(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057557
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220404BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/53
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020165878
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆
(72)【発明者】
【氏名】白川 英治
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA40
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA13
5F063AA50
5F063BA47
5F063CB03
5F063CB07
5F063CB28
5F063CC10
5F063DD29
5F063DD32
5F063DD78
5F063DE14
5F063DE33
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】割断されたサファイア基板の側面に凹凸を生じさせやすい発光素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】第2照射工程は、サファイア基板の厚さ方向において、第2面からの距離が第1距離の位置に第1の改質領域を形成する工程と、サファイア基板の厚さ方向において、第2面からの距離が第1距離よりも短い第2距離の位置であって、第1の改質領域から第1方向にずらした位置に第2の改質領域を形成する工程と、サファイア基板の厚さ方向において、第2面からの距離が第2距離よりも短い第3距離の位置であって、上面視において第1の改質領域と重なる位置に第3の改質領域を形成する工程とを有する。第2照射工程において、複数の第2改質部を含む改質領域を、サファイア基板の厚さ方向における数が第1改質部を含む改質領域の数よりも多く形成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有するサファイア基板と、前記第1面に設けられた半導体層を含む素子部とを有するウェーハにおける前記第2面側から前記サファイア基板の内部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光照射工程の後に、前記ウェーハを複数の発光素子に分離する分離工程と、
を備え、
前記レーザ光照射工程は、
前記サファイア基板のa軸方向に平行な第1方向に沿って前記レーザ光を走査し、前記サファイア基板の内部に前記第1方向に沿って複数の第1改質部を形成する工程を複数回行い、前記第1方向に沿った複数の前記第1改質部を含む改質領域を前記第2面からの距離が異なる位置に第1間隔で複数形成する第1照射工程と、
前記サファイア基板のm軸方向に平行な第2方向に沿って前記レーザ光を走査し、前記サファイア基板の内部に前記第2方向に沿って複数の第2改質部を形成する工程を複数回行い、前記第2方向に沿った複数の前記第2改質部を含む改質領域を前記第2面からの距離が異なる位置に前記第1間隔よりも短い第2間隔で複数形成する第2照射工程と、
を有し、
前記第2照射工程は、
前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第2面からの距離が第1距離の位置に第1の改質領域を形成する工程と、
前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第2面からの距離が前記第1距離よりも短い第2距離の位置であって、前記第1の改質領域から前記第1方向にずらした位置に第2の改質領域を形成する工程と、
前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第2面からの距離が前記第2距離よりも短い第3距離の位置であって、上面視において前記第1の改質領域と重なる位置に第3の改質領域を形成する工程と、を有し、
前記第2照射工程において、複数の前記第2改質部を含む改質領域を、前記サファイア基板の厚さ方向における数が前記第1改質部を含む改質領域の数よりも多く形成し、
前記分離工程において、複数の前記改質領域により前記ウェーハを複数の前記発光素子に分離する発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記サファイア基板の厚さ方向に並んだ複数の前記第2改質部を含む改質領域のうち、前記第2面からの距離が最も短い第4距離の位置に形成された第4の改質領域と、前記第2面からの距離が最も長い第5距離の位置に形成された第5の改質領域とは、前記第2方向に沿った割断予定線上に形成され、
前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第4の改質領域と前記第5の改質領域との間に形成された前記第1の改質領域、前記第2の改質領域、及び前記第3の改質領域は、上面視において、前記割断予定線と重ならない位置に形成され、
前記分離工程において、前記割断予定線に沿って前記ウェーハを押圧することで前記ウェーハを複数の前記発光素子に分離する請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
1つの前記第1改質部を複数回の前記レーザ光の照射により形成し、1つの前記第2改質部を複数回の前記レーザ光の照射により形成し、
