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特開2022-58621電気的nドーパントおよび電子輸送マトリクスを含む有機半導体材料、および該半導体材料を含む電子デバイス
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  • 特開-電気的nドーパントおよび電子輸送マトリクスを含む有機半導体材料、および該半導体材料を含む電子デバイス 図1
  • 特開-電気的nドーパントおよび電子輸送マトリクスを含む有機半導体材料、および該半導体材料を含む電子デバイス 図2
  • 特開-電気的nドーパントおよび電子輸送マトリクスを含む有機半導体材料、および該半導体材料を含む電子デバイス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058621
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】電気的nドーパントおよび電子輸送マトリクスを含む有機半導体材料、および該半導体材料を含む電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220405BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220405BHJP
   C07D 221/18 20060101ALN20220405BHJP
   C07D 251/24 20060101ALN20220405BHJP
   C07D 239/72 20060101ALN20220405BHJP
   C07D 495/04 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
H05B33/22 A
H05B33/14 A
H01L27/32
C07D221/18 CSP
C07D251/24
C07D239/72
C07D495/04 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004426
(22)【出願日】2022-01-14
(62)【分割の表示】P 2017202422の分割
【原出願日】2017-10-19
(31)【優先権主張番号】16195374.0
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カルステン,ローテ
(72)【発明者】
【氏名】ドマゴイ,パヴィチチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェロム,ガニエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィギンタス,ヤンクス
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンソン,キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョンク,キム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部量子効率EQE等の効率の向上、低動作電圧、および長寿命を達成するために、電子デバイスのための、特に発光層および少なくとも2つの電極を備える光デバイスのための有機半導体材料を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの電子輸送マトリクスと、少なくとも1つの電気的nドーパントとを含む有機半導体材料であって、上記電子輸送マトリクスは化学式Iに記載の第1マトリクス化合物を少なくとも1つ含む、有機半導体材料。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子輸送マトリクスと、少なくとも1つの電気的nドーパントとを含む有機半導体材料であって、上記電子輸送マトリクスは化学式Iに記載の第1マトリクス化合物を少なくとも1つ含む、有機半導体材料:
【化1】

、A、A、およびAは独立に、単結合、非置換または置換C~C30アリーレン、および非置換または置換C~C30ヘテロアリーレンから選択され;
は非置換または置換C~C40アリール基および/または非置換または置換C~C40ヘテロアリール基から選択され;
~Rは独立に、置換または非置換C~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり;
式(I)における上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記第三アミノ基の窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、または上記C~C60第三アミノ基の窒素原子はC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基のリン原子はヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから独立に選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基のリン原子はC~C30複素環基を形成する、
(v)C~C22シリル基、
(vi)C~C30アルキル基、
(vii)C~C10アルキルシリル基、
(viii)C~C22アリールシリル基、
(ix)C~C30シクロアルキル基、
(x)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(xi)C~C30アリール基、
(xii)C~C30ヘテロアリール基、
(xiii)C~C20アルコキシ基、
(xiv)C~C30パーフルオロ-ヒドロカルビル基、
(xv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xvi)シアノ基。
【請求項2】
上記電気的nドーパントは、元素金属、金属塩、金属錯体、および有機ラジカルから選択される、請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項3】
上記電気的nドーパントはアルカリ金属塩およびアルカリ金属錯体から選択される、請求項1または2に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
上記電気的nドーパントはレドックスnドーパントである、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【請求項5】
上記レドックスnドーパントは、元素金属、電気的に中性な金属錯体、および/または電気的に中性な有機ラジカルから選択される、請求項4に記載の有機半導体材料。
【請求項6】
上記電気的に中性な金属錯体および/または電気的に中性な有機ラジカルのレドックス電位は、フェロセン/フェロセニウム基準レドックス対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定した場合、-0.5Vよりも負の値である、請求項5に記載の有機半導体材料。
【請求項7】
上記レドックスnドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および遷移金属Ti、V、CrおよびMnから選択される電気陽性元素金属である、請求項5または6に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
上記第1マトリクス化合物は、化学式(Ia)に記載の化合物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機半導体材料:
【化2】

化学式Iaにおいて、
ArはC~C12アリーレンおよびC~C11ヘテロアリーレンから選択され;
~Rは独立に、置換または非置換C6~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり;
Lは単結合、置換もしくは非置換C~C30アリーレン基、または置換もしくは非置換C~C30ヘテロアリーレン基であり;
ETは、非置換C~C40アリールもしくはC~C40ヘテロアリール基、または置換C~C40アリールもしくはC~C40ヘテロアリール基であり;
式(Ia)における上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基のリン原子はヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから独立に選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基のリン原子はC~C30複素環基を形成する、
(v)C~C22シリル基、
(vi)C~C30アルキル基、
(vii)C~C10アルキルシリル基、
(viii)C~C22アリールシリル基、
(ix)C~C30シクロアルキル基、
(x)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(xi)C~C30アリール基、
(xii)C~C30ヘテロアリール基、
(xiii)C~C20アルコキシ基、
(xiv)C~C30パーフルオロ-ヒドロカルビル基、
(xv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xvi)シアノ基。
【請求項9】
上記第1マトリクス化合物は、化学式(Ib)に記載の化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機半導体材料:
【化3】

化学式Ibにおいて、
~X11は独立に、N、C、またはCRであり;
は独立に、水素、重水素、C~C30アルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30アリール基、C~C30ジアリールアミン基、C~C30アルコキシ基、C~C21シリル基、C~C21シリルオキシ基、C~C30アルキルチオール基、C~C30アリールチオール基、ハロゲン、C~C30ハロゲン化ヒドロカルビル基、シアノ基であり;
~Rは独立に、置換または非置換C~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり、
Lは単結合、置換または非置換C~C30アリーレン基、置換または非置換C~C30ヘテロアリーレン基であり、
ETは、非置換C~C40アリールもしくはC~C40ヘテロアリール基、または置換C~C40アリールもしくはC~C40ヘテロアリール基であり;
式(Ib)における上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基のリン原子はヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから独立に選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基のリン原子はC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C22シリル基、
(v)C~C30アルキル基、
(vi)C~C10アルキルシリル基、
(vii)C~C22アリールシリル基、
(viii)C~C30シクロアルキル基、
(ix)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(x)C~C30アリール基、
(xi)C~C30ヘテロアリール基、
(xii)C~C20アルコキシ基、
