する傾向がある。
【0012】
また、表面樹脂層の算術平均高さ(Sa)が1.7μm以下であることが、鏡面性のとくに優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
【0013】
また、20℃の環境下でフレクソメーターで屈曲性試験を行ったときに表面樹脂層にひび割れが発生するサイクルが30万サイクル以上であることが、耐摩耗性及び耐屈曲性にとくに優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鏡面性、耐摩耗性及び面割れしにくい耐屈曲性に優れた金属調外観を呈する皮革様シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の皮革様シート10の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の皮革様シートの一実施形態を図面を参照して詳しく説明する。図1は本実施形態の皮革様シート10の模式断面図である。
【0017】
図1を参照すれば、皮革様シート10は、繊維基材1と、繊維基材1の一面に接着樹脂層2を介して接着された中間樹脂層3と、中間樹脂層3に積層形成された表面樹脂層4とを備える。接着樹脂層2と中間樹脂層3と表面樹脂層4とを含む樹脂層は、金属外観を呈する金属調樹脂層5を形成する。
【0018】
表面樹脂層4は、蒸着金属薄膜砕片4aを25~50質量%と第1のポリウレタン4bとを含有する1~20μmの厚さを有する層である。また、中間樹脂層3は、アトマイズ法により球形化された金属粒子のミリング薄鱗片化粒子及び蒸着金属薄膜砕片からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉体3aを10~20質量%と第2のポリウレタン3bとを含有する20~50μmの厚さを有する層である。また、接着樹脂層2は、乾式造面法によって離型紙上に形成された中間樹脂層3と表面樹脂層4とを含む積層体を接着するための接着性樹脂を含む層である。金属調樹脂層5は本発明の効果を損なわない限り、必要に応じてさらに他の層を含んでもよいが、表面樹脂層4が最表層になり、トップコート層を含まないことが鏡面性にとくに優れた皮革様シートが得られる点からとくに好ましい。
【0019】
繊維基材としては、従来から人工皮革や合成皮革のような皮革様シートの製造に用いられている、不織布,織物,編物、またはそれらを組み合わせたシートを主体とし、必要に応じて、さらに高分子弾性体を含浸付与させた繊維基材が特に限定なく用いられる。これらの中では、不織布、とくには、高分子弾性体を含浸付与された繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む不織布を含む繊維基材が、緻密で機械的強度の高い皮革様シートが得られやすい点から好ましい。
【0020】
繊維基材を形成する繊維の繊度はとくに限定されないが、繊度1dtex以下、さらには0.0001~0.5dtexのような極細繊維を含むことが繊維の粗密ムラが低く均質性の高い皮革様シートが得られやすい点から好ましい。
【0021】
繊維を形成する樹脂の種類も特に限定されない。繊維を形成する樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,芳香族ポリアミド,ポリアミドエラストマー等のポリアミド樹脂;アクリル樹脂;オレフィン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等の合成繊維や、各種天然繊維や半合成繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。合成繊維の製造方法としては、樹脂を融点以上の温度で溶融させてエクストルーダーから押し出して溶融紡糸する方法や、ポリマー溶液を細孔より押し出し溶媒を蒸発させる乾式溶液紡糸する方法や、高分子溶液を非溶剤中に紡出する湿式溶液紡糸する方法等、とくに限定なく用いられる。また、極細繊維の不織布は、例えば、海島型複合繊維のような極細繊維発生型繊維を絡合処理して繊維絡合体を形成し、極細繊維化処理することにより得られる。
【0022】
