(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054887
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】成型体の製造方法、加飾用フィルム、装飾体、電子機器及び自動車用部品
(51)【国際特許分類】
B29C 51/02 20060101AFI20220331BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220331BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20220331BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B29C51/02
B32B27/00 A
B29C51/14
C08F290/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162145
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 優香
(72)【発明者】
【氏名】渡部 淳
【テーマコード(参考)】
4F100
4F208
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AH05C
4F100AK01C
4F100AK03C
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AS00B
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4F100CA07C
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4F100GB32
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4F208MA01
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4J127AA03
4J127AA07
4J127BA031
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
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4J127DA59
4J127DA61
4J127FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた耐熱性を有する加飾用フィルム及びその成型体の製造方法を提供する。
【解決手段】基材10と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層20と、をこの順で含む加飾用フィルム100、及び加飾用フィルムを成型することと、成型後の上記加飾用フィルムの上記液晶層においてコレステリック相を形成することと、上記コレステリック相を重合によって固定することと、を含む成型体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む加飾用フィルムを準備することと、
前記加飾用フィルムを成型することと、
成型後の前記加飾用フィルムの前記液晶層においてコレステリック相を形成することと、
前記コレステリック相を重合によって固定することと、
を含む成型体の製造方法。
【請求項2】
前記加飾用フィルムの準備において、前記カイラル化合物が、光異性化可能なカイラル化合物を含み、前記液晶層が、前記光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域を含む、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項3】
前記加飾用フィルムの準備と前記加飾用フィルムの成型との間に、前記液晶層の一部を光異性化することを含む、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項4】
前記加飾用フィルムの成型と前記コレステリック相の形成との間に、前記液晶層の一部を光異性化することを含む、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項5】
前記コレステリック相の固定が、前記コレステリック相を光重合によって固定することを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成型体の製造方法。
【請求項6】
前記コレステリック相の固定が、前記コレステリック相を熱重合によって固定することを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成型体の製造方法。
【請求項7】
前記カイラル化合物が、ビナフチル基を含むカイラル化合物を含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の成型体の製造方法。
【請求項8】
前記ビナフチル基を含むカイラル化合物が、下記式(BN1)又は下記式(BN2)で表されるカイラル化合物である、請求項7に記載の成型体の製造方法。
【化1】
式(BN1)及び式(BN2)中、L
1は、単結合又は2価の連結基を表し、Aは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、L
2は、単結合又は2価の連結基を表し、Bは、1価の芳香族炭化水素基を表す。
【請求項9】
前記カイラル化合物の含有量に対する前記高分子液晶化合物の含有量の比が、質量基準で、3~20である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の成型体の製造方法。
【請求項10】
前記メソゲン基が、少なくとも2つの芳香族炭化水素基を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の成型体の製造方法。
【請求項11】
前記重合性基が、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の成型体の製造方法。
【請求項12】
基材と、
側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、
をこの順で含む加飾用フィルム。
【請求項13】
前記カイラル化合物が、光異性化可能なカイラル化合物を含み、前記液晶層が、前記光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域を含む、請求項12に記載の加飾用フィルム。
【請求項14】
前記カイラル化合物が、ビナフチル基を含むカイラル化合物を含む、請求項12又は請求項13に記載の加飾用フィルム。
【請求項15】
前記ビナフチル基を含むカイラル化合物が、下記式(BN1)又は下記式(BN2)で表されるカイラル化合物である、請求項14に記載の加飾用フィルム。
【化2】
式(BN1)及び式(BN2)中、L
1は、単結合又は2価の連結基を表し、Aは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、L
2は、単結合又は2価の連結基を表し、Bは、1価の芳香族炭化水素基を表す。
【請求項16】
前記カイラル化合物の含有量に対する前記高分子液晶化合物の含有量の比が、質量基準で、3~20である、請求項12~請求項15のいずれか1項に記載の加飾用フィルム。
【請求項17】
前記メソゲン基が、少なくとも2つの芳香族炭化水素基を含む、請求項12~請求項16のいずれか1項に記載の加飾用フィルム。
【請求項18】
前記重合性基が、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項12~請求項17のいずれか1項に記載の加飾用フィルム。
【請求項19】
前記液晶層が、コレステリック相を含む、請求項12~請求項18のいずれか1項に記載の加飾用フィルム。
【請求項20】
請求項12~請求項19のいずれか1項に記載の加飾用フィルムを用いて装飾されてなる装飾体。
【請求項21】
請求項12~請求項19のいずれか1項に記載の加飾用フィルムを用いて装飾されてなる電子機器。
【請求項22】
請求項12~請求項19のいずれか1項に記載の加飾用フィルムを用いて装飾されてなる自動車用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成型体の製造方法、加飾用フィルム、装飾体、電子機器及び自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物は、分子配列に応じて種々の液晶相を形成する。液晶相は、通常、液晶化合物の配向によって形成される。特許文献1には、基板フィルムと液晶材料フィルムを含むシート状積層体を、所望の形状に成型した後、液晶材料フィルムを構成する液晶材料を配向させる液晶成型物の製造法が開示されている。
【0003】
液晶相の一種として知られているコレステリック相は、光の選択反射性といった特有の性質を有する。コレステリック相の性質は、液晶化合物によって形成されるらせん構造に由来する。コレステリック相を形成する液晶化合物は、例えば、種々の物品の装飾に使用されている。特許文献2には、パターン化されたコレステリック液晶反射層を有する加飾シートが開示されている。特許文献3には、基材上にコレステリック液晶化合物及び光異性化化合物を含む液晶層を形成する工程と、上記液晶層を光異性化する工程と、上記液晶層を硬化する工程とをこの順で含む成型用加飾フィルムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-341192号公報
【特許文献2】特開2017-205988号公報
【特許文献3】国際公開第2020/122245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加飾用フィルムを用いる装飾方法の多くは、加飾用フィルムの成型を伴う。例えば、加飾用フィルムは、装飾の対象物と同時に成型されることがある。例えば、加飾用フィルムは、装飾の対象物への密着によって成型されることがある。また、成型された加飾用フィルムは、加飾用成型体として使用されることがある。
【0006】
加飾用フィルム(加飾フィルムを用いて装飾された物品及び加飾用フィルムの成型体を含む。以下、本段落において同じ。)は、高温環境下で運搬、保管又は使用されることがある。液晶化合物を含む加飾用フィルムが高温にさらされると、液晶相の形成が阻害される、又は液晶相の特性が維持されない可能性がある。このため、液晶化合物を含む加飾用フィルムの耐熱性の向上が求められている。
【0007】
加飾用フィルムの成型が液晶化合物の配向、すなわち、液晶相の形成を伴う場合には、液晶相の形成の迅速化も求められている。
【0008】
本開示の一実施形態は、迅速に液晶相を形成し、優れた耐熱性を有する成型体の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを用いて装飾されてなる装飾体を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを用いて装飾されてなる電子機器を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを用いて装飾されてなる自動車用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む加飾用フィルムを準備することと、上記加飾用フィルムを成型することと、成型後の上記加飾用フィルムの上記液晶層においてコレステリック相を形成することと、上記コレステリック相を重合によって固定することと、を含む成型体の製造方法。
<2> 上記加飾用フィルムの準備において、上記カイラル化合物が、光異性化可能なカイラル化合物を含み、上記液晶層が、上記光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域を含む、<1>に記載の成型体の製造方法。
<3> 上記加飾用フィルムの準備と上記加飾用フィルムの成型との間に、上記液晶層の一部を光異性化することを含む、<1>に記載の成型体の製造方法。
<4> 上記加飾用フィルムの成型と上記コレステリック相の形成との間に、上記液晶層の一部を光異性化することを含む、<1>に記載の成型体の製造方法。
<5> 上記コレステリック相の固定が、上記コレステリック相を光重合によって固定することを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成型体の製造方法。
<6> 上記コレステリック相の固定が、上記コレステリック相を熱重合によって固定することを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成型体の製造方法。
<7> 上記カイラル化合物が、ビナフチル基を含むカイラル化合物を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の成型体の製造方法。
<8> 上記ビナフチル基を含むカイラル化合物が、下記式(BN1)又は下記式(BN2)で表されるカイラル化合物である、<7>に記載の成型体の製造方法。
【0010】
【0011】
式(BN1)及び式(BN2)中、L1は、単結合又は2価の連結基を表し、Aは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、L2は、単結合又は2価の連結基を表し、Bは、1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0012】
<9> 上記カイラル化合物の含有量に対する上記高分子液晶化合物の含有量の比が、質量基準で、3~20である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の成型体の製造方法。
<10> 上記メソゲン基が、少なくとも2つの芳香族炭化水素基を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の成型体の製造方法。
<11> 上記重合性基が、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の成型体の製造方法。
<12> 基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む加飾用フィルム。
