(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057517
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/70 20060101AFI20220404BHJP
G11B 5/78 20060101ALI20220404BHJP
G11B 5/738 20060101ALI20220404BHJP
G11B 5/735 20060101ALI20220404BHJP
G11B 5/584 20060101ALI20220404BHJP
G11B 23/107 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G11B5/70
G11B5/78
G11B5/738
G11B5/735
G11B5/584
G11B23/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165818
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】金子 徹也
【テーマコード(参考)】
5D006
【Fターム(参考)】
5D006BA19
5D006EA01
5D006FA09
(57)【要約】
【課題】タイミングベースサーボシステムを利用する磁気テープ装置における記録再生品質向上を可能にすること。
【解決手段】タイミングベースサーボパターンを有し、1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上の磁気テープ装置において使用され、上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下である磁気テープ。上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジ。磁気テープを含み、1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上であり、上記磁気テープは、タイミングベースサーボパターンを有し、上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下である磁気記テープ装置。上記ΔPNLは、上記タイミングベースサーボパターンの直線性からのずれ量を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイミングベースサーボパターンを有し、
1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上の磁気テープ装置において使用され、
前記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下であり、
前記ΔPNLは、前記タイミングベースサーボパターンの直線性からのずれ量を示す、磁気テープ。
【請求項2】
前記総データトラック数は、8960以上である、請求項1に記載の磁気テープ。
【請求項3】
前記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの0.5%以上10.0%以下である、請求項1または2に記載の磁気テープ。
【請求項4】
非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
【請求項5】
前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有する、請求項4に記載の磁気テープ。
【請求項6】
前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有する、請求項4または5に記載の磁気テープ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気テープを含む磁気テープカートリッジ。
【請求項8】
磁気テープを含み、
1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上であり、
前記磁気テープは、
タイミングベースサーボパターンを有し、
前記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下であり、
前記ΔPNLは、前記タイミングベースサーボパターンの直線性からのずれ量を示す、磁気テープ装置。
【請求項9】
前記総データトラック数は、8960以上である、請求項8に記載の磁気テープ装置。
【請求項10】
前記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの0.5%以上10.0%以下である、請求項8または9に記載の磁気テープ装置。
【請求項11】
前記磁気テープは、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載の磁気テープ装置。
【請求項12】
前記磁気テープは、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有する、請求項11に記載の磁気テープ装置。
【請求項13】
前記磁気テープは、前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有する、請求項11または12に記載の磁気テープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バックアップ、アーカイブ等のデータストレージ用途には、テープ状の磁気記録媒体(即ち磁気テープ)が主に用いられている。情報量の莫大な増大に伴い、磁気テープには、記録容量を高めること(高容量化)が求められている。この高容量化のための手段としては、データトラックの幅を狭くすることにより、より多くのデータトラックを磁性層に配置して記録密度を高めることが挙げられる。
【0003】
しかしデータトラックの幅を狭くしてより多くのデータトラックを磁性層に配置すると、磁気テープを磁気テープ装置内で走行させてデータの記録および/または再生を行う際、磁気ヘッドがデータトラックに正確に追従することが困難となり、記録再生時にエラーを起こし易くなってしまう。そこで、かかるエラーの発生を低減するための手段として、近年、サーボ信号を利用してヘッドトラッキングを行うシステム(以下、「サーボシステム」と記載する。)が提案され、実用化されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーボシステムの中で、磁気サーボ方式のサーボシステムでは、サーボパターンを磁気テープの磁性層に形成し、このサーボパターンを磁気的に読み取ってヘッドトラッキングを行う。より詳しくは、次の通りである。
まず磁気ヘッドに備えられたサーボパターン読取素子によって、磁性層に形成されているサーボパターンを読み取る。次に、サーボパターンの読取結果に応じて、磁気テープの幅方向における磁気ヘッドの位置をコントロールして、磁気ヘッドをデータトラックに追従させる。これにより、磁気テープにデータを記録または再生するために磁気テープ装置内で磁気テープを走行させる際、磁気テープの位置が磁気ヘッドに対して幅方向に変動しても、磁気ヘッドをデータトラックに追従させる精度を高めることができる。こうして、磁気テープに対して正確にデータを記録すること、および/または、磁気テープに記録されているデータを正確に再生すること、が可能となる。
【0006】
上記の磁気サーボ方式のサーボシステムとしては、近年、タイミングベースサーボ方式が広く用いられている。タイミングベースサーボ方式のサーボシステム(以下、「タイミングベースサーボシステム」とも呼ぶ。)では、2種以上の異なる形状の複数のサーボパターンをサーボバンド上に形成し、サーボパターン読取素子が異なる形状の2つのサーボパターンを読み取った時間間隔と、サーボパターン読取素子が同じ形状の2つのサーボパターンを読み取った時間間隔と、によって、磁気ヘッドの位置が認識される。こうして認識された位置に基づき、磁気テープの幅方向における磁気ヘッドの位置がコントロールされる。
【0007】
タイミングベースサーボシステムに関して、特許文献1(米国特許第10366716号明細書)では、タイミングベースサーボ(Timing-based servo)のサーボパターンの非線形性(nonlinearity)を評価する方法が開示されている(特許文献1の請求項1等参照)。
【0008】
タイミングベースサーボシステムでは、磁性層に形成されているサーボパターンは完全な直線性を有していることを前提として、ヘッドトラッキングが行われる。しかし実際には、完全な直線性を有するサーボパターンを磁性層に形成することは容易ではない。この点に関して、特許文献1(米国特許第10366716号明細書)には、サーボパターンの非線形性を評価することが記載されているのみである。しかし、実際には非線形性を有するサーボパターンが磁性層に形成されているにもかかわらず、サーボパターンが完全な直線性を有していることを前提としてヘッドトラッキングが行われることは、ヘッドトラッキングの精度低下の原因となり、その結果、記録再生時にエラーを起こし易くなり記録再生品質は低下してしまう。尚、本明細書に記載の「記録再生」とは、特記しない限り、「記録のみ」、「再生のみ」または「記録および再生」を意味するものとする。
【0009】
以上に鑑み、本発明の一態様は、タイミングベースサーボシステムを利用する磁気テープ装置における記録再生品質向上を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
タイミングベースサーボパターンを有し、
1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上の磁気テープ装置において使用され、
上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下であり、
上記ΔPNLは、上記タイミングベースサーボパターンの直線性からのずれ量を示す、磁気テープ、
に関する。
【0011】
本発明の一態様は、
磁気テープを含み、
1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上であり、
上記磁気テープは、
タイミングベースサーボパターンを有し、
上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下であり、
上記ΔPNLは、上記タイミングベースサーボパターンの直線性からのずれ量を示す、磁気テープ装置、
に関する。
【0012】
一形態では、上記総データトラック数は、8960以上であることができる。
【0013】
一形態では、上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの0.5%以上10.0%以下であることができる。
【0014】
