(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059474
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】反応性液晶ポリエステル、ポリエステル組成物、ポリエステル溶液、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 63/18 20060101AFI20220406BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220406BHJP
C08F 299/04 20060101ALI20220406BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
C08G63/18
C08F290/06
C08F299/04
C08L67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167256
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】神成 広義
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 龍一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J127
【Fターム(参考)】
4J002CF031
4J002EP016
4J002GQ00
4J029AA03
4J029AB02
4J029BB09A
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4J029CD05
4J127AA00
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4J127AA04
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4J127BG17Y
4J127CB301
4J127CC031
4J127FA03
4J127FA38
4J127FA41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低誘電特性(特に、低い誘電正接)、及び、高耐熱性(高ガラス転移温度)を有する硬化物を調製するための、溶剤溶解性、及び液晶性に優れた反応性液晶ポリエステルを提供する。
【解決手段】本発明は、2,2’-ビフェニレン基を含む下記一般式(1)で表される構造単位を含み、かつ、末端構造に熱重合性官能基が結合していることを特徴とする反応性液晶ポリエステルに関する。
(式(1)中、D
1及びD
2は、同一又は異なっていてもよく、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基を表し、E
1及びE
2は、同一又は異なっていてもよく、エステル結合[-(C=O)O-又は-O(C=O)-]を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2’-ビフェニレン基を含む下記一般式(1)で表される構造単位を含み、かつ、末端構造に熱重合性官能基が結合していることを特徴とする反応性液晶ポリエステル。
【化1】
(式(1)中、D
1及びD
2は、同一又は異なっていてもよく、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基を表し、E
1及びE
2は、同一又は異なっていてもよく、エステル結合[-(C=O)O-又は-O(C=O)-]を表す。)
【請求項2】
前記D1及びD2の全部又は一部が、シクロヘキシレン基であることを特徴とする請求項1に記載の反応性液晶ポリエステル。
【請求項3】
前記熱重合性官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反応性液晶エステル。
【請求項4】
前記熱重合性官能基が、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の反応性液晶エステル。
【請求項5】
前記式(1)中の2,2’-ビフェニレン基、及び、シクロヘキシレン基のモル割合が、10/90~90/10であることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の反応性液晶ポリエステル。
【請求項6】
前記シクロヘキシレン基中のシクロヘキサン環のcis体、及び、trans体のモル割合が、10/90~90/10であることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の反応性液晶ポリエステル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の反応性液晶ポリエステルを含有することを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項8】
更に、前記熱重合性官能基と反応する官能基を有する化合物(2)を含有することを特徴とする請求項7に記載のポリエステル組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のポリエステル組成物に、更に、非プロトン性極性溶剤を含有することを特徴とするポリエステル溶液。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のポリエステル組成物を反応して得られることを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性液晶ポリエステル、前記反応性液晶ポリエステルを含有するポリエステル組成物、前記反応性液晶ポリエステルを含有するポリエステル溶液、及び、前記ポリエステル組成物により得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加にともない高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有する電気絶縁材料が求められてきている。
【0003】
さらにそれら電気絶縁材料が使われているプリント基板や電子部品は、実装時に高温のハンダリフローに曝されるため、高耐熱性、すなわち、高ガラス転移温度を示す材料が求められ、特に最近は、環境問題から融点の高い鉛フリーのハンダが使用されるため、より高耐熱性の電気絶縁材料の要求が高まってきている。
【0004】
これらの要求に対し、液晶ポリエステルに代表される液晶ポリマー、特に、加熱硬化によって非常に高耐熱性を有する硬化物を形成できる熱硬化性液晶ポリマー材料に注目が集まっている。例えば、主鎖サーモトロピック液晶エステル等の液晶オリゴマーをフェニルアセチレン、フェニルマレイミド、ナジイミド反応性末端基でエンドキャップした材料が知られている(特許文献1~3参照)。また、主鎖に1つ以上の可溶性構造単位を有し、かつ、主鎖の末端の1つ以上の熱硬化性基を有する熱硬化性液晶オリゴマーと特定のフッ素化合物とを反応させて得られる材料が開示されている(特許文献4参照)。更に、前記熱硬化性液晶オリゴマーとアルコキシド金属化合物で表面を置換したナノ充填剤とを反応させて得られる材料などが開示されている(特許文献5参照)。これらの熱硬化性液晶ポリマー材料は、例えば、液晶ポリマーの末端にスペーサー単位を介して、架橋性基が結合した材料が挙げられ(特許文献6参照)、また、液晶ポリエステルの両末端に、無置換又は置換マレイミド、無置換又は置換ナジイミド、エチニル、ベンゾシクロブテンなどのラジカル重合性基を有する材料も開示されている(特許文献7参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に開示された材料は、硬化させるために350℃以上という高温加熱が必要であり、硬化物の製造工程が煩雑になったり、硬化の際に構成成分が揮発・分解してしまったり、また、例えば、封止材等の用途においては、封止する製品が劣化してしまう等の問題を有している。
【0006】
特許文献4及び5に開示された材料では、液晶ポリマー主鎖が、アミド結合やアミン結合などを含む可溶性構造単位を必須の構造単位として含むため、得られる硬化物の誘電率や誘電正接が悪化するという問題を有している。
【0007】
また、特許文献6に開示された材料では、液晶ポリマーと架橋性基との連結基としてアルキレン基等のスペーサー単位を有するため、熱分解を受けやすく、得られる硬化物の耐熱性に劣るという問題を有している。
【0008】
さらに、特許文献7に開示された材料では、得られる硬化物が脆いという問題を有している。
【0009】
このような中で、比較的低温(例えば、250℃以下)で硬化させることができ、耐熱性等の各種物性に優れた硬化物を得ることができる熱硬化性液晶ポリエステルとして、液晶ポリエステルの主鎖に2価の芳香族炭化水素基を有し、末端に熱硬化基を有する特定構造のサーモトロピック液晶性材料が幾つか提案され(例えば、特許文献8及び9参照)、誘電正接を低く抑える試みや、耐熱性を向上させる試みがなされている。
【0010】
しかし、特許文献8及び9に開示される液晶ポリエステルを含む組成物(溶液)を、ガラスクロスなどに含浸加工しようとした場合に、溶剤溶解性に劣り、また、電気絶縁材料用途の中でも、特に高周波数対応の電気絶縁材料用途に要求される低誘電正接と、鉛フリーのハンダ加工に耐えうる耐熱性を兼備する硬化物を満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2004-509190号公報
