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特開2022-56906ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法
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  • 特開-ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056906
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20220404BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20220404BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220404BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C08L29/04 G ZBP
H01L21/304 622D
C09K3/14 550Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164901
(22)【出願日】2020-09-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】丹所 久典
(72)【発明者】
【氏名】土屋 公亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】秋月 麗子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 隆之介
【テーマコード(参考)】
4J002
5F057
【Fターム(参考)】
4J002BE021
4J002GQ05
4J002HA04
5F057AA06
5F057AA28
5F057BA12
5F057BB01
5F057CA18
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA11
5F057EA17
5F057EA22
5F057EA23
5F057EA26
5F057EA27
5F057EA28
5F057EA29
(57)【要約】
【課題】ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法において、凝集物の発生が効果的に抑制されたポリビニルアルコール組成物を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法であって、前記ポリビニルアルコール組成物が、ポリビニルアルコールと水とを含む第1の液、および前記第1の液以外の第2の液のいずれか一方の溶液中に、前記第1の液および前記第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を経て得られる、半導体用濡れ剤の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール組成物が、ポリビニルアルコールと水とを含む第1の液、および前記第1の液以外の第2の液のいずれか一方の液中に、前記第1の液および前記第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を経て得られる、半導体用濡れ剤の製造方法。
【請求項2】
前記液中添加工程を経て得られたポリビニルアルコール組成物をろ過するろ過工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体用濡れ剤の製造方法。
【請求項3】
前記第1の液が、ポリビニルアルコールを水に分散させたポリビニルアルコール分散液を85~98℃に加熱した後に15~50℃に冷却して得られたものである、請求項1または2に記載の半導体用濡れ剤の製造方法。
【請求項4】
前記液中添加工程が、撹拌手段を有する容器内に保持された前記第2の液中に、前記第1の液を液中添加する工程である、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体用濡れ剤の製造方法。
【請求項5】
前記液中添加工程において、前記ポリビニルアルコール組成物中の前記ポリビニルアルコールの含有量が、前記ポリビニルアルコール組成物の全質量に対して、10質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体用濡れ剤の製造方法。
【請求項6】
前記液中添加工程を経て得られたポリビニルアルコール組成物にアルカリを添加するアルカリ添加工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体用濡れ剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された半導体用濡れ剤と砥粒とを含む、研磨用組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された半導体用濡れ剤と砥粒とを混合することを含む、研磨用組成物の製造方法。
【請求項9】
ポリビニルアルコール組成物を含む研磨用組成物の製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール組成物が、ポリビニルアルコールと水とを含む第1の液、および砥粒を含む第2の液のいずれか一方の液中に、前記第1の液および前記第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を経て得られる、研磨用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコールは、親水性の合成樹脂であり、繊維原料、糊剤、塗料、接着剤、乳化剤等として、流動性のある溶液(水溶液)の状態で使用されることが多い。
【0003】
通常、ポリビニルアルコールは、水に分散させた後、そのポリビニルアルコール分散液を高温(例えば、80℃以上)で撹拌することにより水に溶解させることができるが、水への分散状態を経て溶解させないと塊状物(ダマ)を生じることが知られている。塊状物の発生原因は、水と接したポリビニルアルコール粒子の表面が膨潤して半溶解状態となり、半溶解状態となったポリビニルアルコール粒子同士で癒着して大きな塊を形成するためと考えられる。このような塊状物は、塊状物の表面部分だけが溶解して内部は全く水が浸透していない状態であり、溶媒に極めて溶解し難い。よって、塊状物を含むポリビニルアルコール水溶液は、種々の用途に適用し難いという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、ポリビニルアルコール水溶液の製造方法が種々提案されている。例えば、特許文献1では、ポリビニルアルコールに界面活性剤を含有させることにより、ポリビニルアルコールの分散性および溶解性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-94431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塊状物のないポリビニルアルコール水溶液を得た場合であっても、ポリビニルアルコール水溶液に他の水溶液を添加混合すると凝集物が発生するということが判明した。例えば、このようなポリビニルアルコール水溶液を半導体用濡れ剤や研磨用組成物に適用する場合、凝集物等の固形物が研磨対象物を傷つけてしまうため、ろ過等によりあらかじめ固形物を除去することが必要となる。凝集物が生じたポリビニルアルコール水溶液は、ろ過性が非常に悪いため、ろ過に時間がかかったり、歩留まりが低下したりなど、生産性が著しく低下する。
【0007】
そこで、本発明は、ポリビニルアルコール組成物(ポリビニルアルコール水溶液)を含む半導体用濡れ剤の製造方法において、凝集物の発生が効果的に抑制されたポリビニルアルコール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の新たな課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法であって、前記ポリビニルアルコール組成物が、ポリビニルアルコールと水とを含む第1の液、および前記第1の液以外の第2の液のいずれか一方の液中に、前記第1の液および前記第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を経て得られる、半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法により、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法において、凝集物の発生が効果的に抑制されたポリビニルアルコール組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液中添加の実験に用いた装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法であって、前記ポリビニルアルコール組成物が、ポリビニルアルコールと水とを含む第1の液、および前記第1の液以外の第2の液のいずれか一方の溶液中に、前記第1の液および前記第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を経て得られる、半導体用濡れ剤の製造方法である。かような製造方法により得られるポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物は、凝集物の発生が抑制され、ろ過性に優れる。一実施形態によれば、かような製造方法により得られるポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物は、優れた保存安定性を有する。
【0012】
このような効果が得られるメカニズムは、以下の通りであると考えられる。ただし、下記メカニズムはあくまで推測であり、これによって本発明の範囲が限定されることがない。本発明の製造方法では、ポリビニルアルコールを含む第1の液中に第2の液を液中添加するか、第2の液中にポリビニルアルコールを含む第1の液を液中添加する。これにより、液の添加の際に液面上に生じる泡を抑制することができ、その泡の乾燥物に起因する凝集物の発生を抑制することができると考えられる。
【0013】
なお、本明細書中、液中添加とは、一方の液中に、他方の液を直接添加することを意味しており、例えば、供給管等を一方の液中に導入し、供給管を通じて他方の液を一方の液中に供給する形態である。なお、液中添加の形態は、液面上ではなく、液中に直接添加できる方法であればよく、上述した形態に制限されない。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0015】
≪ポリビニルアルコール組成物の製造方法≫
まず、本発明の半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物に用いられるポリビニルアルコール組成物の製造方法について説明する。なお、ここで述べるポリビニルアルコール組成物の製造方法は、本発明の半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法としてそのまま適用できる。すなわち、本発明において、ポリビニルアルコール組成物が砥粒を含まない場合、ポリビニルアルコール組成物の製造方法は、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤の製造方法として適用できる。また、ポリビニルアルコール組成物は、そのまま半導体用濡れ剤として用いることもできる。本発明において、ポリビニルアルコール組成物が砥粒を含む場合、ポリビニルアルコール組成物の製造方法は、ポリビニルアルコール組成物を含む研磨用組成物の製造方法として適用できる。また、ポリビニルアルコール組成物は、そのまま研磨用組成物として用いることもできる。よって、本発明の一実施形態によれば、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法は、ポリビニルアルコールを含む半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法とも言い換えられる。
【0016】
本発明のポリビニルアルコール組成物においては、ポリビニルアルコールおよび水を含む第1の液と、第1の液以外の第2の液とを混合してポリビニルアルコール組成物を得る混合工程において、第1の液および第2の液のいずれか一方の液中に、第1の液および第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を含む。
【0017】
[第1の液]
第1の液は、ポリビニルアルコールと、水と、を含む。第1の液は、必要に応じて、界面活性剤、ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、pH調整剤、酸化剤、金属防食剤、防腐剤、防カビ剤等の公知の添加剤、水以外の溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0018】
(ポリビニルアルコール)
本発明において、ポリビニルアルコールは、繰返し単位としてビニルアルコール単位(以下「VA単位」ともいう)のみを含んでいてもよく、VA単位に加えてVA単位以外の繰返し単位(以下「非VA単位」ともいう)を含んでいてもよい。ビニルアルコール単位とは、化学式:-CH-CH(OH)-により表される構造部分である。ポリビニルアルコールは、VA単位と非VA単位とを含むランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体やグラフト共重合体であってもよい。ポリビニルアルコールは、一種類の非VA単位のみを含んでもよく、二種類以上の非VA単位を含んでもよい。
【0019】
ポリビニルアルコールは、変性されていないポリビニルアルコール(非変性PVA)であってもよく、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)であってもよい。ここで、非変性PVAとは、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより生成し、酢酸ビニルが重合した構造の繰返し単位(-CH-CH(OCOCH)-)およびVA単位以外の繰返し単位を実質的に含まないポリビニルアルコールをいう。
【0020】
非変性PVAのけん化度は、好ましくは70モル%以上でもよく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。特に研磨用組成物の用途においては、非変性PVAのけん化度は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99.3%以上である。よって、本発明の一実施形態によれば、けん化度が95モル%以上(好ましくは98モル%以上、より好ましくは99.3モル%以上)である非変性PVAを好ましく用いることができる。けん化度が高いPVAはより塊状物を発生しやすい傾向があるため、本発明を好適に用いることができる。本明細書中、けん化度は、JIS-K6726(1994年)に準じて測定して得られる値である。具体的には、けん化度は、ポリ酢酸ビニルにおけるアセトキシ基(-OCOCH)がヒドロキシ基(-OH)に変わっている割合を意味し、具体的には、ポリビニルアルコール中のアセトキシ基とヒドロキシ基の合計数に対するヒドロキシ基の数の百分率で表される。
【0021】