<13> 上記カイラル化合物が、光異性化可能なカイラル化合物を含み、上記液晶層が、上記光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域を含む、<12>に記載の加飾用フィルム。
<14> 上記カイラル化合物が、ビナフチル基を含むカイラル化合物を含む、<12>又は<13>に記載の加飾用フィルム。
<15> 上記ビナフチル基を含むカイラル化合物が、下記式(BN1)又は下記式(BN2)で表されるカイラル化合物である、<14>に記載の加飾用フィルム。
【0013】
【0014】
式(BN1)及び式(BN2)中、L1は、単結合又は2価の連結基を表し、Aは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、L2は、単結合又は2価の連結基を表し、Bは、1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0015】
<16> 上記カイラル化合物の含有量に対する上記高分子液晶化合物の含有量の比が、質量基準で、3~20である、<12>~<15>のいずれか1つに記載の加飾用フィルム。
<17> 上記メソゲン基が、少なくとも2つの芳香族炭化水素基を含む、<12>~<16>のいずれか1つに記載の加飾用フィルム。
<18> 上記重合性基が、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<12>~<17>のいずれか1つに記載の加飾用フィルム。
<19> 上記液晶層が、コレステリック相を含む、<12>~<18>のいずれか1つに記載の加飾用フィルム。
<20> <12>~<19>のいずれか1つに記載の加飾用フィルムを用いて装飾されてなる装飾体。
<21> <12>~<19>のいずれか1つに記載の加飾用フィルムを用いて装飾されてなる電子機器。
<22> <12>~<19>のいずれか1つに記載の加飾用フィルムを用いて装飾されてなる自動車用部品。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態によれば、迅速に液晶相を形成し、優れた耐熱性を有する成型体の製造方法が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムが提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを用いて装飾されてなる装飾体が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを用いて装飾されてなる電子機器が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムを用いて装飾されてなる自動車用部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ある実施形態に係る加飾用フィルムの層構成を示す概略側面図である。
【
図2】ある実施形態に係る加飾用フィルムの層構成を示す概略側面図である。
【
図3】ある実施形態に係る成型体の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されない。以下の実施形態は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0019】
本開示の実施形態について図面を参照して説明する場合、図面において重複する構成要素及び符号の説明を省略することがある。図面において同一の符号を用いて示す構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0020】
本開示において、「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される技術的要素(例えば、特定の特徴、構造又は特性。以下、本段落において同じ。)が本開示の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。本開示において、「一実施形態」又は「ある実施形態」という表現の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を指すとは限らない。本開示の目的に一致する様式において、どんな実施形態でも、少なくとも1つの他の実施形態と組み合わされてもよい。
【0021】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0022】
本開示において、ある対象物中に、ある成分に該当する複数の物質が存在する場合、上記対象物中の上記成分の量は、特に断らない限り、上記対象物中に存在する複数の上記物質の合計量を意味する。
【0023】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0024】
本開示において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0025】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0026】
本開示において、序数詞(例えば、「第1」及び「第2」)は、構成要素を区別するために使用する用語であり、構成要素の数及び構成要素の優劣を制限するものではない。
【0027】
本開示において、「固形分」とは、溶剤を除く成分を意味する。
【0028】
本開示において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0029】
本開示において、置換及び無置換を記していない基(原子団)は、置換基を有する基及び置換基を有しない基を包含する。例えば「アルキル基」との表記は、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)及び置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)を包含する。
【0030】
本開示において、化学構造式における水素原子は、省略して記載される場合がある。
【0031】
<加飾用フィルム>
以下、本開示の一態様に係る加飾用フィルムについて説明する。本開示の発明者らは、液晶化合物の配向性及び液晶相の熱安定性に影響を及ぼす要因について検討した。検討の結果、本開示の発明者らは、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物が加飾用フィルム(加飾フィルムを用いて装飾された物品及び加飾用フィルムの成型体を含む。)の耐熱性を向上させることを見出した。以下、「側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物」を「特定液晶化合物」という場合がある。上記のような現象が起こる理由は、必ずしも明らかとなっていない。本開示の発明者らは、特定液晶化合物の利点について次のように考えている。低分子液晶化合物に比べて、特定液晶化合物は、高い熱安定性を有し、高温加圧の条件下であっても液晶層から流出しにくい。液晶層は、液晶化合物を含む層である。また、特定液晶化合物の側鎖に導入された重合性基は、重合によって特定液晶化合物の分子配列を保持し、液晶相の特性を維持できる。以下、加飾用フィルムの実施形態について説明する。
【0032】
本開示の他の一実施形態に係る加飾用フィルムは、基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む。上記した実施形態によれば、優れた耐熱性を有する加飾用フィルムが提供される。
【0033】
<<基材>>
基材の種類は、制限されない。成型容易性の観点から、基材は、樹脂を含むことが好ましい。基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、樹脂を含むフィルムである。
【0034】
樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、アクリル-ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリウレタン及びウレタン-アクリル樹脂が挙げられる。加工性及び強度の観点から、樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリル-ポリカーボネート、ポリウレタン及びウレタン-アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。アクリル-ポリカーボネートとは、カーボネート基(すなわち、-O-(C=O)-O-)を含むアクリル樹脂である。
【0035】
基材は、1種又は2種以上の樹脂を含んでもよい。
【0036】
基材における樹脂の含有率は、基材の全質量に対して、90質量%~100質量%であることが好ましく、95質量%~100質量%であることがより好ましく、98質量%~100質量%であることが特に好ましい。基材における樹脂の含有率は、基材の全質量に対して、100質量%未満であってもよい。
【0037】
基材は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、潤滑剤(例えば、鉱油、炭化水素、脂肪酸、アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、金属石けん、天然ワックス及びシリコーン)、無機難燃剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、有機難燃剤(例えば、ハロゲン系難燃剤及びリン系難燃剤)、有機又は無機の充填剤(例えば、金属粉、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、カーボン繊維及び木粉)、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、分散剤、カップリング剤、発泡剤及び着色剤が挙げられる。
【0038】
基材は、単層構造又は多層構造を有してもよい。基材は、2つ以上の樹脂含有層を含む積層体であってもよい。樹脂含有層における樹脂としては、例えば、既述の樹脂が挙げられる。基材は、機能性層を含んでもよい。機能性層としては、例えば、易接着層が挙げられる。基材は、樹脂含有層と、機能性層と、を含む積層体であってもよい。機能性層は、樹脂含有層の片面又は両面に配置されてもよい。
【0039】
基材の市販品としては、例えば、テクノロイ(登録商標)(例えば、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、及びアクリル樹脂/ポリカーボネート樹脂の積層フィルム、住友化学株式会社)、ABSフィルム(オカモト株式会社)、ABSシート(積水成型工業株式会社)、テフレックス(登録商標)(ポリエチレンテレフタレートフィルム、帝人フィルムソリューション株式会社)、ルミラー(登録商標)易成型タイプ(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東レ株式会社)ピュアサーモ(ポリプロピレンフィルム、出光ユニテック株式会社)及びコスモシャイン(登録商標)(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡株式会社)が挙げられる。
【0040】
基材の厚さは、制限されない。耐久性の向上の観点から、基材の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが特に好ましい。成型容易性の観点から、基材の厚さは、500μm以下であることが好ましく、350μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。耐久性の向上及び成型容易性の観点から、基材の厚さは、10μm~500μmであることが好ましく、20μm~350μmであることがより好ましく、30μm~200μmであることが特に好ましい。
【0041】
<<液晶層>>
(特定液晶化合物)
液晶層は、特定液晶化合物を含む。特定液晶化合物は、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物である。
【0042】
特定液晶化合物は、側鎖にメソゲン基を含む。メソゲン基は、液晶相の形成に寄与する原子団である。特定液晶化合物の側鎖に導入されたメソゲン基は、特定液晶化合物の配向に要する温度を低くできる。例えば、特定液晶化合物は、主鎖のみにメソゲン基を含む高分子液晶化合物よりも低い温度で配向でき、特定液晶化合物の配向に要する時間を低減できる。
【0043】
メソゲン基は、側鎖の途中に配置されてもよい。メソゲン基は、側鎖の末端に配置されてもよい。配向性保持の観点から、メソゲン基は、側鎖の途中に配置されていることが好ましい。特定液晶化合物は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、主鎖にメソゲン基を含んでもよい。低温での配向性の観点から、特定液晶化合物は、側鎖のみにメソゲン基を含むことが好ましい。
【0044】
メソゲン基は、重合性基を含む側鎖と同じ側鎖に配置されてもよい。メソゲン基は、重合性基を含む側鎖と異なる側鎖に配置されてもよい。
【0045】
特定液晶化合物は、1種又は2種以上のメソゲン基を含んでもよい。特定液晶化合物は、2つ以上の同種のメソゲン基を含んでもよい。複数のメソゲン基は、同じ側鎖に配置されてもよい。複数のメソゲン基は、複数の側鎖にそれぞれ配置されてもよい。
【0046】
メソゲン基の種類は制限されない。メソゲン基として、例えば、公知のメソゲン基が利用される。メソゲン基は、例えば、「FlussigeKristalle in Tabellen II」(VEB DeutscheVerlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊、特に第7頁~第16頁)及び「液晶便覧」(液晶便覧編集委員会編、丸善、2000年刊、特に第3章)に記載されている。メソゲン基の化学構造としては、例えば、特開2007-279688号公報の段落0086に記載された化学構造が挙げられる。メソゲン基は、コレステリック相の形成に寄与する原子団であることが好ましい。
【0047】
