(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055218
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】経路案内装置、経路案内システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220331BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20220331BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20220331BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220331BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G01C21/34
G01C21/26 P
G08G1/005
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162681
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】司 若辰
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 亮介
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HC21
2F129AA02
2F129BB15
2F129CC15
2F129CC28
2F129CC31
2F129DD20
2F129DD40
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE85
2F129EE91
2F129FF02
2F129FF12
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF37
2F129FF60
2F129GG17
2F129HH02
2F129HH12
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181FF22
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】屋内を含む種々の空間での経路案内を行うことのできる経路案内装置、経路案内システム、及びプログラムを提供する。
【解決手段】キー画像が掲示された位置が、地図座標系により規定されている地図情報を取得し、経路案内装置の周辺を撮像した画像データからキー画像を検出して、当該検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置との相対的位置情報を取得する。そして上記取得した地図情報と取得した相対的位置情報とを用いて、経路案内装置の前記地図座標系の地図内位置情報を取得し、当該取得した地図内位置情報を、経路を検索して案内する所定の処理に供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッジを組み合わせた経路を案内する経路案内装置であって、
前記エッジ近傍には、所定のキー画像が、複数の箇所に掲示されており、
所定の地図座標系によりエッジを規定する地図情報であって、少なくとも前記キー画像が掲示された位置が、前記地図座標系により規定されている地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記経路案内装置の周辺を撮像し、当該撮像された画像データを出力する撮像手段と、
前記画像データから前記キー画像を検出するキー検出手段と、
前記検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置との相対的位置情報を取得する相対位置取得手段と、
前記取得した地図情報と前記取得した相対的位置情報とを用いて、経路案内装置の前記地図座標系の地図内位置情報を取得する地図内位置情報取得手段と、を有し、
当該取得した地図内位置情報を、前記エッジに沿った経路を検索して案内する所定の処理に供する経路案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路案内装置であって、
前記撮像手段は、経路の案内中に、前記経路案内装置の周辺を撮像し、当該撮像された画像データを出力しており、
前記キー検出手段は、当該画像データからキー画像を検出し、
前記相対位置取得手段は、画像データからキー画像が検出されたときには、当該検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置との相対的位置情報を取得し、
前記地図内位置情報取得手段は、前記相対的位置情報が取得されたときには、経路案内装置の前記地図座標系の地図内位置情報を取得し、
前記経路案内装置は、
当該取得した地図内位置情報に基づいて、経路案内装置の位置の情報を補正する補正手段をさらに有する。
【請求項3】
請求項1または2に記載の経路案内装置であって、
経路の案内中、前記撮像手段が撮像した画像と、経路を案内する案内画像とを重ね合わせて表示する表示手段をさらに有する経路案内装置。
【請求項4】
請求項3に記載の経路案内装置であって、
前記表示手段は、予め定めた中止条件が満足される間、少なくとも前記案内画像の表示を中止する経路案内装置。
【請求項5】
請求項3に記載の経路案内装置であって、
前記表示手段は、予め定めた実施条件が満足される間に限り、前記案内画像の表示を行う経路案内装置。
【請求項6】
請求項4に記載の経路案内装置であって、
前記中止条件は、経路案内装置の位置と、地図内の領域とに基づく条件であり、
前記表示手段は、前記中止条件が満足される領域を表示する経路案内装置。
【請求項7】
請求項5に記載の経路案内装置であって、
前記実施条件は、前記撮像手段が撮像した画像データに基づいて判断される条件である経路案内装置。
【請求項8】
管理者により設置され、利用者が通行可能なエッジ近傍の複数の位置にそれぞれ所定のキー画像を掲示するキー画像掲示体と、
所定の地図座標系によりエッジを規定する地図情報であって、少なくとも前記キー画像が掲示された位置が、前記地図座標系により規定されている地図情報を提供する情報提供装置と、
利用者が携帯する経路案内装置とを含む経路案内システムであって、
前記経路案内装置が、
前記地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記経路案内装置の周辺を撮像し、当該撮像された画像データを出力する撮像手段と、
前記画像データから前記キー画像を検出するキー検出手段と、
