(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057988
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】麺皮類用生地、それを用いた麺皮類の製造方法、春巻皮の製造方法、及び春巻の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20220404BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20220404BHJP
【FI】
A23L7/109 D
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166533
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 肇
(72)【発明者】
【氏名】秋草 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 真彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
(72)【発明者】
【氏名】杉元 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】磯野 瑶子
【テーマコード(参考)】
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LE04
4B036LF12
4B036LH11
4B036LH13
4B036LP22
4B046LA09
4B046LB20
4B046LC01
4B046LE11
4B046LG11
4B046LG15
4B046LG26
4B046LG29
4B046LQ03
(57)【要約】
【課題】加熱調理後に時間が経過しても、経時的な食感低下が抑制され、ヒキが無く且つパリパリとした良好な食感を呈する麺皮類を提供すること。
【解決手段】本発明の麺皮類用生地は、穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部、及び固形分の糖組成において4糖以上が50%以上である糖組成物が5~20質量部配合されている。本発明の麺皮類の製造方法は、前記麺皮類用生地を調製する工程を有しており、該生地のpHを7.0~9.0の範囲に調整することが好ましい。また、穀粉類としてデュラム小麦粉が配合されていることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部、及び糖組成物が5~20質量部配合されており、
前記糖組成物の固形分の糖組成において、4糖以上が50%以上である、麺皮類用生地。
【請求項2】
穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部、及び糖組成物が5~20質量部配合された生地を調製する工程を有し、
前記糖組成物の固形分の糖組成において、4糖以上が50%以上である、麺皮類の製造方法。
【請求項3】
前記生地のpHを7.0~9.0の範囲に調整する、請求項2に記載の麺皮類の製造方法。
【請求項4】
前記穀粉類としてデュラム小麦粉が配合されている、請求項2又は3に記載の麺皮類の製造方法。
【請求項5】
前記穀粉類100質量部に対し、デュラム小麦粉が5質量部以上配合されている、請求項4に記載の麺皮類の製造方法。
【請求項6】
請求項2~5の何れか1項に記載の麺皮類の製造方法を用いて、春巻皮を製造する、春巻皮の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の春巻皮を用いる、春巻の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺皮類用生地、それを用いた麺皮類の製造方法、春巻皮の製造方法、及び春巻の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
春巻皮等の麺皮類の食感を改善する観点から、麺皮類の配合やその製造方法について種々の検討がされている。例えば、特許文献1には、春巻皮の原料に油脂を所定量用いることが記載されており、特許文献2には、融点が60~80度の高融点油脂を所定量用いることが記載されている。また、特許文献3には、春巻皮の生地に重合度2~50の糖類及び/又は重合度2~50の還元糖類を用いることが記載されている。さらに、本出願人は先に、春巻皮用生地のpHを2段階で調整する工程を含む春巻皮の製造方法を提案している(特許文献4)。
【0003】
一方、麺や麺皮類の原料に、デュラム小麦粉を用いることが知られている。例えば、特許文献5には、麺皮類の原料としてデュラム小麦粉を配合することが記載されている。特許文献5によれば、粘弾性やモチモチとした食感を有する麺や麺皮類が得られる。
