(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060294
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】チーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 20/02 20210101AFI20220407BHJP
【FI】
A23C20/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017355
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2021538336の分割
【原出願日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020068441
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 守雄
(72)【発明者】
【氏名】平岡 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】貞包 忠義
(57)【要約】
【課題】チーズ様食品の生産性を向上させるとともに、適切な食感を備えるチーズ様食品の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様にかかるチーズ様食品の製造方法は、酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含む混合物を準備する工程と、準備した混合物を加熱しながら攪拌して乳化させる工程と、乳化した混合物を冷却して固化する工程と、を備え、混合物に含まれる澱粉の水分に対する質量比を0.55以上0.92以下とし、混合物に含まれる油脂の澱粉に対する質量比を0.25以上1.80以下としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含む混合物を準備する工程と、
前記混合物を加熱しながら攪拌して乳化させる工程と、
前記乳化した混合物を冷却して固化する工程と、を備え、
前記混合物に含まれる前記澱粉の前記水分に対する質量比を0.55以上0.92以下とし、
前記混合物に含まれる前記油脂の前記澱粉に対する質量比を0.25以上1.80以下とする、
チーズ様食品の製造方法。
【請求項2】
前記乳化した混合物を冷却して固化する工程は、前記乳化した混合物を帯状の包装フィルムの内部に充填した後、前記乳化した混合物を冷却して固化する工程であり、
前記混合物が固化した後、前記混合物が充填された包装フィルムを切り分ける工程を更に備える、請求項1に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項3】
前記澱粉の前記水分に対する質量比を0.60以上0.86以下とする、請求項1または2に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項4】
前記澱粉の前記水分に対する質量比を0.62以上0.80以下とする、請求項1または2に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項5】
前記混合物に含まれる前記澱粉の割合を21.0質量%以上35.3質量%以下とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項6】
前記混合物に含まれる前記油脂の割合を8.0質量%以上40.0質量%以下とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項7】
前記澱粉としてヒドロキシプロピル化澱粉を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項8】
前記混合物に含まれる前記ヒドロキシプロピル化澱粉の割合を5.5質量%以下とする、請求項7に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、請求項7または8に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項10】
前記酸処理澱粉が酸処理馬鈴薯澱粉である、請求項1~9のいずれか一項に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項11】
前記混合物がさらに乳化剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項12】
前記乳化剤がオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムである、請求項11に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項13】
前記水分は、水、豆乳、及びココナッツミルクのうちの少なくとも一つを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のチーズ様食品の製造方法。
【請求項14】
酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含み、
前記水分に対する前記澱粉の質量比が0.55以上0.92以下であり、
前記澱粉に対する前記油脂の質量比が0.25以上1.80以下である、
