(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059394
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】シート把持装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/20 20060101AFI20220406BHJP
B65H 3/08 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B65H3/20
B65H3/08 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167107
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 友哉
(72)【発明者】
【氏名】岩波 卓也
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦支
(72)【発明者】
【氏名】榮田 彩
(72)【発明者】
【氏名】鈴井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 義美
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA08
3F343FA09
3F343FB15
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC02
3F343GD04
3F343JB04
3F343JB27
3F343JC07
3F343JC16
3F343JC20
3F343KB04
3F343KB18
3F343LA04
3F343LA14
3F343LA16
3F343LB04
3F343LC11
3F343LC16
3F343LD06
3F343MB13
(57)【要約】
【課題】本発明は、機構が簡単で、かつ、調整が容易であり、シート束の最上位のシートを1枚ずつ確実に把持できるシート把持装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るシート把持装置Aは、シート束Bの最上位のシートB1を貼着する貼着手段10と、シートB1を吸着する吸着手段30とを備え、前記貼着手段10は、シートB1を貼着する粘着性の貼着部12を有する貼着具11と、当該貼着部12を、シートB1を貼着する貼着位置aと貼着したシートB1を移動させて吸着手段30により吸着させる吸着位置bとに変位させる貼着部変位装置20とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束最上位のシートを貼着する貼着手段と、シートを吸着する吸着手段とを備え、
前記貼着手段は、シートを貼着する粘着性の貼着部を有する貼着具と、
当該貼着部を、シートを貼着する貼着位置と貼着したシートを移動させて吸着手段により吸着させる吸着位置とに変位させる貼着部変位装置とを備える
ことを特徴とするシート把持装置。
【請求項2】
前記貼着手段における貼着部が、前記貼着部変位装置により、下方の貼着位置と上方の吸着位置とに変位する
ことを特徴とする請求項1に記載のシート把持装置。
【請求項3】
前記貼着手段における貼着部が、前記貼着部変位装置により、下向きの貼着位置と横向きの吸着位置とに変位する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート把持装置。
【請求項4】
前記吸着手段は、シートを吸着する吸着部を有する吸着具と、当該吸着部を前記貼着部と共に変位させる吸着部変位装置とを備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシート把持装置。
【請求項5】
前記貼着手段及び吸着手段を移動させる移動手段を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のシート把持装置。
【請求項6】
前記移動手段による前記貼着手段及び吸着手段の移動が上下動である
ことを特徴とする請求項5に記載のシート把持装置。
【請求項7】
前記貼着手段は、前記貼着部変位装置による貼着部の変位を制御する貼着部変位制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシート把持装置。
【請求項8】
前記吸着手段は、前記シートの吸着を作動及び停止させる吸着制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシート把持装置。
【請求項9】
前記移動手段は、前記貼着手段及び吸着手段の移動を制御する移動制御手段を備える
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のシート把持装置。
【請求項10】
シート束最上位のシートを貼着する貼着手段と、シートを吸着する吸着手段と、当該貼着手段と吸着手段とを上下動させる移動手段とを備え、
前記貼着手段は、シートを貼着する粘着性の貼着部を有する貼着具と、当該貼着部を、シートを貼着する下方下向きの貼着位置と貼着したシートを移動させて吸着手段により吸着させる上方横向きの吸着位置とに回動により変位させる貼着部変位装置と、当該貼着部の変位を制御する貼着部変位制御手段とを備え、