前記検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置との相対的位置情報を取得する相対位置取得手段と、
前記取得した地図情報と前記取得した相対的位置情報とを用いて、経路案内装置の前記地図座標系の地図内位置情報を取得する地図内位置情報取得手段と、を有し、
当該取得した地図内位置情報を、前記エッジに沿った経路を検索して案内する所定の処理に供する経路案内システム。
【請求項9】
コンピュータを、所定のキー画像が、その近傍の複数の箇所に掲示されているエッジを組み合わせた経路を案内するよう機能させるプログラムであって、
所定の地図座標系により前記エッジを規定する地図情報であって、少なくとも前記キー画像が掲示された位置が、前記地図座標系により規定されている地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記経路案内装置の周辺を撮像し、当該撮像された画像データを出力する撮像手段と、
前記画像データから前記キー画像を検出するキー検出手段と、
前記検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置との相対的位置情報を取得する相対位置取得手段と、
前記取得した地図情報と前記取得した相対的位置情報とを用いて、経路案内装置の前記地図座標系の地図内位置情報を取得する地図内位置情報取得手段と、
として機能させ、
前記コンピュータに、当該取得した地図内位置情報を、前記エッジに沿った経路を検索して案内する所定の処理に供させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内装置、経路案内システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではGPS(Global Positioning System)を用いた経路案内システムが普及し、屋外等、GPSの信号を受信可能な場所では、スマートフォン等で動作するアプリケーションプログラム等による経路案内システムが広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の経路案内システムでは、屋内等GPSの信号を受信できない場所での経路案内を行うことはできなかった。そこで、例えば特許文献1に開示された技術のように、ビーコン信号を用いて経路を案内する技術が考えられている。
【0005】
しかしながらビーコン信号を用いた経路案内技術では、案内を受けようとする利用者の、ビーコン信号の発信元に対する向きなどといった相対位置の情報が取得できないので、案内の方法に制限があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、屋内を含む種々の空間での経路案内を行うことのできる経路案内装置、経路案内システム、及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来例の問題点を解決する本発明の一態様は、エッジを組み合わせた経路を案内する経路案内装置であって、前記エッジ近傍には、所定のキー画像が、複数の箇所に掲示されており、所定の地図座標系によりエッジを規定する地図情報であって、少なくとも前記キー画像が掲示された位置が、前記地図座標系により規定されている地図情報を取得する地図情報取得手段と、前記経路案内装置の周辺を撮像し、当該撮像された画像データを出力する撮像手段と、前記画像データから前記キー画像を検出するキー検出手段と、前記検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置との相対的位置情報を取得する相対位置取得手段と、前記取得した地図情報と前記取得した相対的位置情報とを用いて、経路案内装置の前記地図座標系の地図内位置情報を取得する地図内位置情報取得手段と、を有し、当該取得した地図内位置情報を、前記エッジに沿った経路を検索して案内する所定の処理に供することとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、屋内を含む種々の空間での経路案内を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る経路案内システムの例を表す構成ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る経路案内システムで利用される地図情報の内容例を表す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る経路案内装置の例を表す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る経路案内装置の座標変換の例を表す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る経路案内装置が表示する経路案内画面の例を表す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る経路案内装置による座標変換の別の例を表す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る経路案内装置の動作例を表すフローチャート図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る経路案内装置による経路案内処理の概要を表すフローチャート図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る経路案内装置による座標変換のさらに別の例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る経路案内装置10を含む経路案内システム1は、通路など利用者が通行可能な経路をエッジとして、当該エッジの近傍に所定のキー画像を掲示した施設等で用いられる。
【0011】
ここでキー画像は、矩形状の平面に表された画像であり、例えばバーコードや、二次元バーコード等のコンピュータ可読な符号画像を含んでよい。もっともキー画像は、これらの例に限られず、キー画像は例えば店舗の広告や看板そのものであっても構わない。本実施の形態の例ではキー画像は、当該キー画像をエッジ近傍の壁面等に掲示するためのフレームなどの支持部材で支持される。以下では、このキー画像と支持部材とをキー画像掲示体と呼ぶ。
【0012】
本実施の形態の経路案内システム1は、
図1に例示するように、利用者が携帯する経路案内装置10と、この経路案内装置10に対してネットワークを介してアクセス可能に接続された地図情報サーバ20とを含んで構成される。
【0013】
また、本実施の形態の例では、経路案内システム1の管理者は、予め地図情報を生成しておく。この地図情報は
