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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057766
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】フレキシブル管用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/00 20060101AFI20220404BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F16L33/00 B
F16L21/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166177
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】坂田 信道
【テーマコード(参考)】
3H015
3H017
【Fターム(参考)】
3H015FA06
3H017CA03
3H017CA07
(57)【要約】
【課題】良好なシール性を維持しながら、省資源化を図ることができるフレキシブル管用継手を提供する。
【解決手段】管継手1は、一端部からフレキシブル管が挿入される継手本体2を備え、継手本体2内において、継手本体奥側に向かって、フレキシブル管の谷部に収まる爪部81を有するリテーナ8と、ゴム材料からなるリング状のシール部材7とが配置されており、シール部材7は、継手本体入口側に向かって、リング内周側に延びる内周リップ71と、内周リップ71よりもリング外周側に延びる外周リップ72とを有し、外周リップ72は、継手本体2の内面およびリテーナ8に直接的または間接的に拘束され、内周リップ71は、フレキシブル管の挿入前において他部材に拘束されておらず、フレキシブル管との接続状態において、フレキシブル管の先端から1つ目の山部の先端側の斜面に密着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管を接続するフレキシブル管用継手であって、
前記フレキシブル管用継手は、一端部から前記フレキシブル管が挿入される継手本体を備え、前記継手本体内において、継手本体奥側に向かって、前記フレキシブル管の谷部に収まる爪部を有するリテーナと、ゴム材料からなるリング状のシール部材とが配置されており、
前記シール部材は、継手本体入口側に向かって、リング内周側に延びる内周リップと、前記内周リップよりもリング外周側に延びる外周リップとを有し、
前記外周リップは、前記継手本体の内面および前記リテーナに直接的または間接的に拘束され、
前記内周リップは、前記フレキシブル管の挿入前において他部材に拘束されておらず、前記フレキシブル管との接続状態において、前記フレキシブル管の先端から1つ目の山部の先端側の斜面に密着することを特徴とするフレキシブル管用継手。
【請求項2】
前記外周リップの継手本体入口側の先端が、前記内周リップの継手本体入口側の先端よりも継手本体入口側に位置することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項3】
前記リテーナは、前記フレキシブル管の挿入前において、前記爪部の内径が前記フレキシブル管の山部の外径よりも小さい状態で配置され、前記フレキシブル管の挿入時に前記爪部が前記フレキシブル管の山部を乗り越えるよう拡径する部材であり、
前記内周リップは、前記リテーナの拡径時に干渉しない位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項4】
前記シール部材は、継手本体入口側に向かって開口した略コの字状の断面形状を有し、
前記シール部材の継手本体奥側の端面から内周面にかけて、断面L字状の金属ガイドが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項5】
前記継手本体は、前記シール部材と前記継手本体の段部との間に、圧縮状態で保持された弾性部材を有し、