変性PVAに含まれ得る非VA単位としては、例えば後述するN-ビニル型のモノマーやN-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位、エチレンに由来する繰返し単位、アルキルビニルエーテルに由来する繰返し単位、炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステルに由来する繰返し単位、等が挙げられるが、これらに限定されない。上記N-ビニル型のモノマーの一好適例として、N-ビニルピロリドンが挙げられる。上記N-(メタ)アクリロイル型のモノマーの一好適例として、N-(メタ)アクリロルモルホリンが挙げられる。上記アルキルビニルエーテルは、例えばプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等の、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテルであり得る。上記炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステルは、例えばプロパン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル等の、炭素原子数3以上7以下のモノカルボン酸のビニルエステルであり得る。
【0022】
また、ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに含まれるVA単位の一部がアルデヒドでアセタール化された変性PVAであってもよい。上記アルデヒドとしては、例えばアルキルアルデヒドを好ましく用いることができ、炭素原子数1以上7以下のアルキル基を有するアルキルアルデヒドが好ましく、なかでもアセトアルデヒド、n-プロピルアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-ペンチルアルデヒドが好ましい。ポリビニルアルコールとして、第四級アンモニウム構造等のカチオン性基が導入されたカチオン変性ポリビニルアルコールを使用してもよい。上記カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、N-(メタ)アクリロイルアミノアルキル-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性基を有するモノマーに由来するカチオン性基が導入されたものが挙げられる。
【0023】
また、ポリビニルアルコールは、VA単位と、オキシアルキレン基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、エーテル基、エステル基、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1つの構造を有する非VA単位とを含む変性PVAであってもよい。
【0024】
ポリビニルアルコールを構成する全繰返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、例えば5%以上であってよく、10%以上でもよく、20%以上でもよく、30%以上でもよい。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記VA単位のモル数の割合は、50%以上であってよく、65%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上(例えば95%以上、または98%以上)でもよい。ポリビニルアルコールを構成する繰返し単位の実質的に100%がVA単位であってもよい。ここで「実質的に100%」とは、少なくとも意図的にはポリビニルアルコールに非VA単位を含有させないことをいい、典型的には全繰返し単位のモル数に占める非VA単位のモル数の割合が2%未満(例えば1%未満)であり、0%である場合を包含する。他のいくつかの態様において、ポリビニルアルコールを構成する全繰返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、例えば95%以下であってよく、90%以下でもよく、80%以下でもよく、70%以下でもよい。
【0025】
ポリビニルアルコールにおけるVA単位の含有量(重量基準の含有量)は、例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、30重量%以上でもよい。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記VA単位の含有量は、50重量%以上(例えば50重量%超)であってよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上(例えば90重量%以上、または95重量%以上、または98重量%以上)でもよい。ポリビニルアルコールを構成する繰返し単位の実質的に100重量%がVA単位であってもよい。ここで「実質的に100重量%」とは、少なくとも意図的にはポリビニルアルコールを構成する繰返し単位として非VA単位を含有させないことをいい、典型的にはポリビニルアルコールにおける非VA単位の含有量が2重量%未満(例えば1重量%未満)であることをいう。他のいくつかの態様において、ポリビニルアルコールにおけるVA単位の含有量は、例えば95重量%以下であってよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよい。
【0026】
ポリビニルアルコールは、VA単位の含有量の異なる複数のポリマー鎖を同一分子内に含んでいてもよい。ここでポリマー鎖とは、一分子のポリマーの一部を構成する部分(セグメント)を指す。例えば、ポリビニルアルコールは、VA単位の含有量が50重量%より高いポリマー鎖Aと、VA単位の含有量が50重量%より低い(すなわち、非VA単位の含有量が50重量%より多い)ポリマー鎖Bとを、同一分子内に含んでいてもよい。
【0027】
ポリマー鎖Aは、繰返し単位としてVA単位のみを含んでいてもよく、VA単位に加えて非VA単位を含んでいてもよい。ポリマー鎖AにおけるVA単位の含有量は、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー鎖AにおけるVA単位の含有量は、95重量%以上でもよく、98重量%以上でもよい。ポリマー鎖Aを構成する繰返し単位の実質的に100重量%がVA単位であってもよい。
【0028】
ポリマー鎖Bは、繰返し単位として非VA単位のみを含んでいてもよく、非VA単位に加えてVA単位を含んでいてもよい。ポリマー鎖Bにおける非VA単位の含有量は、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー鎖Bにおける非VA単位の含有量は、95重量%以上でもよく、98重量%以上でもよい。ポリマー鎖Bを構成する繰返し単位の実質的に100重量%が非VA単位であってもよい。
【0029】
ポリマー鎖Aとポリマー鎖Bとを同一分子中に含むポリビニルアルコールの例として、これらのポリマー鎖を含むブロック共重合体やグラフト共重合体が挙げられる。上記グラフト共重合体は、ポリマー鎖A(主鎖)にポリマー鎖B(側鎖)がグラフトした構造のグラフト共重合体であってもよく、ポリマー鎖B(主鎖)にポリマー鎖A(側鎖)がグラフトした構造のグラフト共重合体であってもよい。一態様において、ポリマー鎖Aにポリマー鎖Bがグラフトした構造のポリビニルアルコールを用いることができる。
【0030】
ポリマー鎖Bの例としては、N-ビニル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、N-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、オキシアルキレン単位を主繰返し単位とするポリマー鎖等が挙げられる。なお、本明細書において主繰返し単位とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる繰返し単位をいう。
【0031】
ポリマー鎖Bの一好適例として、N-ビニル型のモノマーを主繰返し単位とするポリマー鎖、すなわちN-ビニル系ポリマー鎖が挙げられる。N-ビニル系ポリマー鎖におけるN-ビニル型モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bの実質的に全部がN-ビニル型モノマーに由来する繰返し単位であってもよい。
【0032】
この明細書において、N-ビニル型のモノマーの例には、窒素を含有する複素環(例えばラクタム環)を有するモノマーおよびN-ビニル鎖状アミドが含まれる。N-ビニルラクタム型モノマーの具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルモルホリノン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。N-ビニル鎖状アミドの具体例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミド、N-ビニル酪酸アミド等が挙げられる。ポリマー鎖Bは、例えば、その繰返し単位の50重量%超(例えば70重量%以上、または85重量%以上、または95重量%以上)がN-ビニルピロリドン単位であるN-ビニル系ポリマー鎖であり得る。ポリマー鎖Bを構成する繰返し単位の実質的に全部がN-ビニルピロリドン単位であってもよい。
【0033】
ポリマー鎖Bの他の例として、N-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、すなわち、N-(メタ)アクリロイル系ポリマー鎖が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル系ポリマー鎖におけるN-(メタ)アクリロイル型モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bの実質的に全部がN-(メタ)アクリロイル型モノマーに由来する繰返し単位であってもよい。
【0034】
この明細書において、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの例には、N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドおよびN-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドが含まれる。N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドの例としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの例としては、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
【0035】
ポリマー鎖Bの他の例として、オキシアルキレン単位を主繰返し単位として含むポリマー鎖、すなわちオキシアルキレン系ポリマー鎖が挙げられる。オキシアルキレン系ポリマー鎖におけるオキシアルキレン単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bに含まれる繰返し単位の実質的に全部がオキシアルキレン単位であってもよい。
【0036】
オキシアルキレン単位の例としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位等が挙げられる。このようなオキシアルキレン単位は、それぞれ、対応するアルキレンオキシドに由来する繰返し単位であり得る。オキシアルキレン系ポリマー鎖に含まれるオキシアルキレン単位は、一種類であってもよく、二種類以上であってもよい。例えば、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを組合せで含むオキシアルキレン系ポリマー鎖であってもよい。二種類以上のオキシアルキレン単位を含むオキシアルキレン系ポリマー鎖において、それらのオキシアルキレン単位は、対応するアルキレンオキシドのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、交互共重合体やグラフト共重合体であってもよい。
【0037】
ポリマー鎖Bの他の例として、アルキルビニルエーテル単位、ポリビニルアルコールとアルデヒドとをアセタール化して得られた構成単位等を主繰返し単位として含むポリマー鎖が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテル単位(アルキルビニルエーテル単位)、炭素原子数1以上7以下のモノカルボン酸に由来するビニルエステル単位(モノカルボン酸ビニルエステル単位)、および、ポリビニルアルコールと炭素原子数1以上7以下のアルキル基を有するアルデヒドとをアセタール化して得られた構成単位からなる群から選択されると好ましい。
【0038】
炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテル単位の例としては、プロピルビニルエーテル単位、ブチルビニルエーテル単位、2-エチルヘキシルビニルエーテル単位等が挙げられる。炭素原子数1以上7以下のモノカルボン酸に由来するビニルエステル単位の例としては、プロパン酸ビニル単位、ブタン酸ビニル単位、ペンタン酸ビニル単位、ヘキサン酸ビニル単位等が挙げられる。
【0039】
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤に使用されるポリビニルアルコールは、変性されていないPVA(非変性PVA)であることが好ましい。
【0040】
ポリビニルアルコールの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。ポリビニルアルコールのMwは、通常は2×10以上であり、5×10以上であってもよく、1×10以上であってもよい。ポリビニルアルコールのMwの増加につれて、研磨および/またはリンス後の表面の濡れ性が高まる傾向にある。また、ポリビニルアルコールのMwが高くなるとポリビニルアルコールの分散性は低下する傾向にあるので、本発明の適用意義が大きくなる。かかる観点から、ポリビニルアルコールのMwは3×10以上であることが好ましく、より好ましくは4×10以上であり、さらに好ましくは5×10以上であり、特に好ましくは6×10以上(例えば6.5×10以上)である。
【0041】
ポリビニルアルコールの重量平均分子量(Mw)は、通常、100×10以下が適当であり、30×10以下が好ましく、20×10以下(例えば15×10以下)であってもよい。研磨レートと基板の表面保護とを両立させる観点から、ポリビニルアルコールのMwは10×10以下であってもよく、8×10以下であってもよい。
【0042】
なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)とは、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)である。GPC測定装置としては、東ソー株式会社製の機種名「HLC-8320GPC」を用いることができる。測定条件は、例えば以下のとおりである。
【0043】
[GPC測定条件]
サンプル濃度:0.1重量%
カラム:TSKgel GMPWXL
検出器:示差屈折計
溶離液:100mM 硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=10~8/0~2
流速:1mL/分
測定温度:40℃
サンプル注入量:200μL
ポリビニルアルコールの重合度は、一般に100~10,000程度であるが、特に研磨用組成物の用途においては、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1500以上であり、具体的には2000以上である。また、ポリビニルアルコールの重合度は、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2900以下である。重合度が上記範囲であれば、本発明の効果が十分に発揮される。
【0044】
本発明で用いられるポリビニルアルコールとしては、例えば、粉末状で販売されている(株)クラレ製「PVA-117」(重合度1,700、ケン化度98~99モル%)、「PVA-117H」(重合度1,700、ケン化度99.3モル%以上)、「PVA-124」(重合度2,400、ケン化度98~99モル%)などがある。
【0045】
第1の液におけるポリビニルアルコールの含有量の下限は、第1の液の全質量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、第1の液におけるポリビニルアルコールの含有量の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。すなわち、ポリビニルアルコールの含有量は、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.1~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。ポリビニルアルコールの含有量が上記範囲であれば、本発明の効果が十分に発揮される。
