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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055504
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/32 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
H01B7/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162966
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】小野 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】福里 宏史
(72)【発明者】
【氏名】山根 一貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 幹也
【テーマコード(参考)】
5G315
【Fターム(参考)】
5G315BA14
(57)【要約】
【課題】ケーブルにおける断線の兆候を検知する精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】複数の絶縁電線を含む集合コアと、集合コアの周囲を被覆するように設けられるシースと、を備え、複数の絶縁電線は、複数の第1導体素線および少なくとも1つの断線検知線を撚り合わせた撚り線が絶縁体で被覆された断線検知線入り絶縁電線を含み、断線検知線は、複数の第1導体素線よりも引張強度の小さな第2導体素線が絶縁体で被覆されている、ケーブルである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁電線を含む集合コアと、
前記集合コアの周囲を被覆するように設けられるシースと、を備え、
前記複数の絶縁電線は、複数の第1導体素線および少なくとも1つの断線検知線を撚り合わせた撚り線が絶縁体で被覆された断線検知線入り絶縁電線を含み、
前記断線検知線は、前記複数の第1導体素線よりも引張強度の小さな第2導体素線が絶縁体で被覆されている、
ケーブル。
【請求項2】
前記第2導体素線の引張強度が前記第1導体素線の引張強度の70%以上80%以下である、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記第2導体素線の外径が前記第1導体素線よりも小さい、
請求項1又は2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記断線検知線入り絶縁電線が前記集合コアにおいて最も外側に位置する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記断線検知線が、前記断線検知線入り絶縁電線を構成する前記撚り線において最も外側に位置する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記断線検知線の外径が前記第1導体素線と同じである、
請求項1~5のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項7】
前記断線検知線を構成する前記絶縁体の厚さが0.15mm以上である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記断線検知線を構成する前記絶縁体がフッ素樹脂およびポリエーテルエーテルケトン樹脂の少なくとも1つから形成される、
請求項1~7のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項9】
前記第2導体素線は、前記第1導体素線を形成する材質よりも引張強度の小さな材質で形成される、
請求項1に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルとして、例えばキャブタイヤケーブルがある。キャブタイヤケーブルは、クレーンやエレベータ等の移動機器に使用される給電用のケーブルである。キャブタイヤケーブルは、例えば複数の絶縁電線を撚り合わせた集合コアの外周にシースを被覆して構成される。
【0003】
キャブタイヤケーブルは、繰り返し屈曲や捻回、プーリやリールでのしごき・摩擦等を受ける厳しい環境で使用されるため、絶縁電線における導体素線が断線することがある。断線が生じると、機器の制御不能や誤作動などが発生することがある。
【0004】
そこで、断線の兆候を検知する方法が提案されている。例えばケーブルの導体抵抗や絶縁抵抗の変化を測定し、その変化量から断線寿命を検知する方法が提案されている(例えば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-051937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した方法では断線の兆候を検知できないことがあった。そのため、キャブタイヤケーブルの使用中に絶縁電線が断線してしまい、キャブタイヤケーブルを交換するまでの間、移動機器が使用できなくなることがあった。
【0007】