1つの前記第1改質部を形成するときの前記レーザ光の照射回数は、1つの前記第2改質部を形成するときの前記レーザ光の照射回数よりも多い請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記サファイア基板の厚さは、500μm以上1000μm以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1間隔は、120μm以上200μm以下であり、
前記第2間隔は、60μm以上120μm以下である請求項1~4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1改質部を含む改質領域の数と、前記第2改質部を含む改質領域の数との差は、2以上である請求項1~5のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発光素子は、例えばサファイア基板の上に半導体層を形成したウェーハをダイシングすることによって得られる。ウェーハをダイシングする方法としては、例えば特許文献1に記載のように、基板内部にレーザ光を集光させて改質領域を形成し、この改質領域を起点にウェーハを割断する方法が知られている。このように割断されたサファイア基板の側面の形状は、サファイア基板の結晶面に依存する。また、サファイア基板の側面の形状は、その側面からの光の取り出し効率に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、割断されたサファイア基板の側面に凹凸を生じさせやすい発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面とを有するサファイア基板と、前記第1面に設けられた半導体層を含む素子部とを有するウェーハにおける前記第2面側から前記サファイア基板の内部にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、前記レーザ光照射工程の後に、前記ウェーハを複数の発光素子に分離する分離工程と、を備える。前記レーザ光照射工程は、前記サファイア基板のa軸方向に平行な第1方向に沿って前記レーザ光を走査し、前記サファイア基板の内部に前記第1方向に沿って複数の第1改質部を形成する工程を複数回行い、前記第1方向に沿った複数の前記第1改質部を含む改質領域を前記第2面からの距離が異なる位置に第1間隔で複数形成する第1照射工程と、前記サファイア基板のm軸方向に平行な第2方向に沿って前記レーザ光を走査し、前記サファイア基板の内部に前記第2方向に沿って複数の第2改質部を形成する工程を複数回行い、前記第2方向に沿った複数の前記第2改質部を含む改質領域を前記第2面からの距離が異なる位置に前記第1間隔よりも短い第2間隔で複数形成する第2照射工程と、を有する。前記第2照射工程は、前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第2面からの距離が第1距離の位置に第1の改質領域を形成する工程と、前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第2面からの距離が前記第1距離よりも短い第2距離の位置であって、前記第1の改質領域から前記第1方向にずらした位置に第2の改質領域を形成する工程と、前記サファイア基板の厚さ方向において、前記第2面からの距離が前記第2距離よりも短い第3距離の位置であって、上面視において前記第1の改質領域と重なる位置に第3の改質領域を形成する工程と、を有する。前記第2照射工程において、複数の前記第2改質部を含む改質領域を、前記サファイア基板の厚さ方向における数が前記第1改質部を含む改質領域の数よりも多く形成する。前記分離工程において、複数の前記改質領域により前記ウェーハを複数の前記発光素子に分離する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、割断されたサファイア基板の側面に凹凸を生じさせやすい発光素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態のウェーハの模式平面図である。
【
図2】本発明の実施形態のウェーハの模式断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における第1照射工程を示す模式断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における第1照射工程を示す模式平面図である。
【
図5】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における第1照射工程を示す模式断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における第2照射工程を示す模式断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における第2照射工程を示す模式平面図である。
【
図8】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における第2照射工程を示す模式断面図である。
【
図9A】本発明の実施形態の発光素子の製造方法における割断工程を示す模式平面図である。
【
図9B】本発明の実施形態の半導体素子の製造方法における割断工程を示す模式平面図である。
【
図10A】本発明の実施形態により製造された発光素子の側面を示す模式断面図である。
【
図10B】本発明の実施形態により製造された発光素子の側面を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0009】
