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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054461
(43)【公開日】2022-04-06
(54)【発明の名称】電流センサ及びその利用方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20220330BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157032
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】63/083,526
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/478,738
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシア・エイ・バートレット
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA17
2G025AB14
2G025AC01
2G035AA12
2G035AA13
2G035AA17
2G035AB04
2G035AC02
2G035AC03
2G035AD10
2G035AD13
2G035AD18
2G035AD19
2G035AD20
2G035AD22
2G035AD32
(57)【要約】
【課題】電流センサの感度と帯域幅を改善する。
【解決手段】電流伝送導体104の電流を測定する電流センサ100は、電流伝送導体104の周囲に、ほぼ完全なループを形成するよう配置可能な複数の導体セグメント106を有するロゴスキー・コイル101を有する。複数の導体セグメント106の夫々の出力信号は、対応する積分回路部102で積分され、これら積分回路部102の出力信号は、合算回路部103で合算されて、単一の導体セグメントから形成されるロゴスキー・コイルと等価が出力信号が得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流伝送導体の電流を測定するように構成された電流センサであって、実質的に完全なループを形成するように配置可能な複数の導体セグメントを有するロゴスキー・コイルを具え、上記複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントが、上記複数の導体セグメントの中の第2導体セグメントから電気的にアイソレーションされる電流センサ。
【請求項2】
上記複数の導体セグメントの中の各導体セグメントのための個別の積分回路部を更に具える請求項1の電流センサ。
【請求項3】
上記個別の積分回路部の出力信号の合計を生成するように構成された合算回路部を更に具える請求項2の電流センサ。
【請求項4】
上記複数の導体セグメントの中の2つ以上の導体セグメントからの出力信号を受けるように構成された積分回路部を更に具える請求項1の電流センサ。
【請求項5】
上記複数の導体セグメントの中の上記第1導体セグメントが、上記複数の導体セグメントの中の隣接する導体セグメントから機械的に分離可能である請求項1から4のいずれかの電流センサ。
【請求項6】
上記複数の導体セグメントの中の各導体セグメントのための個別のバッファ回路部を更に具える請求項1から5のいずれかの電流センサ。
【請求項7】
上記ロゴスキー・コイルを構成する上記複数の導体セグメントの中の第1部分と、上記ロゴスキー・コイルの外側にある上記複数の導体セグメントの中の第2部分とに分割するシンチ機構を更に具え、
上記第1部分と上記第2部分が互いに結合されている請求項1から6のいずれかの電流センサ。
【請求項8】
上記ロゴスキー・コイルを形成している上記導体セグメントの量を検出するように構成された検出器を更に具える請求項7の電流センサ。
【請求項9】
電流伝送導体の電流を測定するための電流センサを利用する方法であって、
ロゴスキー・コイルが有する複数の導体セグメントを、実質的に完全なループを形成するように配置することで、電流伝送導体の周りを実質的に囲むように上記ロゴスキー・コイルを配置する処理と、
上記複数の導体セグメントの中の少なくとも2つの導体セグメントから電圧信号を得る処理と
を具える電流センサ利用方法。
【請求項10】
第1積分回路部を用いて、上記少なくとも2つの導体セグメントの中の第1導体セグメントからの第1電圧信号を積分して第1積分出力信号を生成する処理と、
第2積分回路部を用いて、上記少なくとも2つの導体セグメントの中の第2導体セグメントからの第2電圧信号を積分して第2積分出力信号を生成する処理と、
合算回路部を用いて、上記第1積分出力信号及び上記第2積分出力信号を合算する処理と
を更に具える請求項9の電流センサ利用方法。
【請求項11】
上記電流伝送導体の周りを実質的に囲むように上記ロゴスキー・コイルを配置する処理が、
プリント回路基板の第1面側に上記ロゴスキー・コイルの第1部分を配置する処理と、
上記プリント回路基板の第2面側に上記ロゴスキー・コイルの第2部分を配置する処理と
を有し、
上記プリント回路基板は、上記ロゴスキー・コイルの上記第1部分と上記第2部分の間に存在し、上記第1部分と上記第2部分の夫々は、上記複数の導体セグメントの中の1つ以上の導体セグメントを有する請求項9又は10の電流センサ利用方法。
【請求項12】
上記電流伝送導体の周りを実質的に囲むように上記ロゴスキー・コイルを配置する処理が、上記複数の導体セグメントの中の第1部分で上記ロゴスキー・コイルを形成し、上記複数の導体セグメントの中の第2部分は、上記ロゴスキー・コイルの外部に配置して、上記電流伝送導体104の周囲に上記複数の導体セグメントで所望の長さの外周を有する上記ロゴスキー・コイルを形成する処理を有する請求項9又は10の電流センサ利用方法。
【請求項13】
検出器を用いて、上記複数の導体セグメントの中の上記第1部分における上記導体セグメントの量又は個数を検出する処理を更に具える請求項12の電流センサ利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定システムに関し、特に被試験デバイスに流れる電流を測定するための電流センサ及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オシロスコープは、被試験デバイス(DUT)に流れる電流を測定するために、多くの場合、電流プローブと一緒に使用される。電流プローブは、電流センサとして機能するもので、DUTと結合するインタフェースとして機能する入力部と、オシロスコープの入力チャンネルに接続される出力部とを有し、特に電流を測定するのに適した物理的及び電気的構造で設計されている。
