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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057892
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】忌避組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20220404BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20220404BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20220404BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20220404BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20220404BHJP
【FI】
A01N25/00 102
A01P17/00
A01N25/10
A01N31/06
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166386
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】富安 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】乾 洋治
(72)【発明者】
【氏名】潮田 会美
(72)【発明者】
【氏名】山田 希恵
(72)【発明者】
【氏名】近藤 仁志
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121AA14
2B121CA02
2B121CA45
2B121CA54
2B121CA61
2B121EA13
2B121FA13
4H011AC06
4H011BA01
4H011BB03
4H011BC18
4H011DA14
4H011DF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率的に家畜等の対象物から害虫を忌避させる材料およびその忌避方法を提供する。
【解決手段】忌避成分を担持した担体とエマルジョンとを含んでいる忌避組成物を家畜等の対象物に塗布することにより、忌避組成物が長時間剥がれることなく、家畜に対しての害虫の忌避効果が長時間持続するため、効果的に害虫を忌避することができ、例えば牛白血病であれば、害虫の忌避による感染の伝播を抑制することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)忌避成分を担持した担体を含む成分と、(B)エマルジョンを含む成分、とを含んでいる忌避組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の(A)忌避成分を担持した担体を含む成分と、(B)エマルジョンを含む成分とのキット。
【請求項3】
前記(A)忌避成分を担持した担体を含む成分、または、前記(B)エマルジョンを含む成分の少なくとも一方を噴霧して混合することを特徴とする請求項1に記載の忌避組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の忌避組成物を用いることを特徴とする害虫の忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫を忌避するための忌避組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人や家畜が罹患する病気の多くは、害虫が媒介していることが知られている。
【0003】
たとえば、家畜である牛が罹患する牛白血病を例に説明する。
【0004】
牛白血病とは、牛の血液中の白血球が異常に増えたり、悪性リンパ肉腫を形成したりする病気で、牛白血病ウイルスによって広がる地方病型とウイルスが関与しない散発型の2種類が知られており、牛白血病の多くは地方病型である。近年、この牛白血病の発生報告数は、増加の一途をたどっており、酪農家にとって深刻な問題となっている。
【0005】
この牛白血病ウイルスによる牛白血病の感染としては、他の牛に伝搬する水平感染と、母牛から子牛へと伝播する垂直感染の2種類が知られており、牛白血病の感染は、主に水平感染が原因と言われている。この水平感染の中で最も多いのが害虫の媒介による牛白血病ウイルスの伝播である。この牛白血病ウイルスを媒介する害虫としては、サシバエ、アブ、ブユなどが知られている。よって、牛白血病の蔓延を防ぐためには、害虫の駆除・駆逐が効果的である。
【0006】
