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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057430
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】野菜固形具材含有液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220404BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20220404BHJP
   A23L 27/24 20160101ALI20220404BHJP
   A21D 13/32 20170101ALN20220404BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/10 C
A23L27/24
A21D13/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020165681
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(71)【出願人】
【識別番号】520381333
【氏名又は名称】ミツカン ユーロ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン コールマン
【テーマコード(参考)】
4B032
4B047
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DB40
4B032DE06
4B032DK29
4B032DK67
4B032DK70
4B047LB02
4B047LB09
4B047LE04
4B047LF10
4B047LG38
4B047LG39
4B047LG43
4B047LG62
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】植物由来食材のみからなるベジタリアン食やビーガン食に、乳製品や動物由来食材のような濃厚な風味、食感、及び/又は後味を付与し、嗜好性を改善することが可能な液状調味料を提供する。
【解決手段】当該液状調味料の一側面は、
・2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が1.0~20μg/Lであり、
・コハク酸ジエチルの質量対体積比が10~200μg/Lであり、
・酢酸酸度が液状調味料の総体積に対する質量比で1.5~8.0%(w/v)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜の固形具材を含有する液状調味料であって、
・2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が1.0~20μg/Lであり、
・コハク酸ジエチルの質量対体積比が10~200μg/Lであり、
・酢酸酸度が液状調味料の総体積に対する質量比で1.5~8.0%(w/v)である、液状調味料。
【請求項2】
6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量対体積比が0.2~4.0μg/Lである、請求項1に記載の液状調味料。
【請求項3】
更にリンゴ酢を液状調味料総量に対して0.5~10質量%の含有量で含む、請求項1又は2に記載の液状調味料。
【請求項4】
更にリンゴ果汁を液状調味料総量に対して0.8~16質量%の含有量で含む、請求項1~3の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項5】
膨潤サイズ3.0mm以上の具材を湿潤質量換算で10~70質量%含有する、請求項1~4の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項6】
カルダモン、黒コショウ、ナツメグ、及びショウガから選択される1又は2以上のスパイスを含有する、請求項1~5の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項7】
液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.45以上である、請求項1~6の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項8】
動物由来成分を含有しない、請求項1~7の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項9】
1種又は2種以上の動物由来成分を含有する液状調味料の代替品として用いられる、請求項8に記載の液状調味料。
【請求項10】
ベジタリアン食又はビーガン食に使用される、請求項8又は9に記載の液状調味料。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の液状調味料を含む飲食品。
【請求項12】
ベジタリアン又はビーガン用である、請求項11に記載の飲食品。
【請求項13】
請求項3~11の何れか一項に記載の液状調味料を製造する方法であって、
(i)リンゴ酢を含む第1の画分を用意する工程、
(ii)野菜を含む第2の画分を用意する工程、及び
(iii)第1の画分と第2の画分を混合して液状調味料を調製する工程
を含む製造方法。
【請求項14】
工程(i)においてリンゴ酢が発酵により生成されると共に、工程(iii)において調製される液状調味料が請求項1の規定を満たすように、工程(ii)において発酵により生成されるリンゴ酢の2-メトキシ-4-エチルフェノール量、コハク酸ジエチル量、及び/又は、酢酸酸度を調整する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程(iii)において調製される液状調味料が請求項1の規定を満たすように、工程(iii)における混合物に対して、2-メトキシ-4-エチルフェノール、コハク酸ジエチル、及び/又は、酢酸酸度を添加する、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜固形具材含有液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
肉のみならず乳製品や卵も食べないビーガン人口が世界的に増加するに伴い、植物由来食材のみからなるビーガン食の需要が高まっている。しかし、ビーガンの中にも、乳製品や動物由来食材を含む非ビーガン食と同様の風味、食感、後味を有する食事を楽しみたいとの要望が多い。よって、非ビーガン食の風味等を、植物由来食材のみを用いて再現する技術が望まれている。
【0003】
一例として、英国等で人気のメニューであるチーズとピクルスのサンドイッチは、通常はチーズやバター等の乳製品や、肉エキスや魚肉成分等の動物由来成分を含むウスターシャソースを含むため、そのままではビーガンは食べることが出来ない。単に乳製品や動物由来食材を植物由来食材で置き換えたビーガン用のサンドウィッチもあるが、乳製品や動物由来食材に特有の濃厚な風味、食感、後味等を付与することができず、再現性・嗜好性の面で劣るものとなってしまう。そこで、チーズとピクルスのサンドイッチの風味、食感、後味等を、植物由来食材のみで再現することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一つは、植物由来食材のみからなるベジタリアン食やビーガン食に、乳製品や動物由来食材のような濃厚な風味、食感、及び/又は後味を付与し、嗜好性を改善することが可能な新規な技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意検討の結果、野菜の固形具材を含有する液状調味料を調製すると共に、その2-メトキシ-4-エチルフェノール及びコハク酸ジエチル濃度をそれぞれ所定の範囲内に調整し、且つ、酢酸酸度を所定の範囲内に調整することにより、得られる液状調味料は、植物由来食材のみからなるベジタリアン食やビーガン食に、乳製品や動物由来食材のような濃厚な風味、食感、及び/又は後味を付与し、嗜好性を改善することが可能となることを見出した。
