(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059535
(43)【公開日】2022-04-13
(54)【発明の名称】乾燥水産ねり製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20220406BHJP
【FI】
A23L17/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167361
(22)【出願日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020167322
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
【テーマコード(参考)】
4B034
【Fターム(参考)】
4B034LB07
4B034LE05
4B034LE15
4B034LK29Z
4B034LP03
4B034LP09
4B034LP11
4B034LP14
4B034LT25
(57)【要約】
【課題】本発明は、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、復元後の形状が湾曲した、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の乾燥水産練り製品を提供することを課題する。
【解決手段】外層生地と内層生地の二層構造を有する乾燥水産練り製品であって、湾曲率が20%以上であることを特徴とする乾燥水産練り製品により解決する。該乾燥水産練り製品の製造方法としては、外層生地よりも水分の高い内層生地の外周を外層生地で覆った二層生地を作製し、加熱後、切断し、熱風乾燥することにより、乾燥時の収縮差を利用して二層生地を湾曲させることにより製造する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層生地と内層生地の二層構造を有する乾燥水産練り製品であって、前記乾燥水産練り製品の湾曲率が20%以上であることを特徴とする乾燥水産練り製品。
【請求項2】
前記外層生地が前記内層生地の外周を180°以上覆っていることを特徴とする請求項1記載の乾燥水産練り製品
【請求項3】
前記乾燥水産練り製品が魚肉、イカ、タコ、エビ、カニまたは貝の何れか1つを少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2記載の乾燥水産練り製品。
【請求項4】
水産物のすり身を含む外層生地と、
水産物のすり身を含み、前記外層生地よりも水分量の多い内層生地と、を
前記内層生地の外周を前記外層生地が180°以上覆うように二層構造を有する生地を作製する二層生地作製工程と、
前記二層生地作製で作製した二層生地を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱した二層生地を所定の形状に切断する切断工程と、
前記切断工程で切断した二層生地を熱風乾燥する乾燥工程と、含むことを特徴とする乾燥水産練り製品の製造方法。
【請求項5】
前記内層生地の水分が外層生地の水分よりも3重量%以上高いことを特徴とする請求項4記載の乾燥水産練り製品の製造方法。
【請求項6】
前記水産物が、魚肉、イカ、タコ、エビ、カニまたは貝の何れか1つを少なくとも含むことを特徴とする請求項4または5記載の乾燥水産練り製品の製造方法。
【請求項7】
前記二層生地作製工程において、口金を用いて前記内層生地及び前記外層生地を押し出すことで二層構造を有する生地を作製することを特徴とする請求項4~6何れか1項記載の乾燥水産練り製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、即席食品などの具材として使用される乾燥水産加工品としては、乾燥カマボコなどの練り製品の他に、イカやタコなどの水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物が用いられている。イカやタコなどの水産物をそのまま使用する場合、見た目や形状などの規格が合わないことを理由に廃棄されることがある。近年、水産資源の減少が問題となっており、持続的に成長可能な社会の実現のため、水産資源の有効利用することが求められている。
【0003】
