(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056578
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】光学系、光学機器、および光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20220404BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164402
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 俊之
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087LA01
2H087MA07
2H087MA09
2H087NA14
2H087PA06
2H087PA07
2H087PA08
2H087PA18
2H087PA19
2H087PB08
2H087PB09
2H087PB10
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】
【課題】小型でありながら良好な光学性能を有した光学系を提供する。
【解決手段】光学系OLは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、後続群GRとを有し、後続群GRは、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群GF1と、第1合焦レンズ群GF1より像側に配置されて合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群GF2とを有し、以下の条件式を満足する。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:第1レンズ群G1における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:光学系OLの全長
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、開口絞りと、後続群とを有し、
前記後続群は、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群と、前記第1合焦レンズ群より像側に配置されて合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群とを有し、
以下の条件式を満足する光学系。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【請求項2】
合焦の際、前記第1合焦レンズ群と前記第2合焦レンズ群とが光軸に沿って異なる移動量で移動する請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記後続群は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
前記第2レンズ群が前記第1合焦レンズ群であり、
前記第3レンズ群が前記第2合焦レンズ群である請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記後続群は、前記第3レンズ群の像側に並んで配置された負の屈折力を有する第4レンズ群を有する請求項3に記載の光学系。
【請求項5】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、
合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する光学系。
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項5に記載の光学系。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【請求項7】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、
合焦の際、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とが光軸に沿って移動し、
以下の条件式を満足する光学系。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【請求項8】
合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に配置された開口絞りを有する請求項5~8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
以下の条件式を満足する請求項4~9のいずれか一項に記載の光学系。
1.20<(-f4)/f<2.00
但し、f4:前記第4レンズ群の焦点距離
f:前記光学系の焦点距離
【請求項11】
以下の条件式を満足する請求項4~10のいずれか一項に記載の光学系。
1.10<β4<1.40
但し、β4:無限遠合焦時の前記第4レンズ群の横倍率
【請求項12】
前記第4レンズ群は、1枚の負レンズからなり、
以下の条件式を満足する請求項4~11のいずれか一項に記載の光学系。
28.0<νd41<45.0
但し、νd41:前記第4レンズ群の前記負レンズのd線を基準とするアッベ数
【請求項13】
以下の条件式を満足する請求項3~12のいずれか一項に記載の光学系。
0.50<f2/f3<2.00
但し、f2:前記第2レンズ群の焦点距離
f3:前記第3レンズ群の焦点距離
【請求項14】
以下の条件式を満足する請求項3~13のいずれか一項に記載の光学系。
0.04<d23/TL<0.11
但し、d23:無限遠合焦時の前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との光軸上の間隔
TL:前記光学系の全長
【請求項15】
以下の条件式を満足する請求項3~14のいずれか一項に記載の光学系。
0.60<d23/d12<1.00
但し、d23:無限遠合焦時の前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との光軸上の間隔
d12:無限遠合焦時の前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との光軸上の間隔
【請求項16】
以下の条件式を満足する請求項3~15のいずれか一項に記載の光学系。
0.10<β2/β3<0.90
但し、β2:無限遠合焦時の前記第2レンズ群の横倍率
β3:無限遠合焦時の前記第3レンズ群の横倍率
【請求項17】
以下の条件式を満足する請求項3~16のいずれか一項に記載の光学系。
0.015<{β2+(1/β2)}-2<0.170
但し、β2:無限遠合焦時の前記第2レンズ群の横倍率
【請求項18】
以下の条件式を満足する請求項3~17のいずれか一項に記載の光学系。
0.100<{β3+(1/β3)}-2<0.250
但し、β3:無限遠合焦時の前記第3レンズ群の横倍率
【請求項19】
前記第2レンズ群は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズと、第1負レンズと、第2負レンズと、第2正レンズとからなる請求項3~18のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項20】
以下の条件式を満足する請求項19に記載の光学系。
0.00<N21-N22<0.40
但し、N21:前記第2レンズ群の前記第1正レンズのd線に対する屈折率
N22:前記第2レンズ群の前記第1負レンズのd線に対する屈折率
【請求項21】
以下の条件式を満足する請求項19または20に記載の光学系。
N21>1.90
但し、N21:前記第2レンズ群の前記第1正レンズのd線に対する屈折率
【請求項22】
以下の条件式を満足する請求項19~21のいずれか一項に記載の光学系。
25.0<νd21<35.0
但し、νd21:前記第2レンズ群の前記第1正レンズのd線を基準とするアッベ数
【請求項23】
前記第3レンズ群は、1枚の正レンズを有する請求項3~22のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項24】
以下の条件式を満足する請求項23に記載の光学系。
-1.20<(R31+R32)/(R32-R31)<0.00
但し、R31:前記第3レンズ群の前記正レンズにおける物体側のレンズ面の近軸曲率半径
R32:前記第3レンズ群の前記正レンズにおける像側のレンズ面の近軸曲率半径
【請求項25】
以下の条件式を満足する請求項1~24のいずれか一項に記載の光学系。
0.00<f/f1<0.70
但し、f:前記光学系の焦点距離
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
【請求項26】
前記第1レンズ群は、少なくとも2つのレンズからなる請求項1~25のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項27】
前記第1レンズ群は、最も物体側に配置された負レンズを有する請求項1~26のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の光学系を備えて構成される光学機器。
【請求項29】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、開口絞りと、後続群とを有する光学系の製造方法であって、
前記後続群は、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群と、前記第1合焦レンズ群より像側に配置されて合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群とを有し、
以下の条件式を満足するように、
レンズ鏡筒内に各レンズを配置する光学系の製造方法。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【請求項30】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、