チーズ様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チーズは様々な料理に用いられており、チーズの需要は増加傾向にある。一方で、畜産農家の減少等の理由により、チーズの生産に使用される乳の生産量は年々減少している。このため、需要に対して十分な量のチーズを市場に供給することが難しくなってきており、このような理由から、乳を使用することなく製造できるチーズ様食品が注目されている。
【0003】
特許文献1には、酸処理澱粉を含有する成形チーズ様食品に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、酸化澱粉を含有する耐熱性チーズ様加工食品に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-065948号公報
【特許文献2】特許第6222788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チーズ様食品を製造する際は、澱粉、水、及び油脂等を含む原料を加熱しながら撹拌して原料を乳化させる。そして、この乳化させた原料を冷却して固化することでチーズ様食品を製造する。
【0006】
しかしながら、チーズ様食品の製造工程では、乳化した原料を冷却して固化する際に時間がかかるため、生産性が悪いという問題がある。一方、原料の割合を変えることで、冷却時における原料の固化時間を短くして生産性を向上させることも考えられるが、原料の割合によってはチーズ様食品の食感が悪化するという問題がある。
【0007】
上記課題に鑑み本発明の目的は、チーズ様食品の生産性を向上させるとともに、適切な食感を備えるチーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかるチーズ様食品の製造方法は、酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含む混合物を準備する工程と、前記混合物を加熱しながら攪拌して乳化させる工程と、前記乳化した混合物を冷却して固化する工程と、を備え、前記混合物に含まれる前記澱粉の前記水分に対する質量比を0.55以上0.92以下とし、前記混合物に含まれる前記油脂の前記澱粉に対する質量比を0.25以上1.80以下としている。
【0009】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記澱粉の前記水分に対する質量比を0.60以上0.86以下としてもよい。
【0010】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記澱粉の前記水分に対する質量比を0.62以上0.80以下としてもよい。
【0011】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記混合物に含まれる前記澱粉の割合を21.0質量%以上35.3質量%以下としてもよい。
【0012】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記混合物に含まれる前記油脂の割合を8.0質量%以上40.0質量%以下としてもよい。
【0013】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記澱粉としてヒドロキシプロピル化澱粉を更に含んでいてもよい。
【0014】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記混合物に含まれる前記ヒドロキシプロピル化澱粉の割合を5.5質量%以下としてもよい。
【0015】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉であってもよい。
【0016】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記酸処理澱粉が酸処理馬鈴薯澱粉であってもよい。
【0017】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記酸処理澱粉が酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉であってもよい。
【0018】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記混合物がさらに乳化剤を含んでいてもよい。
【0019】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記乳化剤がオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムであってもよい。
【0020】
上述のチーズ様食品の製造方法において、前記水分は、水、豆乳、及びココナッツミルクのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0021】
本発明の一態様にかかるチーズ様食品は、酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含み、前記水分に対する前記澱粉の質量比が0.55以上0.92以下であり、前記澱粉に対する前記油脂の質量比が0.25以上1.80以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、チーズ様食品の生産性を向上させるとともに、適切な食感を備えるチーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<チーズ様食品>