即席食品などの具材として使用される乾燥カマボコの技術としては、特許文献1及び2の技術が知られている。また、イカの擂り身を使用した乾燥カマボコについて、特許文献3及び4の技術が知られている。このように水産物を擂り身として使用することで、規格外品などの廃棄ロスが減り、水産資源を有効利用することが可能である。しかしながら、イカやタコ、貝などの水産物を擂り身にして乾燥させた乾燥水産加工品(練り製品)は、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産加工品と比べて見た目や食感に劣るといった課題があった。特に見た目は、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産加工品は、お湯等で復元する際に筋繊維の収縮により、乾燥水産加工品が湾曲するのに対し、産物を擂り身にして乾燥させた乾燥水産加工品(練り製品)は、乾燥カマボコと同様に平坦な構造となることが多く見た目で本物感がないといった課題がある。
【0004】
また、複数の層を持つ乾燥水産加工品として特許文献5及び6の技術が知られている。特許文献5の技術は、乾燥による風味の減少を補いつつ味の単調さを改善し、良好な味わいと食感を有する魚肉乾燥品を製造する方法として、ナトリウム量の異なる2種類の配合で魚肉すり身及び副原料を擂潰する工程と、この擂潰した魚肉練り生地をそれぞれにシート成形する工程と、この成形した2枚の魚肉練りシートを重ね合わせる工程と、この重ね合わせた2層状の魚肉練りシートを加熱しゲル化させる工程と、このゲル化した魚肉練り製品を所望のサイズに裁断する工程と、この裁断した魚肉練り製品を水分値15~25%程度に乾燥する工程と、を含んで製造することを特徴とする2層状の魚肉乾燥品及びその製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献5の技術については、即席食品用の具材としてお湯等で復元する記載はなく、また、2種類の生地は、単純にシート状にしてから重ね合わせているだけである。
【0005】
また、特許文献6は、厚みがあっても湯戻り性が極めて優れた肉原料を含む即席乾燥具材として、肉原料を含む即席乾燥具材であって、練り肉部と棒状ないしシート状の可食体が接触して構成されており、かつ即席乾燥具材を湯戻しする際における該具材の水との接触面に対して、該可食体が交錯して配置されていることを特徴とする即席乾燥具材について記載されている。しかしながら、特許文献6の即席乾燥具材については、復元性に関する記載があるもの、湾曲に関する記載はなく、棒状ないしシート状の可食体は、練り肉部と異なる素材のため、食感や見た目が水産物をそのまま乾燥した乾燥水産加工品と異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-84669号公報
【特許文献2】特許第6247073号公報
【特許文献3】特公昭62-49023号公報
【特許文献4】特公昭62-49022号公報
【特許文献5】特開2013-169175号公報
【特許文献6】特開2005-52141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の復元後の形状が湾曲した、乾燥水産練り製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、イカやタコなどの水産物をカットしてそのまま乾燥した乾燥水産物の製造ロス削減のため、代替物として、水産物を磨り潰して成形した練り物を乾燥することで、規格外原材料や端物を使用し、ロスを削減する方法を検討した。しかしながら、単純に擂り潰して成形し、乾燥するだけでは、カマボコのような練り物の見た目となるだけで、イカやタコなどの水産物のような筋繊維の収縮により湾曲したような見た目を再現することができなかった。そこで鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0009】
すなわち、外層生地と内層生地の二層構造を有する乾燥水産練り製品であって、前記乾燥水産練り製品を熱湯で復水したときの湾曲率が20%以上であることを特徴とする乾燥水産練り製品である。
【0010】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品は、外層生地が内層生地の外周を180°以上覆っていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品は、魚肉、イカ、タコ、エビ、カニまたは貝の何れか1つを少なくとも含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品の製造方法としては、水産物のすり身を含む外層生地と、水産物のすり身を含み、外層生地よりも水分量の多い内層生地と、を内層生地の外周を前記外層生地が180°以上覆うように二層構造を有する生地を作製する二層生地作製工程と、二層生地作製で作製した二層生地を加熱する加熱工程と、加熱工程で加熱した二層生地を所定の形状に切断する切断工程と、切断工程で切断した二層生地を熱風乾燥する乾燥工程と、含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品の製造方法としては、内層生地の水分が外層生地の水分よりも3重量%以上高いことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品の製造方法に使用する水産物は、魚肉、イカ、タコ、エビ、カニまたは貝の何れか1つを少なくとも含むことが好ましい。