前記シール部材は、前記フレキシブル管の挿入により前記弾性部材の圧縮状態が開放されることで、前記継手本体の一端部に向かってスライドするとともに圧縮され、前記内周リップが前記フレキシブル管に密着することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のフレキシブル管用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状のフレキシブル管が接続されるフレキシブル管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内ガス配管などには、金属製の蛇腹状のフレキシブル管が広く用いられている。また、このフレキシブル管とガス栓や鋼管などとを接続するための管継手が種々用いられている。近年では、工具を必要とせずに、管継手にフレキシブル管を差し込むだけで施工が完了できる、ワンタッチ式の管継手も実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているフレキシブル管用継手(以下、単に管継手ともいう)を図10および図11に示す。図10は、フレキシブル管を挿入する前の状態を示し、図11は、フレキシブル管を挿入した状態(接続状態)を示す。図10に示すように、管継手11は、一端部からフレキシブル管が挿入される継手本体12を備え、継手本体12内において、押ナット13の一部と、リテーナ18(抜け止め部材)と、軸方向に伸縮自在な弾性部材14と、弾性部材14を圧縮状態で保持する保持部材15と、移動部材16と、フレキシブル管の外周面に密着するリング状のシール部材17aとが配置されている。
【0004】
この管継手に対して、図11に示すように、蛇腹状のフレキシブル管Tが挿入されると、保持部材15が弾性部材14の圧縮状態を開放し、弾性部材14の伸長に伴って、シール部材17aがスライドするとともに軸方向に圧縮される。これにより、シール部材17aがフレキシブル管Tの外周面に密着する。なお、シール部材17aには、ショアA硬度が50程度のゴム部材が用いられる。また、弾性部材14の伸長に伴って、リテーナ18が縮径して爪部18aがフレキシブル管Tの谷部に収まる。これにより、リテーナ18がフレキシブル管Tの外周面に引っ掛かり、フレキシブル管Tの抜けを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-52762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように管継手における接続は、管継手の内孔にフレキシブル管を挿入することで行われる。図11に示すように、従来の管継手11では、フレキシブル管Tとの接触面積を十分に確保することでシール性を維持している。しかしながら、管継手の内孔にフレキシブル管を相当程度挿入する必要があり、管継手やフレキシブル管などの資材の省資源化の観点からは改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、良好なシール性を維持しながら、省資源化を図ることができるフレキシブル管用継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフレキシブル管継手は、複数の山部と谷部が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状のフレキシブル管を接続するフレキシブル管用継手であって、一端部からフレキシブル管が挿入される継手本体を備え、継手本体内において、継手本体奥側に向かって、フレキシブル管の谷部に収まる爪部を有するリテーナと、ゴム材料からなるリング状のシール部材とが配置されており、シール部材は、継手本体入口側に向かって、リング内周側に延びる内周リップと、内周リップよりもリング外周側に延びる外周リップとを有し、外周リップは、継手本体の内面およびリテーナに直接的または間接的に拘束され、内周リップは、フレキシブル管の挿入前において他部材に拘束されておらず、フレキシブル管との接続状態において、フレキシブル管の先端から1つ目の山部の先端側の斜面に密着する。本発明において、フレキシブル管に対して「密着する」とは、フレキシブル管の全周にわたって押し付けられて、隙間なく接触している状態を意味する。シール部材は、フレキシブル管に密着することで、内部の流体を確実にシールすることができる。
【0009】
本発明において、外周リップの継手本体入口側の先端が、内周リップの継手本体入口側の先端よりも継手本体入口側に位置することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明において、リテーナは、フレキシブル管の挿入前において、爪部の内径がフレキシブル管の山部の外径よりも小さい状態で配置され、フレキシブル管の挿入時に爪部がフレキシブル管の山部を乗り越えるよう拡径する部材であり、内周リップは、リテーナの拡径時に干渉しない位置に配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明において、シール部材は、継手本体入口側に向かって開口した略コの字状の断面形状を有し、シール部材の継手本体奥側の端面から内周面にかけて、断面L字状の金属ガイドが設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