本実施の形態にかかるチーズ様食品は、酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含み、水分に対する澱粉の質量比が0.55以上0.92以下であり、かつ、澱粉に対する油脂の質量比が0.25以上1.80以下であることを特徴としている。更に、水分に対する澱粉の質量比は、0.60以上0.86以下であることが好ましく、0.62以上0.80以下であることがより好ましく、0.65以上0.77以下であることが更に好ましい。
【0024】
本実施の形態にかかるチーズ様食品では、水分に対する澱粉の質量比を上述の範囲とすることで、チーズ様食品の製造工程において、乳化した原料を冷却して固化させる際に、硬化速度を速くすることができる。よって、製造工程を短縮することができるので、チーズ様食品の生産性を向上させることができる。更に、本実施の形態にかかるチーズ様食品では、水分に対する澱粉の質量比を上述の範囲とすることで、製造後のチーズ様食品の硬さを適切な範囲とすることができる。したがって、チーズ様食品の食感をチーズに近づけることができるので、適切な食感を備えるチーズ様食品を提供することができる。
【0025】
以下、本実施の形態にかかるチーズ様食品について詳細に説明する。
【0026】
(澱粉)
本実施の形態にかかるチーズ様食品で用いられる澱粉は、酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉である。本実施の形態では、酸処理澱粉として酸処理馬鈴薯澱粉を用いることが好ましく、酸処理アセチル化澱粉を用いることが更に好ましい。酸処理アセチル化澱粉は、原料澱粉に酸処理およびアセチル化処理を施した澱粉である。原料澱粉には、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉およびサゴ澱粉からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができるが、これらに限定されることはない。本実施の形態では、原料澱粉として馬鈴薯澱粉を用いることが好ましい。
【0027】
本実施の形態で用いられる酸処理アセチル化澱粉は、酸処理澱粉をアセチル化したものであってもよく、アセチル化澱粉を酸処理したものであってもよい。なお、アセチル化澱粉を酸処理した場合は、酸処理中にアセチル基が一部脱離する場合がある。このため、反応効率を考慮すると、酸処理をした後にアセチル化して得られる酸処理アセチル化澱粉を用いることが好ましい。また、酸処理アセチル化澱粉は、酸処理とアセチル化処理とが施されていれば、他の加工処理(例えば、架橋処理、エーテル化処理、酵素処理等)が施された澱粉であってもよい。
【0028】
本実施の形態にかかるチーズ様食品において、チーズ様食品に含まれる澱粉の割合(つまり、チーズ様食品中の澱粉の総量)は、21.0質量%以上35.3質量%以下であり、好ましくは23.3質量%以上34.0質量%以下であり、より好ましくは24.0質量%以上32.5質量%以下である。澱粉の割合をこの範囲とすることで、チーズ様食品の生産性を向上させることができるとともに、チーズ様食品の食感を適切な範囲にすることができる。
【0029】
また、本実施の形態にかかるチーズ様食品において、チーズ様食品に含まれる酸処理アセチル化澱粉の割合は、21.0%以上31.0%以下とすることが好ましい。
【0030】
本実施の形態では、上述の澱粉としてヒドロキシプロピル化澱粉を更に含んでいてもよい。ヒドロキシプロピル化澱粉は、原料澱粉にヒドロキシプロピル化処理が施された澱粉である。なお、ヒドロキシプロピル化澱粉の原料澱粉は特に限定されることはないが、本実施の形態ではタピオカ澱粉を用いることが好ましい。すなわち本実施の形態では、ヒドロキシプロピル化澱粉として、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を用いることが好ましい。
【0031】
本実施の形態にかかるチーズ様食品において、チーズ様食品に含まれるヒドロキシプロピル化澱粉の割合は、5.5質量%以下とすることができる。チーズ様食品に含まれるヒドロキシプロピル化澱粉の割合をこの範囲とすることで、チーズ様食品の生産性を向上させつつ、チーズ様食品の食感を向上させることができる。なお、澱粉にヒドロキシプロピル化澱粉を含めた場合、上述の澱粉の総量は、酸処理アセチル化澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉とを合算した量である。また、本実施の形態では、ヒドロキシプロピル化澱粉以外にアセチル化タピオカ澱粉等のアセチル化澱粉を用いてもよい。
【0032】
(油脂)
本実施の形態にかかるチーズ様食品で用いられる油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、及びこれらの油脂に、エステル交換、水素添加、分別及び硬化からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂が挙げられるが、これらに制限されない。これらの食用油脂は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施の形態では、特にパーム油、パーム核油、及びヤシ油を用いることが好ましい。
【0033】