(xiii)C~C30パーフルオロ‐ヒドロカルビル基、
(xiv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xv)シアノ基。
【請求項10】
上記基ETはC~C30ヘテロアリール基である、請求項8または9に記載の有機半導体材料。
【請求項11】
上記基ETはカルバゾリル基ではないという条件で、上記基ETは少なくとも1つのNを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【請求項12】
第1電極と、第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に配置された、請求項1~11のいずれか1項に記載の有機半導体材料の層とを備える、電子デバイス。
【請求項13】
上記半導体材料の上記層は、電荷注入層、電荷輸送層、または電荷発生層である、請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
上記電子デバイスは、エレクトロルミネッセンス素子である、請求項12または13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載の電子デバイスを備える、表示装置。
【請求項16】
~Rは独立に、置換または非置換C~C18アリール基である、請求項1~11のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、第1電子輸送マトリクス化合物と電気的nドーパントとを含む有機半導体材料、および、該半導体材料を含む電子デバイスに関し、特にエレクトロルミネッセンス素子、特に有機発光ダイオード(OLED)に関する。また、本発明は、電気のデバイスおよび/またはエレクトロルミネッセンス素子を備えるデバイスに関し、特に表示装置に関し、特にOLEDを備える表示装置に関する。
【0002】
[背景技術]
自家発光性デバイスである有機発光ダイオード(OLED)は、広い視野角、優れたコントラスト、迅速な反応、高い明度、優れた駆動電圧特性、および色の再現性を有する。典型的なOLEDはアノード、正孔輸送層HTL、発光層EML、電子輸送層ETL、およびカソードを備え、これらが順に基板上に積層されている。ここで、HTL、EML、およびETLは、有機化合物から形成された薄膜である。
【0003】
電圧がアノードおよびカソードに印加される際、アノードから注入された正孔はHTLを通ってEMLに移動し、カソードから注入された電子はETLを通ってEMLに移動する。正孔および電子は、EMLにおいて再結合し、励起子を発生させる。励起子が励起状態から基底状態に下降する際、光が発せられる。明度/輝度が高い状態での動作電圧を可能な限り低くし、正孔および電子の注入および流れの均衡を保つことを目的として、上述した構造を有するOLEDが優れた効率および/または長寿命を有するように、改良された材料の開発が望まれ続けている。
【0004】
低動作電圧および高電流密度/高輝度を実現するための確立されたアプローチの1つとして、電荷注入輸送層における電気的p型ドーピングおよび/または電気的n型ドーピングが挙げられ、特に、高電荷キャリア濃度のドープされた層を生成するレドックスドーピングが挙げられる。本願の著作者の内の数人は、先の出願であるPCT-KR2015-012551において、嵩高い芳香族基を適切に設計された電子輸送ユニットと組み合わせた新規な電子輸送マトリクス化合物を開発し、その発明の電子輸送マトリクス化合物を、OLEDデバイスにおける電気的にドープされていない層において首尾よく証明した。デバイスのパフォーマンスをさらに向上させるために、本発明は、独創的な電荷輸送化合物をレドックスドープされた半導体材料において適用し、さらに、独創的な電荷輸送化合物を電子デバイスにおいて適用する(例えばOLEDにおける電子輸送層として適用する)。
【0005】
[発明の概要]
本発明の態様は、外部量子効率EQE等の効率の向上、低動作電圧、および長寿命を達成するために、電子デバイスのための、特に発光層および少なくとも2つの電極を備える光デバイスのための有機半導体材料を提供し、特に、トップエミッション型および/またはボトムエミッション型有機発光ダイオード(OLED)中に使用される有機半導体材料を提供する。
【0006】
本発明の他の態様は、半導体材料を含む電子デバイス、特にエレクトロルミネッセンス素子を提供する。本発明のさらなる態様は、エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置を提供する。
本発明のー態様によれば、少なくとも1つの電子輸送マトリクスと少なくとも1つの電気的nドーパントとを含む有機半導体材料が提供され、上記電子輸送マトリクスは化学式Iに記載の第1マトリクス化合物を少なくとも1つ含み:
【0007】
【化1】
【0008】
ここで、
、A、A、およびAは独立に、単結合、非置換または置換C~C30アリーレン、および非置換または置換C~C30ヘテロアリーレンから選択され;
は非置換または置換C~C40アリール基および/または非置換または置換C~C40ヘテロアリール基から選択され;
~Rは独立に置換または非置換C~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり;
式(I)における上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記第三アミノ基の上記窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、または上記C~C60第三アミノ基の上記窒素原子はC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子は、独立に、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子はC~C30複素環基を形成する、
(v)C~C22シリル基、
(vi)C~C30アルキル基、
(vii)C~C10アルキルシリル基、
(viii)C~C22アリールシリル基、
(ix)C~C30シクロアルキル基、
(x)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(xi)C~C30アリール基、
(xii)C~C30ヘテロアリール基、
(xiii)C~C20アルコキシ基、
(xiv)C~C30パーフルオロ-ヒドロカルビル基、
(xv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xvi)シアノ基。
【0009】
本明細書において、「A、A、A、およびAは独立に、単結合から選択される」とは、「A、A、A、およびA」が単結合として選択される場合、「A、A、A、およびA」が一緒となって1つの単結合を形成することを意味する。
【0010】
本明細書において、「A、A、A、およびAは独立に、単結合から選択される」とは、その中の少なくとも2つの直接接続した部分、例えば、「A、A」が単結合として選択される場合、それらの接続した部分が一緒となって1つの単結合を形成することを意味する。
【0011】
本明細書において、「A、A、A、およびAは独立に、単結合から選択される」とは、その中の少なくとも3つの直接接続した部分、例えば、「A、A、A」が単結合として選択される場合、それらの直接接続した部分が一緒となって1つの単結合を形成することを意味する。
【0012】
本明細書において、「置換基において、少なくとも1つの水素は下記に置き換えられる」という記載は、特に断りのない限り、A、A、A、A、およびAに関連し;R~Rに関連し;Arに関連し;Lに関連し;ならびにETに関連する。
【0013】
本明細書において、他に定義されていない場合、「置換された」とは、重水素、C~C12アルキル、およびC~C12アルコキシに置換されたものを指す。
【0014】
本明細書において、他に定義されていない場合、「アルキル基」とは飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。アルキル基はC~C12アルキル基であってもよい。より具体的には、アルキル基はC~C10アルキル基またはC~Cアルキル基であってもよい。例えば、C~Cアルキル基はアルキル鎖において1~4つの炭素を含み、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルから選択されてもよい。
【0015】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、が挙げられる。
【0016】
「シクロアルキル」という用語は、対応するシクロアルカンに含まれる環原子から1つの水素原子を形式的に取り除くことによってシクロアルカンから得られた飽和ヒドロカルビル基を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、アダマントリー基、等が挙げられる。
【0017】
本明細書において、「アリール基」は、対応する芳香族炭化水素に含まれる芳香族環から1つの水素原子を形式的に取り除くことによって生成することができるヒドロカルビル基を指す。芳香族炭化水素とは、少なくとも1つの芳香族環または芳香族環構造を含む炭化水素を指す。芳香族環または芳香族環構造は共有結合型炭素原子の平面環または環構造を指し、平面環または環構造はヒュッケル則を満たす非局在化電子の共役系を含む。アリール基の例としては、フェニラートリル等の単環基、ビフェニリル等の単結合によって結合したより多い芳香族環を有する多環基、およびナフチルまたはフルオレン-2-イル等の縮合環を備える多環基、が挙げられる。
【0018】
同じように、ヘテロアリールとは、少なくとも1つのそのような環を有する化合物における複素環式芳香族環から1つの環状水素を形式的に取り除くことによって得られた基であると理解される。
【0019】
ヘテロシクロアルキルとは、少なくとも1つのそのような環を有する化合物における飽和複素環リングから1つの環状水素を形式的に取り除くことによって得られた基であると理解される。
【0020】
「ヘテロ」という用語は、共有結合型炭素原子によって形成され得る構造中の少なくとも1つの炭素原子が別の多価原子に置き換えられることを指す。好ましくは、ヘテロ原子はB、Si、N、P、O、Sから選択され;より好ましくはN、P、O、Sから選択される。
【0021】
本明細書において、単結合とは直接結合を指す。
【0022】
本発明の文脈において、「異なる」とは化合物が同一の化学構造を有さないことを意味する。
【0023】
「有さない(free of)」、「含まない(does not contain)」、「備えない(does not comprise)」という記載は、蒸着前の化合物に存在し得る不純物を排除しない。不純物は、本発明によって達成される目的に対して技術的な効果を有さない。
【0024】
「接触しながら挟まれる」という記載は、3つの層を配置する場合に真ん中の層が隣接する2つの層に直接接触する配置を指す。
【0025】
本明細書において、正孔特性とは電界が印加された場合に正孔を形成するために電子を提供する能力を指し、アノードに形成された正孔は、最高被占分子軌道(HOMO)レベルによる導電特性のために、発光層に容易に注入されて発光層中を容易に輸送され得ることを指す。
【0026】
さらに電子特性とは電界が印加された場合に電子を受容する能力を指し、カソードに形成された電子は、最低空分子軌道(LUMO)レベルによる導電特性のために、発光層に容易に注入されて発光層中を容易に輸送され得ることを指す。
【0027】
