(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055064
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220331BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20220331BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20220331BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/02 C
G01N35/00 E
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162433
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 由佳
(72)【発明者】
【氏名】藪谷 千枝
【テーマコード(参考)】
2G058
5L099
【Fターム(参考)】
2G058AA05
2G058GC02
2G058GC03
2G058GC05
2G058GD05
2G058GD06
5L099AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疾患や次にすべき検査の判定の信頼性を向上させる。
【解決手段】自動分析装置において、分析ユニットによる過去の測定データ、既往歴、投薬歴、及び家族歴の少なくとも1種を含む患者データを患者毎に記憶したメモリー9Mを備えており、分析ユニットから測定データが入力された場合、読取装置で読み取られた識別データを基に、分析ユニットからの測定データに対応する患者データ9Bをメモリー9Mから読み込み、分析ユニットからの測定データとこれに対応する患者データ9Bとを基に、疾患及び行うべき検査の少なくとも一方の判定を実行し、判定結果をモニタ4に出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを分析する分析ユニットと、操作装置と、前記操作装置からの入力を基に前記分析ユニットを制御する制御装置と、前記分析ユニットによる測定データを表示出力するモニタとを備え、
前記分析ユニットは、
反応容器にサンプルを分注するサンプル分注機構と、
前記反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、
前記反応容器の内部の前記サンプル及び前記試薬の反応を測定する測定ユニットと、
サンプル容器に付された識別データを読み取る読取装置と
を含んで構成された自動分析装置において、
前記制御装置は、
前記分析ユニットによる過去の測定データ、既往歴、投薬歴、及び家族歴の少なくとも1種を含む患者データを患者毎に記憶したメモリーを備えており、
前記分析ユニットから測定データが入力された場合、前記読取装置で読み取られた識別データを基に、前記分析ユニットからの測定データに対応する患者データを前記メモリーから読み込み、
前記分析ユニットからの測定データとこれに対応する前記患者データとを基に、疾患及び行うべき検査の少なくとも一方の判定を実行し、判定結果を前記モニタに出力する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1の自動分析装置において、
前記制御装置は、前記判定が不能である場合、前記分析ユニットからの測定データに条件が共通する診断結果を前記メモリーに蓄積されたデータから抽出し、抽出結果を統計して前記モニタに出力する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1の自動分析装置において、
前記メモリーには、複数の診断基準が選択肢として記憶されており、
前記制御装置は、前記分析ユニットからの測定データと前記患者データとを基に、前記判定に適用する診断基準を前記選択肢の中から選択して前記メモリーから読み込む
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3の自動分析装置において、
前記メモリーには、前記選択肢の数より多くの診断基準が登録データとして記憶されており、前記選択肢は、前記登録データの中から任意に選択可能である
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1の自動分析装置において、
前記メモリーには、前記分析ユニットの出力及び前記患者データと前記判定結果との関係を予め学習して得られた学習データが記憶されており、
前記制御装置は、前記メモリーから前記学習データを読み込み、前記学習データに基づき、前記分析ユニットの出力及び前記患者データを入力として前記判定結果を出力する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5の自動分析装置において、
前記制御装置は、前記判定結果の後、現実になされた確定診断の結果又は現実に行われた検査を前記学習データに反映させ、前記学習データを更新する
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定期健康診断や外来受診の際、一般的にスクリーニング検査が実施される。スクリーニング検査で異常が見つかった場合、精密検査を実施して病気を特定し治療方針を決定する。治療を開始した後も、治療効果の確認のために必要な検査が実施される。
【0003】
こうした検査を支援するシステムとして、患者の生体サンプルを一次検査にかけて測定値とチェックレベル(適正値)との比較から病気が疑われる場合に、疑われる病名の確定診断のための項目を選択し二次検査するシステムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のシステムのように予備検査(一次検査)の測定結果を適正値と比較して単純に精密検査(二次検査)の測定項目を決定する場合、精密検査について適当な測定項目が選択されない恐れもある。投薬歴等の患者個人の事情が影響して同じ検査でも測定結果が異なってくるためである。
【0006】
本発明の目的は、疾患や次にすべき検査の判定の信頼性を向上させることができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、サンプルを分析する分析ユニットと、操作装置と、前記操作装置からの入力を基に前記分析ユニットを制御する制御装置と、前記分析ユニットによる測定データを表示出力するモニタとを備え、前記分析ユニットは、反応容器にサンプルを分注するサンプル分注機構と、前記反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、前記反応容器の内部の前記サンプル及び前記試薬の反応を測定する測定ユニットと、サンプル容器に付された識別データを読み取る読取装置とを含んで構成された自動分析装置において、前記制御装置は、前記分析ユニットによる過去の測定データ、既往歴、投薬歴、及び家族歴の少なくとも1種を含む患者データを患者毎に記憶したメモリーを備えており、前記分析ユニットから測定データが入力された場合、前記読取装置で読み取られた識別データを基に、前記分析ユニットからの測定データに対応する患者データを前記メモリーから読み込み、前記分析ユニットからの測定データとこれに対応する前記患者データとを基に、疾患及び行うべき検査の少なくとも一方の判定を実行し、判定結果を前記モニタに出力する自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、疾患や次にすべき検査の判定の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置を表す模式図
【
図2】
図1に示した自動分析装置に備わった制御装置3の機能ブロック図
【
図3】
図1に示した自動分析装置で実行される疾患等判定の一例を表すフローチャート
【
図4】
図1に示した自動分析装置における測定結果の一覧画面の一例を表す図
【
図5】
図1に示した自動分析装置における患者データの参照画面の一例を表す図
【
図6】
図5の患者データの参照画面に診断のフローを表示させた例を表す図
【
図7】本発明の第2実施形態に係る自動分析装置で実行される疾患等判定の一例を表すフローチャート
【
図8】本発明の第2実施形態に係る自動分析装置において疾患等の判定不能時に実行する解析の結果を表す画面の一例
【
図9】本発明の第2実施形態に係る自動分析装置における解析データの参照画面の一例
【
図10】本発明の第3実施形態に係る自動分析装置で実行される疾患等判定の一例を表すフローチャート
【
図11】
図10のフローチャートで実行されたDICの判定結果(スコアリング結果)を表す画面の一例を表す図
【
図12】
図11の画面で適用する診断基準を変更した場合のDICの判定結果(スコアリング結果)を表す画面の例を表す図
【
図13】本発明の第3実施形態に係る自動分析装置において診断基準の選択肢の設定に用いる設定画面の一例を表す図
【
図14】本発明の第4実施形態に係る自動分析装置に備わった制御装置の機能ブロック図
【
図16】本発明が適用可能な複合型の自動分析装置の第1のバリエーションを表す図
【
図17】本発明が適用可能な複合型の自動分析装置の第2のバリエーションを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
<第1実施形態>
(自動分析装置)
図1は本発明の第1実施形態に係る自動分析装置を表す模式図である。第1実施形態では、生化学分析、血液凝固分析(血液凝固線溶マーカー、血液凝固時間測定等)、及び免疫分析の機能を備えた複合型自動分析装置を適用対象として例示している。
【0012】
図1に示した自動分析装置100は、サンプルを分析する分析ユニット1と、操作装置2と、操作装置2からの入力を基に分析ユニット1を制御する制御装置3と、分析ユニット1による測定データを表示出力するモニタ4とを備えている。自動分析装置100で分析するサンプルは、患者の血液や尿等の検体である。
【0013】
(分析ユニット)
分析ユニット1は、反応ディスク10、サンプルディスク20、試薬ディスク30A,30B、サンプル分注機構40、試薬分注機構50A,50B、測定ユニット60A-60C、読取装置70A-70Cを含んで構成されている。
【0014】
-反応ディスク-
