(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055590
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】チョコレート用油脂組成物及び冷凍用チョコレート
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220401BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20220401BHJP
A23G 1/36 20060101ALI20220401BHJP
A23G 1/32 20060101ALI20220401BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23D9/013
A23G1/36
A23G1/32
A23G1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163094
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺井 悠晃
(72)【発明者】
【氏名】大関 美波
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅崇
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB03
4B014GG14
4B014GK07
4B014GL06
4B014GP13
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG04
4B026DG05
4B026DH05
4B026DH10
4B026DK10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷凍下で軟らかく良好な風味を有する、冷凍用チョコレートの提供。
【解決手段】下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物を80質量%以上含有する冷凍用チョコレート。(a)構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有する。(b)構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量の比が0.58以下である。(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05~10質量%含有する。(d)チョコレートが冷凍用チョコレートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有する。
(b)構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量の比が0.58以下である。
(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05~10質量%含有する。
(d)チョコレートが冷凍用チョコレートである。
【請求項2】
チョコレートに含まれる油脂が、請求項1に記載のチョコレート用油脂組成物を80質量%以上含有する冷凍用チョコレート。
【請求項3】
請求項2に記載の冷凍用チョコレートが使用された冷凍菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍用チョコレート及び該冷凍用チョコレートを得るためのチョコレート用油脂組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、チョコレートのみからなる商品以外に、チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品にも使用されている。チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品には、チョコレートとアイスクリーム等の冷菓菓子とを組み合わせた商品がある。冷凍菓子に使用されるチョコレートとしては、例えば、特許文献1~5のチョコレートが提案されている。
【0003】
最近の冷凍菓子には、食べやすいことも求められている。冷凍菓子の食べやすさの1つには、冷凍庫から取り出してから直ぐに食べられることが挙げられる。冷凍菓子が冷凍庫から取り出してから直ぐに食べられるためには、冷凍菓子は、冷凍下で硬くなり過ぎずに、冷凍下で軟らかいことが必要である。そのため、冷凍菓子と同様に、冷凍菓子に使用されるチョコレートにも、冷凍下で軟らかいことが必要である。
【0004】
冷凍下で軟らかいチョコレートを得るための試みとしては、チョコレートの骨格となる油脂の改良が考えられる。冷凍下で軟らかいチョコレートを得るための油脂の改良としては、液状油を使用することが考えられる。冷凍菓子に使用されるチョコレートに配合される液状油は、風味の面から、菜種油が使用されることが多い。しかしながら、菜種油を使用して製造されたチョコレートは、冷凍下で硬くなるという問題があった。
【0005】
以上のような背景から、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有する冷凍用チョコレートを、得るための油脂の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-20785号公報
【特許文献2】特開2004-65070号公報
【特許文献3】特開2006-280209号公報
【特許文献4】特開2010-268749号公報
【特許文献5】特開2012-34653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有する冷凍用チョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、特定の条件を満たす油脂組成物を冷凍用チョコレートに使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物である。
下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有する。
(b)構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量の比が0.58以下である。
(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05~10質量%含有する。
(d)チョコレートが冷凍用チョコレートである。
本発明の第2の発明は、チョコレートに含まれる油脂が、第1の発明に記載のチョコレート用油脂組成物を80質量%以上含有する冷凍用チョコレートである。
