(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060117
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】乾燥した穀粉及び/又は澱粉を含む揚げ物用打ち粉ミックス及びこれを使用したフライ製品
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20220407BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20220407BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168134
(22)【出願日】2020-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 香寿実
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B025LB05
4B025LB06
4B025LG01
4B025LG02
4B025LG04
4B025LG07
4B025LG28
4B025LG43
4B025LP15
4B035LC03
4B035LE07
4B035LG01
4B035LG14
4B035LG20
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG35
4B035LG42
4B035LK05
4B035LP03
4B035LP07
4B035LP21
4B035LP27
4B035LP43
(57)【要約】
【課題】時間がたってもサクサクして歯切れのよい衣の食感が維持できる揚げ物用打ち粉ミックスを提供すること。
【解決手段】揚げ物用打ち粉ミックス100質量部中、水分含有量が5質量%以下になるように乾燥した穀粉及び/又は澱粉を0.1質量部以上20質量部以下含む揚げ物用打ち粉ミックスである。また、これを使用したフライ製品である。穀粉の種類としては、ポテトフラワー、薄力小麦粉、コーンフラワー、米粉等を、澱粉の種類としては、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米粉澱粉、コーンスターチ等を挙げることができる。乾燥方法は、凍結乾燥、熱風乾燥等を使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚げ物用打ち粉ミックス100質量部中、水分含有量が5質量%以下になるように乾燥した穀粉及び/又は澱粉を0.1質量部以上20質量部以下含む揚げ物用打ち粉ミックス。
【請求項2】
穀粉が、小麦粉、ポテトフラワー、コーンフラワー、米粉からなる群から選択される穀粉の少なくとも1種以上であり、澱粉が小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、米粉澱粉、タピオカ澱粉からなる群から選択される澱粉の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の揚げ物用打ち粉ミックス。
【請求項3】
乾燥方法が、凍結乾燥又は熱風乾燥であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の揚げ物用打ち粉ミックス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の揚げ物用打ち粉ミックスを使用したフライ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した穀粉及び/又は澱粉を含む揚げ物用打ち粉ミックス及びこれを使用したフライ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやトンカツ等、具材にバッタリングしてフライする揚げ物には、衣の結着性等を改善するためにバッタリングの前処理として具材に小麦粉等の打ち粉をまぶしてからフライすることが行われている。
例えば、例えば、衣の結着性や揚げ種のジューシーな食感の発現を目的とした、油脂加工アセチル化澱粉を含む揚げ物用打ち粉が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、揚げ物の具材と衣材との結着性に優れていて衣が剥がれにくく、調理後に時間が
経過しても衣の品質低下が少ない揚げ物をつくることを目的とした油脂加工澱粉、ゼラチン及び植物性蛋白質を含有する揚げ物用打ち粉ミックスが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-291431号公報
【特許文献2】特開2018-113878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等では、フライ製品を加温什器や常温什器に保存したり、パック詰めしたりして販売することが行われているが時間が経つとサクサクして歯切れのよい衣の食感が損なわれるという問題があった。