反応ディスク10は、鉛直軸周りに回転可能なディスク状のユニットであり、透光性材料からなる多数の反応容器(反応セル)11を保持する。反応容器11は試料と試薬とを混合し反応させるための容器であり、反応ディスク10に環状に複数設置される。自動分析装置100の稼働時、反応容器11は、反応ディスク10の恒温槽12において所定温度(例えば37℃程度)に保温される。また、反応ディスク10には、攪拌機構13と反応容器洗浄機構14が備わっている。攪拌機構13は、反応容器11に収容された液体を攪拌する装置である。反応容器洗浄機構14は、使用済みの反応容器11の内部を洗浄する装置である。
【0015】
-サンプルディスク-
サンプルディスク20は鉛直軸周りに回転可能なディスク状のユニットであり、サンプルを収容した多数のサンプル容器21を保持する。同図ではサンプルディスク20にサンプル容器21を2列の同心円状に配置できる構成を例示している。
【0016】
-試薬ディスク-
第1の試薬ディスク30Aは鉛直軸周りに回転可能なディスク状のユニットであり、多数の第1の試薬ボトル31Aを保持する。試薬ボトル31Aは、試薬ディスク30Aに環状に複数配置される。同じく第2の試薬ディスク30Bは鉛直軸周りに回転可能なディスク状のユニットであり、多数の第2の試薬ボトル31Bを保持する。試薬ボトル31Bは、試薬ディスク30Bに環状に複数配置される。これらの試薬ボトル31A,31Bには、自動分析装置100で分析される分析項目に対応する試薬液が収容されている。試薬ディスク30Aの個々の試薬ボトル31Aには、例えば生化学や散乱に用いる第1試薬又は凝固試薬が収容され、試薬ディスク30Bの個々の試薬ボトル31Bには、例えば生化学や散乱に用いる第2試薬が収容される。
【0017】
-サンプル分注機構-
サンプル分注機構40はピペットノズルを有しており、ピペットノズルによりサンプルを吸引し吐出する。サンプル分注機構40は、サンプルディスク20と反応ディスク10との間に位置している。このサンプル分注機構40は、サンプルディスク20の分注位置(吸引位置)20aにあるサンプル容器21の内部から所定量のサンプルを吸引し、吸引したサンプルを反応ディスク10の分注位置(吐出位置)10aにある反応容器11の内部に吐出する。
【0018】
-試薬分注機構-
試薬分注機構50A,50Bはそれぞれピペットノズルを有しており、ピペットノズルにより試薬を吸引し吐出する。第1の試薬分注機構50Aは、試薬ディスク30Aと反応ディスク10との間に位置している。第2の試薬分注機構50Bは、試薬ディスク30Bと反応ディスク10との間に位置している。試薬分注機構50Aは、試薬ディスク30Aの分注位置(吸引位置)30Aaで検査項目に応じた試薬ボトル31Aの内部から試薬を吸入し、反応ディスク10の分注位置(吐出位置)10bで目的の反応容器11の内部に試薬を吐出(分注)する。同じく試薬分注機構50Bは、試薬ディスク30Bの分注位置(吸引位置)30Baで検査項目に応じた試薬ボトル31Bの内部から試薬を吸入し、反応ディスク10の分注位置(吐出位置)10cで目的の反応容器11の内部に試薬を吐出(分注)する。反応容器11に吐出された試薬は、攪拌機構13で攪拌されてサンプルと混合される。
【0019】
-測定ユニット-
測定ユニット60A-60Cは、サンプルについて目的の項目を測定するユニットであり、それぞれ反応容器の内部のサンプル及び試薬の混合液に光を照射する光源と、混合液を透過した光を検出し測定値を出力する光度計を備えている。反応容器の内部のサンプル及び試薬の反応を測定することで、サンプルについて目的の項目が測定される。
【0020】
測定ユニット60A,60Bは、生化学分析や免疫分析に用いる測定ユニットである。第1の測定ユニット60Aは、第1の光源61Aと第1の光度計62Aを含んで構成されている。第2の測定ユニット60Bは、第2の光源61Bと第2の光度計62Bを含んで構成されている。光源61A,61Bは反応ディスク10の内周側に配置され、反応ディスク10の内周側から反応容器11に光を照射する。光度計62A,62Bは反応ディスク10の外周側に配置され、反応容器11の環状列を挟んでそれぞれ光源61A,61Bと対向している。光度計62A,62Bはそれぞれ光源61A,61Bの光軸上に位置している。光源61Aから照射された光が、反応容器11を通って光度計62Aで測定される。同じく光源61Bから照射された光が、反応容器11を通って光度計62Bで測定される。各反応容器11は、反応ディスク10の回転動作に伴って測定ユニット60A,60Bを通過する度に内部に収容した反応液(サンプルと試薬との混合液)について測光される。使用済みの反応容器11は、反応容器洗浄機構14で洗浄されて繰り返し使用される。
【0021】
第3の測定ユニット60Cは、血液凝固時間測定ユニットである。測定ユニット60Cは、反応容器収容部63、反応容器移送機構64、サンプル分注ステーション65、反応容器温調ブロック66、試薬分注機構67、測定チャンネル68を含んで構成されている。
【0022】
測定ユニット60Cにおいて、反応容器収容部63にはディスポーザブルな反応容器60aが複数収容されている。これら反応容器60aは、反応容器移送機構64によりサンプル分注ステーション65に移送される。サンプル分注ステーション65は、サンプルディスク20との間にサンプル分注機構40を挟むように配置されており、サンプル分注機構40によりサンプル容器21からサンプルが吸引され、サンプル分注ステーション65の反応容器60aに吐出(分注)される。
【0023】
こうしてサンプルが分注された反応容器60aは、反応容器移送機構64によりサンプル分注ステーション65から反応容器温調ブロック66へ移送され、37℃程度に昇温される。また、試薬ディスク30Aでは試薬が保冷されており、試薬分注機構50Aにより、検査項目に応じた試薬ボトル31Aから試薬が吸入され、反応ディスク10に設置された所定の空の反応容器11に吐出されて37℃程度に昇温される。
【0024】
その後一定時間が経過したら、反応容器11の内部で保温された試薬は、試薬昇温機能付きの試薬分注機構67により吸引され、試薬分注機構67で40℃程度に更に昇温される。この間、サンプルが37℃程度で保温された反応容器60aが反応容器移送機構64によって測定ユニット60Cの任意の測定チャンネル68に移送される。測定ユニット60Cには、光源と光度計を有する測定チャンネル68が複数備わっている。その後、試薬分注機構67により、温められた試薬が測定チャンネル68の反応容器60aに吐出(分注)され、反応容器60aの内部でサンプルと試薬との血液凝固反応が開始する。
【0025】
測定チェンネル68においては、反応容器60aに試薬が分注されて以降、所定の時間間隔(例えば0.1秒周期)で光度計から測定データが出力される。測定が終了したら、使用済の反応容器60aは、反応容器移送機構64により移送されて反応容器廃棄部69に廃棄される。
【0026】
以上の通り、測定ユニット60A-60Cにおいては、光度計で測定された透過光又は散乱光のアナログ信号が、AD変換器79により光量に比例したデジタル信号に変換されて制御装置3に入力される。
【0027】
-読取装置-
読取装置70C-70Cは、容器に付された識別データを読み取る装置である。識別データにはバーコードやRFID等が採用できるが、本例ではバーコードを用いた例を説明する。つまり読取装置70A-70Cはバーコードリーダーである。
【0028】
第1の読取装置70Aは、試薬登録時に試薬ボトル31Aに貼られたバーコードを読み取る。読取装置70Aで読み取られた試薬の識別データは、この識別データが付された試薬ボトル31Aの試薬ディスク30Aにおけるポジションデータと共に制御装置3に送信され、メモリー6に記憶される。
【0029】
第2の読取装置70Bは、試薬登録時に試薬ボトル31Bに貼られたバーコードを読み取る。読取装置70Aと同様、読取装置70Bで読み取られた試薬の識別データも、この識別データが付された試薬ボトル31Bの試薬ディスク30Bにおけるポジションデータと共に制御装置3に送信され、メモリー6に記憶される。
【0030】
第3の読取装置70Cは、サンプル登録時にサンプル容器21に貼られたバーコードを読み取る。バーコードには、サンプルID、患者ID、サンプル種等のデータが変換されている。読取装置70A,70Bと同様、読取装置70Cで読み取られたサンプルの識別データも、この識別データが付されたサンプル容器21のサンプルディスク20におけるポジションデータと共に制御装置3に送信され、メモリー6に記憶される。
【0031】
なお、
図1の自動分析装置100は、サンプルや試薬のキャリーオーバーの発生を回避する機能を搭載している。サンプルや試薬がキャリーオーバーする場合に、測定の間に洗浄動作を入れてキャリーオーバーを低減又は回避する。キャリーオーバーを回避するための洗浄動作は、試薬分注機構50A,50Bやサンプル分注機構40の各ピペットノズル、反応容器11について実行可能である。
【0032】
(操作装置)
操作装置2は、測定依頼データ(後述)をコンピュータ7に入力したり各種データをモニタ4に表示させたりする際にオペレータが操作する装置である。操作装置2には、典型的にはキーボードやマウスを使用することができるが、タッチパネルその他の操作装置を適用することもできる。
【0033】
(制御装置)
制御装置3は、インターフェイス5、メモリー6、コンピュータ(第1コンピュータ)7、制御用コンピュータ(第2コンピュータ)8、サーバ(第3コンピュータ)9を含んで構成されている。
【0034】
-インターフェイス-
インターフェイス5は、分析ユニット1に対するコンピュータ7のデータの入出力部である。
図1ではコンピュータ7とインターフェイス5が別々に図示してあるが、インターフェイス5はコンピュータ7と一体に構成される場合もある。コンピュータ7から分析ユニット1への分析項目のデータはインターフェイス5を介して制御用コンピュータ8に入力される。また、分析ユニット1からA/D変換器79を介して出力される測定ユニット60A-60Cによる測定データは、インターフェイス5を介してコンピュータ7やメモリー6に入力される。読取装置70A-70Cで読み取られた識別データもインターフェイス5を介してコンピュータ7やメモリー6に入力される。
【0035】
-メモリー-
メモリー6はHDDやSSD等といった記憶装置であり、
図1ではインターフェイス5を介してコンピュータ7に接続した外付けの記憶装置を例示しているが、コンピュータ7に内蔵された記憶装置を適用することもできる。メモリー6には、試薬の識別情報、サンプルの識別情報、分析パラメータ、測定依頼データ、キャリブレーション結果、測定データ等のデータが記憶される。測定依頼データには、少なくともサンプルIDや測定項目が含まれており、患者ID等の他の情報も必要に応じて含まれ得る。
【0036】
-コンピュータ-