明において、継手本体は、シール部材と継手本体の段部との間に、圧縮状態で保持された弾性部材を有し、シール部材は、フレキシブル管の挿入により弾性部材の圧縮状態が開放されることで、継手本体の一端部に向かってスライドするとともに圧縮され、内周リップがフレキシブル管に密着するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキシブル管継手は、このような構成にすることにより、良好なシール性を維持しながら、省資源化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る管継手の第1実施形態の片側断面図である。
図2図1のリテーナの平面図などである。
図3図1のシール部材の片側断面図などである。
図4】フレキシブル管の挿入動作を説明するための図である。
図5図1の管継手にフレキシブル管を挿入した状態の片側断面図である。
図6】シール部材に掛かる力と挙動を示す簡略図である。
図7】本発明に係る管継手の第2実施形態の片側断面図である。
図8図7の管継手にフレキシブル管を挿入した状態の片側断面図である。
図9図7のシール部材の片側断面図などである。
図10】従来の管継手の片側断面図である。
図11図10の管継手にフレキシブル管を挿入した状態の片側断面図である。
図12図10のシール部材の片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る管継手の第1実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、管継手の片側断面図であり、管継手1の中心軸Oより上半分が断面図、下半分が側面図を表している。図1の管継手1の一端部(図左側)にはフレキシブル管が接続され、他端部(図右側)には他の管やガス機器などが接続される。
【0016】
本発明において、管継手1の中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視で中心軸Oと直交する方向を径方向といい、該平面視で中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
図1に示すように、管継手1は、円筒状の継手本体2と、その一部が継手本体2に挿入される押ナット3と、弾性部材4と、弾性部材4を圧縮状態で保持する保持部材5と、移動部材6と、フレキシブル管に密着するリング状のシール部材7と、フレキシブル管の谷部に収まる爪部81を有するリテーナ8とを備える。また、管継手1において、耐火パッキン9a、ストップリング9b、押ナット3と継手本体2をシールするためのOリング9c、押ナット3とフレキシブル管をシールするためのリップパッキン9d、選択透過性部材9eがそれぞれ装着されている。
【0018】
継手本体2は、一端部にフレキシブル管が挿入される内孔21を有するとともに、他端部の外周面におねじ部27を有する。内孔21は、他端部に向かって内径が段階的に減少しており、第1段部24と第2段部25が形成されている。第1段部24と第2段部25の間には、保持部材5の一端が係合される係合溝26が形成されている。また、継手本体2の一端部の内周面には、内周溝22、23が形成されている。
【0019】
押ナット3は、貫通孔を有する筒状の金属部材である。押ナット3の外周面には、ストップリング9bの一部が進入する外周溝31が形成されている。また、押ナット3のその他の溝部にはOリング9c、リップパッキン9dがそれぞれ嵌装されている。
【0020】
弾性部材4は、軸方向に伸縮自在なコイルばねである。フレキシブル管が挿入される前の状態において、弾性部材4は保持部材5によって圧縮状態で保持されている。保持部材5は、一部が突出しておりL字形断面を有する金属製のリング状部材であり、一端部に中空円板状の支持部51を有するとともに、他端部に径方向外側に折り曲げられた折曲部52を有する。保持部材5は、支持部51と継手本体2の第1段部24との間に弾性部材4を圧縮させた状態で保持し、折曲部52を継手本体2の係合溝26に係合させている。さらに、保持部材5の内周面を移動部材6で支持して、折曲部52の係合が解除されないようにして、弾性部材4の圧縮状態を保っている。移動部材6は、保持部材5の内径側に軸方向に移動可能に設けられる略円筒状部材である。
【0021】
リテーナ8は、金属材料(例えば、ステンレス)からなるリング状部材である。図1において、リテーナ8は継手本体奥側に向かって縮径するように設けられており、爪部81の内径は、フレキシブル管の山部の外径よりも小さい状態で配置されている。リテーナ8の構成について、図2を参照して説明する。図2(a)はリテーナの平面図であり、図2(b)は側面図であり、図2(c)は斜視図である。図2に示すように、リテーナ8は、中空円板状の基部82と、基部82から一方側に縮径するように延出した複数の爪部81と、基部82から爪部81とは逆側に延出した複数の保持片83とを有する。