【0015】
また、本発目に係る乾燥水産練り製品の製造方法の二層生地作製工程においては、口金を用いて内層生地及び外層生地を押し出すことで二層構造を有する生地を作製することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の復元後の形状が湾曲した乾燥水産練り製品を提供することができる。また、本発明により、通常使用していなかった規格外品や乾燥水産物を切断した端物なども再利用でき、製造ロスが削減でき、水産資源の有効利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る乾燥水産練り製品の湾曲率の測定方法についての説明図である。
【
図2】本発明に係る乾燥水産練り製品の二層構造についての説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る乾燥水産練り製品の製造に用いる口金の構造を示した説明図である。
【
図4】本発明の比較例である比較例1の乾燥水産物(真空乾燥イカ)の復元後の写真である。
【
図5】本発明の試験例である試験例1の復元後の写真である。
【
図6】本発明の試験例である試験例2の復元後の写真である。
【
図7】本発明の試験例である試験例3の復元後の写真である。
【
図8】本発明の試験例である試験例7の復元後の写真である。
【
図9】本発明の試験例である試験例9の復元後の写真である。
【
図10】本発明の試験例である試験例10の復元後の写真である。
【
図11】本発明の試験例である試験例11の復元後の写真である。
【
図12】本発明の試験例である試験例12の復元後の写真である。
【
図13】本発明の試験例である試験例13の復元後の写真である。
【
図14】本発明の試験例である試験例15の復元後の写真である。
【
図15】本発明の試験例である試験例16の復元後の写真である。
【
図16】本発明の試験例である試験例17の復元後の写真である。
【符号の説明】
【0018】
1 乾燥水産練り製品
2 外層生地
3 内層生地
4 外層口金部
5 内層口金部
6 ガイド
7 口金
8 外層生地配管
9 内層生地配管
A、A’ 接地点
B 頂点
L 長さ
h 高さ
θ 被覆角度
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0020】
1.乾燥水産練り製品の原材料
本発明に係る乾燥水産練り製品の内層生地及び外層生地の原材料としては、水産物としてタラ、タイ、マグロ、サケ、サメなどの魚類の魚肉や、イカ、タコなどの頭足類の胴や足などの可食部、ホタテ貝やイタヤ貝などの貝柱、カニ・エビなどの節足類のむき身などが使用できる。水産物は擂り身として使用するため、形状などの規格は特に限定なく、また、乾燥水産物の製造において発生した端物を再利用することもできる。
【0021】
本発明においては、イカやタコなどの頭足類の乾燥水産物を対象とした乾燥水産物様の形状を有する乾燥水産練り製品を製造することが好ましい。本発明に係る乾燥水産練り製品は、目的とする乾燥水産物に使用されている水産物を使用するだけでなく、風味に影響が無くボディー感を出すためにタラやタイなどの白身魚の魚肉を使用することが好ましい。
【0022】
その他の原材料として、食感改良のための澱粉、擂り身の作製や味付けのために使用する食塩や、グルタミン酸ソーダ、アルギニン、アラニンなどのアミノ酸類、香料などの風味成分、卵白、増粘剤、セルロース、乳化剤、カルシウム塩などの結着剤や食感改良剤、着色剤を適宜使用することができる。食感改良のための澱粉としては、特に限定はなく、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉など各種澱粉及びこれらを加工した加工澱粉を使用できるが、低膨潤性のリン酸架橋澱粉や湿熱処理澱粉が好ましく、特に好ましくは、低膨潤性のリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉が好ましい。
【0023】
2.乾燥水産練り製品の形状