合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化するように、
レンズ鏡筒内に各レンズを配置する光学系の製造方法。
【請求項31】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、
合焦の際、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とが光軸に沿って移動し、
以下の条件式を満足するように、
レンズ鏡筒内に各レンズを配置する光学系の製造方法。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系、光学機器、および光学系の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型で広い画角を有する単焦点の光学系が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような光学系では、光学系の焦点距離に対して全長が長くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の本発明に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、開口絞りと、後続群とを有し、前記後続群は、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群と、前記第1合焦レンズ群より像側に配置されて合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群とを有し、以下の条件式を満足する。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【0005】
第2の本発明に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。
【0006】
第3の本発明に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、合焦の際、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とが光軸に沿って移動し、以下の条件式を満足する。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【0007】
本発明に係る光学機器は、上記光学系を備えて構成される。
【0008】
第1の本発明に係る光学系の製造方法は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、開口絞りと、後続群とを有する光学系の製造方法であって、前記後続群は、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群と、前記第1合焦レンズ群より像側に配置されて合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群とを有し、以下の条件式を満足するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【0009】
第2の本発明に係る光学系の製造方法は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する。
【0010】
第3の本発明に係る光学系の製造方法は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、合焦の際、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とが光軸に沿って移動し、以下の条件式を満足するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する。
0.03<D1/TL<0.25
但し、D1:前記第1レンズ群における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:前記光学系の全長
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施例に係る光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)はそれぞれ、第1実施例に係る光学系の無限遠合焦時、最短撮影距離合焦時の諸収差図である。
【
図3】第2実施例に係る光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図4】
図4(A)、
図4(B)はそれぞれ、第2実施例に係る光学系の無限遠合焦時、最短撮影距離合焦時の諸収差図である。
【
図5】第3実施例に係る光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)はそれぞれ、第3実施例に係る光学系の無限遠合焦時、最短撮影距離合焦時の諸収差図である。
【
図7】第4実施例に係る光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図8】
図8(A)、
図8(B)はそれぞれ、第4実施例に係る光学系の無限遠合焦時、最短撮影距離合焦時の諸収差図である。
【
図9】各実施形態に係る光学系を備えたカメラの構成を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る光学系の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態に係る光学系の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態に係る光学系の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る好ましい実施形態について説明する。まず、各実施形態に係る光学系を備えたカメラ(光学機器)を
図9に基づいて説明する。このカメラ1は、
図9に示すように、本体2と、本体2に装着される撮影レンズ3により構成される。本体2は、撮像素子4と、デジタルカメラの動作を制御する本体制御部(不図示)と、液晶画面5とを備える。撮影レンズ3は、複数のレンズ群からなる光学系OLと、各レンズ群の位置を制御するレンズ位置制御機構(不図示)とを備える。レンズ位置制御機構は、レンズ群の位置を検出するセンサと、レンズ群を光軸に沿って前後に移動させるモータと、モータを駆動する制御回路などにより構成される。
【0013】
被写体からの光は、撮影レンズ3の光学系OLにより集光されて、撮像素子4の像面I上に到達する。像面Iに到達した被写体からの光は、撮像素子4により光電変換され、デジタル画像データとして不図示のメモリに記録される。メモリに記録されたデジタル画像データは、ユーザの操作に応じて液晶画面5に表示することが可能である。なお、このカメラは、ミラーレスカメラでも、クイックリターンミラーを有した一眼レフタイプのカメ
ラであっても良い。また、
図9に示す光学系OLは、光学系を模式的に示したものであり、光学系OLのレンズ構成はこの構成に限定されるものではない。
【0014】
次に、第1実施形態に係る光学系について説明する。第1実施形態に係る光学系OLの一例としての光学系OL(1)は、
図1に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、後続群GRとを有して構成される。後続群GRは、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群GF1と、第1合焦レンズ群GF1より像側に配置されて合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群GF2とを有して構成される。なお、合焦の際、第1合焦レンズ群GF1と第2合焦レンズ群GF2とが光軸に沿って異なる移動量で移動することが望ましい。
【0015】
上記構成の下、第1実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(1)を満足する。
0.03<D1/TL<0.25 ・・・(1)
但し、D1:第1レンズ群G1における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:光学系OLの全長
【0016】
第1実施形態によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系、およびこの光学系を備えた光学機器を得ることが可能になる。第1実施形態に係る光学系OLは、
図3に示す光学系OL(2)でもよく、
図5に示す光学系OL(3)でもよく、
図7に示す光学系OL(4)でもよい。
【0017】
条件式(1)は、第1レンズ群G1における最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離と、光学系OLの全長との適切な関係を規定するものである。条件式(1)を満足することで、光学系を小型化しつつ、像面(撮像素子)に対する射出瞳位置を最適化することができる。
【0018】
条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1が薄くなりすぎるため、色収差や非点隔差を補正することが困難になる。また、第1レンズ群G1を構成するレンズの縁厚および中心厚が薄くなりすぎるため、レンズの製造が困難になる。条件式(1)の下限値を0.05、さらに0.07に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0019】
条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、射出瞳位置を像面(撮像素子)から遠くすることが困難になる。射出瞳位置を像面(撮像素子)から遠くしようとすると、像面湾曲を補正することが困難になる。条件式(1)の上限値を0.22、さらに0.20に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0020】