【0004】
春巻皮等の麺皮類は、加熱調理直後は、パリパリとした食感を呈するが、加熱調理後に放置しておくと、食感にゴム様のヒキが生じ、パリパリとした食感が低下するという問題があった。特に、スーパーマーケット等の店舗で販売される持ち帰り用惣菜に用いられる麺皮類は、喫食されるまでに時間を要するので、食感の経時劣化が少ないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-186437号公報
【特許文献2】特開平8-289767号公報
【特許文献3】特開平9-28358号公報
【特許文献4】特開2009-44986号公報
【特許文献5】特開2017-200444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、加熱調理後に時間が経過しても、経時的な食感低下が抑制され、ヒキが無く且つパリパリとした良好な食感を呈する麺皮類を製造可能な技術を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部、及び糖組成物が5~20質量部配合されており、前記糖組成物の固形分の糖組成において、4糖以上が50%以上である、麺皮類用生地を提供するものである。
【0008】
また本発明は、穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部、及び糖組成物が5~20質量部配合された生地を調製する工程を有し、前記糖組成物の固形分の糖組成において、4糖以上が50%以上である、麺皮類の製造方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、前記麺皮類の製造方法を用いて、春巻皮を製造する、春巻皮の製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、前記春巻皮を用いる、春巻の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱調理後に時間が経過しても、経時的な食感低下が抑制され、ヒキが無く且つパリパリとした良好な食感を呈する麺皮類を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の麺皮類用生地は、穀粉類が配合されている。「穀粉類」とは、穀粉及び澱粉の総称であり、一般的な麺皮類の主原料として通常用いられる穀粉類を特に制限なく用いることができる。穀粉としては例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム小麦粉、全粒粉、ふすま等の小麦粉の他、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉等が挙げられる。澱粉としては例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉;前記各種澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。本発明では、これらの穀粉類の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。穀粉類は、生地原料の主体を成すものであり、通常、全生地原料の80質量%以上を占める。
【0013】
後述するパリパリ感をより持続させる観点から、本発明の麺皮類用生地は、穀粉類としてデュラム小麦粉が配合されていることが好ましい。デュラム小麦粉の配合量は、生地調製に用いる穀粉類100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上であり、また好ましくは95質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
【0014】
本発明の麺皮類用生地は、融点が40~80℃である油脂が配合されている。前記油脂は常温(25℃)で固体の油脂であり、該油脂の融点は、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃である。油脂の融点が40℃未満であると、良好なパリパリ感が得られない虞があり、油脂の融点が80℃超であると、喫食時に異物感を感じたりする虞がある。油脂の融点は、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2.2.4.2(1996)1996年版」に準じて測定することができる。
【0015】
前記油脂としては、食用に使用可能なものを特に制限なく使用することができる。前記油脂としては、例えば、パーム油、硬化パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂等の植物油脂;牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油、等の動物油脂;各種動植物油脂に水素添加、分別、エステル交換などの処理を施した加工油脂等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら油脂の中でも、特に、パーム油、硬化パーム油、菜種油、大豆油、豚脂及びその加工油脂は、後述する効果に特に優れる点で好ましい。