一般的に酪農の現場で実施されている害虫の駆除・駆逐の方法としては、害虫に巣を作らせない、害虫を畜舎に入れない(例えば、物理的に目の細かい防虫ネットを畜舎に設置する等)、害虫を捕獲・殺虫により駆除する(例えば、ハエ取り紙や電撃殺虫器等の使用、殺虫剤を用いての殺虫)、害虫を忌避させる(忌避成分を用いての忌避)などが挙げられる。
【0007】
これらの方法の中で、害虫を畜舎に入れない、害虫を捕獲・殺虫により駆除するという方法は、家畜を飼育している場のすべての害虫を駆除する、防虫ネット等により物理的に害虫を畜舎にいれない、と大規模の対応が必要となるため効率的ではない。
【0008】
そのため、害虫を忌避させる方法が効果的であり、中でも忌避成分を家畜に散布または所持させて害虫を忌避する方法が効果的である。
【0009】
この忌避成分としては、古くから忌避効果がある一部の天然精油が知られており、酪農家の中にはサシバエ等の害虫を忌避するため、天然精油を用いて対策をしているところがある。
【0010】
この場合の害虫を忌避する方法として、忌避剤を家畜へ直接散布することが多いが、忌避成分の有効成分が高い蒸散性を有するため、持続時間は短いという課題がある。
【0011】
それを改善するため、色々な試みを行なわれている。
【0012】
例えば、特許文献1や特許文献2には、忌避成分を含有する徐放性担体が開示されており、この忌避成分を含有する徐放性担体を不織布バッグまたは通気性ビニール袋中に充填し、衣類や特定の場所に吊るして害虫を忌避する方法が開示されている。
【0013】
特許文献3には、害虫の忌避成分を担持した多孔性支持体を用いた貼付剤が開示されており、この貼付剤を家畜の皮膚に貼り付けて使用する方法が開示されている。
【0014】
特許文献4には、忌避成分をロープに含浸させ防虫ネットとして使用する方法が開示されており、この防虫ネットで畜舎を覆う方法が開示されている。
【0015】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の忌避成分を含有する徐放性担体を不織布バッグまたは通気性ビニール袋中に充填して用いる方法は、静置型となるため、畜舎の内外を行き来する家畜に対しては、十分に効果が発揮することができない。
【0016】
特許文献3に記載の害虫の忌避成分を担持した多孔性支持体を用いた貼付剤は、それ自体の忌避効果は長時間持続するものの、家畜の皮膚に貼り付けて長期間剥がれずに維持させることは難しい。
【0017】
特許文献4に記載の忌避成分をロープに含浸させ防虫ネットとして使用する方法は、畜舎など屋内では有効ではあるが、放牧する場合などの野外では害虫から家畜を守ることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2020-011944
【特許文献2】特開2005-281153
【特許文献3】実開平02-082702
【特許文献4】特開2002-220306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、効率的に家畜から害虫を忌避させる材料およびその忌避方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、忌避成分を担持した担体とエマルジョンと組みわせることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明は、(A)忌避成分を担持した担体を含む成分と、(B)エマルジョンを含む成分とを含んでいる忌避組成物、および、該忌避組成物を用いることを特徴とする害虫の忌避方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前記した忌避組成物を家畜等の対象物に塗布することにより、長時間剥がれることなく、家畜に対しての害虫の忌避効果が長時間持続するため、効果的に害虫を忌避することができ、例えば牛白血病であれば、害虫の忌避による感染の伝播を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の忌避組成物は、忌避成分を担持した担体とエマルジョンとを含んでいる忌避組成物である。以下、各成分について説明する。
【0024】
本発明で用いられる忌避成分は、害虫を忌避させる成分であれば、特に制限されず、天然物、または、合成物のいずれでもよいが、安全性の高い植物由来の天然物であることが好ましい。
【0025】
前記天然物としては、植物由来の天然精油および該天然精油から抽出された有効成分が好適に用いられる。
【0026】
前記天然精油としては、植物由来のハッカ油、ペパーミント油、タイム油、バジル油、バルサムモミ油、ティーツリー油、オレンジ油、カシア油、グレープフルーツ油、クローブ油、シダーウッド油、シトロネラ油、シナモン油、シナモンリーフ油、ゼラニウム油、ヒバ油、ピメント油、フェンネル油、ベニーローヤル油、ベルガモット油、ラベンダー油、ルー油、レモングラス油、桂皮油、ジャスミン油、ゲラニオール油、カンファー油、ヒノキ油、セージ油、トウヒ油、ザクロ油、ローズ油、テレピン油、ベルガモット油、マンダリン油、マツ油、ショウブ油、ラベンダー油、ベイ油、レモン油、月桃油などが挙げられる。