コンピュータ7は、オペレータが使用する制御装置である。このコンピュータ7は、オペレータの操作に応じて測定依頼データを作成して制御用コンピュータ8に出力したり、分析ユニット1からの測定データ等に基づいてオペレータの操作に応じた画面をモニタ4に表示出力したりする機能を持つ。その他、コンピュータ7のROMには、分析ユニット1の測定値とメモリー6に記憶された患者データとを基に医師その他の医療従事者の診断又はすべき検査の判断を支援するプログラムが格納されている。具体的には、コンピュータ7は、分析ユニット1から新たな(つまり現在或いは今回の)測定データが入力された場合、読取装置70Cで読み取られた識別データを基に、新たな測定データに対応する患者IDの患者データをメモリー6から読み込む。そしてコンピュータ7は更に、新たな測定データと読み込んだ患者データとを基に、その患者に関して疾患や次に行うべき検査の判定を実行し、判定結果をモニタ4に出力する。医師等はモニタ4でコンピュータ7の判定結果を確認し、疾患やその後すべき検査の判断をする上で参考にすることができる。
【0037】
なお、
図1ではコンピュータ7に分析ユニット1が1つのみ接続された構成を例示しているが、複数の分析ユニット1がインターフェイス5を介して1つのコンピュータ7に接続される場合もある。施設内の分析ユニット1を複数接続する場合、インターフェイス5にネットワーク(LAN等)を接続し、ネットワークを介して1つのコンピュータ7に複数の分析ユニット1を接続する場合もある。1つの制御装置に対して複数の分析ユニットを持つ自動分析装置である。
【0038】
-制御用コンピュータ-
制御用コンピュータ8は、コンピュータ7から入力された測定依頼データに従って分析ユニット1に指令信号を出力し、分析を駆動する制御装置である。制御用コンピュータ8は分析ユニット1と一体構成とする(分析ユニット1のボディの内部に組み込まれる)ことが想定されるが、
図1では分析ユニット1と別々に図示してある。制御用コンピュータ8による指令対象は、サンプルディスク20、試薬ディスク30A,30B、サンプル分注機構40、試薬分注機構50A,50B、反応容器移送機構64、試薬分注機構67といった作動機器(可動機器)である。本実施形態は1つの制御用コンピュータ8が統括的に分析ユニット1を駆動する例であるが、各作動機器に専用の制御用コンピュータを備え、各制御用コンピュータがコンピュータ7からの入力に応じて対応する作動機器を駆動する構成とすることもできる。
【0039】
-サーバ-
サーバ9はコンピュータ7と接続されている。同図ではインターフェイス5を介さずにコンピュータ7とサーバ9とを接続した構成を表しているが、サーバ9はインターフェイス5を介してコンピュータ7に接続される場合もある。このサーバ9のメモリー9Mには、患者ID毎の患者データ(後述)が記憶されている。
【0040】
(モニタ)
モニタ4はコンピュータ7に接続されており、コンピュータ7の操作の際のグラフィカルユーザインターフェイスや各種データを表示出力する表示装置である。モニタ4が表示出力する各種データには、分析ユニット1による測定データ、コンピュータ7による判定結果、患者データ等が含まれ、オペレータによる操作装置2の操作に応じてコンピュータ7から入力される信号により所望のデータがモニタ4に表示される。
【0041】
(基本動作-生化学検査)
自動分析装置100を用いた基本動作の一例を説明する。ここでは、光度計62Aを使用したサンプルの生化学検査及び血液凝固検査のうち、DダイマーやFDP等の血液凝固線溶マーカーに関する第1測定項目の分析動作について説明する。
【0042】
自動分析装置100により分析可能な測定項目についての動作パラメータは、予めオペレータによりコンピュータ7に入力されてメモリー6に記憶されている。各サンプルについての測定依頼データはオペレータにより入力される。測定依頼データを入力したあるサンプルIDの測定順序が訪れると、該当する測定依頼データの測定項目に応じた動作パラメータがメモリー6から読み出され、コンピュータ7から制御用コンピュータ8に入力される。そして、制御用コンピュータ8によって動作パラメータに従って分析ユニット1が駆動される。
【0043】
具体的には、制御用コンピュータ8からの動作指令により、まず反応ディスク10及びサンプルディスク20が駆動されて目的の反応容器11及びサンプル容器21がそれぞれ分注位置10a,20aに移動する。するとサンプル分注機構40により、分注位置20aにある目的のサンプル容器21から所定量のサンプルが吸引され、反応ディスク10の分注位置10aにある目的の反応容器11に分注される。サンプルが分注された反応容器11は、回転する反応ディスク10によって分注位置10aから分注位置10b又は10cに移動し、試薬分注機構50A又は50Bにより測定項目に応じた試薬を分注される。サンプルと試薬の分注順序は逆(サンプルより試薬が先)であっても良い。
【0044】
その後、反応容器11が測定ユニット60Aを横切る際、光度計62Aによりサンプルを透過した光が測定され、光度計62Aによる測定値がA/D変換器79でデジタル信号に変換され、インターフェイス5を介してコンピュータ7に入力される。コンピュータ7においては、測定項目に応じた検量線データと測定値とを基に、サンプルと試薬との混合液の濃度が測定データとして算出される。検量線データは、指定された分析法の下で予め測定されてメモリー6に記憶されている。コンピュータ7で演算された測定データは、オペレータの操作に応じて又は自動的にモニタ4に表示出力される。
【0045】
なお、測定データは、コンピュータ7に代えて制御用コンピュータ8で演算される構成とすることも可能である。
図1の分析ユニット1においては、ターンテーブル方式の反応ディスク10を用いることで、ディスクの回転動作により連続してサンプルを分注することができて処理能力に優れる特徴がある。
【0046】
(基本動作-血液凝固検査)
自動分析装置100を用いた基本動作の他の例を説明する。ここでは、止血機能検査項目の測定、つまり血液凝固時間の測定に関する分析動作を説明する。血液凝固時間の測定においても、制御用コンピュータ8によって動作パラメータに従って分析ユニット1が駆動される。
【0047】
具体的には、測定ユニット60Cにおいて反応容器収容部63に収容された反応容器60aが、反応容器移送機構64によりサンプル分注ステーション65に移送される。するとサンプル分注機構40により、サンプルディスク20の該当するサンプル容器21から吸引されたサンプルが、サンプル分注ステーション65の反応容器60aに分注される。サンプルが分注された反応容器60aは、反応容器移送機構64によって反応容器温調ブロック66へ搬送され、そこで37℃に昇温される。
【0048】
他方、試薬分注機構50Aにより、測定項目に応じた試薬ボトル31Aから吸引された試薬が、反応ディスク10に設置された所定の空の反応容器11に吐出される。試薬ディスク30Aで保冷されていた試薬は、反応ディスク10で約37℃に昇温される。
【0049】
一定時間経過後、反応容器11で保温された試薬は、試薬昇温機能付きの試薬分注機構67によって吸引され、試薬分注機構67の内部で例えば40℃まで更に昇温される。この間、サンプルを収容した反応容器60aは、反応容器移送機構64によって反応容器温調ブロック66から所定の測定チャンネル68に移送される。その後、試薬分注機構67により、昇温した試薬が測定チャンネル68の反応容器60aに分注される。この試薬分注により、反応容器60aの内部でサンプルと試薬との血液凝固反応が開始する。
【0050】
こうして試薬が吐出された後、測定チャンネル68において所定の短い測定時間間隔で(例えば0.1秒毎に)光の測定値が逐次出力される。出力された測定値は、A/D変換器79によりデジタル信号化され、インターフェイス5を介してコンピュータ7に入力される。測光終了後、使用済の反応容器60aは、反応容器移送機構64によって移送されて反応容器廃棄部69に廃棄される。
【0051】
コンピュータ7は、こうして分析ユニット1から入力された測定値から血液凝固時間を求める。その後、測定項目に応じた検量線データと演算した血液凝固時間とを基に、サンプルと試薬との混合液の濃度が測定データとして算出される。コンピュータ7で演算された測定データや血液凝固時間は、オペレータの操作に応じて又は自動的にモニタ4に表示出力される。
【0052】
なお、測定ユニット60Cでは、測定値を一定時間収集しなければならないため、その間、1つの測定チャンネル68では1つの反応容器60aしか測定できない。
図1では6つの測定チャンネル68を有する構成を例示したが、測定チャンネル68に空きがない時には、次の血液凝固時間の測定が受け付けられず待機状態となる。こうした待機状態の発生を抑制する観点では、測定チャンネル68が多い構成が有利である。
【0053】
(制御装置の機能)
図2は
図1に示した自動分析装置100に備わった制御装置3の機能ブロック図である。
図2において
図1に対応する要素には
図1と同符号を付して適宜説明を省略する。
図2に示したように、制御装置3には、測定順管理F1、機構制御F2、データ演算F3、データ管理F4、解析F5の機能が備わっている。これらの機能は所定のプログラムに従って複数のコンピュータ(本実施形態ではコンピュータ7及び制御用コンピュータ8)で分担して実行する想定であるが、単一のコンピュータで全ての機能を実行する構成であっても構わない。例えば測定順管理F1と機構制御F2の機能は制御用コンピュータ8で実行し、他の3つの機能はコンピュータ7で実行する構成とすることができる。
【0054】
-測定順管理-
測定順管理F1は、サンプルの測定順序を設定する機能である。この測定順管理F1の機能は、制御用コンピュータ8により実行される想定であるが、コンピュータ7で実行されるようにしても良い。コンピュータ7において操作装置2で設定された測定依頼データは、コンピュータ7から制御用コンピュータ8に入力される。説明の便宜上、特定の測定依頼データを指して測定依頼データXと記載し、また測定依頼データXでIDが指定されたサンプルをサンプルYと記載する。コンピュータ7から測定依頼データXが入力されると、制御用コンピュータ8ではサンプルYについて、どのサンプルの次に測定を実行するかといった測定順序が設定される。
【0055】
-機構制御-
機構制御F2は、分析ユニット1の動作を制御する機能である。この測定順管理F1の機能は、制御用コンピュータ8により実行される。制御用コンピュータ8は、測定順管理F1で設定されたサンプルYの測定順序が到来すると、分析ユニット1を駆動してサンプルYについて測定を実行する。具体的には、サンプルディスク20に設置されたサンプルYを、測定依頼データXで指定された測定項目に応じて反応容器11又は60aに分注し、前述した通り測定項目に応じて試薬と混合して反応させる。