液晶相の形成の観点から、メソゲン基は、環状構造を含むことが好ましい。環状構造は、単環又は縮合環であってもよい。環状構造は、芳香族性を有する環状構造又は芳香族性を有しない環状構造であってもよい。メソゲン基は、芳香族性を有する環状構造を含むことがより好ましい。環状構造は、複素環を含んでもよい。環状構造を含む原子団としては、例えば、芳香族炭化水素基及び脂環式炭化水素基が挙げられる。メソゲン基は、1種又は2種以上の環状構造を含んでもよい。メソゲン基は、2つ以上の同種の環状構造を含んでもよい。
【0048】
液晶相の形成の観点から、メソゲン基は、少なくとも1つの芳香族炭化水素基を含むことが好ましく、少なくとも2つの芳香族炭化水素基を含むことがより好ましい。液晶相の形成の観点から、芳香族炭化水素基は、炭素数が6~10の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数が6~8の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、フェニレン基であることが特に好ましい。芳香族炭化水素基(フェニレン基を含む。)における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基が挙げられる。液晶相の形成の観点から、メソゲン基における芳香族炭化水素基の数は、2つ~8つであることが好ましく、3つ~6つであることがより好ましく、3つ~5つであることが特に好ましい。
【0049】
メソゲン基が複数の芳香族炭化水素基を含む場合、隣り合う2つの芳香族炭化水素基は、単結合又は連結基を介して連結されてもよい。連結基としては、例えば、-CO-O-及び-C-O-が挙げられる。連結基は、-CO-O-であることが好ましい。メソゲン基は、単結合及び-CO-O-からなる群より選択される少なくとも1種を介して連結された少なくとも2個の芳香族炭化水素基を含むことが好ましい。メソゲン基は、-CO-O-を介して連結された少なくとも2個の芳香族炭化水素基を含むことが好ましい。
【0050】
特定液晶化合物は、側鎖に重合性基を含む。重合性基は、重合によって特定液晶化合物の分子配列を保持し、液晶相の特性を維持できる。重合の反応様式は、制限されない。重合の反応様式としては、例えば、付加重合、重縮合、付加縮合、重付加及び開環重合が挙げられる。また、重合は、分子間又は分子内の架橋を含む。
【0051】
重合性基は、側鎖の途中に配置されてもよい。重合性基は、側鎖の末端に配置されてもよい。反応性の向上の観点から、重合性基は、側鎖の末端に配置されていることが好ましい。特定液晶化合物は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、主鎖に結合した重合性基を含んでもよい。
【0052】
重合性基は、メソゲン基を含む側鎖と同じ側鎖に配置されてもよい。重合性基は、メソゲン基を含む側鎖と異なる側鎖に配置されてもよい。重合性基がメソゲン基を含む側鎖と同じ側鎖に配置されている場合、重合性基は、メソゲン基に直接又は連結基を介して結合してもよい。
【0053】
特定液晶化合物は、1種又は2種以上の重合性基を含んでもよい。特定液晶化合物は、2つ以上の同種の重合性基を含んでもよい。複数の重合性基は、同じ側鎖に配置されてもよい。複数の重合性基は、複数の側鎖にそれぞれ配置されてもよい。
【0054】
重合性基の種類は制限されない。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基及びアニオン重合性基が挙げられる。反応性の向上の観点から、重合性基は、ラジカル重合性基及びカチオン重合性からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ラジカル重合性基を含むことがより好ましい。ラジカル重合性基は、エチレン性不飽和二重結合を含む基であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を含む基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基が挙げられる。カチオン重合性基は、エポキシ基、オキセタニル基及びビニルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。反応性の向上の観点から、重合性基は、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0055】
重合性基の具体例を以下に示す。ただし、重合性の種類は、以下に示す具体例に制限されるものではない。Etは、エチル基を表す。n-Prは、n-プロピル基を表す。
【0056】
【0057】
側鎖がメソゲン基及び重合性基を含む限り、側鎖の化学構造は制限されない。側鎖を構成する原子団としては、例えば、アルキレンジオキシ基及びアルキレンオキシ基が挙げられる。
【0058】
特定液晶化合物は、重合体であってもよい。重合体は、単独重合体又は共重合体であってもよい。構造設計の容易性の観点から、特定液晶化合物は、重合体であることが好ましく、共重合体であることがより好ましい。低温での配向性、及び、耐熱性(特に、荷重条件下での耐熱性)の観点から、特定液晶化合物は、アクリレートに由来する構成単位及びメタクリレートに由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0059】
本開示において、高分子液晶化合物に関して使用される用語「高分子」とは、3,000以上の分子量を有する分子を意味する。耐熱性(特に、荷重条件下での耐熱性)の向上の観点から、特定液晶化合物の分子量は、5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。低温での配向性の観点から、特定液晶化合物の分子量は、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが特に好ましい。耐熱性(特に、荷重条件下での耐熱性)の向上及び低温での配向性の観点から、3,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、8,000~30,000であることが特に好ましい。特定液晶化合物が分子量分布を有する場合、「分子量」を「重量平均分子量」に読み替えるものとする。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0060】
ある実施形態において、特定液晶化合物の配向状態は、変化可能であることが好ましい。特定液晶化合物の配向状態が変化不可能である場合、例えば、成型された液晶層において、延伸部の反射特性が非延伸部の反射特性と異なることがある。上記のような反射特性の相違は、例えば、非延伸部におけるらせんピッチに比べて、延伸部におけるらせんピッチが小さいことに起因する。一方、特定液晶化合物の配向状態が変化可能である場合、特定液晶化合物の配向処理によって反射特性を調整できる。例えば、加飾用フィルムの成型後に特定液晶化合物の配向状態を変化させることで、所望の反射特性を得ることができる。特定液晶化合物の配向状態は、例えば、後述するカイラル化合物の作用によって変化できる。配向状態の変化可能性は、以下の方法によって確認される。
(1)液晶層を含む試験片を準備する。
(2)試験片をガラスヒーターの上に載せる。マルチチャンネル分光器(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)を用いて380nm~990nmの波長域の反射スペクトルを測定しながら、試験片を加熱する。昇温速度は、+5℃/分である。
(3)25℃から250℃までの昇温過程において、380nm~990nmの波長域に新たに反射ピークが生じる場合、又は、380nm~990nmの波長域において反射ピークを有し、かつ、上記反射ピークの反射率の極大値を示す波長が15nm以上変化する場合、特定液晶化合物の配向状態は変化可能であるとみなされる。反射ピークは、反射率の極大値が10%以上であるピークに限るものとする。
【0061】
特定液晶化合物の具体例を以下に示す。ただし、特定液晶化合物の種類は、以下に示す具体例に制限されるものではない。各構成単位の比は、質量比で表されている。また、各構成単位の比は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更されてもよい。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
M1及びM2は、それぞれ独立して、メソゲン基を表す。好ましいメソゲン基の骨格を以下に例示する。以下に示すメソゲン基の骨格における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
液晶層は、2種以上の特定液晶化合物を含んでもよい。
【0074】
液晶相の形成の観点から、液晶層における特定液晶化合物の含有率は、液晶層の全質量に対して、40質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましく、60質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0075】
特定液晶化合物の製造方法は、制限されない。特定液晶化合物は、メソゲン基及び重合性基を含む単量体の重合によって製造されてもよい。特定液晶化合物は、側鎖にメソゲン基を含む重合体への重合性基の導入によって製造されてもよい。特定液晶化合物は、重合体の側鎖へのメソゲン基及び重合性の導入によって製造されてもよい。
【0076】
(カイラル化合物)
液晶層は、カイラル化合物を含む。カイラル化合物は、特定液晶化合物によって形成されるらせん構造を誘起し、コレステリック相の形成に寄与する。
【0077】
カイラル化合物は、公知のカイラル化合物であってもよい。カイラル化合物としては、例えば、「液晶デバイスハンドブック(第3章4-3項、TN、STN用カイラル化合物、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989)」、特開2003-287623号公報、特開2002-302487号公報、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2010-181852号公報及び特開2014-034581号公報に記載された化合物が挙げられる。また、カイラル化合物としては、例えば、イソソルビド誘導体、イソマンニド誘導体及びビナフチル誘導体も挙げられる。イソソルビド誘導体の市販品としては、例えば、「Paliocolor LC 756」(BASF社)が挙げられる。
【0078】
カイラル化合物は、不斉炭素原子を含む化合物であってもよい。カイラル化合物は、軸性不斉化合物又は面性不斉化合物であってもよい。軸性不斉化合物及び面性不斉化合物としては、例えば、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0079】
ある実施形態において、カイラル化合物は、少なくとも1つの芳香環を含むことが好ましく、少なくとも2つの芳香環を含むことがより好ましい。芳香環を含むカイラル化合物は、コレステリック相による光の反射特性の向上に寄与する。芳香環は、単環又は縮合環であってもよい。芳香環は、ベンゼン環及びナフタレン環からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ベンゼン環又はナフタレン環における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。コレステリック相による光の反射特性の向上の観点から、カイラル化合物における芳香環の数は、2個~12個であることが好ましく、4個~12個であることがより好ましく、6個~12個であることが特に好ましい。
【0080】
ある実施形態において、カイラル化合物は、ビナフチル基を含むカイラル化合物を含むことが好ましい。カイラル化合物は、ビナフチル基を含むカイラル化合物であってもよい。ビナフチル基を含むカイラル化合物は、ヘイズの低減及びコレステリック相による光の反射特性の向上に寄与する。カイラル化合物におけるビナフチル基は、軸不斉を有する。カイラル化合物におけるビナフチル基の絶対配置は、R又はSであってもよい。ビナフチル基における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。ビナフチル基を含むカイラル化合物は、後述する光異性化化合物であってもよい。ビナフチル基を含むカイラル化合物は、下記式(BN1)又は下記式(BN2)で表されるカイラル化合物であることが好ましい。
【0081】
【0082】
式(BN1)及び式(BN2)中、L1は、単結合又は2価の連結基を表し、Aは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、L2は、単結合又は2価の連結基を表し、Bは、1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0083】
式(BN1)及び式(BN2)中、L1は、2価の連結基であることが好ましい。2価の連結基としては、例えば、-C=C-、-O-C-及び-C-C-が挙げられる。2価の連結基は、-C=C-であることが好ましい。L1で表される-C=C-は、光によって異性化できる。異性化については後述する。
【0084】
式(BN1)及び式(BN2)中、Aは、2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。2価の芳香族炭化水素基は、炭素数が6~20の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニレン基、ナフチレン基又は-C6H4-C6H4-であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。2価の芳香族炭化水素基(フェニレン基、ナフチレン基及び-C6H4-C6H4-を含む。)における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0085】
式(BN1)及び式(BN2)中、Aで表される2価の脂環式炭化水素基は、炭素数が6~10の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、シクロヘキシレン基であることが好ましい。脂環式炭化水素基(シクロヘキシレン基を含む。)における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0086】