【0003】
このようなプローブに磁束収束部(flux concentrator)がある場合、スルー・レートと装荷(loading)を犠牲にして自己インダクタンスを増加させるので、広帯域幅で電流測定を行うのが困難になる場合がある。ロゴスキー・コイルは、この問題に対する1つの解決策を提供する電流センサの形式として知られている。
【0004】
従来のロゴスキー・コイルは、柔軟な又は剛性の導体をループ形態にして構成され、このとき、閉じたリターン・パスのループ自身の周囲にらせん状にコイルを形成し、このループの中心を通る電流を微分した電圧を出力する。ロゴスキー・コイルの出力信号は、積分回路に接続され、出力信号を電流を直接表す形に変換される(特許文献1参照)。言い換えると、測定したい電流の波形を微分した電圧波形をロゴスキー・コイルが出力するので、それを積分すれば、元の電流の波形に相当する波形が得られるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4332623号公報
【特許文献2】特許第6234657号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Galvanic isolation」の記事、Wikipedia(英語版)、[オンライン]、[2021年9月22日検索]、インターネット<https://en.wikipedia.org/wiki/Galvanic_isolation>
【非特許文献2】「絶縁 (電気)」の記事、特に「isolation」について、Wikipedia(日本語版)、[オンライン]、[2021年9月22日検索]、インターネット<http://ja.wikipedia.org/wiki/絶縁_(電気)>
【非特許文献3】「オシロスコープのすべて 第4章 オシロスコープのシステムと操作部」、特に「図38:2つのチャンネルの加算」及び「積分を含む高度な数学的計算」への言及、テクトロニクス、[オンライン]、[2021年9月27日検索]、インターネット<https://jp.tek.com/document/online/primer/xyzs-scopes/ch4/oscilloscope-systems-and-controls>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のロゴスキー・コイルは、感度と帯域幅の両方で制約がある。従来のロゴスキー・コイルの感度又は帯域幅を増加させる際の課題は、高電圧に対処するためにコイルの絶縁を過負荷にしているか、又は、高い自己インダクタンスが原因で応答が低下しているために生じている。
【0008】
そこで、本発明の実施形態は、こうした従来の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に記載されるように、本開示技術の実施形態としては、複数のセグメントの形態を有するロゴスキー・コイルがある。複数のセグメントからロゴスキー・コイルを形成することで、より良い最適化が可能になる。線形性と信号合成の観点から、ロゴスキー・コイルを複数のセグメントから形成できる。このような複数のセグメントは、それらが全体として実質的に電流伝送導体の周りを囲む限り、合算すると、単一セグメントのロゴスキー・コイルと等価な外部磁界除去(external field rejection)を生じる。更に、各コイル・セグメントの自己共振は、同じ寸法の単一コイルよりも小さくなるので、電流測定の最大帯域幅を広くできる。各セグメントの出力は、例えば、別々の積分回路部に渡されても良い。微分と積分は、両方とも線形演算であるため、積分回路部夫々の出力を合算すれば、単一コイルの積分回路部の出力信号と等価な信号を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態の例による、電流が流れる導体を実質的に囲むマルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサの概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態の例による積分回路部を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態の例による、複数の入力信号を受けるよう構成された積分回路部を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態の例による、例示的な合算回路部に結合された複数の積分回路部を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の実施形態の例による例示的な積分回路部に結合された複数のバッファを示すブロック図である。
図6図6は、本発明の実施形態の例による可変長マルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサの例を示す。
図7図7は、本発明の実施形態の例による図6の可変長マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサを示すが、図6に示す電流伝送導体よりも小さい電流伝送導体を囲む状態で示した図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態の例によるマルチ・セグメントのロゴスキ-・コイルの一部分の第1例を示している。
図8B図8Bは、本発明の実施形態の例によるマルチ・セグメントのロゴスキ-・コイルの一部分の第2例を示している。
図8C図8Cは、本発明の実施形態の例によるマルチ・セグメントのロゴスキ-・コイルの一部分の第3例を示している。
図9図9は、図1に示すマルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサに類似するが、複数のセグメントの出力リード線がロゴスキー・コイルの同一側にある点で異なる、本発明の実施形態の例によるマルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサの例を示す。