【0006】
即ち、本発明によれば、例えば以下の態様が提供される。
[項1]野菜の固形具材を含有する液状調味料であって、
・2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が1.0~20μg/Lであり、
・コハク酸ジエチルの質量対体積比が10~200μg/Lであり、
・酢酸酸度が液状調味料の総体積に対する質量比で1.5~8.0%(w/v)である、液状調味料。
[項2]2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が1.5μg/L以上である、項1に記載の液状調味料。
[項3]2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が2.0μg/L以上である、項2に記載の液状調味料。
[項4]2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が2.5μg/L以上である、項3に記載の液状調味料。
[項5]2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が18μg/L以下である、項1~4の何れか一つに記載の液状調味料。
[項6]2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が16μg/L以下である、項5に記載の液状調味料。
[項7]2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量対体積比が14μg/L以下である、項6に記載の液状調味料。
[項8]コハク酸ジエチルの質量対体積比が15μg/L以上である、項1~7の何れか一つに記載の液状調味料。
[項9]コハク酸ジエチルの質量対体積比が20μg/L以上である、項8に記載の液状調味料。
[項10]コハク酸ジエチルの質量対体積比が25μg/L以上である、項8に記載の液状調味料。
[項11]コハク酸ジエチルの質量対体積比が180μg/L以下である、項1~10の何れか一つに記載の液状調味料。
[項12]コハク酸ジエチルの質量対体積比が160μg/L以下である、項11に記載の液状調味料。
[項13]コハク酸ジエチルの質量対体積比が140μg/L以下である、項12に記載の液状調味料。
[項14]コハク酸ジエチルの2-メトキシ-4-エチルフェノールに対する質量比率が1.0以上である、項1~13の何れか一つに記載の液状調味料。
[項15]コハク酸ジエチルの2-メトキシ-4-エチルフェノールに対する質量比率が2.0以上である、項14に記載の液状調味料。
[項16]コハク酸ジエチルの2-メトキシ-4-エチルフェノールに対する質量比率が15以下である、項1~15の何れか一つに記載の液状調味料。
[項17]コハク酸ジエチルの2-メトキシ-4-エチルフェノールに対する質量比率が13以下である、項16に記載の液状調味料。
[項18]質量対体積比0.2~4.0μg/Lの6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを更に含む、項1~17の何れか一つに記載の液状調味料。
[項19]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量対体積比が0.3μg/L以上である、項18に記載の液状調味料。
[項20]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量対体積比が0.4μg/L以上である、項19に記載の液状調味料。
[項21]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量対体積比が3.5μg/L以下である、項18~20の何れか一つに記載の液状調味料。
[項22]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量対体積比が3.0μg/L以下である、項21に記載の液状調味料。
[項23]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量の10倍に対する2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量比が0.1以上である、項1~22の何れか一つに記載の液状調味料。
[項24]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量の10倍に対する2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量比が0.5以上である、項23に記載の液状調味料。
[項25]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量の10倍に対する2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量比が10以下である、項1~24の何れか一つに記載の液状調味料。
[項26]6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの質量の10倍に対する2-メトキシ-4-エチルフェノールの質量比が5以下である、項25に記載の液状調味料。
[項27]液状調味料の総体積に対する酢酸酸度が1.55%質量以上である、項1~26の何れか一つに記載の液状調味料。
[項28]液状調味料の総体積に対する酢酸酸度が1.6%質量以上である、項27に記載の液状調味料。
[項29]液状調味料の総体積に対する酢酸酸度が2.5質量%以下である、項1~28の何れか一つに記載の液状調味料。
[項30]液状調味料の総体積に対する酢酸酸度が2.0質量%以下である、項29に記載の液状調味料。
[項31]更に0.5~10質量%のリンゴ酢を含有する、項1~30の何れか一つに記載の液状調味料。
[項32]液状調味料に対するリンゴ酢の質量比率が1.0質量%以上である、項31に記載の液状調味料。
[項33]液状調味料に対するリンゴ酢の質量比率が1.5質量%以上である、項32に記載の液状調味料。
[項34]液状調味料に対するリンゴ酢の質量比率が7質量%以下である、項31~33の何れか一つに記載の液状調味料。
[項35]液状調味料に対するリンゴ酢の質量比率が5質量%以下である、項34に記載の液状調味料。
[項36]更に0.8~16.0質量%のリンゴ果汁を含有する、項1~35の何れか一つに記載の液状調味料。
[項37]液状調味料に対するリンゴ果汁の質量比率が1.5質量%以上である、項36に記載の液状調味料。
[項38]液状調味料に対するリンゴ果汁の質量比率が2.2質量%以上である、項37に記載の液状調味料。
[項39]液状調味料に対するリンゴ果汁の質量比率が12質量%以下である、項36~38の何れか一つに記載の液状調味料。
