(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058321
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】多芯ケーブル及び信号伝送路
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A61B1/00 680
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000820
(22)【出願日】2022-01-06
(62)【分割の表示】P 2020166007の分割
【原出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 光樹
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 和範
(72)【発明者】
【氏名】滝 毅義
(72)【発明者】
【氏名】清原 秀利
(72)【発明者】
【氏名】木村 正樹
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161FF45
4C161JJ01
4C161JJ06
4C161LL02
4C161NN03
(57)【要約】
【課題】端末処理を容易に行うことができる多芯ケーブル、及びその多芯ケーブルを備えた信号伝送路を提供する。
【解決手段】多芯ケーブル5は、互いに平行に配置された第1乃至第4の同軸線51~54と、第1乃至第4の同軸線51~54を一括して被覆する合成樹脂製の被覆材50とを備える。第1乃至第4の同軸線51~54は、中心導体61と、中心導体61の外周を覆う絶縁体62と、絶縁体62の外周を覆う金属製の外部導体63と、をそれぞれ有している。被覆材50は、第1乃至第4の同軸線51~54がそれぞれの長手方向に対して垂直な方向に沿って一列に並ぶように、第1乃至第4の同軸線51~54を保持している。第1乃至第4の同軸線51~54は、それぞれの外部導体63の少なくとも一部が被覆材50に接している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された複数の同軸線と、前記複数の同軸線を一括して被覆する合成樹脂製の被覆材とを備え、
前記複数の同軸線のそれぞれは、中心導体と、前記中心導体の外周を覆う絶縁体と、前記絶縁体の外周面に複数の素線を横巻して構成される金属製の外部導体とを有し、
前記複数の同軸線は、それぞれの長手方向に対して垂直な方向に沿って一列に並び、
前記被覆材は、隣接する前記複数の素線の間に入り込んでいると共に、隣接する前記複数の同軸線の間に入り込んでおり、
前記複数の同軸線の長手方向に対して垂直な断面において、前記外部導体の外周の少なくとも一部と前記被覆材との間に隙間が形成されている、
多芯ケーブル。
【請求項2】
前記隙間は、隣接する前記同軸線の前記外部導体と前記被覆材との間に形成されている、
請求項1に記載の多芯ケーブル。
【請求項3】
前記隙間は、隣接する前記素線と前記被覆材との間に形成されている、
請求項1に記載の多芯ケーブル。
【請求項4】
前記複数の同軸線は、前記被覆材に被覆された部分において、それぞれの外部導体の少なくとも一部が互いに接触している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項5】
前記被覆材は、その外表面のうち前記長手方向及び前記複数の同軸線の並び方向に対して垂直な方向の一方の面に、表裏を示す標示部が設けられている、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項6】
前記標示部は、前記複数の同軸線の間に対応する位置に前記長手方向に沿って形成された溝である、
請求項5に記載の多芯ケーブル。
【請求項7】
前記被覆材は、前記複数の同軸線の並び方向の端部に、前記長手方向に沿って切り欠きが形成されている、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項8】
前記被覆材は、外力が作用しない自然状態において、前記複数の同軸線の長手方向に対して垂直な断面における形状が円弧状である、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の多芯ケーブル。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の多芯ケーブルと、前記複数の同軸線の前記中心導体がそれぞれ接続されるパッドを有する複数の配線が形成された基板とを備える、
信号伝送路。
【請求項10】
前記複数の同軸線の並び方向における前記中心導体のピッチと前記基板における前記パッドのピッチとが等しい、
請求項9に記載の信号伝送路。
【請求項11】