【0056】
-データ演算-
データ演算F3は、分析ユニット1から入力される測定値から測定データを算出する機能である。このデータ演算F3の機能は、例えばコンピュータ7により実行される。機構制御F2によりサンプルYを試薬と反応させると、測定ユニット60A,60B又は60CからサンプルYについての測光値がA/D変換器79を介して入力される。この測定値を基にサンプルYについて指定された測定項目の測定データが演算される。ここで演算されたサンプルYについての測定データは、測定値、試薬識別情報、サンプル識別情報、分析パラメータ、測定依頼データ、キャリブレーション結果等と共にメモリー6に記憶される。
【0057】
-データ管理-
データ管理F4は、測定データを管理する機能である。このデータ管理F4の機能は、例えばコンピュータ7により実行される。具体的には、コンピュータ7は、データ演算F3で演算したサンプルYについてのデータ(測定データ等)をサンプルYのサンプルIDと紐付ける。同時にメモリー6に記憶されたサンプルYについての測定データ等にもサンプルYのサンプルIDが紐づけられる。サンプルYのサンプルIDと紐付けられた測定データ等は、コンピュータ7からサーバ9に送信され、サーバ9のメモリー9Mに記憶された対応する患者IDについての検査情報データベース9Aとして蓄積される。検査情報データベース9Aに登録された過去の測定データが、患者データに含まれるデータのうちの過去の測定データに相当する。コンピュータ7は、自動的に又はオペレータによる操作に応じて、データ管理F4で処理したサンプルYの測定データ等をモニタ4表示出力する。また、サーバ9のメモリー9Mには患者ID毎の電子カルテ9Bが格納されている。電子カルテ9Bは、診察での医師による所見、患者の症状、既往歴、投薬履歴、家族歴等のデータベースである。サーバ9においては、検査情報データベース9Aに登録された同一患者IDの測定データが患者データに反映され、これにより患者個人の様々なデータが集合したデータベースとしての患者データが患者ID毎に記憶される。
【0058】
-解析-
解析F5は、新たに得られた測定データと対応する患者IDの患者データとを基に、当該患者の診療において次に行うべき検査を解析し判定する機能である。この解析F5の機能は、例えばコンピュータ7により実行される。具体的には、コンピュータ7は、データ管理F4で新たに得られた測定データに患者IDが対応する患者データをサーバ9からダウンロードする。コンピュータ7はまた、新たな測定データと患者データとを基に、解析F5でサンプルYに対応する患者について疾患を推定したり、或いはその患者の診療において次に行うべき検査を判定したりする。また、解析F5の結果は、コンピュータ7からサーバ9に送信され、サーバ9のメモリー9Mに記憶された対応する患者IDについての患者データに反映される。また、コンピュータ7は、自動的に又はオペレータによる操作に応じて、解析F5の結果をモニタ4表示出力する。
【0059】
本実施形態では、分析ユニット1で得られる最新(つまり現状)の測定データのみならず、上記のように患者データを加味して疾患やすべき検査の判定をすることを1つの特徴としている。この判定機能は、疾患及び検査の双方を判定することのみならず、疾患のみを判定することも、行うべき検査のみを判定することもできる。以下にコンピュータ7による解析について具体例を説明する。
【0060】
(疾患等判定の例)
図3は自動分析装置100で実行される疾患等判定の一例を表すフローチャートである。本例では、糖尿病について診断や検査の判定をする処理を一例として説明する。
【0061】
同図のフローチャートは、コンピュータ7において、測定依頼データの下で糖尿病検査について
図2の機構制御F2の処理を経て対象の患者IDの測定値が入力されると開始される。フローを開始すると、コンピュータ7は、血糖値及びHbA1cの測定データを演算し(S101)、血糖値及びHbA1cの測定データファイルをメモリー6に格納する(S102)。
【0062】
次に、コンピュータ7は、血糖値の測定データが異常であるか(基準範囲を超えているか)を判定する(S103)。血糖値の測定データが異常である場合、コンピュータ7は更に、HbA1cの測定データが異常であるか(基準範囲を超えているか)を判定する(S104)。このとき、コンピュータ7は、血糖値について「基準範囲オーバー」といったアラームを測定データに付記する。
【0063】
S104の判定でHbA1cの測定データが異常である場合、コンピュータ7は、当該患者について糖尿病であると判定し、今後の継続的な測定を提示して
図3のフローを終える(S105)。このとき、コンピュータ7は、HbA1cについて「基準範囲オーバー」といったアラーム、「継続検査推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0064】
先のS104の判定でHbA1cの測定データが正常(基準範囲内)であると判定された場合、コンピュータ7は、該当する患者IDの患者データをサーバ9からダウンロードし(S106)、過去の記録から糖尿病の関連症状がないかを判定する(S107)。糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重増加等)及び糖尿病網膜症のいずれかがあれば、コンピュータ7は、ステップS107で当該患者について糖尿病であると判定し、今後の継続的な測定を提示して
図3のフローを終える(S105)。このとき、コンピュータ7は、「継続検査推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0065】
S107において糖尿病の典型的な症状も糖尿病網膜症もないと判定されれば、コンピュータ7は、例えば今後1か月以内の血糖値とHbA1cの再検査を提示し(S108)、
図3のフローを一旦保留する。このとき、コンピュータ7は、「再検査推奨(1か月以内)」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0066】
ステップS108の後、1か月以内に当該患者の再検査が実施(測定依頼データが入力)されたら
図3のフローが再開する。フローを再開すると、コンピュータ7はステップS101,S102と同様にして再検査の測定データを演算しメモリー6に格納し(S109,S110)、再検査について血糖値及びHbA1c値がいずれも正常であるかを判定する(S111)。ここで血糖値及びHbA1c値の少なくとも一方が異常であれば、コンピュータ7は当該患者について糖尿病であると判定し、今後の継続的な測定を提示して
図3のフローを終える(S105)。このとき、コンピュータ7は、該当する測定項目の「基準範囲オーバー」といったアラーム、「継続検査推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0067】
S111において血糖値もHbA1c値も正常であれば、糖尿病と断定はできないものの疑いが残る。この場合、コンピュータ7は、糖尿病の疑いと判定し(S112)、経過観察として今後3-6か月以内の血糖値とHbA1cの再検査を提示して
図3のフローを終える(S113)。このとき、コンピュータ7は「再検査推奨(3~6か月以内)」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0068】
また、先のS103で血糖値の測定データが正常であった場合、コンピュータ7は、HbA1cの測定データが異常であるかを判定する(S114)。HbA1cの測定データが異常である場合、1か月以内の血糖値の再検査を提示し(S115)、
図3のフローを一旦保留する。このとき、コンピュータ7は、HbA1cについての「基準範囲オーバー」といったアラーム、「再検査推奨(1か月以内)」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0069】
ステップS115の後、1か月以内に当該患者の再検査が実施(測定依頼データが入力)されたら
図3のフローが再開する。フローを再開すると、コンピュータ7は再検査の測定データを演算しメモリー6に格納し(S116,S117)、再検査について血糖値が正常であるかを判定する(S118)。ここで血糖値が異常であれば、コンピュータ7は当該患者について糖尿病であると判定し、今後の継続的な測定を提示して
図3のフローを終える(S105)。このとき、コンピュータ7は、血糖値について「基準範囲オーバー」といったアラーム、「継続検査推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0070】
S118において血糖値が正常であれば、糖尿病と断定はできないものの疑いが残る。この場合、コンピュータ7は、糖尿病の疑いと判定し(S119)、経過観察として今後3-6か月以内の血糖値とHbA1cの再検査を提示して
図3のフローを終える(S120)。このとき、コンピュータ7は「再検査推奨(3~6か月以内)」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0071】
なお、初回検査において血糖値もHbA1c値もが正常である場合(つまりステップS114でHbA1c値が正常である場合)、コンピュータ7は当該患者について糖尿病ではないと判定して
図3のフローを終える(S121)。
【0072】
(画面表示の例)
図4は測定結果の一覧画面の一例、
図5は患者データの参照画面の一例を表している。
図4及び
図5の画面を含め、本願明細書において説明する画面はいずれも、オペレータの操作に応じてコンピュータ7によりモニタ4に表示出力される。
【0073】
図4の画面は、モニタ4に表示された所定の画面において「測定結果」と表示されたタブ401を選択(クリック)すると表示される。同図の画面には、サンプル毎の測定状況表示エリア400aと、測定状況表示エリア400aで選択したサンプルの測定項目毎の結果を表示する項目別結果表示エリア400bとが表示されている。測定状況表示エリア400aの各サンプルの結果欄には、サンプルIDに紐づけられた患者IDの詳細情報である患者データを閲覧するためのボタン402が表示されている。測定状況表示エリア400aのいずれかの欄のボタン402を選択して操作(クリック)すると、選択したサンプルIDに紐づく患者IDの患者データがサーバ9からダウンロードされ、
図5の参照画面が表示される。
【0074】
図5に例示した参照画面には、患者を識別するための患者IDと患者名(氏名)の表示欄411、測定結果を表示する測定結果表示エリア410aと診察所見等の患者データを表示する患者データ表示エリア410bを有する例を示している。