一形態では、上記磁気テープは、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有することができる。
【0015】
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体と上記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有することができる。
【0016】
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体の上記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有することができる。
【0017】
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、タイミングベースサーボシステムを利用する磁気テープ装置における記録再生品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】磁気テープにおけるデータバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。
【
図2】LTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットテープのサーボパターン配置例を示す。
【
図5】サーボパターンの形状に関する値の測定方法の説明図である。
【
図7】サーボライトヘッドにおけるライトギャップの配置例を示す。
【
図8】サーボライトヘッドの一例を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示すサーボライトヘッド20の断面図である。
【
図10】
図9に示すサーボライトヘッド20の断面図の一部拡大図である。
【
図11】サーボライターの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[磁気テープ、磁気テープ装置]
本発明の一態様は、タイミングベースサーボパターンを有し、1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上の磁気テープ装置において使用され、上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下である磁気テープに関する。上記ΔPNLは、上記タイミングベースサーボパターンの直線性からのずれ量を示す。
【0021】
また、本発明の一態様は、磁気テープを含み、1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上であり、上記磁気テープは、タイミングベースサーボパターンを有し、上記タイミングベースサーボパターンのΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下である磁気テープ装置に関する。
【0022】
以下、上記磁気テープおよび上記磁気テープ装置について、更に詳細に説明する。
【0023】
<総データトラック数>
上記磁気テープへのデータ記録における1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数は、8705以上である。本発明者が鋭意検討を重ねた結果、狭トラック化によって総データトラック数8705以上という多数のデータトラックが磁気テープに設けられる場合には、ΔPNLをトラックピッチの10.0%以下にすることによって、記録再生品質の向上が可能になることが判明した。この点は、単にタイミングベースサーボのサーボパターンの非線形性を評価することを開示するのみの特許文献1(米国特許第10366716号明細書)には何らの示唆もなく、本発明者によって新たに見出された知見である。
【0024】
本発明および本明細書において、「総データトラック数」とは、以下の式:
総データトラック数=データバンド数×1データバンド内のラップ数×記録素子数
によって算出される値である。上記の「記録素子数」とは、データの記録を行う磁気ヘッドが有する記録素子の数である。一般的な磁気ヘッドでは、1つの記録素子と1つの再生素子との対はチャンネル(channel)と呼ばれ、記録素子数はチャンネル(channel)数と同じ値である。また、上記の「1データバンド内のラップ数」とは、一回の一方向のエンド・ツー・エンド・パス(single,one-way,end-to-end pass)において読み取られるトラックセット数である。業界規格では、一般に、データバンド数は、「number of databand」、1データバンド内のラップ数は、「number of wraps in 1DB(databand)」、チャンネル数は、「number of channnels」と表記される。これらの値は、業界規格等によって磁気テープシステム毎に定められており、磁気テープが適用される磁気テープシステムが決定されれば、かかる磁気テープシステム固有の値として自ずと定まるものである。
【0025】
本発明および本明細書における「総データトラック数」は、1/2インチ幅の磁気テープ換算の値である。磁気テープの幅の値としては、LTO(Linear Tape-Open)等の規格にしたがって磁気テープについて定められた幅を採用できる。例えば、1/2インチ幅の磁気テープを採用する規格用の磁気テープについては、磁気テープの幅の値としては、1/2インチを採用できる。1/2インチ幅以外の磁気テープについては、その磁気テープの総データトラック数を、その磁気テープのテープ幅(単位:インチ)×2の値で除して算出される値を、1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数とする。尚、1/2インチ=12.65mmである。
【0026】
上記磁気テープへのデータ記録における上記総データトラック数は、8705以上であり、8960以上であることが好ましい。また、上記総データトラック数は、例えば、35840以下であることができる。総データトラック数が多いことは、高容量化の観点から好ましいため、上記磁気テープの上記総データトラック数は、ここで例示した値を超えてもよい。
【0027】
<タイミングベースサーボパターン>
上記磁気テープは、タイミングベースサーボパターンを有する。詳しくは、上記磁気テープは、タイミングベースサーボパターンが形成された磁性層を有することができる。先に記載したように、タイミングベースサーボシステムでは、2種以上の異なる形状の複数のサーボパターンを磁性層に形成し、磁気ヘッドに備えられたサーボパターン読取素子が異なる形状の2つのサーボパターンを読み取った時間間隔と、サーボパターン読取素子が同種の形状の2つのサーボパターンを読み取った時間間隔と、によって、磁気ヘッドの位置が認識される。本発明および本明細書における「タイミングベースサーボパターン」とは、タイミングベースサーボシステムにおけるヘッドトラッキングが可能なサーボパターンをいう。タイミングベースサーボシステムにおけるヘッドトラッキングが可能なサーボパターンは、サーボパターンを形成するためのヘッドであるサーボライトヘッド(servo write head)により、磁性層に2種以上の異なる形状の複数のサーボパターンとして形成できる。一例では、2種以上の異なる形状の複数のサーボパターンが、同種の形状の複数のサーボパターンごとに連続して一定の間隔をもって配置される。他の一例では、異なる種類のサーボパターンが交互に配置される。サーボパターンが同種の形状であることに関しては、サーボパターンの形成において通常生じ得る程度の形状の違いは不問とする。タイミングベースサーボシステムにおけるヘッドトラッキングが可能なサーボパターンの形状およびサーボバンド上での配置は公知であり、具体的形態については後述する。以下において「タイミングベースサーボパターン」を、単に「サーボパターン」とも記載する。
【0028】
例えば、現在広く用いられているリニア記録方式では、一般に、タイミングベースサーボシステムが採用されている。かかるシステムに適用される磁気テープには、通常、磁性層に、サーボパターンが形成された領域(「サーボバンド」と呼ばれる)が磁気テープの長手方向に沿って複数存在する。2本のサーボバンドに挟まれた領域は、データバンドと呼ばれる。データ(磁気信号)の記録はデータバンド上で行われ、各データバンドには複数のデータトラックが長手方向に沿って形成される。
図1に、データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。
図1中、磁気テープ1の磁性層には、複数のサーボバンド10が、ガードバンド(Guard Band)12に挟まれて配置されている。2本のサーボバンドに挟まれた複数の領域11が、データバンドである。サーボパターンは、磁化領域であって、サーボライトヘッドにより磁性層の特定の領域を磁化することによって形成される。サーボライトヘッドにより磁化する領域(サーボパターンを形成する位置)は規格により定められている。例えば業界標準規格であるLTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットテープには、磁気テープ製造時に、
図2に示すようにテープ幅方向に対して傾斜した複数のサーボパターンが、サーボバンド上に形成される。詳しくは、
図2中、サーボバンド10上のサーボフレームSFは、サーボサブフレーム1(SSF1)およびサーボサブフレーム2(SSF2)から構成される。サーボサブフレーム1は、Aバースト(
図2中、符号A)およびBバースト(
図2中、符号B)から構成される。AバーストはサーボパターンA1~A5から構成され、BバーストはサーボパターンB1~B5から構成される。一方、サーボサブフレーム2は、Cバースト(
図2中、符号C)およびDバースト(
図2中、符号D)から構成される。CバーストはサーボパターンC1~C4から構成され、DバーストはサーボパターンD1~D4から構成される。このような18本のサーボパターンが5本と4本のセットで、5、5、4、4、の配列で並べられたサーボサブフレームに配置され、サーボフレームを識別するために用いられる。
図2には、1つのサーボフレームを示した。ただし、各サーボバンドには、複数のサーボフレームが走行方向に配置される。
図2中、矢印は磁気テープの走行方向を示している。矢印で示す磁気テープの走行方向の進行方向側(
図2中、右側)が下流側であり、反対側(
図2中、左側)が上流側である。
【0029】
図3および
図4は、アジマス角αの説明図である。
図2に示すサーボパターンにおいて、サーボパターンA1~A5、C1~C4のように走行方向の下流側に向けて傾斜しているサーボパターンについて、上流側のエッジE
Lの端部2箇所を結ぶ線分(
図3中、破線L1)とテープ幅方向(
図3中、破線L2)とのなす角度が、アジマス角αである。一方、サーボパターンB1~B5、D1~D4のように走行方向の上流側に向けて傾斜しているサーボパターンについて、上流側のエッジE
Lの端部2箇所を結ぶ線分(