本発明に係る乾燥水産練り製品の個体の湾曲率の測定方法は、まず、乾燥水産練り製品に熱湯(沸騰水)を注ぎ、3分間復水させたものを測定に使用する。湾曲率は、
図1(a)で示すように、復水後の乾燥水産練り製品1を水平面に接地したときの接地点をA、A’とし、
図1(b)で示すように、A-A’間の距離を長さL(mm)とし、A-A’間の断面上で最高点を頂点BとしたときのA-A’線からの長さを高さh(mm)とし、長さLに対する高さhの割合(%)を示したものである。なお、
図1(a)で示すように、乾燥水産練り製品1が片面方向だけでなく、両面方向に湾曲している場合は、両面をそれぞれ下向きに水平面に置いたときに安定する面を下向きにして測定する。なお、両面ともに安定して水平面に接地できない場合は、手で押さえるなどして接地点を決定し、それぞれの面の湾曲率を測定し、湾曲率の高い方の値をサンプルの湾曲率とする。また、接地点が複数存在するときは、長さLが最長となる接地点A、A’をサンプルの長さLとし、湾曲率を測定する。具体的な測定方法としては、復元した水産乾燥練り製品1を水平面に接地させ、接地点A、A’を決定し、ノギスを用いて接地点をA、A’の長さLを測定した後、接点A、A’にノギスの固定側のジョーに当てて、移動側のジョーを動かして復元した水産乾燥練り製品1と接触したところを高さ(h)として測定すればよい。
【0024】
また、本発明における乾燥水産練り製品の湾曲率(%)は、無作為に選んだ乾燥水産練り製品個体20個の湾曲率を測定した平均値をとする。本発明に係る乾燥水産練り製品は、乾燥水産練り製品を熱湯で復水したときの湾曲率が20%以上である。より好ましくは、22%以上が好ましい。また、20個の内、湾曲率が20%以上の割合を出現率とする。出現率が高いほど乾燥練り水産製品のそれぞれの製品個体が湾曲している確率が高く好ましい。好ましくは50%以上、より好ましくは、80%以上である。
【0025】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品は、
図2(a)で示すように外層生地2と内層生地3の二層構造を有する。本発明に係る乾燥水産練り製品は、外層生地と内層生地の水分差や吸水差を利用して、乾燥時や復元時に乾燥水産練り製品を湾曲させるため、
図2(b)のような積層構造では湾曲しにくく、本発明に係る二層構造は、
図2(a)、
図2(d)及び
図2(e)で示すように、内層生地を外層生地が180°以上覆うような二層構造が好ましい。被覆角度(θ)については、
図2(c)~(e)で示すように内層生地2の中心と外層生地3の両端を結ぶ間の角度を示す。より好ましくは270°以上、さらに好ましくは
図2(a)のように、内層生地3を完全に外層生地2が覆うような構造が好ましい。
【0026】
3.乾燥水産練り製品の製造方法
(二層生地作製工程)
本発明に使用する原材料を混合して外層生地及び内層生地を作製する。生地の作製方法としては、タラ、タイ、マグロ、サケなどの魚類の魚肉や、イカ、タコなどの水産物をサイレントカッターなどにより擂り潰して擂り身を作製し、作製した擂り身に香料やアミノ酸などを混合し、サイレントカッターなどで撹拌した後、卵白、澱粉などの粉体物を添加して、粉体物が均質に混ざるようにさらに撹拌して練り生地を作製する。水産物は予め擂り身となったものを使用してもよい。
【0027】
このとき、内層生地は、外層生地よりも水分が高くなるように調整することが好ましい。水分の調整方法としては、外層生地と同一原料に加水して調整することで簡単に調整することができる。内層生地の水分を外層生地の水分よりも高くすることで固形分含量が少なくなり、後述する熱風乾燥によって、内層生地の方が外層生地よりも早く乾燥、収縮するため、乾燥時に乾燥水産練り製品が湾曲し、これが復元後も維持されるため、見た目が良好となる。好ましくは3重量%以上水分を高くすることが好ましい。また、水分差が大きくなりすぎると内層生地が柔らかくなりすぎ、また乾燥に時間がかかるため、水分差は20重量%以下が好ましい。
【0028】
また、外層生地と内層生地の原料配合は異なってもよく、その場合は、内層生地に澱粉やセルロースなどの吸水性の高い素材を多く添加することが好ましい。復元時に内層部分が早く復元することにより、復元後の乾燥水産練り製品が湾曲しやすくなる。
【0029】
作製した外層生地及び内層生地を用いて二層生地を作製する。作製方法は特に限定はなく、棒状に成形した内層生地をシート状に成型した外層生地で包むことにより二層生地としてもよく、同じく棒状に成形した内層生地の表面に外層生地を塗ることによって二層生地としてもよく、