本発明の目的は、時間がたってもサクサクして歯切れのよい衣の食感が維持できる揚げ物用打ち粉ミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、揚げ物用打ち粉ミックスに、水分含有量が5質量%以下になるように乾燥した穀粉及び/又は澱粉を特定量配合することで、時間がたってもサクサクして歯切れのよい衣の食感が維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、揚げ物用打ち粉ミックス100質量部中、水分含有量(以下「水分値」ともいう)が5質量%以下になるように乾燥した穀粉及び/又は澱粉を0.1質量部以上20質量部以下含む揚げ物用打ち粉ミックスである。
また、これを使用したフライ製品である。
穀粉の種類としては、小麦粉、ポテトフラワー、コーンフラワー、米粉等を、澱粉の種類としては、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、米粉澱粉、タピオカ澱粉等を挙げることができる。
乾燥方法としては、凍結乾燥、熱風乾燥等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の揚げ物用打ち粉ミックスを使用したフライ食品は、時間がたってもサクサクして歯切れのよい衣の食感が維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する水分値が5質量%以下になるように乾燥した穀粉及び/又は澱粉とは水分値が5質量%以下になるように乾燥された穀粉及び/又は澱粉をいう。
穀粉及び/又は澱粉を乾燥する場合、使用する穀粉及び/又は澱粉は市販品が使用でき、これらは特別に乾燥処理を行っていない場合、水分値は、ほぼ8質量%以上である。
本発明で使用する乾燥した穀粉及び/又は澱粉は、この水分値が8質量%以上の穀粉及び/又は澱粉を水分値が5質量%以下になるように乾燥することで得ることができる。
また、穀粉とする前の原料を乾燥し、これを粉砕し篩通しすることで乾燥した穀粉を得ることもできる。
凍結乾燥や熱風乾燥に使用する乾燥機は、特に限定なく市販品を使用することができる。
【0008】
本発明で使用する乾燥した穀粉の種類には特に限定はなく、例えば、小麦粉、ポテトフラワー、コーンフラワー、米粉等を挙げることができる。
また、発明で使用する乾燥した澱粉の種類にも特に限定はなく、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、米粉澱粉、タピオカ澱粉等を挙げることができる。
乾燥した穀粉及び/又は澱粉の配合量は、揚げ物用打ち粉ミックス100質量部中、0.1質量部以上20質量部以下である。
配合量が0.1質量部未満では、十分な効果を得ることができず、20質量部を超えるとサクサクして歯切れのよい食感ではなく、ガリガリとした食感となるため不適である。
本発明では、揚げ物用打ち粉ミックス100質量部中、0.1質量部以上20質量部以下の配合量で乾燥した穀粉や乾燥した澱粉の少なくとも、どちらか一方を使用していれば効果を得ることができる。
【0009】
本発明の揚げ物用打ち粉ミックスは、前記乾燥した穀粉及び/又は澱粉以外に必要に応じて従来から打ち粉に使用されている原料を使用することができる。
例えば、水分値が5質量%以下になるように乾燥した穀粉及び/又は澱粉以外の穀粉や澱粉、卵粉、食塩、調味料、香辛料、香料、着色料等を挙げることができる。
これらの配合量は従来から打ち粉に使用されている配合量でよい。
【0010】
本発明の揚げ物用打ち粉ミックスは、前記原料を均一になるように混合することで得ることができる。
混合の方法は特に限定されず、手混ぜによる方法や、リボンミキサー、ナウターミキサー、カスケードミキサー、ドラムミキサー、V 型ミキサー等の混合機を使用する方法を挙げることができる。
【0011】
本発明の揚げ物用打ち粉ミックスの使用方法は、公知の打ち粉と同様でよく、例えば、具材に本発明の揚げ物用打ち粉ミックスをまぶした後、バッタリングし必要に応じてブレッダリングしてフライすることでフライ製品を得ることができる。
なお、本発明の打ち粉が使用できる揚げ物は、天ぷらやトンカツ等のようにバッタリングし衣を有するものであり、素揚げや小麦粉やシーズニングをまぶして揚げた唐揚げ等は除かれる。
使用できる具材は、特に限定されず、例えば、肉類、魚介類、野菜類、豆類、きのこ類等を挙げることができる。
これらは、生でも加熱処理されていてもよい。
【実施例0012】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[乾燥穀粉、乾燥澱粉の調製]
・市販の小麦粉(水分値 14質量%)、ポテトフラワー(水分値 17質量%)、コーンフラワー(水分値 14質量%)、米粉(水分値 11質量%)、小麦澱粉(水分値 13質量%)、馬鈴薯澱粉(水分値 18質量%)、コーンスターチ(水分値 13質量%)、米粉澱粉(水分値 14質量%)、タピオカ澱粉(水分値 12質量%)を真空乾燥機(共和真空技術株式会社製、RLE III-103)を使用して凍結乾燥し水分値が5%の凍結乾燥小麦粉、凍結乾燥ポテトフラワー、凍結乾燥コーンフラワー、凍結乾燥米粉、凍結乾燥小麦澱粉、凍結乾燥馬鈴薯澱粉、凍結乾燥コーンスターチ、凍結乾燥米粉澱粉、凍結乾燥タピオカ澱粉を得た。