図1は、実施形態のウェーハWの模式平面図である。
図2は、ウェーハWにおけるダイシングストリートDが形成された部分の模式断面図である。
【0010】
ウェーハWは、サファイア基板10と、素子部20とを有する。サファイア基板10は、第1面11と、第1面11とは反対側の第2面12とを有する。サファイア基板10の厚さは、例えば、500μm以上1000μm以下であり、具体的には700μm程度である。
【0011】
素子部20は、サファイア基板10の第1面11に設けられている。素子部20は、第1面11に成長された半導体層を含む。半導体層は、例えば、AlとGaを含む窒化物半導体層である。半導体層は、光を発する活性層を含む。例えば、活性層からの光のピーク波長は400nm以下であり、具体的には250nm以上350nm以下である。例えば、活性層は深紫外光を発する。
【0012】
素子部20は、さらに、半導体層に電気的に接続された電極や半導体層を覆う絶縁膜を含む。第1面11は、例えば、サファイア結晶のc面である。なお、第1面11は、c面に対して半導体層を結晶性よく形成できる範囲で傾斜していても良い。
【0013】
図1において、第1方向aはサファイア基板10のa軸方向に平行な方向を表し、第2方向mはサファイア基板10のm軸方向に平行な方向を表す。サファイア基板10のオリエーテンションフラットOFは、a面である。
【0014】
ウェーハWには複数のダイシングストリートDが、例えば、第1方向aおよび第2方向mに沿うように格子状に形成されている。ダイシングストリートDは、ウェーハWの割断により個片化される複数の発光素子間の境界領域であり、ウェーハWの割断の影響が素子部20におよばない幅をもって設定されている領域である。また、ダイシングストリートDは、後述する第1改質部や第2改質部をサファイア基板10内に形成するためのレーザ光の走査領域でもある。
【0015】
例えば、ダイシングストリートDには素子部20が形成されていない。ダイシングストリートDによって、サファイア基板10の第1面11上で複数の素子部20が分離している。なお、素子部20は、ダイシングストリートDで分離されず、サファイア基板10の第1面11の全面に形成されていてもよい。
【0016】
実施形態による発光素子の製造方法は、ウェーハWを準備する工程と、レーザ光照射工程と、分離工程とを備える。
【0017】
[レーザ光照射工程]
レーザ光照射工程では、ウェーハWにおける第2面12側からサファイア基板10の内部にレーザ光を照射する。レーザ光は、第2面12側からサファイア基板10の内部に照射されつつ、複数のダイシングストリートDのそれぞれに沿って走査される。
図1に示す第1方向aおよび第2方向mのうち、まずは一方の方向に延びるダイシングストリートDに沿ってレーザ光が走査され、この後、他方の方向に延びるダイシングストリートDに沿ってレーザ光が走査される。
【0018】
レーザ光は、例えばパルス状に出射される。レーザ光のパルス幅としては、100fsec以上800psec以下が挙げられる。レーザ光源として、例えば、Nd:YAGレーザ、チタンサファイアレーザ、Nd:YVO4レーザ、または、Nd:YLFレーザなどが用いられる。レーザ光の波長は、サファイア基板10を透過する光の波長である。レーザ光は、例えば、500nm以上1200nm以下の範囲にピーク波長を有する。レーザ光の出力は、例えば、0.1μJ以上20.0μJ以下が好ましく、1.0μJ以上15.0μJ以下がより好ましく、2.0μJ以上10.0μJ以下がさらに好ましい。
【0019】
レーザ光照射工程は、第1照射工程と第2照射工程とを有する。
【0020】
<第1照射工程>
図3は、第1照射工程を示す模式断面図である。
図3は、ダイシングストリートDが形成された部分の模式断面図であり、第2方向mに沿った断面を表す。
図3において第1方向aは紙面を貫く方向である。
【0021】
図4は、第1照射工程を示す模式平面図である。
図4は、サファイア基板10の第2面12側から見たウェーハWにおけるダイシングストリートDが形成された部分の上面を表す。
図4においては、複数の第1改質部r1~r4のうち、最も第2面12側に位置する第1改質部r4を示している。
【0022】
図5は、第1照射工程を示す模式断面図である。
図5は、ダイシングストリートDが形成された部分の模式断面図であり、第1方向aに沿った断面を表す。
図5において第2方向mは紙面を貫く方向である。
【0023】
第2面12側からサファイア基板10の内部に照射されたレーザ光は、サファイア基板10の内部の所定の深さの位置において集光され、その位置にレーザ光のエネルギーが集中する。このレーザ光の照射部(集光部)に、レーザ光が照射されていない部分よりも脆化した第1改質部r1~r4がサファイア基板10の内部に形成される。
【0024】
サファイア基板10の第1方向aに沿ってレーザ光を走査し、サファイア基板10の内部に第1方向aに沿って複数の第1改質部を形成する工程を複数回行う。これにより、第1方向aに沿った複数の第1改質部を含む改質領域を、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が異なる位置に第1間隔で複数形成する。
【0025】
図5に示すように、例えば、第2面12からの距離が異なる4つの位置に、それぞれ、複数の第1改質部r1を含む改質領域R1と、複数の第1改質部r2を含む改質領域R2と、複数の第1改質部r3を含む改質領域R3と、複数の第1改質部r4を含む改質領域R4が形成される。サファイア基板10の厚さ方向において、4つの第1改質部r1~r4(改質領域R1~R4)が並ぶ。