【特許文献2】米国特許第6939940号明細書
【特許文献3】米国特許第7507784号明細書
【特許文献4】特開2011-111619号公報
【特許文献5】特開2011-084707号公報
【特許文献6】特表2002-521354号公報
【特許文献7】米国特許第5114612号明細書
【特許文献8】特許第6342202号公報
【特許文献9】特開2017-179120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明が解決しようとする課題は、溶剤溶解性、及び、液晶性に優れた反応性液晶ポリエステルを使用することで、低誘電特性(特に、低い誘電正接)、及び、高耐熱性(高ガラス転移温度)を有する硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、溶剤溶解性、及び、液晶性に優れた反応性液晶ポリエステル、前記反応性液晶ポリエステルを含有するポリエステル組成物、前記反応性液晶ポリエステルを含有するポリエステル溶液、更に、前記ポリエステル組成物により得られる硬化物が、低誘電特性(特に、低い誘電正接)、及び、高耐熱性(高ガラス転移温度)に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
<反応性液晶ポリエステル>
即ち、本発明は、2,2’-ビフェニレン基を含む下記一般式(1)で表される構造単位を含み、かつ、末端構造に熱重合性官能基が結合していることを特徴とする反応性液晶ポリエステルに関する。
【化1】
(式(1)中、D
1及びD
2は、同一又は異なっていてもよく、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基を表し、E
1及びE
2は、同一又は異なっていてもよく、エステル結合[-(C=O)O-又は-O(C=O)-]を表す。)
【0015】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記D1及びD2の全部又は一部が、シクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0016】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記熱重合性官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基であることが好ましい。
【0017】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記熱重合性官能基が、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基であることが好ましい。
【0018】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記式(1)中の2,2’-ビフェニレン基、及び、シクロヘキシレン基のモル割合が、10/90~90/10であることが好ましい。
【0019】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記シクロヘキシレン基中のシクロヘキサン環のcis体、及び、trans体のモル割合が、10/90~90/10であることが好ましい。
【0020】
本発明は、前記反応性液晶ポリエステルを含有することを特徴とするポリエステル組成物に関する。
【0021】
本発明のポリエステル組成物は、前記反応性液晶ポリエステル、及び、前記熱重合性官能基と反応する官能基を有する化合物(2)、を含有することができる。
【0022】
本発明は、前記ポリエステル組成物に、更に、非プロトン性極性溶剤を含有することを特徴とするポリエステル溶液に関する。
【0023】
本発明は、前記ポリエステル組成物を反応して得られることを特徴とする硬化物に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、溶剤溶解性、及び、液晶性に優れ、前記反応性液晶ポリエステルを含有するポリエステル溶液も溶剤溶解性に優れ、更に、前記反応性液晶ポリエステルを含有するポリエステル組成物により得られる硬化物が、低誘電特性(特に、低い誘電正接)、及び、高耐熱性(高ガラス転移温度)に優れ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
<反応性液晶ポリエステル>
本発明は、2,2’-ビフェニレン基を含む下記一般式(1)で表される構造単位を含み、かつ、末端構造に熱重合性官能基が結合していることを特徴とする反応性液晶ポリエステルに関する。
【化2】
【0027】
上記式(1)中、D1及びD2は、同一又は異なっていてもよく、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基を表し、E1及びE2は、同一又は異なっていてもよく、エステル結合[-(C=O)O-又は-O(C=O)-]を表す。なお、前記反応性液晶ポリエステルとは、エステル結合を2個以上有することを表すものである。
【0028】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、2,2’-ビフェニレン基を含むこと特徴とする。前記反応性液晶ポリエステルが、2,2’-ビフェニレン基を含むことで、ポリエステル主鎖の剛直性が緩和され、液晶性を発現しつつ、溶剤溶解性を向上することができ、好ましい。
【0029】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記末端構造に熱重合性官能基が結合していること特徴とする。前記反応性液晶ポリエステルが末端に熱重合性官能基を有することで、架橋反応の進行や、反応性液晶ポリエステルの単独重合、もしくは架橋剤や異なる樹脂成分と共に架橋することが可能となり、耐熱性に優れる樹脂硬化物を得ることができ、好ましい。前記熱重合性官能基は、前記反応性液晶ポリエステルの末端構造に結合しているが、複数の熱重合性官能基を有する場合には、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0030】
前記熱重合性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スチリル基(ビニルベンジルエーテル基)、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基であることが好ましく、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基であることがより好ましい。これら熱重合性官能基(熱硬化基)を反応性液晶ポリエステルの分子構造の末端に有することにより、熱硬化が可能となり、前記反応性液晶ポリエステルを使用して得られる硬化物は、耐熱性や低誘電特性に優れ、好ましい。なお、前記熱重合性官能基が、スチリル基(ビニルベンジルエーテル基)、(メタ)アクリロイル基、及び、アリル基からなる群より選択される少なくとも1種の熱重合性官能基である場合、極性基であるヒドロキシル基などに比べて、分子運動性が低いため、より低誘電特性が得られ、好ましい。また、前記熱重合性官能基が複数の場合、架橋密度が上がり、耐熱性が向上する。
【0031】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、上記式(1)中、D1及びD2は、同一又は異なっていてもよく、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基を表すことを特徴とする。前記D1及びD2が、前記2価の脂肪族炭化水素基などであることにより、芳香族炭化水素基と比較して溶剤溶解性を向上することとなり、好ましい。中でも、前記D1及びD2の全部又は一部が、シクロヘキシレン基であることが好ましい。また、前記シクロヘキシレン基を有することで、屈曲構造となるcis体と、硬直構造となるtrans体とがあることで、液晶性を発現しつつ、溶剤溶解性を向上することが可能となり、得られる反応性液晶ポリエステルの溶剤溶解性や液晶性に優れ、より好ましい。
【0032】
前記2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、及び炭素数2~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等を挙げることができる。炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。炭素数2~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1-メチルビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基等を挙げることができる。
【0033】
前記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数3~18の2価の脂環式炭化水
素基等を挙げることができ、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0034】