【0016】
油脂の形態は特に制限されないが、常温(25℃)において粉末状であることが好ましい。粉末状であって、前述した融点を有する油脂としては、例えば、ユニショートK(精製パーム油極度硬化油、融点58℃、不二製油株式会社製)、スプレーファットPM(硬化パーム油、融点59℃、理研ビタミン株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明の麺皮類用生地は、穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部配合されている。穀粉類100質量部に対する前記油脂の配合量が5質量部未満では、これを使用する意義に乏しく、逆に前記油脂の配合量が多すぎると、パリパリ感の持続性が低下する虞がある。この点を考慮すると、前記麺皮類用生地における、融点が40~80℃である油脂の配合量は、穀粉類100質量部に対して、好ましくは5~15質量部、より好ましくは5~10質量部である。
【0018】
本発明の麺皮類用生地は、固形分の糖組成において4糖以上が50%以上である糖組成物(以下、「高重合糖組成物」ともいう)が配合されている。「4糖以上」とは、単糖の結合数(重合度)が4以上の糖又は糖アルコールである。前記高重合糖組成物としては、重合度が4以上である糖や糖アルコール等の糖類を含有する組成物を用いることができる。前記高重合糖組成物は、固形分の糖組成において4糖以上が好ましくは55%以上、より好ましくは65%以上である。前記固形分の糖組成は、糖組成物の標準的な糖組成である。
このような高重合糖組成物に含まれる4糖以上の糖としては、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、乳化オリゴ糖等が挙げられる。また、高重合糖組成物に含まれる4糖以上の糖アルコールとしては、マルトテトライトール、マルトペンタイトール、マルトヘキサイトール、イソマルトテトライトール等が挙げられる。また、このような糖や糖アルコール等の糖類を含む高重合糖組成物として、水飴や還元水飴等の還元澱粉加水分解物を用いることができる。高重合糖組成物としては、還元水飴を用いることが好ましい。
また、糖組成物のDE(Dextrose Equivalent)は10~40であることが好ましく、10~35であることがより好ましい。
【0019】
本発明の麺皮類用生地は、穀粉類100質量部に対し、前記高重合糖組成物が5~20質量部配合されている。穀粉類100質量部に対する前記糖組成物の配合量が5質量部未満では、これを使用する意義に乏しく、逆に前記糖組成物の配合量が多すぎると、パリパリ感の持続性が低下する虞がある。また、前記高重合糖組成物を上述した範囲で配合すると、生地のpHがアルカリ側に傾いた場合に、これに起因するえぐ味を抑制することができる。この点を考慮すると、前記麺皮類用生地における、前記糖組成物の配合量は、穀粉類100質量部に対して、好ましくは10~20質量部、より好ましくは15~20質量部である。
【0020】
本発明の麺皮類用生地は、上述した高重合糖組成物以外に、他の糖類や他の糖組成物が配合されていてもよい。他の糖類としては、重合度が3以下である糖や糖アルコール等の低重合糖類が挙げられ、他の糖組成物としては、該低重合糖類を含む組成物が挙げられる。
本発明の麺皮類用生地に、他の糖類及び他の糖組成物の一方又は双方を配合する場合、当該麺皮類用生地に使用される全糖組成物の合計質量を100%としたとき、他の糖組成物の合計使用量は、50%未満であることが好ましい。
【0021】
本発明の麺皮類用生地は、餃子、焼売、春巻、ワンタンの皮等の麺皮類に好適に用いることができ、特に春巻皮に好適に用いることができる。前記麺皮類用生地は、上述した範囲の配合量で、融点が40~80℃である油脂、及び高重合糖組成物が配合されている。斯かる構成により、前記麺皮類用生地を用いて得られた麺皮類によれば、加熱調理後に時間が経過しても、経時的な食感の低下が抑制され、ヒキが無く且つパリパリとした良好な食感が得られる。このような効果は、所定の融点を有する油脂と、所定の重合度を有する糖類とを、それぞれ所定の範囲で組み合わせて含有することによって奏される。例えば、油脂の融点、糖類の重合度、並びに油脂及び糖類の各配合量について、上述した範囲を外れると、ヒキの無さと、良好なパリパリ感とを両立することができなくなる。
【0022】