【0026】
まず、第2面12からの距離が最も長い位置にレーザ光を断続的に照射しつつ第1方向aに沿って走査し、第2面12からの距離が最も長い位置に、第1方向aに沿って並んだ複数の第1改質部r1を含む改質領域R1を形成する。
【0027】
改質領域R1を形成した後、第2面12側から見た上面視において、改質領域R1と重なる位置にレーザ光を断続的に照射しつつ第1方向aに沿って走査し、第1方向aに沿って並んだ複数の第1改質部r2を含む改質領域R2を形成する。第1改質部r2は、上面視において第1改質部r1に重なる。なお、第1改質部r2は、上面視において、第1改質部r1に完全に重なることに限らず、第1改質部r2の一部が第1改質部r1に重なっていてもよい。また、改質領域R2は、上面視において、改質領域R1に完全に重なることに限らず、改質領域R2の一部が改質領域R1に重なっていてもよい。
【0028】
改質領域R2を形成した後、第2面12側から見た上面視において、改質領域R2と重なる位置にレーザ光を断続的に照射しつつ第1方向aに沿って走査し、第1方向aに沿って並んだ複数の第1改質部r3を含む改質領域R3を形成する。第1改質部r3は、上面視において第1改質部r2に重なる。なお、第1改質部r3は、上面視において、第1改質部r2に完全に重なることに限らず、第1改質部r3の一部が第1改質部r2に重なっていてもよい。また、改質領域R3は、上面視において、改質領域R2に完全に重なることに限らず、改質領域R3の一部が改質領域R2に重なっていてもよい。
【0029】
改質領域R3を形成した後、第2面12側から見た上面視において、改質領域R3と重なる位置にレーザ光を断続的に照射しつつ第1方向aに沿って走査し、第1方向aに沿って並んだ複数の第1改質部r4を含む改質領域R4を形成する。第1改質部r4は、上面視において第1改質部r3に重なる。なお、第1改質部r4は、上面視において、第1改質部r3に完全に重なることに限らず、第1改質部r4の一部が第1改質部r3に重なっていてもよい。また、改質領域R4は、上面視において、改質領域R3に完全に重なることに限らず、改質領域R4の一部が改質領域R3に重なっていてもよい。
【0030】
図3および
図4において、割断予定線Lを1点鎖線で表す。割断予定線Lは仮想的な線である。レーザ照射工程の後の分離工程の際に、押圧部材を割断予定線Lに沿ってウェーハWに押し当てウェーハWを押圧することで、この場合、第1方向aに沿ってウェーハWは割断される。押圧部材は、例えば、第1面11側から割断予定線Lに沿って押し当てる。
【0031】
第1改質部r1の少なくとも一部、第1改質部r2の少なくとも一部、第1改質部r3の少なくとも一部、および第1改質部r4の少なくとも一部が、割断予定線Lに重なる。
【0032】
改質領域R1~R4のそれぞれを形成するときの第1方向aに沿ったレーザ光の照射間隔は、例えば8μm以上15μm以下である。
【0033】
第1照射工程において、1つの第1改質部を複数回のレーザ光の照射により形成する。例えば、同じ位置に対する3回のレーザ光の照射により、1つの第1改質部r1を形成する。第1改質部r1を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第1方向aに沿って行う走査を、3回繰り返す。第1方向aに沿ってレーザ光を3回走査することにより、3回のレーザ光の照射によって形成された複数の第1改質部r1を含む改質領域R1が形成される。
【0034】
1つの第1改質部r2も、同じ位置に対する例えば3回のレーザ光の照射により形成する。第1改質部r2を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第1方向aに沿って行う走査を、3回繰り返す。第1方向aに沿ってレーザ光を3回走査することにより、3回のレーザ光の照射によって形成された複数の第1改質部r2を含む改質領域R2が形成される。
【0035】
1つの第1改質部r3も、同じ位置に対する例えば3回のレーザ光の照射により形成する。第1改質部r3を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第1方向aに沿って行う走査を、3回繰り返す。第1方向aに沿ってレーザ光を3回走査することにより、3回のレーザ光の照射によって形成された複数の第1改質部r3を含む改質領域R3が形成される。
【0036】
1つの第1改質部r4も、同じ位置に対する例えば3回のレーザ光の照射により形成する。第1改質部r4を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第1方向aに沿って行う走査を、3回繰り返す。第1方向aに沿ってレーザ光を3回走査することにより、3回のレーザ光の照射によって形成された複数の第1改質部r4を含む改質領域R4が形成される。
【0037】
以上説明した第1照射工程は、
図1に示す第1方向aに延びる複数のダイシングストリートDのそれぞれに対して行われる。
【0038】
次に、第2照射工程について説明する。なお、第1照射工程と第2照射工程は、どちらを先に行ってもよい。
【0039】
<第2照射工程>
図6は、第2照射工程を示す模式断面図である。
図6は、ダイシングストリートDが形成された部分の模式断面図であり、第1方向aに沿った断面を表す。
図6において第2方向mは紙面を貫く方向である。
【0040】
図7は、第2照射工程を示す模式平面図である。
図7は、サファイア基板10の第2面12側から見たウェーハWにおける、ダイシングストリートDが形成された部分の上面を表す。
【0041】
図8は、第2照射工程を示す模式断面図である。