また、繊維基材は含浸付与された高分子弾性体を含んでもよい。繊維基材に含浸付与される高分子弾性体の種類は特に限定されない。具体的には、例えば、ポリウレタン,アクリロニトリル-ブタジエン共重合体やアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系弾性体,ポリアミド系弾性体,シリコーンゴム等の各種高分子弾性体が挙げられる。これらの中では、良好な風合が得られる点からポリウレタンがとくに好ましい。なお、ポリウレタンのソフトセグメントはポリエステル系ポリオール単位、ポリエーテル系ポリオール単位、ポリカーボネート系ポリオール単位の中からそれらの1種を含んでも、組み合わせて用いてもよい。また、高分子弾性体は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
繊維基材が含浸付与された高分子弾性体を含有する場合、その含有割合は、繊維基材を形成する繊維と高分子弾性体との合計に対して、1~50質量%、さらには、5~25質量%であることが好ましい。
【0024】
繊維基材の厚さは特に限定されないが、0.3~2mm、さらには、0.5~1mmであることが好ましい。
【0025】
皮革様シート10は、乾式造面法によって離型紙上に形成された中間樹脂層3と表面樹脂層4とを含む積層体を、接着樹脂層2を介して繊維基材1に接着して製造することが好ましい。とくには、光沢表面を与える平滑性の高い離型紙上に平滑な表面を有する表面樹脂層4を形成し、その表面にさらに中間樹脂層3を積層した積層体を、接着樹脂層2を介して繊維基材1に接着して製造することが、鏡面性のとくに高い皮革様シートが得られる点から好ましい。
【0026】
表面樹脂層は、蒸着金属薄膜砕片25~50質量%と第1のポリウレタンとを含有する層である。
【0027】
蒸着金属薄膜砕片は蒸着金属薄膜を破砕して得られるフレークである。蒸着金属薄膜を形成する方法としては、例えば、プラスチックフィルム上にスパッタリングまたは真空蒸着により均一な蒸着金属薄膜を形成し、プラスチックフィルムから剥離された蒸着金属薄膜を粉砕処理する方法が挙げられる。蒸着金属薄膜を形成する金属としては、アルミニウム,金,銀,銅,真鍮,チタン,クロム,ニッケル,ニッケルクロム,ステンレス等が挙げられる。これらの中では、アルミニウムの蒸着金属薄膜である、蒸着アルミニウム薄膜砕片が高輝性とコスト性に優れる点からとくに好ましい。
【0028】
蒸着金属薄膜砕片の膜厚は、0.01~0.05μm、さらには0.013~0.04μm、とくには0.015~0.03μmであることが好ましい。蒸着金属薄膜砕片の膜厚が厚すぎる場合には、表面樹脂層4の表面に膜厚による凹凸が反映されて表面が粗くなって鏡面性が低下する傾向がある。また、蒸着金属薄膜砕片の面方向の平均径は5~15μm、さらには7~10μmであることが好ましい。
【0029】
また、表面樹脂層は、蒸着金属薄膜砕片を分散させる第1のポリウレタンを含有する。第1のポリウレタンとしては、従来、皮革様シートの製造に用いられている、高分子ポリオール,有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むウレタン原料を反応させて得られる、ポリエーテル系ポリウレタン,ポリエステル系ポリウレタン,ポリカーボネート系ポリウレタン、または、これらを組み合わせたポリウレタン等のポリウレタンが好ましく用いられる。
【0030】
ポリエーテル系ポリウレタンは、ポリエーテル系ポリオールを含む高分子ポリオールを含むウレタン原料を反応させることにより得られる。また、ポリエステル系ポリウレタンは、ポリエステル系ポリオールを含む高分子ポリオールを含むウレタン原料を反応させることにより得られる。また、ポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリカーボネート系ポリオールを含む高分子ポリオールを含むウレタン原料を反応させることにより得られる。
【0031】
ポリエーテル系ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等が挙げられる。
【0032】
ポリエステル系ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール,ポリブチレンアジペートジオール,ポリプロピレンアジペートジオール,ポリブチレンセバケートジオール,ポリヘキサメチレンアジペートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンセバケート)ジオール,ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0033】