【0027】
また、前記天然精油から抽出された有効成分としては、メントール、チモール、メントン、シネオール、シトラル、シトロネラ、リナロール、ボルネオール、カンファー、スピラントール、ピネン、テルペン、リモネンなどが挙げられる。
【0028】
本発明において、これら天然精油および該天然精油から抽出された有効成分は、そのまま用いてもよく、またこれらを溶剤と混合または溶解させて用いることもできる。なお、溶剤は水性、油性どちらでもよい。
【0029】
前記合成物としては、N,N‐ジエチル‐m‐トルアミド、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジクロルベンゼン、ジフェニル類、ペンタクロルフェノール、イソバレルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジ‐n‐プロピルイソシンコメロネート、2‐エチル‐1,3‐ヘキサンジオール、リナロルオキシド、N-オクチルビシクロヘプロテンジカルボキシイミドなどが挙げられる。
【0030】
本発明で用いられる忌避成分は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0031】
本発明で用いられる担体は、前記忌避成分を担持させるものであれば、特に制限されず、公知の担体を用いることができる。このような担体としては、無機化合物、天然高分子、または、合成高分子からなる多孔性物質であることが好ましい。特に細孔を有する前記多孔性物質は、細孔内に前記忌避成分が保持され、その後、忌避成分が細孔から長期間にわたり穏やかに蒸散し、忌避効果が長期間発揮するため好ましい。
【0032】
本発明で用いられる担体のうち、無機化合物としては、セラミックス、ガラス、金属化合物が挙げられ、中でもシリカゲル、シリカエアロゲル、活性炭、石灰、珪藻土、ホワイトカーボン、ゼオライト、ベントナイト、フラー土、タルク、カオリン、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、アルミナ、カルサイト、大理石、軽石、セピオライト、ドロマイトが好ましい。また、これらが細孔を有する多孔性物質であることが好ましい。
【0033】
前記天然高分子としては、パルプ、綿、羊毛、麻、絹、セルロース、アガロース等の多糖類が挙げられる。前記合成高分子としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、レーヨン、メタアクリル酸樹脂が挙げられる。これらも細孔を有する多孔性物質であることが好ましい。
【0034】
前記担体の中でも、細孔を有する多孔質物質である無機化合物が好ましく、中でも、シリカエアロゲルが、特に高い吸油量を持ち、上記忌避成分中での高い分散性を持つ微粒子であり、多くの製品形態や使用方法に対応できるため好ましい。
【0035】
本発明で用いられる担体は、以下の性質を有していることが好ましい。
【0036】
すなわち、前記担体のBET法による比表面積は、350~1000m/gであることが好ましく、400~850m/gであることがよりこの好ましい。
【0037】
また、前記担体のJIS K5101-13-1で測定した吸油量は、200mL/100g以上が好ましく、300mL/100g以上がより好ましく、350mL/100gがさらに好ましく、400mL/100g以上が、特に好ましく。上限は特に限定されるものではないが、強度を考慮すると800mL/100g以下であることが好ましく、700mL/100g以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明において、前記担体に忌避成分を担持させる方法は、特に制限されず、含浸法、吸着法、共沈法、イオン交換法、ポアフィリング法、蒸発乾固法、単純湿潤法、スプレー法等の公知の方法を採用すればよいが、中でも過剰の液状の忌避成分中に担体を浸漬させる含浸法が好適である。この場合、忌避成分が固体であれば、溶剤等に溶解させて液状とすればよい。また、前記担体に忌避成分を担持させる方法において、例えば、振とう、撹拌、遠心力、あるいは超音波による微振動といった機械的作用を持続的に与えてもよい。
【0039】
本発明において、前記した含侵法により忌避成分を担持した担体は、過剰の液状の忌避成分から忌避成分が担持された担体を単離してもよいが、後述する忌避組成物とすることを勘案すると、忌避成分を担持した担体が過剰の液状の忌避成分に含侵されている状態のままとすることが好ましい。
【0040】
本発明で用いられるエマルジョンは、公知のものが特に制限なく使用できるが、中でも、ゴム系高分子を分散質とし、水を主成分とする分散媒として分散させているエマルジョンが好ましい。