図10図10は、プリント回路基板の一方の側に第1部があり、第2の部分がプリント回路基板の反対側にあるマルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサの例を示した、例の構成に従って説明する。
図11図11は、マルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサを用いて電流伝送導体の電流を測定する方法の例のフローチャートであり、実施例に従う。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の例によるマルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサ100(本願では、単に電流センサ100とも呼ぶ)を含むシステムの概略図である。図1に示すように、電流センサ100は、ロゴスキー・コイル101、積分回路部(integrator element)102及び合算回路部(summing element)103などがあっても良い。電流センサ100は、電線やトレースなどの電流伝送導体104の電流を測定するように構成されており、その断面が図1に示されている。電流センサ100は、試験測定装置105に結合されても良い。試験測定装置105は、例えば、オシロスコープであっても良い。
【0012】
このロゴスキー・コイル101には、2つ以上の導体セグメント106があり、各セグメントには、らせん状巻線107がある。本願における全ての実施例では、各導体セグメントが、らせん状巻線を有するものを示すが、ロゴスキー・コイルを形成する代替の配線技術も、本願に開示する技術と互換性がある。導体セグメント106は、実質的に完全なループを形成するように配置されるか、又は、実質的に完全なループを形成するように位置決め可能である。本願で使用されるように、「実質的に(又は、ほぼ)完全」とは、完璧な完全を必要とせず、大部分又は基本的に完全なことを意味する。例えば、いくつかの実施形態においては、複数の導体セグメント106が、全体を合わせると、ループを形成するように配置されている限り、隣接する導体セグメント106間に隙間又はスペースが存在しても良い。このため、ロゴスキー・コイル101は、電流伝送導体104の周りを実質的に(ほぼ)囲んでいる。本願で使用されるように、「実質的に周りを囲む」とは、完璧な包囲を必要とせずに、大部分又は基本的に周囲に展開していることを意味する。これら導体セグメント106は、全て同じ長さであっても良いし、あるいは、これら導体セグメント106が異なる長さを有しても良い。いくつかの実施形態では、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106の夫々が共通ハウジング122内に入っており、その一例が図1に示されている。いくつかの実施形態では、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106が、別々のハウジング122内にあっても良く、それらの例が、図8A~8C及び図10に示されている。いくつかの実施形態では、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106は、互いに電気的にアイソレーションされており、本願で記載するように、積分回路部、合算回路部又はバッファ回路部による以外では、これら導体セグメント106は、電気的に結合されない。
【0013】
各導体セグメント106は、時間に対する複数の電気信号又は連続的な電気信号を提供するように構成される。電気信号は、電圧信号であっても良いが、電流伝送導体104内に流れる電流量に関係している。ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106の夫々は、互いに物理的に分離する必要はなく、これは、各導体セグメント106の動作の当然の結果として、各導体セグメント106の出力端子に独立した電気信号を生じるためである。よって、図9に関して後述するように、いくつかの実施形態では、隣接する導体セグメント106が、互いにショートしても良い。
【0014】
合算回路部(summing element)103は、複数の積分回路部102夫々の出力信号の合計を生成するように構成されている(これは、以下で詳しく説明される)。いくつかの実施形態では、合算回路部103は、例えば、加算増幅回路(summing amplifier)であり、これは、アナログの加算増幅回路、又は、アナログ加算増幅回路と等価なデジタル回路として実装されても良い。図1では、合算回路部103が、試験測定装置105から機能的に分離されているとして示されているが、いくつかの実施形態では、合算回路部103が、試験測定装置105内にあっても良い。例えば、非特許文献3が示すように、デジタル・オシロスコープでは、複数チャンネル間の信号を加算する機能を有するものが周知である。更には、デジタル・オシロスコープでは、内部プロセッサを使用して、乗算、除算、積分、高速フーリエ変換など、さまざまな高度な数学的計算が可能なものも知られている。よって、本願の実施形態例では、積分回路部102を、試験測定装置105とは別個の独立した機能として示しているが、後述もするように、積分の機能を試験測定装置105内で行うようにしても良い。また、当然ながら、本願で言及する様々なアナログ信号のデジタル化を、デジタル・オシロスコープなどを含む試験測定装置105で行うようにしても良い。
【0015】
積分回路部(integrator element)102は、電流伝送導体104を流れる電流に比例する出力信号(経路108で表される)を提供するように構成されている。また、積分回路部102は、以下の図2~5に関して説明されるようなアナログ回路であっても良いし、又は、積分回路部102は、本願で説明するアナログ回路に相当するデジタル回路であっても良い。各積分回路部102は、その入力側(例えば、積分回路部がデジタル回路の場合)又はその出力側(例えば、積分回路部がアナログ回路であって、その出力信号がデジタル回路部に渡される場合)のどちらかに、アナログ・デジタル・コンバータがあっても良い。図1では、1つ以上の積分回路部102が、試験測定装置105から機能的に分離されているとして示されているが、いくつかの実施形態では、1つ以上の積分回路部102が、試験測定装置105内にあっても良い。図2~5に示す回路の夫々について、コイル出力端子間のインピーダンス負荷は、例えば、コイル出力端子間の抵抗の値を変更することによって、設定変更可能としても良い。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の導体セグメント106と、第2の導体セグメント106との間の相対的な位置関係は、第1の導体セグメント106に既知の信号を導入し、第2の導体セグメント106から対応する信号を受信することによって決定しても良い。