【0046】
(水)
水は、ポリビニルアルコールの溶媒となる。水は、不純物が可能な限り含有されていないものであることが好ましい。当該水としては、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる不純物の除去、蒸留による異物を除去した水であることが好ましい。このような水として、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等が挙げられる。半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。
【0047】
水の含有量は、第1の液の全質量に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、水の含有量の上限としては、第1の液の全質量に対して、好ましくは99.95質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以下である。すなわち、水の含有量は、第1の液の全質量に対して、好ましくは90~99.95質量%、より好ましくは93~99.9質量%、さらに好ましくは95~99.5質量%である。水の含有量が上記範囲であれば、本発明の効果が十分に発揮される。
【0048】
(第1の液の調製方法)
上記のような構成を有する第1の液を調製する方法は、特に制限されないが、例えば、下記工程Aおよび工程Bを含む方法が挙げられる;
工程A:ポリビニルアルコールを水に分散させてポリビニルアルコール分散液を得る分散工程;
工程B:ポリビニルアルコール分散液を80℃以上に加温し撹拌することにより、ポリビニルアルコールを水に溶解させて第1の液を得る溶解工程。
【0049】
・工程A:分散工程
ポリビニルアルコールを水に分散させる際の水の温度は、15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコールを水に分散させる際の水の温度は、25℃以下であることが好ましい。水の温度が上記範囲内であると、ポリビニルアルコールが水中で塊状物になることを抑制できることから好ましい。
【0050】
ポリビニルアルコール分散液中のポリビニルアルコールの含有量は、分散工程後、溶解工程を経て得られる第1の液中のポリビニルアルコールの含有量と同じである。ポリビニルアルコールの含有量が上記範囲内であると、ポリビニルアルコール分散液を効率的に調製できることから好ましい。
【0051】
ポリビニルアルコールを水に分散させる際には、撹拌を行うことが好ましい。例えば、分散工程では、撹拌機が容器に付属した撹拌容器中で行うことが好ましい。
【0052】
分散工程は、ポリビニルアルコールが均一な分散状態となることを目安にして終了し、次の溶解工程に進むのが好ましい。
【0053】
・工程B:溶解工程
本明細書において溶解工程とは、ポリビニルアルコールを水に溶解させる際の水の温度が80℃を超える期間を指す。ポリビニルアルコールを水に溶解させる際の水の温度は、85℃以上であることが好ましく、88℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコールを水に溶解させる際の水の温度は、98℃以下であることが好ましく、96℃以下であることがより好ましく、94℃以下であることがさらに好ましい。水の温度が上記範囲内であると、ポリビニルアルコールが水に十分に溶解し、均一なポリビニルアルコール水溶液(第1の液)を得ることができることから好ましい。
【0054】
溶解工程を経て得られる第1の液中のポリビニルアルコールの含有量は、上述のとおりである。
【0055】
ポリビニルアルコールを水に溶解させる際には、撹拌を行うことが好ましい。撹拌時間(すなわち、ポリビニルアルコールを水に溶解させるのに要する時間)は、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましい。また、撹拌時間は、300分以下であることが好ましく、200分以下であることがより好ましく、100分以下であることがさらに好ましい。例えば、撹拌時間は、80分以下、60分以下、30分以下とすることができる。
【0056】
溶解工程は、ポリビニルアルコールが均一な溶解状態となることを目安にして終了し、得られた第1の液は、15~50℃(好ましくは20~35℃、例えば25~28℃)まで冷却した後、次の工程に進むのが好ましい。冷却は、装置による冷却、自然放熱による冷却のいずれであっても良い。また、空冷、液冷(例えば水冷)のいずれであっても良く、熱交換の媒体の種類を問わない。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、工程Aおよび工程Bを経て第1の液を調製するのが好ましい。よって、本発明の好ましい実施形態によれば、第1の液が、ポリビニルアルコールを水に分散させたポリビニルアルコール分散液を85~98℃に加熱した後に15~50℃に冷却して得られたものである。これにより、第1の液においてポリビニルアルコールが均一な溶解状態となりやすく、結果として、凝集物の発生が低減されたポリビニルアルコール組成物を得ることができる。
【0058】
(添加剤)
第1の液には、上述のように、公知の添加剤が含まれていてもよい。添加剤は、特に制限されないが、水にポリビニルアルコールを溶解させた後に添加するのが好ましい。
【0059】
[第2の液]
第2の液は、溶媒を含む。第2の液は、必要に応じて、砥粒、界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、pH調整剤、錯化剤、防腐剤、防カビ剤等の公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。ここで、第2の液は、例えば、溶媒だけであってもよく、ポリビニルアルコールと溶媒とを含む溶液であってもよい。よって、本発明の一実施形態によれば、ポリビニルアルコールを含む第1の液と水(第2の液)とを混合する形態であってもよいし、ポリビニルアルコールを含む第1の液とポリビニルアルコールを含む第2の液とを混合する形態であってもよい。
【0060】
第2の液は、ポリビニルアルコールを含有していてもよい。この場合、第2の液は、溶媒と、ポリビニルアルコールと、を含む。第2の液がポリビニルアルコールを含む場合、第2の液におけるポリビニルアルコールの含有量の下限は、第2の液の全質量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、第2の液におけるポリビニルアルコールの含有量の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0061】
第2の液は、砥粒を含有していてもよい。この場合、第2の液は、溶媒と、砥粒と、を含む。第2の液が砥粒を含む場合、第2の液における砥粒の含有量の下限は、第2の液の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、第2の液における砥粒の含有量の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0062】
(溶媒)
第2の液に含有される溶媒は、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物などが例示できる。これらのうち、溶媒としては水が好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、第2の液における溶媒は水を含む。本発明のより好ましい形態によると、第2の液における溶媒は実質的に水からなる。なお、上記の「実質的に」とは、本発明の目的効果が達成され得る限りにおいて、水以外の溶媒が含まれ得ることを意図し、より具体的には、好ましくは90質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上10質量%以下の水以外の溶媒とからなり、より好ましくは99質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上1質量%以下の水以外の溶媒とからなる。最も好ましくは、溶媒は水である。
【0063】
ポリビニルアルコール組成物を半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物に用いる場合、半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物に含まれる成分の作用を阻害しないようにするという観点から、第2の液で用いられる溶媒としては、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水がより好ましい。
【0064】
溶媒の含有量は、第2の液の全質量に対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、溶媒の含有量の上限としては、第2の液の全質量に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以下である。すなわち、溶媒の含有量は、第2の液の全質量に対して、好ましくは90~100質量%、より好ましくは93~99.9質量%、さらに好ましくは95~99.5質量%である。
【0065】
[液中添加工程]
本発明では、ポリビニルアルコールおよび水を含む第1の液と、第1の液以外の第2の液とを混合して、ポリビニルアルコール組成物を得る混合工程において、第1の液および第2の液のいずれか一方の溶液中に、第1の液および第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を含む。すなわち、本発明の製造方法は、第1の液と第2の液とを混合する混合工程において、第1の液および第2の液のいずれか一方の液中に、第1の液または第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を含むことを特徴とする。
【0066】
液中添加工程では、第1の液中に第2の液を液中添加してもよいし、第2の液中に第1の液を液中添加してもよい。液中添加の方法は、特に制限されないが、例えば、供給管を通して行う方法が挙げられる。具体的には、供給管の一端は、供給する側である第1の液および第2の液のいずれか一方の液中に配置され、供給管の他端は、供給される側である第1の液および第2の液のいずれか他方の液中に配置されている。そして、エアポンプ等のポンプを用いて、供給する側である第1の液および第2の液のいずれか一方の液が、供給管を通して、供給される側である第1の液および第2の液のいずれか他方の溶液中に添加される。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、第2の液中に第1の液を液中添加するのが好ましい。これにより、第1の液内のポリビニルアルコールが空気と触れることなく第2の液と混合することとなり、ポリビニルアルコール塊状物の発生抑制の効果がより発揮される。
【0068】
この際、供給管のサイズは、特に制限されないが、径が50cm以下であるのが好ましい。このような供給管であれば、液面上への影響がなく、効率よく液中添加を行うことができる。
【0069】
液中添加を行う供給スピードは、特に限定されないが、ポリビニルアルコール同士が衝突することによる塊状物の発生が起こらない程度に小さい方が好ましい。50mL/min以上であるのが好ましく、100mL/min以上であるのがより好ましく、120mL/min以上であるのがさらに好ましい。また、液中添加を行う供給スピードは、20L/min以下であるのが好ましい。このような供給スピードであれば、液面上への影響がなく、効率よく液中添加を行うことができる。
【0070】
供給される側の第1の液および第2の液のいずれか他方は、撹拌手段を有する容器内に保持されているのが好ましい。これにより、液中添加が行われつつ、撹拌することが可能である。本発明の一実施形態によれば、撹拌手段を有する容器内に保持された第2の液中に、第1の液を液中添加する。ここで、撹拌手段を有する容器としては、例えば、縦型の撹拌容器および横型の撹拌容器が挙げられる。
【0071】
縦型の撹拌容器とは、垂直回転軸と、該垂直回転軸に取り付けられた撹拌翼とを具備した容器である。撹拌翼の形式としては、例えば、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン(登録商標)翼(神鋼パンテック株式会社製)、サンメラー翼(三菱重工業株式会社製)、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械工業株式会社製)、ヘリカルリボン翼、およびねじり格子翼(株式会社日立製作所製)等が挙げられる。
【0072】
横型の撹拌容器とは、内部に複数本設けられた撹拌翼の回転軸が横型(水平方向)で、当該回転軸に対してほぼ垂直に延びる複数枚の撹拌翼を有しており、それぞれの水平回転軸に設けられた撹拌翼は、互いに水平方向の位置をずらして、衝突しないように配されたものである。撹拌翼の形式としては、例えば、円板型およびパドル型等の一軸タイプの撹拌翼、メガネ翼および格子翼(株式会社日立製作所製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。その他、例えば、車輪型、櫂型、棒型および窓枠型などの撹拌翼が挙げられる。
【0073】
上記撹拌容器の大きさは、特に制限されず、例えば、好ましくは0.01m以上、より好ましくは0.1m以上、さらに好ましくは1m以上の大きさのものを使用することができる。また、上記撹拌容器の大きさは、好ましくは20m以下、より好ましくは10m以下である。
【0074】
撹拌容器の材質も、特に制限されない。例えば、ステンレス製のものが好ましく、さらに槽内壁をSUS316、ガラス、テフロン、チタン等でコーティングしたものがより好ましい。撹拌容器は、必要に応じて邪魔板(バッフル)を設置することができる。邪魔板の大きさ、形状、枚数は、特に制限されない。
【0075】
回転軸の強度やサイズは、特に制限されない。回転軸の材質も制限されず、例えば、ステンレス製が好ましく、さらにガラス、テフロン、チタンでコーティングしたものや、SUS316のステンレス製がより好ましい。
【0076】
使用する撹拌翼の枚数も特に制限されず、例えば1~10枚、好ましくは1~5枚、より好ましくは2~5枚とすることができる。3枚以上の撹拌翼を使用する場合は、複数箇所の撹拌翼の間隔も制限されないが、均等に配置するのが好ましい。
【0077】
撹拌翼の大きさも制限されず、例えば、撹拌翼径(L)の撹拌容器の内径(D)に対する比(L/D)を好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上とすることができる。また、L/Dは、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.75以下とすることができる。なお、「撹拌容器の内径」とは、撹拌容器内部の回転軸と垂直方向の最も長い直径をいう。例えば、撹拌容器の上下の鏡部分(撹拌容器の上下部分の丸い部分)に挟まれた円筒部分からなる撹拌容器を使用する場合、当該円筒部分の槽内の直径をいう。「撹拌翼径」とは、回転軸の中心から撹拌翼の先端までの最も長い距離を2倍した径をいう。「撹拌翼の先端」とは、回転軸から垂直に測定した場合に最も遠い部分をいう。
【0078】
また、液中添加工程においては、隣接する撹拌翼同士が、軸方向に見た場合にどのような角度を形成していてもよい。効率よく撹拌を行うという観点から、0度(並行)または90度(直角)とするのが好ましい。
【0079】
撹拌翼の材質も、特に制限されず、例えば、ステンレス製が好ましく、さらにガラス、テフロン、チタンでコーティングしたものや、SUS316のステンレス製がより好ましい。
【0080】
撹拌時の撹拌容器内の雰囲気は特に制限されず、空気雰囲気や、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気が挙げられ、常圧または減圧の条件下で行うことができる。
【0081】