前記吸着手段は、シートを吸着する吸着部を有する吸着具と、当該吸着部を前記貼着部と共に下方下向きと上方横向きとに回動により変位させる吸着部変位装置と、当該吸着部によるシートの吸着を作動及び停止させる吸着制御手段とを備え、
前記移動手段は、前記貼着手段及び吸着手段の上下動を制御する移動制御手段を備え、
前記移動制御手段は、前記移動手段を作動させて前記貼着部が下向き状態にある前記貼着手段と前記吸着部が下向き状態にある前記吸着手段とを共に降下させ、前記貼着部が積み重ねられたシート束のうちの最上位のシートに接触する位置に達したときに前記移動手段を停止させて前記貼着手段及び吸着手段の降下を停止させ、
前記貼着部変位制御手段は、前記移動手段による前記貼着手段の降下が停止したときに、前記貼着部変位装置を作動させて前記貼着部を回動により上方横向きに変位させることにより当該貼着部がシートを貼着した状態でシートを捲り上げると共に当該貼着部変位装置の作動に伴って前記吸着部変位装置により前記吸着部が回動により上方横向きに変位し、当該貼着部がシートを捲り上げたときに当該貼着部変位装置を停止させ、
前記吸着制御手段は、前記吸着部変位装置により前記吸着部が上方横向きに変位したときに前記吸着部からの吸着を作動させて前記貼着部が貼着して捲り上げたシートを吸着させ、
前記移動制御手段は、前記移動手段を作動させて前記貼着部がシートを貼着して捲り上げた前記貼着手段と前記吸着部がシートを吸着した前記吸着手段とを共に上昇させ、当該貼着手段及び吸着手段が所定高さに達したときに、当該移動手段の作動を停止させて当該貼着手段及び吸着手段の上昇を停止させ、
前記吸着制御手段は、前記貼着手段及び吸着手段の上昇が停止したときに前記吸着部からの吸着を停止させ、
前記吸着部からの吸着が停止した後に前記貼着部が貼着して捲り上げたシートの除去を可能とし、
シートが除去された後、前記貼着部変位制御手段は、前記貼着部変位装置を作動させて前記貼着部を回動により下向きに変位させると共に当該貼着部変位装置の作動に伴って前記吸着部変位装置により前記吸着部が回動により下向きに変位したときに前記貼着部変位装置を停止させる
ことを特徴とするシート把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のシートを積み重ねてなるシート束において、そのシート束の最上位のシートから順にシートを1枚ずつ取り出すことができるシート把持装置に関する。
【0002】
なお、本明細書における「シート」は、織り地、編地、不織布及び薄い樹脂シート等の薄肉のシートを総称する。
【背景技術】
【0003】
古くから縫製工場等における布供給工程、すなわち例えばミシン等の縫製機械における所定の位置に布を1枚ずつ供給する工程、を自動化することが求められている。この要求に対して下記特許文献に示されるように、裁断後の布束から最上位の布を1枚ずつ取り出すための布把持装置が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の織布自動搬送装置は、接着テープにより最上位の布1枚の前端部を接着して浮かし、その浮いた前端を挟持機能を有する把持装置により挟み込んで布1枚を移動させる構成である。
【0005】
特許文献2に記載の布把持装置は、吸着体により最上位を含む複数枚の布の側方部の布端を吸引して吸着体に捲装し、布分離手段からの空気流を吸着体に捲装されている複数枚の布の重合端部に向かって吐出又は吸気することにより、余剰の布を吸着体から分離して、吸着体を水平移動させることにより布1枚を搬送する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62-249837号公報
【特許文献2】特開平1-247340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のように、接着テープを利用することについては、吸着装置を利用した場合のように布を複数枚吸着してしまうようなことはないが、接着テープをその都度回転させる構成であるため機構が複雑であり、また、接着テープにより浮かした布1枚を挟み込んで把持する構成であるため、厚みが薄い布を確実に挟持する位置及びそのタイミング及び挟持力の微妙な調整が必要であり、狂いが生じると布の把持ができない欠点がある。
【0008】
また、裁断後の布は、その裁断面に糸が解れて絡んでいるため、最上位の布をまっすぐ上に引き上げると、糸が絡んでいる下の布も一緒に引き上げられてしまう現象が生ずる。上記特許文献1記載のものでは、油圧昇降装置によって上昇する布の前端部の表面に、固定されている接着テープの接着剤の面が接触して押し付けられ、次いで油圧昇降装置が下降していく構造であるから、上昇と下降とが逆であるとしても前記と同様の糸が絡んでいる下の布も一緒に連られてしまう現象が生じるので、結局、特許文献1記載の装置においては、1枚の布を、その下の布を引き連れることなく分離することはできていない。
【0009】
特許文献2に記載されている装置では、吸着体に捲装された複数枚の布を布分離手段により最上段の1枚の布を残して余剰の布を吸着体から上手く分離するには、吸着体に向かって吐出又は吸気する空気流の調整が難しいという問題がある。