図3のような口金7を利用して内層生地と外層生地を押し出すことで二層生地を作製することもできる。口金7は外層口金部4の内部に内層口金部5を有し、必要によりガイド6を有する構造となっている。外層生地及び内層生地は、それぞれ外層生地配管8及び内層生地配管9を通じで外層口金部4及び内層口金部5に充填され、口金7より押し出されることにより二層生地となる。
【0030】
二層生地の形状は、内層生地の180°以上を外層生地が覆うように二層生地を作製することが好ましく、より好ましくは270°以上、さらに好ましくは外層生地が内層生地を完全に覆うような形状が好ましい。
【0031】
また、内層生地と外層生地の比率については、外層生地が内層生地の1/3~4倍程度となるように二層生地を作製することが好ましい。4倍よりも多くなると外層の比率が高くなりすぎて湾曲しにくくなる。逆に1/3よりも外層が少なくなると外層生地が内層生地を覆いづらくなり、湾曲しづらくなる。より好ましくは、1/3~2倍である。
(加熱工程)
作製した二層生地は、必要により細く延ばすなどして成形し、加熱して、タンパク質を加熱変性させ、保形及び殺菌する。加熱方法は特に限定はなく、ボイル、スチーム、焼成などの方法により、二層生地中に含まれる水産物由来のタンパク質や卵白などが凝固すればよい。また、加熱方法は1つに限らず、例えばボイルした後にスチームしたり、スチームした後に焼成することもできる。好ましくは、加熱により二層生地中の中心温が80℃以上となるまで加熱することが好ましく、そうすることで生地中のタンパク質が加熱凝固するだけでなく、十分殺菌できる。
【0032】
また、着色剤は、生地作製時に添加してもよいが、加熱の前後に成形した生地の表面に着色液を塗布して着色してもよく、外観を目的とする乾燥水産物様に似せることができる。
【0033】
(切断工程)
加熱した二層生地は、所定の形状に切断する。切断方法は特に限定はなく、スライサーや包丁を用いて切断すればく、1~3mm厚の扁平状のスライス形状とすればよい。このとき、加熱した二層生地を一度凍結しておくことにより、切断時に形状が壊れることが少なくなる。凍結方法は特に限定はなく、従来技術を適用することができる。例えば、エアブラスト式のトンネルフリーザー、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザーや急速凍結庫、ブライン式のフレキシブルフリーザー等の商業用の凍結装置だけでなく、一般的な業務用、家庭用の冷凍庫も適用できる。冷凍は、例えば約-35℃の急速凍結庫を利用して急速凍結してもよく、業務用の-18℃の冷凍庫に入れて凍結させてもよい。切断した二層生地は、使用されるまで-18℃の冷凍庫で保存することができる。
【0034】
(乾燥工程)
切断した二層生地を熱風乾燥し、乾燥水産練り製品とする。熱風乾燥は、50~150℃の熱風で30分~2時間程度乾燥することが好ましい。通常、熱風乾燥は、乾燥と同時に生地が収縮するため、乾燥後の乾燥水産練り製品の固形分の密度が高くなり、復元時の吸水性は、他の乾燥方法に劣るが、本発明に係る乾燥水産練り製品においては、かえって都合がよく、乾燥時の内層生地と外層生地の収縮差を利用して、湾曲した構造が得られやすくなる。乾燥条件は複数組み合わせてもよく、乾燥初期は高温で短期間乾燥し、収縮させた後、焼けを防ぐため温度を下げてゆっくりと乾燥させてもよい。
【0035】
乾燥した乾燥水産練り製品は、即席食品用の具材などとして使用できる。
【0036】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例0037】
<実験1>内外層生地の水分の検討
下記表1に示した資材を記載の配合割合となるように、スケソウダラ擂り身、イカ擂り身をサイレントカッターに入れ撹拌しながら、次いで食塩を入れ撹拌し、混ざったところで、サラダ油と乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)を添加し、撹拌して混ざったところで、塩化カルシウム、アルギニン、グルタミン酸ソーダ、アラニン、コハク酸を混ぜた粉体物を添加し、撹拌して混ざったところで、卵白粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉(カーギル社、NOVELOSE W)を粉体混合したものを添加し、撹拌して均質な生地となったところで撹拌をやめ、乾燥水産練り製品用のベース生地とした。また、ベース生地を作製した後、加水し、更に撹拌して均質化した加水生地1~5を作製した。
【0038】
【0039】
(試験例1)
作製したベース生地200gをφ20mmの円柱形状となるように転がしながら成形し、95℃で1分間ボイルした後、80℃で10分間スチームし、冷却した後、-35℃の急送凍結庫で品温が-5℃となるまで凍結し、スライサーで厚み1.5mmとなるように切断した後、65℃風速1.5m/sで水分が10重量%±0.5重量%となるように乾燥し、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルとした。