図2(a)に例示するように、経路案内を行う施設内や地域の地図画像(ラスタライズされた画像でもよいし、ベクタ画像であっても構わない)と、当該地図画像に示された施設や地域において利用者が通行可能な経路に沿って、エッジ及びノード(エッジの端点)を規定したものである。本実施の形態の例では、エッジやノードは、予め定められた地図座標系内の座標により規定される。
【0014】
また、この地図情報には、キー画像が掲示されている位置及び向きが、この地図座標系の座標やベクトルとして規定されているものとする。ここで地図座標系は、例えば地表の所定の位置を原点として、地表面に平行な面(地表面は近似的に平面であるとする)にX′Z′直交座標系を設定し、地表面に鉛直な方向(鉛直上方を正の向きとしてよい)をY′軸とした右手系のX′Y′Z′直交座標とすればよい。またこのとき、X′軸正の方向またはZ′軸正の方向を北向きに設定してもよい。
【0015】
具体的に
図2(a)の例では、利用者が通行可能な通路P上に複数のエッジEa,Eb…及び、エッジEの端点であるノードMa,Mb…が設定されている。また、この
図2の例ではエッジEの近傍にキー画像の地図座標系内での掲示位置Qと、当該掲示位置に掲示されたキー画像を特定する情報Sとを関連付けて記録している。
【0016】
さらに地図情報には、
図2(b)に示すように、キー画像を特定する情報Sに関連付けて、キー画像の地図座標系内での掲示位置Qを表す情報と、キー画像の地図座標系での方向(キー画像の面に対する法線方向でよい)Qd,及びキー画像の実際のサイズQsを表す情報などが記録されて含まれている。
【0017】
この地図情報には、これらのほか、例えば施設内での店舗の位置(地図座標系で表す)など、利用者が目的地として設定可能な位置が予め設定されていてもよい。
【0018】
ここでキー画像を特定する情報は、キー画像に符号画像が含まれる場合には、当該符号画像を復号して得られる復号データでよい。また、キー画像が符号画像を含まないものであるときには、キー画像そのもの、あるいはキー画像に基づいて得られる特徴量等、撮像された画像データからキー画像を検索するために必要な情報(画像から所定のキーとなる画像部分を検索する方法は広く知られた種々の方法を採用できるのでここでの詳しい説明は省略する)となっていればどのようなものでも構わない。
【0019】
なお、ここではエスカレータやエレベータ、階段などを通じて接続された複数のフロアがある場合を示しているため、各フロアに対応する地図情報と、各フロアにおいて互いに対応するノードMを特定する情報を設定している。一例として、
図2では、第1のフロアの地図情報Aと、第2のフロアの地図情報Bとが示され、それぞれ対応する位置にあるノードMx(エスカレータの中間点)が双方に設定されている状態を示している。
【0020】
本実施の形態では、地図情報は、地図情報サーバ20に蓄積される。具体的に地図情報サーバ20は、地図情報と、地図情報に対応する施設や建物等を特定する情報とを関連付けて保持する。この地図情報サーバ20は、ネットワークを介して施設や建物等を特定する情報とともに、地図情報の要求を受け入れる。地図情報サーバ20は、この地図情報の要求に応答して、当該要求とともに受け入れた情報で特定される施設や建物に対応する地図情報を読み出し、当該読み出した地図情報を、要求元のスマートフォン等に対して、ネットワークを介して送出する。
【0021】
さらに本実施の形態の経路案内システム1は、利用者が携帯する経路案内装置10を含む。この経路案内装置10は、例えばスマートフォン等でよく、具体的には
図1に例示したように、制御部11、記憶部12、操作部13、表示部14、撮像部15及び通信部16を含んで構成される。
【0022】
制御部11は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態では、この制御部11は、経路案内装置10として動作するスマートフォンなどの本来の機能を果たすための処理を行うほか、地図情報サーバ20にアクセスして、地図情報を取得して次の経路案内の処理を行う。
【0023】
すなわち本実施の形態の例に係る経路案内装置10の制御部11は、経路案内装置10自身の周辺を撮像した画像データを撮像部15から受け入れ、当該画像データからキー画像を検出するための処理を実行する。ここでキー画像を検出すると、制御部11は、当該検出したキー画像に基づいて、所定の仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置10との相対的位置情報を表す情報を取得する。
【0024】
また制御部11は、上記取得した地図情報と相対的位置情報とを用いて、経路案内装置10の地図座標系の地図内位置情報を取得し、当該取得した地図内位置情報を、エッジに沿った経路を検索して案内する所定の処理に供する。この制御部11の経路案内についての具体的な処理の内容については後に述べる。
【0025】
記憶部12は、メモリデバイス等であり、制御部11が実行するプログラム等を保持する。このプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部12に複写されたものであってもよいし、ネットワークを介してダウンロードされたものであってもよい。また、本実施の形態では、この記憶部12は制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0026】
操作部13は、タッチパネル等であり、利用者の指示操作を受けて、当該指示操作の内容を表す情報を、制御部11に出力する。表示部14は、タッチパネルの下方に積層されたディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って、情報を表示出力する。
【0027】
撮像部15は、カメラ等であり、経路案内装置10周辺を撮像した画像を逐次的に取得し、当該取得した画像のデータを制御部11に順次出力する。
【0028】
通信部16は、無線ネットワークインタフェースを含む。この通信部16は、ネットワークを介して無線にて受信した情報を制御部11に出力する。また通信部16は、制御部11から入力された指示に従って、ネットワークを介して情報を送出する。なお、この通信部16は、例えば経路案内装置10がスマートフォンであれば、携帯電話網を介した通信を行うための構成を備えていてもよい。
【0029】
次に、経路案内装置10の制御部11による、具体的な経路案内の処理の内容について説明する。この処理を行う制御部11は、
図3に例示するように、地図情報取得部21と、キー検出部22と、相対位置取得部23と、地図内位置情報取得部24と、経路案内処理部25と、情報出力部26とを、機能的に含んで構成される。
【0030】