【0075】
糖尿病については、慢性的な高血糖の有無で診断が変わり得る。本実施形態では、
図3のステップS107で説明した通り、患者データを参照して過去の検査結果を加味して患者が糖尿病であるかが判定される。
【0076】
測定結果表示エリア410aは、最新の(今回測定した)測定データ412と共に、同一患者IDの過去の測定データ413が表示されている。この例では、基準範囲外となった測定データ414が、例えば文字色を変える、太字で表示する、ハッチングをする等の表示方法、又はこれらを組み合わせた表示方法により、一見して目に付くように表示されている。
【0077】
患者データ表示エリア410bで「所見」と表示されたタブ415を選択(クリック)すると、患者の症状416、症状のレベル417、特記事項を記す備考418が表示される。症状のレベル417は症状の状態や発生頻度で症状の深刻度を評価する指標であり、症状の状態や発生頻度と症状の深刻度との関係は、例えばサーバ9に蓄積された各患者の該当する症状のデータを統計処理して得られる。この例では、症状の程度を5段階(レベル1-5)で評価し、レベル1を正常として症状が悪くなるほどレベルの数値が大きくなることとしている。
【0078】
また、患者データ表示エリア410bでタブ419,420,421を選択することで、患者の家族歴、診断のフローやグラフ等の情報を閲覧することができる。
図5の患者データの参照画面に診断のフローを表示させた例を
図6に表す。診断フローを表示することで、例えば患者の診断の全体的なフローやフロー上で現在どの状況にあるのかを確認することができる。例えば、フロー上の現在のフェーズを太線で囲んだり、
図6に図示したように着色して表示したりすることで、診断フローの進捗確認をすることができる。
【0079】
なお、
図6の診断フローは、フローの基礎となる診断ガイドラインをダウンロードしたりマニュアルで編集したりすることで更新可能であり、
図6の画面でしたフローの更新を
図3のフローチャートに反映させることもできる。つまり、
図6の画面でフローを更新することによってコンピュータ7が実行するシーケンスが変わり得る。
【0080】
(効果)
患者の過去の測定データや既往歴、家族歴等の個々の情報を検索して収集する作業は多忙な医師その他の医療従事者にとって負担の大きな作業であり、また多くの情報を扱う場合には重要なデータを見落とす可能性もある。
【0081】
それに対し、本実施形態の自動分析装置100は、分析ユニット1で今回測定された測定データで単純に疾患を判定するのではなく、患者個人のデータである患者データを加味して分析ユニット1の測定データから疾患や次にすべき検査を判定し結果を提示する。このようにして患者データを加味した判定を実行することで、疾患や次にすべき検査の判定の信頼性を向上させることができる。また医師その他の医療従事者の診断又は検査の判断の負担を軽減すると共にデータの見落としも防止でき、医療施設における診断や検査の迅速化にも貢献し得る。
【0082】
<第2実施形態>
図7は本発明の第2実施形態に係る自動分析装置で実行される疾患等判定の一例を表すフローチャートである。本実施形態も測定データで異常判定された場合に患者データを参照して疾患やすべき検査を判定する点で第1実施形態と共通するが、判定ができない場合に蓄積データを統計して疾患を判定する点で第1実施形態と異なる。具体的には、本例のコンピュータ7は、疾患が判定不能である場合、新たな測定データに所定の条件が共通する診断結果をメモリー9Mに記憶された複数の患者の患者データ(例えば全ての有効な患者データ)から抽出し、抽出結果を統計してモニタ4に出力する。本実施形態の自動分析装置のハードウェア構成は、第1実施形態と同様である。
【0083】
(疾患等判定の例)
図7を用いて本実施形態の自動分析装置による疾患等判定について血液凝固分析の場合を例に挙げて説明する。APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が異常(凝固時間延長)となる代表的な疾患として、出血性疾患と血栓性疾患がある。また、これら疾患の要因として、凝固因子の産生低下とインヒビターの可能性がある。同図のフローチャートは、PT(プロトロンビン時間)が正常でAPTTのみが異常となった場合にコンピュータ7により開始される。
【0084】
図7のフローを開始すると、コンピュータ7は、APTTが異常でPTが正常という測定データを取得し(S201)、それら測定データをメモリー6に格納する(S202)。そして、コンピュータ7は、該当する患者IDの患者データをサーバ9からダウンロードし(S203)、投薬歴からヘパリン投与があるかを判定する(S204)。本例では、既往歴や投薬歴、家族歴といった患者データから投薬歴を判定に用いる例を説明するが、判定に用いるデータは検査目的により異なるし、複数種のデータを判定に用いる場合もある。
【0085】
S204において投薬歴からヘパリン投与があると判定した場合、ヘパリン混入に起因してAPTTが異常値を示した可能性が疑われるため、コンピュータ7はヘパリン定量試験を提示し(S205)、
図7のフローを一旦保留する。このとき、コンピュータ7は、「基準範囲外」といったアラーム、「ヘパリン定量試験推奨」といったコメントをAPTTの測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0086】
S205の処理の後、ヘパリン定量試験が実施(測定依頼データが入力)されたら
図7のフローが再開する。フローを再開すると、コンピュータ7はヘパリン定量試験の測定データについてヘパリン濃度がAPTTに影響するほどの値でないかを判定する(S206)。その結果、ヘパリン濃度がAPTTに影響するレベルの値(設定値以上の値)であれば、コンピュータ7は、APTTの異常はヘパリンの影響であると判定して
図7のフローを終える(S207)。
【0087】
先のS204で投薬歴からヘパリン投与がないと判定した場合、APTTの異常の原因としてヘパリン投与の可能性が消え、コンピュータ7は、更に患者データを参照して出血時間が正常であるかを判定する(S208)。出血時間が異常である(つまり延長している)場合、コンピュータ7は、Von Willebrand因子(VWF)活性の測定を提示する(S209)。このとき、コンピュータ7は、「VWF活性測定推奨」といったコメントをAPTTの測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0088】
他方、S208において出血時間は正常であると判定した場合、コンピュータ7は、APTTクロスミキシングテストを提示し(S210)、
図7のフローを一旦保留する。このとき、コンピュータ7は、「APTTクロスミキシングテスト推奨」といったコメントをAPTTの測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。APTTクロスミキシングテストとは、被検血しょうに正常血しょうを各種比率で混合し、混合直後の即時反応及び37℃で2時間加温した遅延反応のAPTTを測定する試験をいう。
【0089】
S210の処理の後、APTTクロスミキシングテストが実施(測定依頼データが入力)されたら
図7のフローが再開する。フローを再開すると、コンピュータ7は、APTTクロスミキシングテストの測定データを演算し(S211)、測定データをメモリー6に格納する(S212)。続いて、コンピュータ7は、測定データを基に、判定用の混合曲線(不図示)を作成する(S213)。ここで作成する混合曲線は、被検血しょうに対する正常血しょうの混合比率を横軸に、APTT測定値を縦軸にとった曲線である。
【0090】
S213の処理でAPTTクロスミキシングテストに基づいて作成した混合曲線が、即時反応と遅延反応の双方で共に下に凸になった場合、肝不全(凝固因子産生の低下)、先天性血友病A、先天性血友病B、先天性第XII、XI因子欠損症の可能性がある。この場合、疾患を特定するために、コンピュータ7は、凝固因子定量試験を提示する(S214)。このとき、コンピュータ7は、「凝固因子定量試験推奨」といったコメントをAPTT及びAPTTクロスミキシングテストの測定データの少なくとも一方に付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0091】
S213の処理でAPTTクロスミキシングテストに基づいて作成した混合曲線が、遅延反応で即時反応よりも明確に上に凸となった場合、後天性血友病や、各凝固因子に対するインヒビターが疑われる。S213の処理は、例えば遅延反応の平均曲率が即時反応の曲率よりも設定値以上大きいかを判定することで実行できる。後天性血友病やインヒビターが疑われる場合、低下している因子を特定するため、コンピュータ7は、凝固因子定量試験を提示して試験結果を待つ(S215)。このとき、コンピュータ7は、「凝固因子定量試験推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0092】
S215の処理の後、凝固因子定量試験が実施(測定依頼データが入力)されたら
図7のフローが再開する。フローを再開すると、コンピュータ7は、凝固因子定量試験の測定データを演算し(S216)、測定データをメモリー6に格納する(S217)。この凝固因子定量試験の結果を基に、コンピュータ7は、低下している因子に対するインヒビター力価測定を提示する(S218)。このとき、コンピュータ7は、「インヒビター力価測定推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0093】
S213の処理でAPTTクロスミキシングテストに基づいて作成した混合曲線が、即時反応と遅延反応の双方で共に直線又は上に凸とった場合、抗リン脂質症候群(APS)が疑われる。この場合、APSかどうか判定するために、コンピュータ7は、LA(ループスアンチコアグラント)検査を提示する(S219)。このとき、コンピュータ7は、「LA検査推奨」といったコメントを測定データに付記し、患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映する。
【0094】
S214,S218又はS219の処理で提示された因子定量試験、インヒビター力価測定又はLA検査を実施されたら、コンピュータ7はその結果疾患が特定できたかを判定し(S220)、疾患が特定できれば
図7のフローを終える。
【0095】