本実施の形態にかかるチーズ様食品において、チーズ様食品に含まれる油脂の割合は8.0質量%以上40.0質量%以下であり、好ましくは10.0質量%以上38.8質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以上30.0質量%以下である。油脂の割合をこの範囲とすることで、チーズ様食品の生産性を向上させることができるとともに、チーズ様食品の食感を適切な範囲にすることができる。
【0034】
特に本実施の形態では、澱粉に対する油脂の質量比を0.25以上1.80以下、好ましくは0.28以上1.67以下、より好ましくは0.30以上1.50以下とすることが好ましい。
【0035】
(水分)
本実施の形態にかかるチーズ様食品において水分の含有量は、32.0質量%以上51.0質量%以下とすることができる。なお、本実施の形態において「水分」とは、チーズ様食品を製造する際に加える原料水(配合水)の量であり、澱粉自身に含まれている水分量を除いた量である。水分の含有量は、澱粉の量に応じて適宜調整することができる。すなわち、本実施の形態では、水分に対する澱粉の質量比が上述の範囲内となるように、水分の含有量を調整することができる。また、本実施の形態にかかるチーズ様食品は、澱粉、油脂、水分が主原料であるので、例えば、水分に対する澱粉の質量比、及び澱粉に対する油脂の質量比を上記範囲に調整する際に、適宜水分量を調整してもよい。
【0036】
なお、本実施の形態にかかるチーズ様食品において、水分は水以外であってもよい。例えば水分として、豆乳、ココナッツミルク、アーモンドミルク、ライスミルク等の植物性乳化液体;生乳、低脂肪乳、無脂肪乳等の動物性乳化液体;野菜汁;果汁等を用いてもよい。このように、水分として水以外の液体を含めることで、チーズ様食品に風味を付加することができる。
【0037】
(乳化剤)
本実施の形態にかかるチーズ様食品は、乳化剤を含んでいてもよい。乳化剤としては、例えば、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノ脂肪酸グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム等を用いることができる。本実施の形態では、乳化剤としてオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを用いることが好ましい。例えば、チーズ様食品に含まれるオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの割合は、1質量%以上5質量%以下とすることができる。
【0038】
なお、本明細書では、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムは、澱粉ではなく乳化剤として扱っている。すなわち、本明細書では、澱粉の総量にオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを含めていない。
【0039】
(その他の成分)
本実施の形態にかかるチーズ様食品は、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。例えば、その他の成分として、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸誘導体;トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等の抗酸化剤;カロテン等の着色料;香料;食塩、砂糖、アミノ酸類等の調味料;上記以外の澱粉、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カラギナン、アルギン酸、デキストリン、ジェランガム、セルロース等の多糖類;カゼインナトリウム、脱脂粉乳等の乳成分;ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等のチーズ類;酢酸、リン酸、クエン酸、乳酸、及びそれらのナトリウム塩等のpH調整剤;酢酸ナトリウム、グリシン、卵白リゾチーム等の日持ち向上剤;を用いることができる。
【0040】
上述したように、本実施の形態にかかるチーズ様食品では、水分に対する澱粉の質量比を0.55以上0.92以下としている。水分に対する澱粉の質量比を当該範囲とした場合は、チーズ様食品の製造工程において、乳化した原料を冷却して固化させる際に硬化速度を速くすることができる。よって、製造工程を短縮することができるので、チーズ様食品の生産性を向上させることができる。更に、水分に対する澱粉の質量比を上述の範囲とすることで、製造後のチーズ様食品の硬さを適切な範囲とすることができる。したがって、チーズ様食品の食感をチーズに近づけることができるので、適切な食感を備えるチーズ様食品を提供することができる。
【0041】
すなわち、チーズ様食品では、水分に対して澱粉の量を多くすると、乳化した原料を冷却して固化させる際の硬化速度を速くすることができる。一方、水分に対して澱粉の量が多い場合は、製造後のチーズ様食品の硬さが硬くなり、食感が悪くなる。逆に、水分に対して澱粉の量が少ない場合は、製造後のチーズ様食品の硬さが柔らかくなるが、乳化した原料を冷却して固化させる際の硬化速度は遅くなる。そこで、本実施の形態にかかるチーズ様食品では、製造時の原料の硬化速度と製造後のチーズ様食品の硬さとのバランスを考慮して、水分に対する澱粉の質量比を0.55以上0.92以下としている。水分に対する澱粉の質量比をこのような範囲とすることで、チーズ様食品の生産性を向上させつつ、適切な食感を備えるチーズ様食品を提供することができる。