本発明は、ケーブルにおける断線の兆候を検知する精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、
複数の絶縁電線を含む集合コアと、
前記集合コアの周囲を被覆するように設けられるシースと、を備え、
前記複数の絶縁電線は、複数の第1導体素線および少なくとも1つの断線検知線を撚り合わせた撚り線が絶縁体で被覆された断線検知線入り絶縁電線を含み、
前記断線検知線は、前記複数の第1導体素線よりも引張強度の小さな第2導体素線が絶縁体で被覆されている、
ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルにおける断線の兆候を検知する精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかるケーブルの構成の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態にかかるケーブルにおける断線検知線入り第2絶縁電線の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討を行い、ケーブルを構成する複数の絶縁電線のうち、少なくとも1つの絶縁電線に、他の導体素線よりも引張強度が小さく、断線しやすい断線検知線を撚り込むことに着目した。このような構成によれば、ケーブルにおける導体素線が断線する前に断線検知線を断線させることができ、その断線を検知することによりケーブルの屈曲寿命、つまりケーブルにおける断線兆候を把握することが可能となる。本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
【0012】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明にかかるケーブルの一実施形態としてキャブタイヤケーブルについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるケーブルの構成の一例を示す概略断面図である。図2は、本発明の一実施形態にかかるケーブルにおける断線検知線入り第2絶縁電線の一例を示す概略断面図である。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(キャブタイヤケーブル)
本実施形態のキャブタイヤケーブル1は、図1に示すように、第1絶縁電線10および第2絶縁電線20を含む集合コア30と、集合コア30の外周を被覆するように形成されるシース40と、を備えて構成される。尚、本実施形態のキャブタイヤケーブル1は、集合コア30が第2絶縁電線20のみを含むものであってもよい。すなわち、本実施形態のキャブタイヤケーブル1では、複数の絶縁電線を含む集合コア30と、集合コア30の周囲を被覆するように設けられるシース40と、を備え、複数の絶縁電線の少なくとも1つが第2絶縁電線20で構成される。以下、各部材について詳述する。
【0014】
(第1絶縁電線)
第1絶縁電線10は、図1に示すように、複数の第1導体素線11を撚り合わせて構成される撚り線(第1撚り線)12と、撚り線12の外周に設けられた絶縁体(第1絶縁体)13と、を有する。なお、以下では、第1絶縁電線10における絶縁体13を第1絶縁電線10の電線被覆13ともいう。より具体的に、撚り線12は、複数の第1導体素線11のみが撚り合わされたものであり、絶縁体13は、撚り線12の外周を被覆するように設けられたものである。なお、撚り線12と絶縁体13との間には、セパレータなどの他の部材が介在していてもよい。
【0015】
第1導体素線11としては、金属線が用いられる。金属線としては、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線の他、アルミニウム線、アルミニウム合金線、銀線等の他の金属線を用いることができる。第1導体素線11の外径は、第1絶縁電線10の可とう性を確保できる大きさであれば特に限定されないが、0.10mm~0.50mmであることが好ましい。
【0016】
第1絶縁電線10において使用する第1導体素線11の数は特に限定されず、キャブタイヤケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
【0017】
第1絶縁電線10を構成する絶縁体13の形成材料としては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等を用いることができる。絶縁体13は、例えばEPゴムを撚り線12の外周に押出被覆し、架橋することで形成することができる。その厚さは、例えば、0.6mm以上である。
【0018】
第1絶縁電線10の外径は、第1導体素線11の外径や撚り合わせる本数に応じて適宜変更することができる。例えば、5.7mm~41mmとするとよい。
【0019】
(第2絶縁電線)
第2絶縁電線(断線検知線入り絶縁電線)20は、上述した第1絶縁電線10において複数の第1導体素線11のうち少なくとも1本を、断線検知線21に置き換えたものである。具体的には、第2絶縁電線20は、図2に示すように、複数の第1導体素線11および1つの断線検知線21を撚り合わせて構成される撚り線(第2撚り線)22と、撚り線22の外周に形成され、撚り線22を被覆する絶縁体(第2絶縁体)23と、を有する。
【0020】