【0022】
複数の爪部81は円周方向に沿って並設され、軸方向に切り込まれた溝によって分割されている。また、各爪部81は、切欠溝811によって、先端部が2つの爪片812に分割されている。各爪部81が2つの爪片に分割されることで、フレキシブル管の谷部に収まりやすくなる。また、基部82は、リテーナ8の軸方向に直交する面に対して平行に形成されている。
【0023】
図1に示すように、基部82は、管継手の軸方向に直交する面に対して平行に配置されており、その基部82に耐火パッキン9aが当接している。管継手1では、リテーナ8の基部82、耐火パッキン9a、シール部材7、保持部材5の支持部51、弾性部材4が軸方向に沿って直線上に並んで配置されているため、弾性部材4の復元力をリテーナ8に効率的に伝えることができる。その結果、シール部材7の圧縮を安定して行うことができるとともに、リテーナ8の爪部81が谷部に収まってリテーナ8がフレキシブル管に引っ掛かる動作を安定して行うことができる。
【0024】
耐火パッキン9aは、管継手1が火災などで高温にさらされた場合でも、ガス漏れを防止できるようにするための部材である。耐火パッキン9aは、例えば、原料ゴムと、無発泡状態で熱膨張する黒鉛層間化合物と、必要に応じて充填材、軟化材、加硫剤などを混練して得られたゴム組成物を、金型に充填して成形し、ついでプレス加硫することにより製造される。耐火パッキン9aは、火災時に熱膨張して、継手本体2とフレキシブル管との隙間に充填されることで、フレキシブル管の外周面をシールする。図1において、耐火パッキン9aは矩形断面を有している。
【0025】
ストップリング9bは、ばね性を有する金属材料からなる線材で形成されたC字状部材である。図1に示すように、ストップリング9bの一部が継手本体2の内周溝22に嵌入され、残りの一部が押ナット3の外周溝31に嵌入されることで、継手本体2と押ナット3が固定される。押ナット3の外周溝31にストップリング9bを嵌め込んだ状態で、押ナット3を継手本体2に挿入すると、ストップリング9bは、内周溝23で一旦拡径する。さらに挿入が進むと、ストップリング9bは、内周溝23の傾斜面に誘導されて内周溝22まで到達し、そこで拡径することで押ナット3が固定される。
【0026】
Oリング9cは、押ナット3の外周溝31よりも継手本体入口側に形成された外周溝に嵌入される。Oリング9cは、外部から管継手1の内部への水の浸入を防ぎ、管継手1に水密性を付与する。また、リップパッキン9dは、略L字形断面を有する環状部材であり、押ナット3の内周溝に嵌入される。リップパッキン9dは、フレキシブル管の外周面と押ナット3の内周面とを水密にシールする。
【0027】
選択透過性部材9eは、押ナット3の継手本体2の一端部に対向する位置に設けられた外気と連通する貫通孔(例えば円孔)に装着されている。選択透過性部材9eは、気体を透過し液体を透過しない多孔質部材であり、フレキシブル管からガス漏れが生じた場合に、漏出したガスを透過させて外部のガスセンサなどに検出させるために設けられる。
【0028】
次に、管継手のシール部材の構成について説明する。まず、図12に従来の管継手におけるシール部材を示す。図12(a)は従来のシール部材の片側断面図であり、図12(b)はその平面図である。
【0029】
図12に示すように、シール部材17aは、ゴム材料からなり、略矩形断面を有するリング状部材である。このシール部材17aには、継手本体入口側の端面に金属ガイド17bが固定して設けられている。金属ガイド17bはL字形断面を有しており、耐火パッキン19a(図10参照)を保持する構成になっている。シール部材17aは、フレキシブル管と密着する内周部が円筒形状を有し、フレキシブル管の山部の外径よりもやや小さい内径を有している。また、シール部材17aは、ショアA硬度が50程度であり、フレキシブル管の2山分をシールできるような長さを有している。
【0030】
一方、本発明の管継手におけるシール部材は、図1に示すように、継手本体入口側に向かって、リング内周側に延びる内周リップ71と、内周リップ71よりもリング外周側に延びる外周リップ72とを有している。具体的には、シール部材7は、継手本体入口側に向かって開口した略コの字状の断面形状を有する。シール部材7は、開口側で流体の圧力を受ける、いわゆるリップパッキンとは逆向きに装着されており、逆リップパッキンともいえる。
【0031】
