(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058389
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220405BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20220405BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20220405BHJP
【FI】
H04N5/232 930
H04N5/232 290
G06T7/70 B
G03B15/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208149
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2017142766の分割
【原出願日】2017-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】今任 祐基
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構成で高精度にカメラの水平角度を検出する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、所定の被写体を撮影して画像データを得るカメラ11と、画像データに基づく表示画像を、表示面上において段階的に回転させる画像回転部13と、段階的に回転された表示画像の各々について、表示面内の走査線の各々における特定色の画素数に基づいて撮像部の撮影角度の水平方向を判定する計算部18と、を有する。画像回転部は、当該段階的な回転において、第1の回転範囲の始点から第1の初期角度分だけ表示画像を回転させ、続けて所定角度ずつ表示画像を回転させることにより、第1の回転範囲の終点まで表示画像を回転させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の被写体を撮影して画像データを得る撮像部と、
前記画像データに基づく表示画像を、表示面上において段階的に回転させる画像回転部と、
段階的に回転された前記表示画像の各々について、前記表示面内の走査線の各々における特定色の画素数に基づいて前記撮像部の撮影角度の水平方向を判定する判定部と、
を有し、
前記画像回転部は、当該段階的な回転において、第1の回転範囲の始点から第1の初期角度分だけ前記表示画像を回転させ、続けて所定角度ずつ前記表示画像を回転させることにより、前記第1の回転範囲の終点まで前記表示画像を回転させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記判定部は、段階的に回転された前記表示画像の各々について、前記特定色の画素数をカウントしたカウント値を閾値と比較して前記撮像部の撮影角度の水平方向を判定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1の回転範囲における前記表示画像の回転角度の各々において、前記カウント値が前記閾値未満から前記閾値以上に変化する第1の角度及び前記カウント値が前記閾値以上から前記閾値未満に変化する第2の角度を検出し、前記第1の角度及び前記第2の角度に基づいて前記撮像部の撮影角度の水平方向を判定し、
前記画像回転部は、前記判定部が前記第1の回転範囲において前記第1の角度及び前記第2の角度を検出できない場合、第2の回転範囲の始点から第2の初期角度分だけ前記表示画像を回転させ、続けて所定角度ずつ前記表示画像を回転させることにより、前記第2の回転範囲の終点まで前記表示画像を回転させることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラ等の撮像装置では、カメラの実際の取り付け位置と所望の取り付け位置とのずれに応じて、撮像角度及び撮像方向の補正が行われる。例えば、車載カメラを撮像する外部カメラを設け、外部カメラにより撮像された車載カメラの画像に基づいて並進誤差を補正する並進誤差補正手段を有する車載カメラ姿勢補正装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
角度補正処理における角度(例えば、水平角度)の検出は、期待値映像と映像内の対象とを比較してその差分から角度を検出したり、大規模なソフト処理で画像認識を行い、映像内の対象物との関係を算出したりすることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
映像内の対象とのマッチングをとる方法では、距離が遠いとカメラ映像とのずれが大きくなり、マッチングがし辛くなるという問題があった。また、大規模なソフト処理を行う場合、複雑な回路が必要となり、ハード実装に向かないという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で高精度にカメラの水平角度を検出することが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、所定の被写体を撮影して画像データを得る撮像部と、前記画像データに基づく表示画像を、表示面上において段階的に回転させる画像回転部と、段階的に回転された前記表示画像の各々について、前記表示面内の走査線の各々における特定色の画素数に基づいて前記撮像部の撮影角度の水平方向を判定する判定部と、を有し、前記画像回転部は、当該段階的な回転において、第1の回転範囲の始点から第1の初期角度分だけ前記表示画像を回転させ、続けて所定角度ずつ前記表示画像を回転させることにより、前記第1の回転範囲の終点まで前記表示画像を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る撮像装置によれば、簡易な構成で高精度にカメラの水平角度を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】カウント値に基づく水平角度の検出の例を示す図である。