ここで、第1絶縁電線10との違いである断線検知線21について説明する。
【0021】
断線検知線21は、図2に示すように、第2導体素線24とその外周に形成される絶縁体25とを備えて構成される。なお、以下では、第2導体素線24の外周に形成される絶縁体25と、第2絶縁電線20において撚り線22の外周に形成される絶縁体23とを区別するため、前者を素線被覆25、後者を電線被覆23ともいう。
【0022】
断線検知線21を構成する第2導体素線24は、第1導体素線11よりも引張強度が小さい。本実施形態では、第2導体素線24は、第1導体素線11よりも外径が小さくなるよう構成されている。言い換えると、第2導体素線24は、第1導体素線11よりも断面積が小さくなるよう構成されている。このような第2導体素線24によれば、第1導体素線11よりも屈曲寿命を短くできるので、第1導体素線11よりも早く断線させることができる。そのため、例えばキャブタイヤケーブル1の使用中に第1導体素線11が断線する前に第2導体素線24を断線させることができ、この断線を検知することにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命を把握することができる。
【0023】
第2導体素線24の引張強度は、屈曲寿命によって適宜変更することができ、特に限定されないが、第1導体素線11の70%~80%であることが好ましい。このような比率とすることにより、断線検知線21を過度に早く切断させることなく、第1導体素線11よりも早く断線させることができる。これにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命により近い期間に断線検知線21を断線させることができ、屈曲寿命をより精度よく把握することができる。
【0024】
第2導体素線24としては、上述した第1導体素線11と同様の金属線を用いることができる。第2導体素線24と第1導体素線11とは同じ金属線を用いてもよく、異なる種類の金属線を用いてもよい。また、第2導体素線24としては、上述した金属線からなる単線、または上述した金属線を複数撚り合わせした撚り線で構成される。断線検知の精度向上の観点からは、第2導体素線24を単線とすることが好ましい。
【0025】
第2導体素線24の外径は、第1導体素線11よりも小さく、第1導体素線11の外径の30%~60%であることが好ましい。第2導体素線24の外径を上記比率とすることにより、第2導体素線24について所望の屈曲寿命を維持しながらも、第1導体素線11よりも断線させやすくすることができる。また、第2導体素線24において所望の屈曲寿命と可とう性とを得る観点からは、第2導体素線24の外径が0.10mm~0.35mmであることが好ましい。
【0026】
断線検知線21を構成する絶縁体25(素線被覆25)は、第2導体素線24の外周を被覆するように設けられる。素線被覆25は、第2導体素線24が断線したときに、断線した第2導体素線24が第1導体素線11と接触して短絡することを防ぐものである。
【0027】
素線被覆25の厚さは、耐摩耗性や絶縁性の観点からは0.15mm以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば0.40mm以下とすることが好ましい。
【0028】
素線被覆25の形成材料は、断線検知線21が第1導体素線11との接触により摩耗することから、耐摩耗性に優れていることが好ましい。また、第2絶縁電線20は、第1導体素線11と断線検知線21とを撚り合わせた撚り線22の外周に絶縁体23(電線被覆23)を加硫により形成することから、素線被覆25の形成材料は、加硫時の熱で溶融しないことが好ましい。このような観点から、素線被覆25の形成材料としては、ETFE等のフッ素樹脂、もしくは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)の少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0029】
断線検知線21の外径は、第1導体素線11と同じであることが好ましい。第1導体素線11と同じ外径とすることにより、第2絶縁電線20が屈曲されたときに撚り線22に加わる応力を均等にすることができる。この結果、断線検知線21の断線を第1導体素線11よりも早く確実にすることができる。また、第2絶縁電線20と第1絶縁電線10とを外径が同じとなるように形成しやすくなる。なお、外径が同一とは、各外径の差が2%以下であることを示す。
【0030】
断線検知線21は第2絶縁電線20の撚り線22において最も外側に位置することが好ましい。第2絶縁電線20では、キャブタイヤケーブル1が屈曲したときに生じる応力が中心よりも外側ほど大きくなる。そのため、上記構成とすることにより、断線検知線21にて屈曲による断線をより精度よく検知することができる。
【0031】
第2絶縁電線20において、撚り線22の外周に設けられる電線被覆23の形成材料としては、第1絶縁電線10における電線被覆13と同様のものを用いることができる。また、第2絶縁電線20における電線被覆23の厚さも第1絶縁電線10と同様の範囲とするとよい。
【0032】
