(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058874
(43)【公開日】2022-04-12
(54)【発明の名称】電子ビームシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20220405BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20220405BHJP
H01J 37/21 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
H01J37/09 A
H01J37/28 B
H01J37/21 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015515
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2019560662の分割
【原出願日】2018-01-12
(31)【優先権主張番号】15/587,720
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロディー アラン ディー
(57)【要約】
【課題】マルチビーム検査システムの照明路におけるクーロン効果を低減する。
【解決手段】電子ビームシステム100は、電子ビーム源101と、マルチレンズアレイ104と、複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャ103を備える。ビーム制限アパーチャ103は電子ビーム源・マルチレンズアレイ間に配置され、電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてビームブラーを低減するよう構成される。ビーム制限アパーチャ103は、電子ビーム源101の、接地電位に設定されたアノードに連結されるとともに、1V/mm未満の電界または無電界の電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム源と、
マルチレンズアレイと、
複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャと、を備え、そのビーム制限アパーチャが前記電子ビーム源・前記マルチレンズアレイ間に配置されており、そのビーム制限アパーチャが、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてビームブラーを低減するよう構成され、前記ビーム制限アパーチャは、前記電子ビーム源の、接地電位に設定されたアノードに連結されるとともに、1V/mm未満の電界または無電界の電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置に配置され、
前記マルチレンズアレイの前記電子ビーム源から反対側の面上の要素であり、前記マルチレンズアレイからのビームレットの焦点距離を調整する要素と、
前記マルチレンズアレイと前記要素の間に配置された磁気レンズと、
を備える電子ビームシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記ビーム制限アパーチャが前記孔を少なくとも6個画定する電子ビームシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記電子ビーム源がエミッタ、サプレッサ及びエクストラクタを有する電子ビームシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記ビーム制限アパーチャが、それぞれ1μm~100μmの直径を呈するよう前記孔を画定する電子ビームシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の電子ビームシステムであって、
前記孔それぞれの直径が50μmである電子ビームシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記ビーム制限アパーチャが、2μm~100μmのピッチを呈するよう前記孔を画定する電子ビームシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の電子ビームシステムであって、
前記ピッチが100μmである電子ビームシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記ビーム制限アパーチャがシリコン、金属又は合金で作成されている電子ビームシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記ビーム制限アパーチャが、それぞれ丸くなるよう前記孔を画定する電子ビームシステム。
【請求項10】
請求項1に記載の電子ビームシステムであって、
前記孔が、多角形配列の態で前記ビーム制限アパーチャ内に配置されている電子ビームシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の電子ビームシステムを備える走査型電子顕微鏡。