なお、以下の説明において制御部11は、現実の床面に平行な面にXZ直交座標を配し、この面に鉛直な方向(上方向を正の方向とする)をY軸とした仮想空間座標系を設定し、この仮想空間座標系と、地図情報の座標系である地図座標系とを用いた処理を行う。またここで仮想空間座標系のX軸あるいはZ軸の方向は、例えば、利用者が経路案内装置10を起動した時点で経路案内装置10が向いている方向(撮像部15が撮像する画角の中心方向)をX軸正の方向としたときの右手系のXYZ座標系を仮想空間座標系とすればよい。もっとも仮想空間座標系の設定方法はこれに限られず、例えば経路案内装置10が内蔵する地磁気計等により北向きが検出できる場合は北方向をX軸正の方向としてもよい。
【0031】
地図情報取得部21は、地図情報サーバ20にアクセスして地図情報を取得する。本実施の形態の一例では、利用者が自己の所在する施設の施設名等を入力する。地図情報取得部21は、地図情報サーバ20に対して当該入力された施設名の施設に対応する地図情報を要求する。地図情報取得部21は、地図情報サーバ20から地図情報を受け入れると、当該地図情報を記憶部12に格納する。
【0032】
キー検出部22は、この経路案内の処理中、撮像部15に対して、経路案内装置10の周辺を逐次的に撮像させ、当該撮像により得られた画像データを出力するよう制御しておく。キー検出部22は、撮像部15が逐次的に撮像して出力する画像データを受け入れて、当該画像データからキー画像を検出する。キー検出部22は、検出したキー画像の仮想空間座標系での位置(XZ面内の位置でもよい)及びその向き(キー画像の面に対する法線方向)を表す情報を出力する。
【0033】
ここでキー画像がコンピュータ可読な符号画像を含む場合には、キー検出部22は、撮像された画像データからキー画像となる、コンピュータ可読な符号画像を検出する。このような、画像データのうちから符号画像を検出する処理については、広く知られた方法を採用できるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0034】
キー検出部22は、検出したキー画像に含まれる符号画像を復号して復号データを得る。そして当該復号データをキーとして、地図情報取得部21が取得した地図情報から、検出したキー画像の地図座標上での位置を表す情報を検索して取得する。
【0035】
そしてキー検出部22は、当該取得したキー画像の地図座標上での位置と、仮想空間座標系での位置(XZ面内の位置でもよい)及びその向き(キー画像の面に対する法線方向)を表す情報とを出力する。
【0036】
またキー画像が符号画像を含まない場合は、キー検出部22は、地図情報取得部21が取得した地図情報に含まれるキー画像を特定する情報を用いて、撮像された画像データからキー画像の検出を試みる。具体的には、キー検出部22は、取得した地図情報に含まれるキー画像に一致する部分を検出する処理(画像検索処理)を実行することとなる。
【0037】
そしてキー検出部22は、地図情報に含まれるキー画像のいずれかが検出されたときには、当該検出されたキー画像の地図座標上での位置(地図情報から取得する)と、仮想空間座標系での位置(XZ面内の位置でもよい)及びその向き(キー画像の面に対する法線方向)を表す情報とを出力する。
【0038】
相対位置取得部23は、キー検出部22が検出したキー画像の位置及び向きの情報に基づいて、上記仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置10との相対的位置情報を取得する。具体的に、この相対位置取得部23は、まず、撮像部15が取得した画像データ内でキー画像が撮像されている領域の情報と、キー画像の位置((x2,y2,z2)とする)及び向きの情報に基づいて、撮像部15の仮想空間座標系内の位置、つまり経路案内装置10の仮想空間座標系での位置(x1,y1,z1)を推定する。この推定の方法は、仮想現実技術(いわゆるAR技術)を用いる広く知られた方法を採用できる。この方法の一例は、例えば加藤博一,et.al.,「マーカー追跡に基づく拡張現実感システムとそのキャリブレーション」,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol4, No4, pp.607-616, (1999)などにおいてカメラ座標系を求める方法が相当する。なお、高さ方向の座標y1、y2についてはいずれも予め視線高さを表す値hと設定しておいてよい。
【0039】
地図内位置情報取得部24は、相対位置取得部23が得た、撮像されたキー画像と経路案内装置10との相対的な位置に基づき、経路案内装置10の地図座標系での位置を表す情報を生成する。一例として、地図内位置情報取得部24は、仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置10との相対的位置を表す情報:
x2-x1
y2-y1
z2-z1
を得る。
【0040】
ここで
図4(a)に例示するように、仮想空間座標系のXZ平面内でのキー画像の位置をB(x2,z2)とし、経路案内装置10の位置をA(x1,z1)とする。これらAB間の距離d(AB)は、
【数1】
と表される。また、
図4(a)に示したように、点Bを通りZ軸に平行な線分上の点(Z軸正の方向にある点とする)をCとして、角CBAは、
【数2】
で表される(ただしnは0以上の整数)。ここで、
・C点がB点よりもA点に近く、かつ、z1≧z2のときには、n=0
・C点がB点よりもA点に近く、かつ、z2>z1のときには、n=1
・C点がA点よりもB点に近く、かつ、z1≧z2のときには、n=1
・C点がA点よりもB点に近く、かつ、z2>z1のときには、n=0とする。
【0041】
なお、以下の説明で、角は、XZ平面をY軸正の方向から見たとき、時計回りに測る場合と反時計回りに測る場合とで符号を変えるものとする。つまり、角CBA=-角ABCとする。
【0042】
さらに点Bを通りキー画像の向き(キー画像の面の法線方向)に平行な線分上の点(B点よりもA点に近い位置にある点とする)をDとすると、
【数3】
が成り立つ。なお、角CBDは、設定から既知である。
【0043】
この角度に関する情報は現実の空間でも成立するので、結局、
図4(b)に例示するように、地図座標系X′Y′Z′におけるX′Z′平面でも、キー画像の位置をB′(x′2,z′2)とし、経路案内装置10の位置をA′(x′1,z′1)として、さらに、点B′を通りキー画像の向き(キー画像の面の法線方向)に平行な線分上の点(B′点よりもA′点に近い位置にある点とする)をD′としたとき、
【数4】
が成立する。
【0044】
ここでsは、仮想空間座標系に対する地図座標系の縮尺比であり、点C′は、地図座標系において、点B′を通りZ′軸に平行な線分上の点(Z′軸正の方向にある点とする)である。なお、縮尺比sは、仮想空間座標系におけるキー画像の大きさ(例えばその幅でよく、幅方向両端の仮想空間座標系での座標値の差として得られる)と、地図座標系でのキー画像の大きさ(対応する方向、例えば上述の例では幅方向両端の地図座標系での座標値の差)との比によって求めることができる。