図4中、破線L1)とテープ幅方向(
図4中、破線L2)とのなす角度がアジマス角αである。
【0030】
上記磁気テープが有するタイミングベースサーボパターンのアジマス角αは、例えば、37°以下、30°以下または25°以下であることができる。また、上記アジマス角αは、例えば、5°以上または10°以上であることができる。より多くのデータトラックを磁性層に配置して記録密度を高める場合には、アジマス角αが大きいことは、タイミングベースサーボシステムにおけるヘッドトラッキングを行ううえで好ましい。
【0031】
サーボパターンの形状に関する値としては、アジマス角に加えて、「パターン高さ」、「中点距離」および「サブフレーム長」を挙げることができる。「パターン高さ」とは、磁気テープの幅方向におけるサーボパターン長と同義である。「中点距離」とは、1つのサーボフレームにおける、隣り合うバースト間のパターン高さの中点位置での距離(長手方向における距離)をいい、最も上流側に配置されているサーボサブフレーム内の最も上流側のバーストの最も上流側のサーボパターンの上流側エッジから隣のバースト内の最も上流側のサーボパターンの上流側エッジまでのパターン高さの中点位置での距離(長手方向における距離)であることができる。例えば、
図2に示すサーボフレームSFにおいて、サーボパターンA1の上流側エッジとサーボパターンB1の上流側エッジとのパターン高さの中点位置での距離(磁気テープの長手方向における距離)を、中点距離として採用することができる。後述の実施例では、かかる距離を中点距離として採用した。「サブフレーム長」とは、1つのサーボフレームにおける、隣り合うサーボサブフレーム間の上流側エッジの上端間または下端間の距離(長手方向における距離)をいい、最も上流側に配置されているサーボサブフレームの最も上流側のサーボパターンの上流側エッジと隣のサーボサブフレームの最も上流側のサーボパターンの上流側エッジの上端間または下端間の距離(長手方向における距離)であることができる。例えば、
図2に示すサーボフレームSFにおいて、サーボパターンA1の上流側エッジとサーボパターンC1の上流側エッジの上端間または下端間の距離(長手方向における距離)を、サブフレーム長として採用できる。後述の実施例では、かかる距離をサブフレーム長として採用した。パターン高さは、例えば、40μm以上もしくは45μm以上であることができ、また、120μm以下もしくは100μm以下であることができる。中点距離は、例えば、20μm以上もしくは25μm以上であることができ、また、45μm以下もしくは40μm以下であることができる。サブフレーム長は、例えば、45μm以上もしくは50μm以上であることができ、また、85μm以下もしくは80μm以下であることができる。
【0032】
磁気テープが有するサーボパターンについて、サーボパターンの形状に関する上記の各種値の測定は、測定対象の磁気テープが有する複数のサーボフレームの中から無作為に特定した1つのサーボフレームについて行う。測定対象の磁気テープにおいて、無作為に特定した1つのサーボフレームを磁気現像する。磁気現像は、例えば、磁気パターン観察用コロイド液(例えばシグマハイケミカル社製シグマーカーQ)を用いて行うことができる。磁気現像したサーボパターンの形状に関する上記の各種値は、X/Y方向の測長機能を有する顕微鏡(例えばNikon社製MM-800)にて測長して求めることができる。ここで、測長の最小分解能は、1μm以下であることが望ましい。各値を得るための測定回数は5回とし、5回の測定により得られた値の算術平均として上記の各値を求めるものとする。
【0033】
図5に、サーボパターンの形状に関する値の測定方法の説明図を示す。
図5には、
図2に示すようにサーボパターンが配置されたサーボフレームが示されている。
「アジマス角α」については、
図3に示すように走行方向の下流側に向けて傾斜しているサーボパターンであるサーボパターンA1を例に説明すると、サーボパターンの左下と左上(右下と右上でも可)のエッジのxy座標を測定し、テープエッジを基準の0°として、逆正接(arctangent)を用いることによりアジマス角αを算出することができる。
図4に示すように走行方向の上流側に向けて傾斜しているサーボパターンについても、同様にアジマス角αを求めることができる。
「パターン高さ」は、上記で求めたサーボパターンの左下と左上(右下と右上でも可)のエッジのxy座標のy座標の差を算出することよって求めることができる。
「サブフレーム長」は、Aバーストの1本目のサーボパターンA1の左下(左上、右下、または右上でも可)のx座標とCバーストの1本目の左下(同上)のx座標の差を取ることで算出することができる。
「中点距離」は、Aバーストの1本目のサーボパターンA1の上流側エッジのパターン高さの中点位置におけるx座標とBバーストの1本目のサーボパターンB1の上流側エッジのパターン高さの中点位置におけるx座標の差として算出することができる。
【0034】
<トラックピッチ>
トラックピッチとは、隣り合うデータトラック間の磁気テープの幅方向における物理的距離をいう。先に説明した総データトラック数での記録によって形成されたデータトラックについて、トラックピッチを求めるものとする。トラックピッチは、以下の方法によって求められる。
測定対象の磁気テープの磁性層表面において、無作為に選択した領域(サイズ:90μm×90μm)を磁気力顕微鏡(MFM:Magnetic Force Microscope)で観察し、この領域の無作為に選択した1箇所において、隣り合うデータトラックについて、磁気テープの幅方向におけるトラック間距離を測定する。隣り合うデータトラックのトラック間距離は、例えば、磁気テープの幅方向における一方のデータトラックの下端と他方のデータトラックの下端との間の距離または一方のデータトラックの上端と他方のデータトラックの上端との間の距離として求めることができる。ここに記載の「下」および「上」は、相対的な語であって、任意の方向を「下」と定め、その反対の方向を「上」と定めることができる。磁気力顕微鏡としては、市販の、または公知の構成の磁気力顕微鏡を用いることができる。磁気力顕微鏡は、周波数変調(FM:Frequency Modulation)モードで用いる。磁気力顕微鏡のプローブとしては、例えば、Nanoworld社製SSS-MFMR(公称曲率半径15nm)を用いることができる。磁気力顕微鏡観察時の測定ピッチは10~100nmの範囲、磁性層表面とプローブ先端との間の距離は20~50nmの範囲とする。
以上の操作を、無作為に選択した5つの領域においてそれぞれ実施し、得られた値の算術平均をトラックピッチとする。
先に記載したように、総データトラック数は、業界規格等によって磁気テープシステム毎に定められているデータバンド数、1データバンド内のラップ数および記録素子数から算出される値であり、磁気テープが適用される磁気テープシステムが決定されれば、かかる磁気テープシステム固有の値として求められる。尚、磁気テープが市販される際に付される規格名を、その磁気テープが適用される磁気テープシステムの規格とする。磁気テープは、通常、磁気テープカートリッジ(データカートリッジとも呼ばれる。)の形態で市販される。一例として、「LTO Ultrium 8データカートリッジ」として市販されている場合、その磁気テープカートリッジ内の磁気テープは、業界規格の1つである「LTO Ultrium 8」の磁気テープシステムに適用される磁気テープである。
【0035】
トラックピッチは、例えば、0.10μm以上もしくは0.15μm以上であることができ、また、2.00μm以下、1.50μm以下もしくは1.20μm以下であることができる。ただし、トラックピッチは、先に記載したように磁気テープシステムの規格により定められる値であって、上記で例示した範囲に限定されるものではない。
【0036】
<ΔPNL>
タイミングベースサーボシステムでは、2種以上の異なる形状の複数のサーボパターンを磁性層に形成し、サーボパターン読取素子が異なる形状の2つのサーボパターンを読み取った時間間隔と、サーボパターン読取素子が同種の形状の2つのサーボパターンを読み取った時間間隔と、によって、サーボパターン読取素子を備えた磁気ヘッドの位置が認識される。
図2に示す例では、A1~A5およびC1~C4は同種の形状のサーボパターンであり、B1~B5およびD1~D4は同種の形状のサーボパターンであり、前者のサーボパターンと後者のサーボパターンは異なる形状のサーボパターンである。タイミングベースサーボシステムでは、2つのサーボパターン間の距離の読取は、物理的な計測によらず、一方のサーボパターンを読み取った時間と他方のサーボパターンを読み取った時間との時間間隔を計測することによって行われる。完全な直線性をもってサーボパターンが形成されているならば、先に説明したように物理的距離であるトラックピッチと上記の時間間隔とは比例する。しかし実際には、サーボパターンは非線形性を有することが通常である。非線形性を有するサーボパターンの一例として、特許文献1(米国特許第10366716号明細書)のFIG.10AおよびFIG.10Bに図示されているようにエッジに湾曲を含むサーボパターンを挙げることができる。非線形性を有するサーボパターンの読取結果によって磁気ヘッドの位置を認識してしまうと、その認識された位置の情報に基づくヘッドトラッキングでは、磁気ヘッドをデータトラックに追従させる精度は低下してしまう。このことが、記録再生品質を低下させる原因になると考えられる。これに対し、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、1/2インチ幅の磁気テープ換算での総データトラック数が8705以上の磁気テープ装置においては、サーボパターンの非線形性の指標ということができる値であるΔPNLを、トラックピッチに対して制御し、トラックピッチの10.0%以下とすることが、記録再生品質向上につながることを新たに見出した。
【0037】
タイミングベースサーボパターンは、通常、磁気テープの幅方向に対して角度α(αはアジマス角)で傾斜した直線状サーボパターンであって、磁気テープの幅方向の一方から他方に向かって連続的に延びるサーボパターンであることができる。尚、直線状サーボパターンについての「直線状」とは、パターン形状として曲線部分を含まないことをいうものであり、ΔPNLが指標となり得る非線形性を有することは不問とする。「連続的」とは、傾斜角度の変曲点がなく、かつ途切れることなく、テープ幅方向の一方から他方に向かって延びることをいう。磁気テープの幅方向の一方から他方に向かって連続的に延びるサーボパターンの一例は、
図2に示されているサーボパターンである。
【0038】
本発明および本明細書では、「PNL」を、パターン非線形性(Pattern nonlinearity)の略称として用いている。「ΔPNL」は、サーボパターンの直線性からのずれ量を示し、直線性からのずれの程度の指標ということができる値であるため、PNLにずれを示す符号デルタ(Δ)を付して「ΔPNL」と表記することとしたものである。ΔPNLは、以下の方法によって求められる値である。