【
図5】水平検出処理の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0011】
図1は、本実施例の撮像装置10の概略構成を示すブロック図である。撮像装置10は、カメラ11と、ADC(Analog Digital Converter)12、回転部13及びカウンタ14からなる画像処理部16と、平均化回路17と、計算部18と、から構成される。撮像装置10は、被写体Xを撮像して得た画像データに基づいて、カメラ11の水平方向の角度の検出(以下、水平検出)を行う。なお、以下の説明では、静止画像及び動画像(映像)を含めて単に「画像」と称する。
【0012】
カメラ11は、例えば自動車等の車両に搭載される車載カメラであり、車両周辺の画像を取得するべく所定の取り付け位置に固定されている。カメラ11は、被写体Xを撮像して得たアナログの画像信号VSをADC12に供給する。
【0013】
被写体Xは、水平検出を行うためにカメラ11の撮像範囲に設置される水平検出用の被写体である。例えば、
図2(a)に示すように水平方向に長い同一色の領域を有する被写体(X1)や、
図2(b)に示すように水平方向に一定の間隔で設けられた同一色の領域を有する被写体(X2)が、被写体Xとして選択される。
【0014】
再び
図1を参照すると、ADC12は、カメラ11から供給されたアナログの画像信号VSをデジタルデータに変換し、画像データVDとして回転部13に供給する。
【0015】
回転部13は、画像データVDに基づく画像を表示平面(図示せず)上に表示させた場合の表示画像を回転させる画像回転部である。回転部13は、計算部18の制御に応じて所定角度ずつ段階的に表示画像を回転させる。
【0016】
カウンタ14は、回転部13が回転させた表示画像について、表示平面上の走査ラインに沿って特定色の画素数をカウントする。カウンタ14は、表示画像の複数の走査ラインの各々について画素数のカウントを行い、走査ライン毎の画素数のうち1フレーム内における最大値をカウント値として取得する。
【0017】
また、カウンタ14は、複数の走査ラインの画素数の系列からノイズ成分を除去するためのフィルタ15を有する。フィルタ15は、例えばローパスフィルタから構成されており、フィルタ15を通過することにより、画素数の急激な変化を示す高周波成分がノイズ成分として除去される。カウンタ14は、ノイズ成分が除去された画素数の系列から、上記の最大値(走査ライン毎の画素数のうち1フレーム内における最大値)をカウント値として取得する。
【0018】
なお、カウンタ14におけるカウントの対象となる特定色の設定は、外部から供給された色設定信号CSに基づいて行う。また、回転部13による所定角度の回転の時間間隔は、カウンタ14が表示画像の1フレーム分のカウントを完了するまでの時間に対応している。以下の説明では、回転部13による所定角度の回転の時間間隔を1フレーム周期と称する。
【0019】
平均化回路17は、カウンタ14から出力されたカウント値の複数フレーム分(例えば、3フレーム分)の平均値を算出する回路である。平均化回路17は、例えば
図3に示すように、遅延回路21、遅延回路22、及び平均算出回路23から構成される。
【0020】
遅延回路21及び遅延回路22は、夫々入力されたカウント値を1フレーム周期分遅延させて出力する遅延回路である。遅延回路21は、例えばカウンタ14からカウント値CV1が出力されたとすると、これを1フレーム周期分遅延させたカウント値CV2を出力し、遅延回路22及び平均算出回路23に供給する。遅延回路22は、カウント値CV2を1フレーム周期分遅延させたカウント値CV3を出力し、平均算出回路23に供給する。平均算出回路23は、3フレーム周期分のカウント値CV1~CV3の平均値を算出し、平均のカウント値CV(以下、単にカウント値CVと称する)として出力する。
【0021】
再び
図1を参照すると、計算部18は、回転部13による回転角度とカウント値CVとに基づいて、カメラ11の水平角度を検出する。
【0022】
計算部18は、例えば
図4に示すように、仮に被写体Xにおける特定色の画素数を水平方向にカウントした場合に想定されるカウント値の80%の値を閾値として、カウント値CVと閾値とを比較する。そして、計算部18は、カウント値CVが閾値未満から閾値以上に変化する角度BA1、及びカウント値CVが閾値以上から閾値未満に変化する角度BA2を検出し、角度BA1及びBA2の平均値を算出することにより、水平角度HAを検出する(すなわち、水平角度HA=(閾値を上回った角度BA1+閾値を下回った角度BA2)/2)。
【0023】
次に、本実施例の撮像装置10における水平検出処理の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
撮像装置10は、水平方向として想定される方向に同一色の領域が延在若しくは一定間隔で存在する被写体Xがカメラ11の撮像範囲内に配置された状態で処理を開始する。
【0025】
まず、カウンタ14は外部から供給された色設定信号CSに基づいて、画素数のカウントの対象となる特定色の設定を行う(ステップS101)。特定色は、被写体Xの色に基づいて指定される。
【0026】
図6(a)及び(b)は、特定色の指定方法を模式的に示す図である。本実施例の撮像装置10では、YCbCr方式に基づいて特定色の指定を行う。
【0027】
まず、
図6(a)に示すように青の色差CbをX方向(横軸)、赤の色差CrをY方向(縦軸)とした色差平面上で、被写体Xの色に基づいて色角度θを指定する。
【0028】
そして、