因子定量試験、インヒビター力価測定又はLA検査を実施しても疾患が特定できない場合、コンピュータ7はサーバ9の蓄積データを統計解析することで疾患を推定する(S221)。先のS206の処理でヘパリン濃度がAPTTに影響する値ではないと判定された場合も、疾患が特定できないため、コンピュータ7はS221の処理に手順を移して蓄積データの統計解析による疾患推定を試行する。S209のVWF活性測定の結果、VWF活性に異常が見られない場合も同様である。
【0096】
S221の処理において、コンピュータ7は、サーバ9のメモリー9Mに蓄積された多数の患者データ(例えば全ての有効な患者データ)を統計的に解析し、S201の処理で演算した判定対象の測定データに所定の条件が共通する診断結果を抽出する。コンピュータ7は、この抽出結果をモニタ4に表示出力し(S222)、また抽出結果を患者IDと紐づけてサーバ9に送信し患者データに反映して
図7のフローを終える。
【0097】
(画面表示の例)
図8は判定不能時にコンピュータが実行する解析の結果を表す画面の一例、
図9は解析データの参照画面の一例を表している。これらの画面はいずれも、オペレータの操作に応じてコンピュータ7によりモニタ4に表示出力される。
【0098】
図8の画面には、判定対象の患者IDの測定結果を表示する測定結果表示エリア600aと、解析条件や解析結果を表示する解析表示エリア600bとが表示されている。
【0099】
測定結果表示エリア600aには、患者を識別するための患者ID601、患者名602、測定日の記録である測定情報603、測定項目の名称である項目名604、測定データである結果605、レベル606が表示される。レベル606は基準範囲に対する測定結果の異常の程度を表す指標であり、秒数や活性、濃度の閾値で分類される。各レベルの閾値は、自動分析装置100を使用する医療施設において例えば操作装置2を用いてコンピュータ7に入力し設定することができる。この例では、異常の程度を5段階(レベル1-5)で評価し、レベル1を正常として異常の程度が悪くなるほどレベルの数値が大きくなることとしている。
【0100】
解析表示エリア600bには、解析条件607、グラフ608、グラフの凡例609、凡例609の中で選択したデータの詳細情報を表示するための詳細ボタン610が表示されている。
図8の例では、測定結果表示エリア600aに表示された患者IDの今回の測定結果のレベル(APTT=3、PT=1)が解析条件とされている。他の患者の患者データを含めてサーバ9に蓄積された膨大なデータから解析条件に合致するデータがコンピュータ7により複数抽出され、抽出された各データに紐づけられた診断結果の統計の結果がグラフ608に表されている。
図7のS221の処理ではコンピュータ7によりこのような処理が実行され、例えばS222の処理でオペレータは
図8に示したような解析結果をモニタ4で確認することができる。
図8の例では、解析表示エリア600bを参照することで、医師等は、患者が、先天性血友病A、VWF欠乏症、APSのいずれかである確率が80%で、先天性血友病Aである可能性が最も高いといったことを把握することができる。なお、解析条件は設定変更が可能であり、例えば、投薬歴や家族歴といった項目を少なくとも1つ選択して解析条件に設定することができる。
【0101】
図8の詳細ボタン610を操作(クリック)すると、選択したデータについて
図9に例示したような画面が表示される。
図9の画面では、疾患名及び該当件数が欄611に表され、「データ」と表示されたタブ612には、解析条件に合致したデータの一覧が表示される。タブ612には、各データについて、患者ID、性別、APTT、PT、及び詳細ボタン613が表示される。データを選択して詳細ボタン613を操作(クリック)すると、先に
図5に示したような患者データを表示させることができる。なお、「推奨項目」と表示されたタブ614を選択すると、欄611に表示された疾患を診断するために必要な測定項目が表示される。
【0102】
(効果)
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、新たに得られた測定データ及び対応する患者データのみでは疾患が判定不能な場合でも、他の患者のデータを含めた多くの実績データから疾患の候補を絞り込むことができる。
【0103】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る自動分析装置を説明する。本実施形態は、疾患等の判定に用いる診断基準を選択する機能を更に付加した例である。
【0104】
本実施形態において、サーバ9のメモリー9Mには、複数の診断基準が選択肢として記憶されている。診断基準は、判定対象とする疾患について確定診断するための測定項目や測定値について判定するための基準値等を規定したものである。疾患によっては、複数の診断基準が存在する場合もある。本実施形態では、各診断基準がコンピュータ7で判定に利用できるようにデータ化してメモリー9Mに記憶されている。メモリー9Mには、診断基準の上記選択肢の数より多くの診断基準が登録データとして記憶されている。診断基準の上記選択肢は、自動分析装置100の製造元で予め設定されたものであっても良いが、本実施形態では登録データの中から任意に選択可能である。
【0105】
本実施形態において、コンピュータ7は、分析ユニット1から入力された新たな測定データと、この測定データに対応する患者データとを基に、上記選択肢から診断基準を選択してメモリー9Mから読み込み、選択した診断基準に基づいて疾患等の判定を実行する。自動分析装置のハードウェア構成について、本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0106】
以下、DIC(播種性血管内凝固症候群)の診断に適用する診断基準を決定する場合を例に挙げて、本実施形態の自動分析装置100における診断基準の選択処理の具体例を説明する。ここでは日本血栓止血学会が提示するDIC診断基準2017年版(新基準)に基づいて診断基準のタイプを選択する場合を例に挙げる。
【0107】
(疾患等判定の例)
図10は本発明の第3実施形態に係る自動分析装置で実行される疾患等判定の一例を表すフローチャートである。
図10のフローでは、DIC診断をするに当たって適用するDIC診断基準の決定までの判定を説明する。
【0108】
検査所見において、血小板数低下、FDP上昇、フィブリノゲン(Fbg)低下、PT時間延長、アンチトロンビン活性低下、TAT、SF又はF1+2の上昇が確認された場合、DICの疑いがあるとして
図10の診断のフローが実行される。
【0109】
同図のフローを開始すると、コンピュータ7は、FDPやFbg、PT、アンチトロンビン、TAT又はSF、F1+2といった分析ユニット1又は他の分析ユニットで得られた測定データを取得し(S301)、測定データをメモリー6に格納する(S302)。
【0110】
続いて、コンピュータ7は、取得した測定データに対応する患者ID(診断対象の患者)の患者データをサーバ9からダウンロードし(S303)、診断対象の患者が産科領域ではないかを患者データ(例えば診断履歴等)に基づいて判定する(S304)。診断対象の患者が産科領域であると判定した場合、コンピュータ7は、産科領域の診断基準データを選択する(S305)。
【0111】
S304の処理で診断対象の患者が産科領域ではないと判定した場合、コンピュータ7は、診断対象の患者が新生児領域ではないかを患者データ(例えば年齢等)に基づいて判定する(S306)。診断対象の患者が新生児領域であると判定した場合、コンピュータ7は、新生児領域の診断基準データを選択する(S307)。
【0112】
診断対象の患者が産科領域でも新生児領域でもないと判定した場合、コンピュータ7は、造血障害がないかを判定する(S308)。造血障害の有無は、
図10のフローについて測定依頼データを入力する際に併せて入力することもできるし、患者データにデータがある場合は患者データから判定することもできる。造血障害があると判定した場合、コンピュータ7は、DIC診断基準2017年版の造血障害型の診断基準データを選択する(S309)。
【0113】
S308の処理で診断対象の患者に造血障害はないと判定した場合、敗血症の有無を判定するために、コンピュータ7は、測定ユニット60Bによるプロカルシトニン(PCT)測定を提示して結果を待つ(S310)。S310の処理の後、PCT測定が実施(測定依頼データが入力)されたら
図10のフローが再開する。フローを再開すると、コンピュータ7は、PCT測定の測定データを演算し(S311)、測定データをメモリー6に格納する(S312)。続いて、コンピュータ7は、PCT測定の測定データが基準範囲内であるかを判定する(S313)。
【0114】
PCT測定の測定データが基準範囲外であると判定した場合、コンピュータ7は、DIC診断基準2017年版の感染症型の診断基準データを選択する(S314)。他方、PCT測定の測定データが基準範囲内であると判定した場合、コンピュータ7は、DIC診断基準2017年版の基本型の診断基準データを選択する(S315)。
【0115】
最後に、コンピュータ7は、S305,S307,S309,S314又はS315の処理で選択した診断基準を適用し、S301の処理で取得した測定データについてスコアリングして判定対象の患者がDICであるのか否かを判定する(S316)。そして、判定結果をモニタ4に表示出力して
図10のフローを終了する。
【0116】
(画面表示の例)
図11は
図10のフローチャートで実行されたDICの判定結果(スコアリング結果)を表す画面の一例、
図12は
図11の画面で適用する診断基準を変更した場合のDICの判定結果(スコアリング結果)を表す画面の例である。これらの画面はいずれも、オペレータの操作に応じてコンピュータ7によりモニタ4に表示出力される。
【0117】
これらの図に例示した画面には、患者ID801、患者名802、疾患名803、診断基準804、日付805、サンプルID806、項目名807、測定結果808、単位809、入力値810、点数811、合計812が表示されている。疾患名803は診断する疾患の名称であり、本例ではDICである。日付805はFDP等の項目を測定した日付、サンプルID806はFDP等の項目を測定したサンプルのIDである。測定結果808は各項目の測定データであり、単位809は測定結果の単位を表している。入力値810は患者データとして入力したデータであり、
図11の例では肝不全の有無が例示してある。入力値810には、サーバ9からダウンロードした患者データの該当データが
図11の画面に反映されるようにすることもできるし、