【0039】
図6Aおよび
図6Bは、ΔPNLの測定方法の説明図である。以下、
図6Aと
図6Bとをまとめて
図6と呼ぶ。
図6中、Rは読取ヘッド、R1は第1の読取素子、R2は第2の読取素子を示す。
図6中のサーボパターンは、
図2に示す例のサーボパターンである。尚、
図6中の各部は例示として示されているものであって、寸法等は図示された形態に限定されない。この点は、他の図面についても同様である。読取ヘッドRが備える2つの読取素子R1、R2は、サーボパターンの読取が可能な市販または公知の構成の読取素子であることができる。かかる読取素子としては、GMR(Giant Magnetoresistive)素子またはTMR(Tunnel Magnetoresistive)素子が好ましく、TMR素子がより好ましい。また、その素子幅は、2μm以下であることが好ましい。素子幅は、素子幅の物理的な寸法であり、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡等によって観察して測定することができる。
【0040】
読取ヘッドRにおいて、2つの読取素子R1、R2は、磁気テープの幅方向において、距離d離れて配置されている。この後に記載する読取において、R1とR2とは、距離dを保った状態で読取を行う。距離dは、トラックピッチの同じ値に設定する。トラックピッチについては、先に記載した通りである。
第1の読取素子は、幅方向位置のy
0位置から読取を開始し、第2の読取素子は、y
1位置から読取を開始する(
図6A)。読取ヘッドRは、ΔPNLを求める対象の磁気テープが有するすべてのサーボバンドにおいて、読取ヘッドRを用いて、第1の読取素子R1によりy
0位置でのサーボパターンの読取を行い、第2の読取素子R2によりy
1位置でのサーボパターンの読取を行う。かかる読取により、異なる形状のサーボパターンについての時間間隔と同種の形状のサーボパターンについての時間間隔を求める。異なる形状のサーボパターンについての時間間隔とは、
図2に示す例では、A1とB1、A2とB2、A3とB3、A4とB4、A5とB5、C1とD1、C2とD2、C3とD3、C4とD4、についての時間間隔である。同種の形状のサーボパターンについての時間間隔とは、
図2に示す例では、A1とC1、A2とC2、A3とC3、A4とC4、B1とD1、B2とD2、B3とD3、B4とD4、についての時間間隔である。また、他の例として、1つのサーボフレームにA~Fバーストを含み、AバーストとCバーストとDバーストとFバーストとが同種の形状のサーボパターンを含み、BバーストとEバーストとが同種の形状のサーボパターンを含み、前者が走行方向の下流側に向けて傾斜しているサーボパターンであり、後者が走行方向の上流側に向けて傾斜しているサーボパターンであって、上流側から下流側に向かって、5(A1~A5)、5(B1~B5)、5(C1~C5)、4(D1~D4)、4(E1~E4)、4(F1~F4)の配列で27本のサーボパターンが配列されている場合もある。この場合、AバーストとBバーストがサブフレームを構成し、隣り合うサブフレームは、Cバースト~Fバーストによって構成される。かかる例において、異なる形状のサーボパターンについての時間間隔とは、A1とB1、A2とB2、A3とB3、A4とB4、A5とB5、D1とE1、D2とE2、D3とE3、D4とE4、についての時間間隔である。同種の形状のサーボパターンについての時間間隔とは、A1とC1、A2とC2、A3とC3、A4とC4、A5とC5、D1とF1、D2とF2、D3とF3、D4とF4についての時間間隔である。
異なる形状のサーボパターンについて求められた時間間隔の全測定値の算術平均をTdと表記し、同種の形状のサーボパターンについて求められた時間間隔の全測定値の算術平均をTsと表記する。また、第1の読取素子のy
0位置での読取により求められた値に「(1)0」を付す。例えば、第1の読取素子のy
0位置での読取により求められたTdは、「Td(1)0」と表記し、第1の読取素子のy
0位置での読取により求められたTsは、「Ts(1)0」と表記する。第2の読取素子のy
1位置での読取により求められたTdは、「Td(2)1」と表記し、第2の読取素子のy
1位置での読取により求められたTsは、「Ts(2)1」と表記する。また、第1の読取素子R1のy
0位置での読取により求められた結果から得られるy位置の実測値を「Y(1)0」と表記し、第2の読取素子R2のy
1位置での読取により求められた結果から得られるy位置の実測値を「Y(2)1」と表記する。この後の各測定位置での読取結果についても、同様に表記する。
【0041】
y位置の実測値Y(1)0は、以下の式によって算出される。サブフレーム長およびアジマス角αの測定方法は、先に記載した通りである。
Y(1)0=サブフレーム長×{1-(Td(1)0/Ts(1)0)}/2tanα
【0042】
y位置の実測値Y(2)1は、以下の式によって算出される。
Y(2)1=サブフレーム長×{1-(Td(2)1/Ts(2)1)}/2tanα
【0043】
第1の読取素子R1をy
0位置、第2の読取素子R2をy
1位置に配置して読取を行った後、第1の読取素子R1をy
1位置、第2の読取素子R
2をy
2位置に配置して、同様に読取を行う(
図6B)。y
2位置は、y
1位置と距離d離れた位置である。こうして順次読取を行い、第2の読取素子R2は最終位置であるy
E位置での読取を行う。第1の読取素子の最終読取位置は、y
(E-1)位置となる。Eは、1データバンド内のラップ数と同じ値であることが好ましく、例えば32~102の範囲であることができる。
【0044】
y位置の番号をnと表記すると、y0位置はn=0、y1位置はn=1、y2位置はn=2である。サーボパターンが完全な直線性をもって磁気テープに形成されているならば、第2の読取素子R2の読取結果から得られたyn位置の実測値「Y(2)n」と、第1の読取素子R1の読取結果から得られたy(n-1)位置の実測値「Y(1)(n-1)」と、の差分「Y(2)n-Y(1)(n-1)」は、距離d、即ちトラックピッチと同じ値となるはずである。また、第2の読取素子R2の読取結果から得られたy(n-1)位置の実測値「Y(2)(n-1)」と、第1の読取素子R1の読取結果から得られたy(n-2)位置の実測値「Y(1)(n-2)」と、の差分「Y(2)(n-1)-Y(1)(n-2)」も、距離d、即ちトラックピッチと同じ値となるはずである。しかし実際には、サーボパターンは非線形性を有することが通常である。dと「Y(2)n-Y(1)(n-1)」との差分「d-(Y(2)n-Y(1)(n-1))」を「e(n-1)」と表記する。また、dと「Y(2)(n-1)-Y(1)(n-2)」との差分「d-(Y(2)(n-1)-Y(1)(n-2))」を「e(n-2)」と表記する。非線形性の指標として、差分「e(n-2)-e(n-1)」の絶対値を算出する。かかる絶対値は合計で「n-1」個求められ、それらの算術平均を、ΔPNLとする。ここで、n=上記Eである。
【0045】
上記磁気テープでは、上記方法によって求められるΔPNLが、トラックピッチの10.0%以下である。即ち、トラックピッチを「C」とすると、「(ΔPNL/C)×100」によって算出される値が、10.0%以下である。ΔPNLがトラックピッチの10.0%以下であることは、総データトラック数が先に記載の範囲である場合の記録再生品質の向上に寄与し得る。かかる記録再生品質を更に向上させる観点から、ΔPNLは、トラックピッチの9.5%以下であることが好ましく、9.0%以下であることがより好ましく、8.5%以下、8.0%以下、7.5%以下、7.0%以下、6.5以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下の順に更に好ましい。また、ΔPNLは、例えば、トラックピッチの0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上または2.0%以上であることができる。ΔPNLは、トラックピッチの10.0%以下であるならば、その数値は限定されるものではない。一例として、ΔPNLは、例えば、0.005~0.300μmの範囲であることができる。ΔPNLの制御方法については後述する。
【0046】
<サーボパターンの形成>
磁気テープの磁性層にサーボパターンを形成する磁気記録ヘッドは、サーボライトヘッド(servo write head)と呼ばれる。サーボライトヘッドは、通常、ライトギャップを含む磁性膜を有する。磁性膜は、強磁性を有する膜であることができ、軟磁性を有する膜であることが好ましい。サーボライトヘッドの磁性膜に含まれる「ライトギャップ」とは、磁気的な間隔であって、磁化領域であるサーボパターンを形成するための漏れ磁界を発生させる間隔である。ΔPNLがトラックピッチの10.0%以下であるサーボパターンを形成するためには、ライトギャップを、イオンビーム加工によって、磁性膜に形成することが好ましい。本発明および本明細書において、「イオンビーム加工」とは、イオンビームを照射することによって開口部を形成する処理をいう。イオンビーム加工によって、例えば、磁性膜の記録面側から裏面側に貫通する開口部を形成することができる。尚、「記録面側」とは、サーボパターン形成時に磁気テープの磁性層表面と接触状態または非接触状態で対向するサーボライトヘッド表面側をいうものとし、かかる表面とは反対の表面側を「裏面側」というものとする。「磁性層(の)表面」とは、磁気テープの磁性層側表面と同義である。
【0047】
タイミングベースサーボパターンを形成するためのサーボライトヘッドにおけるライトギャップの配置例を
図7に示す。
図7は、サーボライトヘッドの記録面側から磁性膜を観察した概略平面図であり、「/\」の一対のライトギャップが、長手方向Lに5対設けられている。したがって、サーボライトヘッドの磁性膜Mには、合計10本のライトギャップWG(図中の白抜き部)が設けられている。各ライトギャップは、長手方向に対して、磁気テープの磁性層に形成すべきサーボパターンと同じアジマス角αで傾斜している。サーボパターン形成時、磁気テープの磁性層表面と接触状態または非接触状態で対向するサーボライトヘッドにパルス電流を印加して所定のサーボパターンを形成すべき位置でライトギャップ間に漏れ磁界を生じさせることによって、5本のサーボバンド上にそれぞれ、例えば
図2に示す配置で、サーボパターンを形成することができる。例えば、パルス電流の印加によって、「/ \」の一対のライトギャップにより、一対のサーボパターン(サーボパターンA1とサーボパターンB1)を形成することができ、順次、サーボパターンA2とサーボパターンB2、サーボパターンA3とサーボパターンB3、サーボパターンA4とサーボパターンB4、サーボパターンA5とサーボパターンB5、サーボパターンC1とサーボパターンD1、サーボパターンC2とサーボパターンD2、サーボパターンC3とサーボパターンD3、サーボパターンC4とサーボパターンD4、を形成することができる。こうしてサーボパターン対の形成を繰り返すことによって、複数のサーボフレームSFを順次、磁気テープの磁性層のサーボバンドの長手方向に形成することができる。