液中添加工程が行われる際の溶液の温度は、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。また、液中添加工程が行われる際の溶液の温度は、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。なお、撹拌容器を加熱する場合の方法としては、撹拌容器外周部に熱媒のジャケットを設置し、撹拌容器壁面を通して伝熱により溶液を加熱する方法、または撹拌容器内部の伝熱管(コイル)を通して伝熱により加熱する方法等が挙げられ、これらを単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0082】
液中添加工程において、供給される側の撹拌容器における撹拌翼の回転数(すなわち、撹拌数)は、特に制限されない。攪拌を行っても良いし、行わなくても良い。攪拌を行う場合、撹拌容器の容量に依存するが、上記回転数は1rpm以上であることが好ましい。撹拌翼の回転数は、ポリビニルアルコール塊状物の発生を抑制する観点から、300rpm以下であることが好ましく、200rpm以下であることがより好ましく、100rpm以下であることがさらに好ましい。すなわち、液中添加工程において攪拌を行う場合、撹拌翼の回転数は、好ましくは1rpm以上300rpm以下であり、より好ましくは1rpm以上200rpm以下であり、さらに好ましくは1rpm以上100rpm以下である。撹拌翼の回転数が上記範囲内であれば、撹拌による回転渦が大きくなり過ぎず、気体のかみ込みが少なくなる。
【0083】
液中添加工程の時間としては、供給する側(添加する側)の溶液量にもよるが、例えば、1~30分で添加を終了するのが好ましい。
【0084】
ここで、第1の液と第2の液との混合比は、質量比で、第1の液:第2の液=1:99~99:1であるのが好ましく、10:90~90:10であるのがより好ましく、20:80~80:20であるのがさらに好ましく、30:70~70:30であることが特に好ましい。上記質量比は、例えば20:80~40:60や、80:20~60:40とすることができる。
【0085】
液中添加工程において得られるポリビニルアルコール組成物中のポリビニルアルコールの含有量は、ポリビニルアルコール組成物の全質量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、液中添加工程において得られるポリビニルアルコール組成物中のポリビニルアルコールの含有量の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。液中添加工程により得られるポリビニルアルコール組成物中のポリビニルアルコールの含有量が上記範囲内であれば、凝集物の発生を抑制でき、本発明の効果がより発揮される。
【0086】
[液中添加工程後の工程]
・工程C:撹拌工程
本発明の一実施形態によれば、液中添加工程の後、ポリビニルアルコール組成物を撹拌する撹拌工程を含む。撹拌工程を行うことにより、ポリビニルアルコールが均一に分散している状態となるため好ましい。
【0087】
撹拌工程が行われる際のポリビニルアルコール組成物の温度は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。また、撹拌工程が行われる際のポリビニルアルコール組成物の温度は、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。
【0088】
撹拌工程において、撹拌容器における撹拌翼の回転数(すなわち、撹拌数)は、撹拌容器の容量に依存するが、1rpm以上であることが好ましい。また、撹拌翼の回転数は、ポリビニルアルコール塊状物の発生を抑制する観点から、300rpm以下であることが好ましく、200rpm以下であることがより好ましく、100rpm以下であることがさらに好ましい。すなわち、液中添加工程後の攪拌工程における撹拌翼の回転数は、好ましくは1rpm以上300rpm以下であり、より好ましくは1rpm以上200rpm以下であり、さらに好ましくは1rpm以上100rpm以下である。撹拌翼の回転数が上記範囲内であれば、撹拌による回転渦が大きくなり過ぎず、気体のかみ込みが少なくなる。
【0089】
なお、撹拌翼の大きさは、制限されず、例えば、撹拌翼径(L)の撹拌容器の内径(D)に対する比(L/D)を好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上とすることができる。また、L/Dは、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.75以下とすることができる。
【0090】
撹拌工程は、ポリビニルアルコールが均一に分散している状態となることを目安にして終了することができるが、例えば、撹拌工程における撹拌時間は、1分以上であることが好ましく、2分以上であることがより好ましく、3分以上であることがさらに好ましい。また、撹拌工程における撹拌時間は、45分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。
【0091】
・工程D:ろ過工程
ろ工程は、ポリビニルアルコール組成物を調製した後、ろ過する工程である。本工程により、ポリビニルアルコール組成物中の凝集物を除去することができる。本発明の一実施形態によれば、前記添加工程を経て得られたポリビニルアルコール組成物をろ過するろ過工程をさらに含む。
【0092】
ろ過工程で用いられるポリビニルアルコール組成物中のポリビニルアルコールの含有量は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%であることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコール組成物中のポリビニルアルコールの含有量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコールの含有量が上記範囲内であると、ポリビニルアルコール組成物の粘度が過度に高くならず、高いろ過速度が得られることから好ましい。
【0093】
ポリビニルアルコール組成物のろ過に使用されるろ材としては、特に制限されないが、ポリプロピレン、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ナイロン66、セルロース、セルロース混合エステル、セルロースアセテート、ニトロセルロース、再生セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ガラス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン、ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエチレン、アクリル共重合体、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル、金属等が挙げられる。
【0094】
フィルタ構造としては、特に制限されないが、デプス構造、プリーツ構造、メンブレン構造等が挙げられる。
【0095】
フィルタの孔径としては、特に制限されないが、0.03μm以上であることが好ましく、0.04μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましく、0.1μm以上であることがよりさらに好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。フィルタの孔径が0.03μm以上であると、高いろ過速度が得られることから好ましい。また、フィルタの孔径としては、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。フィルタの孔径は20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。フィルタの孔径が100μm以下であると、ろ過の精度が向上することから好ましい。
【0096】
ろ過方法としては、常圧で行う自然ろ過、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過のいずれであってもよい。
【0097】
ろ過工程は、2度以上行ってもよい。この際、フィルタの孔径等の条件を適宜変更することが好ましい。例えば、1度目の溶解ろ過では、大きい孔径のフィルタを用いて粗大粒子を除去し、2度目の溶解ろ過では、小さい孔径のフィルタを用いて微小粒子を除去する方法等が挙げられる。溶解ろ過を2度以上行うことで、より効率的に不純物を除去することが可能となる。
【0098】
・工程E:アルカリ添加工程
本発明の一実施形態によれば、液中添加工程を経て得られたポリビニルアルコール組成物にアルカリを添加するアルカリ添加工程をさらに含む。アルカリ添加工程を行うことにより、後述の研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤として好適に用いられる。アルカリ添加工程の詳細については、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤の欄で説明する。
【0099】
[ポリビニルアルコール組成物]
本発明の一実施形態によれば、ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール組成物が提供される。ポリビニルアルコール組成物は、第1の液および第2の液を含有することにより、少なくともポリビニルアルコールおよび水を含有する。ポリビニルアルコール組成物は、必要に応じて、水以外の溶媒をさらに含んでいてもよい。また、ポリビニルアルコール組成物は、必要に応じて、砥粒を含んでいてもよい。
【0100】
ポリビニルアルコール組成物におけるポリビニルアルコールの含有量は、ポリビニルアルコール組成物の全質量に対して、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.0005質量%以上であることがより好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましく、0.005質量%以上であることが特に好ましい。上記含有量は、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.4質量%以上とすることができる。また、ポリビニルアルコールの含有量は、ポリビニルアルコール組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。上記含有量は、例えば、2質量%以下、1.5質量%以下、0.9質量%以下とすることができる。
【0101】
本発明の製造方法により得られたポリビニルアルコール組成物は、凝集物の発生が抑制されており、ろ過性に優れている。これにより、本発明の製造方法により得られたポリビニルアルコール組成物は、半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の用途に好適である。
【0102】
本発明のポリビニルアルコール組成物は、界面活性剤、ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、pH調整剤、酸化剤、金属防食剤、防腐剤、防カビ剤等の公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。このポリビニルアルコール組成物に含まれる添加剤は、第1の液および第2の液の少なくとも一方に添加してもよく、これにより添加剤は、ポリビニルアルコール組成物に添加されることになる。または、当該添加剤は、第1の液および第2の液以外の溶液によりポリビニルアルコール組成物に添加されてもよく、ポリビニルアルコール組成物に直接添加されてもよい。
【0103】
≪半導体用濡れ剤および研磨用組成物≫
本発明の製造方法により得られたポリビニルアルコール組成物は、種々の用途に用いられうる。例えば、接着剤、医薬品の結合剤、分散剤、フィルム、化粧品、繊維原料、糊剤、塗料、乳化剤、包装、研磨および研磨後のリンス等の用途に用いられうる。これらのうち、研磨および研磨後のリンスの用途に使用することが好ましい。
【0104】
本発明の一形態によれば、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物を含む、半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物が提供される。すなわち、本発明の一実施形態によれば、ポリビニルアルコール組成物を含む、半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法であって、前記ポリビニルアルコール組成物が、ポリビニルアルコールと水とを含む第1の液、および前記第1の液以外の第2の液のいずれか一方の液中に、前記第1の液および前記第2の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を経て得られる、半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の製造方法が提供される。本形態に係る半導体用濡れ剤は、ポリビニルアルコール組成物を含む。本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物は、半導体用濡れ剤として好適に用いられるため、半導体用濡れ剤用ポリビニルアルコール組成物でありうる。また、本形態に係る研磨用組成物は、ポリビニルアルコール組成物を含む。本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物は、研磨用組成物として好適に用いられるため、研磨用組成物用ポリビニルアルコール組成物でありうる。必要に応じて、本形態に係る半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物は、pH調整剤等その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0105】
本形態に係る半導体用濡れ剤は、ポリビニルアルコール組成物のみで構成されていてもよい。すなわち、一実施形態によれば、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物は、半導体用濡れ剤である。
【0106】
また、半導体用濡れ剤は、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物を、例えば、水等により希釈されたものであってもよい。よって、本発明の一形態によれば、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物と、水を含む第3の液と、を含む、半導体用濡れ剤が提供される。すなわち、本発明の一形態によれば、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物と、水を含む第3の液と、を混合することを含む、半導体用濡れ剤の製造方法も提供される。
【0107】
第3の液としては、水を含む。第3の液は、必要に応じて、界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、pH調整剤(好ましくはアルカリ)、錯化剤、防腐剤、防カビ剤等の公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。ここで、第3の液は、例えば、水だけであってもよく、溶媒をさらに含んでいてもよい。第3の液に含有される溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物などが例示できる。本発明のより好ましい形態によると、第3の液における溶媒は実質的に水からなる。なお、上記の「実質的に」とは、上記の第2の液と同様のことを意味する。
【0108】
ここで、ポリビニルアルコール組成物と、第3の液とを混合して半導体用濡れ剤を製造する場合、上述のポリビニルアルコール組成物の製造方法と同様の方法が好適に用いられる。すなわち、ポリビニルアルコール組成物と、第3の液とを混合して半導体用濡れ剤を製造する場合、好ましい実施形態としては、ポリビニルアルコール組成物および第3の液のいずれか一方の液中に、ポリビニルアルコール組成物および第3の液のいずれか他方を液中添加する液中添加工程を含む。