【0042】
<チーズ様食品の製造方法>
次に、本実施の形態にかかるチーズ様食品の製造方法について説明する。
本実施の形態にかかるチーズ様食品を製造する際は、まず、酸処理澱粉を少なくとも含む澱粉と、水分と、油脂と、を含む混合物(原料)を準備する(準備工程)。このとき準備する混合物に含まれる澱粉の水分に対する質量比は、0.55以上0.92以下とし、澱粉に対する油脂の質量比は0.25以上1.80以下とする。また、本実施の形態では、準備する混合物に含まれる澱粉の水分に対する質量比を0.60以上0.86以下とすることが好ましく、0.62以上0.80以下とすることがより好ましく、0.65以上0.77以下とすることが更に好ましい。なお、当該混合物には、上述したチーズ様食品の原料を用いることができる。また、混合物を準備する際は、水、澱粉及び油脂を一緒に混合してもよく、任意の2成分を予め混合した後に残りの成分を加えて混合してもよい。
【0043】
次に、準備した混合物を加熱しながら攪拌して乳化させる(攪拌工程)。例えば、準備した混合物を加熱しないで数分間攪拌し、その後、加熱を開始して、澱粉が糊化して全体が乳化するまで攪拌を行う。混合物を加熱しながら攪拌する際の温度は、混合物の温度が80℃以上120℃未満となるようにすることが好ましい。乳化させる工程の具体例を挙げると、混合物を加熱しない状態で、プロペラ攪拌機を用いて1200rpmの条件で1分間攪拌する。その後、90℃の湯浴で加熱しながら、1000rpmの条件で6分間攪拌することで、混合物を乳化させることができる。なお、前記攪拌工程では、加熱手段として生蒸気を注入してもよい。その際、注入した生蒸気を前記水分として換算する。
【0044】
攪拌工程には、プロペラ型攪拌機以外の装置を用いてもよい。例えば、ケトル型乳化機、ステファン型乳化機、表面かきとり式乳化機等の乳化機や、ホモミキサーやプロペラ型撹拌機で混合物を乳化した後に、表面かきとり式熱交換器等を用いて加熱してもよい。このように加熱工程を含むことにより、混合液が糊液となり、チーズ様食品にチーズらしい食感を付与することができる。
【0045】
その後、乳化した混合物を冷却して固化する(冷却工程)。このときの冷却温度は、例えば0℃超10℃以下の雰囲気下で冷却することができる。この温度で冷却することで、乳化した混合物に適切な硬さを付与することができる。その後、固まった混合物(チーズ様食品)を裁断して、包装容器等に充填してもよい。
【0046】
なお、本実施の形態にかかるチーズ様食品の製造方法において冷却工程は、乳化した混合物(乳化液)を包装容器等に充填してから行ってもよい。例えば、個別に包装されたスライス状のチーズ様食品を製造する際は、空洞を有する帯状の包装フィルムの内部に乳化液を充填し、乳化液が充填された包装フィルムを冷却して乳化液を固めてチーズ様食品を製造する。このとき、乳化液が充填された包装フィルムを上下方向からプレスして扁平状とし(例えば、2つのローラーの間を通過させて扁平状にする)、冷却後、切り分けることで、包装フィルムに包装されたスライス状のチーズ様食品を製造することができる。
【0047】
本実施の形態にかかるチーズ様食品の製造方法において、チーズの厚みは制限されないが、3cm以下、2cm以下、1.5cm以下とすることができる。強度の観点から、0.2mm以上とすることが好ましく、0.5mm以上とすることがより好ましく、1mm以上とすることがより好ましい。例えば、乳化液が充填された包装フィルムを扁平状にする際、厚さが0.2mm以上3.0mm以下、好ましくは0.8mm以上2.0mmとなるようにすることができる。本発明によれば、乳化液の硬化が促進されるため、厚みの小さいチーズの生産性を向上させることができる。
【0048】
すなわち、包装フィルムの内部に乳化液を充填し、乳化液が充填された包装フィルムを冷却してチーズ様食品を製造する方法では、乳化液の充填と乳化液の冷却とを連続的に行っている。このため、この方法を用いてチーズ様食品を製造する場合は、冷却工程において乳化液が迅速に固化することが重要である。
【0049】
上述のように本実施の形態では、水分に対する澱粉の質量比を0.55以上0.92以下としているので、冷却工程において乳化液が固化する際の硬化速度を速くすることができる。このことから、本実施の形態にかかるチーズ様食品の製造方法は、包装フィルムの内部に乳化液を充填し、乳化液が充填された包装フィルムを冷却してチーズ様食品を製造する方法に特に好適に用いることができる。例えば、本実施の形態にかかるチーズ様食品の製造方法は、IWS(Individual wrapping slice)タイプの充填装置を用いた製造工程に好適に用いることができる。
【0050】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、チーズ様食品の生産性を向上させるとともに、適切な食感を備えるチーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法を提供することができる。
【実施例0051】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0052】
<実験1>
実験1として、以下の方法を用いて実施例1-1~実施例1-7、及び比較例1-1~比較例1-2にかかるチーズ様食品を作製した。
【0053】
(サンプルの作製)