図8は、ダイシングストリートDが形成された部分の模式断面図であり、第2方向mに沿った断面を表す。
図8において第1方向aは紙面を貫く方向である。
【0042】
第2照射工程においても、第2面12側からサファイア基板10の内部に照射されたレーザ光は、サファイア基板10の内部の所定の深さの位置において集光され、その位置にレーザ光のエネルギーが集中する。このレーザ光の照射部(集光部)に、レーザ光が照射されていない部分よりも脆化した第2改質部r11~r17がサファイア基板10の内部に形成される。
【0043】
サファイア基板10の第2方向mに沿ってレーザ光を走査し、サファイア基板10の内部に第2方向mに沿って複数の第2改質部を形成する工程を複数回行う。これにより、第2方向mに沿った複数の第2改質部を含む改質領域を、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が異なる位置に第2間隔で複数形成する。
【0044】
第2照射工程で形成する複数の改質領域のサファイア基板10の厚さ方向における数は、第1照射工程で形成する複数の改質領域のサファイア基板10の厚さ方向における数よりも多い。
【0045】
図8に示すように、例えば、第2面12からの距離が異なる7つの位置にそれぞれ改質領域を形成する。改質領域として、例えば、複数の第2改質部r15を含む第5の改質領域R15と、複数の第2改質部r11を含む第1の改質領域R11と、複数の第2改質部r12を含む第2の改質領域R12と、複数の第2改質部r13を含む第3の改質領域R13と、複数の第2改質部r16を含む第6の改質領域R16と、複数の第2改質部r17を含む第7の改質領域R17と、複数の第2改質部r14を含む第4の改質領域R14とが形成される。サファイア基板10の厚さ方向において、7つの第2改質部r11~r17(改質領域R11~R17)が並ぶ。
【0046】
まず、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が最も長い第5距離d5(
図6参照)の位置にレーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査する。そして、第2面12からの距離が第5距離d5の位置に、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r15を含む第5の改質領域R15を形成する。
【0047】
第5の改質領域R15を形成した後、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が第5距離d5よりも短い第1距離d1の位置であって、且つ第5の改質領域R15から第1方向aにずらした位置に、レーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査し、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r11を含む第1の改質領域R11を形成する。
【0048】
第1の改質領域R11を形成した後、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が第1距離d1よりも短い第2距離d2の位置であって、且つ第1の改質領域R11から第1方向aにずらした位置に、レーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査し、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r12を含む第2の改質領域R12を形成する。第2の改質領域R12は、第5の改質領域R15からも第1方向aにずれた位置にある。第1方向aにおいて、第5の改質領域R15を基準にして、第1の改質領域R11と第2の改質領域R12は互いに逆方向にずれている。第1方向aにおいて、第1の改質領域R11と第2の改質領域R12との間の距離は、例えば、5μm以上15μm以下である。第1の改質領域R11と第2の改質領域R12との間の距離を5μm以上とすることで、サファイア基板10の側面に形成される凸をより大きくすることできる。第1の改質領域R11と第2の改質領域R12との間の距離を15μm以下とすることで、第1の改質領域R11と第2の改質領域R12との間の亀裂がつながりやすくし、意図してない亀裂の伸展を抑制することができる。
【0049】
第2の改質領域R12を形成した後、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が第2距離d2よりも短い第3距離d3の位置であって、且つ第2面12側から見た上面視において、第1の改質領域R11と重なる位置に、レーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査し、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r13を含む第3の改質領域R13を形成する。第2改質部r13は、第2改質部r12から第1方向aにずれ、上面視において第2改質部r11に重なる。なお、第2改質部r13は、上面視において、第2改質部r11に完全に重なることに限らず、第2改質部r13の一部が第2改質部r11に重なっていてもよい。
【0050】