【0109】
また、半導体用濡れ剤において、ポリビニルアルコール組成物と第3の液との質量比(ポリビニルアルコール組成物:第3の液)は特に制限されない。例えば10:90~90:10、15:75~75:15、20:80~80:20とすることができる。
【0110】
また、本発明の一形態によれば、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤と、砥粒と、を含む、研磨用組成物が提供される。本形態に係る研磨用組成物は、ポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤、および砥粒を含む。また、必要に応じて、本形態に係る研磨用組成物は、pH調整剤等その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0111】
また、本発明の一形態によれば、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物を含む半導体用濡れ剤と、砥粒と、を混合することを含む、研磨用組成物の製造方法が提供される。
【0112】
ポリビニルアルコールは分子中にヒドロキシ基(OH基)を有する。このためポリビニルアルコールは、分子内または分子間における水素結合の作用により凝集しやすい性質を有する。研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤に含まれるポリビニルアルコールの一部が凝集して塊状物が生じ分散性が低下すると、研磨後やリンス後の表面欠陥の低減性能が低下することがある。ここに開示される技術によると、ポリビニルアルコールの塊状物の発生が適切に抑制されて分散性が向上した研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤が実現し得る。
【0113】
以下、本発明の好適な半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0114】
(ポリビニルアルコール組成物)
ここに開示される半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物は、本発明の製造方法により製造されたポリビニルアルコール組成物を含む。
【0115】
半導体用濡れ剤および/または研磨用組成物におけるポリビニルアルコールの濃度(純分)は特に制限されず、例えば0.0001重量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい濃度は0.0005重量%以上であり、より好ましくは0.001重量%以上、例えば0.003重量%以上であり、0.005重量%以上であってもよい。また、基板への作用性等の観点から、ポリビニルアルコールの濃度(純分)は、通常、0.5重量%以下とすることが好ましく、0.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以下であってもよい。
【0116】
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒を含む。砥粒は、研磨対象物の表面を機械的に研磨する働きをする。砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、砥粒は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。なお、半導体用濡れ剤は、砥粒を含まない。
【0117】
上記砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。後述するシリコンウェーハ等のようにシリコンからなる表面を有する基板の研磨(例えば仕上げ研磨)に用いられ得る研磨用組成物では、砥粒としてシリカ粒子を採用することが特に有意義である。ここに開示される技術は、例えば、上記砥粒が実質的にシリカ粒子からなる態様で好ましく実施され得る。ここで「実質的に」とは、砥粒を構成する粒子の95重量%以上(好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上であり、100重量%であってもよい。)がシリカ粒子であることをいう。
【0118】
シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ粒子は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。研磨後において表面品位に優れた研磨面が得られやすいことから、コロイダルシリカの使用が特に好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば、イオン交換法により水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカや、アルコキシド法コロイダルシリカ(アルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されたコロイダルシリカ)を好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
また、砥粒は表面修飾されていてもよい。具体的には、シリカ粒子は、カチオン性基を有してもよい。すなわち、シリカ粒子は、カチオン変性シリカ粒子であってもよく、カチオン変性コロイダルシリカであってもよい。カチオン性基を有するコロイダルシリカ(カチオン変性コロイダルシリカ)として、アミノ基が表面に固定化されたコロイダルシリカが好ましく挙げられる。このようなカチオン性基を有するコロイダルシリカの製造方法としては、特開2005-162533号公報に記載されているような、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤をシリカ粒子の表面に固定化する方法が挙げられる。これにより、アミノ基が表面に固定化されたコロイダルシリカ(アミノ基修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0120】
シリカ粒子は、アニオン性基を有してもよい。すなわち、シリカ粒子は、アニオン変性シリカ粒子であってもよく、アニオン変性コロイダルシリカであってもよい。アニオン性基を有するコロイダルシリカ(アニオン変性コロイダルシリカ)として、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルミン酸基等のアニオン性基が表面に固定化されたコロイダルシリカが好ましく挙げられる。このようなアニオン性基を有するコロイダルシリカの製造方法としては、特に制限されず、例えば、末端にアニオン性基を有するシランカップリング剤とコロイダルシリカとを反応させる方法が挙げられる。
【0121】
具体例として、スルホン酸基をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through of thiol groups”,Chem.Commun.246-247(2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸基が表面に固定化されたコロイダルシリカ(スルホン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0122】
カルボン酸基をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”,Chemistry Letters,3,228-229(2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸基が表面に固定化されたコロイダルシリカ(カルボン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0123】
砥粒構成材料(例えば、シリカ粒子を構成するシリカ)の真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の上限は特に限定されないが、典型的には2.3以下、例えば2.2以下である。砥粒(例えばシリカ粒子)の真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
【0124】
砥粒(典型的にはシリカ粒子)のBET径は特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果(例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果)を得る観点から、上記BET径は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒のBET径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。ここに開示される技術は、高品位の表面(例えば、LPD数が少ない表面)が得られやすいことから、研磨後に高品位の表面が求められる研磨に適用されることが好ましい。かかる研磨用組成物に用いる砥粒としては、BET径が35nm以下(典型的には35nm未満、より好ましくは32nm以下、例えば30nm未満)の砥粒が好ましい。
【0125】
なお、本明細書においてBET径とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、BET径(nm)=6000/(真密度(g/cm)×BET値(m/g))の式により算出される粒子径をいう。例えばシリカ粒子の場合、BET径(nm)=2727/BET値(m/g)によりBET径を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0126】
砥粒の平均二次粒子径は、特に限定されないが、研磨効率等の観点から、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらにより好ましく、25nm以上であることが特に好ましい。より高い研磨効果、例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果を得る観点から、上記平均二次粒子径は、30nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましい。また、砥粒の平均二次粒子径は、砥粒が基板表面に与える局所的なストレスを抑制する観点から、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、125nm以下であることがさらにより好ましい。ここに開示される技術は、より高品位の表面が得られやすいこと等から、平均二次粒子径が100nm以下、例えば80nm未満(典型的には45nm以下)の砥粒を用いる態様でも好ましく、実施されうる砥粒の平均二次粒子径の減少によって、研磨用組成物の安定性が向上する。なお、砥粒の平均二次粒子径は、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA-UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
【0127】
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす粒子の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。例えば、粒子の多くがピーナッツ形状または繭型形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
【0128】
特に限定するものではないが、砥粒の長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、原理的に1.0以上であり、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上である。平均アスペクト比の増大によって、より高い研磨能率が実現され得る。また、砥粒の平均アスペクト比は、スクラッチ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0129】
砥粒の形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
【0130】
研磨用組成物における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.01重量%以上であり、0.05重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.10重量%以上、例えば0.15重量%以上である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。研磨用組成物中の砥粒の分散安定性の観点から、通常、上記含有量は、10重量%以下が適当であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、例えば1重量%以下であり、0.7重量%以下であってもよい。好ましい一態様において、上記含有量は、0.5重量%以下であってもよく、0.4重量%以下であってもよく、0.2重量%以下であってもよい。
【0131】
(界面活性剤)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれのものも使用可能である。ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、界面活性剤を実質的に含まない態様で実施することができる。
【0132】
アニオン性界面活性剤は、例えば、硫酸系、スルホン酸系、リン酸系、ホスホン酸系、及びカルボン酸系に分類される。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、アルキルリン酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、アルキルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、又はそれらの塩、タウリン系界面活性剤、ザルコシネート系界面活性剤、イセチオネート系界面活性剤、N-アシル酸性アミノ酸系界面活性剤、高級脂肪酸塩、アシル化ポリペプチド等が挙げられる。アルキルスルホン酸又はその塩の具体例としては、ドデシルスルホン酸及びドデシルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0133】
カチオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、アルキルアミン塩、アミンオキサイド、第四級アンモニウム塩、及び三級アミドアミン型界面活性剤に分類される。カチオン性界面活性剤の具体例としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0134】
両性界面活性剤の具体例には、アルキルベタイン系、アルキルアミンオキシド系等が含まれる。両性界面活性剤の具体例としては、ココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)等が挙げられる。
【0135】
ノニオン性界面活性剤の具体例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン誘導体(例えば、ポリオキシアルキレン付加物);複数種のオキシアルキレンの共重合体(例えば、ジブロック型共重合体、トリブロック型共重合体、ランダム型共重合体、交互共重合体);ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド等が含まれる。これらの界面活性剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