【0045】
また、この(6)式から、
【数5】
を得て、地図座標での経路案内装置10の位置A′の座標(x′1,z′1)を、
x′1=x′2+Δx′,
z′1=z′2+Δz′
として求めることができる。
【0046】
地図内位置情報取得部24は、撮像されたキー画像と経路案内装置10との相対的な位置の情報に基づいて(1)乃至(3)式の値を求め、また、別途求めた縮尺比sと、これら求めた値とを用いて(4)乃至(8)式により、Δx′,Δz′を求める。そして地図内位置情報取得部24は、地図座標での、撮像されたキー画像の位置座標(x′2,z′2)を用い、
x′1=x′2+Δx′,
z′1=z′2+Δz′
として、地図座標での経路案内装置10の位置A′の座標(x′1,z′1)を求める。
【0047】
経路案内処理部25は、利用者から目的地の設定を受け入れて、経路を案内するための処理を行う。具体的にこの経路案内処理部25は、地図内位置情報取得部24が取得した、地図座標での経路案内装置10の位置(すなわちそれを携帯する利用者の位置)を利用して、地図情報上で、当該位置から最も近いエッジ上の点(現在位置を表す点)CUを求める。
【0048】
そして経路案内処理部25は、設定された目的地のエッジ上の点DEと、現在位置を表すエッジ上の点CUとを用いて、現在位置から目的地までの経路を求める。このような、エッジ上の2点に基づいて、現在位置から目的地までのエッジ上の経路を求める方法は、広く知られているので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0049】
経路案内処理部25は、ここで得られた経路の情報を出力するよう、情報出力部26に指示する。
【0050】
情報出力部26は、一般的な仮想現実(AR)処理のためのライブラリソフトウェアを利用して実現される。このようなライブラリソフトウエアとしてはARKit(米国アップルコンピュータ社)やAR Core(米国グーグル社)などがある。
【0051】
この情報出力部26は、こうしたライブラリソフトウエアを利用して、撮像部15が撮像して得た画像データを、表示部14に表示するとともに、この画像データに重ね合わせて、経路を案内するための案内画像を表示する。具体的にこの案内画像は、
図5に例示するように、地図情報で規定されるエッジを表す直線E(仮想的な直線)と、利用者が進むべき方向を表す矢印P(仮想的な矢じりの図形)とを含む、仮想現実の画像(三次元画像)とする。
【0052】
このような案内画像は、地図情報において地図座標上の複数の点で規定されるエッジを、撮像部15が撮像して得た画像データに重ね合わせ可能な仮想空間座標系の点に変換して、変換後の点を結ぶ仮想的な直線を、仮想空間座標系内の経路案内装置10の位置から見た像として描画させることで得られる。
【0053】
具体的に地図座標系から仮想空間座標系への変換は、先に例示した仮想空間座標系から地図座標系への変換の例と同様に行われる。具体的に
図6(a)に例示した地図座標系上のA′点(x′1,z′1)に経路案内装置10があるとき、エッジE12の端点(ノード)M′1及びM′2の仮想空間座標系での位置は、次のようにして求められる。
【0054】
まず情報出力部26は、地図座標での点M′1,点M′2のそれぞれについて次の処理を行う。すなわち情報出力部26は、点M′(M′1またはM′2のいずれか、
図6ではM′1を例としている)を通り、Z′座標正の方向にある点をC′として設定し、またこの点M′を通り、エッジE12に直交する線分上にあって、点M′よりも点A′に近い位置にある点D′を設定する。なお、以下では点M′の座標を(x′3,z′3)と表す。
【0055】
そして情報出力部26は、点A′と点M′との距離d(A′M′)を、
【数6】
とし、また、
【数7】
を求める。ここでnは0以上の整数であり、
・C′点がM′点よりもA′点に近く、かつ、z′1≧z′3のときには、n=0
・C′点がM′点よりもA′点に近く、かつ、z′2>z′1のときには、n=1
・C′点がA′点よりもM′点に近く、かつ、z′1≧z′2のときには、n=1
・C′点がA′点よりもM′点に近く、かつ、z′2>z′1のときには、n=0とする。なお、角C′M′D′は、設定から既知である。
【0056】
角度は変換の前後で保存されるため、情報出力部26は、各点の角度の関係と、距離とを、
【数8】
と、求める。ここでsは既に説明した縮尺比sと等しいものである。
【0057】
そして情報出力部26は、
【数9】
を得て、これから点Mの仮想空間座標系での座標値(xM,zM)を、
xM=x′3+Δx
zM=z′3+Δz
として求める。なお、Y座標値は、規定値hに設定してもよい。
【0058】
情報出力部26は、この(9)式から(16)式を利用した変換により、地図座標での点M′1,点M′2のそれぞれについて仮想空間座標系での座標値を得る。そして、この座標値間を結ぶ仮想的な直線を描画し、仮想空間座標系内の経路案内装置10の位置から見た像としてレンダリングする。この処理は、仮想現実(AR)での描画の処理と同様である。
【0059】
また情報出力部26は、ここで描画した仮想的な直線等に重ね合わせて、点M′1または点M′2の方向(利用者が向かうべきノードの方向)向きの仮想的な矢印を描画してもよい。この処理は例えば円錐形の図形を描画することで行うことができる。
【0060】
[動作]
本実施の形態は基本的に以上の構成を備えており、次のように動作する。経路案内装置10を携帯する利用者が、各所にキー画像の掲示された施設を訪問したときに、経路案内装置10を起動し、キー画像の一つを撮像すると、経路案内装置10が次の
図6に例示する処理を開始する。以下の例では、キー画像に二次元バーコードなどの符号画像が含まれ、当該符号画像に地図情報を特定する情報(地図情報特定情報)と、キー画像を特定する情報とが符号化されて表されているものとする。ここで地図情報には、利用者が通行可能な経路を表すエッジの情報や、キー画像の位置などの情報が含まれており、これらの情報は地図座標系で表されているものとする。
【0061】
まず経路案内装置10は、撮像された画像データからキー画像を認識し、当該キー画像に含まれる符号画像を抽出する。経路案内装置10は、当該抽出した符号画像を復号して復号データを得る。この復号データには、上述のように、地図情報特定情報と、キー画像を特定する情報とが含まれる。
【0062】
経路案内装置10は、
図7に例示するように地図情報サーバ20から、上記復号データに含まれる地図情報特定情報で特定される地図情報を取得する(S1)。また経路案内装置10は、撮像された画像データに含まれるキー画像の位置及び向きの情報を検出し(S2)、現実の床面に平行な面にXZ直交座標を配し、この面に鉛直な方向(上方向を正の方向とする)をY軸とした仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置10との相対的位置情報を取得する(S3)。