図10のS308の処理で判定に用いた造血障害の有無のように操作装置2等で入力することもできる。点数811は選択した診断基準に従った各項目のスコアリング結果を示し、合計812は各項目の点数の合計値を表している。この合計812で診断対象の患者がDICであるか否かが判定される。
【0118】
図11の画面では、診断基準804のチェックボックス800に表示された選択肢の中から、スコアリングに適用する診断基準を操作装置2により選択操作(クリック)することができる。
図11では基本型813が選択された状態を表しているが、感染症型814を選択することで画面表示は
図12のようになる。基本型813及び感染症型814は日本血栓止血学会が提示するDIC診断基準2017年版のデータである。日本血栓止血学会が提示するDIC診断基準2017年版において、Fbgは基本型の診断基準ではスコアリング対象である一方で、感染症型の診断基準ではスコアリング対象ではない。
図11及び
図12ではスコアリング対象の測定項目にチェック815が入って網掛表示になっているのに対し、スコアリング対象から外れた測定項目(
図12のFbg)にはチェック815は入っておらず網掛表示にもなっていない。また、スコアリング対象外の測定項目は点数811も表示されず、合計812にも反映されない。そのため、
図11と
図12とでは、合計812の値が異なっている。
【0119】
日本血栓止血学会が提示するDIC診断基準2017年版において、基本型は6点以上、造血障害型は4点以上、感染症型は5点以上でDICと診断する規定になっている。従って、同じ検査結果でも、
図11のように基本型813を選択するとDICに該当するが、
図12のように感染症型814を選択するとDICには該当しない。
図11の画面上で診断基準の選択を切り換え、診断基準毎のスコアリングを容易に表示でき、医師等は診断の参考にすることもできる。
【0120】
(診断基準の選択肢の設定)
図11及び
図12の画面の診断基準804のチェックボックス800の中に表示された複数の診断基準は、画面下に表示するスコアリング結果に適用する診断基準として選択可能な選択肢である。また、チェックボックス800の中に設定した診断基準を、DIC診断に適用する診断基準として
図10のフローチャートで選択され得る診断基準の選択肢とする構成とすることもできる。つまり、
図10のフローチャートにおいて各種判定を実行した結果、チェックボックス800の中に設定された選択肢からDIC診断に適用する診断基準をコンピュータ7が選択しS316の処理を実行する構成である。
【0121】
本例において、チェックボックス800の内部に表示する診断基準の選択肢は、任意に設定することができる。コンピュータ7に複数の分析ユニット1が接続されている場合、分析ユニット毎に診断基準の選択肢を任意に設定できるようにすることも可能である。
【0122】
図13は診断基準の設定画面の一例を表す図である。
図13の画面は、所定の操作によりモニタ4に表示される。
図13の設定画面では、
図11の画面の診断基準の選択肢のボタンと同じ配置でチェックボックス800の内部に複数(本例では10個)のキー(カスタムボタン)が表示されている。また、これらキーを表示したシートが複数用意されており、
図13では「Sheet1」と表示されたタブ901を選択した状態を表しているが、異なるタブを選択してより多くのキーを使用することができる。
図13の例ではタブが5つ用意されており、最大50のキーが利用できる構成としてある。
【0123】
キー設定エリア900には、診断基準選択エリア900a、設定ボタン902、解除ボタン903、配置選択エリア900bが表示されている。診断基準選択エリア900aには、メモリー9M(又はメモリー6)に登録データとして予め登録しておいた診断基準904が、登録時に入力したコメント905と共にリスト表示されている。診断基準904のデータには、公に提示されている診断基準に限らず、医療施設のローカルな診断基準も含まれ得る。診断基準904のデータを登録する方法も、ネットワークを介してデータをダウンロードする方法の他、マニュアルで編集して登録する方法もある。
【0124】
キーに診断基準を割り当てる場合、診断基準選択エリア900aで所望の診断基準を選択し、選択した診断基準を割り当てるキーを配置選択エリア900bで選んで設定ボタン902を操作(クリック)する。これにより診断基準選択エリア900aで選択した診断基準が配置選択エリア900bの診断基準906に入力され、チェックボックス800の対応するキーに選択した診断基準が割り当てられる。また、既に診断基準が割り当てられているキーの設定は、配置選択エリア900bでキーを選んで解除ボタン903を操作(クリック)することでクリアすることができる。
【0125】
(効果)
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、以下のメリットが得られる。
【0126】
近年、検査技術の進歩に伴って医療の分野でも新たに測定可能な項目が増え、測定可能な項目はますます多種多様化してきており、これに伴って診断に関するガイドラインや基準が変更されることも珍しくない。また、同一の疾患について複数の出所から診断基準が提示されている場合もある。例えば、
図10-
図13の説明では、日本血栓止血学会が提示するDIC診断基準2017年版(新基準)に基づいて診断基準のタイプを選択する場合を例に挙げたが、DICの診断基準には、日本血栓止血学会が提示するものの他にも複数存在する。旧厚生省が提示するDIC診断基準(旧基準)、国際血栓止血学会(ISTH)が提示するDIC診断基準(ISTH基準)、日本救急医学会急性期が提示するDIC診断基準(急性期基準)がその例である。これらの診断基準はそれぞれスコアリング方法が異なるため、診断基準の選択は疾患を特定する上で重要である。DICの診断では更に、基礎疾患や家族歴、妊娠の有無といった患者データを個別に考慮する必要もある。こうした様々な情報を把握して適正な診断を行うことは医師等にとって負担が大きい。
【0127】
それに対し、本実施形態では、測定データと患者データとを基に診断に用いる診断基準が複数の選択肢から自動的に選択され、複雑な条件を考慮して診断基準を選択する際の医師等の負担を軽減でき、疾患の特定に要する時間も短縮することができる。また、コンピュータ7により患者データの参照の下で診断基準が選択されることで、診断基準の人為判断でデータの見落とし等に起因して生じ得るミスも抑制できる。
【0128】
更には、診断基準の選択肢は任意に設定可能であり、更改された診断基準や新たに提示された診断基準があればその情報を反映させることができ、ユーザーである医療施設でも診断基準の変更や追加に柔軟に対応できる。この場合、変更された又は新たに提示された診断基準をネットワーク経由でダウンロードして診断基準選択エリア900a(
図13)に登録する方法を採れば、マニュアルで診断基準の変更や追加をする場合に比べて労力も時間もかからず、入力ミスも抑制できる。
【0129】
<第4実施形態>
図14は本発明の第4実施形態に係る自動分析装置に備わった制御装置の機能ブロック図である。本実施形態において第1実施形態で説明した要素と同様の又は対応する要素については、
図14において既出図面と同符号を付して説明を適宜省略する。以下に
図14を用いて本発明の第4実施形態に係る自動分析装置を説明する。
【0130】
本実施形態は、分析ユニット1の出力や患者データに基づく疾患や行うべき検査の判定にAIを適用した例である。まず、サーバ9のメモリー9Mには、分析ユニットの出力及び患者データと判定結果(つまり疾患や行うべき検査)との関係を予め学習して得られた学習データ(学習モデル)9Dが記憶されている。
【0131】
また、制御装置3には、処理回路9Xと更新回路9Yが備わっている。処理回路9Xは、メモリー9Mから学習データ9Dを読み込み、学習データ9Dに基づき、分析ユニット1の出力及び患者データを入力として判定結果を出力する回路である。更新回路9Yは、判定結果を提示した後、診断対象の患者に対して現実になされた確定診断の結果又は現実に行われた検査をメモリー9Mの学習データ9Dに反映させ、学習データ9Dを更新する回路である。
【0132】
第1-第3実施形態のようにコンピュータ7により疾患名やすべき検査の提示が行われた後、医師その他の医療従事者により患者の疾患名や次にすべき検査が判断され、患者IDと紐づけられて例えばメモリー9Mに格納される。こうした医師等による判断結果が例えば操作装置2により患者IDと共に入力されたら、入力された医師等の判断結果と、この医師等の判断の基礎となった分析ユニット1の測定データ及び患者データとのデータセットが、コンピュータ7で作成される。医師等の判断結果は、例えば医師等の使用するコンピュータ端末(サーバ9にネットワーク接続された図示しない端末)を介してサーバ9のメモリー9Mに格納され、その後コンピュータ7にダウンロードされる構成とすることもできる。コンピュータ7で作成された測定データと医師等の診断結果のデータセットは、ネットワークを介してサーバ9に送信され、教師データとして更新回路9Yに入力される。更新回路9Yでは、メモリー9Mから学習データ9Dが読み込まれ、教師データが反映されて学習データ9Dが更新される。更新された学習データ9Dはメモリー9Mに記憶される(上書きされる)。
【0133】
他方、分析ユニット1からの測定値を基に演算された測定データが患者IDと共にコンピュータ7からサーバ9に入力されたら、処理回路9Xで疾患やすべき検査が導き出される。処理回路9Xによる判定結果はコンピュータ7に出力され、コンピュータ7によりモニタ4に表示出力される。
【0134】
なお、学習データ9Dをサーバ9に格納しサーバ9で学習データ9Dを利用し更新する構成を例に挙げて説明したが、学習データ9Dをサーバ9からコンピュータ7にロードしてコンピュータ7で学習データ9Dを用いたり更新したりする構成でも良い。学習データ9Dをコンピュータ7のメモリー又はメモリー6に格納し、コンピュータ7で学習データ9Dを利用し更新する構成とすることもできる。
【0135】
図15は学習データの概念図である。同図に示した学習データは、入力層、中間層及び出力層を持ち、入力層及び中間層には複数のノードが備わっている。入力層の各ノードは中間層の各ノードにリンクしており、中間層の各ノードは出力層のノードにリンクしている。各ノードにはリンクの強さを表す重み係数が設定されている。つまり、学習データには、入力層、中間層及び出力層のノードの組み合わせの数だけ演算モデルが存在する。これは人間の脳神経ネットワークを模擬したものであり、ニューラルネットワークと呼ばれる。
【0136】
第2実施形態に倣って血液凝固分析に