図1において、外周リップ72は、継手本体2の内面およびリテーナ8に直接的または間接的に拘束されている。具体的には、外周リップ72は、内面に直接拘束されるとともに、耐火パッキン9aを介してリテーナ8に間接的に拘束されている。一方、内周リップ71は、図1のフレキシブル管の挿入前の状態において他部材に拘束されておらず、自由端になっている。その結果、フレキシブル管との接続状態(図5参照)において、内周リップ71がフレキシブル管の先端から1つ目の山部の先端側の斜面に密着しやすくなる。
【0032】
シール部材のより詳細な構成を図3を用いて説明する。図3(a)は本発明におけるシール部材の片側断面図であり、図3(b)はそのX部拡大図である。図3(a)、(b)において、矢印Aの方向は継手本体入口側を示し、矢印Bの方向は継手本体奥側を示す。図3(c)は、シール部材を継手本体奥側から継手本体入口側に見た平面図である。図3(a)、(b)に示すように、略コの字状の断面形状のシール部材7の継手本体奥側には、金属ガイド9fが設けられている。具体的には、シール部材7の継手本体奥側の端面から内周面にかけて、断面L字状の金属ガイド9fが沿うように設けられている。金属ガイド9fは、ステンレスなどから形成される。金属ガイド9fが設けられたシール部材7は、例えば、金属ガイド9fが配置された金型内にゴム材料をインサート成形することで得られる。なお、別途、成形したシール部材7に金属ガイド9fを接着して固定してもよい。
【0033】
図3(b)に示すように、内周リップ71および外周リップ72は、シール部材7の基部73から継手本体入口側に向かって二股状に分岐して延びている。ここで、基部73は、内周リップ71および外周リップ72にそれぞれ接続される、シール部材7の継手本体奥側の部分をいう。また、外周リップ72の継手本体入口側の先端は、内周リップ71の継手本体入口側の先端よりも継手本体入口側に位置している。これら先端間の軸方向距離Gは1mm以上が好ましく、好ましい範囲としては1mm~3mmである。このようにギャップを設けて、内周リップ71の継手本体入口側に十分な空間を確保することで、リテーナとの干渉を防止しやすくなる。
【0034】
図3(b)に示すように、シール部材7の内周リップ71は、無負荷の状態(圧縮前の状態)において、フレキシブル管と密着する継手本体奥側に、縮径方向に突出した凸部711を有する。凸部711の高さHは、0.2mm以上が好ましく、好ましい範囲としては0.2mm~2.0mmである。シール部材7は、内周リップ71の円筒部分においてフレキシブル管の山部の外径よりもやや小さい内径を有し、凸部711ではさらに小さい内径を有する。このように、凸部711を形成することで、フレキシブル管の先端部を保持できるとともに、1つ目の山部の先端側の斜面に内周リップ71を密着させやすくなる。また、凸部711の継手本体入口側の端面は、傾斜面712となっている。傾斜面712のシール部材7の軸方向に対する傾斜角度は、フレキシブル管の形状に密着するような角度が好ましく、例えば、30度~60度である。傾斜面712を形成することで、フレキシブル管の1つ目の山部の先端側の斜面に、より密着させやすくなる。
【0035】
外周リップ72の外周面は、軸方向に平行な平行面721と、軸方向に対して傾斜した傾斜面722とを有している。平行面721は、継手本体入口側に設けられ、傾斜面722は継手本体奥側に設けられている。平行面721は、継手本体2の内面に軸方向へスライド可能に密着している。傾斜面722は、弾性部材の復元力の方向に対して所定の角度を有する。これにより、内周リップにモーメントが発生し、内周リップが回転するように動くことができる。
【0036】
図3(b)において、シール部材7の軸方向長さLは、フレキシブル管の1山分をシールできる長さに設計される。その軸方向長さLは、例えば3mm~6mmである。また、図3(c)に示すように、リング状のシール部材7と金属ガイド9fは同心円状に配置されており、シール部材7の外径寸法は、金属ガイド9fの外径寸法よりも大きくなっている。シール部材7の外径寸法は、例えば、20mm~40mmである。
【0037】
本発明において、シール部材7はゴム材料からなり、ショアA硬度が、例えば40~60である。ショアA硬度とは、タイプAデュロメータ硬さであり、日本工業規格JIS K 6253-3で規定される求め方で求められる値をいう。シール部材7のショアA硬度は45~55が好ましく、50程度がより好ましい。また、シール部材7に用いられるゴム材料としては、長期間にわたってシール性能を保持する必要性から、耐ガス性に優れたニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。
【0038】