第1実施形態に係る光学系OLにおいて、後続群GRは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とを有し、第2レンズ群G2が第1合焦レンズ群GF1であり、第3レンズ群G3が第2合焦レンズ群GF2であることが望ましい。さらに、後続群GRは、第3レンズ群G3の像側に並んで配置された負の屈折力を有する第4レンズ群G4を有することが望ましい。これにより、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系を得ることができる。
【0021】
次に、第2実施形態に係る光学系について説明する。第2実施形態に係る光学系OLの一例としての光学系OL(1)は、
図1に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とを有し
て構成される。合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。
【0022】
第2実施形態によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系、およびこの光学系を備えた光学機器を得ることが可能になる。第2実施形態に係る光学系OLは、
図3に示す光学系OL(2)でもよく、
図5に示す光学系OL(3)でもよく、
図7に示す光学系OL(4)でもよい。第2実施形態に係る光学系OLは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に配置された開口絞りSを有することが望ましい。
【0023】
第2実施形態に係る光学系OLは、前述の条件式(1)を満足することが望ましい。条件式(1)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、光学系を小型化しつつ、像面(撮像素子)に対する射出瞳位置を最適化することができる。また、条件式(1)の下限値を0.05、さらに0.07に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。条件式(1)の上限値を0.22、さらに0.20に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0024】
次に、第3実施形態に係る光学系について説明する。第3実施形態に係る光学系OLの一例としての光学系OL(1)は、
図1に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とを有して構成される。合焦の際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが光軸に沿って移動する。なお、合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化することが望ましい。
【0025】
上記構成の下、第3実施形態に係る光学系OLは、前述の条件式(1)を満足する。第3実施形態によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系、およびこの光学系を備えた光学機器を得ることが可能になる。第3実施形態に係る光学系OLは、
図3に示す光学系OL(2)でもよく、
図5に示す光学系OL(3)でもよく、
図7に示す光学系OL(4)でもよい。第3実施形態に係る光学系OLは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に配置された開口絞りSを有することが望ましい。
【0026】
また、条件式(1)を満足することで、第1実施形態の場合と同様に、光学系を小型化しつつ、像面(撮像素子)に対する射出瞳位置を最適化することができる。また、条件式(1)の下限値を0.05、さらに0.07に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。条件式(1)の上限値を0.22、さらに0.20に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0027】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
1.20<(-f4)/f<2.00 ・・・(2)
但し、f4:第4レンズ群G4の焦点距離
f:光学系OLの焦点距離
【0028】
条件式(2)は、第4レンズ群G4の屈折力について適切な範囲を規定するものである。条件式(2)を満足することで、倍率色収差や歪曲収差、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0029】
条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、第4レンズ群G4の屈折力が強くなりすぎるため、倍率色収差や歪曲収差を補正することが困難になる。また、射出瞳位置を像面(撮像素子)から遠くすることが困難になる。条件式(2)の下限値を1.40、さらに1
.50に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0030】
条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、第4レンズ群G4の屈折力が弱くなりすぎるため、像面湾曲を補正することが困難になる。条件式(2)の上限値を1.85、さらに1.80に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0031】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
1.10<β4<1.40 ・・・(3)
但し、β4:無限遠合焦時の第4レンズ群G4の横倍率
【0032】
条件式(3)は、第4レンズ群G4の横倍率について適切な範囲を規定するものである。条件式(3)を満足することで、光学系を小型化しつつ、良好な光学性能を得ることができる。
【0033】
条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、光学系が大型化すると同時に、像面湾曲を補正することが困難になる。条件式(3)の下限値を1.17に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0034】
条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、像面湾曲や歪曲収差の補正が困難になる。条件式(3)の上限値を1.35に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0035】
第1~第3実施形態に係る光学系OLにおいて、第4レンズ群G4は、1枚の負レンズからなり、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
28.0<νd41<45.0 ・・・(4)
但し、νd41:第4レンズ群G4の負レンズのd線を基準とするアッベ数
【0036】
条件式(4)は、第4レンズ群G4を構成する負レンズのアッベ数について適切な範囲を規定するものである。条件式(4)を満足することで、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0037】
条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、倍率色収差の補正が過剰となる。条件式(4)の下限値を30.0、さらに32.0に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0038】
条件式(4)の対応値が上限値を上回ると、倍率色収差の補正が不足となる。条件式(4)の上限値を43.0、さらに41.0に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0039】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
0.50<f2/f3<2.00 ・・・(5)
但し、f2:第2レンズ群G2の焦点距離
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
【0040】
条件式(5)は、第2レンズ群G2の焦点距離と、第3レンズ群G3の焦点距離との適切な関係を規定するものである。条件式(5)を満足することで、非点隔差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0041】
条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、第3レンズ群G3の屈折力が弱くなりすぎるため、非点隔差を補正することが困難になる。条件式(5)の下限値を0.60、さらに0.70に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0042】
条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、第3レンズ群G3の屈折力が強くなりすぎるため、像面湾曲を補正することが困難になる。条件式(5)の上限値を1.90、さらに1.80に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0043】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
0.04<d23/TL<0.11 ・・・(6)
但し、d23:無限遠合焦時の第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との光軸上の間隔
TL:光学系OLの全長
【0044】