まず、以下の原料を準備した(表1参照)。
澱粉として酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉(Lyckeby11200:Lyckeby社製)およびヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉(ジェルコール(登録商標) POT-05:株式会社J-オイルミルズ社製)を準備した。乳化剤としてオクテニルコハク酸澱粉ナトリウム(N-CREAMER(登録商標)46:イングレディオン社製)を準備した。油脂としてパーム油(株式会社J-オイルミルズ社製)を準備した。そしてこれらの原料を食塩、水、香料とともに容器に投入した。容器に投入した各々の原料の割合(質量%)は表1に示す通りである。
【0054】
例えば、実施例1-1の場合は、総重量に対して、酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉が22.5%、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉が2.6%、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムが2.0%、食塩が1.8%、水が42.0%、パーム油が29.0%、香料が0.1%となるように、各々の原料を秤量して容器に投入した。
【0055】
そして、容器内の混合物(原料)を、加熱しない状態でプロペラ攪拌機を用いて1200rpmの条件で1分間攪拌した。その後、90℃の湯浴で加熱しながら、1000rpmの条件で6分間攪拌することで、混合物を乳化させた。つまり、加熱しながら攪拌して、澱粉を糊化させて混合物を乳化させた。
【0056】
その後、乳化した混合液を直径5cm深さ1.3cmの円柱状のステンレス容器にいっぱいまで入れ、この容器の上面をラップで覆い、ゴムを巻いて密封した。そして、容器全体を氷水に浸けて1時間冷却した。このような方法を用いて、原料の割合が各々異なる実施例1-1~実施例1-7、及び比較例1-1~比較例1-2にかかるチーズ様食品を作製した。
【0057】
(評価)
各々のサンプルに対して、以下の4つの項目を評価した。
【0058】
1.製造適正(加熱攪拌時)
混合物を加熱しながら攪拌した際の混合物の状態を視認し、加熱攪拌時の製造適性を評価した。具体的には、加熱攪拌時に粘度が上昇しすぎて攪拌が不可能になった場合や乳化できない場合を製造適性がないと評価した。また、加熱攪拌時の粘度が低く、乳化状態が良いものを優れていると評価した。製造適正(加熱攪拌時)の評価基準は下記の通りである。なお、A~Cを合格とした。
【0059】
A:粘度が低く乳化状態が良い
B:粘度が若干高いが乳化している
C:粘度が高いが乳化している
D:粘度が高く流動性が低い;乳化状態が悪い
【0060】
2.硬化速度
氷水で5分間冷却した後のサンプルの硬さを評価した。具体的には以下の方法を用いてサンプルの硬さを測定した。
【0061】
上記の製造工程において、乳化した混合液をステンレス容器に入れて、容器全体を氷水に浸けて5分間冷却した後のサンプルの硬さを、テクスチャーアナライザー(TA-XT2i:英弘精機株式会社製)を用いて測定した。具体的には、テクスチャーアナライザーを用いて降伏点を測定し、この値をサンプルの硬さを示す値として用いた。このときの測定条件は下記の通りである。
【0062】
プランジャー:直径5mmの円柱状
ステージ進入速度:6cm/分
測定時間:プランジャーがサンプルと接触してから10秒
【0063】
具体的な評価基準は下記の通りである。なお、A~Cを合格とした。
A:100g以上
B:75g以上99g以下
C:50g以上74g以下
D:49g以下
【0064】
3.製品硬さ
氷水で1時間冷却した後のサンプルの硬さを評価した。具体的には以下の方法を用いてサンプルの硬さを測定した。
【0065】
上記の製造工程において、乳化した混合液をステンレス容器に入れて、容器全体を氷水に浸けて1時間冷却した後のサンプルの硬さを測定した。なお、氷水で1時間冷却した後のサンプルの硬さについても、氷水で5分間冷却した後のサンプルと同様の方法を用いて測定した。
【0066】
また、市販のチーズに対して上記と同様の方法を用いて硬さを測定した。すなわち、市販のチーズを90℃の湯浴で加熱しながら6分間攪拌して溶解した。その後、溶解したチーズをステンレス容器に入れ、上面をラップで覆い、ゴムを巻いて密封した。容器全体を氷水に浸けて1時間冷却した後のサンプルの硬さを、テクスチャーアナライザーを用いて測定した。市販のチーズの硬さは下記の通りである。
【0067】
市販チーズ1:雪印メグミルク株式会社製 スライスチーズ 硬さ:816g
市販チーズ2:六甲バター株式会社製 QBBベビーチーズ 硬さ:511g
【0068】
上記市販チーズ1、2の硬さを基準として、氷水で1時間冷却した後のサンプル(実施例1-1~実施例1-7、及び比較例1-1~比較例1-2)の硬さを評価した。具体的には、測定した硬さが市販チーズに近いものを良好であると判断した。具体的な評価基準は下記の通りである。なお、A~Cを合格とした。
【0069】
A:500gから800g
B:400g以上499g以下または801g以上900g以下
C:300g以上399g以下または901g以上1000g以下
D:299g以下または1001g以上
【0070】
4.製品食感