【請求項12】
電子ビームを生成するステップと、
前記電子ビームを抽出するステップと、
複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャ内に前記電子ビームを差し向けるステップと、
前記電子ビームの投射方向を基準にして前記ビーム制限アパーチャの下流に位置するマルチレンズアレイ内にその電子ビームを差し向けるステップであり、そのビーム制限アパーチャが、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてビームブラーが低減されるよう構成されており、前記ビーム制限アパーチャは、前記電子ビーム源の、接地電位に設定されたアノードに連結されるとともに、1V/mm未満の電界または無電界の電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置に配置されている、ステップと、
前記電子ビームの投射方向を基準にして前記マルチレンズアレイの下流に位置する磁気レンズを通ってその電子ビームを差し向けるステップと、
前記電子ビームの投射方向を基準にして前記磁気レンズの下流に位置する要素を通ってその電子ビームを差し向けるステップと、
を有し、前記要素は前記磁気レンズからのビームレットの焦点距離を調整する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記電子ビームを前記マルチレンズアレイに通して50nmなる直径まで集束させる方法。
【請求項14】
電子ビームを生成するよう構成された電子ビーム源と、
ウェハの上流に位置するマルチレンズアレイと、
複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャであり、前記電子ビーム源・前記マルチレンズアレイ間に配置されたビーム制限アパーチャであり、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてビームブラーを低減するよう構成され、かつ、前記電子ビーム源の、接地電位に設定されたアノードに連結されるとともに、1V/mm未満の電界または無電界の電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置に配置されたビーム制限アパーチャと、
前記マルチレンズアレイの前記電子ビーム源から反対側の面上の要素であり、前記マルチレンズアレイからのビームレットの焦点距離を調整する要素と、
前記マルチレンズアレイと前記要素の間に配置された磁気レンズと、
前記ウェハの表面から返ってくる電子ビームから電子を検出するよう構成された検出器と、
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は電子ビームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子ビーム式検査システムでは、ショットキ熱電界電子エミッタにより電子ビームが生成されていた。エミッタの周囲にはサプレッサ電極があり、そのエミッタのシャンクから一次ビーム内への不要熱電子の入り込みがそのサプレッサ電極により抑圧されていた。エクストラクタ電極上の電圧で尖端の頂点における電界が決まっていた。尖端の電界により、その尖端から抽出できるであろうビーム流の量が決まっていた。そのエクストラクタの後段にある2個目の電極即ちアノードが、通常は、そのビームを所望エネルギまで加速するのに用いられていた。エミッタに発するビーム流の分布が数度まで拡がっていた。電子ビーム式検査システムでは、高分解能向けには1°未満なる小さなビーム源見込み角が必要となろう。走査型電子顕微鏡(SEM)では、通常、スプレイアパーチャを用い不使用電子が阻止される。そのカラムの更に下流にある2個目のアパーチャを、対物レンズの数値開口(NA)を設定する瞳アパーチャとして動作させることができる。こうした設計には、なおも、クーロン効果に係る問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0141169号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0102227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、必要なのは改善された電子ビームシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1実施形態では電子ビームシステムが提供される。本電子ビームシステムは、電子ビーム源と、マルチレンズアレイと、複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャと、を備える。そのビーム制限アパーチャはそれら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間に配置される。そのビーム制限アパーチャは、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてクーロン相互作用を低減するよう構成される。そのビーム制限アパーチャは、シリコン、金属又は合金で作成することができる。その電子ビーム源は、エミッタ、サプレッサ及びエクストラクタを有するものとすることができる。