[項40]液状調味料に対するリンゴ果汁の質量比率が8質量%以下である、項39に記載の液状調味料。
[項41]液状調味料の総質量に対する液状調味料中で膨潤した状態でのサイズが3.0mm以上の成分の質量の比率が10~70%質量%である、項1~40の何れか一つに記載の液状調味料。
[項42]液状調味料の総質量に対する前記成分の質量の比率が15質量%以上である、項41に記載の液状調味料。
[項43]液状調味料の総質量に対する前記成分の質量の比率が20質量%以上である、項42に記載の液状調味料。
[項44]液状調味料の総質量に対する前記成分の質量の比率が65質量%以下である、項41~43の何れか一つに記載の液状調味料。
[項45]液状調味料の総質量に対する前記成分の質量の比率が60質量%以下である、項44に記載の液状調味料。
[項46]カルダモン、黒コショウ、ナツメグ、及びショウガから選択される1又は2以上のスパイスを含有する、項1~45の何れか一つに記載の液状調味料。
[項47]液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.45以上である、項1~46の何れか一つに記載の液状調味料。
[項48]液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.46以上である、項47に記載の液状調味料。
[項49]液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.47以上である、項48に記載の液状調味料。
[項50]液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.60以下である、項1~49の何れか一つに記載の液状調味料。
[項51]液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.58以下である、項50に記載の液状調味料。
[項52]液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmの吸光度が0.56以下である、項51に記載の液状調味料。
[項53]動物由来成分を含有しない、項1~52の何れか一つに記載の液状調味料。
[項54]1種又は2種以上の動物由来成分を含有する液状調味料の代替品として用いられる、項1~53の何れか一つに記載の液状調味料。
[項55]ベジタリアン食又はビーガン食に使用される、項53又は54に記載の液状調味料。
[項56]項1~55の何れか一つに記載の液状調味料を含む飲食品。
[項57]ベジタリアン又はビーガン用である、項56に記載の飲食品。
[項58]項1~55の何れか一つに記載の液状調味料を製造する方法であって、
(i)リンゴ酢を含む第1の画分を用意する工程、
(ii)野菜を含む第2の画分を用意する工程、及び
(iii)第1の画分と第2の画分を混合して液状調味料を調製する工程
を含む製造方法。
[項59]工程(i)においてリンゴ酢が発酵により生成されると共に、工程(iii)において調製される液状調味料が項1の規定を満たすように、工程(ii)において発酵により生成されるリンゴ酢の2-メトキシ-4-エチルフェノール量、コハク酸ジエチル量、及び/又は、酢酸酸度を調整する、項54に記載の製造方法。
[項60]工程(iii)において調製される液状調味料が項1の規定を満たすように、工程(iii)における混合物に対して、2-メトキシ-4-エチルフェノール、コハク酸ジエチル、及び/又は、酢酸酸度を添加する、項54に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の新規な液状調味料によれば、植物由来食材のみからなるベジタリアン食やビーガン食に、乳製品や動物由来食材のような濃厚な風味、食感、及び/又は後味を付与し、嗜好性を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0009】
本発明の一態様は、野菜の固形具材を含む液状調味料(以下、「本発明の液状調味料」ともいう)を提供する。
【0010】
一実施形態によれば、本発明の液状調味料は、野菜及び/又は果実の抽出物及び/又は発酵産物を含有していてもよい。斯かる野菜及び/又は果実の抽出物及び/又は発酵産物の種類は、限定されるものではないが、後述する特定香気化合物(2-メトキシ-4-エチルフェノール、コハク酸ジエチル、及び6-メチル-5-ヘプテン-2-オン)のうち1種又は2種以上を含むものが好ましい。例としては、リンゴの抽出物及び/又は発酵産物(例えばリンゴ酢及び/又はリンゴ果汁)、ブドウの抽出物及び/又は発酵産物(例えばワイン及び/又はブドウ果汁)等が挙げられる。以下、主に本発明の液状調味料がリンゴ酢及び/又はリンゴ果汁を含有する態様を例として説明するが、本発明の液状調味料はこのような態様に限定されるものではない。
【0011】
本発明の液状調味料がリンゴ酢を含む場合、使用されるリンゴ酢の種類に制限はないが、酢酸発酵を経て製造されたリンゴ酢であることが好ましい。発酵法によるリンゴ酢の製造方法としては、その品質の一定性の観点で、British Standard BS EN 13188:2000 2.3.3に記載のcider vinegarの製造方法又は醸造酢の日本農林規格記載のリンゴ酢の製造方法に準拠した製造方法であることが好ましい。リンゴ酢の原材料にも特に制限はなく、酢酸菌発酵の栄養源となるリン酸塩、アンモニウム塩などの無機塩や、ハチミツ、砂糖、液糖をはじめとした各種の糖分などを用いることができ、各種食品添加物も用いることができる。
【0012】
本発明の液状調味料がリンゴ酢を含む場合、使用されるリンゴ酢は、従来の任意の手法で製造することができる。発酵(好ましくは酢酸発酵)法の例としては、木桶等を用いた表面発酵法、深部発酵法、充填塔発酵法等が挙げられる。合成法の例としては、化学合成した氷酢酸にリンゴ果汁を添加する方法等が挙げられる。本発明においては、発酵法のリンゴ酢の方が、リンゴ酢に発酵由来の多様な成分を含有させられるため好ましい。なお、発酵後のリンゴ酢は、発酵に使用した酢酸菌を除去するろ過処理を行わず、酢酸菌を含有したままの状態で用いた方が、自然な白濁感を得られるため好ましい。なお、本発明の液状調味料において、リンゴ酢は一種類のみ用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本発明の液状調味料がリンゴ酢を含む場合、液状調味料に対するリンゴ酢の質量比は、限定されないが、好ましくは0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、又は7質量%以下、又は5質量%以下とすることができる。
【0014】