試作後の各サンプルを数日間5℃で保管し、加熱せずに試食することで食感を評価した。食感が硬すぎず、しなやかさがあり、弾力が強すぎないものを優れているものとして評価した。具体的な評価基準は下記の通りである。なお、A~Cを合格とした。
【0071】
A:チーズらしい
B:ややチーズらしい
C:若干チーズらしさに欠けるが不可ではない
D:チーズらしさがない
【0072】
(実験1の結果)
実験1では、澱粉と水(水分)との質量比を変化させて、澱粉と水の質量比の好適な範囲について検討した。具体的には、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)を、0.53~0.94の範囲で変化させて、澱粉と水の質量比の好適な範囲を調べた。なお、実験1では、各サンプルの乳化剤、食塩、パーム油(油脂)、香料の割合はほぼ同一とした。
【0073】
製造適性(加熱攪拌時)の評価結果に着目すると、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)が小さい比較例1-1、実施例1-1が最も高い評価(A)となった。一方、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)が大きい比較例1-2では低い評価(D)となった。これは水に対する澱粉の質量比が大きい(澱粉の量が多い)場合は、加熱攪拌時の粘度が高くなり、混合物の流動性が低下するためであると考えられる。
【0074】
また、硬化速度の評価結果に着目すると、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)が大きい実施例1-7、比較例1-2では最も高い評価(A)となった。一方、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)が小さい比較例1-1では低い評価(D)となった。
【0075】
また、製品硬さの評価結果に着目すると、実施例1-3~実施例1-6では最も高い評価(A)となった。一方、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)が大きい比較例1-2では低い評価(D)となった。
【0076】
このように硬化速度と製品硬さとの間にはトレードオフの関係がある。すなわち、水に対する澱粉の質量比が大きい(澱粉の量が多い)場合は硬化速度が速くなるが、製品硬さが硬くなる。逆に、水に対する澱粉の質量比が小さい(澱粉の量が少ない)場合は製品硬さが良好になるが、硬化速度が遅くなる。したがって、チーズ様食品を製造する際は、澱粉と水の割合のバランスが重要であり、実験1の結果から、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)を0.60以上0.86以下とすることが好ましく、0.60以上0.77以下とすることが更に好ましい。水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)をこの範囲とすることで、硬化速度と製品硬さの両方を良好にすることができる。
【0077】
また、実験1の結果から、チーズ様食品中の酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉の割合は、22.5%以上28.5%以下が好ましく、22.5%以上26.5%以下がより好ましい。
【0078】
なお、実施例1-3と実施例1-4との違いは、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の有無であるが、実施例1-3と実施例1-4との評価結果をみると、評価結果に大きな違いはなかった。一方、実施例1-3と実施例1-4とにかかるチーズ様食品を加熱して試食して比べてみると、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を含む実施例1-3の方が、実施例1-4よりも食感が良好であった。
【0079】
【0080】
<実験2>
実験2として、実施例2-1~実施例2-6、及び比較例2-1~比較例2-2にかかるチーズ様食品を作製した。なお、チーズ様食品の作製方法および評価方法は、実験1と同様である。実験2の各実施例、及び各比較例の原料の割合(質量%)は表2に示す通りである。
【0081】
実験2では、澱粉と水(水分)との質量比(澱粉/水)をほぼ固定した状態で、澱粉とパーム油(油脂)の比率を変化させた。具体的には、実験2では、澱粉に対するパーム油の質量比(パーム油/澱粉)を、0.19~2.21の範囲で変化させて、澱粉に対するパーム油の質量比(パーム油/澱粉)の好適な範囲を調べた。このとき、澱粉の割合は、18.4%~32.2%の範囲で変化させた。また、パーム油の割合は、6.7%~45.0%の範囲で変化させた。
【0082】
製造適性(加熱攪拌時)の評価結果に着目すると、比較例2-2ではパーム油の割合が多いため、乳化状態が弱く、やや油脂が分離していたため、低い評価(D)となった。これ以外のサンプルでは、製造適性(加熱攪拌時)が最低基準(C)を満たしていた。
【0083】
また、食感の評価に着目すると、比較例2-1では低い評価(D)となった。これは、澱粉に対するパーム油の質量比(パーム油/澱粉)が小さい(換言すると、澱粉の割合が多い)ため、サンプルが硬くなったと考えられる。これら以外のサンプルでは、食感の評価の最低基準(C)を満たしていた。
【0084】