図6(b)に示すように、指定された色角度θを基準として傾きの範囲及び濃さを決定することにより、特定色の範囲を指定する。例えば、色角度θに応じて色差平面を傾けた平面上において、y方向(図中、GRADとして示す)が傾きの範囲、x方向(図中、DEEPとして示す)が濃さの範囲を示している。例えば、y=ATC_GRAD×x及びy=-ATC_GRAD×xにより、その間の範囲が傾きの範囲として指定される。また、x=dx以上の範囲が指定され、濃さが所定以上である領域(x=dx未満の領域)が範囲から除外される。これにより、
図6(b)に斜線で示す領域が特定色の範囲として指定される。
【0029】
再び
図5を参照すると、計算部18は、回転部13による回転の初期角度及び回転範囲を設定する(ステップS102)。例えば、-3°が初期角度として設定され、-3°から3°までが回転範囲として設定される。
【0030】
回転部13は、計算部18の制御に応じて、画像データVDに基づく表示画像を回転させる(ステップS103)。例えば、回転部13は、最初の回転では初期角度(-3°)分の回転を行い、2度目以降の回転では所定角度(例えば、0.3°)の回転を行う。
【0031】
カウンタ14は、回転部13により回転された表示画像に対し、表示平面の走査ライン方向における特定色の画素数をカウントする。カウンタ14は、表示画像の1フレーム分、すなわち全走査ラインについて走査ライン毎に画素数のカウントを行い、その中の最大値(ノイズ成分を取り除いたうちの最大値)をカウント値として取得する(ステップS104)。
【0032】
計算部18は、カウンタ14から平均化回路17を介してカウント値CVを取得し、カウント値CVと閾値とを比較する(ステップS105)。計算部18は、比較結果をメモリ(図示せず)等の記憶手段に一時的に記憶させる。
【0033】
計算部18は、ステップS102で設定した回転範囲の最後まで表示画像の回転が完了したか否かを判定する(ステップS106)。回転が完了していないと判定すると(ステップS106:No)、ステップS103~S105の処理、すなわち回転部13による表示画像の回転、カウンタ14によるカウント値の取得、及び計算部18によるカウント値と閾値との比較の処理を繰り返す。
【0034】
一方、回転が完了したと判定すると(ステップS106:Yes)、カウント値と閾値との境界部分である2つの角度、すなわち閾値未満から閾値以上に変化した角度BA1及び閾値以上から閾値未満に変化した角度BA2を検出したか否かを判定する(ステップS107)。
【0035】
閾値との境界部分である2つの角度を検出しなかったと判定すると(ステップS107:No)、計算部18は、ステップS102に戻って、初期角度及び回転範囲を再設定する。例えば、初期角度が-3°、回転範囲が-3°~3°で境界部分の角度が検出されなかった場合、計算部18は、初期角度を-5°、回転範囲を-5°~5°に再設定する。再設定後、ステップS103~S107の処理を繰り返す。
【0036】
一方、閾値との境界部分である2つの角度を検出したと判定すると(ステップS107:Yes)、計算部18は、当該境界部分の角度(角度BA1及びBA2)に基づいて水平角度HAを算出し(ステップS108)、処理を終了する。
【0037】
以上のように、本実施例の撮像装置10では、被写体Xを撮影して得た表示画像を段階的に回転させつつ特定色の画素数を走査線方向に沿ってカウントし、カウント値と閾値とを比較してカメラ11の水平方向を検出する。
【0038】
本実施例の撮像装置10によれば、特定色の画素数をカウントするカウンタ14やカウント値と閾値とを比較する計算部18等からなる簡易な構成で、カメラ11の水平方向を検出することができる。
【0039】
また、カウンタ14がフィルタ15を有することにより、瞬間的な環境ノイズが低減された状態でカウント値を取得することができ、精度の高い水平方向の検出を行うことができる。
【0040】
また、色差CbCrの色角度、傾き及び濃さを用いて特定色の設定を行っているため、明るさに関わらず特定色の設定を行うことができ、被写体の環境やカメラの種類に応じた誤差を吸収することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、フィルタ15がローパスフィルタから構成されている場合について説明した。しかし、フィルタ15はノイズ成分を除去することが可能に構成されていれば良く、例えばバンドパスフィルタやハイパスフィルタであっても良い。
【0042】
また、上記実施例では、平均化回路17が遅延回路21、遅延回路22及び平均算出回路23から構成されている場合について説明した。しかし、平均化回路17の構成はこれに限られず、複数フレーム分のカウント値の平均を算出することが可能な構成であれば良い。
【0043】
また、上記実施例では、水平である場合に想定されるカウント値の80%を閾値とし、カウント値CVが閾値を上回った角度と下回った角度との平均を算出することにより水平角度を算出する例について説明した。しかし、閾値の選択及び水平角度の算出方法はこれに限られず、計算部18は、カウント値CVと所定の閾値との比較により水平角度を算出するものであれば良い。
【0044】
また、上記実施例では、初期角度及び回転範囲を設定して回転を行った後、閾値との境界部分である2つの角度(閾値未満から閾値以上に変化した角度及び閾値以上から閾値未満に変化した角度)が検出されたか否かを判定し、検出されなかった場合には再び初期角度及び回転範囲を設定して回転を行う例について説明した。しかし、最初に設定された回転範囲内で閾値との境界部分である2つの角度が検出されなかった場合、回転範囲を再設定することなく、当該角度が検出されるまで当初の回転範囲を超えてさらに回転を行う構成であっても良い。すなわち、閾値との境界部分である2つの角度を検出するまで回転を行うように計算部18が回転部13を制御する構成であれば良い。
【符号の説明】
【0045】
10 撮像装置
11 カメラ
12 ADC
13 回転部
14 カウンタ
15 フィルタ
16 画像処理部
17 平均化回路
18 計算部
21,22 遅延回路
23 平均算出回路