本発明の液状調味料がリンゴ果汁を含む場合、使用されるリンゴ果汁に制限はなく、未濃縮ストレート果汁及び濃縮果汁のいずれでもよい。濃縮果汁を利用する場合は、果実液状調味料の日本農林規格に適合しているリンゴ果汁を使用することが好ましい。本発明において、果汁の濃縮倍率は、日本農林規格の濃縮りんご果汁の規程に準拠し、Brix10相当のリンゴ果汁を1倍として換算することとする。また、濃縮果汁には、自然な濁りを与えるため、リンゴの食物繊維由来の不溶性固形分(以下「パルプ分」と記載することもある。)を含有する混濁果汁が含まれていてもよい。濃縮果汁に含まれるパルプ分の含量の測定方法については実施例の欄で後述する。なお、本発明の液状調味料において、リンゴ果汁は一種類のみ用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、本発明の液状調味料がリンゴ果汁を含む場合、液状調味料に対するリンゴ果汁の質量比は、限定されないが、好ましくは0.8質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.2質量%以上であり、 好ましくは16質量%以下、又は12質量%以下、又は8質量%以下とすることができる。なお、上記の質量比を算出する際には、リンゴ果汁の濃縮率は考慮せず、使用したリンゴ果汁の質量を液状調味料全体の質量で割って算出すればよい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、本発明の液状調味料がリンゴ酢及びリンゴ果汁を含む場合、リンゴ果汁とリンゴ酢の質量比は、限定されないが、好ましくは質量比1.0以上、又は質量比1.2以上であり、また、好ましくは質量比5.0以下、又は質量比4.0以下とすることができる。当該質量比を前記下限以上とすることで、リンゴ由来の芳醇な風味を液状調味料に含有させることが可能となる。また、当該質量比を前記上限以下とすることで、液状調味料におけるリンゴ酢の酸味とリンゴの風味を調和させることが可能となる。なお、上記の質量比を算出する際には、リンゴ果汁の濃縮率は考慮せず、使用したリンゴ果汁の質量を使用したリンゴ酢の質量で割って算出すればよい。
【0017】
本発明の液状調味料において、固形具材として使用される野菜の種類は限定されない。野菜の例としては、ダイコン、ラディッシュ、ニンジン、ゴボウ、ルタバガ、ビート(例えばビートルート)、パースニップ、カブ、サツマイモ、キャッサバ、ヤーコン、タロイモ、サトイモ、コンニャクイモ、レンコン、ジャガイモ、ムラサキイモ、キクイモ、クワイ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ユリネ、カタクリ、ケール、ヤムイモ、ヤマノイモ、ナガイモ、タマネギ、アスパラガス、ウド、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、アブラナ、コマツナ、チンゲンサイ、ニラ、ネギ、ノザワナ、セイヨウネギ、フキ、ミズナ、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ(特に若いキュウリの一種であるガーキン)、ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、ニガウリ、オクラ、アーティチョーク、ズッキーニ、てんさい、ショウガ、シソ、パプリカなどが挙げられる。これらは一種類のみ用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0018】
本発明の液状調味料において、野菜固形具材の量は限定されないが、サイズが3mm以上の野菜固形具材の比率が、所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、野菜の香り、味、及び食感を十分に確保する観点から、液状調味料の質量に対する、液状調味料中で膨潤状態のサイズが3mm以上(7.5メッシュオン)の野菜固形具材の質量の比率を、好ましくは20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上とすることができる。また、野菜の青臭みを低減する観点から、当該比率の上限は、好ましくは70質量%以下、又は65質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
【0019】
本発明において「メッシュパス」の成分とは、JIS規格における所定のサイズの開き目を有する「メッシュ」の篩を透過する成分をいい、「メッシュオン」の成分とは、当該「メッシュ」の篩を透過せず、篩の上に残留する成分をいう。
【0020】
本発明の一態様によれば、本発明の液状調味料は、酢酸酸度が所定範囲内であることを特徴とする。具体的に、液状調味料の酢酸酸度は、通常1.5%(w/v)である。中でも1.55%(w/v)以上が好ましく、1.6%(w/v)以上がより好ましい。酢酸酸度が前記下限よりも少ないと、酢酸由来の良好な酸味が十分に感じられず甘みが後に残る場合がある。一方、液状調味料の酢酸酸度は、通常3.0%(w/v)以下である。中でも2.5%(w/v)以下が好ましく、2.0%(w/v)以下がより好ましい。酢酸酸度が前記上限よりも多いと、リンゴ由来の各種成分による酢酸の喉刺激の緩和が十分に機能しない場合がある。
【0021】
なお、本発明において、酢酸酸度は、醸造酢の日本農林規格に準拠して測定する。具体的には、試料を水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.2となるまでに消費した水酸化ナトリウム溶液の量から、酢酸を換算値とし酸度を算出した値を用いる。滴定方法は、手動滴定でも自動滴定装置による方法のいずれでもよい。なお、本発明で規定する酢酸酸度は、上記方法によって算出されることから、クエン酸など酢酸以外の有機酸等を酢酸に換算した値も含むことに注意されたい。
【0022】
本発明の液状調味料は、2-メトキシ-4-エチルフェノールおよびコハク酸ジエチルを含む。更に任意で6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含んでいてもよい(本明細書ではこれら3つの化合物をまとめて「特定香気化合物」と呼ぶ場合がある)。
【0023】
本発明の液状調味料における2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量は、1.0μg/L以上である。中でも1.5μg/L以上が好ましく、2.0μg/L以上がより好ましく、2.5μg/L以上がより好ましい。ここで2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量が前記下限よりも少ないと、酢酸の喉刺激が抑制しきれず熟成感も十分に付与されない場合がある。また、本発明の液状調味料における2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量は、20μg/L以下である。中でも18μg/L以下が好ましく、16μg/L以下がより好ましく、14μg/L以下がより好ましい。2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量が前記上限を超えると、リンゴの良好な風味も抑制してしまい、風味に違和感が生じる場合がある。
【0024】
本発明の液状調味料におけるコハク酸ジエチルの含有量は、10μg/L以上である。中でも15μg/L以上が好ましく、20μg/L以上がより好まし、25μg/L以上がより好ましい。ここでコハク酸ジエチルの含有量が前記下限よりも少ないと、酒精発酵感が十分に付与されない場合がある。また、本発明の液状調味料におけるコハク酸ジエチルの含有量は、200μg/L以下である。中でも180μg/L以下が好ましく、160μg/L以下がより好ましく、140μg/L以下がより好ましい。コハク酸ジエチルの含有量が前記上限を超えると、リンゴ酢の良好な酸味も抑制してしまい、風味に違和感が生じる場合がある。
【0025】