【0048】
(サーボライトヘッドの構成例)
以下、サーボライトヘッドの構成例を図面を参照して説明する。ただし、図面に示す形態は例示であって、かかる形態に本発明は限定されない。
【0049】
サーボライトヘッドは、リング型磁気記録ヘッドであることができ、インダクティブヘッドであることができる。インダクティブヘッドは、一般に電磁誘導型ヘッドまたは磁気誘導型ヘッドとも呼ばれる。インダクティブヘッドは、コイルに電流を流してヘッドコアのライトギャップから漏れ磁界を発生させ、この漏れ磁界によって、磁気テープの磁性層に磁化領域を形成することができる。
【0050】
図8は、サーボライトヘッドの一例を示す斜視図である。
図8は、サーボライトヘッドを記録面側から観察した状態の斜視図である。
図8に示すサーボライトヘッド20は、ヘッドブロック21と、シールドケース22と、コイル25(
図9参照)と、を有する。
【0051】
シールドケース22は、サーボライトヘッド20が有するコイル25(
図9参照)から発生する磁界をシールドし、および/または、外部の他の部品からの磁界をシールドするためのケースである。シールドケース22は、磁界をシールド可能な公知の材料から形成された、内部が中空の直方体形状のケースであることができる。
【0052】
シールドケース22の上部には、ヘッドブロック21をシールドケース22から露出させるための開口24が設けられている。また、シールドケース22の下部には、コイル25と繋がる導線23をシールドケース22の外部に引き出すための開口が設けられている。
【0053】
図9は、
図8に示すサーボライトヘッド20の断面図である。
図9に示す断面図は、サーボライトヘッド20の長手方向Lと直交する方向である幅方向Wにおける断面図である。
【0054】
ヘッドブロック21は、コア部201と、その上に磁性膜Mを有する基板202と、を有する。コイル25によってコア部201が励磁されると、磁性膜のライトギャップが、磁性膜を通過しようとする磁束を妨げる。これにより、ライトギャップの位置で漏れ磁界が発生する。この漏れ磁界によって、磁気テープの磁性層に磁化領域を形成すること、即ち記録を行うことができる。
【0055】
コア部201を構成する材料としては、リング型磁気記録ヘッドのコア部に通常使用される磁性材料を用いることができる。磁性材料としては、例えば、単結晶フェライト、多結晶フェライト等のフェライトが挙げられ、フェライトとしてはマンガン亜鉛系フェライトを例示できる。コア部201の上部における幅方向の中央近傍には、長手方向に沿って上下方向に貫通する開口203が形成されている。基板202は、この開口203を埋めるように、この開口203内に配置されている。
【0056】
基板202の材料としては、非磁性材料(例えば各種ガラス材料、各種セラミック材料)が挙げられる。
【0057】
図10は、
図9に示すサーボライトヘッド20の断面図の一部拡大図である。基板202上に設けられた磁性膜Mには、ライトギャップWGが設けられている。
【0058】
磁性膜Mは、金属膜であることができる。ここで「金属膜」には、合金膜が包含される。金属膜は、1種以上の純金属および1種以上の合金からなる群から選択される1種以上の金属材料が堆積した堆積膜であることができ、1種以上の添加剤を含むことができ、および/または、不可避的に混入する1種以上の不純物を含み得る。磁性膜Mは、鉄系合金膜であることができる。ここで「系」とは、「含む」を意味する。鉄系合金膜は、好ましくは窒化鉄系合金膜であることができる。窒化鉄系合金としては、構成元素として、FeとNとともにAl、Ta等からなる群から選ばれる1種または2種以上を含むものが挙げられる。磁性膜は、スパッタ、真空蒸着等の物理気相成長(PVD;Physical Vapor Deposition)、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)等の公知の成膜方法によって基板上に金属材料を堆積させた堆積膜であることができる。
【0059】
磁性膜に開口部を形成するためのイオンビーム加工は、加工対象にイオンビームを照射することによって開口部を形成可能な公知のイオンビーム加工によって行うことができる。イオンビーム加工は、一般にイオンミリング(Ion Milling)と呼ばれる加工によって行うことができ、加工精度等の観点からは集束イオンビーム(FIB;Focused Ion Beam)加工であることが好ましい。イオンビームとは、イオンを電界で加速させたビームであって、集束イオンビームとは、イオンビームをレンズ等で集束させたイオンビームである。集束イオンビーム加工は、一般にFIB加工とも呼ばれる。集束イオンビーム加工は、市販のまたは公知の構成の集束イオンビーム装置を用いて行うことができる。加工条件は、加工対象の材料の種類、膜厚等に応じて設定すればよい。例えば、集束イオンビーム加工等のイオンビーム加工における加工設定ビーム径を小さくするほど、ΔPNLの値を小さくすることができる傾向がある。
【0060】
上記磁気テープが有するサーボパターンは、タイミングベースサーボパターンである。ECMA(European Computer Manufacturers Association)―319(June 2001)に示される通り、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ(一般に「LTOテープ」と呼ばれる。)では、タイミングベースサーボ方式が採用されている。このタイミングベースサーボ方式において、サーボパターンは、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(「サーボストライプ」とも呼ばれる。)が、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置されることによって構成されている。上記のように、サーボパターンが互いに非平行な一対の磁気ストライプにより構成される理由は、サーボパターン上を通過するサーボパターン読取素子に、その通過位置を教えるためである。具体的には、上記の一対の磁気ストライプは、その間隔が磁気テープの幅方向に沿って連続的に変化するように形成されており、サーボパターン読取素子がその間隔を読み取ることによって、サーボパターンとサーボパターン読取素子との相対位置を知ることができる。この相対位置の情報が、データトラックのトラッキングを可能にする。そのために、サーボパターン上には、通常、磁気テープの幅方向に沿って、複数のサーボトラックが設定されている。
【0061】
サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボパターンにより構成される。このサーボバンドは、通常、磁気テープに複数本設けられる。例えば、LTOテープにおいて、その数は5本である。隣接する2本のサーボバンドに挟まれた領域が、データバンドである。データバンドは、複数のデータトラックで構成されており、各データトラックは、各サーボトラックに対応している。
【0062】
また、一形態では、特開2004-318983号公報に示されているように、各サーボバンドには、サーボバンドの番号を示す情報(「サーボバンドID(identification)」または「UDIM(Unique DataBand Identification Method)情報」とも呼ばれる。)が埋め込まれている。このサーボバンドIDは、サーボバンド中に複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のものを、その位置が磁気テープの長手方向に相対的に変位するように、ずらすことによって記録されている。具体的には、複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のもののずらし方を、サーボバンド毎に変えている。これにより、記録されたサーボバンドIDはサーボバンド毎にユニークなものとなるため、一つのサーボバンドをサーボパターン読取素子で読み取るだけで、そのサーボバンドを一意に(uniquely)特定することができる。
【0063】
尚、サーボバンドを一意に特定する方法には、ECMA―319(June 2001)に示されているようなスタッガード方式を用いたものもある。このスタッガード方式では、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置された、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(サーボストライプ)の群を、サーボバンド毎に磁気テープの長手方向にずらすように記録する。隣接するサーボバンド間における、このずらし方の組み合わせは、磁気テープ全体においてユニークなものとされているため、2つのサーボパターン読取素子によりサーボパターンを読み取る際に、サーボバンドを一意に特定することも可能となっている。
【0064】
また、各サーボバンドには、ECMA―319(June 2001)に示されている通り、通常、磁気テープの長手方向の位置を示す情報(「LPOS(Longitudinal Position)情報」とも呼ばれる。)も埋め込まれている。このLPOS情報も、UDIM情報と同様に、一対のサーボストライプの位置を、磁気テープの長手方向にずらすことによって記録されている。ただし、UDIM情報とは異なり、このLPOS情報では、各サーボバンドに同じ信号が記録されている。
【0065】
上記のUDIM情報およびLPOS情報とは異なる他の情報を、サーボバンドに埋め込むことも可能である。この場合、埋め込まれる情報は、UDIM情報のようにサーボバンド毎に異なるものであってもよいし、LPOS情報のようにすべてのサーボバンドに共通のものであってもよい。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
【0066】
磁気テープにサーボパターンを形成する前には、磁気テープに対して、通常、消磁(イレース)処理が施される。このイレース処理は、直流磁石または交流磁石を用いて、磁気テープに一様な磁界を加えることによって行うことができる。イレース処理には、DC(Direct Current)イレースとAC(Alternating Current)イレースとがある。ACイレースは、磁気テープに印加する磁界の方向を反転させながら、その磁界の強度を徐々に下げることによって行われる。一方、DCイレースは、磁気テープに一方向の磁界を加えることによって行われる。DCイレースには、更に2つの方法がある。第一の方法は、磁気テープの長手方向に沿って一方向の磁界を加える、水平DCイレースである。第二の方法は、磁気テープの厚み方向に沿って一方向の磁界を加える、垂直DCイレースである。イレース処理は、磁気テープ全体に対して行ってもよいし、磁気テープのサーボバンド毎に行ってもよい。
【0067】