【0010】
また、吸着体で吸着しておいて分離する時に回転させる方法は、通気性の低い布の場合は有効と思われるが、通気性の高い布の場合は、布を確実に吸着するには大流量のエアーが必要になり、そのため下の布も強力に吸着されることになり、吸着体を回転させても上下の布を上手く分離することが難しく、そのため吸着力の調整が難しくなる問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、機構が簡単で、かつ、調整が容易であり、シート束の最上位のシートを1枚ずつ確実に把持できるシート把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシート把持装置Aは、シート束Bの最上位のシートB1を貼着する貼着手段10と、シートB1を吸着する吸着手段30とを備え、前記貼着手段10は、シートB1を貼着する粘着性の貼着部12を有する貼着具11と、当該貼着部12を、シートB1を貼着する貼着位置aと貼着したシートB1を移動させて吸着手段30により吸着させる吸着位置bとに変位させる貼着部変位装置20とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記貼着手段10における貼着部12が、前記貼着部変位装置20により、下方の貼着位置aと上方の吸着位置bとに変位する構成としてもよい。
【0014】
さらに、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記貼着手段10における貼着部12が、前記貼着部変位装置20により、下向きの貼着位置aと横向きの吸着位置bとに変位する構成としてもよい。
【0015】
さらにまた、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記吸着手段30は、シートB1を吸着する吸着部32を有する吸着具31と、当該吸着部32を前記貼着部12と共に変位させる吸着部変位装置40とを備える構成としてもよい。
【0016】
また、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記貼着手段10及び吸着手段30を移動させる移動手段60を備える構成としてもよい。
【0017】
さらに、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記移動手段60による前記貼着手段10及び吸着手段30の移動が上下動である構成としてもよい。
【0018】
さらにまた、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記貼着手段10は、前記貼着部変位装置20による貼着部12の変位を制御する貼着部変位制御手段25を備える構成としてもよい。
【0019】
さらに、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記吸着手段30は、前記シートB1の吸着を作動及び停止させる吸着制御手段50を備える構成としてもよい。
【0020】
さらにまた、上記のシート把持装置Aの構成に加えて、前記移動手段60は、前記貼着手段10及び吸着手段30の移動を制御する移動制御手段70を備える構成としてもよい。
【0021】
本発明に係るシート把持装置Aは、シート束Bの最上位のシートB1を貼着する貼着手段10と、シートB1を吸着する吸着手段30と、当該貼着手段10と吸着手段30とを上下動させる移動手段60とを備え、前記貼着手段10は、シートB1を貼着する粘着性の貼着部12を有する貼着具11と、当該貼着部12を、シートB1を貼着する下方下向きの貼着位置aと貼着したシートB1を移動させて吸着手段30により吸着させる上方横向きの吸着位置bとに回動により変位させる貼着部変位装置20と、当該貼着部12の変位を制御する貼着部変位制御手段25とを備え、前記吸着手段30は、シートB1を吸着する吸着部32を有する吸着具31と、当該吸着部32を前記貼着部12と共に下方下向きと上方横向きとに回動により変位させる吸着部変位装置40と、当該吸着部32によるシートB1の吸着を作動及び停止させる吸着制御手段50とを備え、前記移動手段60は、前記貼着手段10及び吸着手段30の上下動を制御する移動制御手段70を備え、前記移動制御手段70は、前記移動手段60を作動させて前記貼着部12が下向き状態にある前記貼着手段10と前記吸着部32が下向き状態にある前記吸着手段30とを共に降下させ、前記貼着部12が積み重ねられたシート束Bのうちの最上位のシートB1に接触する位置に達したときに前記移動手段60を停止させて前記貼着手段10及び吸着手段30の降下を停止させ、前記貼着部変位制御手段25は、前記移動手段60による前記貼着手段10の降下が停止したときに、前記貼着部変位装置20を作動させて前記貼着部12を回動により上方横向きに変位させることにより当該貼着部12がシートB1を貼着した状態でシートB1を捲り上げると共に当該貼着部変位装置20の作動に伴って前記吸着部変位装置40により前記吸着部32が回動により上方横向きに変位し、当該貼着部12がシートB1を捲り上げたときに当該貼着部変位装置20を停