条件式(6)は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との光軸上の間隔と、光学系OLの全長との適切な関係を規定するものである。条件式(6)を満足することで、合焦に必要な各レンズ群の移動スペースを確保するとともに、至近距離合焦時においても良好な光学性能を得ることができる。
【0045】
条件式(6)の対応値が下限値を下回ると、合焦に必要な各レンズ群の移動スペースが不足する上、至近距離合焦時の非点収差の補正が困難になる。条件式(6)の下限値を0.05に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0046】
条件式(6)の対応値が上限値を上回ると、至近距離合焦時のコマ収差の補正が困難になる。条件式(6)の上限値を0.10に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0047】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
0.60<d23/d12<1.00 ・・・(7)
但し、d23:無限遠合焦時の第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との光軸上の間隔
d12:無限遠合焦時の第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との光軸上の間隔
【0048】
条件式(7)は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との光軸上の間隔と、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との光軸上の間隔との適切な関係を規定するものである。条件式(7)を満足することで、合焦に必要な各レンズ群の移動スペースを確保するとともに、至近距離合焦時においても良好な光学性能を得ることができる。
【0049】
条件式(7)の対応値が下限値を下回ると、至近距離合焦時の非点収差の補正が困難になる。条件式(7)の下限値を0.67に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0050】
条件式(7)の対応値が上限値を上回ると、至近距離合焦時のコマ収差の補正が困難になる。条件式(7)の上限値を0.92に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0051】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
0.10<β2/β3<0.90 ・・・(8)
但し、β2:無限遠合焦時の第2レンズ群G2の横倍率
β3:無限遠合焦時の第3レンズ群G3の横倍率
【0052】
条件式(8)は、第2レンズ群G2の横倍率と、第3レンズ群G3の横倍率との適切な関係を規定するものである。条件式(8)を満足することで、至近距離合焦時においても良好な光学性能を得ることができる。
【0053】
条件式(8)の対応値が下限値を下回ると、至近距離合焦時の非点収差の補正が困難になる。条件式(8)の下限値を0.18に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0054】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、至近距離合焦時のコマ収差の補正が困難になる。条件式(8)の上限値を0.80に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0055】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
0.015<{β2+(1/β2)}-2<0.170 ・・・(9)
但し、β2:無限遠合焦時の第2レンズ群G2の横倍率
【0056】
条件式(9)は、第2レンズ群G2の横倍率について適切な範囲を規定するものである。条件式(9)を満足することで、無限遠合焦状態から至近距離合焦状態に至るまでの第2レンズ群の移動量を少なくすることができ、レンズの小型化が可能になるとともに、良好な光学性能を得ることができる。
【0057】
条件式(9)の対応値が下限値を下回ると、球面収差および軸上色収差の補正が困難になる。条件式(9)の下限値を0.020に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0058】
条件式(9)の対応値が上限値を上回ると、無限遠合焦状態から至近距離合焦状態に至るまでの第2レンズ群の移動量が大きくなり、レンズが大型化するとともに、非点収差の補正が困難になる。条件式(9)の上限値を0.150に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0059】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
0.100<{β3+(1/β3)}-2<0.250 ・・・(10)
但し、β3:無限遠合焦時の第3レンズ群G3の横倍率
【0060】
条件式(10)は、第3レンズ群G3の横倍率について適切な範囲を規定するものである。条件式(10)を満足することで、無限遠合焦状態から至近距離合焦状態に至るまでの第3レンズ群の移動量を少なくすることができ、レンズの小型化が可能になるとともに、良好な光学性能を得ることができる。
【0061】
条件式(10)の対応値が下限値を下回ると、像面湾曲や非点収差の補正が困難になる。条件式(10)の下限値を0.160に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0062】
条件式(10)の対応値が上限値を上回ると、無限遠合焦状態から至近距離合焦状態に至るまでの第3レンズ群の移動量が大きくなり、レンズが大型化するとともに、非点収差の補正が困難になる。条件式(10)の上限値を0.230に設定することで、各実施形
態の効果をより確実なものとすることができる。
【0063】
第1~第3実施形態に係る光学系OLにおいて、第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズと、第1負レンズと、第2負レンズと、第2正レンズとからなることが望ましい。また、第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズおよび第1負レンズからなる正レンズ成分と、第2負レンズと、第2正レンズとからなることが望ましい。これにより、軸上色収差、球面収差、コマ収差、非点隔差等を良好に補正しつつ、ペッツバール和を適切に低減させ像面湾曲を良好に補正することができる。
【0064】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
0.00<N21-N22<0.40 ・・・(11)
但し、N21:第2レンズ群G2の第1正レンズのd線に対する屈折率
N22:第2レンズ群G2の第1負レンズのd線に対する屈折率
【0065】
条件式(11)は、第2レンズ群G2における第1正レンズの屈折率と第1負レンズの屈折率との差について適切な範囲を規定するものである。条件式(11)を満足することで、像面湾曲や球面収差を良好に補正することができる。
【0066】
条件式(11)の対応値が下限値を下回ると、像面湾曲を補正することが困難になる。条件式(11)の下限値を0.10、さらに0.15に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0067】
条件式(11)の対応値が上限値を上回ると、球面収差を補正することが困難になる。条件式(11)の上限値を0.35、さらに0.30に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0068】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
N21>1.90 ・・・(12)
但し、N21:第2レンズ群G2の第1正レンズのd線に対する屈折率
【0069】
条件式(12)は、第2レンズ群G2における第1正レンズの屈折率について適切な範囲を規定するものである。条件式(12)を満足することで、球面収差やコマ収差を悪化させることなくペッツバール和を低減し、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0070】
条件式(12)の対応値が下限値を下回ると、ペッツバール和が増大し、像面湾曲の補正が困難になる。条件式(12)の下限値を1.95に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0071】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
25.0<νd21<35.0 ・・・(13)
但し、νd21:第2レンズ群G2の第1正レンズのd線を基準とするアッベ数
【0072】
条件式(13)は、第2レンズ群G2における第1正レンズのアッベ数について適切な範囲を規定するものである。条件式(13)を満足することで、軸上色収差を良好に補正することができる。
【0073】
条件式(13)の対応値が下限値を下回ると、軸上色収差が補正不足となり、良好な補正が困難になる。条件式(13)の下限値を28.0に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0074】
条件式(13)の対応値が上限値を上回ると、軸上色収差が補正過剰となり、良好な補正が困難になる。条件式(13)の上限値を31.0に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0075】
第1~第3実施形態に係る光学系OLにおいて、第3レンズ群G3は、1枚の正レンズを有することが望ましい。これにより、光学系を小型化しつつ、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0076】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
-1.20<(R31+R32)/(R32-R31)<0.00 ・・・(14)