形成されるサーボパターンの磁界の向きは、イレースの向きに応じて決まる。例えば、磁気テープに水平DCイレースが施されている場合、サーボパターンの形成は、磁界の向きがイレースの向きと反対になるように行われる。これにより、サーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号の出力を、大きくすることができる。尚、特開2012-53940号公報に示されている通り、垂直DCイレースされた磁気テープに、ライトギャップを用いたサーボパターンの形成(磁化領域の形成または磁気パターンの転写ともいうことができる。)を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、単極パルス形状となる。一方、水平DCイレースされた磁気テープに、ライトギャップを用いたサーボパターンの形成を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、双極パルス形状となる。
【0068】
(サーボパターンが形成される磁気テープ)
磁気テープは、一般に塗布型と金属薄膜型とに大別される。上記サーボパターンが形成される磁気テープは、塗布型の磁気テープであってもよく、金属薄膜型の磁気テープであってもよい。磁気テープは、通常、非磁性支持体と強磁性粉末を含む磁性層とを有し、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末を含む非磁性層を有することができ、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に非磁性粉末を含むバックコート層を有することもできる。塗布型の磁気テープにおいて、磁性層、非磁性層およびバックコート層は、結合剤を含み、1種以上の添加剤を任意に含むことができる。金属薄膜型磁気記録媒体は、例えば、スパッタ法によって形成された磁性層を有することができる。磁気テープの詳細については、公知技術を適用することができ、例えば、特開2020-126704号公報の段落0135~0201および同公報の実施例の記載を参照できる。ただし、これに限定されず、磁気テープに含まれる成分、層構成等の詳細については、公知技術を適用することができる。
【0069】
磁気テープの磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライト粉末、ε-酸化鉄粉末等を挙げることができる。
【0070】
本発明および本明細書において、「六方晶フェライト粉末」とは、X線回折分析によって、主相として六方晶フェライト型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。主相とは、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが帰属する構造をいう。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが六方晶フェライト型の結晶構造に帰属される場合、六方晶フェライト型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。X線回折分析によって単一の構造のみが検出された場合には、この検出された構造を主相とする。六方晶フェライト型の結晶構造は、構成原子として、少なくとも鉄原子、二価金属原子および酸素原子を含む。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、ストロンチウム原子、バリウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。本発明および本明細書において、「六方晶ストロンチウムフェライト粉末」とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がストロンチウム原子であるものをいい、「六方晶バリウムフェライト粉末」とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がバリウム原子であるものをいう。主な二価金属原子とは、この粉末に含まれる二価金属原子の中で、原子%基準で最も多くを占める二価金属原子をいうものとする。ただし、上記の二価金属原子には、希土類原子は包含されないものとする。本発明および本明細書における「希土類原子」は、スカンジウム原子(Sc)、イットリウム原子(Y)、およびランタノイド原子からなる群から選択される。ランタノイド原子は、ランタン原子(La)、セリウム原子(Ce)、プラセオジム原子(Pr)、ネオジム原子(Nd)、プロメチウム原子(Pm)、サマリウム原子(Sm)、ユウロピウム原子(Eu)、ガドリニウム原子(Gd)、テルビウム原子(Tb)、ジスプロシウム原子(Dy)、ホルミウム原子(Ho)、エルビウム原子(Er)、ツリウム原子(Tm)、イッテルビウム原子(Yb)、およびルテチウム原子(Lu)からなる群から選択される。
【0071】
本発明および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄型の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末には、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換された置換型のε-酸化鉄粉末と、かかる置換原子を含まない無置換型のε-酸化鉄粉末とが包含される。
【0072】
(サーボライターの構成例)
サーボライトヘッドを有し、磁気テープの磁性層へサーボライトヘッドによってサーボパターンを形成する磁気記録装置は、サーボライター(servo writer)と呼ばれる。
図11は、サーボライターの構成を示す概略図である。
図11に示すサーボライター30は、サーボパターン形成前の磁気テープ1を送り出すリール31と、サーボパターンが形成された磁気テープ1を巻き取るリール32と、を有する。
図11中の矢印は、磁気テープ1の搬送方向を示す。磁気テープ1の搬送路には、複数のガイド33と、搬送される磁気テープ1の張力を調整する張力調整装置Tが配置されている。搬送される磁気テープ1の磁性層に、サーボライトヘッド20がサーボパターンを形成する。書込信号発生回路34は、サーボライトヘッド20にサーボパターン形成のためのパルス信号を送信する。これにより、サーボライトヘッド20のライトギャップWGから漏れ磁界が発生し、この漏れ磁界によって、磁気テープの磁性層に磁化領域(サーボパターン)を形成することができる。
【0073】
<磁気テープ装置>
本発明および本明細書において、「磁気テープ装置」とは、少なくとも、磁気テープへのデータの記録を行うことができる装置であって、更に、磁気テープに記録されたデータの再生を行うことができる装置であることもできる。磁気テープへのデータの記録および/または記録されたデータの再生を行うことができる装置は、一般にドライブと呼ばれる。
【0074】
上記磁気テープ装置は、上記磁気テープを含み、通常、磁気ヘッドを更に含む。上記磁気テープ装置において、磁気テープへのデータの記録および/または磁気テープに記録されたデータの再生は、例えば、磁気テープの磁性層表面と磁気ヘッドとを接触させて摺動させることにより行うことができる。
【0075】
上記磁気テープ装置でのデータ記録は、先に記載した総データトラック数で行われる。上記磁気テープ装置は、磁気テープへのデータの記録を行うことができる記録素子を含む磁気ヘッドを有することができ、かかる磁気ヘッドと同じ磁気ヘッドまたは異なる磁気ヘッドに、磁気テープに記録されたデータの再生を行うことができる再生素子を含むことができる。近年汎用されている磁気ヘッドには、記録素子と再生素子の両方を1つの磁気ヘッドに備えた構成を有するものが多い。記録素子としては、MIG(Metal-In-Gap)素子等を挙げることができる。再生素子としては、磁気テープに記録されたデータを感度よく読み取ることができる磁気抵抗効果型(MR;Magnetoresistive)素子が好ましい。MR素子としては、公知の各種MR素子(例えば、GMR(Giant Magnetoresistive)素子、TMR(Tunnel Magnetoresistive)素子等)を挙げることができる。また、記録素子および/または再生素子を含む磁気ヘッドには、サーボパターン読取素子(一般に「サーボ信号読取素子」とも呼ばれる。)が含まれていてもよい。または、記録素子および/または再生素子を含む磁気ヘッドとは別のヘッドとして、サーボパターン読取素子を備えた磁気ヘッドが上記磁気テープ装置に含まれていてもよい。サーボパターン読取素子を備えた磁気ヘッドは、一般に「サーボヘッド(servo head)」とも呼ばれる。例えば、記録素子および/または再生素子を含む磁気ヘッド(以下、「記録再生ヘッド」とも呼ぶ。)は、サーボパターン読取素子を2つ含むことができ、2つのサーボパターン読取素子のそれぞれが、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドを同時に読み取ることができる。2つのサーボパターン読取素子の間に、1つまたは複数のデータ用素子を配置することができる。データの記録のための素子(記録素子)とデータの再生のための素子(再生素子)を、「データ用素子」と総称する。
【0076】
データの記録および/または記録されたデータの再生の際には、まず、サーボパターンの読取結果を用いたヘッドトラッキングを行うことができる。例えば、サーボパターン読取素子を所定のサーボトラックに追従させることによって、データ用素子が、目的とするデータトラック上を通過するように制御することができる。データトラックの移動は、サーボパターン読取素子が読み取るサーボトラックを、テープ幅方向に変更することにより行うことができる。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボパターン読取素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
【0077】
上記磁気テープにおけるデータの記録再生については、例えば、特開2020-126704号公報の段落0033~0134および同公報の実施例の記載を参照できる。ただし、これに限定されるものではない。上記磁気テープ装置における磁気テープへのデータの記録については、先に記載した総データトラック数でのデータ記録が行われる以外、磁気テープへのデータ記録に関する公知技術を適用することができる。また、データ再生については、磁気テープに記録されたデータの再生に関する公知技術を適用することができる。
【0078】
[磁気テープカートリッジ]
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジに関する。
【0079】
上記磁気テープカートリッジに含まれる磁気テープの詳細は、先に記載した通りである。
【0080】