[発明の効果]
驚くべきことに、特に電圧および/または効率について当該技術分野で知られている有機エレクトロルミネッセンス素子よりも様々な点において優れたデバイスを可能にする本発明の半導体材料が、本発明の基礎をなす課題を解決することがわかった。これらの要素は高効率を達成するために重要であり、これにより、例えば携帯表示装置といった携帯機器の電池寿命が増加する。
【0028】
驚くべきことに、本発明に係る有機半導体材料を青色蛍光素子における電子輸送層として使用した場合に特に良好なパフォーマンスが実現されることを発明者らは発見した。
【0029】
本明細書に記載の、好ましい特定の構成が特に有益であることが分かった。
【0030】
さらに、高効率および/または長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を実現可能である。
【0031】
以下、有機半導体材料、および該有機半導体材料を含むデバイスについて説明する。
【0032】
〔第1電子輸送マトリクス化合物〕
発光層の外側の本発明のデバイスに含まれる他の化合物と同様に、エレクトロルミネッセンス素子、例えば、OLEDの動作条件下において、第1電子輸送マトリクス化合物は発光しなくてもよい。
【0033】
さらなる実施形態によれば、第1マトリクス化合物は式(Ia)に記載の化合物である。
【0034】
【化2】
【0035】
式Iaにおいて、
ArはC~C12アリーレンおよびC~C11ヘテロアリーレンから選択され;
~Rは独立に、置換または非置換C6~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり;
Lは単結合、置換もしくは非置換C~C30アリーレン基、または置換もしくは非置換C~C30ヘテロアリーレン基であり;
ETは、非置換C~C40アリールもしくは非置換C~C40ヘテロアリール基、または置換C~C40アリールもしくは置換C~C40ヘテロアリール基であり;
上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の上記窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子は独立に、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子はC~C30複素環基を形成する、
(v)C~C22シリル基、
(vi)C~C30アルキル基、
(vii)C~C10アルキルシリル基、
(viii)C~C22アリールシリル基、
(ix)C~C30シクロアルキル基、
(x)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(xi)C~C30アリール基、
(xii)C~C30ヘテロアリール基、
(xiii)C~C20アルコキシ基、
(xiv)C~C30パーフルオロ-ヒドロカルビル基、
(xv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xvi)シアノ基。
【0036】
一実施形態において、ET基はカルバゾリル基ではない。
【0037】
式(Ia)は、式Iの定義に含まれ、AおよびAが一つの単結合であり;A=L;A=Ar;A5=ET。
【0038】
さらなる実施形態によれば、式(Ia)において、
~Rは独立に、置換または非置換C~C12アリール基、置換または非置換C~Cヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり;
Lは単結合、置換もしくは非置換C~C12アリーレン基、または置換もしくは非置換C~Cヘテロアリーレン基であり;
ETは、非置換C~C18アリールもしくは非置換C~C20ヘテロアリール基、または置換C~C18アリールもしくは置換C~C20ヘテロアリール基であり;
上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)C~C12アルキル基、
(iii)C~C12アリール基、
(iv)C~Cヘテロアリール基、または
(v)C~C12アルコキシ基。
【0039】
一実施形態において、ET基はカルバゾリル基ではない。
【0040】
さらなる実施形態によれば、Arはフェニルまたはビフェニリルであり、Lは単結合である。
【0041】
さらなる実施形態によれば、第1電子輸送化合物は式(Ib)に記載の化合物である。
【0042】
【化3】
【0043】
ここで、式Ibにおいて、
~X11は独立に、N、C、またはCRであり;
は独立に、水素、重水素、C~C30アルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30アリール基、C~C30ジアリールアミン基、C~C30アルコキシ基、C~C21シリル基、C~C21シリルオキシ基、C~C30アルキルチオール基、C~C30アリールチオール基、ハロゲン、C~C30ハロゲン化ヒドロカルビル基、シアノ基であり;
~Rは独立に、置換または非置換C~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり;
Lは単結合、置換または非置換C~C30アリーレン基、置換または非置換C~C30ヘテロアリーレン基であり;
ETは、非置換C~C40アリールもしくは非置換C~C40ヘテロアリール基、または置換C~C40アリールもしくは置換C~C40ヘテロアリール基であり;
上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の上記窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子は独立に、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子はC~C30複素環基を形成する、
(v)C~C22シリル基、
(vi)C~C30アルキル基、
(vii)C~C10アルキルシリル基、
(viii)C~C22アリールシリル基、
(ix)C~C30シクロアルキル基、
(x)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(xi)C~C30アリール基、
(xii)C~C30ヘテロアリール基、
(xiii)C~C20アルコキシ基、
(xiv)C~C30パーフルオロ-ヒドロカルビル基、
(xv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xvi)シアノ基。
【0044】
好ましくは、Rは独立に、水素、重水素、C~C30アルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30アリール基、またはC~C30アルコキシ基から選択される。
【0045】
一実施形態において、ET基はカルバゾリル基ではない。
【0046】
さらなる実施形態によれば、第1電子輸送化合物は式(Ic)に記載の化合物である。
【0047】
【化4】
【0048】
ここで、式Icにおいて、
~Rは独立に、置換または非置換C~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~eは、4≦a+b+c+d+e≦5が成立するように、独立に、0または1の整数であり、
Lは単結合、置換または非置換C~C30アリーレン基、置換または非置換C~C30ヘテロアリーレン基であり、
ETは、非置換C~C40アリールもしくは非置換C~C40ヘテロアリール基、または置換C~C40アリールもしくは置換C~C40ヘテロアリール基であり;
上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の上記窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C60ホスフィンオキシド基、ここで、上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子は独立に、ヒドロカルビル、ハロゲン化ヒドロカルビル、およびヒドロカルビルオキシから選択された2つのC~C30の基に置換されるか、または上記ホスフィンオキシド基の上記リン原子はC~C30複素環基を形成する、
(v)C~C22シリル基、
(vi)C~C30アルキル基、
(vii)C~C10アルキルシリル基、
(viii)C~C22アリールシリル基、
(ix)C~C30シクロアルキル基、
(x)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(xi)C~C30アリール基、
(xii)C~C30ヘテロアリール基、
(xiii)C~C20アルコキシ基、
(xiv)C~C30パーフルオロ-ヒドロカルビル基、
(xv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xvi)シアノ基。
【0049】
一実施形態において、ET基はカルバゾリル基ではない。
【0050】
さらなる実施形態によれば、式(Ic)において、
【0051】
【化5】
【0052】
~Rは独立に、置換または非置換C~C30アリール基、置換または非置換C~C30ヘテロアリール基であり;
a~dは1であり;
eは0であり;
Lは単結合、置換または非置換C~C30アリーレン基、置換または非置換C~C30ヘテロアリーレン基であり、
ETは、非置換C~C40アリールもしくは非置換C~C40ヘテロアリール基、または置換C~C40アリールもしくは置換C~C40ヘテロアリール基であり;
上記置換基では、少なくとも1つの水素が下記に置き換えられている:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の上記窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C22シリル基、
(v)C~C30アルキル基、
(vi)C~C10アルキルシリル基、
(vii)C~C22アリールシリル基、
(viii)C~C30シクロアルキル基、
(ix)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(x)C~C30アリール基、
(xi)C~C30ヘテロアリール基、
(xii)C~C20アルコキシ基、
(xiii)C~C30パーフルオロ‐ヒドロカルビル基、
(xiv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xv)シアノ基。
【0053】
さらなる実施形態によれば、上記置換基において、1つの水素原子は下記に置き換えられる:
(i)重水素、
(ii)ハロゲン、
(iii)C~C60第三アミノ基、ここで、上記C~C60第三アミノ基の上記窒素原子は独立に選択された2つのC~C30ヒドロカルビル基に置換されるか、またはC~C30複素環基を形成する、
(iv)C~C22シリル基、
(v)C~C30アルキル基、
(vi)C~C10アルキルシリル基、
(vii)C~C22アリールシリル基、
(viii)C~C30シクロアルキル基、
(ix)C~C30ヘテロシクロアルキル基、
(x)C~C30アリール基、
(xi)C~C30ヘテロアリール基、
(xii)C~C20アルコキシ基、
(xiii)C~C30パーフルオロ‐ヒドロカルビル基、
(xiv)C~C10トリフルオロアルキル基、または
(xv)シアノ基。
【0054】
好ましくは、R~Rは独立に、置換または非置換C~C18アリール基またはC~C18ヘテロアリール基から選択され、より好ましくは、独立に、置換または非置換C~C18アリール基から選択される。好ましくは、R~Rは置換されていない。一実施形態において、ET基はカルバゾリル基ではない。