【0063】
次に経路案内装置10は、撮像されたキー画像と経路案内装置10との相対的な位置に基づき、経路案内装置10の地図座標系での位置を表す情報を生成する(S4)。この経路案内装置10の地図座標系での位置の情報は、既に述べた方法で得ることができる。すなわち、経路案内装置10は、ステップS1で取得した地図情報から上記復号データ内のキー画像を特定する情報で特定されるキー画像の地図座標での位置及び向きの情報を取得する。また経路案内装置10は、ステップS3で取得した仮想空間座標系でのキー画像と経路案内装置10との相対的位置情報、並びに、当該キー画像の地図座標での位置及び向きの情報に基づいて経路案内装置10の地図座標系での位置の情報を得る。
【0064】
この処理はまた、キー画像をマーカーとしたマーカー座標系と所与の仮想空間座標系との変換、及び、マーカー座標系と経路案内装置10から見た座標系であるカメラ座標系との変換により、マーカー座標系での経路案内装置10の位置を表す情報を取得しておき、対応するキー画像の地図座標系での位置及び向きとマーカー座標系との変換式を得て、地図座標系での経路案内装置10の位置を表す情報を取得することとしてもよい。
【0065】
経路案内装置10は、また、利用者から目的地の場所を表す地図座標系での座標の情報を受け入れる(S5)。そして経路案内装置10は、入力された目的地の場所に最も近いエッジ上の点DEを求めて目的地を設定する(S6)。なお、ステップS5での目的地の入力は、例えば予め店舗名とその入口の地図座標系での位置の情報とを関連付けた目的地データベースを参照して、当該目的地データベースに含まれる店舗名の一覧を表示し、利用者から当該一覧のうちから店舗の選択を受け入れることで行ってもよい。この例では、経路案内装置10は、当該選択された店舗名に関連付けられた地図座標系での位置の情報を目的地の座標としてステップS6の処理を行う。
【0066】
経路案内装置10は、ステップS4で生成した情報が表す地図座標系での座標に最も近いエッジ上の点CUを求めて現在位置を設定し(S7)、エッジを通って現在位置を表す点CUから目的地を表す点DEまでの経路を生成して経路案内処理を実行する(S8)。ここで生成する経路は、例えば目的地へ到達するまでに通過するべきエッジ及びノードの順列として表すことができ、その生成の処理は、広く知られたナビゲーションシステムにおける処理が利用できる。
【0067】
またステップS8における経路案内処理の一例は
図8(a)に例示するようなものである。なお、経路案内装置10は、この経路案内処理の間、撮像部15により画像を撮像する処理を繰り返して行うものとする。
【0068】
経路案内装置10は、経路案内処理として、撮像部15が撮像して得た画像データに、点CUを含むエッジを仮想空間座標系内の線分として描画した画像を合成して表示する(S11)。また経路案内装置10は、このステップS11において、エッジを表す直線の画像とともに、次に通過するべきノードの方向を指す矢印の画像を併せて描画してもよい。
【0069】
具体的にこの例では、経路案内装置10は、点CUを含むエッジの端点の仮想空間座標系での座標を求める。この処理では、経路案内装置10は、エッジの端点の位置(地図情報内で地図座標系で表されている)を、仮想空間座標系の情報に変換し、変換後の点を結ぶ直線を、仮想空間座標系内の経路案内装置10の位置から見た像として描画する。ここで、撮像された画像データに基づいて設定される仮想空間座標系の各点を結ぶ直線等を、当該画像データに重ね合わせて描画する処理は、AR処理のためのライブラリソフトウエアを利用して実現できる。
【0070】
そして利用者が、経路案内装置10に表示された画像を参照して移動したときには、経路案内装置10は、AR処理のためのライブラリソフトウエアを利用して、モーショントラッキング処理によって、利用者とともに移動した後の、経路案内装置10の仮想空間座標系での位置を取得する(S12)。そして経路案内装置10は、ステップS11に戻り、撮像部15により最後に撮像された画像データに重ね合わせて、ステップS12で更新された位置からの案内画像として、エッジを表す仮想的な直線や、次に通過するべきノードの方向を表す仮想的な矢印等を含む案内画像を新たに描画する。経路案内装置10は、このステップS11,S12の処理を、利用者が処理を停止するよう指示するまで、あるいはステップS12で取得した位置と、目的地との距離が所定のしきい値を下回るまで繰り返す。
【0071】
[移動中の位置補正]
また、経路案内装置10による経路案内処理の間に利用者が移動した場合、モーショントラッキング処理を行うだけでなく、撮像部15が撮像した画像データから新たなキー画像が検出できた場合には、当該新たに検出したキー画像の位置や向き等の情報に基づいて、経路案内装置10の、地図座標系内での位置情報を補正してもよい。
【0072】
この例の経路案内装置10は、ステップS9における経路案内処理の別の例として、
図8(b)に例示するように、撮像部15が逐次的に撮像して得た画像データを順次受け入れており、この受け入れた画像データに対し、点CUを含むエッジを仮想空間座標系内の線分として描画した画像を合成して表示する(S21)。この処理は
図8(a)に示したステップS11の処理と同様である。またこのステップS21においても、経路案内装置10は、エッジを表す直線の画像とともに、次に通過するべきノードの方向を指す矢印の画像を併せて描画してもよい。
【0073】
また経路案内装置10は、撮像部15が撮像した画像データからキー画像の検出を試みる(S22)。ここで経路案内装置10が、撮像された画像データに含まれるキー画像の位置及び向きの情報を検出すると(S22:Yes)、当該検出したキー画像の位置及び向きの情報を用いて、仮想空間座標系でのキー画像と、経路案内装置10との相対的位置情報を取得する(S23)。
【0074】
そして経路案内装置10は、撮像されたキー画像と経路案内装置10との相対的な位置に基づき、経路案内装置10の地図座標系での位置を表す情報を生成する(S24)。この経路案内装置10の地図座標系での位置の情報は、既に述べた方法と同様であるので、繰り返しての説明を省略する。経路案内装置10は、これにより利用者とともに移動した後の、経路案内装置10の仮想空間座標系での位置を取得することとなる。このステップS24で取得した位置の情報は、新たに検出したキー画像により補正された位置の情報であり、モーショントラッキング処理により得た位置に比べ、比較的正確であると期待される。
【0075】