止させ、前記吸着制御手段50は、前記吸着部変位装置40により前記吸着部32が上方横向きに変位したときに前記吸着部32からの吸着を作動させて前記貼着部12が貼着して捲り上げたシートB1を吸着させ、前記移動制御手段70は、前記移動手段60を作動させて前記貼着部12がシートB1を貼着して捲り上げた前記貼着手段10と前記吸着部32がシートB1を吸着した前記吸着手段30とを共に上昇させ、当該貼着手段10及び吸着手段30が所定高さに達したときに、当該移動手段60の作動を停止させて当該貼着手段10及び吸着手段30の上昇を停止させ、前記吸着制御手段50は、前記貼着手段10及び吸着手段30の上昇が停止したときに前記吸着部32からの吸着を停止させ、前記吸着部32からの吸着が停止した後に前記貼着部12が貼着して捲り上げたシートB1の除去を可能とし、シートB1が除去された後、前記貼着部変位制御手段25は、前記貼着部変位装置20を作動させて前記貼着部12を回動により下向きに変位させると共に当該貼着部変位装置20の作動に伴って前記吸着部変位装置40により前記吸着部32が回動により下向きに変位したときに前記貼着部変位装置20を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るシート把持装置は、上記のような構成よりなるため、積み重ねられているシート束の最上位のシートを1枚ずつ確実に取り出すことができる。
【0023】
また、シンプルな構成であって、複雑な調整を必要としないので、不具合が起きにくい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例に係るシート把持装置の正面図である。
【
図2】本発明の実施例に係るシート把持装置の右側面図である。
【
図3】本発明の実施例に係るシート把持装置の空気圧の回路図である。
【
図4】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、移動手段により貼着手段と吸着手段とが上昇して停止している状態を示す図である。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図5】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、
図4に示す状態から移動手段により貼着手段と吸着手段とが下降し、貼着手段が最上位のシートを貼着して停止している状態を示す図である。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図6】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、
図5に示す状態からシートを貼着した貼着手段が吸着手段と共に回動してシートが捲り上がっている状態を示す図である。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図7】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、
図6に示す状態から貼着手段により貼着された最上位のシートを吸着手段が吸着している状態を示す図である。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図8】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、
図7に示す状態から貼着手段により貼着され、吸着手段により吸着された最上位のシートが移動手段により上昇している状態を示す図である。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図9】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、
図8に示す状態から最上位のシートに対して吸着手段による吸着が停止して開放され、最上位のシートがシート把持装置から除去可能になった状態を示す図である。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図10】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示し、
図9に示す状態からシート把持装置からシートが除去された状態を示す図である。この状態から貼着手段及び吸着手段が回動して
図4に示す状態に戻る。図中の(a)及び(b)は異なる角度から撮影したものである。
【
図11】本発明の実施例に係るシート把持装置の動作を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の好適な実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0026】
図1、
図2、
図4~
図10におけるAは、本実施例に係るシート把持装置を示し、シート把持装置Aは、載置台1上に積み重ねられたシート束Bの最上位のシートB1を貼着する貼着手段10と、シートB1を吸着する吸着手段30と、貼着手段10と吸着手段30とを上下動させる移動手段60とを備えている。なお、
図1においては、貼着手段10の構造が把握できるように右側の吸着手段30を省略して図示しているが、吸着手段30は左右両側に設けられている。