【0055】
式Iの化合物がこの範囲内で選択され、特に、真空蒸着によって蒸着された層である場合、特に良好なパフォーマンスを得ることができる。
【0056】
1つ以上の置換基は、C~C12アルキルまたはC~C12アルコキシから選択されてもよい。
【0057】
式Iの化合物がこの範囲から選択された場合、溶液によって処理された層において特に良好な性質が得られる。
【0058】
好ましくは、Lは単結合または非置換フェニルから選択される。
【0059】
さらなる実施形態によれば、ET基はC~C30ヘテロアリール基であり、好ましくは、ETは式E1またはE2から選択され:
【0060】
【化6】
【0061】
;ここで、
Ar’およびAr”は独立に、C~C18アリールから選択され、好ましくは、独立に、C~C12アリールから選択される。
【0062】
好ましくは、ETは式E1から選択される。
【0063】
好ましくは、式Iの化合物は本質的に非発光性である。
【0064】
本明細書の文脈において、「本質的に非発光性」という用語は、その化合物または層の、デバイスからの可視発光スペクトルに対する寄与が、当該可視発光スペクトルに対して10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。可視発光スペクトルとは波長が約≧380nm~約≦780nmの発光スペクトルである。
【0065】
本発明の一態様によれば、式(I)に記載の化合物の還元電位は、フェロセン/フェロセニウムのレドックス対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定される場合、約-0.5V~約-3.1Vの範囲内であってもよい。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、第1電子輸送マトリクス化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対するサイクリックボルタンメトリーによって同じ条件下で測定した場合、トリフェニルホスフィンオキシドについて得られた値ほどは負の値ではなく、テトラキス(キノキサリン-5-イルオキシ)ジルコニウムについて得られた値よりも負の値である。
【0067】
これらの条件下において、トリフェニルホスフィンオキシドの還元電位は約-3.06Vであり、テトラキス(キノキサリン-5-イルオキシ)ジルコニウムの還元電位は約-1.78Vである。
【0068】
本発明のさらなる態様によれば、第1電子輸送マトリクス化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対するサイクリックボルタンメトリーによって同じ条件下で測定した場合、トリフェニルホスフィンオキシドについて得られた各値ほどは負の値ではなく、好ましくはビス(4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)-(フェニル)ホスフィンオキシドについて得られた各値ほどは負の値ではなく、より好ましくは3-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-5-(4-(t-ブチル)フェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾールについて得られた各値ほどは負の値ではなく、さらに好ましくはピレンについて得られた各値ほどは負の値ではなく、最も好ましくは2,7-ジ-ピレニル-9,9-スピロビフルオレンについて得られた各値ほどは負の値ではなく、また好ましくは4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンについて得られた各値ほどは負の値ではなく、また好ましくは2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントロリンについて得られた各値ほどは負の値ではなく、また好ましくは7-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[c,h]アクリジンについて得られた各値ほどは負の値ではなく、また好ましくは2,4,6-トリフェニルトリアジンについて得られた各値ほどは負の値ではなく、さらに好ましくは2,4,6-トリ(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジンについて得られた各値ほどは負の値ではない。
【0069】
本発明のさらなる態様によれば、第1電子輸送マトリクス化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対するサイクリックボルタンメトリーによって同じ条件下で測定した場合、テトラキス(キノキサリン-5-イルオキシ)ジルコニウムについて得られた各値よりも負の値であってもよく、好ましくは4,4’-ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1,1’-ビフェニルについて得られた各値よりも負の値であってもよく、最も好ましくは2,4,6-トリ(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジンについて得られた各値よりも負の値であってもよい。
【0070】
本発明のさらなる態様によれば、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対して測定した場合、第1電子マトリクス化合物の還元電位は-2.35Vほどは負ではなく-2.14Vよりも負であり、好ましくは-2.3Vほどは負ではなく-2.16Vよりも負であり、より好ましくは-2.25Vほどは負ではなく-2.16Vよりも負であってもよい。
【0071】
還元電位は、定電位装置Metrohm PGSTAT30およびソフトウェアMetrohm Autolab GPESを用いた室温でのサイクリックボルタンメトリーによって測定可能である。特定の化合物に与えられる還元電位は、被測定物質のアルゴン脱気した乾燥THF(0.1M)溶液中、アルゴン雰囲気下で、白金作用電極間の0.1Mヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム支持電解質およびAg/AgCl疑似標準電極(Metrohm社製の銀棒電極)を用いて、走査速度100mV/sで測定した。ここで、当該Ag/AgCl疑似標準電極は塩化銀に覆われた銀ワイヤからなり、測定溶液に直接含浸されている。最初の測定は、作用電極に設定される電位の最大範囲で行われ、以降の測定においてその範囲を適宜調整した。最後の3回の測定は、基準としてフェロセン(濃度0.1M)を添加して行った。対象化合物のカソードおよびアノードのピークに対応する電位の平均は、基準Fc/Fcレドックス対について測定されたカソードおよびアノードの電位の平均を差し引いた後、最終的に上述の報告された値をもたらした。報告された比較化合物だけでなく、すべての対象化合物も明確な可逆的電気化学性質を示した。
【0072】
一実施形態において、第1マトリクス化合物の双極子モーメントは、0デバイ以上2.3デバイ以下、好ましくは0.8デバイ以上2.2デバイ以下、また、好ましくは1デバイ以上2.2デバイ以下、また、好ましくは1.5デバイ以上2.2デバイ以下から選択されてもよい。他の実施形態において、第1マトリクス化合物は2.3デバイよりも高い双極子モーメントを有してもよい。好ましい実施形態として、元素金属から選択されるレドックスドーパントと組み合わせてもよい。
【0073】
別の一態様によれば、式Iの化合物のガラス転移温度(Tg)は、≦125℃~≦200℃の範囲から、好ましくは≦130℃~≦180℃の範囲から選択されてもよい。
【0074】
ガラス転移温度は窒素雰囲気下で測定することができ、当該測定は示差走査熱量計Mettler Toledo DSC822eを用いて10K/分の加熱速度で行われる。当該測定については、DIN EN ISO11357(2010年3月公開)を参照。
【0075】
特に好ましいものは、以下の構造A1~A18を有する式Iの化合物であってもよい:
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
【化9】
【0079】
〔電気的nドーパント〕
電気的nドーパントとは、電子輸送マトリクスに埋め込まれた場合、同一の物理的条件下におけるニートマトリクスと比較して、特に電子注入および/または電子伝導性について、形成された半導体材料の電子特性を向上させる化合物であると理解される。
【0080】
本発明の文脈において、「電子輸送マトリクスに埋め込まれた」とは、電子輸送マトリクスと均一に混ぜられたことを意味する。
【0081】
電気的nドーパントは、元素金属、金属塩、金属錯体、および有機ラジカルから選択されてもよい。
【0082】
一実施形態において、電気的nドーパントはアルカリ金属塩およびアルカリ金属錯体から選択され;好ましくはリチウム塩およびリチウム有機錯体から選択され;より好ましくはハロゲン化リチウムおよびリチウム有機キレートから選択され;さらに好ましくはフッ化リチウム、リチウムキノリノラート、リチウムボラート、リチウムフェノラート、リチウムピリジノラート、またはシッフ塩基配位子を有するリチウム錯体から選択され;もっとも好ましくは、
上記リチウムキノリノラート錯体は式II、III、またはIVを有し:
【0083】
【化10】
【0084】
ここで、
A1~A6は同一、または独立に、CH、CR、N、Oから選択され;
Rは、同一、または独立に、水素、ハロゲン、アルキルまたはアリールまたはC~C20ヘテロアリールから選択され;より好ましくは、A1~A6はCHであり、
上記ボラート系の有機配位子はテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ボラートであり、
上記フェノラートは、2-(ピリジン-2-イル)フェノラート、2-(ジフェニルホスホリル)フェノラート、イミダゾールフェノラート、2-(ピリジン-2-イル)フェノラートまたは2-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェノラートであり、
上記ピリジノラートは、2-(ジフェニルホスホリル)ピリジン-3-オレートであり、
上記リチウムシッフ塩基は構造100、101、102、または103を有する。
【0085】
【化11】
【0086】
他の実施形態において、電気的nドーパントはレドックスnドーパントである。
【0087】
〔レドックスnドーパント〕
レドックスnドーパントとは、電子輸送マトリクスに埋め込まれた場合、同一の物理的条件下におけるニートマトリクスと比較して、自由電子濃度を増加させる化合物であると理解される。
【0088】
エレクトロルミネッセンス素子、例えばOLEDの動作条件下において、レドックスnドーパントは発光しなくてもよい。一実施形態において、レドックスnドーパントは、元素金属、電気的に中性な金属錯体、および/または電気的に中性な有機ラジカルから選択される。
【0089】
nドーパントの強度の最も実用的な基準は、nドーパントのレドックス電位値である。レドックス電位値が取り得る負の程度については特に限定されない。
【0090】
有機半導体に使用される通常の電子輸送マトリクスの還元電位は、フェロセン/フェロセニウム基準レドックス対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定した場合、おおよそ、約-0.8V~約-3.1Vの範囲内である。そのようなマトリクスを効果的にnドープ可能なnドーパントについて、実際に適用可能なレドックス電位はわずかに広い範囲である約-0.5V~約-3.3Vである。