本発明の液状調味料における2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量(x)とコハク酸ジエチルの含有量(y)の比(y/x)は、1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。前記比(y/x)の値が前記下限よりも小さいと、コハク酸ジエチルの含有量が多すぎて、2-メトキシ-4-エチルフェノールによる熟成感付与の効果を打ち消してしまう場合がある。また、前記比(y/x)は、15以下が好ましく、13以下がより好ましい。前記比(y/x)の値が前記上限よりも大きいと、コハク酸ジエチルの含有量に比べて2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量が多すぎて、コハク酸ジエチルによる発酵感付与の効果を打ち消してしまう場合がある。
【0026】
本発明の液状調味料が6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含む場合、その含有量は0.2μg/L以上が好ましく、0.3μg/L以上がより好ましく、0.4μg/L以上がより好ましい。ここで6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの含有量が前記下限よりも少ないと、液状調味料の全体に呈する芳醇な果実風味が十分に付与されない場合がある。また、6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの含有量は4.0μg/L以下が好ましく、3.5μg/L以下がより好ましく、3.0μg/L以下がより好ましい。6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの含有量が前記上限を超えると、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン自体の香りが感じられるようになり、風味に違和感が生じる場合がある。
【0027】
本発明の液状調味料が6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含む場合、2-メトキシ-4-エチルフェノールの含有量(x)及び6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの含有量(z)は、以下の式1により求められる値が所定の範囲内となるような関係を満たすことが好ましい。
【数1】
【0028】
具体的に、式1の値は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。式1の値が前記下限よりも小さいと、2-メトキシ-4-エチルフェノールと比較して6-メチル-5-ヘプテン-2-オンが多すぎて、熟成感が十分に感じられない場合がある。一方、式1の値は、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。式1の値が前記上限よりも大きいと、2-メトキシ-4-エチルフェノールと比較して6-メチル-5-ヘプテン-2-オンが少なすぎて、リンゴの自然な甘い風味が感じにくくなる場合がある。
【0029】
本発明の液状調味料に、上記の特定香気化合物(2-メトキシ-4-エチルフェノール及びコハク酸ジエチル、並びに必要に応じて用いられる6-メチル-5-ヘプテン-2-オン)を含有させる手法としては、これらの特定成分を直接、又はこれらの特定成分を含有する物質を液状調味料に添加する手法だけでなく、液状調味料の製造時に発酵を通じてこれらの特定成分を含有させる手法も挙げられる。中でも、リンゴ酢、特に発酵的手段によって上記の特定香気化合物を産生させたリンゴ酢又はリンゴ果汁によって、本発明の液状調味料に上記の特定香気化合物を持ち込ませた方が、熟成感に関与する他の香気成分を同時に含有させることが可能となるため好ましい。なお、本発明において、液状調味料における特定香気化合物の濃度は、スターバー抽出(SBSE)法により処理した検体を、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)装置を用いて測定するものとする。具体的には、実施例において後述する手法を用いることが出来る。
【0030】
本発明の液状調味料は、水で10倍に希釈した液の形態で、430nmの波長で所定の範囲内の吸光度を有することが好ましい。具体的には、液状調味料の10倍希釈液の波長430nmにおける吸光度は、特に限定されないが、好ましくは0.45以上、又は0.46以上、又は0.47以上とすることができる。上限は特に限定されないが、例えば0.60以下、又は0.58以下、又は0.56以下とすることができる。なお、本発明において、液状調味料の10倍希釈水溶液の吸光度は、液状調味料を蒸留水で10倍希釈し、次いでこの希釈溶液の波長430nmにおける吸光度を、UV-1800(Shimadzu)等の分光光度計を使用して測定することにより求めることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、本発明の液状調味料は、カルダモン、黒コショウ、ナツメグ、およびショウガから選択される1種又は2種以上のスパイスを含んでいてもよい。本発明の一実施形態によれば、液状調味料の総質量に対する上記の群から選択されるスパイスの比率は、限定されないが、好ましくは0.01質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.1質量%以上とすることができ、また、好ましくは5質量%以下、又は4質量%以下、又は3質量%以下とすることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、本発明の液状調味料は、1種又は2種以上の他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の原料の例としては、糖類、高甘味度甘味料、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、香味オイル、フレーバー、香辛料抽出物などの呈味・風味成分、粘度調整剤、安定剤、pH調整剤、着色料などの添加剤などが挙げられる。これらは一種類のみ用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。これらの他の成分の含有量は限定されず、用途に応じて適宜決定することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、本発明の液状調味料は、好ましくは、動物由来の成分を含まないか、または実質的に含まない。ここで、「動物由来の成分」とは、各種動物由来の有機物をいう(動物の例として、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等の脊椎動物;軟体動物、刺胞動物、節足動物等の無脊椎動物が挙げられる)。動物由来成分の例としては、これらに限定されないが、豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉、羊肉などの肉;牛乳、バター、ヨーグルト、クリームなどの乳製品;卵;動物性タンパク質、動物性脂肪、動物性脂質などの動物由来のその他の物質などが挙げられる。
【0034】
本発明の液状調味料の製造方法は限定されず、任意の製造方法により製造することが出来る。製造方法の例としては、リンゴ酢(及び任意によりリンゴ果汁)を含む態様の液状調味料を製造する場合、これらに限定されないが、以下を含む方法が挙げられる。即ち、(i)リンゴ酢(及び任意によりリンゴ果汁)を含む液状として第1の画分を調製し;(ii)野菜の固形成分を含む懸濁液として第2の画分を調製し;(iii)第1の画分及び第2の画分を混合しながら;(iv)2-メトキシ-4-エチルフェノール及びコハク酸ジエチルの質量対体積比、並びに液状調味料の酢酸酸度をそれぞれ上記の範囲内に調整することを含む。