第2絶縁電線20の外径は、第1導体素線11および断線検知線21の外径や撚り合わせる本数に応じて適宜変更することができる。例えば、5.7mm~41mmととするとよい。好ましくは、第2絶縁電線20の外径は第1絶縁電線10と同じである。外径を同一とすることにより、集合コア30において屈曲による応力を均等にすることができるので、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命をより精度よく把握することができる。なお、外径が同一とは、各外径の差が2%以下であることを示す。
【0033】
(集合コア)
本実施形態では、集合コア30は、図1に示すように、複数の第1絶縁電線10と、断線検知線21を含む1つの第2絶縁電線20とを撚り合わせて構成される。なお、集合コア30における撚り込み率は、特に限定されないが、例えば3%~4%とするとよい。
【0034】
集合コア30の外径は、特に限定されず、第1絶縁電線10および第2絶縁電線20を撚り合わせる本数に応じて適宜変更することができる。
【0035】
集合コア30において、断線検知線21を含む第2絶縁電線20は、図1に示すように、最も外側に位置することが好ましい。上述したように、キャブタイヤケーブル1においては、屈曲による応力が中心よりも外側で大きくなるので、上記構成とすることにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命をより正確に把握することができる。
【0036】
(シース)
シース40は、集合コア30の外周を被覆するように設けられる。シース40は、図1に示すように、集合コア30の外周上に押さえ巻きテープ41を介して設けられていてもよい。シース40の厚さは、電気用品安全法または電気設備技術基準に規定されている厚さ以上であればキャブタイヤケーブル1の用途に応じて適宜変更することができ、1.5mm~10mmである。
【0037】
シース40の形成材料としては、例えばオレフィン系ポリマーや塩素含有ゴムなどの公知の材料を用いることができる。また、シースは必要に応じて架橋処理を施してもよい。
【0038】
(ケーブルの製造方法)
次に、上述したキャブタイヤケーブル1の製造方法について説明する。
【0039】
まず、第1絶縁電線10を作製する。例えば、複数の第1導体素線11を撚り合わせて撚り線12を形成した後、その撚り線12の外周を被覆するように絶縁材料を押し出して、必要に応じて架橋処理を施して、電線被覆13を形成することにより第1絶縁電線10を作製する。
【0040】
次に、第2絶縁電線20を作製する。第2絶縁電線20は、まず断線検知線21を作製した後、その断線検知線21を用いて作製することができる。
【0041】
具体的には、例えば、第1導体素線11よりも外径が細く、引張強度の小さな第2導体素線24を準備する。続いて、第2導体素線24の外周上にフッ素樹脂やPEEK樹脂などの絶縁材料を押し出して、必要に応じて架橋処理を施して、素線被覆25を形成する。これにより、断線検知線21を得る。素線被覆25の厚さは、断線検知線21と第1導体素線11の外径が同一となるように調整することが好ましい。続いて、1つの断線検知線21と複数の第1導体素線11とを撚り合わせて撚り線22を形成し、第1絶縁電線10と同様に電線被覆23を形成することで、第2絶縁電線20を得る。第2絶縁電線20の作製においては断線検知線21が最も外側に位置するように断線検知線21と第1導体素線11とを撚り合わせることが好ましい。
【0042】
次に、複数の第1絶縁電線10と1つの第2絶縁電線20とを撚り合わせて集合コア30を形成する。このとき、第2絶縁電線20が集合コア30において最も外側に位置するように撚り合わせることが好ましい。
【0043】
次に、集合コア30の外周に押さえ巻きテープ41を介して絶縁材料を押し出して、必要に応じて架橋処理を施して、シース40を形成する。
【0044】
以上により、本実施形態のキャブタイヤケーブル1を作製することができる。
【0045】
(ケーブルの使用方法および断線検知方法)
続いて、上述したキャブタイヤケーブル1の使用方法および断線検知方法について説明する。
【0046】
上述したキャブタイヤケーブル1は末端に端子を取り付けて、移動機器などに接続される。この接続の際、キャブタイヤケーブル1における断線検知線21は端子に取り付けずに、第1絶縁電線10や第2絶縁電線20における第1導体素線11を端子に取り付ける。つまり、第1導体素線11を給電用として使用する一方、断線検知線21は引き出したままとなる。引き出した断線検知線21は、必要に応じて例えばテスタなどに接続され、屈曲寿命の測定に使用される。
【0047】
使用中のキャブタイヤケーブル1における断線検知は、断線検知線21を常時もしくは定期的にモニタリングするとよい。モニタリング方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、断線検知線21の第2導体素線24の電気抵抗を測定し、測定される電気抵抗から断線を検知することができる。この場合、測定される電気抵抗が所定の閾値を超えたら、断線が生じたものと判断することができる。また例えば、断線検知線21にパルス電圧を送り、その反射を測定することにより断線を検知することができる。また例えば、マレーループ法や静電容量法により断線を検知することもできる。
【0048】