【0091】
レドックス電位の測定は、実際には、同一の化合物の還元物および酸化物からなる対応するレドックス対に対して行われる。
【0092】
レドックスnドーパントが電気的に中性な金属錯体および/または電気的に中性な有機ラジカルである場合、当該レドックスnドーパントのレドックス電位の測定は、以下によって形成されるレドックス対に対して実際には行われる:
(i)電気的に中性な金属錯体、および電気的に中性な金属錯体から1つの電子を取り除くことによって形成されたカチオンラジカル、または、
(ii)電気的に中性な有機ラジカル、および電気的に中性な有機ラジカルから1つの電子を取り除くことによって形成されたカチオン。
【0093】
好ましくは、電気的に中性な金属錯体および/または電気的に中性な有機ラジカルのレドックス電位は、下記(i)および(ii)からなる対応するレドックス対についてフェロセン/フェロセニウム基準レドックス対に対するサイクリックボルタンメトリーによって測定した場合、-0.5Vよりも負の値であり、好ましくは-1.2Vよりも負の値であり、より好ましくは-1.7Vよりも負の値であり、さらに好ましくは-2.1Vよりも負の値であり、最も好ましくは-2.5Vよりも負の値である。
【0094】
(i)電気的に中性な金属錯体、および電気的に中性な金属錯体から1つの電子を取り除くことによって形成されたカチオンラジカル、または、
(ii)電気的に中性な有機ラジカル、および電気的に中性な有機ラジカルから1つの電子を取り除くことによって形成されたカチオン。
【0095】
好ましい実施形態において、nドーパントのレドックス電位は、選択された電子輸送マトリクスの還元電位値に対して約±0.5Vの値である。
【0096】
レドックスnドーパントとして好適な電気的に中性な金属錯体としては、例えば、低酸化状態にあるいずれかの遷移金属の強く還元的な錯体であってもよい。特に強いレドックスnドーパントは、例えば、WO2005/086251により詳細に記載されているように、W(hpp)等のCr(II)、Mo(II)および/またはW(II)グアニジナート錯体から選択され得る。
【0097】
レドックスnドーパントとして好適な電気的に中性な有機ラジカルは、例えば、EP1837926B1、WO2007/107306、またはWO2007/107356により詳細に記載されているように、有機ラジカルの安定した二量体、オリゴマーまたは重合体からの付加的なエネルギーの供給によって生成された有機ラジカルであってもよい。元素金属とは、ニート金属状態の金属、金属合金状態の金属、または自由原子もしくは金属クラスター状態の金属であると理解される。金属相(例えば、ニートバルク金属)からの真空熱蒸発によって蒸着された金属は、当該金属の元素形態で蒸発すると理解されている。
【0098】
蒸発した元素金属が共有結合マトリクスと共に蒸着される場合、金属原子および/またはクラスターが共有結合マトリクスに埋め込まれることがさらに理解される。言い換えれば、真空熱蒸発によって調製された、金属ドープされた共有結合材料はいずれも、少なくとも部分的に元素形態の金属を含んでいることが理解される。
【0099】
民生電子機器における使用については、安定した核種を含む金属または放射性崩壊の非常に長い半減期を有する核種を含む金属のみが適用可能である。核安定性の許容レベルとしては、天然カリウムの核安定性とすることができる。
【0100】
一実施形態において、nドーパントは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、および第1遷移期の金属Ti、V、CrおよびMnから選択される電気陽性金属から選択されてもよい。好ましくは、nドーパントはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sm、Eu、Tm、Ybから選択され;より好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、およびYbから選択され、さらに好ましくはLi、Na、Cs、およびYbから選択され、最も好ましくはLi、Na、およびYbから選択されてもよい。
【0101】
レドックスドーパントは本質的に非発光性であってもよい。
【0102】
本発明の別の一態様によれば、第1電極と、第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に配置された、本発明に係る有機半導体材料の層とを備える電子デバイスを提供する。本発明に係る半導体材料の層は、電荷注入層、電荷輸送層、または電荷発生層として機能してもよい。一実施形態において、電子デバイスはエレクトロルミネッセンス素子である。好ましくは、エレクトロルミネッセンス素子は有機発光ダイオードである。
【0103】
本発明の別の一態様によれば、本願に記載のいずれかの実施形態に係る少なくとも1つのエレクトロルミネッセンス素子を備える電子デバイスを提供し、好ましくは、本願に記載の実施形態のうちの1つにおける有機発光ダイオードを備える電子デバイスを提供する。より好ましくは、電子デバイスは表示装置である。
【0104】
[図面の簡単な説明]
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードを示す断面図である。
【0105】
図2および図3は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの有機層の一部を具体的に示す断面図である。
【0106】
以下、図面について、実施例に基づきより詳細に説明する。しかしながら、本開示は以下の図面に限定されない。
【0107】
図1図3は、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100、300、および400を概略的に示す断面図である。以下、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの構造、および当該有機発光ダイオードの製造方法を説明する。有機発光ダイオード100は、アノード110、正孔輸送領域(任意)を含む有機層積層体105、発光層130、およびカソード150が順に積層した構造を有している。
【0108】
基板をアノード110の上またはカソード150の下に配置してもよい。基板は、一般的な有機発光ダイオードに使用される通常の基板から選択されてもよく、ガラス基板または透明プラスチック基板であってもよい。
【0109】
アノード110は、基板上にアノード材料を蒸着するかまたはスパッタリングすることによって形成されてもよい。アノード材料は、正孔注入を容易にする高い仕事関数を有する材料から選択することができる。アノード110は、反射電極、半透過電極、または透過電極であってもよい。アノード材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、等を用いてもよい。または、銀(Ag)もしくは金(Au)もしくはそれらの合金等の金属であってもよい。
【0110】
アノード110は、単層構造または2層以上の多層構造を有してもよい。
【0111】
本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオード100、300、および400は、正孔輸送領域;発光層130;および式Iに記載の化合物を含む第1電子輸送層31を備えてもよい。
【0112】
図2を参照すると、有機層積層体105の正孔輸送領域は、少なくとも2層の正孔輸送層を備えてもよい。この場合、発光層(130)に接触する正孔輸送層を第2正孔輸送層135と定義し、アノード(110)と接触する正孔輸送層を第1正孔輸送層34と定義する。有機層積層体105は、2層の電子輸送層、すなわち第2電子輸送層33および第1電子輸送層31をさらに備えている。積層体105の正孔輸送領域は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、および緩衝層のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0113】
積層体105の正孔輸送領域は、正孔注入層または正孔輸送層のみを含んでいてもよい。または、正孔輸送領域は、正孔注入層36/正孔輸送層34もしくは正孔注入層36/正孔輸送層34/電子ブロッキング層(135)がアノード110から順に積層されている構造を有してもよい。
【0114】
例えば、正孔注入層36および電子注入層37をさらに備えてもよく、その場合、OLEDは、順に積層されたアノード110/正孔注入層36/第1正孔輸送層34/電子ブロッキング層135/発光層130/第2電子輸送層33/第1電子輸送層31/電子注入層37/カソード150を備えてもよい。
【0115】
本発明の別の一態様によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子(400)は、アノード(110)、正孔注入層(36)、第1正孔輸送層(34)、任意の電子ブロッキング層(135)、発光層(130)、第2電子輸送層(33)、第1電子輸送層(31)、任意の電子注入層(37)、カソード(150)を備え、これらの層はこの順番で配置されている。
【0116】
正孔注入層36は、アノードとしてのITOと正孔輸送層34に用いられる有機材料との間の界面特性を向上させることができる。また、正孔注入層36を非平坦なITO上に適用することで、ITOの表面が平坦になる。正孔注入層36は、アノードとしてのITOの仕事関数と第1正孔輸送層34の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルとの間の差を調節するために、例えば、自身のHOMOのエネルギーレベルの中央値が、ITOの仕事関数と正孔輸送層34のHOMOのエネルギーレベルとの間の値である材料を含んでもよい。
【0117】
正孔輸送領域が正孔注入層36を備えている場合、正孔注入層は、例えば、真空蒸着、スピンコーティング、鋳造、およびラングミュア・ブロジェット法(Langmuir Blodgett、LB)等の様々な方法のいずれかによって、アノード110上に形成されてもよい。
【0118】
正孔注入層が真空蒸着を用いて形成される場合、真空蒸着条件は、正孔注入層の形成に使用される材料、目的の構造、および形成される正孔注入層の熱特性によって異なり得る。例えば、真空蒸着は、約100℃~約500℃の温度、約10-6Pa~約10-1Paの圧力、および約0.1nm/sec~約10nm/secの蒸着速度で行われてもよい。しかしながら、蒸着条件はこれらに限定されない。
【0119】
正孔注入層がスピンコーティングを用いて形成される場合、コーティング条件は、正孔注入層の形成に使用される材料、目的の構造、および形成される正孔注入層の熱特性によって異なり得る。例えば、コーティング速度は約2000rpm~約5000rpmの範囲内であってもよく、コーティング後に溶媒を除去するために行われる熱処理の温度は約80℃~約200℃の範囲内であってもよいが、コーティング条件はこれらに限定されない。
【0120】
正孔輸送層および電子ブロッキング層を形成する条件は、上述した正孔注入層の形成条件に基づいて定められてもよい。
【0121】
電荷輸送領域における正孔輸送部の厚さは約10nm~約1000nmであってもよく、例えば、約10nm~約100nmであってもよい。電荷輸送領域の正孔輸送輸送部が正孔注入層および正孔輸送層を備える場合、正孔注入層の厚さは約10nm~約1000nm、例えば約10nm~約100nmであってもよく、正孔輸送層の厚さは約5nm~約200nm、例えば、約10nm~約150nmであってもよい。電荷輸送領域の正孔輸送部、HIL、およびHTLの厚さがこれらの範囲内である場合、駆動電圧を実質的に上昇させることなく、十分な正孔輸送特性を得ることができる。