但し、R31:第3レンズ群G3の正レンズにおける物体側のレンズ面の近軸曲率半径
R32:第3レンズ群G3の正レンズにおける像側のレンズ面の近軸曲率半径
【0077】
条件式(14)は、第3レンズ群G3を構成する正レンズのシェイプファクターについて適切な範囲を規定するものである。条件式(14)を満足することで、球面収差と非点収差を良好に補正することができる。
【0078】
条件式(14)の対応値が下限値を下回ると、球面収差の補正が困難になる。条件式(14)の下限値を-1.05に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0079】
条件式(14)の対応値が上限値を上回ると、非点収差の補正が困難になる。条件式(14)の上限値を-0.10に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0080】
第1~第3実施形態に係る光学系OLは、以下の条件式(15)を満足することが望ましい。
0.00<f/f1<0.70 ・・・(15)
但し、f:光学系OLの焦点距離
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
【0081】
条件式(15)は、第1レンズ群G1の屈折力について適切な範囲を規定するものである。条件式(15)を満足することで、球面収差や、像面湾曲および非点隔差を良好に補正することができる。
【0082】
条件式(15)の対応値が下限値を下回ると、球面収差を補正することが困難になる。条件式(15)の下限値を0.10、さらに0.13に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0083】
条件式(15)の対応値が上限値を上回ると、像面湾曲および非点隔差を補正することが困難になる。条件式(15)の上限値を0.50、さらに0.35に設定することで、各実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0084】
第1~第3実施形態に係る光学系OLにおいて、第1レンズ群G1は、少なくとも2つのレンズからなることが望ましい。これにより、軸上色収差、球面収差、コマ収差を良好
に補正することができる。
【0085】
第1~第3実施形態に係る光学系OLにおいて、第1レンズ群G1は、最も物体側に配置された負レンズを有することが望ましい。これにより、非点収差を良好に補正することができる。
【0086】
続いて、
図10を参照しながら、第1実施形態に係る光学系OLの製造方法について概説する。まず、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、後続群GRとを配置する(ステップST1)。次に、後続群GRに、合焦の際に光軸に沿って移動する第1合焦レンズ群GF1と、第1合焦レンズ群GF1より像側で合焦の際に光軸に沿って移動する第2合焦レンズ群とを配置する(ステップST2)。そして、少なくとも上記条件式(1)を満足するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する(ステップST3)。このような製造方法によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系を製造することが可能になる。
【0087】
続いて、
図11を参照しながら、第2実施形態に係る光学系OLの製造方法について概説する。まず、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置する(ステップST11)。そして、合焦の際、隣り合う各レンズ群の間隔が変化するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する(ステップST12)。このような製造方法によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系を製造することが可能になる。
【0088】
続いて、
図12を参照しながら、第3実施形態に係る光学系OLの製造方法について概説する。まず、光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置する(ステップST21)。次に、合焦の際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが光軸に沿って移動するように構成する(ステップST22)。そして、少なくとも上記条件式(1)を満足するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する(ステップST23)。このような製造方法によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系を製造することが可能になる。
【実施例0089】
以下、各実施形態の実施例に係る光学系OLを図面に基づいて説明する。
図1、
図3、
図5、
図7は、第1~第4実施例に係る光学系OL{OL(1)~OL(4)}の構成及び屈折力配分を示す断面図である。第1~第4実施例に係る光学系OL(1)~OL(4)の断面図では、無限遠から近距離物体へ合焦する際の各レンズ群の光軸に沿った移動方向を矢印で示している。
【0090】
これら
図1、
図3、
図5、
図7において、各レンズ群を符号Gと数字の組み合わせにより、各レンズを符号Lと数字の組み合わせにより、それぞれ表している。この場合において、符号、数字の種類および数が大きくなって煩雑化するのを防止するため、実施例毎にそれぞれ独立して符号と数字の組み合わせを用いてレンズ群等を表している。このため、実施例間で同一の符号と数字の組み合わせが用いられていても、同一の構成であることを意味するものでは無い。
【0091】
以下に表1~表4を示すが、この内、表1は第1実施例、表2は第2実施例、表3は第3実施例、表4は第4実施例における各諸元データを示す表である。各実施例では収差特
性の算出対象として、d線(波長λ=587.6nm)、g線(波長λ=435.8nm)を選んでいる。
【0092】
[全体諸元]の表において、fはレンズ全系の焦点距離、FNОはFナンバー、ωは半画角(最大入射角、単位は「°」)、Yは像高を示す。TLは光軸上でのレンズ最前面からレンズ最終面までの距離にBFを加えた距離を示し、BFは光軸上でのレンズ最終面から像面Iまでの距離(バックフォーカス)を示す。また、BFaはバックフォーカスの空気換算長を示す。また、[全体諸元]の表において、β2は、無限遠合焦時の第2レンズ群の横倍率を示す。β3は、無限遠合焦時の第3レンズ群の横倍率を示す。β4は、無限遠合焦時の第4レンズ群の横倍率を示す。
【0093】
[レンズ諸元]の表において、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序を示し、Rは各光学面の曲率半径(曲率中心が像側に位置する面を正の値としている)、Dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離である面間隔、ndは光学部材の材料のd線に対する屈折率、νdは光学部材の材料のd線を基準とするアッベ数をそれぞれ示す。曲率半径の「∞」は平面又は開口を、(絞りS)は開口絞りSをそれぞれ示す。空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。光学面が非球面であ
る場合には面番号に*印を付して、曲率半径Rの欄には近軸曲率半径を示している。
【0094】
[非球面データ]の表には、[レンズ諸元]に示した非球面について、その形状を次式(A)で示す。ここで、yは光軸と垂直な方向の高さを、X(y)は高さyにおける非球面の頂点の接平面から当該非球面までの光軸方向に沿った距離(サグ量)を、Rは基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)を、κは円錐定数を、Aiは第i次の非球面係数を示す。「E-n」は、「×10-n」を示す。例えば、1.234E-05=1.234×10-5である。なお、2次の非球面係数A2は0であり、その記載を省略している。
【0095】
X(y)=(y2/R)/{1+(1-κ×y2/R2)1/2}+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10+A12×y12+A14×y14 ・・・(A)
【0096】
[可変間隔データ]の表には、[レンズ諸元]の表において面間隔が(Di)となっている面番号iでの面間隔を示す。[可変間隔データ]の表において、fはレンズ全系の焦点距離を、βは撮影倍率をそれぞれ示す。D0は物体から光学系の最も物体側のレンズ面までの距離を示す。なお、無限遠は無限遠物体への合焦時を、近距離は近距離物体(最短撮影距離物体)への合焦時をそれぞれ示す。
【0097】
[レンズ群データ]の表には、各レンズ群のそれぞれの始面(最も物体側の面)と焦点距離を示す。
【0098】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0099】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での重複する説明は省略する。
【0100】
(第1実施例)
第1実施例について、
図1~
図2および表1を用いて説明する。
図1は、第1実施例に係る光学系の無限遠合焦状態におけるレンズ構成を示す図である。第1実施例に係る光学系OL(1)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第
3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。無限遠物体から近距離物体(最短撮影距離物体)への合焦の際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが光軸に沿って異なる移動量で物体側へ移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。なお、合焦の際、第1レンズ群G1、開口絞りS、および第4レンズ群G4は、像面Iに対して位置が固定される。各レンズ群記号に付けている符号(+)もしくは(-)は各レンズ群の屈折力を示し、このことは以下の全ての実施例でも同様である。