断面が円形の挿入管と、前記挿入管内に収容された断面が円形のチューブとを有し、
前記多芯ケーブルが前記挿入管の内周面と前記チューブの外周面との間に配置される、
請求項9又は10に記載の信号伝送路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の同軸線を有する多芯ケーブル、及びその多芯ケーブルと基板とを備えた信号伝送路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば内視鏡システムにおいて、被検者の体内に挿入されるカメラヘッドと、被検者の体外に配置されてカメラヘッドから出力される画像信号を処理する信号処理回路等を備えた本体装置とを接続する集合ケーブルとして、フラットケーブルが用いられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のフラットケーブルは、複数の同軸線を略平行に一列に配列してなるフラットケーブルコアと、フラットケーブルコアの外周に合成樹脂を略全面被覆して形成された被覆材としてのシース層とを備えている。シース層は、合成樹脂の押出成形によって扁平な管状に形成されており、複数の同軸線を拘束する拘束層としての機能を備えている。同軸線は、中心導体と、中心導体の外周に設けられた内側絶縁層と、内側絶縁層の外周に設けられた外部導体と、外部導体の外周に設けられた外側絶縁層であるジャケットとを有している。フラットケーブルの端部では、同軸線がシース層から導出され、同軸線の中心導体がプリント配線板の接続端子に接続される。また、外部導体も個別または一括で接続端子に接続されることが多い。
【0004】
また、複数の同軸線を並列してなるフラットケーブルとしては、特許文献2に記載されたものがある。このフラットケーブルは、複数の同軸線を樹脂からなる共通外被で一括して被覆したものであり、それぞれの同軸線は、撚り線で形成された中心導体と、中心導体の外周を囲う絶縁体と、この絶縁体の外周を囲う横巻された外部導体と、外部導体を囲う樹脂からなる外被とを有している。共通外被は、加熱された樹脂を押し出し成形機によって押し出して成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-97773号公報
【特許文献2】特開2009-211855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたフラットケーブルは、各同軸線のジャケットとシース層とが線状に接触しており、この接触部分におけるシース層の拘束力が弱いと、シース層と同軸線とが分離してシース層の内部での複数の同軸線の配置が乱れてしまう。また、この接触部分におけるシース層の拘束力が強いと、フラットケーブルの端末処理においてシース層の端部を除去して同軸線を露出させる作業が難しくなってしまう。また、特許文献2に記載されたフラットケーブルでも同様に、共通外被を押し出し成形した際に共通外被と各同軸線の外被とが溶着すると、フラットケーブルの長手方向の端部における共通外被を除去して同軸線を露出させる作業が困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、端末処理を容易に行うことができる多芯ケーブル、及びその多芯ケーブルを備えた信号伝送路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、互いに平行に配置された複数の同軸線と、前記複数の同軸線を一括して被覆する合成樹脂製の被覆材とを備え、前記複数の同軸線のそれぞれは、中心導体と、前記中心導体の外周を覆う絶縁体と、前記絶縁体の外周を覆う金属製の外部導体とを有し、前記被覆材は、前記複数の同軸線がそれぞれの長手方向に対して垂直な方向に沿って一列に並ぶように前記複数の同軸線を保持しており、前記複数の同軸線のそれぞれの前記外部導体の少なくとも一部が前記被覆材に接している、多芯ケーブルを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の多芯ケーブルと、前記複数の同軸線の前記中心導体がそれぞれ接続されるパッドを有する複数の配線が形成された基板とを備え、前記複数の同軸線の並び方向における前記中心導体のピッチと前記基板における前記パッドのピッチとが等しい、信号伝送路を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る多芯ケーブル及び信号伝送路によれば、端末処理を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る多芯ケーブル及び信号伝送路を備えた内視鏡システムの概略の構成例を示す模式図である。
【
図2】(a)は、カメラヘッドの先端面を示す端面図である。(b)は、(a)のA-A線でカメラヘッドの内部の構成例を示す断面図である。
【