【0122】
正孔輸送領域に使用される正孔輸送マトリクス材料は特に限定されない。少なくとも6個の非局在化電子の共役系を含む共有結合化合物が好ましい。「共有結合化合物」という用語について、第2電子輸送マトリクスに関する段落においてより詳細に説明する。正孔輸送層に広く使用されている正孔輸送マトリクス材料の典型例としては、多環式芳香族炭化水素、トリアリールアミン化合物、および複素環式芳香族化合物が挙げられる。正孔輸送領域の様々な層において有用な正孔輸送マトリクスのフロンティア軌道エネルギーレベルの好適な範囲はよく知られている。好ましい値は、レドックス対HTLマトリクス/HTLマトリクスのカチオンラジカルのレドックス電位に換算して(例えば、サイクリックボルタンメトリーによって、フェロセンに対するフェロセニウムレドックス対を基準として測定された場合)、0.0V~1.0Vの範囲内であってよく、より好ましくは0.2V~0.7Vの範囲内であり、さらに好ましくは0.3V~0.5Vの範囲内であってもよい。
【0123】
有機層積層体の正孔輸送領域は、上述した材料に加えて、伝導性を向上させるために電荷生成材料をさらに含んでもよい。電荷生成材料は、正孔輸送領域中に均一にまたは不均一に分散していてもよい。
【0124】
電荷生成材料は、例えば、pドーパントであってもよい。pドーパントはキノン誘導体、金属酸化物、およびシアノ基含有化合物のうちの1つであってもよいが、これらに限定されない。pドーパントの例としては、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4-TCNQ)等のキノン誘導体;タングステン酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物;および下記化合物HT-D1等のシアノ含有化合物、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
【化12】
【0126】
電荷輸送領域の正孔輸送部はさらに緩衝層を含んでもよい。
【0127】
緩衝層はEMLから発せられた光の波長に応じて当該光の光学共鳴距離を補うことが可能であり、これによって効率を向上させることができる。
【0128】
発光層(EML)は、真空蒸着、スピンコーティング、鋳造、またはLB法等を用いて正孔輸送領域上に形成されてもよい。発光層が真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングの条件は発光層の形成に使用される材料によって異なり得るが、蒸着およびコーティングの条件は正孔注入層の形成条件と同様であってもよい。発光層はエミッターホスト(EMLホスト)およびエミッタードーパント(さらに、エミッターのみ)を含んでもよい。
【0129】
エミッターは、赤色エミッター、緑色エミッター、または青色エミッターであってもよい。
【0130】
一実施形態において、エミッターホストは下記式400に示すアントラセンマトリクス化合物である:
【0131】
【化13】
【0132】
式400中、Ar111およびAr112は、それぞれ独立に、置換または非置換C~C60アリーレン基であってもよく;Ar113~Ar116は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換C~C10アルキル基または置換もしくは非置換C~C60アリール基であってもよく;g、h、i、およびjは、それぞれ独立に、0~4の整数であってもよい。いくつかの実施形態において、式400中のAr111およびAr112は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、またはピレニレン基であってもよく;それぞれがフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基の少なくとも1つに置換されたフェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、フルオレニル基、またはピレニレン基であってもよい。
【0133】
式400中、g、h、i、およびjは、それぞれ独立に、0、1、または2の整数であってもよい。
【0134】
式400中、Ar113~Ar116は、それぞれ独立に、下記のうちの1つであってもよい:
フェニル基、ナフチル基、またはアントリル基の少なくとも1つに置換されたC~C10アルキル基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、または、
それぞれが、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、またはそれらの塩の少なくとも1つに置換された、フルオレニル基、
スルホン酸基またはその塩、
リン酸基またはその塩、
~C60アルキル基、C~C60アルケニル基、C~C60アルキニル基、C~C60アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、または
フルオレニル基;または
【0135】
【化14】
【0136】
もしくは式(Y2)もしくは式(Y3):
【0137】
【化15】
【0138】
ここで、式(Y2)および式(Y3)中、Xは酸素原子および硫黄原子から選択されるが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0139】
式(Y2)において、R11~R14の何れか1つはAr111との結合に使用される。Ar111との結合に使用されないR11~R14およびR15~R20は、R~Rと同じである。
【0140】
式(Y3)において、R21~R24の何れか1つはAr111との結合に使用される。Ar111との結合に使用されないR21~R24およびR25~R30は、R~Rと同じである。
【0141】
好ましくは、EMLホストはN、O、またはSからなる群から選択される1個~3個のヘテロ原子を含む。より好ましくは、EMLホストはSまたはOから選択される1個のヘテロ原子を含む。
【0142】
本発明のさらなる態様によれば、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対して、サイクリックボルタンメトリーによって同じ条件下で測定した場合、エミッターホストはそれぞれ還元電位を有し、その還元電位は、7-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[c,h]アクリジンについて得られた各値よりも負の値であり、好ましくは9,9’,10,10’-テトラフェニル-2,2’-ビアントラセンについて得られた各値よりも負の値であり、より好ましくは2,9-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンについて得られた各値よりも負の値であり、さらに好ましくは2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントロリンについて得られた各値よりも負の値であり、さらに好ましくは9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-フェニルアントラセンについて得られた各値よりも負の値であり、さらに好ましくは2,9-ビス(2-メトキシフェニル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンについて得られた各値よりも負の値であり、最も好ましくは9,9’-スピロビ[フルオレン]-2,7-ジイルビス(ジフェニルホスフィンオキシド)について得られた各値よりも負の値である。
【0143】
エミッターは発光を起こすために少量混合され、一般的には、三重項以上への多重励起によって発光する金属錯体等の物質であり得る。エミッターは、例えば、無機化合物、有機化合物、または有機金属化合物であってもよく、それらの1つ以上が使用されてもよい。
【0144】
エミッターは蛍光性エミッター(例えばt-フルオレン)であってもよく、その構造を下記に示す。4.4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(TBPe)、および下記の化合物4が青色蛍光性エミッターの例である。
【0145】
【化16】
【0146】
別の一態様によれば、式Iの化合物を含む有機半導体層が青色蛍光発光層およびカソード電極の間に配置される。
【0147】
エミッターは燐光性エミッターであってもよく、燐光性エミッターの例としては、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、またはそれらの組み合わせを含む有機金属化合物が挙げられる。燐光性エミッターは、例えば、式Zに表す化合物であってもよいが、これに限定されない:
MX (Z)。
【0148】
式Z中、Mは金属であり、LおよびXは、同一または異なり、Mと錯体化合物を形成する配位子である。
【0149】
Mは、例えば、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたは、多核錯体におけるそれらの組み合わせであってもよく、LおよびXは、例えば、二座配位子であってもよい。
【0150】
発光層の厚さは約10nm~約100nmであってもよく、例えば、約20nm~約60nmであってもよい。発光層の厚さがこれらの範囲内である場合、駆動電圧を実質的に上昇させることなく、発光層の発光特性を向上させることができる。
【0151】
次に、有機層積層体105の電子輸送領域は、発光層上に形成される。
【0152】
有機層積層体の電子輸送領域は、少なくとも第1電子輸送層を含む。有機層積層体の電子輸送領域はさらに電子注入層および/または第2電子輸送層を含んでもよい。少なくとも第1電子輸送層は、その種々の実施形態の一つに係るnドープされた半導体材料を含む。
【0153】
例えば、有機層積層体の電子輸送領域は、第1電子輸送層/第2電子輸送層/電子注入層という構造を有してもよいが、これに限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードは有機層積層体105の電子輸送領域に少なくとも2層の電子輸送層を含み、この場合、発光層に接触する電子輸送層を第2電子輸送層33と定義する。
【0154】
電子輸送層は、2つ以上の異なる電子輸送マトリクス化合物を含んでもよい。
【0155】
〔第2電子輸送マトリクス化合物〕
本発明に係るデバイス(例えば、正孔ブロッキング層、電子注入層を含むデバイス)における電子輸送領域の様々な実施形態は、第2電子輸送マトリクス化合物を含んでもよい。
【0156】
第2電子輸送マトリクス化合物は特に限定されない。発光層の外側に設けられる本発明のデバイスに含まれる他の物質と同様に、第2電子輸送マトリクス化合物は発光しなくてもよい。
【0157】
一実施形態によれば、第2電子輸送マトリクスは有機化合物、有機金属化合物、または金属錯体であり得る。
【0158】
一実施形態によれば、第2電子輸送マトリクスは、少なくとも6個の非局在化電子の共役系を含む共有結合化合物であってもよい。共有結合材料を最も広義に解釈すれば、すべての化学結合中少なくとも50%が共有結合である材料が共有結合材料であると理解され、ここで、配位結合も共有結合であると考えられる。本出願において、最も広義に解釈した場合の共有結合材料という用語は、主には有機化合物から選択されるが、それだけでなく、例えば置換2,4,6-トリボラ-1,3,5トリアジンといった炭素を含まない構造部分を含む化合物から、または例えばアルミニウムトリス(8-ヒドロキシキノリノラート)といった金属錯体からも選択され、すべての一般的な電子輸送マトリクスを包含する。