一方、経路案内装置10は、ステップS22で、撮像された画像データからキー画像が検出できなかった場合には(S22:No)、AR処理のためのライブラリソフトウエアを利用して、モーショントラッキング処理によって、利用者とともに移動した後の、経路案内装置10の仮想空間座標系での位置を取得する(S25)。そして経路案内装置10は、ステップS21に戻り、撮像部15により最後に撮像された画像データに重ね合わせて、ステップS24またはステップS25で更新された位置からの案内画像として、エッジを表す仮想的な直線や、次に通過するべきノードの方向を表す仮想的な矢印等を含む案内画像を新たに描画する。
【0076】
本実施の形態のこの例によると、利用者の移動に伴うモーショントラッキング処理によって蓄積した位置情報の誤差を、新たに検出したキー画像との相対的な位置の情報に基づいて補正できる。
【0077】
[案内情報の提示]
また本実施の形態の経路案内装置10は、案内画像を含む情報の表示を行う際に、予め定めた中止条件が満足されるか否かを判断し、中止条件が満足される間、少なくとも案内画像の表示を中止することとしてもよい。
【0078】
ここで中止条件は経路案内装置10の現在位置と、地図情報において予め定められた領域(以下中止条件領域と呼ぶ)とに基づく条件などとしてよい。
【0079】
この例では、経路案内システム1の管理者は予め、地図情報内において中止条件領域を設定する。この中止条件領域は、中止条件領域を取り囲む3つ以上の点(中止条件領域規定点)の集合として表すことができ、ここでは当該中止条件領域規定点の座標は、地図座標系で表されるものとする。
【0080】
経路案内装置10は、案内画像を含む情報の表示を行う際、例えば
図8(a),(b)におけるステップS11またはステップS21の処理を行う際に、その時点で経路案内装置10の位置を表す地図座標系内の点CUが、上記中止条件領域の内部にあるか否かを調べる。経路案内装置10は、ここで経路案内装置10の位置を表す地図座標系内の点CUが、上記中止条件領域の内部にあると判断したときには、少なくとも、エッジを表す直線や、次に通過するべきノードの方向を表す矢印等を含む案内画像の表示を中止する。
【0081】
このとき、経路案内装置10は、案内画像だけでなく、撮像部15により最後に撮像された画像データの表示も中止してもよい。また、このように案内画像等の表示を中止するときには、経路案内装置10は、経路の案内の表示を中止するよう指定された領域内にいることを示すメッセージ等を表示してもよい。
【0082】
また経路案内装置10は、このメッセージとともに、またはこのメッセージに代えて、中止条件が満足される地図画像上の領域を表示することとしてもよい。このときには、経路案内装置10は、地図情報に含まれる地図画像とともに、当該地図画像に重ね合わせて、中止条件領域規定点で囲まれる多角形を描画し、中止条件領域を表すこととすればよい。
【0083】
経路案内システム1の管理者は、例えばエスカレータの乗降位置や、交差点、その他、経路案内装置1の利用者がその画面を注視すべきでないと判断される場所を含む領域を中止条件領域として設定することができる。
【0084】
なお、中止条件はここで述べた例に限られず、例えば撮像部15が撮像している画像データに、予め定められたキー画像が含まれるとの条件など、撮像部15が撮像している画像データに基づく条件としてもよいし、時間帯、日付、曜日などの種々の条件を採用できる。
【0085】
さらにここで述べた例では、中止条件が満足される間、少なくとも案内画像の表示を中止することとしたが、本実施の形態はこれに限られない。すなわち本実施の形態の経路案内装置10は、案内画像を含む情報の表示を行う際に、予め定めた実施条件が満足されるか否かを判断し、実施条件が満足される間に限り、案内画像の表示を行うこととしてもよい。この例では、実施条件が満足されない場合は、少なくとも案内画像の表示が中止される。
【0086】
この例においても、実施条件は経路案内装置10の現在位置と、地図情報において予め定められた領域(以下実施条件領域と呼ぶ)とに基づく条件などとしてよい。つまり、経路案内システム1の管理者は予め、地図情報内において実施条件領域を設定しておいてもよい。ここで実施条件領域の設定も、中止条件領域と同様、実施条件領域を取り囲む3つ以上の点(実施条件領域規定点)を定めることで行い得る。この実施条件領域規定点の座標も、地図座標系で表されるものとしておく。
【0087】
経路案内装置10は、案内画像を含む情報の表示を行う際、例えば
図8(a),(b)におけるステップS11またはステップS21の処理を行う際に、その時点で経路案内装置10の位置を表す地図座標系内の点CUが、上記実施条件領域の内部にあるか否かを調べる。経路案内装置10は、ここで経路案内装置10の位置を表す地図座標系内の点CUが、上記実施条件領域の内部にないと判断したときには、少なくとも、エッジを表す直線や、次に通過するべきノードの方向を表す矢印等を含む案内画像の表示を中止する。
【0088】
また、経路案内装置10は、ここで経路案内装置10の位置を表す地図座標系内の点CUが、上記実施条件領域の内部にあると判断したときには、撮像部15により最後に撮像された画像データに重ね合わせて、上記位置CUから見たエッジを表す仮想的な直線や、次に通過するべきノードの方向を表す仮想的な矢印等を含む案内画像を描画する。
【0089】
なお、経路案内装置10は、経路案内装置10の位置を表す地図座標系内の点CUが、上記実施条件領域の内部にないと判断したときには、案内画像だけでなく、撮像部15により最後に撮像された画像データの表示も中止してもよい。また、このように案内画像等の表示を中止するときには、経路案内装置10は、経路の案内の表示を中止するよう指定された領域内にいることを示すメッセージ等を表示してもよい。
【0090】
また経路案内装置10は、このメッセージとともに、またはこのメッセージに代えて、実施条件が満足される地図画像上の領域を表示することとしてもよい。このときには、経路案内装置10は、地図情報に含まれる地図画像とともに、当該地図画像に重ね合わせて、実施条件領域規定点で囲まれる多角形を描画し、実施条件領域を表すこととすればよい。
【0091】
経路案内システム1の管理者は、例えば案内板の近傍や、フロアマップ、その他、経路案内装置1の利用者がその画面を注視しても問題がないと判断される場所を含む領域を実施条件領域として設定することができる。
【0092】
また実施条件は、地図上に設定された領域に基づく条件に限られない。別の実施条件の例として、例えば撮像部15が撮像している画像データに、キー画像が含まれるとの条件など、撮像部15が撮像している画像データに基づいて判断される条件としてもよい。さらに日時や曜日などの条件を実施条件としてもよい。
【0093】
[案内画像の他の例]