【0006】
そのビーム制限アパーチャを、1V/mm未満の電界を有する電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置に配置することができる。例えば、その電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置を無電界とすることができる。
【0007】
そのビーム制限アパーチャによって、少なくとも6個の孔を画定することができる。そのビーム制限アパーチャによって、それぞれ1μm~100μmの直径を呈するよう孔を画定することができる。例えば孔それぞれの直径を50μmにすることができる。そのビーム制限アパーチャによって、2μm~100μmのピッチを呈するよう孔を画定することができる。例えばそのピッチを100μmにすることができる。そのビーム制限アパーチャによって、それぞれ丸くなるよう孔を画定することができる。それらの孔を、多角形配列の態でビーム制限アパーチャ内に配置することができる。
【0008】
第1実施形態の設計バリエーション又は例のうちいずれかに当たる電子ビームシステムを、走査型電子顕微鏡に具備させることができる。
【0009】
第2実施形態では方法が提供される。本方法は、電子ビームを生成するステップと、その電子ビームを抽出するステップと、複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャ内にその電子ビームを差し向けるステップと、その電子ビームの投射方向を基準にしてビーム制限アパーチャの下流に位置するマルチレンズアレイ内にその電子ビームを差し向けるステップと、を有する。そのビーム制限アパーチャは、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてクーロン相互作用が低減されるよう構成される。
【0010】
その電子ビームを、1V/mm未満の電界を有する領域内に配してビーム制限アパーチャ内に通すことができる。例えばその領域を無電界領域とすることができる。
【0011】
その電子ビームを、マルチレンズアレイに通して50nmなる直径まで集束させることができる。
【0012】
第3実施形態ではシステムが提供される。本システムは、電子ビームを生成するよう構成された電子ビーム源と、ウェハの上流に位置するマルチレンズアレイと、複数個の孔を画定するビーム制限アパーチャと、そのウェハの表面から返ってくる電子ビームから電子を検出するよう構成された検出器と、を備える。そのビーム制限アパーチャは、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間に配置される。そのビーム制限アパーチャは、それら電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてクーロン相互作用を低減するよう構成される。
【0013】
そのビーム制限アパーチャを、1V/mm未満の電界を有する電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置に配置することができる。例えば、その電子ビーム源・マルチレンズアレイ間位置を無電界にすることができる。
【0014】
本件開示の性質及び諸目的のより遺漏なき理解のためには、以下の添付図面と併せ後掲の詳細記述を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本件開示に係る電子ビームシステムの実施形態の模式図である。
【
図7】本件開示に係るシステムの実施形態を示す図である。
【
図8】本件開示に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特許請求の範囲記載の主題を特定の諸実施形態により記述するけれども、本願中で説明される長所及び特徴全てを提供しない諸実施形態を含め、他の諸実施形態もまた本件開示の技術的範囲内となる。様々な構造的、論理的、処理ステップ的及び電子的改変を、本件開示の技術範囲から離隔することなく施すことができる。従って、本件開示の技術的範囲は添付する特許請求の範囲への参照によってのみ定義される。
【0017】
本願記載の諸実施形態では、マルチビーム検査システムの照明路におけるクーロン効果を低減することで、マルチ電子ビームシステムの性能が改善される。ビーム制限アパーチャ(BLA)を用いて不使用電子を阻止し、下流に流れ続けないようにすることで、例えば帯電及び/又はガス電離を防止することができる。このBLAはクーロン効果の低減に役立ちうる。電子が電子光学カラム内を進行する際には、それら電子が帯電粒子であることから、クーロンの法則で記述される如く電子同士が相互作用する。その電子カラムにおける多数の電子の蓄積効果と、その電子カラム内でそれら電子が費やす時間の長さとにより、そのクーロン効果の規模が決まってくる。ビーム路上、電子源の近くにBLAを導入し、それにより電子を除去することで、電子光学カラム内電子が電子路の大部分にてより少数となる。電子が少数であるため、クーロン効果の規模を低減することができる。