式(BN1)及び式(BN2)中、L2は、2価の連結基であることが好ましい。2価の連結基としては、例えば、-C=C-、-O-CO-C=C-、-CO-O-、-C-O-及び-O-CO-C-C-が挙げられる。2価の連結基は、-O-CO-C=C-又は-CO-O-であることが好ましく、-O-CO-C=C-であることがより好ましい。L2で表される-C=C-は、光によって異性化する。異性化については後述する。
【0087】
式(BN1)及び式(BN2)中、Bで表される1価の芳香族炭化水素基は、炭素数が6~20の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニル基、ナフチル基又はビフェニル基であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。1価の芳香族炭化水素基(フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基を含む。)における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0088】
式(BN1)及び式(BN2)中、ビナフチル基における水素原子は、置換基によって置換されてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。ビナフチル基は、無置換のビナフチル基であることが好ましい。
【0089】
ビナフチル基を含むカイラル化合物の具体例を以下に示す。ただし、ビナフチル基を含むカイラル化合物の種類は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0090】
【0091】
【0092】
ある実施形態において、カイラル化合物は、光異性化可能なカイラル化合物(以下、「光異性化化合物」という。)を含むことが好ましい。カイラル化合物は、光異性化化合物であってもよい。光異性化化合物の異性化は、特定液晶化合物の配向性に影響を及ぼす。光異性化化合物の光異性化割合に応じて、例えば、らせん構造の誘起力が変化する。例えば、形成されるらせん構造のらせんピッチが変化すると、液晶層における反射光の極大波長が変化する。光異性化割合とは、光異性化可能な化合物の総分子数に対する、光異性化した化合物の分子数の割合を意味する。光異性化は、光によって誘起される。光異性化の方法としては、例えば、下記「光異性化」の項に記載された方法が挙げられる。
【0093】
光異性化の容易性及び異性化構造の維持性の観点から、光異性化化合物は、光によって立体構造が変化する化合物であることが好ましい。光異性化化合物は、光によってEZ配置が異性化する2置換以上のエチレン性不飽和結合を含むことが好ましく、光によってEZ配置が異性化する3置換のエチレン性不飽和結合を含むことがより好ましい。EZ配置の異性化は、cis-trans異性化を含む。2置換以上のエチレン性不飽和結合は、芳香環及びエステル結合によって置換されたエチレン性不飽和結合であることが好ましい。
【0094】
光異性化化合物は、下記式(CH1)で表される化合物であることが好ましい。下記式(CH1)で表される化合物は、光によってEZ配置が異性化する2置換以上のエチレン性不飽和結合を含む。
【0095】
【0096】
式(CH1)中、ArCH1及びArCH2は、それぞれ独立に、アリール基又は複素芳香環基を表し、RCH1及びRCH2は、それぞれ独立に、水素原子又はシアノ基を表す。
【0097】
式(CH1)中、ArCH1及びArCH2で表される複素芳香環基の炭素数は、4~40であることが好ましく、4~30であることがより好ましい。複素芳香環基は、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基又はベンゾフラニル基であることが好ましく、ピリジル基又はピリミジニル基であることがより好ましい。複素芳香環基は、置換基を含んでもよい。置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基又はシアノ基であることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基又はアシルオキシ基であることがより好ましい。
【0098】
式(CH1)中、ArCH1及びArCH2は、それぞれ独立に、アリール基であることが好ましい。アリール基の炭素数は、6~40であることが好ましく、6~30であることがより好ましい。アリール基は、置換基を含んでもよい。置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基又は複素環基であることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基であることがより好ましい。
【0099】
式(CH1)中、ArCH1及びArCH2は、下記式(CH2)又は式(CH3)で表されるアリール基であることが好ましい。
【0100】
【0101】
式(CH2)及び式(CH3)中、RCH3及びRCH4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基又はシアノ基を表し、LCH1及びLCH2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシ基を表し、nCH1は、0~4の整数を表し、nCH2は、0~6の整数を表し、*は、式(CH1)におけるエチレン性不飽和結合との結合位置を表す。
【0102】
式(CH2)及び式(CH3)中、RCH3及びRCH4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はアシルオキシ基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0103】
式(CH2)及び式(CH3)中、LCH1及びLCH2は、それぞれ独立に、炭素数が1~10のアルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0104】
式(CH2)におけるnCH1は、0又は1であることが好ましい。
【0105】
式(CH3)におけるnCH2は、0又は1であることが好ましい。
【0106】
式(CH1)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、式(CH1)で表される化合物の種類は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0107】
【0108】
【0109】
ある実施形態において、カイラル化合物は、光異性化可能なカイラル化合物を含み、液晶層は、光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域(以下、「特定領域」という場合がある。)を含むことが好ましい。カイラル化合物の光異性化は、特定液晶化合物の配向性に影響を及ぼす。光異性化化合物の光異性化割合に応じて、例えば、らせん構造の誘起力が変化する。例えば、形成されるらせん構造のらせんピッチが変化すると、液晶層における反射光の極大波長が変化する。例えば、反射光の極大波長の変化を利用することで、多様な色味を示す意匠を形成できる。特定領域は、光異性化可能なカイラル化合物が光異性化された領域と、光異性化可能なカイラル化合物が光異性化されていない領域と、を含んでもよい。特定領域は、光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が相対的に大きい領域と、光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が相対的に小さい領域と、を含んでもよい。
【0110】
特定領域の有無は、以下の方法によって確認される。なお、コレステリック相が既に形成されている場合、特定領域の有無は、以下の(3)に示す方法によって確認される。
(1)以下の方法によって、特定液晶化合物がコレステリック相を形成する温度を確認する。液晶層を含む試験片を準備する。試験片の大きさは、1cm×1cmである。試験片をガラスヒーターの上に載せる。マルチチャンネル分光器(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)を用いて反射スペクトルを測定しながら、試験片を加熱する。380nm~990nmの波長域で確認される反射ピークの反射率が最も大きくなるときの温度を加熱温度(A)とする。
(2)加熱温度(A)で加熱したホットプレートの上に、別途準備した試験片を載せる。なお、加熱による試験片の変形を防ぐため、必要に応じて、所定の形状を有する金型治具に試験片を配置してもよい。試験片の設置から1分後、酸素濃度が1,000ppm以下の低酸素雰囲気下にて、メタルハライドランプ(MAL625NAL、株式会社GSユアサ)を用いて1,000mJ/cm2の露光量の光を試験片に照射する。
(3)マルチチャンネル分光器(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)を用いて、試験片の複数の領域で、380nm~990nmの波長域の反射スペクトルを測定する。極大波長が最も小さくなる領域における極大波長λ1と極大波長が最も大きくなる領域における極大波長λ2との差が50nm以上である場合、液晶層は、光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域を含むとみなされる。極大波長とは、反射率が極大となる波長を意味する。λ1とλ2との差は、絶対値(すなわち、|λ1-λ2|)によって表される。
【0111】
ある実施形態において、カイラル化合物は、重合性基を含むカイラル化合物を含むことが好ましい。カイラル化合物は、重合性基を含むカイラル化合物であってもよい。例えば、カイラル化合物の重合性基が特定液晶化合物の重合性基と反応することで、加飾用フィルムの耐熱性が向上する。カイラル化合物の重合性基としては、例えば、上記「特定液晶化合物」の項で説明した重合性基が挙げられる。カイラル化合物の重合性基の好ましい態様は、上記「特定液晶化合物」の項で説明した重合性基の好ましい態様と同じである。重合性基を含むカイラル化合物は、イソソルビド誘導体、イソマンニド誘導体及びビナフチル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。重合性基を含むイソソルビド誘導体の市販品としては、例えば、「Paliocolor LC 756」(BASF社)が挙げられる。
【0112】
液晶層は、2種以上のカイラル化合物を含んでもよい。
【0113】
コレステリック配向性の観点から、液晶層におけるカイラル化合物の含有率は、液晶層の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。カイラル化合物の分散性の観点から、液晶層におけるカイラル化合物の含有率は、液晶層の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。反射特性の観点から、液晶層におけるカイラル化合物の含有率は、液晶層の全質量に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~35質量%であることがより好ましく、3質量%~30質量%であることが特に好ましい。例えば、カイラル化合物の含有率が上記した範囲内であることで、可視光領域の反射率が増大する。
【0114】
反射特性の観点から、カイラル化合物の含有量に対する特定液晶化合物の含有量の比は、質量基準で、3~20であることが好ましく、3~18であることがより好ましく、4~15であることが特に好ましい。例えば、カイラル化合物の含有量に対する特定液晶化合物の含有量の比が上記した範囲内であることで、可視光領域の反射率が増大する。
【0115】
(重合開始剤)
ある実施形態において、液晶層は、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0116】
重合開始剤の種類は、制限されない。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤及び熱重合開始剤が挙げられる。光重合によって液晶層を硬化させる場合、液晶層は光重合開始剤を含むことが好ましい。熱重合によって液晶層を硬化させる場合、液晶層は熱重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
【0117】
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(例えば、米国特許第2367661号明細書及び米国特許第2367670号明細書参照)、アシロインエーテル化合物(例えば、米国特許第2448828号明細書参照)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(例えば、米国特許第2722512号明細書参照)、多核キノン化合物(例えば、米国特許第3046127号明細書及び米国特許第2951758号明細書参照)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(例えば、米国特許第3549367号明細書参照)及びオキサジアゾール化合物(例えば、米国特許第4212970号明細書参照)が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、アクリジン化合物及びフェナジン化合物(例えば、特開昭60-105667号公報号明細書及び米国特許第4239850号明細書参照)も挙げられる。
【0118】
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤であってもよい。
【0119】
好ましい光ラジカル重合開始剤としては、例えば、α-ヒドロキシアセトフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、チオキサントン化合物及びオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0120】
好ましい光カチオン重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物が挙げられる。
【0121】
液晶層は、1種又は2種以上の重合開始剤を含んでもよい。
【0122】