前記2価の芳香族炭化水素基としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~14の芳香族炭化水素)の構造式から2個の水素原子を除いた基である。
【0035】
また、前記2価の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素環には、1種又は2種以上の置換基が結合していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、及びハロゲン原子等を挙げることができる。
【0036】
前記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0037】
前記炭素数6~10のアリル基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0038】
前記炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブチルオキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基を挙げることができる。
【0039】
前記炭素数6~10のアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、2-ナフチルオキシ基を挙げることができる。
【0040】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、上記式(1)中、E1及びE2は、同一又は異なっていてもよく、エステル結合[-(C=O)O-又は-O(C=O)-]を表すことを特徴とする。前記反応性液晶ポリエステルが複数のエステル結合を有することで、反応性液晶ポリエステル一分子内に、剛直構造と屈曲構造を含むことが可能となり、液晶性と溶剤溶解性を両立する上で好ましい。ここで、前記エステル結合として、[-(C=O)O-]、又は、[-O(C=O)-]が含まれるが、これは前記反応性液晶ポリエステルを合成する際に使用される2,2’-ビフェニレン基を有する化合物が、ヒドロキシル基を有する場合と、カルボキシル基を有する場合の両方が含まれることを意味する。
【0041】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記式(1)中の2,2’-ビフェニレン基、及び、シクロヘキシレン基のモル割合が、10/90~90/10であることが好ましく、20/80~80/20であることがより好ましい。前記モル割合が前記範囲内であることで、2,2’-ビフェニレン基、及び、シクロヘキシレン基に起因する溶剤溶解性と液晶性の両方を確保でき、好ましい態様となる。
【0042】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、前記シクロヘキシレン基中のシクロヘキサン環のcis体、及び、trans体のモル割合が、10/90~90/10であることが好ましく、20/80~80/20であることがより好ましい。前記モル割合が前記範囲内であることで、剛直構造と屈曲構造を含むことが可能となり、好ましい態様となる。
【0043】
本発明の反応性液晶ポリエステルは、溶融した状態での液晶性と溶剤溶解性の観点から、2,2’-ビフェニレン基を含む構成単位(繰り返し構成単位)を有するが、液晶性や耐熱性を調整する観点から、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂環式ヒドロキシカルボン酸、及び芳香族ヒドロキシカルボン酸からなる群より選択された少なくとも1種を反応させて得られる構成単位を含む反応性液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0044】
前記脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコールやプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール等を使用することができる。
【0045】
前記脂環式ジオールとしては、例えばシクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン-ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ-ルA、1,3-アダマンタンジオール等を使用することができる。
【0046】
前記芳香族ジオールとしては、例えば、2,2'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジオール、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、(フェニルスルホニル)ベンゼン、[1,1'-ビフェニル]-2,5-ジオール、及びこれらの誘導体などが挙げられる。前記誘導体としては、例えば、前記芳香族ジオールの芳香族環(芳香環)に、炭素数0~20(好ましくは炭素数0~10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。前記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、反応性液晶ポリエステルは、芳香族ジオール由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
【0047】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、エイコサン二酸等を使用することができる。
【0048】
前記脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を使用することができる。
【0049】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,2'-ビフェニルジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、4,4'-オキシビス(安息香酸)、4,4'-チオビス(安息香酸)、4-[2-(4-カルボキシフェノキシ)エトキシ]安息香酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。前記誘導体としては、例えば、前記芳香族ジカルボン酸の芳香族環(芳香環)に、炭素数0~20(好ましくは炭素数0~10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。前記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、反応性液晶ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
【0050】
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、2-ヒドロキシイソブタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸等を使用することができる。
【0051】
前記脂環式ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、3-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、2-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、3-ヒドロキシ-1-アダマンタン酢酸、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボン酸等を使用することができる。
【0052】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、4'-ヒドロキシ[1,1'-ビフェニル]-4-カルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。前記誘導体としては、例えば、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香族環(芳香環)に、炭素数0~20(好ましくは炭素数0~10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。