【0027】
前記貼着手段10は、
図1、
図6~
図8に示すように、シートB1の両端部にそれぞれ接触するように2箇所に配置されており、シートB1の幅に応じて調整できるように水平移動が可能になっている。そして、前記貼着手段10は、
図1及び
図2に示すように、貼着具11と、貼着部変位装置20と、貼着部変位制御手段25とを備えている。
【0028】
前記貼着具11は、シートB1を貼着する粘着性の貼着部12を有している。なお、前記貼着具11は、本実施例においては矩形状のものを使用し、その下面が貼着部12を有するものであるが、貼着具は、貼着部を有する長尺軸よりなる構成としてもよく、また、断面多角形の多面体をなす長尺軸より構成され、各面に粘着部を有する構成としてもよい。
【0029】
前記貼着部変位装置20は、前記貼着具11と共に前記貼着部12を変位させるものであって、
図1及び
図5に示すように、前記貼着部12を回動させることにより貼着部12を下方下向きの貼着位置aと、
図1及び
図5に示すように、貼着部12を移動させた上方横向きの吸着位置bとに変位させる。そして、
図1、
図6及び
図7に示すように、貼着部12が貼着位置aにあるときには貼着部12が下方下向きになってシートB1を貼着し、
図7に示すように、貼着部12が吸着位置bにあるときには上方横向きになると共に、貼着部12が貼着したシートB1を捲り上げて吸着手段30により吸着させる。
【0030】
前記貼着部変位制御手段25は、
図3に示すようにエアーシリンダーによる制御であって、エアーシリンダーにより貼着部変位装置20を作動及び停止させるものである。貼着部変位制御手段25により貼着部変位装置20を作動させて、貼着部変位装置20における貼着具11の貼着部12を、上記したように貼着位置aと吸着位置bとに変位させる。また、貼着位置aと吸着位置bとにおいて貼着部変位制御手段25により貼着部変位装置20を停止させることにより貼着部12が停止する。なお、この制御はエアーシリンダーに限られるものではなく、油圧機器や電磁機器であってもよい。
【0031】
前記吸着手段30は、吸着具31と、吸着部変位装置40と、吸着制御手段50とを備えている。当該吸着手段30は、
図1、
図6~
図8に示すように、前記貼着手段10と同様に左右2箇所に配置されている。
【0032】
前記吸着具31は、
図1~
図3に示すように、シート束Bの最上位のシートB1を吸着する吸着部32を有する。
【0033】
前記吸着部変位装置40は、
図2に示すように、連結部材41を介して前記貼着部変位装置20とつながっており、当該吸着部32を、前記貼着部12が前述したように下方下向きと上方横向きとに回動により変位すると共に下方下向きと上方横向きとに回動により変位させる。
【0034】
なお、この吸着部変位装置は必ずしも設ける必要はなく、吸着部を常に上方横向きの態勢にしておき、その位置で待機しておいて、貼着部が捲り上げたシートを吸着するようにしてもよい。
【0035】
前記吸着制御手段50は、前記吸着部32によるシートB1の吸着を作動及び停止させるものであって、
図3に示すように、吸着制御手段50が作動すると吸着具31の吸着部32から空気を吸入することによりシートB1を吸着し、吸着制御手段50が停止すると吸着部32による空気の吸入が停止してシートB1を吸着しなくなる。
【0036】
また、
図1及び
図3に示すように、左右2箇所の吸着手段30の間には補助吸着手段35が配置されていて、前記移動手段60により前記吸着手段30と共に上下動するようになっている。また、補助吸着手段35には補助吸着部37を有する補助吸着具36を備えており、前記吸着具31の吸着動作と合わせたシートB1を吸着する吸着動作が行えるように設定されている。
【0037】
前記移動手段60は、
図2に示すように、前記貼着手段10及び吸着手段30を上下動させるものであって、その上下動を
図3に示すエアーシリンダーC11により制御する移動制御手段70を備えている。なお、この制御はエアーシリンダーに限られるものではなく、油圧機器や電磁機器であってもよい。
【0038】
前記移動制御手段70は、
図4に示す状態から、前記移動手段60を作動させて貼着具11の前記貼着部12が下向き状態にある前記貼着手段10と、前記吸着部32が下向き状態にある前記吸着手段30とを共に降下させて、
図5に示す状態にする。そして、前記移動制御手段70は、
図5に示すように、前記貼着部12が積み重ねられたシート束Bのうちの最上位のシートB1に接触する位置に達したときに、前記移動手段60を停止させて前記貼着手段10及び吸着手段30の降下を停止させる。
【0039】
前記貼着部変位制御手段25は、前記移動手段60による前記貼着手段10の降下が停止したときに、
図6に示すように、前記貼着部変位装置20を作動させて前記貼着部12を回動により上方横向きに変位させることにより当該貼着部12がシートB1を貼着した状態でシートB1を捲り上げる。この貼着部12の変位と共に当該貼着部変位装置20の作動に伴って、前述したように前記吸着部変位装置40により前記吸着部32が回動により上方横向きに変位する。そして、当該貼着部12がシートB1を捲り上げたときに前記貼着部変位制御手段25は当該貼着部変位装置20を停止させる。