図3】(a)は、多芯ケーブルの端部を示す斜視図である。(b)は、(a)のB-B線断面図である。
【
図4】
図1のC-C線における挿入管の断面図である。
【
図5】(a)~(c)は、被覆材から第1乃至第4の同軸線のそれぞれの外部導体、絶縁体、及び中心導体を導出される加工の各工程を示す説明図である。
【
図6】(a)は、基板における多芯ケーブルの接続部を示す平面図である。(b)は、基板上に端末処理された多芯ケーブルが配置された状態を示す説明図である。(c)は、(b)のC-C線で基板を切断した断面図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る多芯ケーブルを示し、(a)は長手方向の端部を示す斜視図であり、(b)は円弧状に弾性変形した状態を長手方向に対して垂直な断面で示す断面図である。
【
図8】第3の実施の形態に係る多芯ケーブルの長手方向の端部を示す斜視図である。
【
図9】第4の実施の形態に係る多芯ケーブルを示し、(a)は長手方向の端部を示す斜視図であり、(b)は長手方向に対して垂直な断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多芯ケーブル及び信号伝送路を備えた内視鏡システムの概略の構成例を示す模式図である。この内視鏡システム1は、内視鏡2と、内視鏡2によって得られた画像情報を処理する画像処理装置11と、画像処理装置11によって処理された画像を画面121に表示する表示装置12と、フットスイッチ131の操作に応じて生理食塩水等の液体を吐出する液体供給装置13とを備えている。
【0013】
内視鏡2は、内視鏡技師によって操作される操作部21と、操作部21から延びる挿入管22と、挿入管22の先端に取り付けられたカメラヘッド3とを有している。操作部21は、画像処理装置11と通信ケーブル14により接続され、かつ液体供給装置13とホース15により接続されている。カメラヘッド3は、挿入管22の一部と共に被検者の体内に挿入される。挿入管22の長さは、例えば1~4mである。
【0014】
図2(a)は、カメラヘッド3の先端面を示す端面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA-A線でカメラヘッド3の内部の構成例を示す断面図である。カメラヘッド3は、硬質な樹脂からなる外筒体31と、外筒体31の先端面を閉塞するカバー体32と、撮像部33とを有して構成されている。外筒体31及び挿入管22には、液体供給装置14から供給される液体を撮像部33の撮像対象部位に導くチューブ23及び後述する信号伝送路10が収容されている。
【0015】
カバー体32には、撮像部33が嵌合される第1の貫通孔321、及びチューブ23の先端部が嵌合される第2の貫通孔322が形成されている。また、カバー体32には、撮像対象部位を照射するための照射光を発する照射窓323が設けられており、挿入管22に収容された光ファイバ(後述)によって導かれた光が照射窓323から照射される。
【0016】
撮像部33は、金属製の円筒体331と、円筒体331の一方の端部に固定された透光性の窓332と、円筒体331の一方の端部に固定された撮像素子333と、窓332と撮像素子333との間に配置された複数のレンズ334とを有している。撮像素子333は、例えばCCD(charge-coupled device)イメージセンサやCMOSイメージセンサである。撮像部33は、撮像素子333に結像した画像の情報を電気信号に変換して出力する。
【0017】
撮像部33が出力する電気信号は、内視鏡2の信号伝送路10により、操作部21を経て画像処理装置11に送られる。信号伝送路10は、外筒体31に収容された基板4と、一端部が基板4に接続され、挿入管22に収容された多芯ケーブル5とを備えている。信号伝送路10は、撮像部33が出力する電気信号を伝送すると共に撮像素子333に電源を供給する。基板4は、フレキシブル基板(FPC:Flexible printed circuits)やプリント基板(PCB:Printed Circuit Board)であり、絶縁性を有する樹脂製の基材40の表面に銅箔等の導電性金属からなる第1乃至第5の配線41~45が形成されている。また、フレキシブル基板又はプリント基板の配線は、基材40の内層や裏面にも配置される場合もある。
【0018】
図3(a)は、多芯ケーブル5の端部を示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)のB-B線断面図である。多芯ケーブル5は、合成樹脂製の被覆材50と、互いに平行に配置された複数の同軸線51~54とを備えたフラットケーブルである。複数の同軸線51~54は、被覆材50によって一括して被覆されている。被覆材50は、複数の同軸線51~54がそれぞれの長手方向に対して垂直な方向に沿って一列に並ぶように、これらの同軸線51~54を保持している。以下、複数の同軸線51~54を、並び順に沿って第1乃至第4の同軸線51~54として説明する。