前記置換基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基など];アルケニル基[例えば、ビニル基、アリル基など];アルキニル基[例えば、エチニル基、プロピニル基など];ハロゲン原子[例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など];ヒドロキシル基;アルコキシ基[例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)など];アルケニルオキシ基[例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくはC2-4アルケニルオキシ基)など];アリールオキシ基[例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香族環(芳香環)にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基など];アラルキルオキシ基[例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基など];アシルオキシ基[例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基など];メルカプト基;アルキルチオ基[例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくはC1-4アルキルチオ基)など];アルケニルチオ基[例えば、アリルチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくはC2-4アルケニルチオ基)など];アリールチオ基[例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香族環(芳香環)にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールチオ基など];アラルキルチオ基[例えば、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基など];カルボキシル基;アルコキシカルボニル基[例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ-カルボニル基など];アリールオキシカルボニル基[例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ-カルボニル基など];アラルキルオキシカルボニル基[例えば、ベンジルオキシカルボニル基などのC7-18アラルキルオキシ-カルボニル基など];アミノ基;モノ又はジアルキルアミノ基[例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ-C1-6アルキルアミノ基など];モノ又はジフェニルアミノ基[例えば、フェニルアミノ基など];アシルアミノ基[例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基など];エポキシ基含有基[例えば、グリシジル基、グリシジルオキシ基、3,4-エポキシシクロヘキシル基など];オキセタニル基含有基[例えば、エチルオキセタニルオキシ基など];アシル基[例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基など];オキソ基;イソシアネート基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。なお、反応性液晶ポリエステルは、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
【0053】
前記反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に熱重合性官能基として、ヒドロキシル基を有する場合、特に限定されないが、分子鎖の一方の末端(片末端)のみにヒドロキシル基を有していてもよいし、分子鎖の両方の末端(両末端)にヒドロキシル基を有していてもよい。
【0054】
前記反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に有するヒドロキシル基は、フェノール性ヒドロキシル基であってもよいし、アルコール性ヒドロキシル基であってもよい。中でも、硬化物の耐熱性の観点から、反応性液晶ポリエステルが分子鎖末端に有するヒドロキシル基は、フェノール性ヒドロキシル基であることが好ましい。なお、前記「フェノール性ヒドロキシル基」には、置換又は無置換ベンゼン環に結合したヒドロキシル基に加え、その他の芳香族環(ナフタレン環、アントラセン環など)に結合したヒドロキシル基も含まれるものとする。
【0055】
前記反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に熱重合性官能基として、カルボキシル基を有する場合、特に限定されないが、分子鎖の一方の末端(片末端)のみにカルボキシル基を有していてもよいし、分子鎖の両方の末端(両末端)にカルボキシル基を有していてもよい。
【0056】
前記反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に芳香族環(芳香環)を有する場合、特に限定されないが、分子鎖の一方の末端(片末端)のみに芳香族環を有していてもよいし、分子鎖の両方の末端(両末端)に芳香族環を有していてもよい。なお、反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に有する芳香族環には、環1個あたり1以上の置換基が結合していてもよい。前記置換基としては、公知ないし慣用の置換基が挙げられ、特に限定されないが、例えば、後述する芳香族ヒドロキシカルボン酸として例示される化合物に含まれる置換基などが挙げられる。
【0057】
前記反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に、熱重合性官能基として、熱重合性官能基を有する場合、特に限定されないが、分子鎖の一方の末端(片末端)のみに熱重合性官能基を有していてもよいし、分子鎖の両方の末端(両末端)に熱重合性官能基を有していてもよい。
【0058】
前記反応性液晶ポリエステルが、その分子鎖末端に有する熱重合性官能基としては、例えば、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基、ナジイミド基、フタルイミド基、シアネート基、ニトリル基、フタロニトリル基、スチリル基、エチニル基、プロパルギルエーテル基、ベンゾシクロブタン基、ビフェニレン基、及びこれらの置換体又は誘導体などが挙げられる。なお、前記置換体又は誘導体としては、前記熱重合性官能基に置換基(例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基等)が結合した熱重合性官能基などが挙げられる。なかでも、重合温度と誘電損失を低く抑える観点から、スチリル基や(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0059】
<反応性液晶ポリエステルの製造方法>
前記反応性液晶ポリエステルは、上述の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂環式ヒドロキシカルボン酸、及び芳香族ヒドロキシカルボン酸からなる群より選択された少なくとも1種を公知ないし慣用の方法で重合することにより製造でき、その製造方法は特に限定されない。
【0060】
前記反応性液晶ポリエステルの具体的な製造方法としては、例えば、上述のヒドロキシカルボン酸やジオール等のヒドロキシル基を有する化合物を過剰量の脂肪酸無水物とを反応させることでアセチル化反応を実施し、得られたアセチル化物と、ヒドロキシカルボン酸やジカルボン酸などのカルボキシル基を有する化合物とを反応(エステル交換反応)させることにより、製造することができる。
【0061】
前記アセチル化反応においては、前記脂肪酸無水物の添加量は、前記ヒドロキシル基を有する化合物のヒドロキシル基に対して、1.0~1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05~1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が少なすぎると、エステル交換反応時にアセチル化物や原料モノマーなどが昇華してしまい、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、脂肪酸無水物の添加量が多すぎると、得られる反応性液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向があり、好ましくない。
前記アセチル化反応は、130~180℃で5分間~10時間反応させることが好ましく、140~160℃で10分間~3時間反応させることがより好ましい。
前記アセチル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β-ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸または無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。より具体的には、例えば、特開2007-119610号公報に記載の方法などにより製造することができる。
【0062】
前記エステル交換反応においては、前記アセチル化物のアセチル基が、前記カルボキシル基を有する化合物のカルボキシル基の0.8~1.2倍当量であることが好ましい。
前記エステル交換反応は、400℃まで0.1~50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、350℃まで0.3~5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
前記アセチル化物と前記カルボキシル基を有する化合物とのエステル交換反応の際に、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
【0063】