本発明においては、麺皮類用生地の原料として、穀粉類(主原料)や上述した油脂及び糖組成物に加え、必要に応じ、副原料を用いることができる。副原料としては、麺皮類の製造に通常用いられるもので、且つ本発明の効果を損なわないものを特に制限なく用いることができる。例えば、卵白、卵黄、乳類、小麦蛋白、色素、増粘多糖類(ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン等)、アミノ酸(アラニン、グリシン、リジン等)、食塩、乳化剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
麺皮類用生地における水の配合量(加水量)は、特に制限されず、麺皮類用生地の粘度等に応じて適宜調整することができる。
【0024】
本発明の麺皮類の製造方法は、穀粉類100質量部に対し、融点が40~80℃である油脂が5~20質量部、及び高重合糖組成物が5~20質量部配合された生地、即ち本発明の麺皮類用生地を調製する工程を有する。この工程を以下、生地調製工程ともいう。
前記生地調製工程は常法に従って行うことができ、例えば、穀粉類を主体とする粉原料と、融点が40~80℃である油脂と、高重合糖組成物とを含む生地原料に、水を加えて流動状生地を調製することができる。
【0025】
経時的な食感低下をより抑制する観点から、前記生地調製工程において、前記生地のpHを7.0~9.0の範囲に調整することが好ましい。このpH調整では、pHが7.0未満の酸性側、又はpHが9.0超のアルカリ側である生地に、pH調整剤を加え、該生地のpHを7.0~9.0の範囲に調整する。pH調整剤としては、食品に使用可能な酸性剤及びアルカリ剤を用いることができる。酸性剤としては、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸、及びこれらの塩類等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ剤としては、例えば、かんすい、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、縮合リン酸塩、焼成カルシウム、塩基性アミノ酸等が挙げられる。かんすいとしては、公知のものを用いることができ、具体的には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。これらアルカリ剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸性剤又はアルカリ剤の添加量は、該剤添加後の生地のpHが前記特定範囲内になるように適宜調整すれば良い。
【0026】
本発明の製造方法では、前記生地調製工程において得られた生地を、シート状に焼成することで麺皮類が得られる。生地をシート状に焼成する工程を生地焼成工程ともいう。生地焼成工程は、常法に従って行うことができ、例えば、生地調製工程で調製した流動状生地を、回転する加熱ドラム上に膜状に落下させて焼成することにより、目的とする春巻皮が得られる。焼成後の春巻皮の厚さは特に限定されないが、0.2~2mm程度が好ましい。
【0027】
本発明の製造方法により製造された麺皮類は、加熱調理後に時間が経過しても、経時的な食感低下が抑制され、ヒキが無く且つパリパリとした良好な食感を呈する。前記麺皮類は、加熱調理前に冷蔵又は冷凍保存されてもよい。例えば、麺皮類が春巻皮である場合、該春巻皮で具材を包み込んだ春巻を得た後、該春巻を油ちょう等の加熱調理をせずに冷蔵又は冷凍保存してもよく、加熱調理してから冷蔵又は冷凍保存してもよい。加熱調理せずに冷蔵又は冷凍保存した春巻は、加熱調理してから食に供される。また、加熱調理してから冷蔵又は冷凍保存した春巻きは、再度加熱調理してから食に供してもよく、電子レンジ等を用いてマイクロ波加熱処理してから食に供してもよい。
【実施例0028】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0029】
〔実施例1~22及び比較例1~7〕
下記(基本配合)に加えてさらに下記表1及び表2に示す各種原料を用い、常法に従ってこれらを混合して流動状生地を調製した。表2に示す糖組成物の配合は、該糖組成物の固形分(質量)を配合量とした。すなわち、水分を含む糖組成物は、該糖組成物の配合量から固形分を除いた分を水分として計算し、該水分の量を、基本配合における水の量(加水量)に含めて換算した。
前記流動状生地は、市販の縦軸ミキサー(愛工舎製、商品名「卓上KENMIX」)に全ての原料を投入し、低速で30秒間、続いて中速で1分間混合して、調製した。
生地のpH調整を行う場合は、かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名「かんすい青」)を用いて、焼成前の流動状生地のpH6.1を下記表1及び表2に示すpHに調整した。
これらpH調整済み又はpH未調整の流動状生地を、ドラム型焼成機を用いてそのドラム面上で焼成し、厚さ0.5~0.55mmの帯状の春巻皮を製造した。
【0030】