【0035】
特定香気化合物(2-メトキシ-4-エチルフェノール及びコハク酸ジエチル、並びに任意により6-メチル-5-ヘプテン-2-オン)の質量対体積比の調整(上記工程(iv))は、例えば、工程(i)及び/又は工程(ii)の最中、工程(i)及び(ii)と工程(iii)との間、工程(iii)の最中、工程(iii)の後、或いはこれらの任意の組み合わせなど、どのタイミングで実施してもよい。本発明の一実施形態によれば、この調整を実施する手段としては、限定されないが、以下が挙げられる。(a)第1及び/又は第2の画分における特定香気化合物の質量比を事前に調整する(例:リンゴ酢の調製時の発酵条件を調整する)ことにより、第1及び第2の画分を混合した場合に目的の比率が達成できるようにする、及び/又は、(b)第1及び第2の画分の混合物に特定香気化合物を添加することにより、所望の比率を達成する。
【0036】
液状調味料の酢酸酸度の調整(上記工程(iv))は、例えば、工程(i)及び/又は工程(ii)の最中、工程(i)及び(ii)と工程(iii)との間、工程(iii)の最中、工程(iii)の後、或いはこれらの任意の組み合わせなど、どのタイミングで実施してもよい。本発明の一実施形態によれば、この調整を実施する手段としては、限定されないが、以下が挙げられる。(a)第1及び/又は第2の画分における酢酸酸度を事前に調整する(例:リンゴ酢の調製時の発酵条件を調整する)ことにより、第1及び第2の画分を混合した場合に目的の酢酸酸度が達成できるようにする、及び/又は、(b)第1及び第2の画分の混合物の酢酸酸度を調整することにより、所望の酢酸酸度を達成する。
【0037】
なお、一態様によれば、前記の(ii)野菜の固形成分を含む懸濁液として第2の画分を調製する段階では、野菜の固形成分を、好ましくは糖の存在下で、加熱することが好ましい。加熱温度は制限されないが、例えば通常60℃以上、又は65℃以上、又は70℃以上とすることが好ましく、また、通常100℃以下、又は95℃以下、又は90℃以下とすることが好ましい。加熱時間も制限されないが、前記の加熱温度又はその近傍の温度で、通常35分間以上、又は40分間以上、又は45分間以上、また、通常120分間以内、又は100分間以内、又は80分間以内の時間に亘って維持することが好ましい。また、野菜の固形成分に加え糖を共存させる場合には、野菜の固形成分を含む第2の画分の媒質に、糖を通常10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、また、通常55質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下となるように加えることが好ましい。こうした加熱工程を設けることで、野菜の固形成分が(好ましくは共存する糖と共に)アミノカルボニル反応を生じ、後述の丸みを帯びた甘味を伴う芳醇な香りや濃厚味(tangy taste)を生じて、本発明の効果の発揮に繋がっているものと考えられる。また、斯かるアミノカルボニル反応によって、第2の画分が褐変する結果、前述した液状調味料の水10倍希釈液の波長430nmでの吸光度上昇に繋がっているものと考えられる。
【0038】
本発明の液状調味料は、任意の食品で任意の方法で使用され得る。 本発明の一実施形態によれば、液状調味料は、好ましくは、動物由来の1種又は2種以上の成分を含有する液状調味料の代用品として使用することができる。 本発明の一実施形態によれば、液状調味料は、ベジタリアン食やビーガン食など、動物由来成分を含まない食品に使用することが好ましい。本発明の液状調味料は、ベジタリアン食やビーガン食に対して、乳製品や動物由来成分のような豊かな風味、食感、及び/又は後味を加えることができ、これによりベジタリアン食やビーガン食の味覚を改善することができるので、上記の方法で使用した場合に有利である。
【実施例0039】
次に実施例を参照しながら本発明をより詳細に説明する。以下の実施例はあくまでも例示目的で示すものであり、如何なる意味でも本発明を限定するものではない。
【0040】
[1.野菜固形具材含有液状調味料の調製及び評価]
以下の手順で、実施例1~4及び比較例1の野菜固形具材含有液状調味料を調製し、物性測定及び官能評価に供した。
【0041】
(1-1)液状調味料の調製
各実施例及び比較例の液状調味料は、(1)野菜固形具材を含有する液状調味料基材を調製し、(2)リンゴ酢及びリンゴ果汁の混合物であるアップルサイダービネガーを調製し、(3)前記液状調味料基材に対して、前記アップルサイダービネガー及び/又は水を、所定の比率で混合することにより調製した。詳細な手順は以下の通りである。
【0042】
(1-1-1)液状調味料基材の調製
(i)野菜固形物としてニンジン396g、ルタバガ340g、カリフラワー158g、タマネギ430gを略3mmサイズに角切りした。
(ii)前記(i)の野菜固形物を、シロップ(砂糖35質量%及び食塩7質量%の水溶液)1300gとともに鍋に入れ、80℃で60分加熱した。
(iii)前記(ii)の野菜加熱物760gを、冷めないうちに、上記組成のシロップ520gと、ソース(デーツペースト8質量%、スパイスミックス1質量%、レモンジュース0.5質量%、トマトペースト3質量%、砂糖24質量%、及びデンプン4質量%に、上述のシロップ10質量%を加え、残部を食酢と水で全体の酢酸酸度が4%となるように調製)720gと混合後、瓶詰し、液状調味料基材とした。
【0043】
(1-1-2)アップルサイダービネガーの調製
以下の(A)、(b1)、及び(b2)を質量比38.6:36.1:25.3となるように混合し、アップルサイダービネガーを調製した。
(A)リンゴ酢:British Standard BS EN 13188:2000 2.3.3に記載のcider vinegarの規程に準拠した製法で製造した酢酸酸度10%(w/v)のリンゴ酢を用いた。発酵後はろ過せず、発酵に用いた酢酸菌体が残存した状態のまま用いた。
(B)リンゴ果汁:以下の2種類のリンゴ果汁を用いた。
(b1)清澄リンゴ果汁:濃縮、パルプ除去工程後にBrix70(7倍濃縮相当)に調製した果汁を用いた。パルプ量は0.1%(w/w)未満であった。
(b2)混濁リンゴ果汁:濃縮後に一部パルプ分を残存させた状態でBrix40(4倍濃縮相当)に調製した果汁を用いた。パルプ量は約5%(w/w)であった。
【0044】
各リンゴ果汁のパルプ分の測定は、各濃縮果汁1.0gを1.5mL容のエッペンドルフチューブに分注し、遠心分離機(久保田商事社製Kubota 3700)とローター(久保田商事社製Kubota AF-2724)を用いて、常温で15000rpm、5分間遠心分離した後、上清を除いた残存物の湿潤質量を測定することによって算出した。
【0045】
(1-1-3)液状調味料基材とアップルサイダービネガーの混合による液状調味料の調製
前記の液状調味料基材を、アップルサイダービネガー及び/又は水と、下記表1の各実施例及び比較例に記載の割合で混合することにより、各実施例及び比較例の野菜固形具材含有液状調味料を調製し、下記の各物性測定及び官能評価に供した。
【0046】
【表1】
【0047】
(1-2)液状調味料の物性測定
(1-2-1)具材のサイズ毎の含量の測定
実施例1の液状調味料について、膨潤した状態の野菜具材のサイズ及び含量を測定したところ、液状調味料全量に対して、サイズが8mm以上20mm以下(3メッシュオン)の具材が0.4質量%、サイズが3mm以上8mm以下(3メッシュパス7.5メッシュオン)の具材が41.1質量%、サイズが0.5mm以上3mm以下(7.5メッシュパス30メッシュオン)の具材が4.0質量%だった。