【0017】
図2は、本発明の実施形態の例による積分回路部202の概略である。図2の積分回路部202は、図1に関して上述した積分回路部102に用いることができる。図2に示すように、積分回路部202は、積分回路部202の入力端子で、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106の中の1つの導体セグメント106から電気出力信号を受けるように構成されている。このような構成では、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106の夫々について、個別の積分回路部202が存在しても良い。
【0018】
図3は、本発明の実施形態の例による積分回路部302の概略である。図3の積分回路部302は、図1に示す2つの積分回路部102を代替するなど、図1に関して上述した積分回路部102に用いることができる。図3に示すように、積分回路部302は、その入力端子において、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106中の2つ以上の導体セグメント106から電気出力信号を受けるように構成されている。図3は、積分回路部302に任意の個数(1~nとして特定される)の入力端子が存在しても良いことを示し、ここで、積分回路部302の各入力端子は、n個の導体セグメント106の中の1つに対応する。図3に示すように、積分回路部302の入力信号源である複数の導体セグメント106は、コモン・グラウンド(COM)を共有している。
【0019】
図4は、本発明の実施形態の例による合算回路部103の例に結合された複数の積分回路部402の概略図である。図4の積分回路部402は、図1に関して上述した積分回路部102に用いても良い。図4に示すように、2つ以上の積分回路部402は、合算回路部103(図1に関して上述したもの)と組み合わされて、これら複数の積分回路部402の出力信号が、合算回路部103に入力されるようにしても良い。図4に示す積分回路部402は、図1の積分回路部102及び図2の積分回路部202について上述したようなものとして良い。図4は、任意の数の積分回路部402(1番からn番)が存在しても良いことを示し、ここで各積分回路部402は、n個の導体セグメント106の中の1つに対応する。いくつかの実施形態では、各積分回路部402への入力信号は、差動信号であり、これによれば、複数の導体セグメント106が共通の基準電位端子(コモン・グラウンド)を共有する必要なしに、ロゴスキー・コイル101の各導体セグメント106を、個別の積分回路部402に接続できる。1つ以上の導体セグメント106が共通の基準電位端子を共有する構成では、配線の複雑さを軽減するため、各積分回路部402の差動入力信号の一方を共通の基準電位端子に結線しても良い。
【0020】
図5は、本発明の実施形態の例による、例示的な積分回路部502に結合された複数のバッファ回路部509を示す。図5の積分回路部502は、図1に示す2つの積分回路部102を置き換えるなど、図1に関して上述した積分回路部102に用いても良い。こうして、例えば、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106の中の各導体セグメント106が、それぞれに対応するバッファ回路部509に結合されて、各導体セグメント106の電気出力信号が、それぞれに対応するバッファ回路部509に提供され、そして、積分回路部502が、2つ以上(全ても含む)の個別のバッファ回路部509からの出力信号を受けるように構成されても良い。この構成例は、ロゴスキー・コイル101の複数の導体セグメント106を互いに電気的にアイソレーションする方法の1つである。電気的アイソレーションがあると、電気的アイソレーションがない場合と比較して、例えば、動作帯域幅が広くできることがある。加えて、この構成例によれば、感度を向上させるのに有益な場合がある。いくつかの変形例において、図5に示される構成例が、バッファ回路部509と積分回路部502との間の直接的な電気伝導路を持たない(即ち、導体は分離されているが、信号は伝達される:非特許文献1及び2参照)ように構成されたガルバニック・アイソレータ524を含んでいても良い。ガルバニック・アイソレータ524は、例えば、ガルバニック・アイソレーション(絶縁)を提供することが知られている変圧器その他の回路などであっても良い。
【0021】
図6は、本発明の実施形態の例による可変長マルチ・セグメントのロゴスキー・コイル電流センサ600の例を示す。図7は、図6の可変長マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ600を示すが、図6に示す電流伝送導体104よりも小さい電流伝送導体104を囲む状態で示した図である。図6~7に示すように、可変長電流センサ600には、2つ以上の導体セグメント106があり、夫々が電圧信号を生成する。これら導体セグメント106の電圧信号の例には、図6及び7では、V1からV5が付されている。可変長電流センサ600の複数の導体セグメント106の一部又は全部が、ロゴスキー・コイル101を形成する。
【0022】
導体セグメント106の鎖(チェーン)の一端部は、導体セグメント106を機械的に把持又はグリップするシンチ機構(cinch mechanism:把持機構)610に結合されても良く、これによって、所望の個数の導体セグメント106を使って、ロゴスキー・コイル101を形成できる。図7に示すように、シンチ機構610は、図7において電圧信号V1とV2に対応する導体セグメント106のようなループ、つまり、ロゴスキー・コイル101を構成する導体セグメント106のループ形成部分615と、電圧信号V3、V4、及びV5に対応する導体セグメント106のようなロゴスキー・コイル101のループの外側にある導体セグメント106の非ループ形成部分616とに分割するように構成される。このように、シンチ機構610があることによって、例えるならば、人が衣服を着る際に、ループを形成して腰の周りを締め付けるのに使用されるベルトと同じように、複数の導体セグメント106から構成されるループ(ロゴスキー・コイル101)を形成する部分615の長さを調節できる。別の見方をすれば、複数の導体セグメント106のチェーン全体に対して所望の位置にシンチ機構610をグリップすることによって、所望の量又は個数の複数の導体セグメント106から構成されるループ(ロゴスキー・コイル101)を形成する部分615の長さを調節して、ループ形成部分615の長さを定める動作を本願では「シンチする(cinch)」と呼ぶ。