硬化性の観点から、液晶層における重合開始剤の含有率は、液晶層の全質量に対して、0.1質量%~3質量%であることが好ましく、0.2質量%~3質量%であることがより好ましく、0.3質量%~3質量%であることが特に好ましい。
【0123】
(架橋剤)
ある実施形態において、液晶層は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は、液晶層の強度及び耐久性を向上させる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を併用することで、液晶層の強度及び耐久性の向上に加えて生産性を向上させることができる。
【0124】
架橋剤は、紫外線、熱又は湿気によって反応が進行する化合物であることが好ましい。
【0125】
架橋剤としては、例えば、多官能アクリレート化合物が挙げられる。多官能アクリレート化合物としては、例えば、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0126】
架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物も挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0127】
架橋剤としては、例えば、アジリジン化合物も挙げられる。アジリジン化合物としては、例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]及び4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンが挙げられる。
【0128】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物も挙げられる。イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート及びビウレット型イソシアネートが挙げられる。
【0129】
架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物も挙げられる。
【0130】
架橋剤としては、例えば、アルコキシシラン化合物も挙げられる。アルコキシシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0131】
液晶層は、1種又は2種以上の架橋剤を含んでもよい。
【0132】
配向性の観点から、液晶層における架橋剤の含有率は、液晶層の全質量に対して、0.1質量%~6質量%であることが好ましく、0.2質量%~5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~4質量%であることが特に好ましい。
【0133】
(他の成分)
液晶層は、上記した成分以外の成分として、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、溶剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、水平配向剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、着色剤、及び金属酸化物粒子が挙げられる。
【0134】
(性質)
ある実施形態において、液晶層は、コレステリック相を含んでもよい。コレステリック相は、光学顕微鏡(例えば、Eclipse LV100N POL、株式会社ニコン)を用いて確認される。コレステリック相の形成方法としては、例えば、下記「コレステリック相の形成」の項に記載された方法が挙げられる。コレステリック相は、重合によって固定されてもよい。重合によるコレステリック相の固定方法として、例えば、下記「コレステリック相の固定」の項に記載された方法が挙げられる。ただし、加飾用フィルムの成型の後にコレステリック相を形成する場合、成型前の加飾用フィルムにおける液晶層は、コレステリック相を含んでいなくてもよい。
【0135】
(厚さ)
液晶層の厚さは、制限されない。成型後における反射率変化抑制の観点から、液晶層の厚さは、10μm未満であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、0.05μm~5μmであることが更に好ましく、0.1μm~4μmであることが特に好ましい。
【0136】
(液晶層の形成方法)
液晶層の形成方法は、制限されない。液晶層は、例えば、液晶層を形成する成分を含む液晶層形成用組成物を用いて形成される。液晶層形成用組成物は、例えば、特定液晶化合物、カイラル化合物及び溶剤の混合によって製造される。
【0137】
溶解性の観点から、溶剤は、有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、ケトン(例えば、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン)、アルキルハライド、アミド、スルホキシド、ヘテロ環化合物、炭化水素、エステル、エーテル及びアルコールが挙げられる。
【0138】
基材の上に液晶層を形成する場合、例えば、基材の上に液晶層形成用組成物を塗布し、必要に応じて液晶層形成用組成物を乾燥させることで、液晶層を形成できる。塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、凸版印刷法及び凹版印刷法が挙げられる。
【0139】
<<粘着層>>
ある実施形態に係る加飾用フィルムは、粘着層を含むことが好ましい。粘着層は、層間の密着性又は他の部材(例えば、装飾の対象物)との密着性を向上させる。
【0140】
粘着層の位置は、制限されない。加飾用フィルムは、基材と、液晶層と、粘着層と、をこの順で含んでもよい。加飾用フィルムは、基材と、粘着層と、液晶層と、をこの順で含んでもよい。加飾用フィルムは、粘着層と、基材と、液晶層と、をこの順で含んでもよい。加飾用フィルムは、基材と、液晶層と、粘着層と、をこの順で含むことが好ましい。
【0141】
粘着層の成分としては、例えば、粘着剤及び接着剤が挙げられる。粘着層は、粘着剤及び接着剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0142】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤が挙げられる。また、粘着剤としては、例えば、「剥離紙・剥離フィルムおよび粘着テープの特性評価とその制御技術、情報機構、2004年、第2章」に記載された、アクリル系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤及びシリコーン系粘着剤も挙げられる。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系単量体の重合体を含む粘着剤である。粘着層が粘着剤を含む場合、粘着層は、粘着付与剤を含んでもよい。
【0143】
接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤及びシリコーン系接着剤が挙げられる。接着強度の向上の観点から、接着剤は、ウレタン樹脂接着剤又はシリコーン接着剤であることが好ましい。
【0144】
粘着層の厚さは、制限されない。粘着力及びハンドリング性の観点から、粘着層の厚さは、5μm~100μmであることが好ましい。
【0145】
粘着層の形成方法は、制限されない。粘着層は、例えば、粘着層を含む保護フィルムを用いて形成される。例えば、粘着層を含む保護フィルムを液晶層に貼り付けることで、液晶層の上に粘着層を形成することができる。粘着層は、粘着層を形成する成分を含む粘着層形成用組成物を用いて形成されてもよい。例えば、液晶層の上に粘着層形成用組成物を塗布し、必要に応じて粘着層形成用組成物を乾燥させることで、粘着層を形成できる。
【0146】
<<紫外線吸収層>>
ある実施形態に係る加飾用フィルムは、紫外線吸収層を含むことが好ましい。紫外線吸収層は、耐光性を向上させる。
【0147】
紫外線吸収層の位置は、制限されない。加飾用フィルムは、基材と、液晶層と、紫外線吸収層と、をこの順で含んでもよい。加飾用フィルムは、基材と、紫外線吸収層と、液晶層と、をこの順で含んでもよい。加飾用フィルムは、紫外線吸収層と、基材と、液晶層と、をこの順で含んでもよい。加飾用フィルムは、紫外線吸収層と、基材と、液晶層と、をこの順で含むことが好ましい。紫外線吸収層の位置及び粘着層の位置の好ましい関係に関して、例えば、加飾用フィルムは、紫外線吸収層と、基材と、液晶層と、粘着層と、をこの順で含むことが好ましい。
【0148】
紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましく、紫外線吸収剤及び樹脂を含むことがより好ましい。
【0149】
紫外線吸収剤は、公知の紫外線吸収剤であってもよい。紫外線吸収剤は、有機化合物又は無機化合物であってもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリチル酸化合物及び金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子及び酸化セリウム粒子が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、例えば、紫外線吸収構造を含む重合体も挙げられる。紫外線吸収構造を含む重合体としては、例えば、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリチル酸化合物等の構造の少なくとも一部を含むアクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含むアクリル樹脂が挙げられる。
【0150】
樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル、フッ素樹脂、シロキサン樹脂及びポリウレタンが挙げられる。
【0151】
紫外線吸収層の厚さは、制限されない。耐光性及び立体成型性の観点から、紫外線吸収層の厚さは、0.01μm~100μmであることが好ましく、0.1μm~50μmであることがより好ましく、0.5μm~20μmであることが特に好ましい。
【0152】
紫外線吸収層の形成方法は、制限されない。紫外線吸収層は、例えば、紫外線吸収層を形成する成分を含む紫外線吸収層形成用組成物を用いて形成される。紫外線吸収層は、例えば、紫外線吸収層形成用組成物の塗布及び必要に応じて乾燥を経て形成される。
【0153】
<<保護フィルム>>
ある実施形態に係る加飾用フィルムは、保護フィルムを含むことが好ましい。保護フィルムは、最外層として配置されていることが好ましい。保護フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。保護フィルムは、既述の粘着層を含んでもよい。保護フィルムの形成方法は、制限されない。例えば、保護フィルムを液晶層に貼り付けることで、液晶層の上に保護フィルムを形成することができる。
【0154】
<<配向層>>
ある実施形態に係る加飾用フィルムは、配向層を含んでもよい。配向層は、特定液晶化合物を配向させることができる。
【0155】
配向層は、有機化合物(好ましくは重合体)のラビング処理又は無機化合物の斜方蒸着によって形成された層であってもよい。配向層は、マイクログルーブを有する層であってもよい。配向層として、電場の付与、磁場の付与又は光の照射によって配向機能が生じる配向層も知られている。好ましい配向層としては、例えば、ラビング処理配向層及び光配向層が挙げられる。
【0156】
ラビング処理は、例えば、重合体を主成分とする膜の表面を、紙又は布を用いて一定方向に擦ることによって実施される。ラビング処理は、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
【0157】
ラビング密度を変える方法としては、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載された方法が挙げられる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A):L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm:revolutions per minute)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0158】
ラビング密度を高くする方法としては、例えば、ラビング回数を増やす方法、ラビングローラーの接触長を長くする方法、ローラーの半径を大きくする方法、ローラーの回転数を大きくする方法及びステージ移動速度を遅くする方法が挙げられる。一方、ラビング密度を低くする方法としては、例えば、ラビング回数を減らす方法、ラビングローラーの接触長を短くする方法、ローラーの半径を小さくする方法、ローラーの回転数を小さくする方法及びステージ移動速度を速くする方法が挙げられる。また、ラビング処理の条件について、特許第4052558号公報の記載を参照することもできる。
【0159】
ラビング処理配向層に使用される重合体としては、例えば、特開平8-338913号公報の段落0022に記載されたメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース及びポリカーボネートが挙げられる。また、ラビング処理配向層に使用される重合体は、シランカップリング剤であってもよい。ラビング処理配向層に使用される重合体は、水溶性ポリマーであることが好ましく、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールであることが好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールであることがより好ましく、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
【0160】