【0159】
分子的共有結合材料は、好ましくは真空熱蒸着(VTE)による処理が可能な程度に安定している低分子量化合物を含んでもよい。または、共有結合材料は高分子共有結合化合物を含んでもよく、好ましくは、溶媒に対して可溶な化合物であって、したがって溶液の形態で処理可能である化合物を含んでもよい。実質的に共有結合を有する高分子材料は架橋されて無限の不規則なネットワークを形成し得ることを理解すべきであるが、そのような実質的に共有結合を有する架橋高分子マトリクス化合物はなおも骨格原子および周辺原子の両方を含むと推定される。共有結合化合物の骨格原子は、少なくとも2つの隣接原子と共有結合している。共有結合化合物の他の原子は、1つの隣接原子と共有結合している周辺原子である。ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、硫化亜鉛、ケイ酸塩ガラス等のような部分的に共有結合を有するが実質的に周辺原子を欠く無機無限結晶または完全架橋ネットワークは、本願の意味において共有結合マトリクスとはみなされない。これは、そのような完全架橋共有結合材料が、そのような材料によって形成された相の表面上のみに周辺原子を含んでいるためである。カチオンおよびアニオンを含む化合物も、少なくとも当該カチオンまたは少なくとも当該アニオンが少なくとも10個の共有結合原子を含んでいる場合に、共有結合化合物であるとみなされる。
【0160】
共有結合を有する第2電子輸送マトリクス化合物の好ましい例としては有機化合物が挙げられ、当該有機化合物は主に共有結合したC、H、O、N、Sからなり、共有結合したB、P、As、Seも任意に含んでもよい。一実施形態において、第2電子輸送マトリクス化合物には金属原子が含まれておらず、第2電子輸送マトリクス化合物の骨格原子の大部分は、C、O、S、Nから選択される。
【0161】
他の実施形態において、第2電子輸送マトリクス化合物は、少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個、さらに好ましくは少なくとも14個の非局在化電子の共役系を含む。
【0162】
非局在化電子の共役系の例としては、パイ結合およびシグマ結合が交互に起こる系が挙げられる。原子間にパイ結合を有する1つ以上の2原子構造単位は、少なくとも1つの孤立電子対を持つ原子(一般的に、O、S、Se、Teから選択される二価原子、またはN、P、As、Sb、Biから選択される三価原子)に任意に置き換わってもよい。好ましくは、非局在化電子の共役系はヒュッケル則に準拠した少なくとも1つの芳香族環またはヘテロ芳香族環を含む。また、好ましくは、第2電子輸送マトリクス化合物は、共有結合によって連結されたかまたは縮合された少なくとも2つの芳香族環またはヘテロ芳香族環を含んでもよい。
【0163】
特定の実施形態のうちの1つにおいて、第2電子輸送マトリクス化合物は、共有結合原子からなる環を含み、当該環における少なくとも1つの原子はリンである。
【0164】
より好ましい実施形態において、共有結合原子からなるリン含有環は、ホスフェピン環である。
【0165】
他の好ましい実施形態において、共有結合マトリクス化合物は、ホスフィンオキシド基を含む。また、好ましくは、実質的に共有結合を含むマトリクス化合物は少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を有している。本発明のデバイスに用いる第2電子輸送マトリクス化合物として特に有利な窒素含有複素環化合物の例としては、ピリジン構造部分、ジアジン構造部分、トリアジン構造部分、キノリン構造部分、ベンゾキノリン構造部分、キナゾリン構造部分、アクリジン構造部分、ベンゾアクリジン構造部分、ジベンゾアクリジン構造部分、ジアゾール構造部分、およびベンゾジアゾール構造部分を、単独またはそれらの組合せで備えているマトリクスが挙げられる。
【0166】
第2マトリクス化合物の分子量(Mw)は、400g/mol以上850g/mol以下の範囲内、好ましくは450g/mol以上830g/mol以下の範囲内であってもよい。分子量がこの範囲内で選択される場合、特に、良好な長期安定性が認められる温度の真空下において、再現可能な蒸発および蒸着を行うことができる。
【0167】
好ましくは、第2マトリクス化合物は、本質的に非発光性であってもよい。
【0168】
別の一態様によれば、第2電子輸送化合物の還元電位は、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対して-2.2Vよりも負であり-2.35Vほどは負ではなく、好ましくは-2.25Vよりも負であり-2.3Vほどは負ではない範囲から選択されてもよい。
【0169】
一実施形態によれば、第1マトリクス化合物および第2マトリクス化合物として異なる化合物を選択してもよく、
第2電子輸送層は第2マトリクス化合物からなり;
第1電子輸送層は式(I)の第1マトリクス化合物および電気的nドーパント(好ましくはアルカリ金属塩またはアルカリ金属有機錯体)からなる。
【0170】
好ましくは、第1電子輸送層および第2電子輸送層は、本質的に非発光性であってもよい。
【0171】
他の実施形態によれば、第2電子輸送層は、発光層と直接接触してもよい。
【0172】
他の実施形態によれば、第1電子輸送層は、第2電子輸送層と直接接触してもよい。
【0173】
他の実施形態によれば、第2電子輸送層は、発光層と第1電子輸送層との間に接触しながら挟まれてもよい。
【0174】
他の実施形態によれば、第1電子輸送層は、電子注入層と直接接触してもよい。
【0175】
他の実施形態によれば、第1電子輸送層は、第2電子輸送層と電子注入層との間に接触しながら挟まれてもよい。
【0176】
他の実施形態によれば、第1電子輸送層は、カソード電極と直接接触してもよい。
【0177】
他の実施形態によれば、第1電子輸送層は、第2電子輸送層とカソード層との間に接触しながら挟まれてもよい。
【0178】
他の実施形態によれば、第2電子輸送層が発光層と第1電子輸送層との間に接触しながら挟まれ、第1電子輸送層が第2電子輸送層と電子注入層との間に接触しながら挟まれてもよい。
【0179】
有機層積層体の電子輸送領域における第1電子輸送層31、第2電子輸送層33、および電子注入層37の形成条件としては、正孔注入層の形成条件が適用される。
【0180】
第1電子輸送層の厚さは約2nm~約100nmであってもよく、例えば、約3nm~約30nmであってもよい。第1電子輸送層の厚さがこれらの範囲内である場合、駆動電圧を実質的に上昇させることなく、第1電子輸送層の電子輸送補助能力を向上させることができる。
【0181】
第2電子輸送層の厚さは約10nm~約100nmであってもよく、例えば、約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層の厚さがこれらの範囲内である場合、駆動電圧を実質的に上昇させることなく、電子輸送層は十分な電子輸送能力を有することができる。
【0182】
本発明の別の一態様によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子は第2電子輸送層およびカソードの間にさらに電子注入層を含む。
【0183】
電子注入層(EIL)37はカソード150からの電子の注入を促進することができる。
【0184】
本発明の別の一態様によれば、電子注入層37は下記を含む:
(i)実質的に元素形態であるアルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属から選択される電気陽性金属、好ましくはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Eu、およびYb、より好ましくはLi、Na、Mg、Ca、Sr、およびYb、さらに好ましくはLiおよびYb、最も好ましくはYbから選択される電気陽性金属;および/または
(ii)アルカリ金属錯体および/またはアルカリ金属塩、好ましくはLi錯体および/または塩、より好ましくはLiキノリノラート、さらに好ましくはリチウム8-ヒドロキシキノリノラート、最も好ましくは第2電子輸送層のアルカリ金属塩および/または錯体が注入層のアルカリ金属塩および/または錯体である。
【0185】
電子注入層は、LiF、NaCl、CsF、LiO、およびBaOから選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0186】
EILの厚さは約0.1nm~約10nmであってもよく、または約0.3nm~約9nmであってもよい。電子注入層の厚さがこれらの範囲内である場合、駆動電圧を実質的に上昇させることなく、電子注入層は十分な電子注入能力を有することができる。
【0187】
カソード150の材料としては、仕事関数の低い金属、合金、もしくは導電性化合物であってもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。カソード150の材料の具体例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、等が挙げられる。基板上に蒸着された反射アノード110を有するトップエミッション型発光デバイスを製造するために、カソード150は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)からなる透過電極として形成されてもよい。
【0188】
以下、実施形態について、実施例に基づきより詳細に説明する。しかしながら、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0189】
[発明を実施するための形態]
式Iの化合物の合成および物性
式Iのトリアジン化合物は、PCT-KR2015-012551に記載の方法に基づき合成することができる。
【0190】
合成例1:化合物A6(スキーム中、化合物[3]として表記)
【0191】
【化17】
【0192】
〔第1ステップ:中間体I-5の合成〕
窒素環境下、中間体I-4(20.4g、34.92mmol)および1-ブロモ-3-ヨードベンゼン(16.5g、52.39mmol)を用い、化合物1の合成方法と同じ合成方法で13gの中間体I-5(61%)を得た。
【0193】
〔第2ステップ:中間体I-6の合成〕
窒素環境下、中間体I-5(12.6g、20.54mmol)を用い、中間体I-4の合成方法と同じ合成方法で10gの中間体I-6(74%)を得た。
【0194】
〔第3ステップ:化合物A6の合成〕
中間体I-6(10g、15.2mmol)および2-(3-ブロモフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(7.9g、18.32mmol)を用いて、8.7gの化合物A6(スキーム中、[3]として表記)を68%の収量で得た。これらの試薬を窒素環境下において250mLのテトラヒドロフラン中に溶解し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.9g、0.75mmol)をそこに添加し、その混合物を撹拌した。その後、水に飽和した炭酸カリウム(5.2g、37mmol)を上述の混合物に添加し、当該混合物を80℃で24時間加熱および還流した。反応が完了したとき、反応溶液に水を加え、ジクロロメタンを用いて抽出を行い、無水MgSOを用いて水分除去を行い、結果として得られたものを濾過して減圧下で濃縮させた。この得られた残渣をカラムクロマトグラフィによって分離および精製した。