ポリカーボネート系ポリオールの具体例としては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール等が挙げられる。
【0034】
有機ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート,2,6-トリレンジイソシアネート,4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族系ジイソシアネートを含む難黄変型ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族系あるいは脂環族系ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート、等が挙げられる。
【0035】
また、鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびその誘導体,アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4-シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。
【0036】
第1のポリウレタンとしては、ポリエーテル系ポリウレタンを60質量%以上、さらには80%質量以上、とくには90~100質量%含むことが、とくに高い耐屈曲性を保持させやすい点から好ましい。
【0037】
表面樹脂層中の蒸着金属薄膜砕片の含有割合は25~50質量%であり、30~40質量%であることが好ましい。表面樹脂層中の蒸着金属薄膜砕片の含有割合が25質量%未満である場合には鏡面性が低下する。また、表面樹脂層中の蒸着金属薄膜砕片の含有割合が50質量%を超える場合には剥離強力、耐屈曲性が低下し、また、伸びたときに割れが生じやすくなる。
【0038】
表面樹脂層は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、界面活性剤、帯電防止剤、難燃剤、粘着防止剤、充填剤、架橋剤等の各種添加剤等を含有してもよい。
【0039】
表面樹脂層の厚さは1~20μmであり、2~15μm、さらには3~10μmであることが好ましい。表面樹脂層の厚さが1μm未満である場合には、光輝性が低下して鏡面性が低下し、また、表面樹脂層の厚さが20μmを超える場合には、蒸着金属薄膜砕片の面方向が表面樹脂層の面方向に向きにくくなって鏡面性が低下したり、剥離強力、耐屈曲性が低下したりする。
【0040】
一方、中間樹脂層は、アトマイズ法により球形化された金属粒子のミリング薄鱗片化粒子及び蒸着金属薄膜砕片からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉体10~20質量%と第2のポリウレタンとを含有する20~50μmの厚さを有する層である。
【0041】
中間樹脂層に含まれる金属粉体は、ミリング薄鱗片化粒子であっても蒸着金属薄膜砕片であっても、それらの組み合わせであってもよいが、コスト性の点から、ミリング薄鱗片化粒子を中間樹脂層に含まれる金属粉体中の70質量%以上、さらには90質量%以上含むことが好ましい。
【0042】
ミリング薄鱗片化粒子は、アトマイズ法により得られた球形の金属粒子を湿式ボールミル等のミリング装置により粉砕処理して薄鱗片化処理して得られる粒子である。ミリング薄鱗片化粒子を形成する金属としては、アルミニウム,金,銀,銅,真鍮,チタン,クロム,ニッケル,ニッケルクロム,ステンレス等が挙げられる。これらの中では、アルミニウムの金属粒子のミリング薄鱗片化粒子である、ミリング薄鱗片化アルミニウム粒子であることが、光輝性とコスト性に優れる点からとくに好ましい。
【0043】
ミリング薄鱗片化粒子の厚さは、0.05~0.4μm、さらには0.06~0.3μm、とくには0.07~0.25μmであることが好ましい。ミリング薄鱗片化粒子が厚すぎる場合には、厚さ方向に垂直な面方向の面積が相対的に小さくなって隠ぺい性及び光輝性が低下して鏡面性が低下する傾向がある。また、ミリング薄鱗片化粒子の面方向の平均径は10~18μm、さらには13~15μmであることが好ましい。
【0044】
