(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056934
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】真空断熱材及び真空断熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
F16L59/065
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164940
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】林 知治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 準一
(72)【発明者】
【氏名】田中 信幸
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB24
3H036AB28
3H036AE13
(57)【要約】
【課題】減圧溶着部におけるダストの噛み込みが高度に抑制された真空断熱材、及び、当該真空断熱材の製造にあたりスループットを向上させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】外被材12に対し、開口部28から外被材12の内部へと芯材14を収納し、芯材14を収納した外被材12に対し、大気下で芯材14と開口部28との間に位置する熱溶着層16、16同士を部分的に熱溶着させることで、芯材14から発塵するダストを堰き止めるための第3溶着部30、32を形成し、第3溶着部30、32が形成された外被材12に対し、開口部28の熱溶着層16、16同士を減圧下で熱溶着して開口部28を第2溶着部26とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶着層と気密層とを有するフィルムが前記熱溶着層同士が対向するように配置されてなる外被材と、前記外被材の内部に減圧状態で収納された芯材と、を有する真空断熱材であって、
前記外被材は、前記芯材の周囲全体に亘り所定の幅で前記熱溶着層同士が熱溶着された溶着部を有し、
前記溶着部は、前記周囲全体の長さの50%以上を占めるように形成される第1溶着部と、残る第2溶着部と、からなり、
前記芯材と前記第2溶着部との間に、前記熱溶着層同士が部分的に熱溶着されてなる第3溶着部を1つ以上有する、
真空断熱材。
【請求項2】
前記芯材は、矩形状であり、
前記溶着部は、前記芯材の周辺部に沿った枠状に形成され、前記第1溶着部は、前記芯材の周辺部に沿った矩形の三辺を囲んでおり、
前記第3溶着部は、前記芯材の周辺部のうち前記第2溶着部に対して略直交する方向の辺部の延長線に対して交差する方向に、長手軸を有する帯状に形成される、
請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記第3溶着部は、前記第1溶着部と連結され、前記第2溶着部から前記第3溶着部を見た場合、前記芯材に重なるように形成される、
請求項2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記第3溶着部は、前記第2溶着部に対向する前記芯材の辺部と前記第2溶着部との間に複数個配置される、
請求項2または3に記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記第3溶着部の長手方向における少なくとも一つの端部が、前記芯材に向けて曲がっている、
請求項2から4のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記第2溶着部に対向する前記芯材の辺部から前記第2溶着部までの最短距離が、前記第1溶着部に対向する前記芯材の辺部から前記第1溶着部までの最短距離よりも長い、
請求項1から5のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【請求項7】
熱溶着層と気密層とを有するフィルムを前記熱溶着層同士が対向するように配置してなる外被材と、前記外被材の内部に減圧状態で収納された芯材と、を有する真空断熱材の製造方法であって、
前記外被材は、前記芯材の周囲を囲んで所定の幅で前記熱溶着層同士が熱溶着された第1溶着部と、未溶着部とを有し、
前記未溶着部から前記外被材の内部へと前記芯材を収納し、