(基本配合)
・小麦粉(日清製粉株式会社製、商品名「特ナンバーワン」、準強力粉) 100質量部
・食塩 1質量部
・水 120質量部
【0031】
下記表1及び表2中の各原料の詳細は下記のとおりである。糖組成物a及びbは、上述した高重合糖組成物に相当する。
・デュラム小麦粉:商品名「デュエリオ」、日清製粉株式会社製
・油脂a:融点40℃のショートニング(商品名「ヴージョS」、横関油脂工業株式会社製)
・油脂b:融点57℃のパーム油(商品名「パーム極度硬化油脂」、横関油脂工業株式会社製)
・油脂c:融点67℃の菜種油(商品名「菜種極度硬化油脂」、横関油脂工業株式会社製)
・油脂d:融点35℃の菜種油(商品名「HR-35」、横関油脂工業株式会社製)
・糖組成物a:固形分の糖組成において4糖以上が56~76%の還元水飴(商品名「エスイー30」、物産フードサイエンス株式会社製)
・糖組成物b:固形分の糖組成において4糖以上が69~92%の還元水飴(商品名「エスイー100」、物産フードサイエンス株式会社製)
・糖組成物c:固形分の糖組成において4糖以上が11~43%の還元水飴(商品名「エスイー570」、物産フードサイエンス株式会社製)
【0032】
<春巻きの食感評価試験>
各実施例及び比較例の帯状の春巻皮を190mm×190mmにカットし、カットした春巻皮の上に予め調理しておいた具材を載せて該春巻皮を巻き上げて、揚げ用春巻きを各例につき10個製造した。製造した揚げ用春巻きは、-40℃で完全に冷凍した。その後、これら揚げ用春巻きを175~180℃のサラダ油で油ちょうして、4時間常温(25℃)放置した後、食感官能試験に供した。食感官能試験は、10名のパネラーに、春巻きを食した際の春巻皮のパリパリ感及びヒキをそれぞれ下記評価基準に基づき評価してもらうことによって実施した。その評価結果(パネラー10名の平均点)を下記表1及び表2に示す。
【0033】
(パリパリ感の評価基準)
5点:油ちょう直後と同等のパリパリ感があり、非常に良好。
4点:パリパリ感がかなりあり、良好。
3点:パリパリ感が多少ある。
2点:ややパリパリ感が無く、やや不良。
1点:パリパリ感が無く、不良。
(ヒキの評価基準)
5点:油ちょう直後と同等でヒキが無く、非常に良好。
4点:ヒキが少なく、良好。
3点:ヒキが多少ある。
2点:ヒキがやや強く、やや不良。
1点:ヒキが強く、不良。
【0034】
【0035】
【0036】
実施例1~5は、糖組成物aを用いて生地を調製した例であって、表1に示す油脂a~cをそれぞれ用いたものである。実施例6~8は、油脂b及び糖組成物bを用いて生地を調製した例である。実施例1~8では、生地のpH調整は行っていない。実施例9~12は、油脂b及び糖組成物aを用いて生地を調製した例であって、生地のpHを表1に示すとおり調整したものである。実施例13は、油脂b及び糖組成物bを用いて、且つ生地のpHを8.8に調整した例である。実施例14~18は、油脂b及び糖組成物aを用いて生地を調製した例であって、表2に示す配合量のデュラム小麦粉を用いたものである。実施例19は、油脂a及び糖組成物aを用いて生地を調製した例であって、表2に示す配合量のデュラム小麦粉を用いたものである。実施例20~22は、油脂b及び糖組成物aを用いて、且つ表2に示す配合量のデュラム小麦粉を用いて生地を調製した例であって、糖組成物aの配合量及び生地のpHそれぞれを表2に示すとおり調整したものである。
【0037】
実施例1~8と、比較例1との対比から明らかなように、良好なパリパリ感とヒキの無い食感を得る観点から、融点が40~80℃である油脂、及び高重合糖組成物の併用が有効であることが示された。また、実施例1~8と、比較例2との対比から明らかなように、融点が40℃未満である油脂よりも、融点が40~80℃である油脂の方が良好なパリパリ感を呈することが示された。また、実施例1~8と、比較例7との対比から明らかなように、固形分の糖組成物において4糖以上が50%未満である糖組成物よりも、該糖組成物において4糖以上が50%以上である高重合糖組成物の方が、良好なパリパリ感とヒキの無さとの両立の点で有効であることが示された。また、実施例1~8と、比較例3~4との対比から明らかなように、融点が40~80℃である油脂、及び高重合糖組成物の各配合量が所定の範囲内であると、良好なパリパリ感とヒキの無さとの両立の点で有効であることが示された。また、実施例9~22の結果から明らかなように、高重合糖組成物の配合量を所定の範囲内とすること、生地のpHを7.0~9.0に調整すること、デュラム小麦粉を用いること、またはこれらの併用によって、パリパリ感があり、且つヒキの無い食感をより向上させることが示された。
さらに、比較例5の春巻きは、生地のpHがアルカリ側に傾いたことに起因するえぐ味が感じられたが、高重合糖組成物を配合した実施例9~13及び実施例20~22の春巻きは、生地のpHがアルカリ側に傾いたにも拘わらず、えぐ味が殆ど感じられなかった。