第3の改質領域R13を形成した後、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が第3距離d3よりも短い第6距離d6の位置であって、且つ第2面12側から見た上面視において、第2の改質領域R12と重なる位置に、レーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査し、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r16を含む第6の改質領域R16を形成する。第2改質部r16は、第2改質部r13から第1方向aにずれ、上面視において第2改質部r12に重なる。なお、第2改質部r16は、上面視において、第2改質部r12に完全に重なることに限らず、第2改質部r16の一部が第2改質部r12に重なっていてもよい。
【0051】
第6の改質領域R16を形成した後、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が第6距離d6よりも短い第7距離d7の位置であって、且つ第2面12側から見た上面視において、第3の改質領域R13と重なる位置に、レーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査し、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r17を含む第7の改質領域R17を形成する。第2改質部r17は、第2改質部r16から第1方向aにずれ、上面視において第2改質部r13に重なる。なお、第2改質部r17は、上面視において、第2改質部r13に完全に重なることに限らず、第2改質部r17の一部が第2改質部r13に重なっていてもよい。
【0052】
第7の改質領域R17を形成した後、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が第7距離d7よりも短い第4距離d4の位置であって、且つ第7の改質領域R17から第1方向aにずらした位置に、レーザ光を断続的に照射しつつ第2方向mに沿って走査し、第2方向mに沿って並んだ複数の第2改質部r14を含む第4の改質領域R14を形成する。第2改質部r14は、上面視において第2改質部r15と重なる。なお、第2改質部r14は、上面視において、第2改質部r15に完全に重なることに限らず、第1改質部r14の一部が第1改質部r15に重なっていてもよい。
【0053】
図6および
図7において、割断予定線Lを1点鎖線で表す。割断予定線Lは仮想的な線である。レーザ照射工程の後の分離工程の際に、押圧部材を割断予定線Lに沿ってウェーハWに押し当てウェーハWを押圧することで、この場合、第2方向mに沿ってウェーハWは割断される。
【0054】
第2面12からの距離が最も短い第4距離d4の位置にある第4の改質領域R14と、第2面12からの距離が最も長い第5距離d5の位置にある第5の改質領域R15は、割断予定線L上に位置する。第4の改質領域R14を形成する第2改質部r14の少なくとも一部、および第5の改質領域R15を形成する第2改質部r15の少なくとも一部が、割断予定線Lに重なる。
【0055】
第2改質部r11を含む第1の改質領域R11、第2改質部r12を含む第2の改質領域R12、第2改質部r13を含む第3の改質領域R13、第2改質部r16を含む第6の改質領域R16、および第2改質部r17を含む第7の改質領域R17は、割断予定線Lと重ならない位置に形成される。
【0056】
図6に示すように、複数の改質領域R11~R14は、3列に分かれてサファイア基板10の厚さ方向に並ぶ。サファイア基板10の厚さ方向において、第2面12からの距離が最も短い第4距離d4の位置に形成された第2改質部r14を含む第4の改質領域R14と、第2面12からの距離が最も長い第5距離d5の位置に形成された第2改質部r15を含む第5の改質領域R15は、前述の3列のうちの中央の列に位置し、割断予定線L上に位置する。
【0057】
第2改質部r11を含む第1の改質領域R11、第2改質部r13を含む第3の改質領域R13、および第2改質部r17を含む第7の改質領域R17は、前記3列のうちの一方の端の列(例えば
図6において左端の列)に位置する。第2改質部r12を含む第2の改質領域R12および第2改質部r16を含む第6の改質領域R16は、前記3列のうちの他方の端の列(例えば
図6において右端の列)に位置する。
【0058】
割断予定線L上に位置しない第2改質部r11、r12、r13、r16、r17のうち、サファイア基板10の厚さ方向において重ならない関係にある第2改質部同士は、第1方向aにおいて、割断予定線Lを基準にして互いに逆方向にずれている。
【0059】
第2照射工程において、改質領域R11~R17のそれぞれを形成するときのレーザ光の第2方向mに沿った照射間隔は、例えば6μm以上12μm以下である。
【0060】
第2照射工程で形成する複数の改質領域R11~R17は、第1照射工程で形成する複数の改質領域R1~R4間のサファイア基板10の厚さ方向における第1間隔よりも短い第2間隔で、第2面12からの距離が異なる位置に形成される。
図6において、第2間隔は、第5距離d5と第1距離d1の差、第1距離d1と第2距離d2の差、第2距離d2と第3距離d3の差、第3距離d3と第6距離d6の差、第6距離d6と第7距離d7の差、および第7距離d7と第4距離d4の差に相当する。例えば、第1間隔は120μm以上200μm以下であり、第2間隔は60μm以上120μm以下である。
【0061】
第2照射工程においても第1照射工程と同様に、1つの第2改質部を複数回のレーザ光の照射により形成する。ただし、第2照射工程において1つの第2改質部を形成するときのレーザ光の照射回数は、第1照射工程において1つの第1改質部を形成するときのレーザ光の照射回数よりも少なくする。
【0062】