光配向層に使用される光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報及び特許第4151746号公報に記載されたアゾ化合物;特開2002-229039号公報に記載された芳香族エステル化合物;特開2002-265541号公報及び特開2002-317013号公報に記載された光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物;特許第4205195号及び特許第4205198号公報に記載された光架橋性シラン誘導体;並びに、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報及び特許第4162850号公報に記載された光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又は、エステルが挙げられる。光配向材料は、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又は、エステルであることが好ましい。
【0161】
光配向層は、例えば、光配向材料から形成された層に、直線偏光又は非偏光を照射することによって形成される。光の波長は、光配向材料に応じて決定されてもよい。光照射に用いる光は、ピーク波長が200nm~700nmの光であることが好ましく、ピーク波長が400nm以下の紫外光であることがより好ましい。
【0162】
光照射に用いる光源としては、例えば、ランプ(例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ及びカーボンアークランプ)、レーザー(例えば、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー及びYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー)、発光ダイオード及び陰極線管が挙げられる。
【0163】
直線偏光を得る方法としては、例えば、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板及びワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)又はブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、及び、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が挙げられる。また、フィルター又は波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0164】
直線偏光を利用する場合、例えば、配向層の上面又は下面に対して、垂直又は斜めに光を照射する。光の入射角度は、配向層に対して、0°~90°であることが好ましく、40°~90°であることがより好ましい。
【0165】
非偏光を利用する場合には、配向層の上面又は下面に対して斜めに光を照射する。入射角度は、配向層に対して、10°~80°であることが好ましく、20°~60°であることがより好ましく、30°~50°であることが特に好ましい。照射時間は、1分~60分であることが好ましく、1分~10分であることがより好ましい。
【0166】
配向層の厚さは、0.01μm~10μmであることが好ましい。
【0167】
ある実施形態に係る加飾用フィルムでは、配向層を使用せずに、加飾用フィルムに含まれる任意の層を、配向処理(例えば、ラビング処理)によって配向層として機能させることもできる。配向処理可能な層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを含む層が挙げられる。配向処理可能な層は、既述の基材であってもよい。また、液晶層の上に、他の液晶層を直接設ける場合、下層の液晶層が配向層として機能する場合もある。上記のような場合、配向層を使用しなくても、また、特別な配向処理(例えば、ラビング処理)を実施しなくても上層の液晶層における特定液晶化合物を配向させることができる。
【0168】
<<着色層>>
ある実施形態に係る加飾用フィルムは、着色層を含んでもよい。着色層は、着色剤を含む層である。
【0169】
着色剤は、顔料又は染料であってもよい。耐久性の観点から、着色剤は、顔料であることが好ましい。顔料は、無機顔料又は有機顔料であってもよい。着色層を金属調とするために、着色剤として、金属粒子及びパール顔料を用いてもよい。
【0170】
無機顔料としては、例えば、白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び硫酸バリウム)、黒色顔料(例えば、カーボンブラック、チタンブラック、チタンカーボン、酸化鉄及び黒鉛)、酸化鉄、バリウムイエロー、カドミウムレッド及びクロムイエローが挙げられる。
【0171】
無機顔料としては、例えば、特開2005-7765号公報の段落0015及び段落0114に記載された無機顔料も挙げられる。
【0172】
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料(例えば、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン)、アゾ系顔料(例えば、アゾレッド、アゾイエロー及びアゾオレンジ)、キナクリドン系顔料(例えば、キナクリドンレッド、シンカシャレッド及びシンカシャマゼンタ)、ペリレン系顔料(例えば、ペリレンレッド及びペリレンマルーン)、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、アントラキノンレッド及びジケトピロロピロールが挙げられる。
【0173】
有機顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red 177、179、224、242、254、255、264等の赤色顔料;C.I.Pigment Yellow 138、139、150、180、185等の黄色顔料;C.I.Pigment Orange 36、38、71等の橙色顔料;C.I.Pigment Green 7、36、58等の緑色顔料;C.I.Pigment Blue 15:6等の青色顔料;及びC.I.Pigment Violet 23等の紫色顔料が挙げられる。
【0174】
有機顔料としては、特開2009-256572号公報の段落0093に記載された有機顔料も挙げられる。
【0175】
顔料は、光透過性及び光反射性を有する顔料(いわゆる、光輝性顔料)であってもよい。光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム及びこれらの合金の金属製光輝性顔料、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料、並びに、ガラスフレーク顔料が挙げられる。光輝性顔料は、無着色の顔料であってよく、着色された顔料であってもよい。
【0176】
着色層は、1種又は2種以上の着色剤を含んでもよい。2種以上の着色剤は、無機顔料と有機顔料との組み合わせであってもよい。
【0177】
目的とする色発現の観点から、着色層における着色剤の含有率は、着色層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが特に好ましい。
【0178】
着色層に含まれる着色剤、特に顔料の分散性を向上する観点から、着色層は、分散剤を含んでもよい。分散剤は、着色層における着色剤の分散性を向上させ、着色層の色を均一化する。
【0179】
分散剤は、高分子分散剤であることが好ましい。高分子分散剤としては、例えば、シリコーンポリマー、アクリルポリマー及びポリエステルポリマーが挙げられる。例えば、加飾用フィルムの耐熱性を向上させる場合、分散剤は、グラフト型シリコーンポリマーといったシリコーンポリマーであることが好ましい。
【0180】
分散剤の重量平均分子量は、1,000~5,000,000であることが好ましく、2,000~3,000,000であることがより好ましく、2,500~3,000,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、着色剤の分散性がより向上する。
【0181】
分散剤は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製のEFKA 4300(アクリル系高分子分散剤)、花王株式会社製のホモゲノールL-18、ホモゲノールL-95及びホモゲノールL-100、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース20000及びソルスパース24000並びにビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK-110、DISPERBYK-164、DISPERBYK-180及びDISPERBYK-182が挙げられる。なお、「ホモゲノール」、「ソルスパース」及び「DISPERBYK」はいずれも登録商標である。
【0182】
着色層における分散剤の含有量は、100質量部の着色剤に対して、1質量部~30質量部であることが好ましい。
【0183】
強度及び耐傷性の観点から、着色層は、樹脂を含むことが好ましい。所望の色を得る観点から、樹脂は、透明な樹脂であることが好ましい。樹脂は、全光透過率が80%以上の樹脂であることが好ましい。全光透過率は、分光光度計(例えば、分光光度計UV-2100、株式会社島津製作所)を用いて測定される。
【0184】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン及びポリオレフィンが挙げられる。樹脂は、単独重合体又は共重合体であってもよい。
【0185】
成型加工性の観点から、着色層における樹脂の含有率は、着色層の全質量に対して、5質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0186】
着色層は、重合性化合物を硬化してなる層又は重合性化合物及び重合開始剤を含む層であってもよい。重合性化合物は、公知の重合性化合物であってもよい。重合開始剤は、公知の重合開始剤であってもよい。
【0187】
着色層は、上記した成分以外の成分として、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載された界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう。フェノチアジンが好ましい。)並びに特開2000-310706号公報の段落0058~段落0071に記載された添加剤が挙げられる。
【0188】
視認性の観点から、着色層の全光透過率は、10%以下であることが好ましい。
【0189】
着色層の色としては、例えば、黒、灰、白、赤、橙、黄、緑、青及び紫が挙げられる。着色層の色は、金属調の色であってもよい。
【0190】
視認性及び立体成型性の観点から、着色層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、3μm~50μmであることが更に好ましく、3μm~20μmであることが特に好ましい。
【0191】
着色層の形成方法としては、例えば、着色層形成用組成物を用いる方法及び着色されたフィルムを貼り合せる方法が挙げられる。着色層の形成方法は、着色層形成用組成物を用いる方法であることが好ましい。また、着色層は、naxレアルシリーズ(日本ペイント株式会社)、naxアドミラシリーズ(日本ペイント株式会社)、naxマルチシリーズ(日本ペイント株式会社)及びレタンPGシリーズ(関西ペイント株式会社)といった市販の塗料を用いて形成されてもよい。
【0192】
着色層形成用組成物の調製方法としては、例えば、有機溶剤と、着色剤等の着色層に含まれる成分と、を混合する方法が挙げられる。また、着色層形成用組成物が着色剤として顔料を含む場合、顔料の均一分散性及び分散安定性をより高める観点から、顔料と分散剤とを含む顔料分散液を用いて、着色層形成用組成物を調製することが好ましい。
【0193】
有機溶剤としては、例えば、アルコール、エステル、エーテル、ケトン及び芳香族炭化水素が挙げられる。
【0194】
着色層形成用組成物における有機溶剤の含有率は、着色層形成用組成物の全質量に対して、5質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましい。
【0195】
着色層形成用組成物を用いる着色層の形成方法としては、例えば、着色層形成用組成物の塗布によって着色層を形成する方法及び着色層形成用組成物の印刷によって着色層を形成する方法が挙げられる。印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷及びオフセット印刷が挙げられる。
【0196】
<<他の層>>
ある実施形態に係る加飾用フィルムは、上記した層以外の層(以下、本段落において「他の層」という。)を含んでもよい。他の層としては、例えば、反射層、自己修復層、帯電防止層、防汚層、防電磁波層及び導電性層が挙げられる。他の層は、例えば、公知の方法により形成される。他の層は、例えば、所望の成分を含む組成物の塗布及び必要に応じて乾燥を経て形成される。
【0197】
<<層構成>>
加飾用フィルムの層構成の具体例を以下に示す。ただし、加飾用フィルムの層構成は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
・層構成1:基材/液晶層
・層構成2:基材/液晶層/粘着層
・層構成3:紫外線吸収層/基材/液晶層
・層構成4:紫外線吸収層/基材/液晶層/粘着層
・層構成5:基材/液晶層/保護フィルム
・層構成6:基材/液晶層/保護フィルム/着色層
・層構成7:基材/液晶層/粘着層/保護フィルム
・層構成8:基材/液晶層/粘着層/保護フィルム/着色層
・層構成9:紫外線吸収層/基材/液晶層/保護フィルム
・層構成10:紫外線吸収層/基材/液晶層/保護フィルム/着色層
・層構成11:紫外線吸収層/基材/液晶層/粘着層/保護フィルム
・層構成12:紫外線吸収層/基材/液晶層/粘着層/保護フィルム/着色層
【0198】
加飾用フィルムの層構成について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、ある実施形態に係る加飾用フィルムの層構成を示す概略側面図である。
図1に示される加飾用フィルム100は、基材10と、液晶層20と、をこの順で含む。
図2は、ある実施形態に係る加飾用フィルムの層構成を示す概略側面図である。
図2に示される加飾用フィルム110は、紫外線吸収層30と、基材10と、液晶層20と、粘着層40と、保護フィルム50と、をこの順で含む。
【0199】
<<用途>>
加飾用フィルムは、種々の物品に装飾を施すことができる。加飾用フィルムは、例えば、自動車用部品、電子機器及び包装容器といった物品に装飾を施すことができる。