【0019】
第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれは、中心導体61と、中心導体61の外周を覆う絶縁体62と、絶縁体62の外周を覆う外部導体63とを有している。中心導体61及び外部導体63は、銅等の良導電性金属からなる。本実施の形態では、第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61が複数の素線611を撚り合わせた撚り線であるが、これに限らず単線であってもよい。また、第1乃至第4の同軸線51~54のうちの一部の同軸線の中心導体61が撚り線で、他の一部の同軸線の中心導体61が単線であってもよい。中心導体61の太さは、例えば36AWG(American Wire Gauge)以上、52AWG未満である。
【0020】
第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63は、複数の素線631を絶縁体62の外周面に接するように螺旋状に横巻して構成されている。外部導体63は、複数の素線63ではなく、めっきによる箔構造でもよく、さらに、樹脂からなる帯状体の一方の面に導線体が形成された導電性テープを絶縁体62に縦添え又は横巻して外部導体63を構成してもよい。第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの外部導体63は、その外周面の一部が被覆材50に接している。
【0021】
第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63は、例えば特許文献2に記載された同軸線のように外被に囲われておらず、直接的に被覆材50に覆われている。これにより、第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向に沿った多芯ケーブル5の幅が狭く、また、第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向及び長手方向に対して垂直な方向の多芯ケーブル5の厚みが薄くなっている。多芯ケーブル5の幅は、例えば0.5mm以上2mm未満である。多芯ケーブル5の厚みは、例えば0.25mm以上0.5mm未満である。また、以下、多芯ケーブル5における第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向を幅方向という。同軸線51~54は、外部導体63が例えば特許文献1、2に記載されたもののように外被(ジャケット)に覆われていないことから、半田接続前に外被を剥く手間が省かれる。
【0022】
図3(b)に示すように、第1乃至第4の同軸線51~54の長手方向に対して垂直な多芯ケーブル5の任意の断面において、第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63の外周の少なくとも一部と被覆材50との間には、隙間(空間)が形成されている。
図3(b)では、第1の同軸線51及び第2の同軸線52の外部導体63と被覆材50との間の隙間、第2の同軸線52及び第3の同軸線53の外部導体63と被覆材50との間の隙間、ならびに第3の同軸線53及び第4の同軸線54の外部導体63と被覆材50との間の隙間を、それぞれ符号S1、S2、S3で示している。換言すれば、多芯ケーブル5の幅方向において、第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの外部導体63の間には、被覆材50が介在していない領域が存在している。また、外部導体63と被覆材50との間の隙間は、
図3(b)に吹き出しで示すように、多芯ケーブル5の幅方向における第1乃至第4の同軸線51~54の間以外の部分にも形成されている場合がある。
【0023】
第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61は、多芯ケーブル5の幅方向に等間隔で並んでいる。第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの外部導体63は、多芯ケーブル5の長手方向の少なくとも一部において互いに接触している。これらの外部導体63は同電位であり、撮像素子333の電源のグランドとして、また、撮像素子333が出力する電気信号の基準電位として、電気的に接地されている。
【0024】