図15の学習データを適用する例を説明する。更新回路9Yに医師等の確定診断が入力されると、確定診断の基礎となった各種検査の測定データが患者IDに基づいてメモリー9Mから更新回路9Yに読み出され、これらが入力値として学習データ9Dの入力層に入力される。確定診断の基礎となった測定データとしては、例えばAPTT、PT、ヘパリン投与歴、VWF活性測定の測定値、APTTクロスミキシングテストの混合曲線、凝固因子定量試験の測定値、インヒビター力価測定の測定値等である。
【0137】
更新回路9Yは、医師等による確定診断に先行して疾患名を提示するに当たって上記の入力値を入力層に入力して出力層から出力された疾患名を医師等による確定診断を比較する。比較した結果、提示した疾患名と確定診断とが異なっている場合、更新回路9Yは、上記の入力値が入力された場合に医師等による確定診断が出力される確率が上昇するように、関連するノードの各リンクに設定された重み係数を調整する。こうして学習データ9Dが更新されてメモリー9Mに格納(上書き)される。
【0138】
確定診断の度に更新回路9Yでこのような手順を繰り返し実行し学習を重ねるうちに、学習データ9Dによる診断精度は向上し得る。ノードに設定する関数はシグモイド関数と呼ばれる指数関数を用いるのが一般的であるが、それには限定されない。また、学習に当たって重み係数を調整するアルゴリズムは多数考案されている。一般的には、バックプロパゲーション法を用いる。これら詳しい計算アルゴリズムについては、例えば「Simon Haykin 著 "NEURAL NETWORKS: a comprehensive foundation -2nd sd." Prentice-Hall, Inc. 出版、1999年」に詳しく記載されている。
【0139】
なお、本例では第2実施形態に倣って血液凝固分析に学習データ9Dを適用した場合を例示したが、学習データ9Dは、その他の疾患やすべき検査の提示にも適用できる。例えば第1実施形態のように糖尿病に適用する場合、血糖値、HbA1c値、口渇の有無、1日の飲水量や尿量、所定期間の体重変化量、糖尿病網膜症の有無等を入力とし、糖尿病か否か又は糖尿病の疑いといった診断結果を出力とする学習データを学習すればよい。第3実施形態で例示したDICやその他の疾患の診断についても、同じ要領で測定値や患者データを入力とし、診断結果を出力とする学習データを作成し学習すればよい。測定値を入力とし、診断基準を出力とする学習データを作成すれば、診断基準の選択にも適用できる。
【0140】
本実施形態においても、第1-第3実施形態と同様の効果が得られ、また診断を重ねるほどに信頼性が向上し得るメリットがある。
【0141】
<変形例>
なお、本発明の実施の例は以上の4つの実施形態に限定されるものではなく適宜変更可能である。例えば、第1-第4のいずれかの実施形態において構成の一部を他の実施形態の構成で置き換えたり、例えば、第1-第4のいずれかの実施形態に他の実施形態の構成を組み合わせたりすることもできる。第1-第4のいずれかの実施形態において、主発明の趣旨と無関係の構成を省略することも可能である。
【0142】
例えば、第1-第3実施形態において、疾患や検査の判定はコンピュータ7が実行する構成を例に挙げて説明したが、サーバ9が疾患や検査の判定を実行する構成としても良い。コンピュータ7、制御用コンピュータ8、サーバ9の機能の分担は変更しても構わないし、複数のコンピュータで制御装置3を構成する必要がなければ、単一のコンピュータで制御装置3を構成しても良い。
【0143】
また、患者データに、分析ユニット1による過去の測定データ、既往歴、投薬歴及び家族歴が全て含まれる場合を例に挙げて説明したが、必要な患者データは判定の内容によって異なり、これら全ての種類のデータが患者データに含まれている必要は必ずしもない。判定の内容に応じて、患者データには、分析ユニット1による過去の測定データ、既往歴、投薬歴及び家族歴のうちの少なくとも1種が含まれていればよい。
【0144】
また、分析ユニット1の構成も
図1に例示したものには限定されない。
図1では複合型の自動分析装置を適用対象として例示したが、測定ユニットが1つのみの自動分析装置にも本発明は適用可能である。例えば、生化学分析、血液凝固分析、又は免疫分析を実施する自動分析装置に本発明は適用可能である。また、複合型の自動分析装置にも様々なものがある。本願明細書でいう複合型自動分析装置は、種類の異なる複数の分析部と、これら分析部に個々に備わった検出器とを有する自動分析装置を意味し、典型的には、生化学分析部、血液凝固分析部及び免疫分析部のうちの複数の分析部を備えた自動分析装置をいう。つまり、生化学分析及び血液凝固分析を行う自動分析装置、生化学分析及び免疫分析を行う自動分析装置、血液凝固分析及び免疫分析を行う自動分析装置、生化学分析、血液凝固分析及び免疫分析を行う自動分析装置が、複合型自動分析装置の典型例である。複合型の自動分析装置のバリエーションを以下に2つ例示する。
【0145】
(複合型自動分析装置のバリエーション1)
図16は本発明が適用可能な複合型の自動分析装置の第1のバリエーションを表す図である。
図16には分析ユニット1のみを図示し制御装置3は図示省略してある。また、本例の自動分析装置において
図1の自動分析装置と同様の又は対応する部分には、
図16において
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0146】
図16に示した自動分析装置と
図1に示した自動分析装置100と相違する主な点は、サンプルディスク20に代え、サンプルラック101でサンプル容器を搬送するシステムを採用している点である。1つのサンプルラック101には、1本又は複数本のサンプル容器が保持される。
図16には、1つのサンプルラック101に最大5本のサンプル容器が保持できる構成を例示している。
【0147】
図16の自動分析装置は、ラック供給部102、ラック収納部103、搬送ライン104、帰還ライン105、ラック待機部106、待機部ハンドリング機構107、ラック戻し機構108、読取部(搬送ライン)109、分析部110を含んで構成されている。
【0148】
搬送ライン104は、サンプルラック101を分析部110に搬送する。帰還ライン105は、搬送ライン104と反対方向にサンプルラック101を搬送する。なお、往路専用の搬送ライン104と復路専用の帰還ライン105を併設した構成を例示するが、双方向に移動可能なハンド機構等の他の機構で搬送ライン104と帰還ライン105を代替することもできる。
【0149】
ラック待機部106は、待機中のサンプルラック101を収容する。待機部ハンドリング機構107は、搬送ライン104及び帰還ライン105からラック待機部106へサンプルラック101を引き込む。読取部(搬送ライン)109は、搬送ライン104のサンプルラック101に付されたバーコード等の識別情報を読み取る。
【0150】
分析部110は、
図1で説明した自動分析装置100の構成要素のうちサンプルディスク20と制御装置とを除く部分に相当する。分析部110の搬送系は搬送ライン104に沿って配置され、読取部111、ラックハンドリング機構112、分注ライン113、ラックハンドリング機構114を含んで構成されている。読取部111は、サンプルに対する分析依頼情報を照合する。ラックハンドリング機構112は、搬送ライン104からサンプルラック101を受け取る。分注ライン113は、分注開始までサンプルラック101を待機させることができサンプルラック101のサンプル容器内のサンプル分注を実施するサンプリングエリア113aまでのサンプルラック101を搬送する。ラックハンドリング機構114は、サンプル分注後のサンプルラック101を帰還ライン105に搬送する。
【0151】
自動分析装置100において、コンピュータ7から分析開始の指示信号が入力されると、ラック供給部102に並べられたサンプルラック101は、搬送ライン104に移載される。ここで、搬送ライン104上のサンプルラック101及びサンプルラックに収容されるサンプル容器21に貼り付けられた個体識別媒体が読取部109で読み取られ、サンプルラック番号及びサンプル容器番号が認識される。
【0152】
読取部109により読み取られたサンプルは、分注ライン113にサンプルラック101があれば、ラック待機部106に収容されて分析を待つ。分注ライン113のサンプルの分注が終了した段階で待機していたサンプルラック101は分析部110に送られ、読取部111にてサンプルラック番号及びサンプル容器番号が認識される。続いて、ラックハンドリング機構112を介して、分注ライン113に送られ、サンプル分注機構40によってサンプルが分注される。このとき、分注ライン113にサンプルラック101がなければ、ラック待機部106へ収容されることなく直接、分注ライン113に搬送することもできる。
【0153】
分注が終了したサンプルは、ラックハンドリング機構114を介して帰還ライン105に搬送され、待機部ハンドリング機構107を介してラック待機部106へ送られる。又はラック収納部103へ搬送される。このラック待機部106では、複数のサンプルラック101が収容でき、測定順序の入れ替えによってその都度必要なサンプルラック101を搬送ライン104に移載することで、臨機応変に対応することができる。
【0154】
図16のような自動分析装置にも本発明は公的に適用可能である。
【0155】
(複合型自動分析装置のバリエーション2)
図17は本発明が適用可能な複合型の自動分析装置の第2のバリエーションを表す図である。
図17にはユニット1のみを図示し制御装置3は図示省略してある。また、本例の自動分析装置において
図1の自動分析装置と同様の又は対応する部分には、
図17において
図1と同符号を付して説明を省略する。
【0156】
図17に示した自動分析装置は、生化学分析部、血液凝固時間測定部、ヘテロジニアス免疫測定部を備えた複合型の自動分析装置である。同図の自動分析装置において、反応容器移送機構64の稼働範囲内に、ヘテロジニアス免疫項目測定用のヘテロジニアス免疫検出部81、B/F分離機構82が配置されている。このヘテロジニアス免疫測定部は、反応容器60a、反応容器収容部63、反応容器移送機構64、反応容器温調ブロック66、反応容器廃棄部69を測定ユニット60Cと共用している。また、ヘテロジニアス免疫用試薬ディスク83が、試薬昇温機能付きの試薬分注機構67の稼働範囲内に追加されている。
【0157】
図17のような自動分析装置にも本発明は公的に適用可能である。
【符号の説明】
【0158】
1…分析ユニット、2…操作装置、3…制御装置、4…モニタ、6,9M…メモリー、9D…学習データ、40…サンプル分注機構、50A,50B,67…試薬分注機構、60A-60C…測定ユニット、70A-70C…読取装置、100…自動分析装置