【0023】
可変長の電流センサ600は、更に、ロゴスキー・コイル101を形成している導体セグメント106の個数を検出するように構成された検出器を有していても良い。この検出器は、例えば、機械的な検出器若しくはスイッチ、又は、光学的な検出器若しくはスイッチなどであっても良い。加えて、又は、これに代えて、導体セグメント106が、物理的な識別子又は電子的な識別子を有していても良く、可変長マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ600を電流伝送導体104の周囲に、所望の長さ(外周)のループ(ロゴスキー・コイル101)を形成する(シンチする)ときに、導体セグメント106が検出器を通過すると、こうした識別子が検出器によって検出される。検出器が光学的検出器を有する例では、光検出器が、ドット・コードやバー・コードなどのパターンによって始動しても良い。機械的検出器を利用する例としては、複数の導体のセットにすり合うようになっている複数のコンタクトのセットの組み合わせであって位置毎に固有の(ユニークな)組み合わせとなるように構成されたもの、ギアの歯又は摩擦機構によって係合されるロータリ・エンコーダなどがある。検出器の他の例としては、RFID検出器、ホール・センサ、ポテンショメータなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、検出器が、シンチ機構610の一部であっても良い。
【0024】
例えば、図6に示す例では、検出器は、図6のロゴスキー・コイル101を構成する5つの導体セグメント106を検出するであろう。図7に示す例では、検出器は、図7のロゴスキー・コイル101を構成する2つの導体セグメント106を検出すると共に、残りの3つの導体セグメント106は、図7のロゴスキー・コイル101の外側にあることを検出するであろう。また、ロゴスキー・コイル101の外側の導体セグメント106については、それらの電圧出力が、求めようとする電流伝送導体104を流れる電流に基づかないので、「オフ」とする。これら導体セグメント106は、例えば、それらの導体セグメント106を試験測定装置105が無視するか、又は、導体セグメント106が試験測定装置105から電気的にアイソレーションされることで「オフ」としても良い。ロゴスキー・コイル101を構成する導体セグメント106は、それらの電圧出力が求めようとする電流伝送導体104を流れる電流に基づくので、「オン」とするであろう。検出器は、導体セグメント106のチェーンが検出器を通り抜けるか又は通過できるように構成されても良い。このようにして、ロゴスキー・コイル101のサイズは、図6に示すように比較的大きな電流伝送導体104を収容するように調整されても良いし、図7に示すように比較的小さい電流伝送導体104を収容するように調整されても良い。図示の構成におけるループ・サイズの調整方法は、複数の配線などをまとめる時に使うプラスチック製の結束バンド(cable tie 又は zip tie)のループの直径を増減する方法に似ている。
【0025】
図8Aから8Cは、本発明の実施形態の例によるマルチ・セグメントのロゴスキ-・コイルの一部分の例を示している。具体的には、図8A~8Cは、マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサのロゴスキー・コイル801を構成する複数の導体セグメント106の中の数個の導体セグメント106を示す。このマルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサとしては、例えば、図1に関して上述した電流センサ100、図6に関して上述した電流センサ600、図9に関して後述する電流センサ900、図10に関して後述する電流センサ1000などがある。
【0026】
図8A及び8Bに示すように、複数の導体セグメント106の中の各導体セグメント106は、隣接する導体セグメント106とフレキシブルに(柔軟に)結合されても良い。この状況において、「フレキシブルに結合される(フレキシブル・ジョイント)」とは、導体セグメント106が隣接する導体セグメント106に対して、ピボット(軸を中心に回転)できるか又は位置変更できると同時に、導体セグメント106が隣接する導体セグメント106と物理的に結合されていることを意味する。例として、フレキシブル・ジョイントは、図8Aに示すもののような機械的なスナップ機構819などとすることもできるし、又は、8Bに示すもののような磁気的な結合機構820などとすることもできる。
【0027】
いくつかの実施形態では、複数の導体セグメント106の中のある1つの導体セグメント106は、複数の導体セグメント106の隣接する導体セグメント106から機械的に分離可能である。この状況において、「機械的に分離可能」とは、ある1つの導体セグメント106と隣接する導体セグメント106が、いずれのコンポーネントにも永久的な損傷を与えることなく、互いに分離及び移動できることを意味する。例として、機械的に分離可能な関節は、機械的なスナップ機構819(図8Aに示すものなど)、磁気的結合機構820(図8Bに示すものなど)、又は、プラグ・アンド・ソケット機構821(図8Cに示すものなど)などがあっても良い。
【0028】
従って、必要に応じて導体セグメント106を追加又は削減することによって、任意の長さのロゴスキー・コイル801を形成することができる。また、導体セグメント106を任意の順序で加えて、ロゴスキー・コイル801を形成できる。図8A~8Cに示し、本願で説明するジョイントの形態は、本願で説明、図示又は意図する他の任意の形態と共に利用できる。
【0029】