被覆材50は、溶融した樹脂を押し出し機によって第1乃至第4の同軸線51~54を囲むように押し出した後、押し出された樹脂を第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63に向かって幅方向及び厚さ方向に押し付けるように絞り加工し、その状態で冷却硬化させることにより形成される。本実施の形態では、被覆材50がフッ素系の樹脂からなり、絞り加工時に溶融樹脂が外部導体63の素線631に接触した部分では、被覆材50の内面に素線631の形状が転写されるが、素線631が被覆材50に固定されることはなく、被覆材50と外部導体63とを容易に分離することが可能である。また、被覆材50の成形時における溶融樹脂と絶縁体62との接触は、外部導体63によって遮蔽される。これにより、被覆材50と絶縁体62とは非接触となっている。被覆材50はフッ素樹脂に限らず、ポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニル、ウレタン等の樹脂でもよい。
【0025】
図4は、
図1のC-C線における挿入管22の断面図である。挿入管22内には、チューブ23と共に多芯ケーブル5が収容されている。また、挿入管22内には、照射窓323から発せられる照射光をカメラヘッド3に導く複数の光ファイバ80、及びこれらの光ファイバ80を束ねて収容する結束筒81が配置されている。
【0026】
挿入管22及びチューブ23の断面形状は共に円形であり、多芯ケーブル5は挿入管22の内周面22aとチューブ23の外周面23aとの間に配置されている。
図4に示す断面では、多芯ケーブル5の幅方向における被覆材50の両端部が挿入管22の内周面22aに当接すると共に、被覆材50の幅方向中央部がチューブ23の外周面23aに当接し、多芯ケーブル5が円弧状に弾性変形している。なお、多芯ケーブル5が円弧状に変形しやすくなるように、被覆材50における挿入管22の内周面22aとの対向面に、一つ又は複数の切り欠きを設けてもよい。
【0027】
チューブ23の外径と挿入管22の内径との差は、多芯ケーブル5の厚さよりもやや大きい寸法に設定されている。多芯ケーブル5が円弧状に弾性変形することで、チューブ23の外径と挿入管22の内径との差を多芯ケーブル5の厚さよりやや大きい程度に設定しても、挿入管22の内周面22aとチューブ23の外周面23aとの間に多芯ケーブル5を配置することが可能となっている。
【0028】
多芯ケーブル5は、所定の端末処理が施されて基板4に接続される。端末処理では、
図3(a)に示すように、被覆材50から第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの外部導体63、絶縁体62、及び中心導体6を順次導出する加工が行われ、外部導体63及び中心導体61が基板4の後述するパッドに半田付けされる。なお、絶縁体62の色は、誤接続を防ぐため、第1乃至第4の同軸線51~54でそれぞれ異なる色であることが望ましい。次に、
図5を参照し、レーザーを用いてこの加工を行う場合の加工方法について説明する。
【0029】
図5(a)~(c)は、被覆材50から第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの外部導体63、絶縁体62、及び中心導体61を導出される加工の各工程を示す説明図である。
図5(a)は、多芯ケーブル5の長手方向における矢印A1の位置にレーザー光を照射し、被覆材50及び外部導体63を多芯ケーブル5の幅方向に沿って線状に切断した状態を示している。矢印A1の位置よりも多芯ケーブル5の先端側(図面左側)における被覆材50及び外部導体63の一部は、多芯ケーブル5の長手方向に引き抜かれて除去される。なお、それぞれの同軸線51~54は、絶縁体62の色を除いて同じ構造のものであることが、レーザ光照射による被覆カット性の点で望ましい。
【0030】
図5(b)は、多芯ケーブル5の長手方向における矢印A2の位置にレーザー光を照射して第1乃至第4の同軸線51~54の絶縁体62を切断すると共に、多芯ケーブル5の長手方向における矢印A3の位置にレーザー光を照射して被覆材50を切断した状態を示している。
図5(c)は、矢印A2の位置よりも多芯ケーブル5の先端側における絶縁体62、及び矢印A3の位置よりも多芯ケーブル5の先端側における被覆材50を、多芯ケーブル5の長手方向に引き抜いて除去した状態を示している。多芯ケーブル5は、このように端末処理された状態で基板4に接続される。
【0031】
図6(a)は、基板4における多芯ケーブル5の接続部を示す平面図である。基板4には、第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61がそれぞれ電気的に接続される第1乃至第4の配線41~44、及び第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63が一括して電気的に接続される第5の配線45が、基材40の表面に形成されている。ただし、第1乃至第5の配線41~45は、基板4に設けられたスルーホールを介して基板の中間層又は裏面に形成されていてもよい。第1乃至第4の配線41~44は、中心導体61が接続されるパッド411,421,431,441と、これらのパッド411,421,431,441から延びる導電路412,422,432,442とをそれぞれ有している。第5の配線45は、第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63が接続されるパッド451と、パッド451から延びる導電炉452とを有している。基板4の表面には、パッド411,421,431,441が形成された部位を除き、不図示のレジスト膜が形成されている。ただし、レジスト膜はなくてもよい。