【0101】
本実施例では、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とが、全体として正の屈折力を有する後続群GRを構成する。また、第2レンズ群G2が後続群GRにおける第1合焦レンズ群GF1に該当する。第3レンズ群G3が後続群GRにおける第2合焦レンズ群GF2に該当する。
【0102】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負レンズL11と正レンズL12とが接合された正の屈折力を有する接合レンズから構成される。すなわち、第1レンズ群G1は、1つのレンズ成分から構成される。正レンズL12は、像側のレンズ面が非球面である。
【0103】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズL21と第1負レンズL22とが接合された正の屈折力を有する接合レンズと、第2負レンズL23と、第2正レンズL24とから構成される。第2正レンズL24は、ガラス製レンズ本体の像側の面に樹脂層が設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層の像側の面が非球面であり、第2正レンズL24は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]において、面番号10がレンズ本体の物体側の面、面番号11がレンズ本体の像側の面および樹脂層の物体側の面(両者が接合する面)、面番号12が樹脂層の像側の面を示す。
【0104】
第3レンズ群G3は、1枚の正レンズ31から構成される。正レンズ31は、像側のレンズ面が非球面である。
【0105】
第4レンズ群G4は、1枚の負レンズ41から構成される。第4レンズ群G4の像側に、像面Iが配置される。第4レンズ群G4と像面Iとの間には、抜き差し交換可能な光学フィルターFLが配設されている。光学フィルターFLとして、例えば、NCフィルター(ニュートラルカラーフィルター)や、カラーフィルター、偏光フィルター、NDフィルター(減光フィルター)、IRカットフィルター(赤外線カットフィルター)、UVカットフィルター(紫外線カットフィルター)等が用いられる。なお、後述する第2~第4実施例に記載の光学フィルターFLについても同様である。また、像面Iには、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示せず)が配置される。
【0106】
以下の表1に、第1実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0107】
(表1)
[全体諸元]
f=28.819
FNO=2.867
ω=37.317
Y=21.700
TL=50.000
Bf=0.860
Bfa=11.955
β2=0.441
β3=0.571
β4=1.266
[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
物体面 ∞
1 -60.48802 0.700 1.59270 35.27
2 11.61464 3.100 1.85135 40.13
3* 561.56916 1.000
4 ∞ (D4) (絞りS)
5 35.50000 2.500 2.00100 29.12
6 -14.64116 0.700 1.72825 28.38
7 30.24772 3.950
8 -9.76003 0.900 1.84666 23.80
9 -30.93498 0.200
10 ∞ 6.300 1.77250 49.62
11 -17.91507 0.100 1.56093 36.64
12* -17.00000 (D12)
13 414.76419 5.100 1.80139 45.46
14* -27.47335 (D14)
15 -34.00000 1.100 1.67270 32.19
16 500.00000 10.040
17 ∞ 1.600 1.51680 63.88
18 ∞ BF
像面 ∞
[非球面データ]
第3面
κ=1.00000E+00,A4=1.25556E-05,A6=1.12657E-07,A8=0.00000E+00
A10=-5.00000E-12,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
第12面
κ=1.00000E+00,A4=2.16700E-05,A6=-5.98193E-08,A8=8.79250E-10
A10=-1.62238E-12,A12=4.08020E-15,A14=0.00000E+00
第14面
κ=1.00000E+00,A4=1.90302E-05,A6=5.11786E-08,A8=-1.22839E-10
A10=1.54556E-13,A12=-5.38110E-17,A14=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
f=28.819 β=-0.196
D0 ∞ 140.000
D4 3.850 2.550
D12 4.300 1.296
D14 3.700 8.004
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 90.286
G2 5 57.993
G3 13 32.318
G4 15 -47.285
【0108】
図2(A)は、第1実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図である。
図2(B)は、第1実施例に係る光学系の最短撮影距離合焦時の諸収差図である。無限遠合焦時の各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。最短撮影距離合焦時の
各収差図において、NAは開口数、Yは像高をそれぞれ示す。なお、球面収差図では最大口径に対応するFナンバーまたは開口数の値を示し、非点収差図および歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。dはd線(波長λ=587.6nm)、gはg線(波長λ=435.8nm)をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0109】
各諸収差図より、第1実施例に係る光学系は、無限遠合焦時から最短撮影距離合焦時までの全域において、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0110】
(第2実施例)
第2実施例について、
図3~
図4および表2を用いて説明する。
図3は、第2実施例に係る光学系の無限遠合焦状態におけるレンズ構成を示す図である。第2実施例に係る光学系OL(2)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。無限遠物体から近距離物体(最短撮影距離物体)への合焦の際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが光軸に沿って異なる移動量で物体側へ移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。なお、合焦の際、第1レンズ群G1、開口絞りS、および第4レンズ群G4は、像面Iに対して位置が固定される。
【0111】
本実施例では、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とが、全体として正の屈折力を有する後続群GRを構成する。また、第2レンズ群G2が後続群GRにおける第1合焦レンズ群GF1に該当する。第3レンズ群G3が後続群GRにおける第2合焦レンズ群GF2に該当する。
【0112】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負レンズL11と、正レンズL12とから構成される。
【0113】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズL21と第1負レンズL22とが接合された正の屈折力を有する接合レンズと、第2負レンズL23と、第2正レンズL24とから構成される。第2正レンズL24は、ガラス製レンズ本体の像側の面に樹脂層が設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層の像側の面が非球面であり、第2正レンズL24は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]において、面番号11がレンズ本体の物体側の面、面番号12がレンズ本体の像側の面および樹脂層の物体側の面(両者が接合する面)、面番号13が樹脂層の像側の面を示す。
【0114】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負レンズ31と、正レンズ32とから構成される。負レンズ31は、両側のレンズ面が非球面である。
【0115】
第4レンズ群G4は、1枚の負レンズ41から構成される。第4レンズ群G4の像側に、像面Iが配置される。第4レンズ群G4と像面Iとの間には、抜き差し交換可能な光学フィルターFLが配設されている。また、像面Iには、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示せず)が配置される。
【0116】
以下の表2に、第2実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0117】
(表2)
[全体諸元]
f=28.824
FNO=2.909
ω=38.029
Y=21.700
TL=54.610
Bf=0.860
Bfa=13.138
β2=0.163
β3=0.721
β4=1.310
[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