中間樹脂層は、金属粉体を分散させる第2のポリウレタンを含有する。第2のポリウレタンとしても、従来、皮革様シートの製造に用いられている、高分子ポリオール,有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を含むウレタン原料を反応させて得られる、ポリエーテル系ポリウレタン,ポリエステル系ポリウレタン,ポリカーボネート系ポリウレタン、または、これらを組み合わせたポリウレタン等のポリレタンが好ましく用いられる。なお、第1のポリウレタンと第2のポリウレタンとは、同じポリウレタンであってもよい。
【0045】
第2のポリウレタンとしては、ポリエーテル系ポリウレタンを60質量%以上、さらには80%質量以上、とくには90~100質量%含むことが、とくに高い耐屈曲性を保持させやすい点から好ましい。
【0046】
中間樹脂層中の金属粉体の含有割合は10~20質量%であり、13~17質量%であることが好ましい。中間樹脂層中のミリング薄鱗片化粒子の含有割合が10質量%未満である場合には鏡面性が低下する。また、中間樹脂層中のミリング薄鱗片化粒子の含有割合が20質量%を超える場合には剥離強力、耐屈曲性及び耐摩耗性が低下する。
【0047】
また、中間樹脂層の厚さは20~50μmであり、30~40μmであることが好ましい。中間樹脂層の厚さが20μm未満である場合には耐摩耗性が低下し、また、中間樹脂層の厚さが50μmを超える場合には耐屈曲性が低下する。
【0048】
図1を参照すれば、表面樹脂層4を積層された中間樹脂層3は、接着樹脂層2を介して、繊維基材1に接着されている。本実施形態の皮革様シートは、例えば、次のような工程により、製造される。はじめに、離型紙の表面に表面樹脂層を形成するための蒸着金属薄膜砕片と第1のポリウレタンとを含有する塗液を塗布し、乾燥する。このようにして、離型紙上に表面樹脂層が形成される。
【0049】
表面樹脂層が形成される離型紙は、表面に易剥離加工がされた離型紙であって、エナメル調のような光沢表面を与える高い平滑面を有する離型紙、具体的には、例えば、表面粗さSaが0.60μm程度のようなシボの無い平滑な離型紙であることが好ましい。このような、光沢表面を与える高い平滑面を有する離型紙の市販品としては、例えば、リンテック(株)製CPUG等の離型紙が挙げられる。このような離型紙を用いた場合には、鏡面性に優れた皮革様シートが得られやすい点から好ましい。
【0050】
離型紙上に形成された表面樹脂層の表面に、さらに、中間樹脂層を形成する。具体的には、離型紙の表面に形成された表面樹脂層の表面に、ミリング薄鱗片化粒子と第2のポリウレタンとを含有する塗液を塗布し、乾燥する。このようにして、離型紙上に表面樹脂層と中間樹脂層とを含む積層体が形成される。そして、次に、接着樹脂層を形成する。具体的には、離型紙の表面に形成された中間樹脂層の表面に、接着用の高分子弾性体を含有する塗液を塗布し、乾燥する。
【0051】
接着樹脂層は、高分子弾性体を主体とする層であり、必要に応じて、架橋剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,顔料,染料,界面活性剤,帯電防止剤,難燃剤,粘着防止剤,充填剤等の各種添加剤等を含有する。接着樹脂層を形成する高分子弾性体の種類も特に限定されず、ポリウレタン,アクリロニトリル-ブタジエン共重合体やアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系弾性体,ポリアミド系弾性体,シリコーンゴム等の各種高分子弾性体であって、繊維基材と高い接着性を示す接着力を有する高分子弾性体を主体とする接着剤がとくに限定なく用いられる。接着樹脂層の主体となる高分子弾性体としては、良好な風合が得られる点からポリウレタン、とくには、ポリエーテル系ポリウレタンが好ましい。
【0052】
接着樹脂層の厚さは特に限定されないが、30~70μm、さらには、40~50μmであることが、機械的特性と風合い等のバランスに優れた皮革様シートが得られやすい点から好ましい。
【0053】
このようにして、離型紙上に表面樹脂層と中間樹脂層と接着樹脂層とを含む積層体が形成される。そして、このようにして形成された、離型紙上の接着樹脂層を繊維基材の表面に圧着して接着する。繊維基材に圧着された接着樹脂層は、必要に応じて、エージング処理されることにより繊維基材との接着力を強固にされる。そして、離型紙を剥離することにより、金属調外観を呈する表面樹脂層が露出した皮革様シートが形成される。
【0054】