【0048】
(1-2-2)酢酸酸度の測定
各実施例及び比較例の液状調味料について、自動酸度滴定装置COM-1600(平沼産業)を用い、0.5mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pHが8.2となるまでに消費した水酸化ナトリウム溶液の量を求め、ここから酢酸含量に換算し、酢酸酸度を算出した。
【0049】
(1-2-3)430nmにおける吸光度の測定
各実施例及び比較例の液状調味料を、水で10倍希釈後、0.45ミクロンフィルターで濾過して、測定用の試料を調製した。この試料を用いて、分光光度計UV-1800(Shimadzu社製)により、430nmでの吸光度を測定した。
【0050】
(1-2-4)特定香気化合物の測定
各実施例及び比較例の液状調味料について、特定香気化合物である2-メトキシ-4-エチルフェノール、コハク酸ジエチル、及び6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの含有量の測定に供した。測定は、SBME法で処理した検体について、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)装置を用いて、以下の方法により実施した。
【0051】
まず、各実施例及び比較例の液状調味料に対し、以下の(i)~(iv)の前処理を行って、測定検体を調製した。
(i)各実施例及び比較例の液状調味料から10mLの試料をバイアルに採取した。
(ii)バイアルに、PDMS Twister(ゲステル社製;膜厚0.5mm、長さ10mm)を入れ、60分間攪拌して成分を吸着させた。
(iii)上清を濾過で取り除き、PDMS Twisterをイオン交換水ですすいだ。
(iv)水分をキムワイプでふき取り、測定検体とした。
【0052】
調製された測定検体を用い、ゲステル社1次元2次元切替GC/MS(GC部:HP7890 Series GC SystemにLTM series IIを連結(ともにAgilent社製)、注入口:TDU2/CIS4(ゲステル社)、オートサンプラー:MPS(ゲステル社))を用いて、特定香気化合物の測定を行った。
【0053】
なお、キャピラリーカラムとしては、一次元カラムとしてDB-WAX(長さ30m、内径250μm、膜厚0.25μm、LTM用)(Agilent社)、二次元カラムとしてDB-5(長さ10m、内径180μm、膜厚0.4μm、LTM用)(Agilent社)を使用した。キャリアガスとしてはヘリウムを用いた。
【0054】
特定香気化合物のうち、2-メトキシ-4-エチルフェノール及びコハク酸ジエチルの測定は一次元分析、6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの測定は二次元分析で行った。
【0055】
GC/MSへの検体の注入は、上記前処理を行ったPDMS Twister各1個を用い、注入条件は何れも以下の条件で行った。
・CIS4:
10℃で0.5分保持、その後720℃/分で240℃まで昇温。
・TDU2:
30℃で0.2分保持、その後720℃/分で240℃まで昇温。
【0056】
6-メチル-5-ヘプテン-2-オンの測定は、以下の手順で行った。まず、上記注入条件で一次元カラムに注入を行った後、保持時間が14.5分から17.5分までの間でバックフラッシュを行い、特定香気化合物を二次元カラムに導入して分離を行い、SIM分析に供した。なお、DB-WAX(一次元カラム)及びDB-5(二次元カラム)のカラムオーブン条件はそれぞれ以下のとおりとした。
・DB-WAX(一次元カラム):
40℃で3分保持、その後5℃/分で昇温、測定開始から48分で打ち切り。
・DB-5(二次元カラム):
40℃で18分保持、その後10℃/分で240℃まで昇温、10分保持。
【0057】
2-メトキシ-4-エチルフェノール及びコハク酸ジエチルの測定は、以下の手順で行った。上記注入条件で一次元カラムに注入を行った後、一次元カラムで分離を行い、SIM分析に供した。なお、DB-WAX(一次元カラム)のカラムオーブン条件は以下のとおりとした。
・DB-WAX(一次元カラム):
40℃で3分保持、その後5℃/分で240℃まで昇温、7分保持。
【0058】
選択イオン検出(SIM)モードによる各測定検体の測定後、下記表3に示す各特定香気化合物の標準物質の定量イオンの面積から、測定検体における各特定香気化合物の濃度を算出した。更に、各測定検体における水での希釈率を考慮して、各試料に含まれる各特定香気化合物の含有濃度を算出した。
【0059】
【表2】
【0060】
(1-3)液状調味料の官能評価
各実施例及び比較例の液状調味料を、以下の手順による官能評価に供した。
【0061】
官能評価は、6名の官能検査員により行った。官能検査員としては、官能識別訓練の成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感等の品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な者を選抜した。
【0062】
官能検査の項目は、「香り」、「濃厚味」、及び「総合評価」とした。「香り」及び「濃厚味」については、検査員が各々以下の1~5のスケールで評点化し、6人の評点の平均値を採用した。「総合評価」は、「香り」(丸みを帯びた甘味を伴う芳醇な香り)及び「濃厚味」の平均値とした。
【0063】
・香り:
5 香りが強く感じられて非常に好ましい。
4 香りがやや強く感じられて好ましい。
3 香りが適度に感じられる。
2 香りが僅かにしか感じられず好ましくない。
1 香りが全く感じられず全く好ましくない。
【0064】
・濃厚味:
5 濃厚味が強く感じられて非常に好ましい。
4 濃厚味がやや強く感じられて好ましい。
3 濃厚味が適度に感じられる。
2 濃厚味が僅かにしか感じられず好ましくない。
1 濃厚味が全く感じられず全く好ましくない。
【0065】
(1-4)結果
物性測定及び官能評価の結果を以下の表に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
本発明の規定を満たす実施例1及び2の野菜具材含有液状調味料は、本発明の規定を満たさない比較例1の野菜具材含有液状調味料と比較して、全体的な評価に優れていた。
【0069】
[2.野菜固形具材含有液状調味料を用いたビーガン用サンドイッチの調製及び評価]
(2-1)液状調味料を用いたサンドイッチの調製
前記の各実施例及び比較例の液状調味料を用いて、ビーガン食材のみを使用したサンドイッチを調製した。具体的には、下記表の各調製例及び比較調製例に示す各食材を表に示す分量用い、食パン2枚(約85g)に挟むことにより、各調製例及び比較調製例のサンドイッチを調製した。また、ビーガン向けでない対照用のサンドイッチとして、一般の(乳製品及び動物性成分を含む)食材を用いて、参照調製例のサンドイッチを調製した。
【0070】
なお、下記表5に示す食材のうち、前記の各実施例及び比較例の液状調味料以外の食材としては、以下を用いた。
・ビーガン用チェダーチーズ(ASDA Free From Mature Cheddar Alternative: Asda Stores Limited,)
・ビーガン用モッツァレラチーズ(ASDA Free From Grated Mozzarella Alternative: Asda Stores Limited,)
・スプレッド(Flora Buttery 1kg: Upfield Holdings B.V.)