前記芯材を収納した前記外被材に対し、大気下で前記芯材と前記未溶着部との間に位置する前記熱溶着層同士を部分的に熱溶着して第3溶着部を形成し、
前記第3溶着部の外縁側に残された前記未溶着部の前記熱溶着層同士を減圧下で熱溶着して、前記未溶着部を第2溶着部とする、
真空断熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及び真空断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材は、グラスウールまたはシリカパウダー等を固めた多孔体の芯材を、気密性を有し内面に熱溶着層を有する袋状の外被材に収納し、減圧下で芯材の外周の外側部分の熱溶着層同士を熱溶着することで製造される。
【0003】
この場合、芯材を外被材に収納する際に、外被材の開口部(未溶着部ともいう。)において芯材が外被材と接触することで、あるいは真空排気時に芯材内外から誘引されて分離発塵した粉塵(以下、ダストという。)が発生し、このダストが開口部付近の熱溶着層に付着することがある。この状態で、開口部を熱溶着した場合、開口部付近にダストを噛み込んだ溶着部(減圧しながら溶着した部分)が形成される。
【0004】
真空断熱材は内部を減圧にすることで高い断熱性を得るものであるが、上記のように溶着部にダストが噛み込まれた場合、長期使用において真空度が低下し、断熱性能が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、上記の問題を解決するために、例えば、特許文献1には、芯材を袋状の外被材に収納する収納工程と、減圧溶着工程と、クリーニング工程と、保護溶着工程とを備えた真空断熱材の製造方法および真空断熱材が開示されている。特許文献1によれば、減圧溶着部にダストが噛み込まれている場合であっても、保護溶着部を設けることで長期使用において真空度の低下が抑制された真空断熱材を製造できる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の真空断熱材は、その製造工程で2回の溶着工程(減圧溶着工程および保護溶着工程)とクリーニング工程とを必要とするので、真空断熱材の製造に時間がかかりスループットを上げることができないという問題がある。さらには、ダストが多い場合には2回の溶着工程を行う間にも真空度自体が低下し、真空断熱材の断熱性能が低下するという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、減圧溶着部におけるダストの噛み込みが高度に抑制された真空断熱材、及び、当該真空断熱材の製造にあたりスループットを向上させることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の真空断熱材は、上記の目的を達成するために、熱溶着層と気密層とを有するフィルムが熱溶着層同士が対向するように配置されてなる外被材と、外被材の内部に減圧状態で収納された芯材と、を有する真空断熱材であって、外被材は、芯材の周囲全体に亘り所定の幅で熱溶着層同士が熱溶着された溶着部を有し、溶着部は、周囲全体の長さの50%以上を占めるように形成される第1溶着部と、残る第2溶着部と、からなり、芯材と第2溶着部との間に、熱溶着層同士が部分的に熱溶着されてなる第3溶着部を1つ以上有する。
【0010】
本発明の真空断熱材の製造方法は、上記の目的を達成するために、熱溶着層と気密層とを有するフィルムを熱溶着層同士が対向するように配置してなる外被材と、外被材の内部に減圧状態で収納された芯材と、を有する真空断熱材の製造方法であって、外被材は、芯材の周囲を囲んで所定の幅で熱溶着層同士が熱溶着された第1溶着部と、未溶着部とを有し、未溶着部から外被材の内部へと芯材を収納し、芯材を収納した外被材に対し、大気下で芯材と未溶着部との間に位置する熱溶着層同士を部分的に熱溶着して第3溶着部を形成し、第3溶着部の外縁側に残された未溶着部の熱溶着層同士を減圧下で熱溶着して、未溶着部を第2溶着部とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、減圧溶着部におけるダストの噛み込みを高度に抑制でき、かつ、スループットが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1に示した真空断熱材の2-2線に沿う断面図
【
図3】堰部として機能する第3溶着部の構成を示した拡大平面図
【
図4】真空断熱材の製造方法を時系列的に示した説明図
【