本発明の第3の発明は、第2の発明に記載の冷凍用チョコレートが使用された冷凍菓子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有する冷凍用チョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、下記の(a)~(d)の条件を満たす。
下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有する。
(b)構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量の比が0.58以下である。
(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05~10質量%含有する。
(d)チョコレートが冷凍用チョコレートである。
【0012】
本発明でチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含まない(水分が好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。)食品のことである。また、本発明でチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートのいずれであってもよい。
【0013】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有し、好ましくは80~94質量%含有し、より好ましくは85~93質量%含有する(条件(a))。炭素数18の不飽和脂肪酸の具体例は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸である。以下、炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量は、C18USFAと記載することがある。また、本発明で構成脂肪酸とは、油脂組成物中の油脂を構成する脂肪酸のことである。
【0014】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の比(炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量/炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量)が0.58以下であり、好ましくは0.10~0.56であり、より好ましくは0.30~0.53であり、最も好ましくは0.35~0.53である。(条件(b))。なお、本発明で多価不飽和脂肪酸とは、二重結合を2つ以上有する不飽和脂肪酸のことである。炭素数18の多価不飽和脂肪酸の具体例は、リノール酸、リノレン酸である。以下、炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量は、C18PUSFAと記載することがある。また、構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量の比は、C18PUSFA/C18USFAと記載することがある。
【0015】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05~10質量%含有し、好ましくは0.08~7質量%含有し、より好ましくは0.1~5質量%含有し、最も好ましくは0.5~5質量%含有する(条件(c))。以下、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、PGEと記載することがある。
【0016】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、チョコレートが冷凍用チョコレートである(条件(d))。なお、本発明で冷凍用チョコレートとは、冷凍して使用されるチョコレートのことである。冷凍用チョコレートは、チョコレートのみで冷凍される場合と、チョコレートが他の冷凍菓子と組み合わされた後に冷凍される場合がある。他の冷凍菓子の具体例は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等である。
【0017】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物が、上記の(a)~(d)の条件を満たすと、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有する冷凍用チョコレートが得られる。
【0018】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数18の多価不飽和脂肪酸を好ましくは50質量%以下含有し、より好ましくは10~48質量%含有し、さらに好ましくは25~48質量%含有し、最も好ましくは32~46質量%含有する。
【0019】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。炭素数14以下の飽和脂肪酸の具体例は、ラウリン酸、ミリスチン酸等である。以下、炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、C14以下SFAと記載することがある。
【0020】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数20以上の脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは4質量%未満含有し、さらに好ましくは3質量%未満含有する。炭素数20以上の脂肪酸の具体例は、アラキジン酸、エルカ酸、ベヘン酸等である。以下、炭素数20以上の脂肪酸の含有量は、C20以上FAと記載することがある。
【0021】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、飽和脂肪酸を好ましくは5~15質量%含有し、より好ましくは7~14質量%含有し、さらに好ましくは8~13質量%含有する。飽和脂肪酸の具体例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、エルカ酸、ベヘン酸等である。以下、飽和脂肪酸の含有量は、SFAと記載することがある。
【0022】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは4質量%未満含有し、さらに好ましくは3質量%未満含有する。以下、トランス脂肪酸の含有量は、TFAと記載することがある。
【0023】
本実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、固体脂含量(以下、SFCとする)が好ましくは-20℃で63%以下、10℃で3%以下であり、より好ましくは-20℃で50%以下、10℃で2%以下であり、さらに好ましくは-20℃で30%以下、10℃で1%以下であり、最も好ましくは-20℃で12%以下、10℃で1%以下である。