キャブタイヤケーブル1は繰り返し屈曲されて、集合コア30に応力がかかることにより、給電に寄与する第1導体素線11が破断する前に、断線検知線21の第2導体素線24が破断する。もしくは、断線検知線21の素線被覆25が破れ、第2導体素線24が第1導体素線11と接触することで、短絡が生じる。断線検知線21のモニタリングにより断線検知線21の断線や短絡などの異常を確認することにより、キャブタイヤケーブル1における断線兆候を予め把握することができる。
【0049】
(本実施形態にかかる効果)
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0050】
本実施形態のキャブタイヤケーブル1によれば、断線検知線21における第2導体素線24を給電に寄与する第1導体素線11よりも細くして引張強度が小さくなるように構成している。これにより、キャブタイヤケーブル1が繰り返し屈曲されて、第1絶縁電線10や第2絶縁電線20に撚り込まれた第1導体素線11が断線する前に、断線検知線21の第2導体素線24を断線させることができる。そのため、断線検知線21での断線を検知することにより、第1導体素線11の屈曲寿命を、つまり断線兆候を把握することができる。そのため、例えば、断線検知線21が断線した時点でキャブタイヤケーブル1を交換することにより、移動機器などの停止時間を低減することができる。
【0051】
また、キャブタイヤケーブル1の屈曲により断線検知線21が断線する前に、素線被覆25が摩耗して剥がれ、その内部の第2導体素線24が第1導体素線11と接触して短絡した場合、その短絡を検知することにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命を把握することができる。素線被覆25の摩耗は屈曲の繰り返しにともなうものであり、第1導体素線11の屈曲寿命を間接的に判断できるためである。
【0052】
また、断線検知線21における第2導体素線24の引張強度が第1導体素線11の70%~80%となるように、第2導体素線24の外径を調整することが好ましい。これにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命により近い期間に断線検知線21を断線させることが可能となる。そのため、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命をより精度よく把握することができる。
【0053】
また、断線検知線21は第2絶縁電線20において最も外側に配置することが好ましく、さらには、第2絶縁電線20は集合コア30の最も外側に配置することが好ましい。断線検知線21や集合コア30ではキャブタイヤケーブル1の屈曲による応力が外側ほど大きくなるので、断線検知線21を第1導体素線11よりも早く、かつ確実に断線させることができる。これにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命をより精度よく把握することができる。
【0054】
また、断線検知線21の外径を第1導体素線11と同じとすることが好ましく、第2絶縁電線20の外径を第1絶縁電線10と同じとすることが好ましい。このように外径を揃えることにより、キャブタイヤケーブル1を屈曲させたときに加わる応力を、断線検知線21および集合コア30のそれぞれの断面において均等にすることができる。これにより、断線検知線21よりも第1導体素線11が早く断線してしまうことを抑制することができ、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命をより精度よく把握することが可能となる。
【0055】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
上述の実施形態では、第1導体素線11よりも引張強度の小さな第2導体素線24として、第1導体素線11よりも細径の素線を使用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1導体素線11と同じ外径を有するものの、第1導体素線11を形成する材質よりも引張強度が小さな材質で形成される第2導体素線24を使用することができる。具体的には、軟質銅から形成される第1導体素線11と、硬質銅から形成される第2導体素線24とを使用することができる。この場合も、第2導体素線24を第1導体素線11よりも早く断線するように構成できるので、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
上述の実施形態では、集合コア30に1本の第2絶縁電線20を使用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、第2絶縁電線20は複数本使用してもよい。複数本の第2絶縁電線20によれば、断線をより精度よく検知することができる。一方、第2絶縁電線20の数が過度に多くなると、断線検知線21の数が増えることで、その分、導体の合計面積が少なくなり、導電性が低下することがある。そのため、所望の導電性を確保しながらも、断線検知の精度を高くする観点からは、第2絶縁電線20の本数は2本、3本もしくは4本とすることが好ましい。
【0058】