・市販の小麦粉(水分値 14質量%)、ポテトフラワー(水分値 17質量%)、コーンフラワー(水分値 14質量%)、米粉(水分値 11質量%)、小麦澱粉(水分値 13質量%)、馬鈴薯澱粉(水分値 18質量%)、コーンスターチ(水分値 13質量%)、米粉澱粉(水分値 14質量%)、タピオカ澱粉(水分値 12質量%)を、定温乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DX302)を使用して熱風乾燥し水分値が5%の熱風乾燥小麦粉、熱風乾燥ポテトフラワー、熱風乾燥コーンフラワー、熱風乾燥米粉、熱風乾燥小麦澱粉、熱風乾燥馬鈴薯澱粉、熱風乾燥コーンスターチ、熱風乾燥米粉澱粉、熱風乾燥タピオカ澱粉を得た。
【0013】
[配合量による効果の検証]
表1~表9に示す配合の原料をよく混合し揚げ物用打ち粉ミックスとし、これを鶏もも肉80gに、まんべんなくまぶし、バッターで被覆し、さらにブレッダーで被覆した。
使用したバッターは、薄力小麦粉55.5質量部、タピオカ澱粉40質量部、ベーキングパウダー1質量部、塩2質量部、グルタミン酸ナトリウム1質量部、グアーガム0.5質量部に水150質量部を加え攪拌して調製した。
また、使用したブレッダーは、薄力小麦粉98質量部、塩2質量部をよく混合して調製した。
これを170℃のサラダ油で1分間フライした後スチームオーブン(庫内湿度70%、庫内温度140℃)で10分間加熱し-50℃の急速冷凍庫で30分間凍結処理し冷凍フライドチキンを得た。
前記冷凍フライドチキンを-30℃で3日間保存した後、170℃のサラダ油で5分間フライして温度70℃、湿度50%のホットケースで6時間保存した後、10名のパネラーにより小麦粉のみを使用した場合(参考例1)をコントロール(3点)として以下の評価基準により評価を行った。
なお、表1~表9中、配合量の単位は質量部である。
・食感(歯切れ)
5点 サクサクして非常に良い歯切れで非常に良い
4点 サクサクして良い歯切れで良い
3点 普通
2点 あまりサクサクとせずやや悪い歯切れ、又はややガリガリして悪い。
1点 サクサクとせず非常に悪い歯切れで、又はガリガリして非常に悪い
【0014】
得られた評価結果を表1~表9に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
食感の平均点が、3.5点以上であるものを合格とした。
【0015】
【0016】
比較例1は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0017】
【0018】
比較例2は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0019】
【0020】
比較例3は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0021】
【0022】
比較例4は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0023】
【0024】
比較例5は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0025】
【0026】
比較例6は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0027】
【0028】
比較例7は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0029】
【0030】
比較例8は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0031】
【0032】
比較例9は、ガリガリとした食感となり食感が劣った。
【0033】
[乾燥方法による効果の検証]
凍結乾燥した穀粉及び/又は澱粉を以下のとおり変更した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
実施例55 実施例4の凍結乾燥小麦粉を熱風乾燥小麦粉に変更した。
実施例56 実施例10の凍結乾燥ポテトフラワーを熱風乾燥ポテトフラワーに変更した。
実施例57 実施例16の凍結乾燥コーンフラワーを熱風乾燥コーンフラワーに変更した。
実施例58 実施例22の凍結乾燥米粉を熱風乾燥米粉に変更した。
実施例59 実施例28の凍結乾燥小麦澱粉を熱風乾燥小麦澱粉に変更した。
実施例60 実施例34の凍結乾燥馬鈴薯澱粉を熱風乾燥馬鈴薯澱粉に変更した。
実施例61 実施例40の凍結乾燥コーンスターチを熱風乾燥コーンスターチに変更した。
実施例62 実施例46の凍結乾燥米粉澱粉を熱風乾燥米粉澱粉に変更した。
実施例63 実施例52の凍結乾燥タピオカ澱粉を熱風乾燥タピオカ澱粉に変更した。
得られた評価結果を表10に示す。
【0034】
【0035】
乾燥方法が、熱風乾燥でも凍結乾燥でも満足できる効果を得ることができた。
より好ましい乾燥方法は凍結乾燥であった。