【0041】
前記水を主成分とする分散媒は、主成分として水を含むが、水以外に若干量の有機溶媒を含んでもよい。例えば、分散媒はエタノールのような殺菌性のある有機溶媒を0.1~10質量%の割合で含んでいてもよい。
【0042】
前記エマルジョンの分散質であるゴム系高分子としては、例えば、天然ゴムや、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、エチレンゴム、エチレンブタジエンゴム、プロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンゴム、ウレタンゴム、チオコールゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスチレン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、酢酸ビニルゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、ポリエーテルゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等の合成ゴムなどが挙げられる。
【0043】
また、前記ゴム系高分子としては、天然ゴム又は合成ゴムの誘導体を用いることもできる。天然ゴム又は合成ゴムの誘導体としては、例えば、天然ゴム又は合成ゴムを構成するモノマーを互いに共重合させたもの、天然ゴム又は合成ゴムの表面をカルボキシル基、アミノ基、トリメチルシリル基等の反応性機能性官能基で変性させたもの等を挙げることができる。なお、共重合の形態はランダム共重合、交互共重合、周期的共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれかであってもよい。
【0044】
本発明において前記ゴム系高分子の中でも、後述する忌避組成物の乾燥固化・凝固に要する時間がより短くなり、また長時間剥がれにくい点から、天然ゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、及び酢酸ビニルゴムが好ましい。前記ゴム系高分子は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。また、ゴム系高分子の構造は、直鎖状、分枝状、デンドリマー状、網目状、環状等のいずれであってもよい。
【0045】
前記エマルジョンには、ゴム系高分子がエマルジョンの中で安定した粒子を形成するように、アンモニア等の各種安定剤やグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸エステル等の界面活性剤を用いることができる。また、前記エマルジョンには、必要に応じて、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、酸化防止剤、オゾン防止剤等の劣化防止剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与材等の加工助剤、分散剤、泡立て剤、感熱剤(亜鉛アンモニウム錯塩、ポリビニルビニルエーテル等)などを添加してもよい。
【0046】
本発明において、前記エマルジョンの固形分濃度は、特に制限されないが、20~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることがより好ましい。該エマルジョンの固形分濃度を20質量%以上とすることで、乾燥固化・凝固に要する時間がより短くなり、また長時間剥がれにくい傾向にある。一方、該エマルジョンの固形分濃度を90質量%以下とすることで、エマルジョンの粘度の上昇が抑えられる傾向にある。
【0047】
本発明の忌避組成物は、(A)前記忌避成分を担持した担体を含む成分(以下、(A)成分ともいう。)と、(B)前記エマルジョンを含む成分(以下、(B)成分ともいう。)と、を含んだ組成物である。
【0048】
前記(A)成分は、前記忌避成分を担持した担体を含んでいれば、特に制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。また、(B)成分についても、前記エマルジョンを含んでいれば、特に制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の忌避組成物には、作業効率向上を目的として、乾燥固化・凝固に要する時間をより短縮可能とするために、凝集剤を含んでもよい。該凝集剤としては、特に制限されず公知のものが使用でき、例えば、低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸等を用いることができる。これらの凝集剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記凝集剤は、前記した(A)成分、または(B)成分に添加してもよいし、前記した(A)成分と(B)成分を混合したものに添加してもよい。