フレキシブル管の挿入動作について図4を用いて説明する。図4に示すように、フレキシブル管Tは、複数の山部T1と谷部T2が軸方向に沿って交互に配置された蛇腹状の金属管(例えばステンレス管)である。通常、フレキシブル管Tの先端部T3は、谷部の位置で軸方向に直角になるように切断される。フレキシブル管Tは、先端部から数山分(例えば6山分)の外側の被覆樹脂が取り除かれて管継手1に挿入される。
【0039】
フレキシブル管Tを管継手1の一端部から挿入して、押ナット3およびリテーナ8の内周部を通過させる。上述したように、リテーナ8の爪部81の内径はフレキシブル管Tの山部T1の外径φよりも小さい状態で配置されている。そのため、爪部81はフレキシブル管Tの山部T1を乗り越えるように動作する。具体的には、基部82と耐火パッキン9aとの当接箇所を支点にして、爪部81が拡径するように動く。この際、リテーナ8は、爪部81が拡径しても、上述のように各リップの先端が配置され内周リップ71の継手本体入口側に空間が確保されているので、爪部81が内周リップ71に干渉しない。そのため、フレキシブル管の挿入時の荷重を低減できる。
【0040】
そして、フレキシブル管Tの先端部T3が移動部材6に突き当たり、その移動部材6のフランジ部61が第2段部25側に押し込まれる。フレキシブル管Tが奥まで押し込まれると、保持部材5の折曲部52の自由端が継手本体2の係合溝26から外れることに伴って、シール部材7と継手本体2の第一段部24との間に圧縮状態で保持されていた弾性部材4の圧縮状態が開放されて、弾性部材4が伸長する。伸長する弾性部材4は、支持部51を押すことによって、継手本体入口側の一端部に向かってシール部材7に設けられた金属ガイド9fを押圧することで、シール部材7はスライドするとともに圧縮される。その結果、シール部材7がフレキシブル管Tに密着して、挿入が完了する。
【0041】
フレキシブル管の挿入が完了した状態(接続状態)を図5に示す。この接続状態において、内周リップ71は、フレキシブル管Tの先端T3から1つ目の山部T1の先端側の斜面から継手本体奥側へ向かって力を受け、拡径するように変形している。この際、弾性部材4の復元力および内周リップ71の復元力が、フレキシブル管Tに対して負荷されることで、内周リップ71がフレキシブル管Tの1つ目の山部T1に密着する。具体的には、内周リップ71は、1つ目の山部T1の一部に覆いかぶさるように、その山部T1の先端側の斜面T1aに密着する。シール部材7は、継手本体入口側に向かって開口した略コの字状の断面形状であるため、一般的な硬度のゴム材料製であっても、内周リップ71の変形量を大きくでき、1つ目の山部の先端側の斜面に密着しやすい。
【0042】
シール部材に掛かる力とシール部材の挙動について、図6を用いて説明する。図6(a)は、フレキシブル管の挿入時にシール部材に掛かる力を示す簡略図であり、図6(b)は、フレキシブル管の接続状態においてシール部材に掛かる力と挙動を示す簡略図である。
【0043】
図6(a)に示すように、フレキシブル管Tを継手本体2に挿入する際、リテーナ8が拡径するためには、耐火パッキン9aおよびシール部材7が壁になる(荷重を受ける)必要がある。シール部材7には、該シール部材よりも剛性が高い金属ガイド9fが継手本体奥側の端面から内周面にかけて設けられている。この金属ガイド9fが支えの役割を果たし、断面が略コの字状のシール部材7としながらも、フレキシブル管Tの挿入時においてシール部材7の座屈を防止しやすくなる。また、図6(a)に示すように、挿入荷重に対する反発力は、継手本体2と金属ガイド9fによって発生する。
【0044】
一方、図6(b)に示すように、フレキシブル管Tの接続状態では、シール部材7は弾性部材4から荷重を受け、該荷重が外周リップ72および内周リップ71に分散される。これらの荷重に対する反発力は、継手本体2とフレキシブル管Tによって発生し、各部において均衡が保たれている。この際、シール部材7に作用する力の点を結ぶと、概ね図6(b)のような三角形dとなる。この状態において、図中点線で示すようにフレキシブル管Tのシール位置(1山目)が変化した場合には、頂点d1を支点としてシール部材7が継手本体入口側に回転するように動く。この場合、外周リップ72は継手本体内で拘束されていることから、弾性部材4からの荷重が内周リップ71側に逃げることで、外周リップ72を支点にして内周リップ71が回転するように動く。これにより、シール部材7のフレキシブル管Tへの追従が可能になる。
【0045】
このように、シール性や、フレキシブル管Tの挿入時の荷重、接続状態の荷重などを考慮して、シール部材7を逆リップパッキンとするとともに、金属ガイド9fや各リップの先端を配置している。
【0046】
従来の管継手では、図11に示すように、接続状態においてフレキシブル管Tの先端部T3はシール部材17aを通過しており、フレキシブル管Tの外周側をシールする構成であった。つまり、シール部材17aに対してフレキシブル管Tを貫通させてシールする形態であった。