【0040】
(試験例2)
加水生地1を100g、円柱形状に転がしながら伸ばした後、ベース生地100gシート状に伸ばし、加水生地1をベース生地で完全に包むようにし二層生地を作製した後、φ20mmの円柱形状となるように転がしながら伸ばして成形した。その後の操作は試験例1の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0041】
(試験例3)
加水生地1の代わりに加水生地2を用いる以外は、試験例2の方法に従って、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0042】
(試験例4)
加水生地1の代わりに加水生地3を用いる以外は、試験例2の方法に従って、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0043】
(試験例5)
加水生地1の代わりに加水生地4を用いる以外は、試験例2の方法に従って、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0044】
(試験例6)
加水生地1の代わりに加水生地5を用いる以外は、試験例2の方法に従って、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0045】
(試験例7)
試験例1でスライスしたベース生地を-20℃の凍結庫で再凍結し、真空凍結乾燥機(東洋技研株式会社製TFD10LF4)にて0.1torr以下で、棚温が60℃、品温が58℃になるまで乾燥し、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルとした。
【0046】
(試験例8)
試験例2でスライスしたベース生地を用いる以外は、試験例7の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0047】
(試験例9)
試験例3でスライスしたベース生地を用いる以外は、試験例7の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0048】
(比較例1)
市販のカップ麺に含まれるイカのゲソをボイルし、スライスして真空凍結乾燥した乾燥水産物(乾燥イカ)をコントロールサンプルとした。
【0049】
試験例1~9及び比較例1について、湾曲率を測定した。各試験区の乾燥水産練り製品サンプル5gを紙製の容器に入れ、沸騰水100gを入れ、蓋をして3分間静置し、蓋を開けて、湯切りして取り出し、上述の方法に従って湾曲率の測定を行った。
【0050】
各試験区の湾曲率の結果を下記に表2に示す。
【0051】
【0052】
比較例1で示した乾燥イカは、復元前は扁平であるが、
図4で示すように、復水することで湾曲する。
【0053】
図8で示すように、通常の練り物を真空凍結乾燥した試験例7では、復元後に湾曲は発生せず、カマボコ様の扁平とした形状であった。
【0054】
図5で示すように、通常の練り物を熱風乾燥した試験区1では、熱風乾燥により若干の湾曲が認められたが、見た目が十分なほどの湾曲ではなかった。
【0055】
それに対し、
図6及び
図7並びに試験例2~6の試験結果で示すように、練り製品を二層構造とし、内層生地の水分を外層の生地の水分よりも高くすることで熱風乾燥により、乾燥水産練り製品が強く湾曲した。水分差については、試験例2で示すように加水量を少量(加水前の重量に対して10%)増やすだけでも十分な効果があり、水分的には、内層生地の水分が外層生地の水分よりも3重量%以上高くなるようすることが好ましいと考える。また、試験例6で示すように加水量を多く(加水前の重量に対して75%)すると生地の保形性が困難となり、また乾燥時間も長くなるため、内層生地と外層生地の水分差は20重量%以下が好ましいと考える。
【0056】
また、
図9並びに試験例8及び9の試験結果より、練り製品を二層構造としても乾燥方法を真空凍結乾燥とした場合は、乾燥時に収縮がおきず、復元時もそのまま吸水するため、湾曲は起こらなかった。よって、二層構造とし、外層生地と内層生地の水分差を利用して湾曲させる場合には、乾燥方法としては熱風乾燥が好ましい結果となった。
【0057】
<実験2>二層構造について
(試験例10)
内層生地として実験1で作製した加水生地2を用い、100gを円柱形状に伸ばし、外
層生地としてベース生地を用い、25gをシート状に伸ばし、