【0195】
LC質量(理論値:842.04g/mol、実測値:M+H=843.03g/mol)
ベンゾキナゾリン化合物A9を同じように調製した。試験した式(I)の化合物の物性を表1にまとめる。
【0196】
式Iのジベンゾアクリジン化合物は、WO2011/154131A1に記載の方法によって合成することができる。
【0197】
別の代替物を合成例2に示す。本手順は、一般的に、ヘキサフェニルベンゼン構造部分を有する化合物の合成に適用することができる。
【0198】
合成例2:化合物A16
ステップ1:7-(4-(フェニルエチニル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジンの合成
【0199】
【化18】
【0200】
三つ口丸底フラスコ(250mL)をNによって浄化する。一定流量のN7-(4-ブロモフェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(10.0g、23.0mmol)と共に、フェニルアセチレン(4.70g、46.0mmol、2.0eq.)およびビス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム塩化物(3.23g、4.6mmol、0.2eq.)を導入し、その後、THF中のフッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液(70mL)を導入した。得られた混合物を還流まで熱し、2時間にわたって反応させた。反応の完了後、MeOH(70mL)を添加し、当該溶液を放置して室温まで冷却した。冷却によって形成された沈殿物を濾過によって回収し、MeOH(2×50mL)を用いて洗浄し、その後、ヘキサン(3×50mL)を用いて洗浄し、最後に、40℃の真空状態下で乾燥させた。
【0201】
収量:約7.0g(約67%、黄色がかった固体)。
【0202】
ステップ2:7-(3’,4’,5’,6’-テトラフェニル-[1,1’:2’,1”-テルフェニル]-4-イル)ジベンゾ[c,h]アクリジンの合成
【0203】
【化19】
【0204】
三つ口丸底フラスコ(100mL)に7-(4-(フェニルエチニル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン(6.8g、14.9mmol)、2,3,4,5-テトラフェニルシクロペンタ-2,4-ジエノン(6.31g、16.4mmol、1.1eq.)、およびベンゾフェノン(35gの溶融溶媒として)を充填した。Nを用いて固体の脱ガス処理を行った後、得られた混合物を300℃まで熱した。1時間にわたる300℃の還流の後、ガスの発生が止まり、その結果、混合物は約80℃まで冷却された。トルエン(100mL)を添加し、得られた沈殿物を濾過してトルエン(2×40mL)で洗浄し、続けてヘキサン(2×40mL)で洗浄した。その後、当該固体を高温のクロロベンゼン(60mL)中で粉砕することによって精製し、続けて高温のMeOH(60mL)中で粉砕した。濾過および120℃の真空状態下での乾燥後、対象物を分離して黄色がかった粉末を得た。
【0205】
収量:約6.8g(約56%、黄色がかった固体)。
【0206】
ベンゾアクリジン化合物A18を同じように調製した。式Iのジベンゾアクリジン化合物およびその出発原料、収量、m/z、ガラス転移温度、テトラヒドロフランにおけるFc/Fcに対する還元電位を表1にまとめる。
【0207】
【表1】




〔OLED製作の一般的手順〕
モデルとなるトップエミッション型青色蛍光OLEDを以下に説明する。
【0208】
補助材料F1、F2、F3、F4、F5、F6、およびPD-2を用いて作製した:
【0209】
【化20】
【0210】
ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン、CAS1242056-42-3、F1;
【0211】
【化21】
【0212】
N,N-ビス(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4-アミン、CAS1198399-61-9、F2;
【0213】
【化22】
【0214】
2-(10-フェニル-9-アントラセニル)-ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン、CAS1627916-48-6、F3;
【0215】
【化23】
【0216】
7-(3-(ピリジン-2-イル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン、F4
【0217】
【化24】
【0218】
7-(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン、F5
【0219】
【化25】
【0220】
2-([1,1’-ビフェニル]-4-yl)-4-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-yl)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、CAS1801992-44-8、F6
【0221】
【化26】
【0222】
2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル),CAS1224447-88-4,PD-2。
【0223】
〔デバイス例1(トップエミッション型青色OLED)〕
第1電極を設けるために、ガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切り、イソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄した後、純水で5分間超音波洗浄し、その後UVオゾンで30分間清浄した。アノードとして、100nmのAgを10-5mbar~10-7mbarの圧力で蒸着させた。
【0224】
その後、92重量%のF1および8重量%のPD2をITO電極に真空蒸着させて、10nmの厚さを有するHILを形成した。その後、ドープされていないF1をHILに真空蒸着させて、122nmの厚さを有するHTLを形成した。
【0225】
その後、F2をHTLに真空蒸着させて、5nmの厚さを有する電子ブロッキング層(EBL)を形成した。
【0226】
その後、EMLホストとしての97重量%のF3および3重量%の緑色ドーパントNUBD370(Sun Fine Chemicals製)をEBLに蒸着させて、20nmの厚さを有する青色発光EMLを形成した。
【0227】
その後、第2電子輸送層33を設ける場合、化合物A6を蒸着させて、5nmの厚さを有する第2電子輸送層33を形成する。第1電子輸送層31を、発光層または第2電子輸送層に直接形成する。第1電子輸送層が発光層と直接接触している場合、厚さは36nmである。第1電子輸送層が第2電子輸送層上に蒸着されている場合、厚さは31nmである。
【0228】
第1電子輸送層は50重量%のマトリクス化合物と、50重量%のLiQとを含む。組成は表2に示されている。
【0229】
その後、厚さが1.5nmのLiQ、または厚さが2nmのYbを蒸着させて、電子輸送層31に電子注入層37を形成する。
【0230】
カソードを、10-7mbarの超高真空で蒸着させた。したがって、5nm~1000nmの厚さを有する均一のカソードを得るために、一種以上の金属を、0.1nm/s~10nm/s(0.01Å/s~1Å/s)の速度で、一回で同時加熱蒸着させた。カソードは、13nmのマグネシウム銀合金(90:10体積%)または11nmのAgから形成した。
【0231】
F1のキャップ層をカソードに形成した。MgAgカソードの場合、キャップ層の厚さは60nmであり、Agカソードの場合、キャップ層の厚さは75nmであった。
【0232】
デバイス実験の評価
先行技術と比較した本発明の実施例のパフォーマンスを判定するために、周囲条件下(20℃)における電流効率を測定する。トップエミッション型デバイスについて、Keithley2400ソースメーターを用いて動作電圧の測定を行い、標準電流密度10mA/cmにおけるVとして記録する。ボトムエミッション型デバイスについては、標準電流密度は通例15mA/cmである。CIE座標および明度(単位:カンデラ)の測定に、Instrument Systems製の較正済み分光計CAS140を用いる。デバイスの寿命LTを、Keithley2400ソースメーターを用いて、周囲条件(20℃)および標準電流密度10mA/cmまたは15mA/cmで測定し、時間単位で記録する。デバイスの明度を、較正済みフォトダイオードを用いて測定する。寿命LTは、デバイスの明度がその初期値の97%まで減少するまでの時間として定義する。
【0233】
トップエミッション型デバイスについては、光出力を、外部効率EQEおよび出力効率Peff(lm/W)の点で、10mA/cmで判定する。
【0234】
効率EQEを%単位で判定するために、デバイスの光出力を、較正済みフォトダイオードを用いて測定する。
【0235】
出力効率をlm/W単位で判定するために、第1ステップにおいて、Deutsche
Akkreditierungsstelle(DAkkS)によって較正済みのアレイ分光計CAS140CT(Instrument Systems製)を用いて1平方メートルあたりのカンデラ(cd/m)を単位とした輝度を測定する。その後、第2ステップにおいて、輝度にπを乗算し、電圧および電流密度で除算する。
【0236】
ボトムエミッション型デバイスにおいて、発光の単位は主にランバートであり、外部量子効率(EQE)のパーセンテージとして定量化され、出力効率の単位はlm/Wである。
【0237】
F4~F6の補助化合物を技術水準の基準とした。動作電圧Uおよび電流効率Ceffについての結果を表2に示す。
表2:第2ETL(33)、第1ETL(34)、リチウム有機錯体、およびEIL(37)を含むトップエミッション型デバイスの、10mA/cmでのパフォーマンス
【0238】
【表2】

〔発明の効果〕
表2から分かるように、LiQでドープされた技術水準の半導体材料において用いられた式(I)の試験対象化合物は、電流効率に関して、基準として用いた技術水準マトリクス化合物F4、F5、およびF6よりも良好な結果を示した(太字の結果)。
【0239】
本発明は、実用的な実施形態の例として現在考えられるものと関連させて説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、反対に、付随する請求項の技術思想および範囲内に含まれる様々な変更および同等の構成を包含するものとして理解されるべきである。したがって、上述の実施形態は例示的なものであって、本発明を一切限定するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0240】
図1】本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードを示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの有機層の一部を具体的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る有機発光ダイオードの有機層の一部を具体的に示す断面図である。
図1
図2
図3