ここで用いられ得るポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるアルキル基の炭素原子数は、特に限定されない。例えば、上記アルキル基の炭素原子数は、5以上であることが好ましく、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上であり、特に好ましくは8以上であり、具体的には9以上である。例えば、上記アルキル基の炭素原子数は、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下、ある。上記アルキル基の炭素原子数は、例えば10である。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるエチレンオキサイド付加モル数は、特に限定されないが、4以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、15以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8以下であり、特に好ましくは7以下である。表面欠陥低減の観点から、ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤に使用される界面活性剤としては、エチレンオキサイド付加モル数が4~10(例えば6)であるポリオキシエチレンオクチルエーテルが好ましく用いられ得る。
【0137】
ポリオキシアルキレン構造を含有するノニオン性界面活性剤の具体例としては、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体(ジブロック型共重合体、PEO(ポリエチレンオキサイド)-PPO(ポリプロピレンオキサイド)-PEO型トリブロック体、PPO-PEO-PPO型のトリブロック共重合体等)、EOとPOとのランダム共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0138】
界面活性剤のMwは2000未満が好ましく、より好ましくは1500以下であり、さらに好ましくは700以下であり、特に好ましくは500以下である。また、界面活性剤がポリオキシアルキレン誘導体である場合、そのMwは100以上が好ましく、より好ましくは200以上であり、さらに好ましくは300以上である。かかる範囲のMwを有する界面活性剤を含む研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤によると、表面欠陥が好適に低減される。界面活性剤の分子量としては、化学式から算出される分子量を採用することができる。
【0139】
研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における界面活性剤の濃度は特に制限されず、例えば0.0001重量%以上とすることができ、好ましくは0.0003重量%以上である。また、研磨用組成物および/または界面活性剤における界面活性剤の濃度は、通常、0.2重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下とすることがより好ましく、0.05重量%以下であってもよい。好ましい一態様において、研磨用組成物および/または界面活性剤における界面活性剤の濃度は0.0001重量%以上0.002重量%以下であってもよく、0.0002重量%以上0.001重量%以下であってもよい。また、他の好ましい一態様において、研磨用組成物および/または界面活性剤における界面活性剤の濃度は0.005重量%以上0.03重量%以下であってもよい。
【0140】
研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における界面活性剤の含有量に対するポリビニルアルコールの含有量のモル比は、1以下であることが好ましく、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.1以下(例えば0.07以下)である。また、かかる態様における界面活性剤の含有量に対するポリビニルアルコールの含有量のモル比は、通常、0.01以上であり、0.02以上であることが好ましく、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.04以上である。かかる配合比でポリビニルアルコールと界面活性剤とを含有させると、ポリビニルアルコールの凝集が適切に抑制されて、表面欠陥を低減しやすい。
【0141】
(ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子)
ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子としては、分子中に、水酸基、カルボキシ基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド構造、イミド構造、第四級アンモニウム構造、複素環構造、ビニル構造等を含む化合物が挙げられる。また、ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子としては、天然高分子化合物、半合成高分子化合物、合成高分子化合物のいずれを用いてもよい。天然高分子化合物としては、特に制限されないが、好ましくは、多糖類等が挙げられる。また、半合成高分子化合物としては、特に制限されないが、好ましくは、セルロース誘導体、でんぷん誘導体等が挙げられる。そして、合成高分子化合物としては、特に制限されないが、好ましくは、オキシアルキレン単位を有する高分子、窒素原子を含有する高分子等が挙げられる。窒素原子を含有する高分子の一態様としては、N-ビニル型ポリマー、N-(メタ)アクリロイル型ポリマー等が用いられ得る。これらの化合物の具体例を後述する。
【0142】
多糖類としては、特に制限されないが、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、グリコーゲン、アルギン酸、ペクチン、ペクチン酸、デンプン、でんぷん誘導体、アミロース、アミロペクチン、寒天、カードラン、プルラン、グアーガム、コンニャクマンナン、タマリンドガムなどが挙げられる。
【0143】
セルロース誘導体としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(以下、単に「HEC」とも称する。)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体およびプルラン等が挙げられる。セルロース誘導体の種類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、セルロース誘導体とは、主たる繰返し単位としてβ-グルコース単位を含み、セルロースの持つ水酸基の一部が他の置換基に置換されたものをいう。
【0144】
でんぷん誘導体としては、特に制限されないが、例えば、カチオンでんぷん、リン酸でんぷん、カルボキシメチルでんぷん塩などが挙げられる。ここで、でんぷん誘導体とは、主繰返し単位としてα-グルコース単位を含む高分子である。
【0145】
オキシアルキレン単位を有する高分子としては、特に制限されないが、ポリエチレンオキサイド(PEO)や、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)またはブチレンオキサイド(BO)とのブロック共重合体、EOとPOまたはBOとのランダム共重合体等が例示される。そのなかでも、EOとPOのブロック共重合体またはEOとPOのランダム共重合体が好ましい。EOとPOとのブロック共重合体は、PEOブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体等であり得る。上記トリブロック体の例には、PEO-PPO-PEO型トリブロック体およびPPO-PEO-PPO型トリブロック体が含まれる。なかでも、PEO-PPO-PEO型トリブロック体がより好ましい。
【0146】
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比[EO/PO]は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。さらに好ましい一態様において、上記モル比[EO/PO]は、例えば5以上である。
【0147】
N-ビニル型ポリマーの例には、窒素を含有する複素環(例えばラクタム環)を有するモノマーに由来する繰返し単位を含むポリマーが含まれる。このようなポリマーの例には、N-ビニルラクタム型モノマーの単独重合体および共重合体(例えば、N-ビニルラクタム型モノマーの共重合割合が50重量%を超える共重合体)、N-ビニル鎖状アミドの単独重合体および共重合体(例えば、N-ビニル鎖状アミドの共重合割合が50重量%を超える共重合体)等が含まれる。
【0148】
N-ビニルラクタム型モノマー(すなわち、一分子内にラクタム構造とN-ビニル基とを有する化合物)の具体例としては、N-ビニルピロリドン(VP)、N-ビニルピペリドン、N-ビニルモルホリノン、N-ビニルカプロラクタム(VC)、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。N-ビニルラクタム型のモノマー単位を含むポリマーの具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、VPとVCとのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方と他のビニルモノマー(例えば、アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー等)とのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方を含むポリマー鎖を含むブロック共重合体、交互共重合体やグラフト共重合体等が挙げられる。
【0149】
N-ビニル鎖状アミドの具体例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミド、N-ビニル酪酸アミド等が挙げられる。
【0150】
N-(メタ)アクリロイル型ポリマーの例には、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの単独重合体および共重合体(典型的には、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの共重合割合が50重量%を超える共重合体)が含まれる。N-(メタ)アクリロイル型モノマーの例には、N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドおよびN-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドが含まれる。
【0151】
N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドの例としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドをモノマー単位として含むポリマーの例として、N-イソプロピルアクリルアミドの単独重合体およびN-イソプロピルアクリルアミドの共重合体(例えば、N-イソプロピルアクリルアミドの共重合割合が50重量%を超える共重合体)が挙げられる。
【0152】
N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの例としては、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルチオモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピロリジン等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドをモノマー単位として含むポリマーの例として、アクリロイルモルホリン系ポリマー(PACMO)が挙げられる。アクリロイルモルホリン系ポリマーの典型例として、N-アクリロイルモルホリン(ACMO)の単独重合体およびACMOの共重合体(例えば、ACMOの共重合割合が50重量%を超える共重合体)が挙げられる。アクリロイルモルホリン系ポリマーにおいて、全繰返し単位のモル数に占めるACMO単位のモル数の割合は、通常は50%以上であり、80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)であることが適当である。水溶性高分子の全繰返し単位が実質的にACMO単位から構成されていてもよい。
【0153】
窒素原子を有する高分子としては、他にもイミン誘導体ポリヒドロキシルエチルアクリルアミド(PHEAA)、ポリN-ビニルイミダゾール(PVI)、ポリN-ビニルカルバゾール、ポリN-ビニルピペリジン等が挙げられる。窒素原子を有する高分子の種類は、単独重合体であっても共重合体であってもよく、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0154】
また、上記ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子は、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性高分子であり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記水溶性高分子としてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
【0155】
また、他の水溶性高分子の具体例としては、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アミド、ポリカルボン酸エステル、ポリホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸、エチレンオキサイド重合体、ビニルポリマー、カチオン性ポリマー等の水溶性重合体、及びそれらの共重合体、その塩、誘導体等が挙げられる。ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アミド、ポリカルボン酸エステル又はポリカルボン酸塩の具体例としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩、ポリグリオキシル酸等が挙げられる。カチオン性ポリマーの具体例としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、ジシアンジアミド-ジエチレントリアミン縮合物が挙げられる。これらの水溶性高分子は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、典型的には2×10以上であり、5×10以上であってもよく、1×10以上であってもよく、5×10以上であってもよく、10×10以上であってもよく、20×10以上であってもよい。また、分散剤のMwは100×10以下であってもよく、50×10以下であってもよく、45×10以下であってもよく、40×10以下であってもよい。
【0157】
研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における水溶性高分子の濃度は特に制限されず、例えば0.0001重量%以上とすることができ、好ましくは0.0003重量%以上である。また、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における水溶性高分子の濃度は、通常、0.2重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下とすることがより好ましく、0.05重量%以下であってもよい。好ましい一態様において、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における水溶性高分子の濃度は0.0001重量%以上0.002重量%以下であってもよく、0.0002重量%以上0.001重量%以下であってもよい。また、他の好ましい一態様において、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における水溶性高分子の濃度は0.005重量%以上0.03重量%以下であってもよい。
【0158】