なお、前記アセチル化反応、及び、前記エステル交換反応は、触媒の存在下で行ってもよい。前記触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。これらの触媒の中でも、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される。前記触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アセチル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、前記触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換反応を行うことができる。
また、その他にも、前記エステル交換反応として、例えば、上述のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸などのカルボキシル基を有する化合物(例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸)をピリジン等の溶剤中で過剰量のジクロロフェニルフォスフェートを反応させた後、塩化リチウムを加え、ヒドロキシカルボン酸やジオールなどヒドロキシ基を有する化合物(例えば、2,2’-ビフェノールと4,4’-ビフェノール)とを反応させることにより製造することもできる。より具体的には、ジクロロフェニルフォスフェートの添加量は、前記カルボキシル基を有する化合物カルボキシル基に対して、1.0~4.0倍当量であることが好ましく、より好ましくは2.0~3.0倍当量である。前記ジクロロフェニルフォスフェートの添加量が少なすぎると、未反応のカルボキシル基が残存して、分子量が低くなる傾向があり、また、前記ジクロロフェニルフォスフェートの多すぎると、ヒドロキシル基と反応してしまい、分子量が低くなる傾向があり、好ましくない。
また、前記ジクロロフェニルフォスフェートとの反応条件は、10~50℃で5分間~2時間反応させることが好ましく、20~40℃で10分間~1時間反応させることがより好ましい。
次いで、前記塩化リチウムの添加量は、前記ヒドロキシ基を有する化合物のヒドロキシル基に対して、1.0~2.0倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.2~1.5倍当量である。前記塩化リチウムの添加量が少なすぎると、ヒドロキシル基がジクロロフェニルフォスフェートと反応して分子量が低くなる傾向があり、また、前記塩化リチウムの多すぎると、エステル交換反応を阻害して、分子量が低くなる傾向があり、好ましくない。
また、前記塩化リチウムの反応条件は、110~120℃で10分間~1時間反応させることが好ましい。エステル交換反応においては、ヒドロキシル基がカルボキシル基の0.8~1.2倍当量であることが好ましい。
前記エステル交換反応は、前記塩化リチウムとの反応に続けて、ヒドロキシル基を有する化合物のピリジン溶液を10分~1時間かけて滴下し、110~120℃で1~5時間反応させることが好ましい。
【0064】
前記反応性液晶ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、1000~50000であることが好ましく、2000~20000であることがより好ましい。前記重量平均分子量が前記範囲内であると、液晶性を発現しつつ、溶剤溶解性となり、高耐熱性の硬化物を得ることができ、好ましく、特に前記重量平均分子量が10000以下であると、比較的低い温度で溶融する点や、溶剤に対して特に優れた溶解性を示す点、及び、速硬化性を有する点で好ましい。なお、前記反応性液晶ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により求めることができる。
【0065】
前記反応性液晶ポリエステルの硬化前軟化温度は、50~180℃であることが好ましく、80~150℃であることがより好ましい。前記硬化前軟化温度が前記範囲内であると、比較的低い温度から液晶性を発現する点で好ましい。
【0066】
前記反応性液晶ポリエステルの熱硬化温度は、100~250℃であることが好ましく、150~200℃であることがより好ましい。前記範囲内であると、反応性液晶ポリエステルが液晶性を保持した状態で熱硬化することができる点、及び、速硬化性を有する点で好ましい。
【0067】
<ポリエステル組成物>
本発明は、前記反応性液晶ポリエステルを含有することを特徴とするポリエステル組成物に関する。前記反応性液晶ポリエステルを含有することにより、溶剤溶解性に優れ、ポリエステル組成物の調製が容易で、ハンドリング性に優れ、更に、耐熱性、及び、低誘電特性に優れた硬化物を得ることができる。
【0068】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記反応性液晶ポリエステル、及び、前記熱重合性官能基と反応する官能基を有する化合物(2)(以下、単に「化合物(2)」と称する場合がある。)を含有することができる。前記熱重合性官能基と反応する官能基を有する化合物(2)を含有することで、架橋反応が進行し、高密度に架橋構造を有することで、耐熱性や熱膨張係数に優れ、好ましい。
【0069】
前記化合物(2)としては、例えば、α,β-不飽和カルボニル基、エポキシ基、マレイミド基、エステル基、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ナジイミド基、フタルイミド基、シアネート基、ニトリル基、フタロニトリル基、スチリル基、エチニル基、プロパルギルエーテル基、ベンゾシクロブタン基、ビフェニレン基、アリル基、ビニル基などの前記反応性液晶ポリエステルの熱重合性官能基と反応する官能基を有する化合物(2)が挙げられ、中でも、マレイミド基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0070】
〔その他樹脂等〕
本発明のポリエステル組成物には、目的を損なわない範囲で特に限定なく使用でき、アルケニル基含有化合物、例えば、ビスマレイミド類、アリルエーテル系化合物、アリルアミン系化合物、トリアリルシアヌレート、アルケニルフェノール系化合物、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等を添加することもできる。また、その他の熱硬化性樹脂、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂等も目的に応じて適宜配合することも可能である。
【0071】
〔硬化剤〕
本発明のポリエステル組成物には、硬化剤を含有することができる。前記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0072】
〔硬化促進剤〕
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、又は、イミダゾール類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記反応性液晶ポリエステル100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0073】
〔難燃剤〕
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することができる。前記非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0074】
〔充填剤〕
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて、無機質充填剤を配合することができる。前記無機質充填剤として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。また、前記ポリエステル組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0075】
〔その他配合剤〕
本発明のポリエステル組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0076】
<ポリエステル溶液>
本発明は、前記ポリエステル組成物に、更に、非プロトン性極性溶剤を含有することを特徴とするポリエステル溶液に関する。前記反応性液晶ポリエステルを含む前記ポリエステル組成物に、更に、非プロトン性極性溶剤を使用することで、他樹脂や架橋剤、硬化剤などと容易に配合することが可能となり、前記ポリエステル溶液は、ハンドリング性や貯蔵安定性
に優れ、好ましい。
【0077】
前記非プロトン性極性溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタンなどが挙げられ、中でも、ハンドリング性や溶解性の観点から、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミドなどが好ましく使用できる。
【0078】
<硬化物>
本発明は、前記ポリエステル組成物を反応して得られることを特徴とする硬化物に関する。前記ポリエステル組成物を使用して得られる硬化物は、耐熱性や低誘電特性、低吸湿性に優れるため、フィルム、プリプレグ、プリント配線板、半導体封止材などの用途に適しており、好ましい。特に、前記硬化物は、前記反応性液晶ポリエステルを使用するが、前記反応性液晶ポリエステルは、液晶性を発現することで、構造中に含まれるエステル結合を含む極性部分の分子運動が束縛され、得られる硬化物の誘電正接が低くなる傾向にあり、低誘電特性が向上し、好ましい。一方で、前記反応性液晶ポリエステルの液晶性が強くなることで、溶剤溶解性は低下する傾向にあるが、前記反応性液晶ポリエステルの場合、2,2’-ビフェニレン基を含むことで、剛直性が緩和されることとなり、溶剤溶解性にも優れるため、前記ポリエステル組成物や、前記ポリエステル溶液の調製の際のハンドリング性にも優れ、前記硬化物の調製が容易となり、好ましい。