図6】第3溶着部にダストが堰き止められた状態を示した真空断熱材の平面図
【
図7】第2実施形態に係る真空断熱材の平面図であって堰部として機能する第3溶着部の構成を示した拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係る真空断熱材及び真空断熱材の製造方法の実施形態について説明する。以下の説明において、真空断熱材の「内側」および「外側」とは、真空断熱材を面方向で見た場合に、「外周から中心に向かう側」及び「中心から外周に向かう側」を指す。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る真空断熱材10の平面図である。
図2は、
図1に示した真空断熱材10の2-2線に沿う断面図である。
【0015】
図1に示すように、真空断熱材10は、矩形の袋状に構成された外被材12と、外被材12の内部に減圧状態で収納された矩形の芯材14と、を有している。上記の外被材12は、
図2に示すように、熱溶着層16と気密層18とを有するフィルム20が、熱溶着層16、16同士が対向するように配置されてなる。また、外被材12は、芯材14の周囲全体に亘り所定の幅W1で熱溶着層16、16同士が熱溶着された枠状の溶着部22を有する。なお、
図1では、矩形状の外被材12と芯材14とを示したが、その形状は矩形に限定されるものではなく、例えば、円形など他の形状であってもよい。
【0016】
上記の溶着部22は、第1溶着部24と第2溶着部26とを有する。
【0017】
第1溶着部24は、芯材14を外被材12に収納する前に予め溶着されて形成されたものである。具体的に説明すると、第1溶着部24は、芯材14の周辺部に沿った辺部14A、14B、14Cを囲むように形成される。すなわち、第1溶着部24は、辺部14A、14B、14Cに対向する3本の直線状溶着部24A、24B、24Cからなる。これらの直線状溶着部24A、24B、24Cは、外被材12の辺部12A、12B、12Cと平行に、かつ、辺部12A、12B、12Cから内側に向けて所定の寸法分離間した位置に形成される。また、第1溶着部24は、芯材14の周囲の長さの50%以上を占めるように形成されている。
【0018】
残りの第2溶着部26は、芯材14を外被材12に収納するための開口部28(
図4参照)付近に形成されており、芯材14を外被材12に収納した後に溶着されるものである。具体的に説明すると、第2溶着部26は、芯材14の辺部14Dに対向する1本の直線状溶着部26Aからなる。直線状溶着部26Aは、直線状溶着部24Aと直線状溶着部24Cとを連結し、外被材12の辺部12Dと平行に、かつ、辺部12Dから内側に向けて所定の寸法分離間した位置に形成される。
【0019】
一方、芯材14の辺部14Dと第2溶着部26の直線状溶着部26Aとの間に、熱溶着層16、16同士が部分的に熱溶着されてなる2つの同形状の第3溶着部30、32が形成されている。この第3溶着部30、32は、芯材14から発生するダストを堰き止めるための堰部として機能する。なお、実施形態では、2つの第3溶着部30、32を例示したが、第3溶着部は1つ以上有していればよい。第3溶着部30、32については後述する。
【0020】
ここで、真空断熱材10を構成する上記部材の好ましい態様について説明する。
【0021】
<外被材12>
外被材12としては、熱溶着層16と気密層18とが積層されたフィルム状の部材であればよく、一例として、真空断熱材に使用される外被材が挙げられる。外被材12は、熱溶着層16および気密層18に加えて表面保護層を有していてもよい。この場合、外被材12は、芯材14を収納する側に熱溶着層16を有し、中間層として気密層18を有し、最外層として表面保護層を有する構成となる。
【0022】
また、外被材12の他の構成部材としては、気密層18としての金属箔または金属蒸着層からなる金属層を表面保護層の片面上に有するラミネートフィルムが挙げられる。また、金属箔を有するラミネートフィルムと金属蒸着層を有するラミネートフィルムの2種類のラミネートフィルムを組み合わせたものが挙げられる。これらのラミネートフィルムの金属層側に熱溶着層16が積層されて外被材12が構成される。
【0023】
熱溶着層16の構成材料としては、一例として、低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、無延伸ポリエチレンテレフタレート、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。