図2の被覆角度θが90°となるように内層生地を覆い、φ20mmの円柱形状となるように転がしながら伸ばして成形し、二層生地を作製した。その後の操作は試験例1の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0058】
(試験例11)
外層生地を50gとし、
図2の被覆角度θが180°となるように内層生地を覆う以外は試験例10の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0059】
(試験例12)
外層生地を75gとし、
図2の被覆角度θが270°となるように内層生地を覆う以外は試験例10の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0060】
(試験例13)
外層生地を25gとし、外層生地が内層生地の全体を覆う(
図2の被覆角度θが36
0°)ようにする以外は、試験例10の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0061】
(試験例14)
外層生地を50gとし、外層生地が内層生地の全体を覆う(
図2の被覆角度θが36
0°)ようにする以外は、試験例10の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0062】
(試験例15)
外層生地を100gとし、内層生地を50gとし、外層生地が内層生地の全体を覆う
(
図2の被覆角度θが360°)ようにする以外は、試験例10の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0063】
(試験例16)
外層生地を100gとし、内層生地を33gとし、外層生地が内層生地の全体を覆う図
2の被覆角度θが360°)ようにする以外は、試験例10の方法に従って乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルを作製した。
【0064】
実験2の各試験区について実験1同様に湾曲率を測定した。各試験区の湾曲率の結果を下記に表3に示す。
【0065】
【0066】
図5、
図7、
図10、
図11、
図12及び試験例1、3、10~12の試験結果で示す
ように内層生地を外層生地が覆う被覆角度θが大きくなればなるほど、湾曲率が高くなることがわかる。目視上であるが湾曲率が20%を超えるとサンプル全体として湾曲していると感じるようになり、さらに22%を超えると明らかにサンプル全体としてしっかりと湾曲していると感じるようになった。したがって、外層生地は内層生地を180°以上覆うことが好ましく、より好ましくは270°以上、さらに好ましくは、内層生地を外層生地が完全に覆っていることが好ましいと考える。
【0067】
図7、
図13~15及び試験例3、13~16の試験結果で示すように内層生地と外層
生地の割合としては、外層生地が内層生地を完全に覆うことができる程度以上に外層生地
があればよいが、試験例16で示すように内層生地に対して外層生地が多すぎると急激に
湾曲率が悪くなった。よって、外層生地は内層生地の重量に対して1/3~4倍程度とすることが好ましく、より好ましくは1/3~2倍程度とすることが好ましいと考える。
【0068】
<実験3>口金を用いた製法の検討
(試験例17)
ベース生地を外層生地とし、加水生地2を内層生地とし、
図3のような口金をもちいて
外層生地及び内層生地を押し出すことにより二層構造を作製した。内層口金部3の内層生
地の吐出口の口径をφ14mmとし、外層口金部から繋がったガイドを50mmとり、二
層生地を吐出するガイドの口径をφ20mmとして内層生地よび外層生地を66g/分の
速度で押し出しながら二層生地を作製した。作製した二層生地は、その後の操作は試験例
1の方法に従って乾燥水産練り製品サンプルを作製した。
【0069】
実験3で作製した乾燥水産練り製品サンプルを実験1と同様に復元し、湾曲率を測
定した。測定結果を下記表4に記載する。
【0070】
【0071】
実験3の試験結果及び
図16で示すように二層構造の製法として口金を用いて押し出す
ことにより作製する方法であっても、実験1及び2で示したような内層生地に外層生地を
巻き付けて二層構造とする方法であっても、どちらの方法であっても同様の湾曲率の結果
が得られた。口金による押し出しで作製した方が切断時の二層生地の形状が安定するため、製造ロスが少なく、また、簡単に量産化可能でき、歩留まりや充填時の重量が安定し
やすいといったメリットがある。巻き付けによる方法は、手作業で行うため、二層生地の
形状が一定ではなく、湯戻し後の形状がサンプルごとで変わり、天然物に近く感じるといったメリットがある。