本実施形態の皮革様シートの全体厚さは、特に限定されないが、0.5~2.0mm、さらには0.8~1.5mmであることが好ましい。
【0055】
以上説明した、本実施形態の皮革様シートは、鏡面性に優れ、耐隠蔽性及び耐屈曲性に優れた金属調外観を呈する層を備える皮革様シートである。
【0056】
具体的には、本実施形態の皮革様シートは、200以上、とくには200~500の光沢度を呈することが、高い鏡面性を呈する点から好ましい。なお、このような光沢度を実現するためには、平滑性の高い表面樹脂層が最表層として露出してその表面にトップコート層などが形成されていないことがとくに好ましい。このような場合には、高い鏡面性を呈しやすい。このような平滑性の高い表面樹脂層の表面粗さとしては、算術平均高さ(Sa)が1.7μm以下、さらには、1.0μm以下であることが好ましい。
【0057】
また、本実施形態の皮革様シートは、屈曲性が大幅に低下せず、表面樹脂層にひび割れが生じにくい。具体的には、本実施形態の皮革様シートは、20℃の環境下でフレクソメーターで屈曲性試験を行ったときに表面樹脂層にひび割れが発生するサイクルが30万サイクル以上、さらには40万サイクル以上であることが、耐屈曲性にとくに優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
【実施例0058】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明の範囲は以下の実施例に何ら限定されるものではない。はじめに、本実施例で用いた評価方法を以下にまとめて説明する。
【0059】
(1)鏡面性
皮革様シートの金属調の表面に顔を映し、次のように判定した。
A:顔の輪郭及び目,鼻,口の形状が明確に識別できた。
B:顔の輪郭及び目、鼻、口の形状がぼやけて見えた。
C:顔の輪郭及び目、鼻、口の形状が識別出来なかった。
【0060】
(2)光沢度
皮革様シートの表面の光沢度をグロス計GM-60(コニカミノルタ センシング(株))を用いて測定した。具体的には、皮革様シートの表面の9mm×15mmの範囲の光沢度を測定角度60°で光沢度を測定した。測定に際し、校正を行い、サンプルモードに設定した。7点を測定して、最高値及び最低値を除いた5点の平均値を光沢度とした。
【0061】
(3)耐摩耗性
裏面に両面テープを貼付けられた皮革様シートから、直径10.6cmの円形の試験片を切り出した。そして、試験片の重量を所定の天秤で精秤した。そしてテーバーアブレージョンテスターのターンテーブルに表面樹脂層の側を測定面になるようにして試験片をセットした。そして、摩耗輪(H-22(ダイトエレクトロン社製))を装着したアームを測定面に下ろし、荷重1kg、回転数1000回の条件で摩耗させた。1000回転数まで摩耗させた後、試験片を外した。そして、試験片に付着した摩耗屑をブラシでよく落とした後、所定の天秤で試験片の重量を精秤して以下の基準で判定した。また、外観を観察して以下の基準で判定した。それらの何れかの劣った判定を耐摩耗性の判定結果とした。
A:摩耗減量が50mg以下であった。または、表面樹脂層が半分程度除去されていたが外観変化は小さかった。
B:摩耗減量50mg超で70mg以下であった。または、表面樹脂層が半分以上除去されていたが、接着樹脂層及び繊維基材は露出しておらず、外観変化が中程度であった。
C:摩耗減量70mgを超えていた。または、接着樹脂層及び繊維基材が露出しており、外観変化が大きかった。
【0062】
(4)耐屈曲性
相対湿度65±5%、温度20±2℃の環境下でJIS K6545に準拠したフレクソメーターを用いて各実施例で得られた皮革様シートの耐屈曲性試験を行った。具体的には、フレクソメーターによる屈曲10万回サイクルごとに皮革様シートの表面樹脂層が形成された面のひび割れの発生の有無を確認した。ひび割れの確認は10倍のルーペを用いて目視で行った。そして、10万回サイクルごとにひび割れの発生を確認し、以下の判断基準による3級以上の変化が見られるまで測定した。
判断基準
5級:亀裂の認められないもの
4級:わずかに亀裂が認められるもの
3級:表面仕上層を超えて亀裂を生じたもの
2級:不織布又は織布層に亀裂が生じたもの
1級:部分的に切断を生じたもの
A:40万回で3級以上であった。
B:30万回で3級以上であり、40万回で3級未満であった。
C:30万回で3級未満であった。
【0063】
(5)20%引張後の面割れ性