【0200】
加飾用フィルムを用いて装飾されてなる装飾体の好ましい例としては、電子機器及び自動車用部品が挙げられる。電子機器としては、例えば、表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、テレビ及びスマートウォッチが挙げられる。加飾用フィルムは、電子機器の筐体の装飾に使用されてもよい。自動車用部品としては、例えば、内装部品及び外装部品が挙げられる。ただし、装飾体は、上記した具体例に制限されるものではない。
【0201】
装飾体において、加飾用フィルムに由来する液晶層は、コレステリック相を含むことが好ましい。コレステリック相は、重合によって固定されていることが好ましい。例えば、装飾体における液晶層は、特定液晶化合物を重合させてなる重合体を含むことが好ましい。後述するように、装飾体は、例えば、加飾用フィルムの成型を経て形成される。よって、ある装飾体は、加飾用フィルムの成型体(すなわち、加飾用フィルムを成型してなる成型体)を含むことが好ましい。特に好ましい装飾体としては、例えば、下記「成型体の製造方法」の項に記載された方法によって得られる成型体を含む装飾体が挙げられる。
【0202】
装飾体の製造方法としては、例えば、加飾用フィルムと装飾の対象物とを同時に成型する方法及び加飾用フィルムと装飾の対象物とを貼り合わせる方法が挙げられる。後者の方法では、装飾の対象物に形状に沿って加飾用フィルムが変形し、装飾体が得られる。装飾体の製造方法では、例えば、種々の成型方法が使用される。成型方法は、公知の成型方法であってもよい。成型方法としては、例えば、フィルムインサート成型、圧空成型及び真空成型が挙げられる。また、成型方法としては、例えば、「Three dimension Overlay Method」と称される方法(以下、「TOM成型」という。)も挙げられる。好ましい成型方法としては、例えば、下記「成型体の製造方法」の項に記載された方法が挙げられる。ただし、成型方法は、上記した具体例に制限されるものではない。
【0203】
上記したような成型方法は、加飾用フィルムの成型体の製造に使用されてもよい。加飾用フィルムの成型体は、加飾用成型体として使用されてもよい。加飾用フィルムの成型体における液晶層の好ましい態様は、上記した装飾体における液晶層の好ましい態様と同じである。
【0204】
<成型体の製造方法>
以下、本開示の一態様に係る成型体の製造方法について説明する。本開示の一態様に係る成型体の製造方法では、本開示の一態様に係る加飾用フィルムが使用される。上記「加飾用フィルム」の項で説明したように、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物(すなわち、特定液晶化合物)は、加飾用フィルムの成型体の耐熱性を向上させる。さらに、特定液晶化合物は、低い温度で配向でき、液晶相の形成に要する時間を低減できる。以下、成型体の製造方法の実施形態について説明する。
【0205】
本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法は、基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む加飾用フィルムを準備することと、上記加飾用フィルムを成型することと、成型後の上記加飾用フィルムの上記液晶層においてコレステリック相を形成することと、上記コレステリック相を重合によって固定することと、を含む。上記した実施形態によれば、液晶化合物の分子配列を迅速に固定することができ、優れた耐熱性を有する成型体の製造方法が提供される。
【0206】
<<加飾用フィルムの準備>>
本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法は、基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む加飾用フィルムを準備することを含む。
【0207】
準備される加飾用フィルムの態様は、上記「加飾用フィルム」の項に記載されている。準備される加飾用フィルムの好ましい態様は、上記「加飾用フィルム」の項で説明した加飾用フィルムの好ましい態様と同じである。
【0208】
加飾用フィルムの準備において、特定液晶化合物の配向状態は、変化可能であることが好ましい。上記のような性質の確認方法は、上記「加飾用フィルム」の項に記載されている。
【0209】
加飾用フィルムの準備において、カイラル化合物は、光異性化可能なカイラル化合物を含み、液晶層は、光異性化可能なカイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域(すなわち、特定領域)を含むことが好ましい。特定領域は、特定液晶化合物の配向性の変化を引き起こし、例えば、多様な色味を示す意匠を形成できる。特定領域に関する事項は、上記「加飾用フィルム」の項に記載されている。光異性化の方法としては、例えば、下記「光異性化」の項に記載された方法が挙げられる。
【0210】
<<加飾用フィルムの成型>>
本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法は、加飾用フィルムを成型することを含む。
【0211】
加飾用フィルムの成型方法は、制限されない。加飾用フィルムは、成形用の型を用いて成型されてもよい。加飾用フィルムは、装飾の対象物への貼付によって成型されてもよい。加飾用フィルムは、装飾の対象物の形状に沿って変形する。加飾用フィルムは、樹脂といった材料と同時に成型されてもよい。加飾用フィルムの成型方法としては、例えば、圧空成型、真空成型及びTOM成型が挙げられる。
【0212】
加飾用フィルムの成型は、加飾用フィルムを立体的に成型することを含むことが好ましい。加飾用フィルムの立体成型は、立体的な成型体を形成する。加飾用フィルムの立体成型方法としては、例えば、加飾用フィルムに立体物を接触させて、加飾用フィルムを立体的に成型する方法が挙げられる。立体物に接触した加飾用フィルムは、立体物の形状に沿って変形する。すなわち、立体物は、成形用の型として機能できる。立体物の形状は、制限されない。立体物の形状は、目的とする成型体の形状に応じて決定されてもよい。立体物の表面は、凹凸部、平面部又は曲面部を含んでもよい。立体物は、加飾用成型体の基礎となる部材であってもよい。立体物は、装飾の対象物であってもよい。加飾用フィルムに装飾の対象物を接触させて、加飾用フィルムを立体的に成型することで、装飾体を形成できる。
【0213】
加飾用フィルムの成型において、射出成型を含む成型方法によって加飾フィルムを成型してもよい。射出成型は、合成樹脂の成型方法として知られている。射出成型を伴う加飾用フィルムの成型としては、例えば、金型内で加飾用フィルムに溶融樹脂を接触させて、加飾用フィルム及び樹脂を同時に成型する方法が挙げられる。
【0214】
加飾用フィルムの成型は、加熱条件下で加飾フィルムを成型することを含んでもよい。加熱温度は、加飾フィルムの組成に応じて決定されてもよい。加熱温度は、70℃~250℃であることが好ましく、100℃~200℃であることがより好ましく、120℃~160℃であることが特に好ましい。
【0215】
<<コレステリック相の形成>>
本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法は、成型後の加飾用フィルムの液晶層においてコレステリック相を形成することを含む。
【0216】
コレステリック相は、特定液晶化合物がらせん状に配置されることによって形成される。コレステリック相の形成方法は、制限されない。コレステリック相の形成方法は、公知の方法であってもよい。コレステリック相の形成方法としては、例えば、加熱が挙げられる。
【0217】
コレステリック相の形成は、加熱条件下で、成型後の加飾用フィルムの液晶層においてコレステリック相を形成することを含むことが好ましい。加熱温度は、液晶層の組成に応じて決定されてもよい。加熱温度は、80℃~200℃であることが好ましく、100℃~180℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。加熱手段としては、例えば、ヒーター、オーブン、ホットプレート、赤外線ランプ及び赤外線レーザーが挙げられる。ただし、加熱手段は、上記した具体例に制限されるものではない。
【0218】
<<コレステリック相の固定>>
本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法は、コレステリック相を重合によって固定することを含む。コレステリック相の固定は、特定液晶化合物の移動を制限し、コレステリック相の熱的安定性を向上させる。また、加飾用フィルムの成型、コレステリック相の形成及びコレステリック相の固定をこの順で含む成型体の製造方法は、成型による液晶層のらせんピッチの変化を小さくし、所望の反射特性を得ることができる。
【0219】
コレステリック相は、少なくとも特定液晶化合物の重合によって固定される。コレステリック相の固定は、液晶層の硬化と言い換えることができる。重合としては、例えば、光重合及び熱重合が挙げられる。コレステリック相は、光重合、熱重合又は光重合及び熱重合の両方によって固定されてもよい。重合の反応様式は、特定液晶化合物の重合性基の種類及び重合開始剤の種類に応じて決定されてもよい。
【0220】
コレステリック相の固定は、コレステリック相を光重合によって固定することを含むことが好ましい。光重合は、光の照射によって起こる重合である。例えば、液晶層に光を照射することで、コレステリック相を光重合によって固定できる。光は、紫外線であることが好ましい。さらに、光は、365nm又は405nmの波長を含む光であることが好ましい。
【0221】
光重合における光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及び発光ダイオードが挙げられる。光源は、365nm又は405nmの波長を含む光を照射可能な光源であることが好ましい。
【0222】
光重合における積算光量は、30mJ/cm2~2,000mJ/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2~1,500mJ/cm2であることがより好ましく、100mJ/cm2~1,200mJ/cm2であることが特に好ましい。
【0223】
光重合において、加熱条件下で、液晶層に光を照射してもよい。加熱温度は、液晶層の組成及び相転移温度に応じて決定されてもよい。加熱温度は、80℃~200℃であることが好ましく、100℃~180℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。加熱手段としては、例えば、上記「コレステリック相の形成」の項で説明した加熱手段が挙げられる。
【0224】
コレステリック相の固定は、コレステリック相を熱重合によって固定することを含むことが好ましい。熱重合は、加熱によって起こる重合である。例えば、液晶層を加熱することで、コレステリック相を熱重合によって固定できる。加熱手段としては、例えば、上記「コレステリック相の形成」の項で説明した加熱手段が挙げられる。
【0225】
熱重合における加熱温度は、重合開始剤の種類及び液晶層の相転移温度に応じて決定されてもよい。熱重合における加熱温度は、120℃~200℃であることが好ましく、120℃~180℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。
【0226】
熱重合における加熱時間は、重合開始剤の種類に応じて決定されてもよい。5分間~6時間であることが好ましい。
【0227】
コレステリック相の固定は、酸素雰囲気中又は大気中で実施されてもよい。コレステリック相の固定は、低酸素雰囲気中で実施されてもよい。酸素濃度は、0ppm超1,000ppm以下であってもよい。酸素濃度は、1,000ppm以下であってもよい。硬化の促進の観点から、コレステリック相の固定は、低酸素雰囲気中でコレステリック相を重合によって固定することを含むことが好ましい。さらに、コレステリック相の固定は、低酸素雰囲気中、加熱条件下で、コレステリック相を重合によって固定することを含むことが好ましい。
【0228】
<<光異性化>>
ある実施形態に係る成型体の製造方法は、加飾用フィルムの準備と加飾用フィルムの成型との間に、液晶層の一部を光異性化することを含むことが好ましい。また、ある実施形態に係る成型体の製造方法は、加飾用フィルムの成型とコレステリック相の形成との間に、液晶層の一部を光異性化することを含むことが好ましい。光異性化は、特定液晶化合物の配向性に影響を及ぼす。例えば、形成されるらせん構造のらせんピッチが変化すると、液晶層における反射光の極大波長が変化する。また、液晶層の一部を光異性化することで、カイラル化合物の光異性化割合が互いに異なる複数の領域を液晶層に形成できる。以下、光異性化の対象領域を「異性化対象部」といい、光異性化の非対象領域を「非異性化対象部」という場合がある。
【0229】
光異性化は、カイラル化合物の化学構造の変化によって起こる。光異性化の方法としては、例えば、液晶層の一部(すなわち、異性化対象部)に光を照射する方法が挙げられる。光は、紫外線であることが好ましい。
【0230】
光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯及びメタルハライドランプが挙げられる。また、光源としては、例えば、波長域の狭い光を照射可能な発光ダイオードも挙げられる。
【0231】
光の波長は、光重合開始剤の吸収波長及びカイラル化合物の吸収波長に応じて決定されてもよい。異性化対象部におけるカイラル化合物の異性化を促進し、かつ、特定液晶化合物の重合を抑制するという観点から、液晶層に照射される光は、光重合開始剤の吸収波長と同じ波長を含まないことが好ましい。液晶層に照射される光が光重合開始剤の吸収波長と同じ波長を含む場合であっても、光重合開始剤の吸収波長と同じ波長の相対強度をできるだけ小さくすることで、異性化対象部における特定液晶化合物の重合を抑制できる。液晶層に照射される光は、400nm以下の波長を含む光であることが好ましく、380nm以下の波長を含む光であることがより好ましく、310nm~360nmの波長を含む光であることが特に好ましい。
【0232】