物体面 ∞
1 -67.65263 0.800 1.53172 48.78
2 18.07229 1.030
3 19.61204 2.300 1.80400 46.60
4 ∞ 1.000
5 ∞ (D5) (絞りS)
6 39.03942 3.000 2.00100 29.12
7 -14.01800 0.700 1.80518 25.45
8 44.52125 3.457
9 -11.08066 0.900 1.80809 22.74
10 -29.93301 0.150
11 ∞ 6.550 1.80400 46.60
12 -17.50329 0.140 1.56093 36.64
13* -16.27553 (D13)
14* -26.85154 2.000 1.53113 55.73
15* -28.96313 0.200
16 ∞ 4.500 1.80400 46.60
17 -36.85132 (D17)
18 -34.46648 1.200 1.64769 33.73
19 173.14403 11.223
20 ∞ 1.600 1.51680 63.88
21 ∞ BF
像面 ∞
[非球面データ]
第13面
κ=1.00000E+00,A4=2.85655E-05,A6=-1.38279E-08,A8=5.79289E-10
A10=9.06875E-13,A12=-2.25760E-15,A14=1.33070E-17
第14面
κ=1.00000E+00,A4=2.41081E-05,A6=9.24872E-08,A8=-6.64821E-10
A10=1.30136E-12,A12=8.89760E-16,A14=0.00000E+00
第15面
κ=1.00000E+00,A4=3.97489E-05,A6=2.41498E-07,A8=-1.14609E-09
A10=2.49848E-12,A12=-2.3864E-15,A14=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
f=28.824 β=-0.203
D0 ∞ 135.390
D5 4.850 3.169
D13 4.450 1.339
D17 3.700 8.492
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 187.243
G2 6 34.689
G3 14 46.577
G4 18 -44.279
【0118】
図4(A)は、第2実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図である。
図4(B)は、第2実施例に係る光学系の最短撮影距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第2実施例に係る光学系は、無限遠合焦時から最短撮影距離合焦時までの全域において、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0119】
(第3実施例)
第3実施例について、
図5~
図6および表3を用いて説明する。
図5は、第3実施例に係る光学系の無限遠合焦状態におけるレンズ構成を示す図である。第3実施例に係る光学系OL(3)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。無限遠物体から近距離物体(最短撮影距離物体)への合焦の際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが光軸に沿って異なる移動量で物体側へ移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。なお、合焦の際、第1レンズ群G1、開口絞りS、および第4レンズ群G4は、像面Iに対して位置が固定される。
【0120】
本実施例では、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とが、全体として正の屈折力を有する後続群GRを構成する。また、第2レンズ群G2が後続群GRにおける第1合焦レンズ群GF1に該当する。第3レンズ群G3が後続群GRにおける第2合焦レンズ群GF2に該当する。
【0121】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1負レンズL11と、第2負レンズL12と、正レンズL13と第3負レンズL14とが接合された正の屈折力を有する接合レンズとから構成される。第2負レンズL12は、両側のレンズ面が非球面である。
【0122】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズL21と第1負レンズL22とが接合された正の屈折力を有する接合レンズと、第2負レンズL23と、第2正レンズL24とから構成される。第2正レンズL24は、像側のレンズ面が非球面である。
【0123】
第3レンズ群G3は、1枚の正レンズ31から構成される。正レンズ31は、像側のレンズ面が非球面である。
【0124】
第4レンズ群G4は、1枚の負レンズ41から構成される。第4レンズ群G4の像側に、像面Iが配置される。第4レンズ群G4と像面Iとの間には、抜き差し交換可能な光学フィルターFLが配設されている。また、像面Iには、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示せず)が配置される。
【0125】
以下の表3に、第3実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0126】
(表3)
[全体諸元]
f=28.805
FNO=2.067
ω=37.270
Y=21.700
TL=59.500
Bf=0.800
Bfa=11.855
β2=0.427
β3=0.565
β4=1.245
[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
物体面 ∞
1 40.41078 1.000 1.48749 70.31
2 16.22403 3.600
3* -70.24185 1.300 1.82115 24.06
4* 148.16663 0.200
5 20.51937 4.000 1.88300 40.66
6 -32.92528 1.100 1.59270 35.27
7 65.09547 2.000
8 ∞ (D8) (絞りS)
9 44.75110 3.300 2.00100 29.12
10 -20.22294 0.800 1.75520 27.57
11 61.74745 4.400
12 -12.31509 0.900 1.84666 23.80
13 -49.27479 0.200
14 -1190.54970 6.300 1.76802 49.23
15* -19.49783 (D15)
16 76.50071 4.700 1.77377 47.18
17* -42.68869 (D17)
18 -34.74758 1.200 1.64769 33.73
19 714.84773 10.000
20 ∞ 1.600 1.51680 63.88
21 ∞ BF
像面 ∞
[非球面データ]
第3面
κ=1.00000E+00,A4=-3.81302E-05,A6=1.79518E-07,A8=0.00000E+00
A10=0.00000E+00,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
第4面
κ=1.00000E+00,A4=-2.32360E-05,A6=2.17814E-07,A8=2.83578E-10
A10=0.00000E+00,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
第15面
κ=1.00000E+00,A4=-3.48371E-06,A6=1.39242E-08,A8=1.83753E-10
A10=2.97697E-13,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
第17面
κ=1.00000E+00,A4=2.81807E-05,A6=-1.57952E-08,A8=4.54301E-11
A10=-1.20045E-13,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
f=28.805 β=-0.124
D0 ∞ 220.500
D8 4.000 3.015
D15 3.500 1.629
D17 4.600 7.456
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 95.848
G2 9 63.426
G3 16 36.030
G4 18 -51.129
【0127】
図6(A)は、第3実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図である。
図6(B)は、第3実施例に係る光学系の最短撮影距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第3実施例に係る光学系は、無限遠合焦時から最短撮影距離合焦時までの全域において、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0128】
(第4実施例)
第4実施例について、
図7~
図8および表4を用いて説明する。
図7は、第4実施例に係る光学系の無限遠合焦状態におけるレンズ構成を示す図である。第4実施例に係る光学系OL(4)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。無限遠物体から近距離物体(最短撮影距離物体)への合焦の際、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とが光軸に沿って異なる移動量で物体側へ移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。なお、合焦の際、第1レンズ群G1、開口絞りS、および第4レンズ群G4は、像面Iに対して位置が固定される。