磁気テープカートリッジでは、一般に、カートリッジ本体内部に磁気テープがリールに巻き取られた状態で収容されている。リールは、カートリッジ本体内部に回転可能に備えられている。磁気テープカートリッジとしては、カートリッジ本体内部にリールを1つ具備する単リール型の磁気テープカートリッジおよびカートリッジ本体内部にリールを2つ具備する双リール型の磁気テープカートリッジが広く用いられている。単リール型の磁気テープカートリッジは、磁気テープへのデータの記録および/または再生のために磁気テープ装置に装着されると、磁気テープカートリッジから磁気テープが引き出されて磁気テープ装置側のリールに巻き取られる。磁気テープカートリッジから巻き取りリールまでの磁気テープ搬送経路には、磁気ヘッドが配置されている。磁気テープカートリッジ側のリール(供給リール)と磁気テープ装置側のリール(巻き取りリール)との間で、磁気テープの送り出しと巻き取りが行われる。この間、磁気ヘッドと磁気テープの磁性層表面とが接触し摺動することにより、データの記録および/または再生が行われる。これに対し、双リール型の磁気テープカートリッジは、供給リールと巻き取りリールの両リールが、磁気テープカートリッジ内部に具備されている。
【実施例0081】
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。特記しない限り、以下に記載の「部」および「%」は質量基準である。また、以下に記載の工程および評価は、特記しない限り、雰囲気温度23℃±1℃の環境において行った。以下に記載の「eq」は、当量(equivalent)であり、SI単位に換算不可の単位である。以下に記載の各種成分の各種物性値は、特開2020-126704号公報に記載の方法によって測定された値である。また、表1中の記録素子幅および再生素子幅は、それぞれ、素子幅の物理的な寸法であり、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡等によって観察して測定された値である。
【0082】
[実施例1]
<磁気テープの作製>
<<磁性層形成用組成物>>
(磁性液)
強磁性粉末(種類:六方晶バリウムフェライト粉末、活性化体積:1600nm3):100.0部
オレイン酸:2.0部
塩化ビニル共重合体(カネカ社製MR-104):10.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:4.0部
(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.07meq/g)
添加剤A:10.0部
メチルエチルケトン:150.0部
シクロヘキサノン:150.0部
(研磨剤液)
α-アルミナ(平均粒子サイズ:110nm):6.0部
塩化ビニル共重合体(カネカ社製MR110):0.7部
シクロヘキサノン:20.0部
(突起形成剤液)
突起形成剤:1.3部 メチルエチルケトン:9.0部
シクロヘキサノン:6.0部
(潤滑剤および硬化剤液)
ステアリン酸:3.0部
ステアリン酸アミド:0.3部
ブチルステアレート:6.0部
メチルエチルケトン:110.0部
シクロヘキサノン:110.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L):3.0部
【0083】
上記の添加剤Aは、特開2016-051493号公報の段落0115~0123に記載の方法により合成されたポリマーである。
上記の突起形成剤は、キャボット社製ATLAS(シリカとポリマーとの複合粒子、平均粒子サイズ100nm)である。
【0084】
<<非磁性層形成用組成物>>
非磁性無機粉末(α-酸化鉄):80.0部
(平均粒子サイズ:0.15μm、平均針状比:7、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積:52m2/g)
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):20.0部
電子線硬化型塩化ビニル共重合体:13.0部
電子線硬化型ポリウレタン樹脂:6.0部
フェニルホスホン酸:3.0部
シクロヘキサノン:140.0部
メチルエチルケトン:170.0部
ブチルステアレート:2.0部
ステアリン酸:1.0部
【0085】
<<バックコート層形成用組成物>>
非磁性無機粉末(α-酸化鉄):80.0部
(平均粒子サイズ:0.15μm、平均針状比:7、BET比表面積:52m2/g)
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):20.0部
カーボンブラック(平均粒子サイズ:100nm):3.0部
塩化ビニル共重合体:13.0部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:6.0部
フェニルホスホン酸:3.0部
シクロヘキサノン:140.0部
メチルエチルケトン:170.0部
ステアリン酸:3.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)):5.0部
メチルエチルケトン:400.0部
【0086】
<<各層形成用組成物の調製>>
磁性層形成用組成物は、以下の方法によって調製した。
上記磁性液の成分をオープンニーダにより混練および希釈処理した後、横型ビーズミル分散機により、粒径0.5mmのジルコニア(ZrO2)ビーズ(以下、「Zrビーズ」と記載する)を用い、ビーズ充填率80体積%およびローター先端周速10m/秒で、1パスあたりの滞留時間を2分間とし、12パスの分散処理を行った。
上記研磨剤液の成分を混合した後、粒径1mmのZrビーズとともに縦型サンドミル分散機に入れ、研磨剤液体積とビーズ体積との合計に対するビーズ体積の割合が60%になるように調整し、180分間サンドミル分散処理を行った。サンドミル分散処理後の液を取り出し、フロー式の超音波分散ろ過装置を用いて、超音波分散ろ過処理を施すことにより、研磨剤液を調製した。
磁性液、研磨剤液、突起形成剤液、ならびに潤滑剤および硬化剤液を、ディゾルバー撹拌機に導入し、周速10m/秒で30分間撹拌した後、フロー式超音波分散機により流量7.5kg/分で3パス処理した後に、孔径1μmのフィルタでろ過して磁性層形成用組成物を調製した。
【0087】
非磁性層形成用組成物は以下の方法によって調製した。
潤滑剤(ブチルステアレートおよびステアリン酸)を除く上記成分をオープンニーダにより混練および希釈処理して、その後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ブチルステアレートおよびステアリン酸)を添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌して混合処理を施して非磁性層形成用組成物を調製した。
【0088】
バックコート層形成用組成物は以下の方法によって調製した。
潤滑剤(ステアリン酸)、ポリイソシアネートおよびメチルエチルケトン(400.0部)を除く上記成分をオープンニーダにより混練および希釈処理して、その後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ステアリン酸)、ポリイソシアネートおよびメチルエチルケトン(400.0部)を添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌して混合処理を施し、バックコート層形成用組成物を調製した。
【0089】
<<磁気テープの作製、サーボパターンの形成>>
厚み6.0μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレート支持体上に、乾燥後の厚みが1.0μmになるように非磁性層形成用組成物を塗布し乾燥させた後、125kVの加速電圧で40kGyのエネルギーとなるように電子線を照射した。その上に乾燥後の厚みが50nmになるように磁性層形成用組成物を塗布し乾燥させ、更にバックコート層形成用組成物を支持体の非磁性層と磁性層を形成した表面とは反対側の表面に乾燥後の厚みが0.5μmになるように塗布し乾燥させた。
その後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダロールを用いて、カレンダ速度80m/min、線圧294kN/m、およびカレンダ温度(カレンダロールの表面温度)80℃でカレンダ処理を行った。その後、雰囲気温度70℃の環境で36時間加熱処理を行った。加熱処理後、1/2インチ幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性層表面に押し当たるように取り付けたテープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。 得られた磁気テープの磁性層を消磁した状態で、サーボライターに搭載されたサーボライトヘッドによって、
図2に示す例のLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターン(タイミングベースサーボパターン)を磁性層に形成した。これにより、磁性層に、LTO Ultriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンド、およびガードバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターンを有する実施例1の磁気テープを得た。サーボライターとしては、
図11に示す構成のサーボライターを使用した。このサーボライターに搭載されているサーボライトヘッドは、以下に記載の加工条件でのFIB加工によって形成された開口部を有するライトギャップであって、表1に示すアジマス角、パターン高さ、中点距離およびサブフレーム長のサーボパターンに対応する形状のライトギャップを有する。
(加工条件)
集束イオンビーム装置:日立ハイテク社製FB-2200
加速電圧:30kV
集束レンズ:有り
アパーチャー径:80μm
Dwell Time(1pixelあたりの照射時間):5μsec
加工設定ビーム径:1.0μm
【0090】
実施例1について、同様の方法によって2巻の磁気テープを作製し、一方を記録再生試験に使用し、他方をその他の測定のために使用した。
【0091】
<記録再生試験>
磁気テープの電磁上流特性を、特開2020-126704号公報の段落0080~0086に記載されているヘッド追従制御機構を有する1/2インチリールテスターを用いて以下の方法により測定した。