【0047】
これに対して、本発明に係る管継手1では、図5に示すように、フレキシブル管Tをより先端側でシールする構成になっており、フレキシブル管Tの先端部T3は、シール部材7から突出していない。その結果、管継手1の軸方向長さや、接続時に管継手に挿入されるフレキシブル管の長さをより短くでき、省資源化を図ることができる。一方で、より先端側でシールすることから、一般的にはフレキシブル管の動き(折り曲げなど)によって隙間が生じやすい構成になる。本発明に係る管継手1では、シール部材7の断面形状を継手本体入口側に向かって開口した略コの字状の断面形状にして変形しやすくするとともに、外周リップ72を支点として内周リップ71が動けるようにすることで、フレキシブル管の動きに対する追従性を向上させている。その結果、管継手1は、シールに十分な接触面積を確保して、シール部材をフレキシブル管に密着させることができる。
【0048】
また、本発明に係る管継手では、従来の管継手に比べて、フレキシブル管の挿入時の荷重も小さくできる。シール本体の内径寸法は、通常、フレキシブル管の外径寸法よりも若干小さくされている。そのため、従来のシール本体の内周部にフレキシブル管の2山を挿入させる構造では、挿入時の荷重が過大になるおそれがある。本発明は、この点についても有利であり、フレキシブル管の挿入時の荷重の低減によって施工性の向上が可能である。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の管継手を、図7図9に基づいて説明する。なお、図1図5を用いて説明した第1実施形態と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。図7は、フレキシブル管を挿入する前の状態を示し、図8は、フレキシブル管を挿入した状態を示す。
【0050】
図7に示すように、管継手1Aは第1実施形態の管継手と比較して、弾性部材、保持部材、および移動部材を有しておらず、更にシール部材の構成が異なる。シール部材については、第1実施形態のシール部材7が継手本体入口側に向かって開口した略コの字状の断面形状を有し、L字状の金属ガイド9fが設けられていたのに対して(図1参照)、第2実施形態のシール部材7Aは、軸方向断面が略T字状であり、その略中央に継手本体入口側に開口した空洞部を有している。シール部材7Aは、継手本体入口側に向かって、リング内周側に延びる内周リップ71Aと、内周リップ71Aよりもリング外周側に延びる外周リップ72Aを有している。なお、シール部材7Aには金属ガイドは設けられていない。
【0051】
図9には、図3と同様に、第2実施形態の管継手におけるシール部材を示す。図9(b)に示すように、内周リップ71Aおよび外周リップ72Aは、シール部材7Aの基部73Aから継手本体入口側に向かって二股状に分岐して延びている。基部73Aは、継手本体の第1段部(図8参照)に当接する。内周リップ71Aは、継手本体入口側およびリング内周側に延出し、継手本体入口側の先端713は接続状態においてフレキシブル管と密着する。また、外周リップ72Aの継手本体入口側の先端723は、耐火パッキン9aと当接する(図8参照)。なお、この形態においても、外周リップ72Aの先端723は、内周リップ71Aの先端713よりも継手本体入口側に位置している。これら先端間の軸方向距離Gは、リテーナとの干渉を防止するため、1mm以上が好ましく、好ましい範囲としては1mm~3mmである。
【0052】
また、内周リップ71Aの継手本体奥側の端面714は、基部73Aの継手本体奥側の端面731よりも継手本体入口側に配置されている。それにより、内周リップ71Aが継手本体奥側に向かって変形しやすくなる。シール部材7Aの軸方向長さLは、フレキシブル管の1山分をシールできる長さに設計される。シール部材7Aの軸方向長さLは、例えば3mm~6mmである。
【0053】
シール部材7Aの径方向長さW1は、例えば3mm~6mmである。
径方向長さW1に対する基部73Aの端面731の径方向長さW3の比率(W3/W1)は、0.2~0.6の範囲内の値であることが好ましい。それにより、内周リップ71Aの可動性と、復元力の発現を両立しやすくなり、フレキシブル管の先端の動きへの追従性がより優れる。基部73Aの端面731の径方向長さW3に対する外周リップ72Aの薄肉部の厚みW2の比率(W2/W3)は、0.4~0.6の範囲内の値であることが好ましい。また、外周リップ72Aの端面723の径方向長さW4に対する薄肉部の厚みW2の比率(W2/W4)は、0.4~0.6の範囲内の値であることが好ましい。それにより、第1段部から継手本体入口側への反発力を、シール部材7Aの変形により損失することなく、より効率的にリテーナへ伝達できる。