【0018】
図1は、電子ビームシステム100のある実施形態の模式図である。本電子ビームシステム100は電子ビーム源101、ビーム制限アパーチャ(BLA)103及びマルチレンズアレイ(MLA)104を有している。その電子ビーム源101は、エミッタ109、サプレッサ110及びエクストラクタ102を有するものとすることができる。
【0019】
BLA103を電子ビーム源101のそばに配置することで、空間電荷効果を低減することができる。一例としては、BLA103が無電界領域内、エクストラクタ102の極力近くに配される。これにより、接地電位をとるアノード106よりも僅かに低電位とすることができる。
【0020】
BLA103は、許容範囲内のパワー及び/又は放熱が提供・実現されるシリコン、金属、合金その他の素材で作成するとよい。そうした素材のBLA103であれば、熱による熔融や歪みの発生に抗することができる。BLA103をアノード106に連結してもよい。BLA103の厚みは2μm~25μmとすることができるが、他の寸法でもかまわない。
【0021】
BLA103は「ペッパーポット」BLAと呼べるものである。
図1中のBLA103は、自BLA103を貫く複数個の孔105を画定している。BLA103に設ける孔105の個数は、その間にあるあらゆる範囲及び値を含め、1個~2000個又は3000個とすることができる。一例としてはBLA103により6個又は7個の孔105が画定される。より多数又は少数の孔105をBLA103に設けてもよい。
【0022】
各孔105の直径は、それらの間にあり0.5μmに至るあらゆる値及び範囲を含め、1μm~100μmとすることができる。一例としては各孔105の直径が50μmとされる。別例としては、それらの間にあり0.5μmに至るあらゆる値及び範囲を含め、各孔105の直径が1μm~10μmとされる。孔105のサイズを電子ビームのサイズに比し僅かに大きくすることで、MLA104の瞳アパーチャを照明で満たしきる(オーバフィルする)ことができる。更に、BLA103をシールドとして働かせその電子ビームの一部分を阻止することができる。
【0023】
孔105は、それらの間にあり0.5μmに至るあらゆる値及び範囲を含め、2μm~100μmのピッチを呈するようBLA103内に配置することができる。一例としてはBLA103における孔105のピッチが100μmとされる。
【0024】
図1中の挿入図は、BLA103の線A-A沿い正面外観の例を、同図の他部分とは別の縮尺で描いたものである。個々の孔105は丸くても多角形でもその他の形状でもよい。これら6個の孔105は(破線で示す如く)多角形パターンの態で配列されている。
【0025】
別例としては、BLA103により7個の孔105が多角形配列をなして画定される。更なる例としては、BLA103により約1000個の孔105が画定される。BLA103の一例は検査用のBLA103であり331個の孔105を有する。
【0026】
BLA103にて孔105を多角形パターンの態で配列することは、それらの孔105が円を近似する要領で並ぶことになるので、有益であろう。電子ビーム式検査システムにて用いられる電子光学系は往々にして回転対称なのである。その巨視的電子レンズの内法エリアを最適化するには円を近似するパターンが望ましかろう。
【0027】
電子ビーム源101により生成された電子ビーム107のうち、BLA103の孔105内を通る電子ビーム107は、そのBLA103によって複数本のビームレット108へと転化される。ビームレット108は孔105毎に1本作成される。各ビームレット108のBLA103退出時直径は約50nmとなりうる。こうした設計の電子ビームシステム100によれば、複数本の細いビームレット108を作成し、それらを互いに拡散させることができる。電子ビーム107の残りはBLA103により阻止される。
【0028】
MLA104はレンズの2Dアレイを有している。MLA104内の個別レンズには、その個別レンズに係る光軸乃至第3軸に沿いより多数の孔を設けることができる。一例としては、MLA104のレンズの孔と、BLA103の孔105とを、1対1写像の関係とする。
【0029】
マルチビームシステムはMLA104、例えば静電的なそれをフラッド照明することで生成される。静電レンズは、MLA104のアパーチャを横断する方向に沿い電界を配することで形成される。個々の個別レンズによって、電子ビーム源101の像が仮想源面に作成され、次いでそれがウェハ上へと縮小投射される。MLA104を照明するには、ビーム源からの照明角を大きくする必要があろう。この照明角は例えば高々2°でよいが、他の値にしてもよい。
【0030】