【0024】
気密層18の構成材料としては、一例として、金属が挙げられる。好ましい金属材料は、アルミニウム(熱伝導率:236W/(m・K))、ステンレス(熱伝導率:16.7-20.9W/(m・K))、鉄(84W/(m・K))等が挙げられる。加工性や入手のしやすさの点で、アルミニウムが特に好ましい。
【0025】
表面保護層の構成材料としては、一例として、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などが挙げられる。
【0026】
<芯材14>
芯材14としては、真空断熱材に用いられる公知の芯材が挙げられる。一例として、気相比率90%前後の多孔体を材料として、これを板状に加工した芯材が挙げられる。工業的に利用できる多孔体として、通気性を有する粉体、繊維および発泡体が挙げられる。
【0027】
ここで、本明細書において「ダスト」とは、芯材14から発生する芯材を構成する材料の一部等を含む微小体であって、それを挟持することで溶着部のリークを誘引し、真空断熱材の真空度に悪影響を及ぼすことが想定されるあらゆる微小体をいう。
【0028】
本発明の真空断熱材および真空断熱材の製造方法における効果は、芯材として粉体を用いた場合にダストが発生し、付着しやすいことから、特に顕著である。芯材14としては、粉体を含む断熱材材料が板状に圧縮成形された芯材が好ましく、高強度な芯材を得やすい点から、繊維体を含む圧縮成形体が好ましい。
【0029】
このうち、粉体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物が挙げられるが、工業的には、乾式シリカ、湿式シリカ、パーライトなどを主成分とするものが挙げられる。具体的には、ヒュームドシリカ、多孔質シリカ、輻射抑制材等が挙げられる。粉体としては、充分な強度を有する芯材が得られやすい点から、ヒュームドシリカを含むことが好ましい。
【0030】
粉体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ヒュームドシリカの具体例としては、例えば、アエロジル200(比表面積200m2/g、日本アエロジル社製)、アエロジル300(比表面積300m2/g、日本アエロジル社製)、CAB-O-SIL M-5(比表面積200m2/g、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)、CAB-O-SIL H-300(比表面積300m2/g、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)、レオロシールQS30(比表面積300m2/g、トクヤマ社製)等が挙げられる。
【0032】
ヒュームドシリカは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
多孔質シリカの具体例としては、例えば、M.S.GELやサンスフェア(いずれもAGCエスアイテック社製)等が挙げられる。
【0034】
輻射抑制材としては、例えば、金属粒子(アルミニウム粒子、銀粒子、金粒子等)、無機粒子(グラファイト、カーボンブラック、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、チタン酸カリウム等)等が挙げられる。
【0035】
また、繊維としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物が挙げられるが、なかでも、真空下でのアウトガスが少なく、真空度の低下による断熱性能の低下を抑制しやすい点、および耐熱性に優れる点から、無機繊維が有利である。無機繊維の一例としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウールなどの公知の材料が挙げられる。
【0036】
無機繊維としては、例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ繊維、グラスウール、グラスファイバー、ロックウール、スラグウール、炭化ケイ素繊維、カーボン繊維、シリカアルミナ繊維、シリカアルミナマグネシア繊維、シリカアルミナジルコニア繊維、シリカマグネシアカルシア繊維等が挙げられる。
【0037】
粉体(100質量%)中のヒュームドシリカの割合は、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%が特に好ましい。ヒュームドシリカの割合が前記範囲の下限値以上であれば、強度の高い芯材が得られやすい。