図9は、マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ900の例を示し、これは、図1のマルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ100と類似しているが、各導体セグメントの出力リード線911が、図9のマルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ900のロゴスキー・コイル901の同一側にある点で異なっている。即ち、図1に示す電流センサ100では、電流伝送導体104から見て、2対の出力リード線が、互いにほぼ180度の関係で配置され、そして、電流伝送導体104から見て、互いにほぼ180度の関係で配置された2つの積分回路部102に夫々接続されているが、図9に電流センサ900では、電流伝送導体104から見て、2対の出力リード線911が、ほぼ同じ側に配置される。こうしたことから、例えば、ロゴスキー・コイル901が、第1導体セグメント906A及び第2導体セグメント906Bを有していても良い。第1導体セグメント906A及び第2導体セグメント906Bは、第1導体セグメント906Aの第1端部913Aと、第2導体セグメント906Bの第1端部913Bとにある連結ポイント912で接合しても良い。第1導体セグメント906Aと第2導体セグメント906Bが連結ポイント912で電気的に接合されているにもかかわらず、第1導体セグメント906Aと第2導体セグメント906Bは、それでもやはり、それぞれの出力リード線911に独立した差動電圧を生成する。他方において、第1導体セグメント906Aと第2導体セグメント906Bを連結ポイント912で短絡させると、複数の積分回路部102間のコモン・モード接続が可能になる。これら積分回路部102が、第1導体セグメント906Aと第2導体セグメント906Bで共有される共通モード電圧を除去する限り、連結ポイント912が相互に短絡(ショート)しているか又はオープンであるかによって、出力リード線で測定される第1セグメント導体906Aと第2導体セグメント906Bの出力信号は変化しない。
【0030】
第1導体セグメント906Aの第2端914Aと、第2導体セグメント906Bの第2端914Bには、出力リード線911が合っても良い。図9に示すように、これら出力リード線911は、第1導体セグメント906と第2導体セグメント906Bのそれぞれに対応する積分回路部102に結合されても良い。これに代えて、図2~5に関して上述した積分回路部の構成のいずれかを、図9に示す積分回路部102の代わりに利用しても良い。出力リード線911が、ロゴスキー・コイル901の同一側にあるという構成は、出力リード線911を他のデバイス又は回路要素に接続する場合に、出力リード線911へのアクセスがより良くなるという利点があるだろう。
【0031】
図10は、マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ1000の例を示し、このとき、マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ1000の中のロゴスキー・コイル1001の第1部分1015がプリント回路基板1023の第1面1017側にあり、ロゴスキー・コイル1001の第2部分1016がプリント回路基板1023の第2面1018側にあり、このとき、第2面1018は、第1面1017の裏(反対)側である。別の見方をすれば、プリント回路基板1023が、ロゴスキー・コイル1001の第1部分1015と、ロゴスキー・コイル1001の第2部分1016との間にある。第1部1015及び第2部1016の夫々には、1つ以上の導体セグメント106がある。図10に示すように、各導体セグメント106は、積分回路部102に結合されても良く、これは、次いで、合算回路部103に接続される。これに代えて、図2~5に関して上述した積分回路部の構成のいずれかを、図10に示す積分回路部102の代わりに利用しても良い。
【0032】
図10に示すように、電流センサ1000の構成は、プリント回路基板1023上のトレース1004を流れる電流を測定するのに使用されても良い。このような構成の変形例では、ロゴスキー・コイル1001の第2部分1016が、永久的にプリント回路基板1023に組み込まれても良い。この状況において「永久的」とは、ロゴスキー・コイル1001の第2部分1016が、図10のマルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ1000の正常な動作中に、ロゴスキー・コイル1001から除去されないことを意図していることを意味する。
【0033】
いくつかの実施形態では、ロゴスキー・コイル1001の第1部分1015及び第2部分1016の一方又は両方が、例えば、測定されるトレースの周囲にクランプされても良いし、互いに取り付けられても良いし、プリント回路基板1023に取り付けても良い。また、こうした取付が、例えば、磁石又は他の接続機構によって行われても良い。
【0034】
図11は、電流伝送導体104を流れる電流を測定するための電流センサ100の例示的な利用方法を示す。図11に示すように、方法1100には、電流伝送導体104の周りを実質的に囲むようにロゴスキー・コイル101を配置する処理1101があっても良い。このロゴスキー・コイル101は、複数の導体セグメント106を有し、また、複数の導体セグメント106の中の各導体セグメント106は、らせん状巻線107を有する。複数の導体セグメント106は、実質的に(ほぼ)完全なループを形成するように配置される。
【0035】
この方法には、また、ロゴスキー・コイル101を構成する複数の導体セグメント106の中の少なくとも2つの導体セグメント106から複数の電圧信号を得る処理1102がある。いくつかの実施形態では、複数の導体セグメント106の中の少なくとも2つの導体セグメント106から複数の電圧信号を得る処理1102には、複数の導体セグメント106の中の少なくとも2つの導体セグメント106から時間に対して複数の電圧信号を得る処理がある。このような実施形態では、この方法は、複数の積分回路部102を使って、これら複数の電圧信号を積分する処理1105があり、これによって、複数の積分された出力信号を生成する。
【0036】
時間に対して複数の電圧信号を得る実施形態では、この方法の複数の電圧信号を積分する処理1105が、例えば、第1積分回路部102を用いて、少なくとも2つの導体セグメント106の中の第1導体セグメント106からの第1電圧信号を積分して第1積分出力信号を生成する処理と、第2積分回路部102を用いて、少なくとも2つの導体セグメント106の中の第2導体セグメント106からの第2電圧信号を積分して第2積分出力信号を生成する処理とを有していても良い。次いで、この方法が、合算回路部103を用いて、第1積分出力信号及び第2積分出力信号を合算する処理1106を有していても良い。