図6に示す状態においては、貼着部12と吸着部32は共に上方横向きに変位しており、貼着部12のみがシートB1を貼着しており、吸着部32はシートB1を吸着していない。
【0040】
前記吸着制御手段50は、前記吸着部変位装置40により前記吸着部32が上方横向きに変位したときに前記吸着部32からの吸着を作動させて、
図7に示すように、前記貼着部12が貼着して捲り上げたシートB1を吸着させる。
【0041】
前記移動制御手段70は、前記移動手段60を作動させて、
図8に示すように、前記貼着部12がシートB1を貼着して捲り上げた前記貼着手段10と前記吸着部32がシートB1を吸着した前記吸着手段30とを共に上昇させ、当該貼着手段10及び吸着手段30が所定高さに達したときに、当該移動手段60の作動を停止させて当該貼着手段10及び吸着手段30の上昇を停止させる。
【0042】
前記吸着制御手段50は、前記貼着手段10及び吸着手段30の上昇が停止したときに前記吸着部32からの吸着を停止させてシートB1を吸着から開放する。
【0043】
前記吸着部32からの吸着が停止した後に、
図9に示すように、前記貼着部12が貼着して捲り上げたシートB1の除去を可能とする。
図9においては、人が手でシートB1を除去するところを示したが、もちろん機械的手段、すなわち貼着手段や吸着手段を使用し、貼着や吸着により取着したシートB1を所定の箇所、例えば縫製場所等の次の加工工程の場所に機械的移動手段により移動するようにしてもよい。
【0044】
そして、
図10に示すように、シートB1が除去された後、前記貼着部変位制御手段25は、
図4に示すように、前記貼着部変位装置20を作動させて前記貼着部12を回動により下向きに変位させると共に当該貼着部変位装置20の作動に伴って前記吸着部変位装置40により前記吸着部32を回動により下向きに変位させ、
図4に示す状態に戻ったときに前記貼着部変位装置20を停止させる。このように、
図10に示す状態から
図4に示す状態に戻り、これを繰り返すことにより、シート束Bにおける最上位のシートB1が順次1枚ずつ取り出すことが可能となる。
【0045】
なお、本実施例においては、
図1~
図3に示すように、シート束Bを載置する載置台1の下面にもシートを吸着する下部吸着手段55が配置されており、シート束Bの枚数が残り少なくなったとき、例えば2枚か3枚になったときに、最上位のシートB1が上昇する際に、最上位のシートB1の下位のシートを下部吸着手段55における下部吸着部56により吸着させることによって、その下位のシートが最上位のシートB1と共に上昇しないようになっている。
【0046】
【0047】
図中のC1はエアー源であり、エアー源C1からのエアーがフィルタC2及び圧力調整器C3を通過し、バルブC4を介して吸着制御手段50側と貼着部変位制御手段25及び移動制御手段70側とにエアーが分岐して供給される。吸着制御手段50側へ供給されたエアーは、吸着制御手段50であるバルブを介して左右両側に配されている吸着手段30の吸着具31に供給されて吸着部32からエアーが吸入される。補助吸着手段35の補助吸着具36側にはバルブC5を介してエアーが供給され、補助吸着部37からエアーが吸入される。また、下部吸着手段55側にはバルブC6を介してエアーが供給され、下部吸着部56からエアーが吸入される。
【0048】
貼着部変位制御手段25側に供給されるエアーはバルブC7を介してエアーシリンダーC8、C9にエアーが供給されて貼着部変位装置20が作動する。移動制御手段70側に供給されるエアーはバルブC10を介してエアーシリンダーC11に供給されて移動手段60が作動する。
【0049】
【0050】
STEP1においては、移動手段60により貼着部12が下向きの状態にある貼着手段10と吸着部32が下向きの状態にある吸着手段30が降下する。すなわち、
図4に示す状態から
図5に示す状態に変化する。
【0051】
STEP2においては、
図5に示すように、下向きの貼着部12によりシートB1が貼着される。
【0052】
STEP3においては、貼着部12が下向きの状態にある貼着具11が吸着部32が下向きの状態にある吸着具31と共に回動して横向きとなり、貼着部12により貼着されているシートB1が捲り上がる。すなわち、
図5に示す状態から
図6に示す状態に変化する。
【0053】
STEP4においては、
図7に示すように、横向きになっている吸着部32によりシートB1が吸着される。
【0054】
STEP5においては、移動手段60により貼着手段10と吸着手段30が上昇する。すなわち、
図7に示す状態から
図8に示す状態に変化する。
【0055】
STEP6においては、吸着部32による吸着が停止する。
【0056】
STEP7においては、
図9に示すように、貼着手段10の貼着部12に貼着しているシートB1を剥がして取り除く。
【0057】
STEP8においては、横向きにある貼着部12と吸着部32とが下向きに回動して、
図10に示す状態となる。STEP8からSTEP1に戻り、これを繰り返すことにより、積み重ねられたシート束Bから最上位のシートB1が順次取り除くことが可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。