【0038】
粉体が輻射抑制材を含む場合、粉体(100質量%)中の輻射抑制材の割合は、3~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%が特に好ましい。
【0039】
繊維の割合は、粉体100質量部に対する添加量として、1~30質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましく、4~10質量部が特に好ましい。繊維の割合が前記範囲の下限値以上であれば、高強度な芯材が得られやすい。繊維の割合が前記範囲の上限値以下であれば、繊維による固体伝熱の増大を抑制できるため、断熱性能の低下を抑制しやすい。
【0040】
芯材として粉体を用いる場合の、粉体の好ましい組成は質量比で、ヒュームドシリカ:多孔質シリカ:輻射抑制材として、70~90:0~20:10~20が好ましい。また粉体が繊維を含む場合の好ましい組成は質量比でヒュームドシリカ:多孔質シリカ:繊維:輻射抑制材として、70~90:0~20:5~10:5~20が好ましい。
【0041】
また、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォームなどの連続気泡体が挙げられる。後述する減圧溶着工程における真空引きが容易になる点から、芯材として利用する連続気泡体の通気量は1cm3/cm2sec以上が好ましい。
【0042】
さらに、これらの発泡体、粉体、および繊維体等の混合物や複合体も芯材に適用することができる。このような芯材として、具体的には、多孔質粉体と繊維体の複合体、例えば、エアロゲルブランケットが挙げられる。エアロゲルブランケットとしては、パイロジェル(アスペン社製)などが挙げられる。
【0043】
次に、本発明の堰部として機能する第3溶着部30、32について、
図3の要部拡大図を参照して説明する。
【0044】
第3溶着部30は、芯材14の辺部14A~14Dのうち、直線状溶着部26Aに対して略直交する方向の辺部14Aの延長線Aに対して交差する方向に、長手軸30Aを有する帯状に形成される。
【0045】
同様に、第3溶着部32は、辺部14Cの延長線Cに対して交差する方向に、長手軸32Aを有する帯状に形成されている。
【0046】
また、第3溶着部30は、直線状溶着部24Aと連結され、矢印Eで示すように、直線状溶着部26Aから第3溶着部30を見た場合、芯材14に重なるように形成される。具体的に説明すると、第3溶着部30は、長手軸30Aの方向において、第1堰部30Bと第2堰部30Cとを有している。第1堰部30Bは、辺部14Aと直線状溶着部24Aとの間に位置する溶着部である。第2堰部30Cは、芯材14に重なる溶着部であり、辺部14Aと辺部14Dとのコーナ部14Eから辺部14Cと辺部14Dとのコーナ部14Fに向けて長さL1分だけ突出されている。
【0047】
同様に、第3溶着部32は、直線状溶着部24Cと連結され、矢印Eで示すように、直線状溶着部26Aから第3溶着部32を見た場合、芯材14に重なるように形成される。具体的に説明すると、第3溶着部32は、長手軸32Aの方向において、第1堰部32Bと第2堰部32Cとを有している。第1堰部32Bは、辺部14Cと直線状溶着部24Cとの間に位置する溶着部である。第2堰部32Cは、芯材14に重なる溶着部であり、コーナ部14Fからコーナ部14Eに向けて長さL1分だけ突出されている。
【0048】
更に、第3溶着部30は、
図3に示すように、長手軸30Aの方向における端部30Dが、芯材14の辺部14Dに向けてL字状に形成され、第3溶着部32も同様に、長手軸32Aの方向における端部32Dが、芯材14の辺部14Dに向けてL字状に形成されている。このように端部30D、32DをL字状に形成することが、ダストを効果的に堰き止める観点から好ましい。なお、端部30D、32Dの曲がり形状はL字状に限定されるものではなく、例えば円弧状に曲がっていてもよい。但し、端部30D、32Dの曲げ形状は、上記の如く、ダストを効果的に堰き止める観点からL字状とすることが好ましい。
【0049】
次に、第1実施形態の真空断熱材10の製造方法について説明する。
【0050】
図4は、本例の製造方法を時系列的に示した説明図である。また、
図5は、本例の製造方法のフローチャートである。以下、
図4及び
図5を参照して本例の製造方法について説明する。
【0051】
まず、