【0037】
時間に対して複数の電圧信号を得る実施形態では、この方法が、更に、複数の電圧信号をバッファする処理1104を有していても良い。このとき、このバッファする処理1104は、例えば、第1バッファ回路部509を用いて、少なくとも2つの導体セグメント106の中の第1導体セグメント106からの第1電圧信号をバッファして第1バッファ信号を生成する処理と、第2バッファ回路部509を用いて、少なくとも2つの導体セグメント106の中の第2導体セグメント106からの第2電圧信号をバッファして第2バッファ信号を生成する処理とを有していても良い。次いで、この方法は、積分回路部102を用いて、第1バッファ信号及び第2バッファ信号を積分する処理1105を行っても良い。
【0038】
いくつかの実施形態では、電流伝送導体104の周囲を実質的に囲むようにロゴスキー・コイル101を配置する処理1101が、ロゴスキー・コイル101の第1部分1015を、プリント回路基板1023の第1面1017側に配置する処理と、ロゴスキー・コイル101の第2部分1016を、プリント回路基板1023の第2面1018側に配置する処理とを有していても良い。このとき、プリント回路基板1023は、ロゴスキー・コイル101の第1部分1015と第2部分1016の間にあり、また、第1部分1015と第2部分1016の夫々は、複数の導体セグメント106の中の1つ以上の導体セグメント106を有していても良い。また、プリント回路基板1023の第2面1018は、第1面1017の裏面であっても良い。
【0039】
いくつかの実施形態では、電流伝送導体104の周囲を実質的に囲むようにロゴスキー・コイル101を配置する処理1101において、図6及び7に示すように、複数の導体セグメント106の中の第1部分(ループ形成部分)615でロゴスキー・コイル101を形成する一方で、複数の導体セグメント106の中の第2部分(非ループ形成部分)616は、ロゴスキー・コイル101を形成するループの外部に配置するようにして、電流伝送導体104の周囲において複数の導体セグメント106をシンチ(cinch:所望の長さの外周を有するループを形成)しても良い。このような実施形態では、この方法が、更に、複数の導体セグメント106の中の第1部分(ループ形成部分)615の量又は個数を、検出器を用いて、検出する処理1103を有していても良い。

実施例
【0040】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0041】
実施例1は、電流伝送導体の電流を測定するように構成された電流センサであって、実質的に完全なループを形成するように配置可能な複数の導体セグメントを有するロゴスキー・コイルを具え、このとき、複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントが、複数の導体セグメントの中の第2導体セグメントから電気的にアイソレーションされている。
【0042】
実施例2は、実施例1の電流センサであって、複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントから出力信号を受けるように構成された積分回路部を更に具える。
【0043】
実施例3は、実施例1から2のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の各導体セグメントのための個別の積分回路部を更に具えている。
【0044】
実施例4は、実施例3の電流センサであって、個別の積分回路部の出力信号の合計(sum:和)を生成するように構成された合算回路部を更に具える。
【0045】
実施例5は、実施例4の電流センサであって、合算回路部が加算増幅回路(summing amplifier)である。
【0046】
実施例6は、実施例1から5のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の2つ以上の導体セグメントからの出力信号を受けるように構成された積分回路部を更に具えている。
【0047】
実施例7は、実施例1から6のいずれの電流センサであって、第1導体セグメントの出力リード線が、第2導体セグメントの出力リード線とロゴスキー・コイルの同じ側にある。
【0048】
実施例8は、実施例1から7のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントが、複数の導体セグメントの中の隣接する導体セグメントに柔軟に結合される。
【0049】
実施例9は、実施例1から7のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントが、複数の導体セグメントの中の隣接する導体セグメントから機械的に分離可能である。
【0050】
実施例10は、実施例1から9のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントが、複数の導体セグメントの中の別の導体セグメントからガルバニック・アイソレーションされている。
【0051】
実施例11は、実施例1から10のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の各導体セグメントのための個別のバッファ回路部を更に具えている。
【0052】
実施例12は、実施例11の電流センサであって、2つ以上の個別のバッファ回路部からの出力信号を受けるように構成された積分回路部を更に具えている。
【0053】
実施例13は、実施例1から10のいずれの電流センサであって、ロゴスキー・コイルを構成する導体セグメントの量又は個数が、調整可能である。
【0054】
実施例14は、実施例13の電流センサであって、ロゴスキー・コイルを構成する複数の導体セグメントの中の第1部分と、ロゴスキー・コイルの外側にある複数の導体セグメントの中の第2部分とに分割するシンチ機構を更に具え、このとき、上記第1部分と上記第2部分は、互いに結合されている。
【0055】
実施例15は、実施例14の電流センサであって、ロゴスキー・コイルを形成している導体セグメントの量又は個数を検出するように構成された検出器を更に具えている。
【0056】
実施例16は、実施例15の電流センサであって、検出器が、ロゴスキー・コイルを形成している導体セグメントの量又は個数を検出するために、少なくとも1つの機械的スイッチ又は光学的スイッチを有している。
【0057】