また、複数の第2絶縁電線20を使用する場合、複数の第2絶縁電線20が集合コア30の最も外側に位置するように撚り合わせることが好ましい。さらに好ましくは、複数の第2絶縁電線20が集合コア30の外周方向に沿って等間隔に位置するように第1絶縁電線10と第2絶縁電線20とを撚り合わせることが好ましい。このような構成によれば、キャブタイヤケーブル1のあらゆる方向への屈曲に対して断線を検知することができる。
【0059】
また、複数の第2絶縁電線20を使用する場合、それぞれに含まれる断線検知線21の第2導体素線24の引張強度を同じとしてもよいが、互いに異なるようにしてもよい。例えば、第2導体素線24として、引張強度が第1導体素線11の70%のもの、75%のもの、80%のものを使用してもよい。この場合、キャブタイヤケーブル1において、屈曲寿命の短い順に、つまり70%のもの、75%のもの、80%のものの順に断線を生じさせることができる。これにより、キャブタイヤケーブル1の屈曲寿命を段階的に把握することが可能となる。
しかも、キャブタイヤケーブル1の用途に応じて、屈曲寿命の目安となる断線検知線21を適宜選択することが可能となる。例えば、屈曲が大きかったり、屈曲の繰り返しが多いなど屈曲の厳しい条件でキャブタイヤケーブル1が使用される場合は、複数ある断線検知線21のうち、引張強度が比較的小さな断線検知線21の断線をケーブル交換の目安とし、反対に、屈曲の緩い条件では、引張強度が比較的大きな断線検知線21の断線をケーブル交換の目安とする、といったように、屈曲寿命の判断基準となる断線検知線21を用途に応じて変更することができる。
【0060】
また、上述の実施形態では、キャブタイヤケーブル1の断面形状が円形状の場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば平型形状としてもよい。平型形状の場合、平型の長辺側に、断線検知線21を含む第2絶縁電線20が位置するように撚り合わせるとよい。
【0061】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0062】
(付記1)
本発明の一態様は、
複数の絶縁電線を含む集合コアと、
前記集合コアの周囲を被覆するように設けられるシースと、を備え、
前記複数の絶縁電線は、複数の第1導体素線および少なくとも1つの断線検知線を撚り合わせた撚り線が絶縁体で被覆された断線検知線入り絶縁電線を含み、
前記断線検知線は、前記複数の第1導体素線よりも引張強度の小さな第2導体素線が絶縁体で被覆されている、
ケーブルである。
【0063】
(付記2)
付記1において、好ましくは、
前記第2導体素線の引張強度が前記第1導体素線の引張強度の70%以上80%以下である。
【0064】
(付記3)
付記1又は2において、好ましくは、
前記第2導体素線の外径が前記第1導体素線よりも小さい。
【0065】
(付記4)
付記1~3において、好ましくは、
前記断線検知線入り絶縁電線が前記集合コアにおいて最も外側に位置する。
【0066】
(付記5)
付記1~4において、好ましくは、
前記断線検知線が、前記断線検知線入り絶縁電線を構成する前記撚り線において最も外側に位置する。
【0067】
(付記6)
付記1~5において、好ましくは、
前記断線検知線の外径が前記第1導体素線と同じである。
【0068】
(付記7)
付記1~6において、好ましくは、
前記断線検知線を構成する前記絶縁体の厚さが0.15mm以上である。
【0069】
(付記8)
付記1~7において、好ましくは、
前記第2導体素線の外径が0.10mm以上0.35mm以下である。
【0070】
(付記9)
付記1~8において、好ましくは、
前記第2導体素線の外径が、前記第1導体素線の外径の30%以上60%以下である。
【0071】
(付記10)
付記1~9において、好ましくは、
前記断線検知線を構成する前記絶縁体がフッ素樹脂およびポリエーテルエーテルケトン樹脂の少なくとも1つから形成される
【0072】
(付記11)
付記1~10において、好ましくは、
前記第2導体素線は、前記第1導体素線を形成する材質よりも引張強度の小さな材質で形成される。
【0073】
(付記12)
付記1~11において、好ましくは、
前記集合コアは、前記断線検知線入り絶縁電線を複数含み、
前記複数の断線検知線入り絶縁電線が前記集合コアの最も外側に位置するとともに、前記集合コアの外周に沿って等間隔に位置する。
【0074】
(付記13)
付記1~12のケーブルにおける断線兆候を検知する方法であって、
前記断線検知線の前記第2導体素線に常時または定期的に電圧を印加して、電圧の変化から断線の有無を確認し、ケーブルの断線兆候を検知する。
【0075】
(付記14)
付記1~12のケーブルにおける断線兆候を検知する方法であって、
前記断線検知線の前記第2導体素線に常時または定期的に電気信号を送り、その反射を測定することにより断線の有無を確認し、ケーブルの断線兆候を検知する。
【符号の説明】
【0076】
1 ケーブル(キャブタイヤケーブル)
10 第1絶縁電線
11 第1導体素線
12 第1絶縁電線の撚り線
13 第1絶縁電線における絶縁体(電線被覆)
20 第2絶縁電線(断線検知線入り絶縁電線)
21 断線検知線
22 第2絶縁電線の撚り線
23 第2絶縁電線における絶縁体(電線被覆)
24 第2導体素線
25 素線被覆
30 集合コア
40 シース
41 押さえ巻きテープ
図1
図2