【0129】
本実施例では、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とが、全体として正の屈折力を有する後続群GRを構成する。また、第2レンズ群G2が後続群GRにおける第1合焦レンズ群GF1に該当する。第3レンズ群G3が後続群GRにおける第2合焦レンズ群GF2に該当する。
【0130】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負レンズL11と、正レンズL12とから構成される。正レンズL12は、ガラス製レンズ本体の像側の面に樹脂層が設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層の像側の面が非球面であり、正レンズL12は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]において、面番号3がレンズ本体の物体側の面、面番号4がレンズ本体の像側の面および樹脂層の物体側の面(両者が接合する面)、面番号5が樹脂層の像側の面を示す。
【0131】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、第1正レンズL21と第1負レンズL22とが接合された正の屈折力を有する接合レンズと、第2負レンズL23と、第2正レンズL24とから構成される。第2正レンズL24は、像側のレンズ面が非球面である。
【0132】
第3レンズ群G3は、1枚の正レンズ31から構成される。正レンズ31は、像側のレンズ面が非球面である。
【0133】
第4レンズ群G4は、1枚の負レンズ41から構成される。第4レンズ群G4の像側に、像面Iが配置される。第4レンズ群G4と像面Iとの間には、抜き差し交換可能な光学フィルターFLが配設されている。また、像面Iには、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(図示せず)が配置される。
【0134】
以下の表4に、第4実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0135】
(表4)
[全体諸元]
f=28.802
FNO=2.861
ω=37.036
Y=21.700
TL=50.042
Bf=0.860
Bfa=11.697
β2=0.406
β3=0.679
β4=1.248
[レンズ諸元]
面番号 R D nd νd
物体面 ∞
1 -33.60557 0.900 1.59270 35.27
2 24.37821 0.300
3 21.36640 2.400 1.84850 43.79
4 -64.21743 0.100 1.56093 36.64
5* -64.21743 1.000
6 ∞ (D6) (絞りS)
7 48.57194 2.700 2.00100 29.12
8 -16.54854 0.700 1.71736 29.57
9 50.38696 3.800
10 -11.12244 1.000 1.80809 22.74
11 -43.70934 0.200
12 -628.97652 7.000 1.75501 51.15
13* -16.56020 (D13)
14 326.40430 3.900 1.76802 49.23
15* -38.59856 (D15)
16 -23.79495 1.000 1.58144 40.98
17 -129.23419 9.782
18 ∞ 1.600 1.51680 63.88
19 ∞ BF
像面 ∞
[非球面データ]
第5面
κ=5.65120E+00,A4=1.32957E-05,A6=3.71890E-08,A8=0.00000E+00
A10=0.00000E+00,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
第13面
κ=-5.67700E-01,A4=-1.05001E-05,A6=-8.81582E-08,A8=4.96402E-10
A10=-7.84585E-13,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
第15面
κ=1.00000E+00,A4=1.63200E-05,A6=5.26856E-08,A8=-1.38087E-10
A10=2.83555E-13,A12=0.00000E+00,A14=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
f=28.802 β=-0.199
D0 ∞ 139.958
D6 4.100 2.428
D13 4.300 0.956
D15 4.400 9.416
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 83.642
G2 7 47.380
G3 14 45.152
G4 16 -50.335
【0136】
図8(A)は、第4実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図である。
図8(B)は、第4実施例に係る光学系の最短撮影距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第4実施例に係る光学系は、無限遠合焦時から最短撮影距離合焦時までの全域において、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0137】
次に、[条件式対応値]の表を下記に示す。この表には、各条件式(1)~(15)に対応する値を、全実施例(第1~第4実施例)について纏めて示す。
条件式(1) 0.03<D1/TL<0.25
条件式(2) 1.20<(-f4)/f<2.00
条件式(3) 1.10<β4<1.40
条件式(4) 28.0<νd41<45.0
条件式(5) 0.50<f2/f3<2.00
条件式(6) 0.04<d23/TL<0.11
条件式(7) 0.60<d23/d12<1.00
条件式(8) 0.10<β2/β3<0.90
条件式(9) 0.015<{β2+(1/β2)}-2<0.170
条件式(10) 0.100<{β3+(1/β3)}-2<0.250
条件式(11) 0.00<N21-N22<0.40
条件式(12) N21>1.90
条件式(13) 25.0<νd21<35.0
条件式(14) -1.20<(R31+R32)/(R32-R31)<0.00
条件式(15) 0.00<f/f1<0.70
【0138】
[条件式対応値]
条件式 第1実施例 第2実施例 第3実施例 第4実施例
(1) 0.076 0.076 0.188 0.074
(2) 1.641 1.536 1.775 1.748
(3) 1.266 1.310 1.245 1.248
(4) 32.190 33.730 33.730 40.980
(5) 1.794 0.745 1.760 1.049
(6) 0.086 0.081 0.059 0.086
(7) 0.887 0.761 0.700 0.843
(8) 0.772 0.226 0.756 0.598
(9) 0.136 0.025 0.130 0.122
(10) 0.186 0.225 0.183 0.216
(11) 0.273 0.196 0.246 0.284
(12) 2.001 2.001 2.001 2.001
(13) 29.120 29.120 29.120 29.120
(14) -0.876 -1.000 -0.284 -0.789
(15) 0.319 0.154 0.301 0.344
【0139】
上記各実施例によれば、光学系の焦点距離に対して全長が短くなり、小型でありながら良好な光学性能を有した光学系を実現することができる。
【0140】
上記各実施例は本願発明の一具体例を示しているものであり、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
以下の内容は、本実施形態の光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
【0142】
本実施形態の光学系の実施例として4群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、5群等)の変倍光学系を構成することもできる。具体的には、本実施形態の光学系の最も物体側や最も像面側にレンズ又はレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、レンズ群とは、合焦時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。
【0143】
レンズ群または部分レンズ群を光軸に垂直な方向の成分を持つように移動させ、または、光軸を含む面内方向に回転移動(揺動)させて、手ブレによって生じる像ブレを補正する防振レンズ群としても良い。
【0144】
レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工および組立調整が容易になり、加工および組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。
【0145】
レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでも構わない。また、レンズ面は回折面としても良く、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしても良い。
【0146】
開口絞りは第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置されるのが好ましいが、開口絞りとしての部材を設けずに、レンズの枠でその役割を代用しても良い。
【0147】
各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し、コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施しても良い。