【0024】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸の組成が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常の食用油脂を使用して製造することができる。本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される食用油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ココアバター、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)等が挙げられる。前記食用油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。
【0025】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくは下記油脂A及び下記油脂Bを含有する。
【0026】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を80~97質量%含有し、構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の比(炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量/炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量)が0.38以下である。
【0027】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を80~97質量%含有し、好ましくは83~95質量%含有し、より好ましくは86~93質量%含有する。
【0028】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の比(炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量/炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量)が0.38以下であり、好ましくは0.05~0.38であり、より好ましくは0.12~0.35であり、最も好ましくは0.28~0.35である。
【0029】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、炭素数18の多価不飽和脂肪酸を好ましくは35質量%以下含有し、より好ましくは5~35質量%含有し、さらに好ましくは12~33質量%含有し、最も好ましくは25~33質量%含有する。
【0030】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。
【0031】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、炭素数20以上の脂肪酸を好ましくは7質量%未満含有し、より好ましくは5質量%未満含有し、さらに好ましくは4質量%未満含有する。
【0032】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、飽和脂肪酸を好ましくは20質量%以下含有し、より好ましくは3~15質量%含有し、さらに好ましくは5~10質量%含有する。
【0033】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは4質量%未満含有し、さらに好ましくは3質量%未満含有する。
【0034】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aの具体例は、菜種油、高オレイン酸紅花油、高オレイン酸ヒマワリ油等である。本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、好ましくは菜種油である。
【0035】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有し、構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の比(炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量/炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量)が0.60以上である。
【0036】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、炭素数18の不飽和脂肪酸を75~95質量%含有し、好ましくは78~93質量%含有し、より好ましくは80~90質量%含有する。
【0037】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸中の炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)に対する炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)の比(炭素数18の多価不飽和脂肪酸の含有量/炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量)が0.60以上であり、好ましくは0.65~0.85であり、より好ましくは0.68~0.75である。
【0038】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、炭素数18の多価不飽和脂肪酸を好ましくは50~80質量%含有し、より好ましくは53~75質量%含有し、さらに好ましくは55~65質量%含有する。
【0039】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。
【0040】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、炭素数20以上の脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは3質量%未満含有し、さらに好ましくは2質量%未満含有する。
【0041】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、飽和脂肪酸を好ましくは5~23質量%含有し、より好ましくは7~20質量%含有し、さらに好ましくは10~18質量%含有する。
【0042】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは4質量%未満含有し、さらに好ましくは3質量%未満含有する。
【0043】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bの具体例は、大豆油、高リノール酸紅花油、高リノール酸ヒマワリ油、コーン油等である。本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、好ましくは大豆油である。