・ビーガンソース(Biona Organic Worcester Sauce: Biona)
・一般的なチーズ1(Cathedral City Mature Cheddar 350G: Cathedral City)
・一般的なチーズ2(Tesco Mozzarella Grated 250G: Tesco Plc)
・一般的なスプレッド(Anchor Unsalted Butter: Fonterra Co-operative Group Limited)
・一般的なウスターソース(Lea & Perrins Worcestershire sauce: Lea & Perrins, Inc.)
【0071】
【表5】
【0072】
(2-2)液状調味料を用いたサンドイッチの評価
前記の調製例、比較調製例、及び参照調製例のサンドイッチを、以下の手順による官能評価に供した。
【0073】
官能評価は、6名の官能検査員により行った(検査員の選抜基準は前述のとおり)。試食試験をするために、検査員を同一の部屋に入れ、均一の環境下で試験を実施した。比較評価に適した方法として、サンドイッチ試料を適温に温め、ランダムな順序で各検査員に供した。全ての検査員が同じ順序でサンドイッチ試料を試食した。その後、検査員はサンドイッチ試料を2種類の異なる指標、即ち、嗜好性評価指標と特徴識別評価指標に基づいて評価した。
【0074】
嗜好性評価指標は、「外観」、「香り」、「全体的な風味」、「食感」、「後味」、及び「総合評価」の6種の項目からなる。各項目は、0を「非常に嫌い」、10を「非常に好き」とする0~10のスケールで評点化し、6名の評点の平均値を採用した。
【0075】
特徴識別評価指標は、「チーズの香りの強さ」、「野菜の香りの強さ」、「チーズの全体的な風味の強さ」、「野菜の全体的な風味の強さ」、「チーズと野菜とのバランス」、「溶けたチーズの食感」、及び「スパイスの後味の量」の7種の項目からなる。各項目は以下に示す1~5のスケール(3が最適評価)で評点化し、6名の評点の平均値を採用した。
【0076】
「チーズの香りの強さ」
1:全く足りない。
2:少し弱すぎる。
3:ちょうど良い。
4:少し強すぎる。
5:あまりに強すぎる。
【0077】
「野菜の香りの強さ」
1:全く足りない。
2:少し弱すぎる。
3:ちょうど良い。
4:少し強すぎる。
5:あまりに強すぎる。
【0078】
「チーズの全体的な風味の強さ」
1:全く足りない。
2:少し弱すぎる。
3:ちょうど良い。
4:少し強すぎる。
5:あまりに強すぎる。
【0079】
「野菜の全体的な風味の強さ」
1:全く足りない。
2:少し弱すぎる。
3:ちょうど良い。
4:少し強すぎる。
5:あまりに強すぎる。
【0080】
「チーズと野菜とのバランス」
1:あまりに甘すぎる。
2:少し甘すぎる。
3:ちょうど良い。
4:少し濃厚すぎる。
5:あまりに濃厚すぎる。
【0081】
「溶けたチーズの食感」。
1:あまりに硬すぎる
2:少し硬すぎる。
3:ちょうど良い
4:少し柔らかすぎる。
5:あまりに柔らかすぎる。
【0082】
「スパイスの後味の量」
1:スパイスがあまりに強すぎる。
2:スパイスが少し強ぎる。
3:ちょうど良い。
4:スパイスが少し弱すぎる。
5:スパイスがあまりに弱すぎる。
【0083】
(2-3)結果
物性測定及び官能評価の結果を以下の表に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
実施例1~4の野菜具材含有液状調味料を用いた調製例1~4のサンドイッチは、比較例1の野菜具材含有液状調味料を用いた比較調製例のサンドイッチと比較して、全体的に評価に優れていた。特に、実施例2及び4の野菜具材含有液状調味料を用いた調製例2及び4のサンドイッチは、肉や乳製品に由来する成分を含む食材を用いた参照調製例のサンドイッチと比較しても遜色なく、特に調製例4のサンドイッチはむしろ参照調製例よりもすぐれていた。
【0087】
[3.野菜固形具材含有液状調味料への香味料添加による効果の評価]
前記(1-1-1)で調製した液状調味料基材に対して、下記9種の香辛料の各々を、終濃度が0.5質量%となるように加え(即ち、野菜固形具材含有液状食材99.5質量%+香辛料0.5質量%)、9つの評価用試料を調製し、官能検査に供した。
【0088】
※香辛料:ジンジャー、カルダモン、シナモン、バジル、パセリ、コリアンダー、ナツメグ、ブラックペッパー、及びカイエンペッパー(何れもS&B社製3g~16g入り製品を使用)。
【0089】
官能試験の項目としては、各香辛料と液状調味料基材との組み合わせによる食味の相応しさを、以下の1~5のスケールで評点化した。評価は4人の検査員で行った(検査員の選抜基準は前述のとおり)。評価試験に先立ち、検査員が全員で標準試料(液状調味料基材)の評価を行い、評価スコアの標準化を行った上で、評価試料を各検査員が下記スケールで評点化し、4人の評点の平均値を採用した。
【0090】
・食味の相応しさ:
5 食味が完全に合っており非常に好ましい。
4 食味がよく合っており好ましい。
3 食味がそこそこ合っている。
2 食味があまり合っておらず好ましくない。
1 食味が.全く合っておらず.全く好ましくない。
【0091】
官能評価の結果を以下の表に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
これらの結果によれば、試験したスパイスの中でも、ショウガ、カルダモン、ナツメグ、及び黒コショウが、液状調味料ベースの食味とよく整合し、液状調味料ベースの食味を改善することがわかった。
【外国語明細書】