BLA103は電子ビーム源101・MLA104間に配置されている。BLA103を、電子ビーム源101・MLA104間にあり1V/mm未満又は無電界の領域又は位置に所在させることで、孔105によるレンズ効果を抑えること、更にはなくすことができる。即ち、BLA103によりビームレット108が集束されることがない。無電界とは0V/mmのことであるが、レンズ効果が生じなければ、他の0V/mm近傍値であってもよい。BLA103を電子ビーム源101・MLA104間に配置することで、その領域におけるクーロン相互作用を低減することができる。そうする際に、BLA103が光学部材として動作することがなく、トレランス条件が低減される。ある例によれば、約3nm~10nmの分解能にて、ウェハに送給される電子ビーム流を2倍化、3倍化又は4倍化することができる。
【0031】
電子相互作用及びクーロン相互作用は問題を引き起こしがちである。例えば、それらの相互作用によって、色収差又は分散により生じたブラー(ぼけ)が増すことがある。横ブラーは補正できないこともありうる。BLA103を適宜構成することで、電子ビーム源101・MLA104間でのクーロン相互作用を低減することができる。ビームレット108に分けることで、更に、クロストークを減らして性能を更に改善することができる。
【0032】
一例としては、エミッタ109を-VEで動作させ、エクストラクタ102を-Vextで動作させ、サプレッサ110を-VS(例.-VE-1000V)で動作させ、且つアノードを0Vで動作させる。MLA104に電圧を印加してもよい。例えば、-VEを6000V~30000Vとし、-Vextを-VE+3000V~7000Vとする。
【0033】
電子ビーム又はビームレット108の方向を基準として、MLA104の下流には磁気レンズ111があり、これには少なくとも1個のコイル113と磁極片112とが備わっている。要素114はそれらビームレット108の軌道、焦点及び/又はサイズを調整する。
【0034】
本電子ビームシステム100は、例えば、SEMその他の装置にて用いることができる。
【0035】
図2~
図6はモンテカルロシミュレーションで得た電子ビームヒストグラムである。
図2にはBLAの上流における250μm電子ビームが示されている。
図3にはBLAの下流における電子ビームが示されている。
図4にはMLAの上流における電子ビームが示されている。
図5にはMLAの下流における電子ビームが示されている。
図6には電子ビームの中間像が示されている。本願開示の如くBLAを用いることで、
図2~
図6中にシミュレーションで示した如くクーロンブラーが低減される。中心電子ビームブラーは、BLA無しの場合の49nmに比べD2080=31nmまで低減されている。総電流は、BLA無しでの16.1nAから、BLA有りでの6.3nAまで低減されている。これらシミュレーションから分かる通り、BLAによって、BLA無しのシステムに対しほぼ2倍良好な、改善された性能を提供することができる。
【0036】
本願記載の諸実施形態はシステム、例えば
図7のシステム200を有するものとし又はそのシステムにて実行することができる。本システム200は、少なくともエネルギ源及び検出器を有する出力獲得サブシステムを有している。その出力獲得サブシステムの例は電子ビーム式出力獲得サブシステムである。例えばある実施形態では、ウェハ204に向かうエネルギに電子が含まれ、そのウェハ204から検出されるエネルギに電子が含まれる。この形態におけるエネルギ源の例は電子ビーム源202であり、これには本願開示の電子ビームシステムを具備又は結合させることができる。
図7に示すその種の実施形態では、出力獲得サブシステムが電子光学カラム201を有し、それがコンピュータサブシステム207に結合されている。
【0037】
これも
図7に示す通り、電子光学カラム201は、電子を生成するよう構成された電子ビーム源202を有しており、それら電子が1個又は複数個の要素203によりウェハ204の方へと集束されている。電子ビーム源202にはエミッタを設けることができ、1個又は複数個の要素203には、例えばガンレンズ、アノード、BLA、MLA、ゲートバルブ、ビーム流選択アパーチャ、対物レンズ及び/又は走査サブシステムを含めることができる。電子カラム201には、本件技術分野において既知で好適な他のあらゆる要素を設けることができる。電子ビーム源202が1個しか描かれていないが、本システム200に複数個の電子ビーム源202を設けてもよい。
【0038】
ウェハ204から返された電子(例.二次電子)は、1個又は複数個の要素205により検出器206の方へと集束させることができる。1個又は複数個の要素205には例えば走査サブシステムを含めることができ、またそれは、要素203に含まれるものと同じ走査サブシステムとすることができる。電子カラム201には、本件技術分野において既知で好適な他のあらゆる要素を設けることができる。
【0039】