【0044】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくは油脂Aを25~99質量%、油脂Bを0~74質量%含有し、より好ましくは油脂Aを40~89質量%、油脂Bを10~59質量%含有し、さらに好ましくは油脂Aを45~79質量%、油脂Bを20~54質量%含有し、最も好ましくは油脂Aを45~74質量%、油脂Bを25~54質量%含有する。
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物が、油脂A及び油脂Bを上記範囲で含有すると、油脂の融点降下が起こり、-20℃のSFCがより低下することから、冷凍下で軟らかい冷凍用チョコレートがより得られやすくなる。
【0045】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、油脂、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の成分として、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤、酸化防止剤、香料等、通常、チョコレート用油脂に配合される成分を配合することもできる。
【0046】
油脂の構成脂肪酸含有量の測定は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)を用いて行うことができる。
SFCは、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)」で測定することができる。
【0047】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物を80質量%以上含有し、より好ましくは90質量%以上含有し、さらに好ましくは95質量%以上含有し、最も好ましくは97質量%以上含有する。チョコレートに含まれる油脂が、本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物を前記範囲で含有すると、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有するチョコレートが得られる。
【0048】
本発明でチョコレートに含まれる油脂とは、チョコレートに含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分である。例えば、チョコレートがカカオマス、全脂粉乳、油脂aを含む場合、油脂は、カカオマスに含まれるココアバターと、全脂粉乳に含まれる乳脂と、油脂aとの混合油である。すなわち、本発明で油脂は、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)を含む。
【0049】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、ココアバターを好ましくは8質量%未満含有し、より好ましくは5質量%未満含有し、さらに好ましくは3質量%未満含有し、最も好ましくは1質量%未満含有する。
【0050】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、ラウリン系油脂を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。
【0051】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、油脂を好ましくは30~70質量%含有し、より好ましくは40~65質量%含有し、さらに好ましくは45~60質量%含有し、最も好ましくは45~55質量%含有する。
【0052】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、好ましくは糖質を含有する。なお、本発明で糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で、糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖、乳糖である。
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、糖質を好ましくは25~65質量%含有し、より好ましくは35~60質量%含有し、さらに好ましくは40~58質量%含有し、最も好ましくは45~55質量%含有する。
【0053】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、油脂、糖質以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0054】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、従来公知のチョコレートの製造方法で製造することができる。本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖質、乳製品、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。また、本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。
【0055】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、好ましくはノンテンパリング型チョコレートである。
【0056】
本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有する。そのため、本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートは、好ましくは冷凍菓子のコーティングチョコレート、冷凍菓子のチョコレートソースとして使用される。
【0057】
本発明の実施の形態の冷凍菓子は、本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートを使用して得られる。本発明の実施の形態の冷凍菓子は、本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートのみが冷凍された場合と、本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートが他の冷凍菓子と組み合わされる場合がある。本発明の実施の形態の冷凍菓子の製造に使用される他の冷凍菓子の具体例は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等である。
【0058】