【0050】
本発明の忌避組成物において、前記した(A)成分と(B)成分の比率は、特に制限されず、(A)成分に含まれる忌避成分を担持した担体と、(B)成分に含まれるエマルジョンとの比率として、エマルジョン100質量部に対して、忌避成分を担持した担体が0.1~100質量部の範囲で選択すればよい。
【0051】
本発明の忌避組成物の製造方法は、特に制限されず、前記(A)成分と、前記(B)成分とを、公知の方法で混合すればよい。例えば、使用前に予め両成分を混合しておいてもよいし、(A)成分と(B)成分とを個別に製造し、これらを使用直前に混合してもよい。さらに、例えば家畜等の忌避させる対象物上で、前記(A)成分と(B)成分を混合してもよい。
【0052】
本発明の忌避組成物は、忌避させる対象物、例えば家畜等に塗布等することにより、害虫を忌避することができる。
【0053】
忌避させる対象物に塗布等する方法としては、前記両成分を予め混合した忌避組成物を、忌避させる対象物にスプレー、ローラーまたは手作業で塗布する方法、前記(A)成分および(B)成分を同時にまたは順次重ねてスプレーする方法、前記(A)成分および(B)成分を同時にまたは順次重ねてローラーにより塗り広げる方法、前記(A)成分および(B)成分のいずれか一方をローラーで塗り広げ、もう一方をスプレーする方法等が挙げられる。
【0054】
中でも、前記(A)成分および(B)成分を同時にまたは順次塗布する方法が好ましく、さらに前記(A)成分および(B)成分のいずれか一方をスプレーにより噴霧する方法がより好ましい。
【実施例0055】
実施例及び比較例において、忌避組成物の調製に用いた原料、並びに評価方法は以下のとおりである。なお、以下で具体的に忌避組成物の調製に用いた原料、並びに評価方法を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0056】
<原料>
(A)忌避成分を担持した担体を含む成分
忌避成分:ハッカ油:健栄製薬株式会社製(l-メントール30%以上)
担体:シリカエアロゲル(比表面積600m/g:、吸油量:500mL/100g)
(B)エマルジョンを含む成分
天然ゴムエマルジョン:株式会社レジテックス製レジテックスULACOL-3(固形分濃度:50質量%、粘度:50mPa・s、分散媒:水)
【0057】
<評価方法>
以下の実施例及び比較例において、忌避組成物から蒸散する忌避成分の定量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により、下記の装置および条件を採用して行った。
(GCに係る装置および条件)
・GC機種名:Agilent Technologies社製
「Agilent Technologies 7890B」
・GCカラム名:Agilent Technologies社製「DB-1MS」
(30mm×0.25mm I.D. 膜厚0.25μm)
・GC条件:
注入法:スプリット(スプリット比 1:50)
注入量:1mL
注入温度:200℃
カラム温度:50℃で1分→20℃/分で200℃まで加熱した後、200℃に2分維持
流速:3mL/分
【0058】
<実施例1>
ハッカ油:97.8質量部をセパラブルフラスコ中に加え、前記ハッカ油を高粘度用スリーワンモーターに取り付けた攪拌羽根を用いて、25℃、回転数210~220rpmで攪拌しながら、少しずつシリカエアロゲル:2.2質量部を加え、15分間攪拌することで、前記シリカエアロゲルをハッカ油中に完全に分散させ、(A)忌避成分を担持した担体を含む成分を得た。
【0059】
次いで、100mL三角フラスコに、(B)エマルジョンを含む成分:50質量部、および、前記(A)忌避成分を担持した担体を含む成分:50質量部を、この順で順次入れて、忌避組成物を調製した。
【0060】
評価は、ハッカ油中の有効成分であるl-メントールの蒸散の経時変化で評価した。まず、忌避組成物を調整後、素早く1.0mLガスタイトシリンジで、100mL三角フラスコ中のガスを1.0mL抜きとり、GCで分析を行った(この結果を経過時間0時間とした)。なお、濃度はl-メントール標準物質の検量線から算出した。次いで、前記忌避組成物を調整した100mL三角フラスコを野外に開放した状態で静置して、忌避組成物から蒸散するガス中のl-メントール量の経時変化を分析した。その結果を表1に示す。
【0061】
<比較例1>
(A)忌避成分を担持した担体を含む成分の代わりに、ハッカ油:50質量部を用いた以外は、実施例と同様の操作を行い、同様の分析を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から明らかなように本発明の忌避組成物は、忌避成分が長時間継続して蒸散されているおり、結果として家畜等の対象物に対しての害虫の忌避効果が長時間持続することがわかる。