【0079】
なお、前記硬化物は、前記ポリエステル組成物(又は、前記ポリエステル溶液)を使用することで得られるが、前記反応性液晶ポリエステル単独、もしくは、前記反応性液晶ポリエステルに加えて、前記化合物(2)、更に、上述した硬化剤や硬化促進剤(触媒)などの各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0080】
前記硬化反応としては、熱硬化や紫外線硬化反応などが挙げられ、中でも熱硬化反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、第3級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等が挙げられる。
【0081】
<用途>
本発明のポリエステル組成物により得られる硬化物が、高耐熱性、及び、低誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、前記ポリエステル組成物に含まれる前記反応性液晶ポリエステルは、各種溶剤への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例0082】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において、「部(g)」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、以下に示す条件に反応性液晶ポリエステル、及び、前記反応性液晶ポリエステルを用いて得られる硬化物を合成し、更に得られた硬化物について、以下の条件にて測定又は計算し、評価を行った。
【0083】
<GPC測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成方法で得られた反応性液晶ポリエステルのGPC測定を行い、GPC測定結果(実施例1に関して、
図1参照。)に基づき、反応性液晶ポリエステルの合成確認、及び、重量平均分子量(Mw)を算出した。また、実施例1以外についても、同様に確認した(図示せず)。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:実施例・比較例で得られた反応性液晶ポリエステルの固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0084】
<NMR測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成方法で得られた反応性液晶ポリエステルの
1H-NMR測定を行い、NMRチャート測定結果(実施例1に関して、
図2参照。)に基づき、反応性液晶ポリエステルの合成を芳香族炭化水素のピークシフトにより確認した。また、実施例1以外についても、同様に確認した(図示せず)。
1H-NMRは、JEOL RESONANCE製の「JNM-ECM400S」を用いて、下記条件により測定した。
磁場強度:400MHz
積算回数:16回
溶媒:DMSO-D6
試料濃度:20mg/0.6ml
【0085】
<液晶性の評価>
実施例及び比較例にて得られた各反応性液晶ポリエステルの液晶性を以下の手順で評価した。なお、直交偏光子間に等方性の物質を挿入した場合には光が透過しないが、光学的異方性を有する物質を挿入した場合には、光が透過する現象を利用している。
まず、スライドガラス上に実施例及び比較例にて得られた各反応性液晶ポリエステルのジメチルアセトアミド溶液を乾燥させて等方性の塗膜を作成する。次に、ホットステージ(メトラー・トレド社製)に載せて加熱溶融させたときの暗視野の外観を、偏光顕微鏡(ニコン社製)にて200倍の倍率で観察し、液晶性を評価した。なお、評価結果が◎、○、及び、△であれば、実用上問題ない。
◎:全体的に液晶性を示している
〇:一部、液晶性を示さないが、大部分で液晶性を示している
△:一部で液晶性を示している
×:ほとんど液晶性を示していない
【0086】
<溶剤溶解性の評価>
得られた反応性液晶ポリエステルをジメチルアセトアミドに所定(10%、20%、30%、40%、50%)の不揮発分(質量比)となる割合で溶解した後、溶液の外観から溶剤溶解性を評価した。なお、評価結果が○であれば、実用上問題ない。
〇:完全に溶解する
△:ごく僅かに溶け残りがある
×:ほとんど溶けない、もしくは大部分が溶け残る
【0087】
(実施例1)
[反応性液晶ポリエステル(A-1)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸8.61g(0.05mol)及びピリジン100mLを入れ、窒素雰囲気下で混合溶解した。次いで、ジクロロフェニルフォスフェート34.92g(0.13mol)を徐々に加え、0.5時間反応した。次いで、塩化リチウム3.39g(0.08mol)をピリジン75mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で0.5時間反応させた。次いで、2,2’-ビフェノール7.45g(0.04mol)と4,4’-ビフェノール3.72g(0.02mol)をピリジン50mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で3時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-1)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-1)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表1に示した。
【0088】
(実施例2)
[反応性液晶ポリエステル(A-2)の合成]
実施例1中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を10.33g(0.06mol)に、2,2’-ビフェノールを6.20g(0.033mol)と4,4’-ビフェノールを3.11g(0.017mol)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるカルボキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-2)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-2)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表1に示した。
【0089】
(実施例3)
[反応性液晶ポリエステル(A-3)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、実施例1で得られた反応性液晶ポリエステル(A-1)10.0gと、ジメチルホルムアミド200mLと、メトキノン5mg及びブチル化ヒドロキシトルエン50mgを入れ、窒素雰囲気下50℃で混合溶解した。次いで、炭酸カリウム2.5gとテトラブチルアンモニウムブロミド0.4g及び4-クロロメチルスチレン10.0gを加え、50℃で8時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるスチリル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-3)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-3)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表1に示した。
【0090】
(実施例4)
[反応性液晶ポリエステル(A-4)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、実施例1で得られた反応性液晶ポリエステル(A-1)10gと、ジメチルホルムアミド200mLと、メトキノン5mg及びブチル化ヒドロキシトルエン50mgと、ジメチルアミノピリジン0.30g(2.4mmol)を入れ、窒素雰囲気下85℃で混合した。次いで、固体がすべて溶解したと思われる時点で無水メタクリル酸2.78g(18mmol)を1時間かけて滴下し、85℃でさらに3時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるメタクリロイル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-4)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-4)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表1に示した。
【0091】
(実施例5)