【0032】
図6(b)は、基板4上に端末処理された多芯ケーブル5が配置された状態を示している。
図6(c)は、
図6(b)のD-D線で基板4を切断した断面図である。第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61は、第1乃至第4の配線41~44のパッド411,421,431,441にそれぞれ半田71によって接続され、第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63は、第5の配線45のパッド451に半田72によって一括して接続される。
【0033】
多芯ケーブル5の幅方向における第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61のピッチP1(
図6(b)参照)と、同方向におけるパッド411,421,431,441のピッチP2(
図6(a)参照)とはほぼ等しいことが望ましい。ピッチP1は、第1乃至第4の同軸線51~54の各中心導体61のうち多芯ケーブル5の幅方向に隣り合う一対の中心導体61の中心線の間隔である。パッド411,421,431,441は、第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61が多芯ケーブル5の長手方向に沿って互いに平行に引き出された場合に各中心導体61が基板4の厚さ方向に重なる範囲に形成されている。
【0034】
第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63が接続される第5の配線45のパッド451は、多芯ケーブル5の幅方向に長い帯状に形成されている。このパッド451の長さは、多芯ケーブル5の幅と同等であり、被覆材50から多芯ケーブル5の長手方向に沿って引き出された各外部導体63が、互いに平行な状態で基板4の厚さ方向に重なる範囲に形成されている。
【0035】
なお、第1乃至第4の同軸線51~54の中心導体61及び外部導体63の半田付けは、例えばレーザー光を用いたものであってもよく、第1乃至第4の同軸線51~54上の半田を加熱するための平面上の板を瞬間的に熱する機構を持った装置によって行ってもよい。
【0036】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの外部導体63が、第1乃至第4の同軸線51~54を一括して被覆する被覆材50に接しているので、外部導体63と被覆材50とを分離しやすく、多芯ケーブル5の端末処理を容易に行うことができる。また、第1乃至第4の同軸線51~54の長手方向に対して垂直な断面において、外部導体63の外周の少なくとも一部と被覆材50との間に隙間が形成されているので、被覆材50をより分離しやすくなり、多芯ケーブル5の端末処理をさらに容易に行うことが可能となる。
【0037】
また、多芯ケーブル5は、例えば特許文献2に記載された同軸線のように外被に囲われておらず、直接的に被覆材50に覆われているので、多芯ケーブル5を小型軽量化することが可能となり、外被を除去する手間が省けると共に、各中心線導体61の間隔を狭くすることができる。このため、各中心線導体61のピッチP1及びパッド411,421,431,441のピッチP2をより狭くした状態で接続することができる。
【0038】
また、第1乃至第4の同軸線51~54の外部導体63の外周の少なくとも一部と被覆材50との間には隙間が形成されているので、被覆材50を第1乃至第3の同軸線51~54から分離しやすく、分離後の第1乃至第3の同軸線51~54を直線状に保ち易く、ピッチP2が狭い場合でも、基板4との接続がしやすい。
【0039】
またさらに、多芯ケーブル5は、第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向における各中心導体61のピッチP1と、基板4におけるパッド411,421,431,441の並び方向のピッチP2とがほぼ等しいので、各中心導体61とパッド411,421,431,441との位置合わせを容易に行うことができ、これらの半田付けを容易に行うことが可能となる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、