光の波長は、光学フィルターを用いて調整されてもよい。光学フィルターは、液晶層と光源との間に配置される。すなわち、液晶層の光異性化では、光学フィルターを介して液晶層に光を照射し、液晶層の一部を光異性化してもよい。異性化対象部と光源との間の光学フィルターは、カイラル化合物の光異性化を引き起こす波長を透過する性質を有することが好ましい。さらに、異性化対象部と光源との間の光学フィルターは、光重合開始剤から活性種の生成を引き起こす波長を遮蔽する性質を有することが好ましい。非異性化対象部と光源との間の光学フィルターは、カイラル化合物の光異性化を引き起こす波長を遮蔽する性質を有することが好ましい。さらに、非異性化対象部と光源との間の光学フィルターは、光重合開始剤から活性種の生成を引き起こす波長を遮蔽する性質を有することが好ましい。光学フィルターの数は、1つ又は2つ以上であってもよい。
【0233】
光の波長は、マスクを用いて調整されてもよい。マスクは、液晶層と光源との間に配置される。すなわち、液晶層の光異性化では、マスクを介して液晶層に光を照射し、液晶層の一部を光異性化してもよい。マスクは、上記光学フィルターと同じ性質を有することが好ましい。光異性化に使用可能なマスクは、例えば、国際公開第2020/122245号の段落0015~段落0016、段落0240及び段落0242に記載されている。上記文献の内容は、参照により本明細書に取り込まれる。マスクの数は、1つ又は2つ以上であってもよい。
【0234】
積算光量は特に限定されず、光異性化キラル化合物の種類、狙いの選択反射波長、光異性化率等を考慮して、適宜調節してよい。積算光量は、例えば、0.1mJ/cm2~2000mJ/cm2であってよい。
【0235】
光異性化の進行度合いは、例えば、光の強度(積算光量を含む。以下、本段落において同じ。)によって調整される。光の強度は、既述の光学フィルター又は既述のマスクの透過率によって調整されてもよい。光異性化の進行度合いは、例えば、反射ピークの極大波長の測定によって確認される。液晶層の光異性化では、光の強度を変化させながら液晶層に光を照射してもよい。光の強度の変化は、連続的又は非連続的であってもよい。液晶層の光異性化では、液晶層の複数の領域に光を照射してもよい。各領域に照射される光の強度は、同じであってもよい。各領域に照射される光の強度は、互いに異なってもよい。
【0236】
光異性化は、例えば、国際公開第2020/122245号の段落0014~段落0016に記載されている。上記文献の内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0237】
成型体の製造方法について
図3を参照して説明する。
図3は、ある実施形態に係る成型体の製造方法を示す概略図である。
図3(a)に示される加飾用フィルム110は、紫外線吸収層30と、基材10と、液晶層20と、粘着層40と、保護フィルム50と、をこの順で含む。
図3(b)に示されるように、
図3(a)に示される加飾用フィルム110を成型した後、液晶層20においてコレステリック相を形成し、そして、コレステリック相を固定することで、成型体210を形成する。
図3において、成型体210は、部材B1の装飾に使用される。
図3(c)に示されるように、成型体210から保護フィルム50を剥離する。
図3(d)に示されるように、保護フィルム50の剥離によって露出した粘着層40と部材B1とを貼り合わせて、装飾体310を形成する。
【0238】
<<成型体>>
本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法によって得られる成型体は、例えば、装飾体又は加飾用成型体として使用される。言い換えると、本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法は、例えば、装飾体又は加飾用成型体の製造に適用される。装飾体としては、例えば、上記「加飾用フィルム」の項で説明した装飾体が挙げられる。加飾用成型体は、例えば、種々の物品の装飾に使用される。
【0239】
<<変形例>>
上記したように、本開示の一実施形態に係る成型体の製造方法では、加飾用フィルムの準備、加飾用フィルムの成型、コレステリック相の形成、及びコレステリック相の固定をこの順で実施される。ただし、工程の順序は、目的に応じて、変更されてもよい。例えば、本開示の他の一実施形態に係る成型体の製造方法は、基材と、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物とカイラル化合物とを含む液晶層と、をこの順で含む加飾用フィルムを準備することと、上記加飾用フィルムの上記液晶層においてコレステリック相を形成することと、上記コレステリック相を重合によって固定することと、上記加飾用フィルムを成型することと、を含む。
【実施例0240】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0241】
<実施例1>
[加飾用フィルムの製造]
以下の手順に従って、紫外線吸収層と、基材と、液晶層と、粘着層と、保護フィルムと、をこの順で含む加飾用フィルムを得た。
【0242】
(基材の準備)
基材として、片面に易接着層を含むポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm、コスモシャインA4100、東洋紡株式会社)を準備した。基材の易接着層が配置されていない面に、短辺方向を基準に反時計回りに3°回転させた方向にラビング処理を施した。ラビング処理の条件を以下に示す。
・ラビング布:レーヨン布
・圧力:0.1kgf
・回転数:1,000rpm
・搬送速度:10m/分
・回数:1回)
【0243】
(液晶層の形成)
下記の成分を含む液晶層形成用塗布液1を調製した。
・液晶化合物1:0.732質量部
・カイラル化合物1:0.117質量部
・光重合開始剤(カヤキュアーDETX、2,4-ジエチルチオキサントン、日本化薬株式会社):0.022質量部
・界面活性剤1(1質量%の濃度に希釈されたシクロペンタノン溶液):0.703質量部
・シクロペンタノン:8.43質量部
【0244】
液晶化合物1の化学構造を以下に示す。液晶化合物1は、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物である。液晶化合物1の重量平均分子量は、12,000である。
【0245】
【0246】
カイラル化合物1の化学構造を以下に示す。
【0247】
【0248】
界面活性剤1の化学構造を以下に示す。
【0249】
【0250】
基材のラビング処理面に、ワイヤーバー(番手:#10)を用いて、液晶層形成用塗布液1を塗布した後、85℃で2分間の乾燥処理を行い、厚さが1.5μmの液晶層を形成した。
【0251】
(紫外線吸収層の形成)
下記の成分を含む紫外線吸収層形成用塗布液1を調製した。
・イオン交換水:2.42質量部
・エポクロスWS-700(オキサゾリン基含有水溶性ポリマー、株式会社日本触媒):12.03質量部
・Tinuvin479DW(トリアジン系紫外線吸収剤、BASF社):6.80質量部
・リン酸水素二アンモニウム(35質量%の濃度に希釈されたイオン交換水溶液):3.09質量部
・アローベースSE-1013N(オレフィン樹脂水系エマルジョン、ユニチカ株式会社製):74.44質量部
・フッ素系界面活性剤(ナトリウム=ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル)=2-スルホナイトオキシスクシナート(富士フイルムファインケミカルズ株式会社、2質量%の濃度に希釈された水溶液):1.21質量部
【0252】
基材の液晶層が配置された面とは反対の面に、45W・分/m2の条件でコロナ処理を行った。ワイヤーバー(番手:#20)を用いて、コロナ処理が施された面に紫外線吸収層形成用塗布液1を塗布し、100℃で2分間の乾燥処理を行い、厚さが6.6μmの紫外線吸収層を形成した。
【0253】
(粘着層及び保護フィルムの形成)
両面に保護フィルムを有する粘着シート(G25、厚さ25μm、日栄化工株式会社)の片面の保護フィルムを剥離した。以下に示す条件にて、粘着シートと液晶層とを貼り合わせた。
・温度:30℃
・線圧:100N/cm
・搬送速度:0.1m/分
【0254】
[評価:荷重条件下での耐熱性]
加飾用フィルムを裁断し、2枚の試験片を準備した。各試験片の大きさは、5cm×4cmである。2枚の試験片を積み重ね、積層体を得た。積層体を、積層体よりも大きい1組のステンレス板で挟んだ。ステンレス板の上に重りを載せて荷重を0.03MPaに調整した。重りを載せた積層体を、70℃の恒温機内に24時間放置した。24時間後、恒温機から2枚の試験片を取り出した。2枚の試験片を用いて、以下の試験(1)及び試験(2)を実施した。
【0255】
・試験(1)
マルチチャンネル分光器(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)を用いて380nm~990nmの波長域の反射スペクトルを測定しながら、ガラスヒーターを用いて1枚目の試験片を加熱した。昇温速度は、+5℃/分であった。25℃から250℃までの昇温過程において、380nm~990nmの波長域で反射ピークの有無を確認した。反射ピークは、反射率の極大値が10%以上であるピークに限るものとする。
【0256】
・試験(2)
試験片の反射率の極大値が最も大きくなる温度に加熱したホットプレートの上に、2枚目の試験片を置いた。60秒後、マルチチャンネル分光器(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)を用いて、380nm~990nmの波長域において反射ピークの有無を確認した。反射ピークは、反射率の極大値が10%以上であるピークに限るものとする。
【0257】
試験(1)及び試験(2)の結果に基づき、以下の基準に従って、加飾用フィルムの荷重条件下での耐熱性について評価した。評価結果を表1に示す。
A:試験(1)及び試験(2)の両方で反射ピークが確認された。
B:試験(1)及び試験(2)の少なくとも一方で反射ピークが確認されなかった。
【0258】
[評価:配向性]
150℃及び5秒間の型押し成型によって、直径が10cmであり、高さが5mmである円柱状の形状に加飾用フィルムを成型した。得られた成型体を、光学顕微鏡(Eclipse LV100N POL、株式会社ニコン)を用いて液晶層を観察しながら、顕微鏡用ホットステージを用いて加熱した。昇温速度は+5℃/分であった。25℃から140℃までの昇温過程において、以下の基準に従って、配向性について評価した。評価結果を表1に示す。
A:液晶層においてコレステリック相が確認された。
B:液晶層においてコレステリック相が確認されなかった
【0259】
[配向処理]
150℃及び5秒間の型押し成型によって、直径が10cmであり、高さが5mmである円柱状の形状に加飾用フィルムを成型した。得られた成型体から保護フィルムを剥離した。直径が10cmであり、高さが5mmである円柱状の部材の上に、成型体を配置した。得られた積層体において、部材は、成型体の粘着層に接している。つまり、積層体は、紫外線吸収層と、基材と、液晶層と、粘着層と、部材と、をこの順で含む。積層体を140℃のホットプレートの上に置いてから1分間経過した後、酸素濃度が1,000ppm以下の低酸素雰囲気下にて、メタルハライドランプ(MAL625NAL、株式会社GSユアサ)を用いて1,000mJ/cm2の露光量の光を積層体に照射した。以下、上記した手順によって得られた積層体を「積層体F」という。
【0260】
[評価:ヘイズ]
Rhopoint IQ-S(コニカミノルタ株式会社)を用いて、積層体Fの反射ヘイズを測定した。測定結果を表1に示す。
【0261】
[評価:ヒートサイクル試験]
積層体Fに対して、ヒートサイクル試験を実施した。具体的に、(1)30℃で5.5時間、(2)25℃で0.5時間、(3)80℃で17.5時間、そして、(4)25℃で0.5時間を1サイクルとするヒートサイクル試験を、合計10サイクル実施した。ヒートサイクル試験の後、積層体Fの外観を目視で観察した。以下の基準に従って、ヒートサイクル試験による耐久性について評価した。評価結果を表1に示す。
A:外観に異常が確認されなかった。
B:外観に異常(例えば、反射光の色味が変化すること)が確認された。
【0262】
<実施例2~3及び比較例1~3>
表1の記載に従って、液晶化合物の種類及びカイラル化合物の種類を適宜変更したこと以外は、実施例1と同じ手順によって、加飾用フィルムを得た。加飾用フィルムを用いて、実施例1に記載した評価と同じ評価を実施した。ただし、比較例2のヒートサイクル試験では、配向処理の加熱条件を200℃及び10分間に変更して作製した積層体Fを使用し、比較例3のヒートサイクル試験では、配向処理の加熱条件を70℃に変更して作製した積層体Fを使用した。
【0263】
【0264】
液晶化合物2の化学構造を以下に示す。液晶化合物2は、側鎖にメソゲン基を含む高分子液晶化合物である。液晶化合物2の重量平均分子量は、12,000である。
【0265】
【0266】
液晶化合物3の化学構造を以下に示す。液晶化合物3は、主鎖にメソゲン基を含む高分子液晶化合物である。液晶化合物3は、重合性基を含む。液晶化合物3の重量平均分子量は、12,000である。
【0267】
【0268】
液晶化合物4の化学構造を以下に示す。液晶化合物4は、重合性基を含む低分子液晶化合物である。液晶化合物4の分子量は、677である。
【0269】
【0270】
カイラル化合物2の化学構造を以下に示す。
【0271】
【0272】
カイラル化合物3の化学構造を以下に示す。
【0273】
【0274】
表1は、比較例で使用された液晶化合物に比べて、実施例で使用された液晶化合物、すなわち、側鎖にメソゲン基及び重合性基を含む高分子液晶化合物が耐熱性の向上に寄与し、低い温度で配向したことを示す。
【0275】
<実施例101>
液晶層を形成した後に異性化処理を行ったこと以外は、実施例1と同じ手順に従って、加飾用フィルムを得た。以下、異性化処理の手順について説明する。非異性化対象部では、朝日分光株式会社製光学フィルターLV0510を用いて少なくとも311nmの光を遮光し、そして、異性化対象部では、朝日分光株式会社製光学フィルターSH0350を用いて290nm以下の光及び350nm以上の光を遮光した上で、メタルハライドランプ(株式会社GSユアサ製MAL625NAL)を用いて、250mJ/cm2の露光量の光を液晶層に照射した。非異性化対象部では、少なくとも311nmの光を遮光しているため、異性化が起きない。次に、異性化処理された加飾用フィルムを用いて、既述の手順に従って積層体Fを作製した。積層体Fは、青色反射を呈す領域及び赤色反射を呈す領域を含む鮮やかな意匠性を有していた。