皮革様シートから、直径9cmの円形の試験片を切り出した。そして、試験片の表面樹脂層の中央に25mmの標線を記入した。ヒートセッター(半球状可逆性試験機)に試験片の表面樹脂層を上部に向けてセットし、金属リング及び押え板を乗せネジで固定した。そして、下部のネジを回し半球状のステージを、試験片の表面樹脂層の裏側から25mmの標線が20%(30mm)伸びるまで上昇させたときに、表面樹脂層の顔料が割れて接着樹脂層が見えるか否かを確認した。
A:表面樹脂層の顔料に割れ等の変化がなかった。
B:表面樹脂層の顔料に割れが確認されたが接着樹脂層は確認できなかった。
C:表面樹脂層の顔料に割れが確認され接着樹脂層が確認された。
【0064】
(6)剥離強力
皮革様シートから、タテ25cm×ヨコ2.5cmにカットした測定片を作成した。また、ポリウレタンからなる板を準備した。そして、測定片とポリウレタンからなる板のそれぞれの端部からタテ9mm長になる領域に接着剤0.15gを50~70g/mとなるように塗布した。なお、接着剤としては、US-33(ポリウレタン系2液型接着剤とデスモジュールRE(硬化剤)とを混合したものを用いた。
そして、それぞれを乾燥機(110℃)へ3分間入れて熱処理した後、接着剤を塗布された面同士を貼り合わせ、プレス機で圧着させた。そして、70℃の乾燥機で1時間エージングさせた後、常温で冷却させた。
【0065】
そして、測定片とポリウレタンからなる板のそれぞれの接着剤が塗布されていない側の端部をそれぞれオートグラフの上下のチャックにセットして、クロスヘッド速度5mm/sの条件で剥離強力を測定した。そして、得られた剥離強力のチャートから平均強力を読み取った。得られた皮革様シートの両端と中央部についてそれぞれ3点測定した。両端と中央部のそれぞれの平均値をさらに平均して得られた値を1cm当たりに換算し、剥離強力とした。そして、以下の基準で判定した。
A:平均剥離強力が3.5kg/cm以上であった。
B:平均剥離強力が3.0kg/cm以上3.5kg/cm未満であった。
C:平均剥離強力が3.0kg/cm未満であった。
【0066】
(7)算術平均高さ(Sa)
30mm×160mmの皮革様シートを厚紙へ貼付けたものを試料とし、表面の凹凸高さを測定した。測定は、3Dワンショット測定マイクロスコープVR-3200((株)キーエンス製)を起動させ、試料をセットし、ピントを合わせた後、18mm×24mmの範囲の写真を撮影した。そして、解析ソフトウェアで画像処理を実行した。画像処理は、面形補正及びうねり除去を行って水平な平面に補正し、表面の凹凸高さを計測して算術平均高さ(Sa)を得た。なお、10点の平均値を算術高さとした。
【0067】
[実施例1]
島成分であるポリアミド6と海成分であるポリエチレンとをそれぞれ単軸押出機中で溶融し、複合紡糸ノズルから質量比50:50、25島の海島型複合繊維を溶融紡糸した。そして、複合紡糸ノズルから吐出された海島型複合繊維を3500m/分の空気流で延伸しながら捕集ネットに吹き付けることにより長繊維のウェブを形成させた。得られたウェブの目付けは30g/m2であり、海島型複合繊維の繊度は2dtexであった。
【0068】
得られたウェブを、ウェブの長さ方向に対して、折り返し角度84度になるように一定間隔で連続的に折り畳みを繰り返すことによりウェブが10層積み重ねられた、幅176cm、目付け593g/m2の積重ウェブを得た。そして、得られた積重ウェブに、1バーブのフェルト針を用いて1400パンチ/cm2のニードルパンチ処理した後、幅方向に張力を付与して拡幅処理することにより、10%の巾出しを行い、さらに、加熱ロール間を通過させて熱プレス処理することにより、目付け420g/m2、厚み1.60mmの海島型複合繊維の長繊維からなる絡合不織布を得た。
【0069】
次に、海島型複合繊維の絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%DMF溶液を含浸させ、水中で多孔質状に湿式凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分であるポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去することにより、海島型複合繊維を極細長繊維に変換した。このようにして、0.03dtexの極細繊維の長繊維の不織布及び高分子弾性体を含む、密度0.36g/cm3、目付け415g/m2、厚み約1.15mmの繊維基材が得られた。