研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤における水溶性高分子の含有量に対するポリビニルアルコールの含有量のモル比は、15以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下(例えば4以下)である。また、かかる態様における水溶性高分子の含有量に対するポリビニルアルコールの含有量のモル比は、通常、0.1以上であり、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは1以上である。かかる配合比でポリビニルアルコールと水溶性高分子とを含有させると、ポリビニルアルコールの凝集が適切に抑制されて、表面欠陥を低減しやすい。
【0159】
(pH調整剤)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、pH調整剤をさらに含んでもよい。pH調整剤は、主としてここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤のpHを調整する目的で添加される。pH調整剤は、pH調整機能を有する化合物であれば特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、アルカリおよび酸等が挙げられる。
【0160】
本明細書においてアルカリとは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。アルカリとしては、窒素を含む有機または無機のアルカリ、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。窒素を含むアルカリの例としては、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、アンモニア、アミン(好ましくは水溶性アミン)等が挙げられる。
【0161】
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。第四級ホスホニウム化合物の具体例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム等の水酸化第四級ホスホニウムが挙げられる。
【0162】
第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウム塩、ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩(典型的には強塩基)を好ましく用いることができる。かかる第四級アンモニウム塩におけるアニオン成分は、例えば、OH、F、Cl、Br、I、ClO4-、BH4-等であり得る。なかでも好ましい例として、アニオンがOHである第四級アンモニウム塩、すなわち水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。水酸化第四級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウムおよび水酸化テトラヘキシルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム;水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリンともいう。)等の水酸化ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム;等が挙げられる。
【0163】
これらのアルカリのうち、例えば、アルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウムおよびアンモニアから選択される少なくとも一種のアルカリを好ましく使用し得る。なかでも水酸化テトラアルキルアンモニウム(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム)およびアンモニアがより好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0164】
ここで、本発明の一実施形態によれば、液中添加工程を経て得られたポリビニルアルコール組成物にアルカリを添加するアルカリ添加工程をさらに含む。本発明のポリビニルアルコール組成物に対してアルカリ添加工程を行い、アルカリ性のポリビニルアルコール組成物とすることにより、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤として好ましく用いられうる。アルカリ添加工程は、好ましくは、液中添加工程を経て得られたポリビニルアルコール組成物と、アルカリを含む第3の液と、を混合することにより行われる。
【0165】
本明細書において酸とは、水に溶解して水溶液のpHを下げる機能を有する化合物を指す。酸としては、無機酸または有機酸のいずれを用いてもよい。無機酸としては、特に制限されないが、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸等が挙げられる。有機酸としては、特に制限されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等が挙げられる。これらの中でも、マレイン酸または硝酸であることがより好ましく、マレイン酸であることがさらに好ましい。
【0166】
pH調整剤の含有量は、特に制限されず、本発明の一形態に係るポリビニルアルコール組成物、本発明の一形態に係る半導体用濡れ剤、および本発明の一形態に係る研磨用組成物のpHが所望の範囲内となるように、適宜選択すればよい。
【0167】
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤がアルカリを含む場合、研磨液におけるアルカリの濃度は特に制限されない。基板表面への作用性等の観点から、通常は、上記濃度を研磨液の0.001重量%以上とすることが好ましく、0.003重量%以上(例えば0.005重量%以上)とすることがより好ましい。また、ヘイズ低減等の観点から、上記濃度は、0.3重量%未満とすることが適当であり、0.1重量%未満とすることが好ましく、0.05重量%未満とすることがより好ましく、0.03重量%未満(例えば0.025重量%未満、さらには0.01重量%未満)とすることが特に好ましい。
【0168】
(キレート剤)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、キレート剤をさらに含んでもよい。キレート剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。キレート剤の好適例としては、例えばエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。上記防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0169】
(有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、有機酸およびその塩、ならびに無機酸およびその塩をさらに含んでもよい。有機酸およびその塩、ならびに無機酸およびその塩は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、イタコン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グリコール酸、マロン酸、グルコン酸、アラニン、グリシン、乳酸、ヒドロキシエチリデン二リン酸(HEDP)、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、ニトリロトリス(メチレンリン酸)(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)等の有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の例としては、有機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、リン酸、硫酸、ホスホン酸、硝酸、ホスフィン酸、ホウ酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の例としては、無機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩が挙げられる。
【0170】
(金属防食剤)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、金属防食剤をさらに含んでもよい。金属防食剤の具体例としては、例えば、ピロール化合物、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、ピリダジン化合物、ピリンジン化合物、インドリジン化合物、インドール化合物、イソインドール化合物、インダゾール化合物、プリン化合物、キノリジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、ナフチリジン化合物、フタラジン化合物、キノキサリン化合物、キナゾリン化合物、シンノリン化合物、ブテリジン化合物、チアゾール化合物、イソチアゾール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、フラザン化合物等の含窒素複素環化合物が挙げられる。これらの金属防食剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0171】
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、酸化剤をさらに含んでもよい。酸化剤の具体例としては、過酸化物、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、バナジン酸塩、次亜塩素酸塩、酸化鉄、オゾン等が挙げられる。過酸化物の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素及び過塩素酸、過塩素酸塩、並びに過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの酸化剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0172】
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤を、シリコン単結晶からなる表面を有する基板へ用いる場合、上記酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。酸化剤が含まれていると、シリコン基板の表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより基板表面への作用性が低下してしまうことがあるためである。ここで、酸化剤を実質的に含有しないとは、少なくとも意図的には酸化剤を配合しないことをいい、原料や製法等に由来して微量の酸化剤が不可避的に含まれることは許容され得る。上記微量とは、酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下(好ましくは0.0001モル/L以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下)であることをいう。好ましい一態様に係る研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、上記酸化剤を含有しない。
【0173】
(防腐剤、防カビ剤)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、防腐剤、防カビ剤をさらに含んでもよい。防腐剤及び防カビ剤の具体例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。これら防腐剤及び防カビ剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
(pH)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤のpHは、特に限定されない。pHは1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、典型的には8.0以上であり、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.3以上、例えば9.5以上である。一方、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤のpHは、12.0以下であることが適当であり、11.0以下であることが好ましく、10.8以下であることがより好ましく、10.5以下であることがさらに好ましい。
【0175】
pHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F-23))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。
【0176】
[研磨液およびリンス液]
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で基板に供給されて、その基板の研磨に用いられる。また、ここに開示される半導体用濡れ剤は、典型的には該半導体用濡れ剤を含むリンス液の形態で基板に供給されて、その基板のリンスに用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、基板に供給されて該基板の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(すなわち、研磨液の原液)との双方が包含される。上記リンス液は、例えば、ここに開示されるいずれかの半導体用濡れ剤を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該半導体用濡れ剤をそのままリンス液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における半導体用濡れ剤の概念には、基板に供給されて該基板のリンスに用いられるリンス液と、希釈してリンス液として用いられる濃縮液(すなわち、リンス液の原液)との双方が包含される。ここに開示される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。また、ここに開示される半導体用濡れ剤を含むリンス液の他の例として、該組成物のpHを調整してなるリンス液が挙げられる。
【0177】
(濃縮液)
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、基板に供給される前には濃縮された形態であってもよい。すなわち、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、研磨液および/またはリンス液の濃縮液の形態であり、研磨液および/またはリンス液の原液としても把握され得る。このように濃縮された形態の研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮液の濃縮倍率は特に限定されず、例えば、体積換算で2倍~100倍程度とすることができ、通常は5倍~50倍程度(例えば10倍~40倍程度)が適当である。
【0178】
このような濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨液(ワーキングスラリー)を調製し、該研磨液を基板に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
【0179】
上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば50質量%以下とすることができる。上記濃縮液の取扱い性(例えば、砥粒の分散安定性や濾過性)等の観点から、通常、上記濃縮液における砥粒の含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下(例えば10質量%以下)である。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5質量%以上とすることができ、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、例えば3質量%以上である。好ましい一態様において、砥粒の含有量は、4質量%以上としてもよく、5質量%以上としてもよい。