【0054】
第2実施形態の管継手へのフレキシブル管挿入時の動作について説明する。図8には、フレキシブル管の挿入が完了した状態(接続状態)を図8に示す。フレキシブル管Tが継手本体内部へ奥まで押し込まれると、シール部材7Aは、フレキシブル管Tの先端T3から1つ目の山部T1の先端側の斜面から継手本体奥側への力を受け、シール部材7Aの内周リップ71Aは継手本体奥側に傾斜するように変形する。変形した内周リップ71Aは、継手本体入口方向へ戻ろうとする復元力によって、フレキシブル管Tの山部T1に先端を密着して、挿入が完了する。内周リップ71Aは、自身の復元力をフレキシブル管Tに対して負荷し続けるため、フレキシブル管Tの1つ目の山部T1の位置が変化しても、その動きに追従し、シール性を維持できる。
【0055】
このように、第2実施形態では、シール部材は略T字状の断面形状であることにより、内周リップの可動性に優れる。そのため、第1実施形態に示したような別途の弾性部材などがなくても、シール部材は、内周リップの復元力のみによって、フレキシブル管の動きに追従できる。この形態においても、シール部材7Aは、1つ目の山部T1の先端側の斜面T1aに密着しており、フレキシブル管Tの先端部T3は、シール部材7Aから突出していない。なお、リテーナ8の爪部81は、先端部T3から1つ目の山部と2つ目の山部の間の谷部に係止している。
【0056】
シール部材の構成は、上記の第1実施形態および第2実施形態のいずれの形態でもよいが、追従性およびシール性に特に優れることから、第1実施形態が好ましい。具体的には、第1実施形態のシール部材は、接続後にフレキシブル管が動いた場合でも、フレキシブル管の先端から1つ目の山部にのみ密着するので、従来に比べて、シール部材を小さくできるとともに、管継手の軸方向長さを一層短くでき、管継手の小型化を図ることができる。一方、部品点数を削減できることから、省資源化の観点では第2実施形態が好ましい。第1実施形態、第2実施形態ともに、シール部材の基部からは、内周リップおよび外周リップがそれぞれ継手本体入口側に向かって二股状に分岐しており、開口している。このような形状を有することで、シール部材の材質や硬度にかかわらず良好なシール性を得られる。このため、一般的な材質のゴム材料を用いることができ、低コスト化にも寄与する。シール性の観点から、シール部材の形状は、フレキシブル管の動きに追従するための内周リップの可動性と、第1段部からの反発力を効率的にリテーナへ伝達するための外周リップの形状維持性を両立可能な所定の開口部分を有していることが好ましい。
【0057】
本発明の管継手は、上記各実施形態の形態に限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態では、断面L字状で円環状の金属ガイドを押え部材として用いたが、図10に示すように、例えば断面L字状の押え部材は、耐火パッキンに固設してもよい。
【0058】
また、リテーナとして、図10に示すリテーナを用いてもよい。図10のリテーナ18は、爪部18aを有するとともに、押ナット13に当接するテーパ面18cが形成された基部18bを有するリング状部材である。図10の形態では、爪部18aは、無負荷状態ではフレキシブル管の山部の外径よりも大なる内径を有し、フレキシブル管が挿入されるときには、その山部に引っ掛からないような寸法に設定されている。
【0059】
以上のように、本発明の管継手は、フレキシブル管の先端から1つ目の山部の先端側の斜面に接触してシールする構造にした上で、シール部材を所定の断面形状にすることにより、追従性を向上させてシール性を向上させている。これにより、良好なシール性を維持しながら、省資源化を図ることができるフレキシブル管用継手になる。
【符号の説明】
【0060】
1、1A:管継手(フレキシブル管用継手)
2:継手本体
21:内孔
22:内周溝
23:内周溝
24:第1段部
25:第2段部
26:係合溝
27:おねじ部
3:押ナット
31:外周溝
4:弾性部材
5:保持部材
51:支持部
52:折曲部
6:移動部材
61:フランジ部
7、7A:シール部材
71、71A:内周リップ
711:凸部
712:傾斜面
713:先端
714:端面
72、72A:外周リップ
721:平行面
722:傾斜面
723:先端
73、73A:基部
731:端面
8:リテーナ
81:爪部
811:切欠溝
812:爪片
82:基部
83:保持片
9a:耐火パッキン
9b:ストッパリング
9c:Oリング
9d:リップパッキン
9e:選択透過性部材
9f:金属ガイド
T:フレキシブル管
T1:山部
T2:谷部
T3:先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12