[反応性液晶ポリエステル(A-5)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、実施例1で得られた反応性液晶ポリエステル(A-1)10gと、ジメチルホルムアミド200mLと、メトキノン5mg及びブチル化ヒドロキシトルエン50mgを入れ、窒素雰囲気下60℃で混合した。次いで、炭酸カリウム2.0gとアリルブロミド8.0gを加え、60℃で8時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるアリル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-5)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-5)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表1に示した。
【0092】
(実施例6)
[反応性液晶ポリエステル(A-6)の合成]
実施例1中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸に変更した以外は、実施例1と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-6)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-6)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0093】
(実施例7)
[反応性液晶ポリエステル(A-7)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸6.89g(0.04mol)とエイコサン二酸6.85g(0.02mol)及びピリジン100mLを入れ、窒素雰囲気下で混合溶解した。次いで、ジクロロフェニルフォスフェート34.92g(0.13mol)を徐々に加え、0.5時間反応した。次いで、塩化リチウム3.39g(0.08mol)をピリジン75mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で0.5時間反応させた。次いで、2,2’-ビフェノール9.31g(0.05mol)をピリジン50mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で3時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるカルボキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-7)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-7)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0094】
(実施例8)
[反応性液晶ポリエステル(A-8)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、2,2’-ビフェニルジカルボン酸12.11g(0.05mol)及びピリジン100mLを入れ、窒素雰囲気下で混合溶解した。次いで、ジクロロフェニルフォスフェート34.92g(0.13mol)を徐々に加え、0.5時間反応した。次いで、塩化リチウム3.39g(0.08mol)をピリジン75mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で0.5時間反応させた。次いで、4,4’-ビフェノール3.72g(0.02mol)と1,4-シクロヘキサンジオール4.65g(0.04mol)をピリジン50mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で3時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-8)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-8)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0095】
(実施例9)
[反応性液晶ポリエステル(A-9)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、エイコサン二酸17.13g(0.05mol)及びピリジン100mLを入れ、窒素雰囲気下で混合溶解した。次いで、ジクロロフェニルフォスフェート34.92g(0.13mol)を徐々に加え、0.5時間反応した。次いで、塩化リチウム3.39g(0.08mol)をピリジン75mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で0.5時間反応させた。次いで、2,2’-ビフェノール7.45g(0.04mol)と4,4’-ビフェノール3.72g(0.02mol)をピリジン50mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で3時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-9)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-9)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0096】
(実施例10)
[反応性液晶ポリエステル(A-10)の合成]
実施例9中のエイコサン二酸17.13gを、エイコサン二酸16.41g(0.048mol)と1,4-シクロヘキサンジカルボン酸0.36g(2.1mmol)に変更した以外は、実施例9と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-10)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-10)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0097】
(実施例11)
[反応性液晶ポリエステル(A-11)の合成]
実施例9中のエイコサン二酸17.13gを、エイコサン二酸15.60g(0.046mol)と1,4-シクロヘキサンジカルボン酸0.76g(4.4mmol)に変更した以外は、実施例9と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-11)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-11)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0098】
(実施例12)
[反応性液晶ポリエステル(A-12)の合成]
実施例9中のエイコサン二酸17.13gを、エイコサン二酸11.25g(0.033mol)と1,4-シクロヘキサンジカルボン酸2.95g(0.017mol)に変更した以外は、実施例9と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-12)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-12)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0099】
(実施例13)
[反応性液晶ポリエステル(A-13)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸8.61g(0.05mol)及びピリジン100mLを入れ、窒素雰囲気下で混合溶解した。次いで、ジクロロフェニルフォスフェート34.92g(0.13mol)を徐々に加え、0.5時間反応した。次いで、塩化リチウム3.39g(0.08mol)をピリジン75mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で0.5時間反応させた。次いで、2,2’-ビフェノール6.14g(0.033mol)と1,4-シクロヘキサンジオール3.14g(0.027mol)をピリジン50mLに溶解したピリジン溶液を徐々に加え、115℃で3時間反応した。その後、反応溶液をメタノール/水混合液に滴下して反応性液晶ポリエステルを析出させ、ろ過後にメタノールで洗浄した。50℃の真空乾燥機で揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-13)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-13)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表2に示した。
【0100】
(実施例14)
[反応性液晶ポリエステル(A-14)の合成]
実施例13中の2,2’-ビフェノールを2.05g(0.011mol)に、1,4-シクロヘキサンジオールを5.69g(0.049mol)に変更した以外は、実施例13と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-14)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-14)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表3に示した。
【0101】
(実施例15)
[反応性液晶ポリエステル(A-15)の合成]