【0180】
[研磨用組成物および半導体用濡れ剤の調製]
ここに開示される技術において使用される研磨用組成物は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、研磨用組成物の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分の少なくとも一部を含むパートBとを混合し、これらを必要に応じて適切なタイミングで混合および希釈することにより研磨液が調製されるように構成されていてもよい。ここに開示される技術において使用される半導体用濡れ剤は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、半導体用濡れ剤の構成成分のうち少なくともポリビニルアルコールを含むパートAと、残りの成分の少なくとも一部を含むパートBとを混合し、これらを必要に応じて適切なタイミングで混合および希釈することによりリンス液が調製されるように構成されていてもよい。
【0181】
研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤の調製方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤を構成する各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0182】
[基板]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、種々の材質および形状を有する基板の研磨および/またはリンスに適用されうる。基板の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ハフニウム、コバルト、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された基板であってもよい。また、金属、酸素原子およびケイ素原子を有する基板、ケイ素-ケイ素結合を有する基板、窒素原子およびケイ素原子を有する基板などであってもよい。酸素原子およびケイ素原子を有する基板としては、例えば、酸化ケイ素(SiO)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)重縮合物等が挙げられる。ケイ素-ケイ素結合を有する基板としては、例えば、ポリシリコン、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、n型ドープ単結晶シリコン、p型ドープ単結晶シリコン、SiGe等のSi系合金等が挙げられる。窒素原子およびケイ素原子を有する基板としては、窒化ケイ素膜、SiCN(炭窒化ケイ素)等のケイ素-窒素結合を有する基板などが挙げられる。
【0183】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、シリコンからなる表面の研磨および/またはリンス、典型的にはシリコンウェーハの研磨および/またはリンスに特に好ましく使用されうる。ここでいうシリコンウェーハの典型例はシリコン単結晶ウェーハであり、例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハである。
【0184】
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、基板(例えばシリコンウェーハ)のポリシング工程、その後のリンス工程に好ましく適用することができる。基板には、ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤によるポリシング工程の前に、ラッピングやエッチング等の、ポリシング工程より上流の工程において基板に適用され得る一般的な処理が施されていてもよい。
【0185】
ここに開示される研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、例えば、上流の工程によって表面粗さ0.1nm~100nmの表面状態に調製された基板(例えばシリコンウェーハ)のポリシング、その後のリンスにおいて好ましく用いられ得る。基板の表面粗さRaは、例えば、Schmitt Measurement System Inc.社製のレーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」を用いて測定することができる。ファイナルポリシング(仕上げ研磨)またはその直前のポリシングおよびそれらの後のリンスでの使用が効果的であり、ファイナルポリシングおよびその後のリンスにおける使用が特に好ましい。ここで、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。
【0186】
<研磨およびリンス>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、基板の研磨に使用することができる。また、ここに開示される半導体用濡れ剤は、例えば以下の操作を含む態様で、基板のリンスに使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて基板(例えばシリコンウェーハ)を研磨する方法およびここに開示される半導体用濡れ剤を用いて基板(例えばシリコンウェーハ)をリンスする方法の好適な一態様につき説明する。
【0187】
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
【0188】
次いで、その研磨液を基板に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコンウェーハの仕上げ研磨を行う場合、典型的には、ラッピング工程を経たシリコンウェーハを一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコンウェーハの研磨対象面に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコンウェーハの研磨対象面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て基板の研磨が完了する。
【0189】
続いて、ここに開示されるいずれかの半導体用濡れ剤を含むリンス液を用意する。上記リンス液を用意することには、半導体用濡れ剤に濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えてリンス液を調製することが含まれ得る。あるいは、半導体用濡れ剤をそのままリンス液として使用してもよい。
【0190】
次いで、そのリンス液を基板に供給し、上記研磨と同様の方法で、シリコンウェーハの研磨後の面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる工程を経て基板のリンスが完了する。
【0191】
(研磨パッド)
上記研磨工程および/またはリンス工程に使用される研磨パッドは、特に限定されない。例えば、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。各研磨パッドは、砥粒を含んでもよく、砥粒を含まなくてもよい。通常は、砥粒を含まない研磨パッドが好ましく用いられる。
【0192】
[洗浄]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤を用いて研磨および/またはリンスされた基板は、典型的には洗浄される。洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC-1洗浄液、SC-2洗浄液等を用いることができる。SC-1洗浄液としては、水酸化アンモニウム(NHOH)と過酸化水素(H)と水(HO)との混合液が挙げられる。SC-2洗浄液としては、HClとHとHOとの混合液が挙げられる。洗浄液の温度は、例えば室温以上、約90℃程度までの範囲とすることができる。室温は、典型的には約15℃~25℃である。洗浄効果を向上させる観点から、40℃~85℃程度の洗浄液を好ましく使用しうる。
【実施例0193】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。また、以下の説明におけるPVAは、いずれも、ポリ酢酸ビニルのけん化物である。
【0194】
(溶液(1)の調製)
3Lの容器に、室温(25℃)の水1200部を添加した後、ポリビニルアルコール(PVA-124、(株)クラレ製、重合度2400、けん化度98.0~99.0mol%)600部を添加した(固形分濃度3.3質量%)。そして、プロペラ翼を有するメカニカルスターラ(新東科学株式会社製、製品名スリーワンモータ、型番BLh1200)を用いて250rpmの回転速度で攪拌し、容器内の溶液が90℃を超えるまで昇温し、ポリビニルアルコールを分散・膨潤させた。その後撹拌を続けながら95℃まで昇温し、その温度を保ったまま引き続き1時間撹拌して、ポリビニルアルコールを溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。
【0195】
その後、ポリビニルアルコール水溶液の入った容器を水浴に浸漬することにより冷却した。ポリビニルアルコール水溶液の撹拌を続けながら、水浴で冷却し、ポリビニルアルコール水溶液の温度が25℃になったところで冷却を止めた。95℃から25℃になるまで約30分を要した。したがってこのときの冷却速度は、約2℃/分と計算される。得られたポリビニルアルコール水溶液を溶液(1)とした。
【0196】
[添加実験]
溶液(1)の添加実験を行うために、図1に示す装置10を準備した。図1は、液中添加の実験に用いた装置10を模式的に示す図である。
【0197】
図1に示すように、ビーカー11、12には、それぞれ溶液(1)21a、21bが配置されている(例えば、900部ずつ)。ポンプ13の吸引側には、チューブ15aの一端が接続され、排出側にはチューブ15bの一端が接続されている。チューブ15aの他端は、ビーカー12の溶液(1)21b内に浸漬されており、チューブ15bの他端は、ビーカー11の溶液(1)21a内に浸漬されている。これにより、ポンプ13を作動させることにより、ビーカー12内の溶液(1)21bが、チューブ15a、15bを経由して、ビーカー11の溶液(1)21a内に直接添加(液中添加)されるように構成されている。本実験では、第1の液、第2の液いずれもが溶液(1)となる。
【0198】
(実施例1)
上記で得られた溶液(1)を図1に示す装置10を用いて、液中への添加実験を行った。ビーカー11、12には、それぞれ溶液(1)21a、21bが900部ずつ配置されている。なお、用いたチューブ15a、15bの径は5mmであり、ビーカー11(撹拌容器)の内径は20cmであり、溶液(1)21aへの溶液(1)21bの添加速度は150~160mL/minとし、5分間、溶液(1)21bの液中添加を行った。液中添加時には攪拌を行わなかった。液中添加の終了後、ビーカー11は、スリーワンモータ(装置)(図示せず)により撹拌(100rpmの回転数)を行い、液中添加をする溶液(1)の温度は25℃であった。撹拌翼径(L)の撹拌容器の内径(D)に対する比(L/D)は、0.5であった。攪拌終了後、ビーカー11内の溶液(1)21aを回収し、実施例1のポリビニルアルコール組成物(以下、PVA組成物)(1)とした。
【0199】
(比較例1)
比較例1では、滴下により添加を行った。この際、図1に示す装置10において、チューブ15bの他端を、ビーカー11の溶液(1)21a内から取り出し、溶液(1)21aの50~60cm上に配置(例えば、クランプ等でチューブ15bを保持する)することにより、滴下による添加実験を行った。なお、溶液(1)21aへの溶液(1)21bの添加速度は150~160mL/minとし、5分間、溶液(1)21bの滴下添加を行った。液中添加時には攪拌を行わなかった。液中添加の終了後、ビーカー11は、スリーワンモータ(装置)により撹拌(100rpmの回転数を行い、液中添加をする溶液(1)の温度は25℃であった。攪拌終了後、ビーカー11内の溶液(1)21aとビーカー12内の溶液(1)21bとを合わせて回収し、比較例1のPVA組成物(2)とした。
【0200】
(参考例1)
添加実験を行っていない溶液(1)(調製後、10分間静置)をPVA組成物(3)とした。
【0201】
[ろ過性の評価]
添加実験を行った溶液に対して、ろ過性の評価を行った。ろ過性の評価を行うにあたり、フィルタの個体差を排除するためにDIW補正を行った。ここで、DIW補正とは、フィルタ間のろ過能力の差を係数で補正するもので、係数は脱イオン水を用いたろ過性能(ろ過時間および通液量)に基づいて算出している。
【0202】
・コントロール
まず、使用する各フィルタに対して、25℃の脱イオン水600gのろ過を行った。フィルタの材質はポリプロピレン、孔径は0.2μmであった。ろ過方法は、吸引ろ過によりろ過を行った。なお、ろ過の吸引圧は0.0125MPaで行った。通液時間100秒におけるろ過重量(g)と通液時間600秒におけるろ過重量(g)とを測定した。これらの脱イオン水を用いた場合のろ過重量(g)を各フィルタのDIW補正に使用した。
【0203】
・PVA組成物
上記で得られた各PVA組成物600g(25℃)に対して、上記コントロールで使用したフィルタを用いて、吸引ろ過(吸引圧0.0125MPa)によりろ過を行った。60秒間隔で通液量を測定した。表1には、各PVA組成物における通液量(g)を示した。なお、値はDIW補正がなされている。
【0204】
・ろ過重量 DIW補正
(各評価サンプルDIW補正値の算出)
脱イオン水のろ過における通液時間100秒後のろ過重量と、通液時間600秒後のろ過重量を1/6した値とを加算し平均値を求め、「通液時間100秒経過時のろ過重量(平均値)」とした。各評価サンプル(液中添加、滴下添加および静置した溶液のそれぞれ)のろ過性評価に使用する各フィルタに対して、脱イオン水のろ過における通液時間100秒経過時のろ過重量(平均値)を算出した。これが、下記式(1)の「各評価サンプルの通液時間100秒経過時のろ過重量(平均値)」となる。
【0205】
また、ろ過性評価を行なった全評価サンプルの通液時間100秒経過時のろ過重量平均値を算出した。すなわち、「全評価サンプルの通液時間100秒経過時のろ過重量平均値」とは、液中添加、滴下添加および静置した溶液のろ過性評価を行なったフィルタにおける脱イオン水の通液時間100秒経過時のろ過重量の平均値(全評価サンプルの平均値)である。
【0206】
上記で得られた各評価サンプルの通液時間100秒経過時のろ過重量(平均値)と、「全評価サンプルの通液時間100秒経過時のろ過重量平均値」とを用いて、各評価サンプルにおける下記式(2)の「各評価サンプルDIW補正値」を算出した。
【0207】
(ろ過重量DIW補正の算出)
各評価サンプルにおける通液時間に対するろ過重量の脱イオン水に基づく補正は、「各評価サンプルDIW補正値」を用いて以下のように行った。各評価サンプルの各通液時間(規定値)において、「各評価サンプルDIW補正値」を行ったろ過重量(ろ過重量 DIW補正)の結果を表1に示す。
【0208】
【数1】
【0209】
【表1】
【0210】
表1に示すように、液中添加を行ったPVA組成物(1)は、滴下添加を行ったPVA組成物(2)に比べて、ろ過性が顕著に良好であり、液中添加によりろ過性が改善されることがわかった。また、液中添加を行ったPVA組成物(1)は、液中添加工程を経ていない静置したPVA組成物(3)と比べて、ろ過性がほぼ同じであることがわかる。これにより、液中添加を行った場合は、添加による凝集物の発生が顕著に抑制されていることがわかる。
【0211】
これにより、PVA組成物(1)を含む研磨用組成物および/または半導体用濡れ剤は、シリコンウェーハ等の基板の研磨および/またはリンスに使用されて、表面欠陥(例えばLPD:Light Point Defects等)が低減し、基板の表面品位が大きく向上し得ることがわかる。
【符号の説明】
【0212】
10 液中添加の実験装置、
11、12 ビーカー、
13 ポンプ、
15a、15b チューブ、
21a、21b 溶液(1)。
図1