ここまでの説明において、案内画像は、撮像部15が撮像している画像データに重ね合わせて表示される仮想的な直線や図形を用いたものとしたが、本実施の形態はこれに限られない。すなわち経路案内装置10は、案内画像として、撮像部15が撮像している画像データに重ね合わせて表示される仮想的な直線や図形に代えて、またはそれとともに、地図情報に含まれる地図画像と、当該地図画像上での経路案内装置10の位置を表すマーカーとを含む画像を表示してもよい。
【0094】
[キー画像の検出に係る変形例]
本実施の形態では、経路案内装置10が、撮像されたキー画像が掲示されている位置の情報を識別する必要があるため、ここまでの説明ではキー画像は互いに異なるものとするか、または符号画像を合成しておくものとしていたが、本実施の形態はこれに限られない。
【0095】
例えば経路案内装置10が地表面に対する絶対的な方向(例えば北向き)を認識できる場合、つまり、地磁気測定器などを備えている場合は、掲示されたキー画像が画像自体同一または類似のものであったとしても、その掲示の向き(北方向からの角度)が互いに異なっていればそれぞれを識別可能である。
【0096】
図9(a)に例示するように、キー画像の向き(キー画像の面内の所定の点Bから、当該面の法線方向)にある点D、キー画像の上記所定の点BからZ軸(仮想空間座標系のZ軸)方向にある点C、並びに北向きのN軸を用い、N軸のZ軸からの角をθ(θは床面を上から見たときの時計回り方向を正として、-π<θ≦πとする)とし、点BからN軸に平行な方向に点nを取るとき、角CBDから角θを減算して角nBDが得られる。
【0097】
また
図9(b)に例示するように、地図座標系におけるキー画像の向き(キー画像の面内の上記点Bに対応する点B′から、当該面の法線方向)にある点D′、キー画像の点B′からZ′軸(地図座標系のZ′軸)方向にある点C′、並びに北向きのN′軸を用い、N′軸のZ′軸からの角をθ′(θ′は床面を上から見たときの時計回り方向を正として、-π<θ′≦πとする)として、点B′からN′軸に平行な方向に点n′(点nに対応する点)を取ると、角n′B′D′を、角C′B′D′から、角C′B′n′=θ′を差引きして求めることができる。
【0098】
この例では地図情報内に、キー画像の向き特徴量として、キー画像ごとに上記角n′B′D′(この値は事前に求めておくことができる、既知の値である)の値を関連付けて記録しておく。
【0099】
経路案内装置10は、撮像した画像データから検出したキー画像の向き(ベクトルBD)と、別途検出した北向き(ベクトルBN)との角nBDを求める。また経路案内装置10は、撮像した画像データから検出したキー画像に一致する画像に関連付けられて、地図情報に含まれるキー画像を検索する。ここでは同一または類似のキー画像が複数、地図情報に含まれていることとしているので、この検索の結果、複数のキー画像(の候補)が見出されることとなる。
【0100】
経路案内装置10は、検索により見出されたキー画像の候補に関連付けて記録された角n′B′D′(以下ではそれぞれ区別するため、キー画像の候補ごとの角n′B′D′を、角αi(i=1,2,…;iは各キー画像候補に対応する)とする)を、地図情報から取得する。
【0101】
経路案内装置10は、取得したキー画像候補ごとの角αiと、求めた角nBDとの差の絶対値βi=|αi-角nBD|を求め、このβiのうち、最小のβiを見出す。そして経路案内装置10は、最小のβiに対応する角αiに関連するキー画像を特定し、当該特定したキー画像が撮像された画像データに含まれるキー画像であると決定する。そして経路案内装置10は、当該決定したキー画像を特定する情報を得る。
【0102】
経路案内装置10は、ここで得られたキー画像を特定する情報を用い、当該キー画像を特定する情報により特定されるキー画像に関する地図座標系での位置及び向きの情報を取得して、経路案内装置10の地図座標系での位置を演算する処理等に供する。
【0103】
[フロアの識別]
また既に述べたように、本実施の形態では、複数のフロアに跨がって地図情報が設定されていてもよいが、この場合、経路案内装置10は、自己がどのフロアに所在しているかを識別する必要がある。
【0104】
そこでキー画像に対応付けて当該キー画像が掲示されているフロアを特定する情報を地図情報に含めておき、経路案内装置10が、撮像した画像データからキー画像を検出したときに所在するフロアを特定することとしてもよい。
【0105】
しかしながらこの場合、エスカレータやエレベータ等でフロア間を移動した直後に、経路案内装置10がどのフロアに自己が所在するかを誤認する可能性もある。そこで、フロアごとのエスカレータやエレベータの降り口など、各フロアに到達したときに最初に撮像される床面や壁面などにキー画像を掲示しておいてもよい。
【0106】
また、経路案内装置10が気圧計を内蔵する場合、気圧差などを利用して、フロアを移動したことを検出してもよい。
【0107】
[実施形態の効果]
本実施の形態の例によると、仮想現実(AR)技術を用いて、施設各所に配されたキー画像であるARマーカーを経路案内装置10が検出したときに、当該ARマーカーのAR座標系(例えばカメラ座標系に一致していてもよい)での位置及び向きと、地図情報として予め地表面に固定された地図座標系での対応するARマーカーの位置及び向きとの情報を利用して、地図座標系での経路案内装置10の位置及び向きを特定する。
【0108】
またこれにより、地図情報として設定された、通行可能な経路のネットワークに含まれるエッジやノードの情報(地図座標系で表されている)を用い、特定した地図座標系での経路案内装置10の位置及び向きの情報を利用して、いわゆるナビゲーション技術によるナビゲーションを実現する。このため、屋内を含む種々の空間での経路案内を行うことが可能となっている。
【0109】
さらに本実施の形態では、AR技術を用いて、経路案内装置10の画面上に、経路案内装置10が撮像している施設内の通路の画像データ等に重ね合わせて、エッジに対応する直線等の図形や、次に通過するべきノードの方向を表す図形などの案内画像を描画して表示する。これにより利用者に対して移動方向を明示することが可能となっている。
【0110】
そして経路案内装置10は、予め管理者等が定めた中止条件を満足する領域内では上記案内画像の表示を中止する。あるいは、予め管理者等が定めた実施条件を満足する領域(いわばAR表示が許容されるゾーン)においてのみ、案内表示を行う。
【0111】
これにより、任意の場所で案内表示を注視することによる利用マナーの低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0112】
1 経路案内システム、10 経路案内装置、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 撮像部、16 通信部、20 地図情報サーバ、21 地図情報取得部、22 キー検出部、23 相対位置取得部、24 地図内位置情報取得部、25 経路案内処理部、26 情報出力部。