実施例17は、実施例1から16のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの各導体セグメントが共通のハウジング内にある。
【0058】
実施例18は、実施例1から16のいずれの電流センサであって、複数の導体セグメントの中の第1導体セグメントが第1ハウジング内にあり、複数の導体セグメントの中の第2導体セグメントが第1ハウジングとは別の第2ハウジングにある。
【0059】
実施例19は、電流伝送導体の電流を測定するための電流センサを利用する方法であって、ロゴスキー・コイルが有する複数の導体セグメントを実質的に完全なループを形成するように配置することで、電流伝送導体の周りを実質的に囲むように上記ロゴスキー・コイルを配置する処理と、複数の導体セグメントの中の少なくとも2つの導体セグメントから電圧信号を得る処理とを具えている。
【0060】
実施例20は、実施例19の方法であって、複数の導体セグメントの中の少なくとも2つの導体セグメントから電圧信号を得る処理が、複数の導体セグメントの中の少なくとも2つの導体セグメントから時間に対する複数の電圧信号を得る処理を有している。
【0061】
実施例21は、実施例19又は20の方法であって、積分回路部を用いて電圧信号を積分し、積分出力信号を生成する処理を更に具えている。
【0062】
実施例22は、実施例19又は20のいずれかの方法であって、第1積分回路部を用いて、少なくとも2つの導体セグメントの中の第1導体セグメントからの第1の電圧信号を積分して第1積分出力信号を生成する処理と、第2積分回路部を用いて、少なくとも2つの導体セグメントの中の第2導体セグメントからの第2の電圧信号を積分して第2積分出力信号を生成する処理と、合算回路部を用いて、第1積分出力信号及び第2積分出力信号を合算する処理とを更に具えている。
【0063】
実施例23は、実施例21又は22の方法であって、バッファ回路部を用いて、電圧信号を積分する前に電圧信号をバッファする処理を更に具えている。
【0064】
実施例24は、実施例19から23のいずれの方法であって、電流伝送導体の周りを実質的に囲むように上記ロゴスキー・コイルを配置する処理が、プリント回路基板の第1面側にロゴスキー・コイルの第1部分を配置する処理と、プリント回路基板の第2面側にロゴスキー・コイルの第2部分を配置する処理とを有し、このとき、プリント回路基板は、ロゴスキー・コイルの第1部分と第2部分の間に存在し、第1部分と第2部分の夫々は、複数の導体セグメントの中の1つ以上の導体セグメントを有している。
【0065】
実施例25は、実施例19から23のいずれの方法であって、電流伝送導体の周りを実質的に囲むように上記ロゴスキー・コイルを配置する処理が、複数の導体セグメントの中の第1部分でロゴスキー・コイルを形成する一方で、複数の導体セグメントの中の第2部分は、上記ロゴスキー・コイルの外部に配置して、電流伝送導体104の周囲に複数の導体セグメントで所望の長さの外周を有する上記ロゴスキー・コイルを形成する(cinch:シンチする)処理を有する。
【0066】
実施例26は、実施例25の方法であって、検出器を用いて、複数の導体セグメントの中の第1部分における導体セグメントの量又は個数を検出する処理を更に具える。
【0067】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0068】
開示された主題の上述の実施形態は、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべての実施形態において、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0069】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0070】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0071】
更に、用語「を具える(comprises)」及びその文法的に等価なものは、本願において、他のコンポーネント(components)、機能(features)、ステップ、処理(processes)、工程(operations)がオプションで存在することを示すのに使用される。例えば、コンポーネントA、B及びC「を具える(comprising)」又は「何かが」コンポーネントA、B及びC「を具える(which comprises)」という条件は、コンポーネントA、B及びCだけを含んでも良いし、又は、コンポーネントA、B及びCと共に1つ以上の他のコンポーネントを含んでいても良い。
【0072】
説明の都合上、本発明の具体的な実施形態例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。
【符号の説明】
【0073】
100 電流センサ
101 ロゴスキー・コイル
102 積分回路部
103 合算回路部
104 電流伝送導体
105 試験測定装置
106 導体セグメント
107 らせん状巻線
108 積分回路部の出力信号経路
122 ハウジング
202 積分回路部
302 積分回路部
402 積分回路部
502 積分回路部
509 バッファ回路部
524 ガルバニック・アイソレータ
600 可変長マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ
610 シンチ機構
615 ループ形成部分
616 非ループ形成部分
801 ロゴスキー・コイル
819 機械的スナップ機構
820 磁気的結合機構
821 プラグ・アンド・ソケット機構
900 マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ
901 ロゴスキー・コイル
906A 第1導体セグメント
906B 第2導体セグメント
911 出力リード線
912 連結ポイント
913A 第1導体セグメントの第1端部
913B 第2導体セグメントの第1端部
914A 第1導体セグメントの第2端部
914B 第2導体セグメントの第2端部
1000 マルチ・セグメント・ロゴスキー・コイル電流センサ
1001 ロゴスキー・コイル
1015 ロゴスキー・コイルの第1部分
1016 ロゴスキー・コイルの第2部分
1017 プリント回路基板の第1面
1018 プリント回路基板の第2面
1023 プリント回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11