実施例13中の2,2’-ビフェノールを1.02g(5.5mmol)に、1,4-シクロヘキサンジオールを6.33g(0.055mol)に変更した以外は、実施例13と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-15)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-15)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表3に示した。
【0102】
(実施例16~実施例20)
[反応性液晶ポリエステル(A-16)~(A-20)の合成]
実施例1中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のシクロヘキサン基中のシス体のモル割合を60%から、実施例16では100%に、実施例17では90%に、実施例18では30%に、実施例19では10%に、実施例20では0%に変更した以外は、実施例1と同様の条件で反応操作を行い、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-16)~(A-20)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-16)~(A-20)の重量平均分子量(Mw)、溶剤溶解性と液晶性は、表3に示した。
【0103】
(比較例1)
[反応性液晶ポリエステル(A-21)の合成]
コンデンサーと攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mLのフラスコに、エイコサン二酸171.26g(0.5mol)と、4,4’-ビフェノール111.73g(0.6mol)と、無水酢酸147.01g(1.44mol)及び1-メチルイミダゾール0.14gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、温度を維持しながら2時間反応させてアセチル化反応を完結させた。次いで、220℃まで徐々に温度を上げて酢酸及び未反応の無水酢酸を留去した。その後、フラスコ内を徐々に1mmHgまで減圧して揮発成分を留去することで、分子鎖の両末端に熱重合性官能基であるヒドロキシル基を有する反応性液晶ポリエステル(A-21)を得た。得られた反応性液晶ポリエステル(A-21)の溶剤溶解性は、表3に示した。なお、溶剤溶解性が悪いため、重量平均分子量(Mw)と液晶性の評価は実施していない。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
上記表1~表3における略語の意味は、以下の通りである。
22BP・・・2,2’-ビフェノール
44BP・・・4,4’-ビフェノール
14CHDO・・・1,4-シクロヘキサンジオール
22BPA・・・2,2’-ビフェニルジカルボン酸
14CHDA・・・1,4-シクロヘキサンジカルボン酸
13CHDA・・・1,3-シクロヘキサンジカルボン酸
EicA・・・エイコサン二酸
A-1・・・反応性液晶ポリエステル(A-1)
CMS・・・4-クロロメチルスチレン
MAH・・・メタクリル酸無水物
AB・・・アリルブロミド
22BP基・・・2,2’-ビフェニレン基
CH基・・・シクロヘキシレン基(中のシクロヘキサン環)
【0108】
<樹脂フィルムの作製>
得られた反応性液晶ポリエステル単独物、得られた反応性液晶ポリエステルとビスマレイミドを溶融混合して得られた混合物を常温(15~25℃)に戻したもの、ビスマレイミド類の単独物を、それぞれ5cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常温(15~25℃)下で1.0MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、所定の温度(今回の実施例では225℃、または、280℃)まで30分かけて加温した。さらに2時間静置後、室温(40℃以下)まで徐冷した。平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を作製した。
【0109】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて、誘電率、及び、誘電正接を測定した。なお、誘電正接としては、10×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、8×10-3以下であり、より好ましくは、7.5×10-3以下であり、誘電率としては、3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.8以下であることが好ましく、より好ましくは、2.6以下である。
【0110】
<耐熱性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、室温(40℃以下)から10℃/分の昇温条件で昇温し、250℃で30分間保持した。ついで、10℃/分の降温条件で室温(40℃以下)まで試料を冷却し、さらに、再度10℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。なお、ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、150℃以上である。
【0111】
[液晶ポリエステル硬化物(B-1)の製造]
(実施例21)
実施例1で得られた反応性液晶ポリエステル(A-1)10.0gを150℃で溶融し、マレイミド誘導体(ビスマレイミド類)として、ポリフェニルメタンマレイミド(商品名「BMI-2300」大和化成株式会社製)5.0gと1時間溶融混合した後に、ジアミノジフェニルメタン0.2gを混合し、前述した樹脂フィルムの作製方法により、225℃で熱プレスすることで液晶ポリエステル硬化物(B-1)を得た。得られた液晶ポリエステル硬化物(B-1)の耐熱性(ガラス転移温度(Tg))及び誘電特性は、表4に示した。
【0112】
[液晶ポリエステル硬化物(B-2)の製造]
(実施例22)
実施例3で得られた反応性液晶ポリエステル(A-3)10.0gを、前述した樹脂フィルムの作製方法により280℃で熱プレスすることで液晶ポリエステル硬化物(B-2)を得た。得られた液晶ポリエステル硬化物(B-2)の耐熱性(ガラス転移温度(Tg))及び誘電特性は、表4に示した。
【0113】
[液晶ポリエステル硬化物(B-3)の製造]
(実施例23)
実施例4で得られた反応性液晶ポリエステル(A-4)10.0gを、前述した樹脂フィルムの作製方法により280℃で熱プレスすることで液晶ポリエステル硬化物(B-4)を得た。得られた液晶ポリエステル硬化物(B-3)の耐熱性(ガラス転移温度(Tg))及び誘電特性は、表4に示した。
【0114】
[液晶ポリエステル硬化物(B-4)の製造]
(実施例24)
実施例5で得られた反応性液晶ポリエステル(A-5)10.0gを150℃で溶融し、マレイミド誘導体として、ポリフェニルメタンマレイミド(商品名「BMI-2300」大和化成株式会社製)5.0gと1時間溶融混合した後に、ジアミノジフェニルメタン0.2gを混合し、前述した樹脂フィルムの作製方法により225℃で熱プレスすることで液晶ポリエステル硬化物(B-4)を得た。得られた液晶ポリエステル硬化物(B-4)の耐熱性(ガラス転移温度(Tg))及び誘電特性は、表4に示した。
【0115】
[硬化物(B-5)の製造]
(比較例2)
マレイミド誘導体として、ポリフェニルメタンマレイミド(商品名「BMI-2300」大和化成株式会社製)5.0gと150℃1時間溶融した後に、ジアミノジフェニルメタン0.2gを混合し、前述した樹脂フィルムの作製方法により225℃で熱プレスすることでマレイミド硬化物(B-5)を得た。得られた硬化物(B-5)の耐熱性(ガラス転移温度(Tg))及び誘電特性は、表4に示した。
【0116】
【表4】
注)上記表4中の「250<」とは、ガラス転移点温度(Tg)の測定時の最高昇温温度(250℃)を超えることを示す。
【0117】
上記表1~表3の評価結果より、実施例1~8、及び、12~19において、所望の構造を有する反応性液晶ポリエステルを使用したことで、溶剤溶解性、及び、液晶性に優れた反応性液晶ポリエステルが得られることを確認できた。なお、実施例9~11、及び、20においては、不揮発分が高くなることで、溶剤溶解性が低下することが確認されたが、液晶ポリエステルを含む組成物(溶液)を、ガラスクロスなどに含浸加工することは可能であり、実用上問題ないことを確認した。一方、比較例1において、所望の構造を有する反応性液晶ポリエステルではなく、エステル結合が全て4,4’-ビフェニレン基に由来する剛直な構造のみ含む構成単位となることで、溶剤溶解性が非常に低く、実用上問題があることが確認された。
【0118】
上記表4の評価結果より、実施例21~24では、所望の構造を有する反応性液晶ポリエステルを使用して得られる硬化物が、耐熱性、及び、低誘電特性を満足できることが確認できた。一方、比較例2では、所望の構造を有する反応性液晶ポリエステルを使用せず、市販品のポリフェニルメタンマレイミドのみを使用した硬化物であったため、耐熱性と低誘電特性を同時に満足することができなかった。
本発明の反応性液晶ポリエステルを使用し得られる硬化物は、高耐熱性、及び、低誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、プリプレグ、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして適している。