例えば、同じ位置に対する2回のレーザ光の照射により、1つの第2改質部r15を形成する。第2改質部r15を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r15を含む第5の改質領域R15が形成される。
【0063】
1つの第2改質部r11も、同じ位置に対する例えば2回のレーザ光の照射により形成する。第2改質部r11を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r11を含む第1の改質領域R11が形成される。
【0064】
1つの第2改質部r12も、同じ位置に対する例えば2回のレーザ光の照射により形成する。第2改質部r12を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r12を含む第2の改質領域R12が形成される。
【0065】
1つの第2改質部r13も、同じ位置に対する例えば2回のレーザ光の照射により形成する。第2改質部r13を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r13を含む第3の改質領域R13が形成される。
【0066】
1つの第2改質部r16も、同じ位置に対する例えば2回のレーザ光の照射により形成する。第2改質部r16を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r16を含む第6の改質領域R16が形成される。
【0067】
1つの第2改質部r17も、同じ位置に対する例えば2回のレーザ光の照射により形成する。第2改質部r17を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r17を含む第7の改質領域R17が形成される。
【0068】
1つの第2改質部r14も、同じ位置に対する例えば2回のレーザ光の照射により形成する。第2改質部r14を形成する位置に1回ずつレーザ光を照射しつつ、第2方向mに沿って行う走査を、2回繰り返す。第2方向mに沿ってレーザ光を2回走査することにより、2回のレーザ光の照射によって形成された複数の第2改質部r14を含む第4の改質領域R14が形成される。
【0069】
以上説明した第2照射工程は、
図1に示す第2方向mに延びる複数のダイシングストリートDのそれぞれに対して行われる。
【0070】
1つのウェーハWにおいて、第2照射工程において第2面12からの距離が異なる位置(深さ)に形成される改質領域R11~R17の数は、第1照射工程において第2面12からの距離が異なる位置(深さ)に形成される改質領域R1~R4の数よりも多い。本実施形態では、第2照射工程で7つの改質領域を形成し、第1照射工程で4つの改質領域を形成している。第1照射工程における改質領域R1~R4の数と、第2照射工程における改質領域R11~R17の数との差は、例えば、2以上である。
【0071】
第1照射工程および第2照射工程によって形成された各改質部にはひずみが発生し、そのひずみが解放されることで各改質部から亀裂が発生する。各改質部から発生した亀裂は、サファイア基板10の厚さ方向において改質部間でつながるようにサファイア基板10内を伸展する。改質部から発生した亀裂は、サファイア基板10の第1面11及び第2面12に達していてもよい。
【0072】
[分離工程]
レーザ光照射工程の後、ウェーハWを複数の発光素子に分離する分離工程が行われる。例えば、ダイシングストリートDに沿って延びるブレード形状の押圧部材を用いて割断予定線Lに沿ってウェーハWを押圧する。押圧部材による押圧力を受けたサファイア基板10は、改質部から伸展する亀裂を起点として割断される。押圧部材は、例えば、第1面11側から割断予定線Lに沿って押し当てる。
【0073】
例えば、まず第2方向mに沿って延びるダイシングストリートDに沿ってウェーハWを割断し、
図9Aに示すように、ウェーハWを第2方向mに延びる複数の分離部50に分離する。
【0074】
この後、第1方向aに沿って延びるダイシングストリートDに沿って分離部50を割断し、
図9Bに示すように、ウェーハWは複数の発光素子1に個片化される。なお、先に第1方向aに沿った割断を行い、その後、第2方向mに沿った割断を行ってもよい。
【0075】
個片化された個々の発光素子1の側面には、前述した改質部が、改質部が形成されない部分よりも表面粗さが大きい領域として露出する。
【0076】
図10A及び
図10Bは、本実施形態により製造された発光素子1の側面を示す模式断面図である。
【0077】
図10Aは第2方向mに沿った断面を表し、
図10Aにおいて第1方向aは紙面を貫く方向である。すなわち、
図10Aに示すサファイア基板10の第1側面13は、第1方向aに沿った割断によって形成される。
【0078】
図10Bは第1方向aに沿った断面を表し、
図10Bにおいて第2方向mは紙面を貫く方向である。すなわち、
図10Bに示すサファイア基板10の第2側面14は、第2方向mに沿った割断によって形成される。
【0079】
発光素子1は、いわゆるフェイスダウン実装タイプの素子であり、サファイア基板10の第1面11に設けられた素子部20を配線基板に対向させ、サファイア基板10の第2面12を配線基板の上方に向けた状態で配線基板に実装される。発光素子1の平面形状は四角形であり、サファイア基板10の第1方向aに沿う一対の第1側面13および第2方向mに沿う一対の第2側面14を有する。フェイスダウン実装された発光素子1からの光はサファイア基板10側に向かい、主にサファイア基板10の第1側面13及び第2側面14から取り出される。
【0080】