図7(a)及び(b)を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る多芯ケーブル5Aについて説明する。この多芯ケーブル5Aは、被覆材50に多芯ケーブル5Aの表裏を示す標示部が設けられている他は第1の実施の形態に係る多芯ケーブル5と同様であるので、
図7(a)及び(b)において、第1の実施の形態に係る多芯ケーブル5と共通する部材等については、
図3(a)及び(b)に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、後述する第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0041】
図7(a)は、多芯ケーブル5Aの端部を示す斜視図である。
図7(b)は、円弧状に弾性変形した多芯ケーブル5Aをその長手方向に対して垂直なE-E線断面で示す断面図である。
【0042】
多芯ケーブル5Aの被覆材50には、その外表面50aのうち多芯ケーブル5Aの長手方向及び第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向に対して垂直な方向の一方の面50bに、多芯ケーブル5Aの表裏を示す標示部が設けられている。本実施の形態では、一例として、この標示部が多芯ケーブル5Aの長手方向に沿って延びる第1乃至第3の溝501~503によって形成されている。第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向において、第1の溝501は第1の同軸線51と第2の同軸線52との間に、第2の溝502は第2の同軸線52と第3の同軸線53との間に、第3の溝503は第3の同軸線53と第4の同軸線54との間に、それぞれ形成されている。第1乃至第4の同軸線51~54は、例えば被覆材50を押し出し成形する際のダイスの形状によって形成することができる。
【0043】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、多芯ケーブル5Aを基板4に接続する際に、多芯ケーブル5Aの表裏を間違えることなく、基板4との接続が可能となる。また、第1乃至第3の溝501~503が第1乃至第4の同軸線51~54のそれぞれの間に形成されていることにより、溝深さを深くすることができ、例えば多芯ケーブル5Aの幅が狭い場合でも、表裏を間違えることなく基板4との接続が可能となる。またさらに、多芯ケーブル5Aを
図7(b)に示すように円弧状に変形させやすくなり、例えば
図4に示したように多芯ケーブル5Aを挿入管22とチューブ23との間に配置しやすくなる。
【0044】
なお、標示部としては、第1乃至第3の溝501~503に限らず、単一の溝であってもよい。また溝に限らず、例えば塗料を塗布することや、押し出し成形される樹脂の色を一部において変えることにより、標示部を形成してもよい。
【0045】
[第3の実施の形態]
次に、
図8を参照し、本発明の第3の実施の形態に係る多芯ケーブル5Bについて説明する。
図8は、多芯ケーブル5Bの端部を示す斜視図である。多芯ケーブル5Bは、第1乃至第4の同軸線51~54の並び方向の端部おける被覆材50の外表面50aに、多芯ケーブル5Bの長手方向に沿って溝状の切り欠き504が形成されている。この切り欠き504は、例えば多芯ケーブル5Bを基板4に接続する場合に多芯ケーブル5Bの向き(表裏)を示す目印となる。また、多芯ケーブル5Bを手作業によって端末処理する場合には、切り欠き504に刃具の先端を当てて被覆材50を切り開くことにより、端末処理の作業を容易に行うことが可能となる。
【0046】
[第4の実施の形態]
次に、
図9を参照し、本発明の第4の実施の形態に係る多芯ケーブル5Cについて説明する。
図9(a)は、多芯ケーブル5Cの長手方向の端部を示す斜視図であり、
図9(b)は、多芯ケーブル5Cを長手方向に対して垂直なF-F線断面で示す断面図である。第1の実施の形態では、多芯ケーブル5を断面円弧状に弾性変形させて挿入管22とチューブ23との間に配置する場合について説明したが、本実施の形態に係る多芯ケーブル5Cは、外力が作用しない自然状態において、第1乃至第4の同軸線51~54の長手方向に対して垂直な断面における被覆材50の形状が円弧状である。これにより、多芯ケーブル5Cに外力を加えて弾性変形させなくても、例えば
図4に示したように挿入管22とチューブ23との間に多芯ケーブル5Cを容易に配置することができる。
【0047】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0048】
[1]互いに平行に配置された複数の同軸線(51~54)と、前記複数の同軸線(51~54)を一括して被覆する合成樹脂製の被覆材(50)とを備え、前記複数の同軸線(51~54)のそれぞれは、中心導体(61)と、前記中心導体(61)の外周を覆う絶縁体(62)と、前記絶縁体(62)の外周を覆う金属製の外部導体(63)とを有し、