本発明の実施の形態の冷凍菓子は、従来公知の冷凍菓子の製造方法で製造することができる。例えば、従来公知の方法でチョコレートのみを冷凍する又は従来公知の方法でチョコレートと他の冷菓菓子とを組み合わせることで製造することができる。例えば、チョコレートと他の冷菓菓子とを組み合わせる方法としては、コーティング、注入、フィリング、挟む等が挙げられる。
【0059】
本発明の実施の形態の冷凍菓子は、好ましくは本発明の実施の形態の冷凍用チョコレートが、カップ等の容器に充填されたアイスクリームの天面、中間又は底面に存在する。
【0060】
本発明の実施の形態の冷凍菓子は、チョコレート部分が、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有する。また、本発明の実施の形態の冷凍菓子は、チョコレート部分のさじ通りが良く、チョコレート部分が冷凍庫から取り出してから直ぐに食べられる程度の硬さである。
【実施例0061】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0062】
<油脂の脂肪酸含有量の測定>
油脂の脂肪酸含有量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)で測定した。
<油脂のSFCの測定>
SFCは、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)」で測定した。
【0063】
〔油脂A1〕
菜種油C18USA:90.9質量%、C18PUSA:29.5質量%、C18PUSA/C18USA:0.325、C14以下SFA:0.1質量%、C20以上FA:2.6質量%、SFA:7.5質量%、TFA:1.4質量%)を油脂A1とした。
〔油脂B1〕
大豆油(C18USA:84.0質量%、C18PUSA:60.3質量%、C18PUSA/C18USA:0.718、C14以下SFA:0.1質量%、C20以上FA:1.1質量%、SFA:15.7質量%、TFA:1.3質量%)を油脂B1とした。
〔PGE1〕
太陽化学株式会社製のポリグリセリン脂肪酸エステルであるサンソフトQMP-1をPGE1とした。
〔PGE2〕
太陽化学株式会社製のポリグリセリン脂肪酸エステルであるサンソフトQMP-5をPGE2とした。
〔PGE3〕
阪本薬品工業株式会社製のポリグリセリン脂肪酸エステルであるSYグリスターTHL-15をPGE3とした。
〔PGE4〕
阪本薬品工業株式会社製のポリグリセリン脂肪酸エステルであるSYグリスターTHL-17をPGE4とした。
〔PGE5〕
阪本薬品工業株式会社製のポリグリセリン脂肪酸エステルであるSYグリスターTHL-44をPGE5とした。
〔SE1〕
三菱ケミカルフーズ株式会社製のショ糖脂肪酸エステルであるリョートーシュガーエステルP-170をSE1とした。
〔SBE1〕
理研ビタミン株式会社製のソルビタン脂肪酸エステルであるポエムB-150をSBE1とした。
【0064】
〔油脂組成物の製造〕
表1~6に示す配合で融解させた油脂を混合することで、油脂組成物を製造した。
得られた油脂組成物中の油脂の脂肪酸含有量及び油脂組成物のSFCを前述の分析方法に従って測定した。また、各油脂組成物の-20℃の硬さを下記方法で評価した。測定結果及び評価結果を表1~6に示した。なお、油脂組成物の配合及び脂肪酸の含有量の単位は質量%であり(質量比の単位はなし)、SFCの単位は%である。
【0065】
<油脂組成物の硬さの評価>
各油脂組成物を直径70mm、高さ40mmの円柱状のプラスチック容器に20g充填し、―20℃まで冷却した後、スプーンを使って油脂組成物のさじの通りやすさを下記評価基準に従って評価した。
◎:さじ通りが非常によい
○:さじ通りがよい
×:さじ通りが悪い
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
表1~6から分かるように、-20℃のSFCが低い実施例1~19の油脂組成物、比較例4の油脂組成物は、軟らかかった。
一方、表1、3、4から分かるように、-20℃のSFCが高い比較例1~3の油脂組成物は、-20℃で硬かった。
【0073】
〔チョコレートの製造〕
実施例5、8、11、18の油脂組成物、比較例1、4の油脂組成物を使用し、表7に示された配合でチョコレートを製造した(配合の単位は質量部である。)。チョコレートは、原料を混合、微粒化、精練した後に冷却することで製造した。チョコレートに含まれる油脂中の各油脂組成物の含有量は、100質量%だった。また、チョコレート中の油脂含有量は、50質量%だった。また、チョコレート中の水分は、3質量%以下だった。
【0074】
【0075】
〔チョコレートの評価〕
各チョコレートの-20℃の硬さ及び風味を下記方法で評価した。評価結果を表8~9に示した。
【0076】
<チョコレートの硬さの評価1>
レオメーター(山電製、クリープメータRE2―33005B)を使用して、下記1)~3)の手順に従ってチョコレートの硬さを測定した。レオメーターでの測定には、先端が幅1mm、長さ10mm、高さ25mmの楔状のプランジャー(山電製)を使用した。なお、レオメーターでの硬さは、50%変形時(プランジャーが10mm貫入した時)の最大荷重とした。なお、硬さの単位はN(ニュートン)である。
1)融解させたチョコレートを直径70mm、高さ40mmの円柱状のプラスチック容器に20g充填する。
2)チョコレートが充填されたプラスチック容器を-20℃まで冷却し、チョコレートを冷凍させる。
3)レオメーターを使用して、測定速度1mm/秒の条件にて、-20℃のチョコレートの硬さを測定する。
【0077】
<チョコレートの硬さの評価2>
各チョコレートを直径70mm、高さ40mmの円柱状のプラスチック容器に20g充填し、―20℃まで冷却した後、スプーンを使ってチョコレートのさじの通りやすさを下記評価基準に従って評価した。
◎:さじ通りが非常によい
○:さじ通りがよい
×:さじ通りが悪い
【0078】
<チョコレートの風味の評価>
各チョコレートを直径70mm、高さ40mmの円柱状のプラスチック容器に20g充填し、-20℃まで冷却した後、5名の専門パネルが食し、下記評価基準に従って点数を付けた。5名の専門パネルの平均点を算出し、下記評価基準に従って評価した。評価結果は、平均点の評価が◎又は○の場合、良好な風味を有していると判断した。なお、チョコレートの風味を評価した専門パネルは、チョコレートの風味等の官能評価の訓練を定期的に受けており、チョコレートの風味等の官能評価結果に個人差が少ない。
3点:非常に良い
2点:よい
1点:ふつう
0点:よくない
<平均点>
◎:2.5点以上
○:2.0点以上2.5点未満
△:1.5点以上2.0点未満
×:1.5点未満
【0079】
【0080】
【0081】
表8、9から分かるように、実施例のチョコレートは、冷凍下で軟らかく、良好な風味を有していた。
一方、表8から分かるように、比較例5のチョコレートは、冷凍下で硬かった。また、表9から分かるように、比較例6のチョコレートは、良好な風味を有していなかった。