例えば、素子部20は深紫外光を発光し、サファイア基板10の厚さは700μmであり、第1側面13および第2側面14は空気に接している。素子部20からの光は、主にサファイア基板10の第1側面13および第2側面14から外部に取り出される。このような発光素子1において、第1側面13および第2側面14に凹凸を形成することで光取り出し効率を高くすることができる。また、深紫外光のような比較的波長の短い光は、サファイア基板10の第1側面13および第2側面14と空気との界面から取り出されにくい傾向がある。サファイア基板10の厚さを、例えば500μm以上1000μm以下と比較的厚くすることで、第1側面13および第2側面14の表面積を増加させることで光取り出し効率を高くすることができる。
【0081】
サファイア基板10のa軸方向に沿って割断する場合は、サファイア基板10の裂開性により結晶面に沿って斜め方向(第1面11及び第2面12に対して傾斜した方向)に割れやすい。そのため、a軸方向に平行な第1方向aに沿った割断によって形成される第1側面13は、
図10Aに示すように、凹凸形状に形成される。
【0082】
一方、サファイア基板10のm軸方向に沿う割断は、サファイア基板10の裂開性がない結晶方向での割断になる。そのため、参照例として、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が異なる6つの位置に改質領域をそれぞれ第2方向mに沿って形成し、且つ6つの改質領域を割断予定線L上に位置させた場合には、割断予定線L上でサファイア基板10の厚さ方向に並ぶ改質領域をつなぐように直線上に亀裂が伸展する。その結果、第2方向mに沿った割断によって形成されたサファイア基板10の側面は、第1面11及び第2面12に対してほぼ垂直になる。
【0083】
本実施形態によれば、第2方向mに沿った第2照射工程において、
図6に示すように、割断予定線Lを基準にして、第1方向aに沿って互いに逆方向に位置がずれた関係にある第2改質部を形成する。これにより、第2改質部間をつなぐように伸展する亀裂が、割断予定線Lに沿うような直線状にならず、斜めに割断予定線Lを横切りつつジグザクに形成される。そのような亀裂を起点に割断された割断面には凹凸が形成される。すなわち、
図10Bに示すように、m軸方向に平行な第2方向mに沿った割断によって形成される第2側面14を凹凸形状に形成することができる。
【0084】
第2照射工程において第2面12からの距離が異なる位置に形成する改質領域R11~R17間の第2間隔を、第1照射工程において第2面12からの距離が異なる位置に形成する改質領域R1~R4間の第1間隔よりも短くし、また、改質領域R11~R17の数を改質領域R1~R4の数よりも多くしている。これにより、第2側面14に形成される凸の数を増やすことができる。サファイア基板10の側面における凸の数をより多くすることで光取り出し効率を高くすることができる。
【0085】
サファイア基板10の厚さ方向における両端に位置する改質領域、すなわち、第2面12に最も近い第4の改質領域R14と、第1面11に最も近い第5の改質領域R15は、割断予定線L上に位置させている。これにより、第1面11側と第2面12側において割断予定線Lからずれた位置に亀裂が伸展することを抑制し、割断時に第1面11側と第2面12側で生じるサファイア基板10の欠けを抑制することができる。
【0086】
裂開性がある第1方向aに沿った割断を行うための改質領域R1~R4を形成する第1照射工程においては、改質領域R1~R4の数を第2照射工程で形成する改質領域R11~R17の数よりも少なくし、且つ改質領域R1~R4間の第1間隔を改質領域R11~R17間の第2間隔よりも大きくしている。これにより、第1方向aに沿った割断の際、サファイア基板10の結晶面に沿って斜めに割れる面の領域を大きくすることができる。このため、1つの凸形状が大きい第1側面13を形成しやすく、光取り出し効率のよりいっそうの向上が可能となる。
【0087】
第1照射工程では改質領域R1~R4間の第1間隔を、第2照射工程における改質領域R11~R17間の第2間隔よりも広げている。そのため、第1照射工程では、第2照射工程に比べて、改質領域R1~R4の間をつなぐような亀裂が形成されにくい傾向にある。そこで、第1照射工程では、第2照射工程に比べて、1つの改質部を形成するときのレーザ光の照射回数を多くすることで、1つの改質部から伸展する亀裂を伸展させやすくし、改質領域R1~R4の間をつなぐ亀裂を形成しやすくしている。これにより、改質領域R1~R4間の間隔が比較的広くても割断しやすくできる。
【0088】
ここで、参照例として、サファイア基板10の厚さ方向において第2面12からの距離が異なる6つの位置に改質領域をそれぞれ第1方向aおよび第2方向mに沿って形成し、且つ6つの改質領域を第1方向aおよび第2方向mの両方向において割断予定線L上に位置させてウェーハWの割断を行った。また、参照例では、第1照射工程および第2照射工程において、第1方向aおよび第2方向mに沿ってサファイア基板10の厚さ方向に形成する改質領域間の間隔を同じとし、すべての改質領域を割断予定線Lに沿って形成した。このような参照例で得られた発光素子に比べて、前述した本実施形態によってウェーハWの割断により得られた発光素子1の出力を平均で8%向上することができた。本実施形態によれば、割断されたサファイア基板10の側面に凹凸を生じさせ、光取り出し効率を向上させた発光素子を得ることができる。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0090】
1…発光素子、10…サファイア基板、11…第1面、12…第2面、13…第1側面、14…第2側面、20…素子部、r1~r4…第1改質部、r11~r17…第2改質部、L…割断予定線、D…ダイシングストリート、W…ウェーハ