【0070】
次に、エナメル調の光沢表面を与える離型紙上に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製ME-8133-2、固形分35%)100質量部、蒸着アルミニウム薄膜砕片の分散液(東洋アルミニウム(株)製、TS-408PM、膜厚0.016μm、固形分10質量%)188.7質量部、DMF20質量部、イソプロパノール10質量部、酢酸エチル10質量部を配合した、表面樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量50g/m2で塗布した後、乾燥することにより表面樹脂層を形成した。形成された表面樹脂層は蒸着アルミニウム薄膜砕片35質量%を含有する。
【0071】
次に、表面樹脂層の表面に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製ME-8106LP、固形分30%)100質量部、ミリング薄鱗片化アルミニウム粒子の分散液(東洋アルミニウム(株)製、Z440、膜厚0.24μm、固形分70質量%)7.6質量部、DMF20質量部、イソプロパノール10質量部、酢酸エチル10質量部を配合した、中間樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量250g/m2で塗布した後、乾燥することにより中間樹脂層を形成した。形成された中間樹脂層はミリング薄鱗片化アルミニウム粒子15質量%を含有する。
【0072】
そして、中間樹脂層に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製UD-8310NTT、固形分60%)100質量部、架橋剤(NE-架橋剤、大日精化工業(株)製)10質量部、架橋促進剤(UD-103促進剤:大日精化工業(株)製)2質量部、DMF15質量部、酢酸エチル15質量部を配合した、接着樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量135g/m2で塗布した後、130℃で乾燥した後、樹脂のタックが残る状態で、繊維基材の表面に貼り合わせて、さらに乾燥し、接着樹脂層の架橋反応を促進するために、雰囲気温度60℃の乾燥機内で48時間の熟成処理を行った。そして、離型紙を剥がすことにより表面樹脂層を露出させた。
【0073】
このようにして、厚さ約1.25mmの皮革様シートが得られた。得られた皮革様シートの断面を走査型電子顕微鏡(300倍)で観察し、無作為に選び出した30箇所の膜厚を測定し、その平均値を求めた。表面樹脂層の厚さは5μm、中間樹脂層の厚さは30μm、接着樹脂層の厚さは55μmであった。
【0074】
そして、得られた皮革様シートの特性を上述した評価方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例2~9、比較例3~9]
実施例1において、表面樹脂層の厚さ及び蒸着アルミニウム薄膜砕片の含有割合,中間樹脂層の厚さ及びミリング薄鱗片化アルミニウム粒子の含有割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例10]
実施例1において、中間樹脂層にミリング薄鱗片化アルミニウム粒子の分散液(東洋アルミニウム(株)製、Z440)7.6質量部を配合した代わりに、蒸着アルミニウム薄膜砕片の分散液(東洋アルミニウム(株)製、TS-408PM)53.2質量部を配合した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例1]
実施例1において、以下のような蒸着アルミニウム薄膜砕片を含まない表面樹脂層及び蒸着アルミニウム薄膜砕片を含む中間樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0079】
エナメル調の光沢表面を与える離型紙上に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製ME-8106、固形分30%)100質量部、DMF20質量部、イソプロパノール10質量部、酢酸エチル10質量部を配合した、表面樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量200g/m2で塗布した後、乾燥することにより表面樹脂層を形成した。形成された表面樹脂層は蒸着アルミニウム薄膜砕片を含まない。