磁気テープの走行速度(磁気ヘッドと磁気テープとの相対速度)は2m/秒とした。信号の記録は、線記録密度を325kfciとして行った。単位kfciは、線記録密度の単位(SI単位系に換算不可)である。表1中の「記録再生素子数」とは、記録素子と再生素子とをそれぞれ1つずつ備えたチャンネルの数である。記録素子としてMIG(Metal-In-Gap)素子(ギャップ長0.15μm、記録素子幅:表1参照)を使用し、記録電流は各磁気テープの最適記録電流に設定した。記録方式としては、シングル磁気記録方式(Shingled Magnetic Recording)を採用した。尚、シングル磁気記録方式は、日本語では瓦記録方式とも呼ばれる。記録素子幅よりも狭いトラックピッチでデータトラックを形成することができ、隣り合うトラックが重なり合うようにデータを記録する方式である。再生素子としては、素子厚み15nm、シールド間隔0.1μmおよび表1に記載の再生素子幅のTMR(Tunnel Magneto-Resistive)素子を使用した。再生信号をシバソク社製のスペクトラムアナライザーで測定した。キャリア信号の出力値と、スペクトル全帯域の積分ノイズとの比をSNR(Signal-to-Noise Ratio)とした。SNRについては、シングル磁気記録される前に、シングル磁気記録方式とは異なる方式である同時記録再生(下流モジュールの記録素子で記録し、上流モジュールの再生素子で直ちに再生)を実施した場合のSNRを0dBとする。シングル磁気記録方式により狭幅化されたトラックを後に再生した際のSNRが、上記同時記録再生した際のSNRに対して-3.00dB以内であれば、良好な再生信号を得られている、即ち記録再生品質の向上が達成されている、と判断できる。
【0092】
上記のシングル磁気記録における総データトラック数を、以下の式によって算出した。式中の「記録素子数」としては、表1中の「記録再生素子数」の値を用いた。
総データトラック数=データバンド数×1データバンド内のラップ数×記録素子数
【0093】
上記シングル磁気記録後の磁気テープのトラックピッチを、先に記載した方法によって求めた。磁気力顕微鏡としてBruker製Dimension 3100を周波数変調モードで使用し、プローブとしてNanoworld社製SSS-MFMR(公称曲率半径15nm)を使用した。磁気力顕微鏡での観察時、測定ピッチは100nmとし、磁性層表面とプローブ先端との間の距離は20nmとした。
【0094】
<サーボパターンのアジマス角、パターン高さ、中点距離、サブフレーム長の測定>
実施例1の磁気テープが有する複数のサーボフレームの中から無作為に特定した1つのサーボフレームについて、サーボパターンの形状に関する各種値を、先に記載の方法によって求めた。具体的には、実施例1の磁気テープにおいて、無作為に特定した1つのサーボフレームを磁気現像した。磁気現像は、磁気パターン観察用コロイド液(シグマハイケミカル社製シグマーカーQ)を用いて行った。磁気現像したサーボパターンの形状に関する各種値は、X/Y方向の測長機能を有する顕微鏡(Nikon社製MM-800;測長の最小分解能は1μm以下)にて測長して求めた。各値を得るための測定回数は5回とし、5回の測定により得られた値の算術平均として表1に示す各値を求めた。
【0095】
<ΔPNL>
図6Aおよび
図6Bを参照して先に説明した方法によって、ΔPNLを求めた。ここで、d=トラックピッチである。表1には、ΔPNLについて、測定値およびトラックピッチに対する値を示す。読取素子R1およびR2としては、素子幅2μm以下のTMR素子を使用した。
【0096】
[実施例2]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0097】
[比較例1]
サーボライトヘッドとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0098】
[比較例2]
サーボライトヘッドとして、比較例1とは異なる加工条件でのMEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0099】
[実施例3]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0100】
[実施例4]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例3と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0101】
[実施例5]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例3と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0102】
[比較例3]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例3と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0103】
[実施例6]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0104】
[実施例7]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例6と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0105】
[実施例8]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例6と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0106】
[比較例4]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例6と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0107】
[実施例9]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0108】
[実施例10]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例9と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0109】
[比較例5]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例9と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0110】
[実施例11]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0111】
[実施例12]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例11と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0112】
[比較例6]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例11と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0113】
[実施例13]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0114】
[実施例14]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例13と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0115】
[比較例7]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例13と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0116】
[実施例15]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0117】
[比較例8]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例15と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0118】
[実施例16]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0119】
[実施例17]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例16と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0120】
[比較例9]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例16と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0121】
[実施例18]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0122】
[実施例19]
サーボライトヘッド作製時のFIB加工の加工条件のうち加工設定ビーム径を小さくした点以外、実施例18と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0123】
[比較例10]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、実施例18と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0124】
[参考例1]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0125】
[参考例2]
サーボライトヘッドとして、MEMS加工によってライトギャップの開口部を形成したサーボライトヘッドを使用した点以外、参考例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0126】
[参考例3]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、参考例2と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0127】
[参考例4、参考例6]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0128】
[参考例5]
表1に示す項目を表1に示すように変更した点以外、参考例4と同様に磁気テープの作製、記録再生試験および各種測定を行った。
【0129】
以上の結果を、表1(表1-1~表1-4)に示す。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
表1に示されている実施例、比較例および参考例の結果から、総データトラック数が8705以上(1/2インチ幅の磁気テープ換算)の場合、タイミングベースサーボパターンのΔPNLをトラックピッチの10.0%以下とすること(実施例1~19参照)が、記録再生品質の向上につながることが確認できる。