図7に示した電子カラム201は、電子をある斜め入射角にてウェハ204に差し向け別の斜め角にてウェハから散乱させるよう構成されているが、理解し得るように、電子ビームをウェハに差し向けウェハから散乱させる角度は任意の好適な角度とすることができる。加えて、その電子ビーム式出力獲得サブシステムを、複数個のモードを用い(例.相異なる照明角、収集角等々で以て)ウェハ204の像を生成するよう、構成することができる。それら、電子ビーム式出力獲得サブシステムの複数個のモードは、その出力獲得サブシステムのいずれの画像生成パラメタが異なるものであってもよい。
【0040】
コンピュータサブシステム207は検出器206と電子通信することができる。ウェハ204の表面から返された電子をその検出器206により検出してそのウェハ204の電子ビーム像を形成することができる。それら電子ビーム像にはあらゆる好適な電子ビーム像が含まれうる。コンピュータサブシステム207は、検出器206の出力及び/又はそれら電子ビーム像を用い他の機能又は付加的なステップを実行するよう、構成することができる。
【0041】
注記されることに、本願に
図7を設けたのは、電子ビーム式出力獲得サブシステムの構成を概略描写するためである。本願記載の電子ビーム式出力獲得サブシステムの構成は、商用の出力獲得システムを設計する際通常行われている通り、その出力獲得サブシステムの性能が最適化されるよう改変することができる。加えて、本願記載の諸システムを、既存システムを用いて(例.既存システムに本願記載の機能を付加することで)実現することができる。その種のシステムのうちあるものでは、本願記載の諸方法をそのシステムの付随的機能として(例.そのシステムの他機能に加え)提供することができる。
【0042】
一実施形態に係るシステム200は検査システムである。例えば、本願記載の電子ビーム式出力獲得サブシステムを検査システムとして構成することができる。もう一つの実施形態に係るシステム200は欠陥レビューシステムである。例えば、本願記載の電子ビーム式出力獲得サブシステムを欠陥レビューシステムとして構成することができる。更なる実施形態に係るシステム200は計量システムである。例えば、本願記載の電子ビーム式出力獲得サブシステムを計量システムとして構成することができる。とりわけ、本願に記載され
図7に示されているシステム200の諸実施形態にて、1個又は複数個のパラメタを修正することで、それらが用いられるであろう用途に応じ、相異なるイメージング能力を提供することができる。その種の例のうちあるものによれば、検査ではなく欠陥レビュー又は計量での使用が想定されているときに、
図7に示されているシステム200を、より高い分解能を呈するよう構成することができる。言い換えれば、本システム200について
図7に示した実施形態は、システム200に関しある種の一般的で多様な構成を述べており、多々ある要領に従いそれを仕立て上げることで、相異なる用途に多少とも適した相異なるイメージング能力を有する出力獲得サブシステムを提供することができる。
【0043】
とりわけ、本願記載の諸実施形態をコンピュータノード又はコンピュータクラスタ上に実装し、それを電子ビーム式インスペクタ若しくは欠陥レビューツール、マスクインスペクタ、仮想インスペクタその他の諸装置等といった出力獲得サブシステムの構成部材とすること、或いはその出力獲得サブシステムに結合させることができる。こうすることで、本願記載の諸実施形態によれば、これに限られるものではないがウェハ検査、マスク検査、電子ビーム式検査及びレビュー、計量又はその他の諸用途を初め、様々な用途にて用いうる出力を生成することができる。
図7に示したシステム200の特性は、出力を生成するであろう試料を踏まえ上述の如く修正することができる。
【0044】
図8は方法300のフローチャートである。電子ビームが生成され(301)、抽出され(302)、BLA内に差し向けられ(303)、そしてその電子ビームの投射方向を基準としてそのBLAの下流にあるMLA内へと差し向けられる(304)。そのBLAにより複数個の孔が画定される。そのBLAは、電子ビーム源・マルチレンズアレイ間にてクーロン相互作用を低減するよう構成されている。電子ビームが1V/mmの領域即ち無電界領域内にあるときに、BLA内にその電子ビームを通すことができる。その電子ビームをMLA内に通すことで、例えば50nmなる直径まで集束させることができる。
【0045】
本方法の各ステップは本願記載の如く実行されうる。また、本方法には、本願記載のコントローラ及び/又はコンピュータサブシステム(群)又はシステム(群)により実行可能なあらゆる他ステップ(群)を含めうる。それらのステップは1個又は複数個のコンピュータシステムにより実行することができ、またその又はそれらのコンピュータシステムは本願記載の諸実施形態のいずれによっても構成することができる。加えて、上述の諸方法を本願記載のシステム実施形態のうちいずれにより実行してもよい。
【0046】
本件開示について、1個又は複数個の具体的実施形態を基準にして記述してきたが、理解し得るように、本件開示の技術的範囲から離隔することなく、本件開示の他の諸実施形態をなすことができる。従って、本件開示は、添付する諸請求項及びその合理的解釈によってのみ限定されるものと認められる。