図4の4Aに示すように、溶着部22となる部分が未溶着である未溶着部、つまり第2溶着部26が未溶着の開口部28を有する外被材12に対し、開口部28から外被材12の内部へと芯材14を収納する(収納工程(S100)
図5参照)。
【0052】
次に、
図4の4Bに示すように、芯材14を収納した外被材12に対し、大気下で芯材14と未溶着の第2溶着部26(
図1参照)との間に位置する熱溶着層16、16同士(
図2参照)を部分的に熱溶着させることで、第3溶着部30、32を形成する(堰部成形工程(S110)
図5参照)。なお、第3溶着部30、32の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば温度制御を備えたヒーター、高周波加熱、またはインパルスシールなど既存の加熱方法が用いられる。
【0053】
次に、
図4の4Cに示すように、第3溶着部30、32が形成された外被材12に対し、第2溶着部26となる熱溶着層16、16同士を減圧下で熱溶着して未溶着部を第2溶着部26に形成する(減圧溶着工程(S120)
図5参照)。
【0054】
本例の製造方法によれば、上記の3つの工程を経ることにより第1実施形態の真空断熱材10を製造できる。
【0055】
ここで、第1実施形態の真空断熱材10は、堰部として機能する第3溶着部30、32を備えている。そして、第3溶着部30、32は、
図3に示したように、辺部14A、14Cの延長線A、Cに対して交差する方向に、長手軸30A、32Aを有する帯状に形成されている。これにより、
図5の減圧溶着工程(S120)時において、芯材14から発塵したダストは、外被材12の内部の空気と共に開口部28に向けて流れるが、その途中で大部分のダストが第3溶着部30、32に堰き止められる。この第3溶着部30、32の作用により、開口部28付近に付着するダストが大幅に減少する。
【0056】
図6は、第3溶着部30、32で堰き止められたダストを符号Dで示している。
図6に示すように、外被材12の内部から開口部28に向けて流れるダストDは、延長線A、C(
図3参照)と第3溶着部30、32とが交差する点の周辺に集中し、第3溶着部30、32によって堰き止められる。
【0057】
したがって、第1実施形態の真空断熱材10によれば、減圧溶着部である第2溶着部26におけるダストの噛み込みを高度に抑制できる。また、上記の3工程で真空断熱材10を製造できるので、スループットを向上させることができる。
【0058】
また、第3溶着部30、32は、
図3に示したように、直線状溶着部24A、24Cと連結され、直線状溶着部26Aから第3溶着部30、32を見た場合、芯材14に重なるように形成されている。これにより、辺部14A、14Cから辺部14Dに回り込んできたダストDが効果的に堰き止められる。
【0059】
更に、第3溶着部30、32を単なる帯状に形成してもよいが、第3溶着部30、32の端部30D、32Dが、芯材14に向けて曲がっている形状であると、辺部14A、14Cから辺部14Dに回り込んできたダストDが効果的に堰き止められるため、好ましい。端部30D、32DがL字状に形成されている場合、辺部14A、14Cから辺部14Dに回り込んできたダストDが更に効果的に堰き止められる。なお、本例の第3溶着部30、32は、他端が直線状溶着部24A、24Cに連結されているものなので、端部30D、32Dのみを芯材14に向けて曲がっている形状としたが、他端が直線状溶着部24A、24Cから離間している態様であれば、その他端も芯材14に向けて曲がっている形状としてもよい。
【0060】
また、真空断熱材10においては、
図3に示すように、辺部14D~直線状溶着部26Aまでの最短距離Lが、辺部14A~14Cから直線状溶着部24A~24Cまでの最短距離L2よりも長いことが好ましい。直線状溶着部24A~24Cは、芯材14を収容する前に形成されるものなので、外被材12を平たくした状態(二次元状態)で形成できるが、直線状溶着部26Aは、芯材14を収納した膨らんだ状態(三次元状態)で形成されるため、上記のような距離関係とすることにより、直線状溶着部26Aを皺無く形成できる。これにより、長期使用における真空度の低下を防止できる。ここで、上記の最短距離Lとしては、50mm<L≦300mmであることが好ましい。なお、最短距離Lとは、
図3において、直線状溶着部26Aの下端部~芯材14の辺部14Dまでの距離を指す。また、最短距離L2とは、直線状溶着部24Aの右端部から芯材14の辺部14Aまでの距離、及び直線状溶着部24Cの左端部から芯材14の辺部14Cまでの距離をそれぞれ指している。