前記被覆材(50)は、前記複数の同軸線(51~54)がそれぞれの長手方向に対して垂直な方向に沿って一列に並ぶように前記複数の同軸線(51~54)を保持しており、前記複数の同軸線(51~54)のそれぞれの前記外部導体(63)の少なくとも一部が前記被覆材(50)に接している、多芯ケーブル(5、5A、5B、5C)。
【0049】
[2]前記複数の同軸線(51~54)の長手方向に対して垂直な断面において、前記外部導体(63)の外周(63)の少なくとも一部と前記被覆材(50)との間に隙間(S1~S3)が形成されている、上記[1]に記載の多芯ケーブル(5、5A、5B、5C)。
【0050】
[3]前記複数の同軸線(51~54)は、前記被覆材(50)に被覆された部分において、それぞれの外部導体(63)の少なくとも一部が互いに接触している、上記[1]又は[2]に記載の多芯ケーブル(5、5A、5B、5C)。
【0051】
[4]前記被覆材(50)は、その外表面(50a)のうち前記長手方向及び前記複数の同軸線(51~54)の並び方向に対して垂直な方向の一方の面(50b)に、表裏を示す標示部(501~503)が設けられている、上記[1]乃至[3]に記載の多芯ケーブル(5A)。
【0052】
[5]前記標示部(501~503)は、前記複数の同軸線(51~54)の間に対応する位置に前記長手方向に沿って形成された溝である、上記[4]に記載の多芯ケーブル(5A)。
【0053】
[6]前記被覆材(50)は、前記複数の同軸線(51~54)の並び方向の端部に、前記長手方向に沿って切り欠き(504)が形成されている、上記[1]乃至[5]の何れか1つに記載の多芯ケーブル(5B)。
【0054】
[7]前記被覆材(50)は、外力が作用しない自然状態において、前記複数の同軸線(51~54)の長手方向に対して垂直な断面における形状が円弧状である、上記[1]乃至[6]の何れか1つに記載の多芯ケーブル(5C)。
【0055】
[8]上記[1]乃至[7]の何れか1つに記載の多芯ケーブル(5、5A、5B、5C)と、前記複数の同軸線(51~54)の前記中心導体(61)がそれぞれ接続されるパッド(411,421,431,441)を有する複数の配線(41,42,43,44)が形成された基板(4)とを備え、前記複数の同軸線(51~54)の並び方向における前記中心導体(61)のピッチ(P1)と前記基板(4)における前記パッド(411,421,431,441)のピッチ(P2)とが等しい、信号伝送路(10)。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0057】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、多芯ケーブル5,5A,5B,5Cが第1乃至第4の同軸線51~54を備えた場合について説明したが、同軸線の数は4本に限らず、例えば2本又は3本でもよく、5本以上であってもよい。また、同軸線以外の電線を、複数の同軸線と共に被覆材50により一括して被覆してもよい。
【0058】
また、多芯ケーブル5,5A,5B,5Cが内視鏡2に用いられる場合には、同軸線の本数が3本乃至6本であることが望ましい。撮像素子333によって撮像される画像情報を伝送するためには、少なくとも3本の同軸線が必要であり、またカメラヘッド3に撮像対象部位を照射するための照射光を発するLED等の光源を配置する場合には、この光源の動作のための同軸線が追加で必要となるためである。
【0059】
また、上記の実施の形態では、チューブ23を生理食塩水等の液体を供給するために用いる場合について説明したが、これに限らず、例えばチューブ23に患部を治療するための鉗子等の治療用の器具を収容してもよい。また、挿入管22内に複数のチューブを配置し、これらのチューブのうちの一つを生理食塩水等の液体を供給するために用い、他のチューブを治療用の器具を収容するために用いてもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態では、多芯ケーブル5を内視鏡2に適用した場合について説明したが、本発明の適用対象はこれに限らず、様々な用途の多芯ケーブルに本発明を適用することができる。例えば、画像診断用カテーテルもしくは血管拡張用のバルーンカテーテルのカテーテルチューブ内に配置される多芯ケーブルに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…信号伝送路
4…基板
40…基材
41~45…第1乃至第5の配線
411,421,431,441…パッド
5,5A,5B,5C…多芯ケーブル
50…被覆材
51~54…第1乃至第4の同軸線
501~503…溝(標示部)
504…切り欠き
61…中心導体
62…絶縁体
63…外部導体