【0080】
次に、表面樹脂層の表面に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製ME-8106、固形分30%)100質量部、蒸着アルミニウム薄膜砕片の分散液(東洋アルミニウム(株)製、TS-408PM)161.3質量部、DMF20質量部、イソプロパノール10質量部、酢酸エチル10質量部を配合した、中間樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量250g/m2で塗布した後、乾燥することにより中間樹脂層を形成した。形成された中間樹脂層は蒸着アルミニウム薄膜砕片35質量%を含有する。
【0081】
そして、中間樹脂層に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製UD-8130NTT、固形分60%)100質量部、架橋剤(NE架橋剤、大日精化工業(株)製)10質量部、架橋促進剤(UD-103促進剤:大日精化工業(株)製)2質量部、DMF15質量部、酢酸エチル15質量部を配合した、接着樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量135g/m2で塗布した後、80℃で乾燥し、樹脂のタックが残る状態で、繊維基材の表面に貼り合わせ、接着樹脂層の架橋反応を促進するために、雰囲気温度60℃の乾燥機内で48時間のキュア処理を行った。そして、離型紙を剥がすことにより表面樹脂層を露出させた。
【0082】
[比較例2]
実施例1において、以下のようなミリング薄鱗片化アルミニウム粒子を含む表面樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0083】
エナメル調の光沢表面を与える離型紙上に、ポリエーテル系ポリウレタン(大日精化工業(株)製ME-8133-2、固形分35%)100質量部、ミリング薄鱗片化アルミニウム粒子の分散液27.0質量部、DMF20質量部、イソプロパノール10質量部、酢酸エチル10質量部、架橋剤 3質量部を配合した、表面樹脂層を形成するための塗液をウェット塗布量50g/m2で塗布した後、乾燥することにより表面樹脂層を形成した。形成された表面樹脂層は、ミリング薄鱗片化アルミニウム粒子を35質量%含有する。
【0084】
表1を参照すれば、本発明に係る実施例1~10で得られた皮革様シートは何れも鏡面性、光沢度、耐摩耗性、剥離強力及び耐屈曲性に優れていた。一方、蒸着アルミニウム薄膜砕片を35質量%含む中間層と、その中間層の表面にクリア層を設けた比較例1で得られた皮革様シートは鏡面性が劣り、光沢度も低かった。また、表面樹脂層及び中間樹脂層の両方にミリング薄鱗片化アルミニウム粒子を含有させた比較例2で得られた皮革様シートも鏡面性が劣り、光沢度も低かった。また、表面樹脂層に含有される蒸着アルミニウム薄膜砕片の含有割合が20質量%である比較例3で得られた皮革様シートも、鏡面性が劣り、光沢度も低かった。また、表面樹脂層に含有される蒸着アルミニウム薄膜砕片の含有割合が55質量%である比較例4で得られた皮革様シートは、鏡面性に優れ光沢度も高かったが、耐摩耗性、耐屈曲性、20%引張後の面割れ性、剥離強力、に劣っていた。また、中間樹脂層の厚さが10μmである比較例5で得られた皮革様シートは、鏡面性に優れ光沢度も高かったが、耐摩耗性に劣っていた。また、中間樹脂層の厚さが60μmである比較例6で得られた皮革様シートは、鏡面性に優れ光沢度も高かったが耐屈曲性に劣っていた。また、中間樹脂層のミリング薄鱗片化アルミニウム粒子の含有割合が9質量%である比較例7で得られた皮革様シートも、鏡面性に優れ光沢度も高かったが、耐摩耗性に劣っていた。また、中間樹脂層のミリング薄鱗片化アルミニウム粒子の含有割合が25質量%である比較例8で得られた皮革様シートも、鏡面性に優れ光沢度も高かったが、耐屈曲性、剥離強力に劣っていた。また、表面樹脂層の厚さが30μmである比較例9で得られた皮革様シートは、耐屈曲性、剥離強力、に劣っていた。
【符号の説明】
【0085】
1 繊維基材
2 接着樹脂層
3 中間樹脂層
3a アトマイズ法により球形化された金属粒子のミリング薄鱗片化粒子
3b 第2のポリウレタン
4 表面樹脂層
4a 蒸着金属薄膜砕片
4b 第1のポリウレタン
5 金属調樹脂層
10 皮革様シート
図1