【0061】
また、真空断熱材10においては、
図3に示した長さL1の合計長は、辺部14Dの長さL3に対して60%以下であることが好ましい。これにより、外被材12の内部に形成される排気流路が迷路状とならないので、外被材12の内部の排気が円滑に行われる。なお、60%以下とは0%を含む値である。
【0062】
また、
図3に示すように、第3溶着部30、32で挟まれる堰開口部34の幅をW3とし、開口部28(
図4参照)の幅をW4とした場合、開口率W3/W4は0.4×L3/W4≦W3/W4≦L3/W4の範囲であることが好ましい。これにより、排気流路の排気効率を妨げることなく、第3溶着部30、32によってダストが効果的に堰き止められる。
【0063】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る真空断熱材40の平面図であって、堰部として機能する第3溶着部42の構成を示した拡大平面図である。なお、真空断熱材40を説明するに際し、真空断熱材10と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0064】
図7に示すように、第3溶着部42は、芯材14の辺部14Dと直線状溶着部26Aとの間にジグザグ状に複数個配置されている。また、第3溶着部42は、辺部14Dと平行な長手軸42Aを有する帯状に形成されている。更に、第3溶着部42の長手軸42Aの方向における2つの端部42B、42Cのうち少なくとも一つの端部が、芯材14に向けて曲がっており、一例としてL字状に形成されている。
【0065】
第2実施形態の真空断熱材40においても、真空断熱材10と同様の3工程を経ることにより製造される。また、減圧溶着工程(S120)時において(
図5参照)、芯材14から発塵したダストは、外被材12の内部の空気と共に開口部28(
図4参照)に向けて流れるが、その途中で大部分のダストが複数の第3溶着部42に堰き止められる。この第3溶着部42の作用により、開口部28付近に付着するダストが大幅に減少する。
【0066】
したがって、第2実施形態の真空断熱材10においても、第2溶着部26におけるダストの噛み込みを高度に抑制でき、かつ、スループットを向上させることができる。
【0067】
なお、第3溶着部42も第3溶着部30、32と同様に単なる帯状に形成してもよいが、ダストを効果的に堰き止める観点から上記のL字形状の端部を備えることが好ましい。また、
図7に示したシグザグ配列の第3溶着部42は、ヒーターを備えた溶着用ブロックの形状を変更することで形成できる。更に、排気流路の排気効率を妨げないことを前提として、溶着用ブロックの形状と溶着位置を適宜変更することで、多種多様な配列の第3溶着部42を形成できる。なお、第3溶着部42の配置は、上記のジグザグ状に限定されるものではなく、排気流路の排気効率を妨げない範囲であれば、ランダムに配置してもよい。
【0068】
<まとめ>
本発明は、減圧溶着工程を実施する際に、外被材12の内部に形成される排気流路のうち、辺部14Dと直線状溶着部(減圧溶着部)26Aとの間に位置する下流側排気流路がダストによって集中的に汚染されることに着目してなされたものである。そこで、上記の下流側排気流路内での汚染が、第2溶着部26の未溶着部に到達することを妨げるように、外被材12に芯材14を収納した後、上流側排気流路内において排気を阻害しない位置に第3溶着部30、32、42を部分的に形成したものである。これにより、本発明は、減圧溶着部におけるダストの噛み込みを高度に抑制でき、かつ、スループットを向上させることができる。
【0069】
また、本発明によれば、第1溶着部24を有する既存の外被材12(例えば、予め三辺が熱溶着された外被材)と減圧溶着設備とをそのまま使用できる。また、堰部形成工程(S110)は、減圧下ではなく大気下で実施される工程なので、堰部形成工程(S110)で使用する圧着設備を、減圧溶着工程(S120)の前の適切な位置に設置可能である。これにより、真空断熱材10、40の製造設備を単純化できる。
【0070】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…真空断熱材、12…外被材、14…芯材、16…熱溶着層、18…気密層、20…フィルム、22…溶着部、24…第1溶着部、26…第2溶着部、28…開口部、30…第3溶着部、32…第3溶着部、40…真空断熱材、42…第3溶着部