このように、チーズ様食品を製造する際は、澱粉とパーム油(油脂)の割合のバランスも重要であり、実験2の結果から、澱粉に対するパーム油の質量比(パーム油/澱粉)は0.28以上1.67以下が好ましいことが分かった。この結果から、0.25以上1.80以下が好ましいと考えられた。また、0.30以上1.50以下がより好ましく、0.49以上1.48以下が更に好ましいと考えられた。
【0085】
このとき、澱粉の総量は、21.0%以上35.3%以下が好ましく、23.3%以上34.0%以下がより好ましく、24.0%以上32.5%以下が更に好ましい。また、パーム油の割合は、8.0%以上40.0%以下が好ましく、10.0%以上38.8%以下がより好ましく、16.0%以上36.1%以下が更に好ましいことがわかった。
【0086】
また、実験2の結果から、チーズ様食品中の酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉の割合は、21.0%以上32.0%以下が好ましく、21.1%以上31.9%以下がより好ましく、22.1%以上30.0%以下が更に好ましい。
【0087】
【0088】
<実験3>
実験3として、実施例3-1、及び比較例3-1~比較例3-4にかかるチーズ様食品を作製した。実験3では、酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉以外の澱粉も用いて、チーズ様食品を作製した。具体的には、澱粉として下記の澱粉を使用した。
【0089】
・実施例3-1:酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉(Lyckeby11200:Lyckeby社製)
・比較例3-1:アセチル化タピオカ澱粉(アクトボディー(登録商標) N-5:株式会社J-オイルミルズ社製)
・比較例3-2:馬鈴薯デンプン(ジェルコール(登録商標) BP-200:株式会社J-オイルミルズ社製)
・比較例3-3:リン酸架橋馬鈴薯澱粉(ジェルコール(登録商標) KPS-200:株式会社J-オイルミルズ社製)
・比較例3-4:ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉(ジェルコール(登録商標) EG-500:株式会社J-オイルミルズ社製)
【0090】
なお、これ以外のチーズ様食品の作製方法および評価方法は、実験1と同様である。実験3の実施例、及び各比較例の原料の割合(質量%)は表3に示す通りである。実験3では、澱粉の種類とチーズ様食品の状態との関係を調べることを目的としているため、各サンプルにおける各々の原料の割合を同一とした(つまり、澱粉の種類のみが異なる)。
【0091】
表3に示すように、実験3では、実施例3-1以外のサンプル(比較例3-1~比較例3-4)において、製造適性(加熱攪拌時)が低い評価(D)となった。このため、適切な条件を満たすチーズ様食品を作製することができなかった。よって、実験3の結果から、本発明では、酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉を用いることで、本発明の目的を満たすチーズ様食品を作製できるといえる。
【0092】
【0093】
<実験4>
実験4として、実施例4-1~実施例4-4にかかるチーズ様食品を作製した。なお、チーズ様食品の作製方法および評価方法は、実験1と同様である。実験4の各実施例の原料の割合(質量%)は表4に示す通りである。
【0094】
実験1で説明したように、澱粉にヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を含めると、チーズ様食品の食感が良好になった。このため実験4では、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の添加量の上限値について検討した。具体的には、実験4では、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の割合を、0%~4.6%の範囲で変化させたサンプルを作製した。なお、実験4では、水に対する澱粉の質量比(澱粉/水)が、0.67または0.68となるように設定した。
【0095】
表4に示すように、実施例4-1~実施例4-4では、各評価項目が基準値(C)以上となった。この結果から、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉は、およそ5.5%以下であればいずれも好適であることがわかった。
【0096】
【0097】
<実験5>
実験5として、実施例5-1、及び実施例5-2にかかるチーズ様食品を作製した。実験5では、水分として水以外の液体も用いて、チーズ様食品を作製した。具体的には、実施例5-2では、水分として豆乳(おいしい無調整豆乳、水含有量90質量%、キッコーマン株式会社製)を使用した。なお、これ以外のチーズ様食品の作製方法および評価方法については、実験1と同様である。実験5の各実施例の原料の割合(質量%)は表5に示す通りである。
【0098】
表5に示すように、実験5では、実施例5-1、及び実施例5-2のサンプルにおいて、各評価項目が基準値(C)以上となった。よって、水分として豆乳を用いても基準値を満たすチーズ様食品を作製することができた。このように、水分として水以外の成分を用いることで、チーズ様食品に風味を付加することができる。例えば、水以外の成分を水分として用いてもよく、また、水と水以外の成分とを混合して水分として用いてもよい。
【0099】
【0100】
<実験6>
実験6として、実施例6-1~実施例6-4にかかるチーズ様食品を作製した。実験6では、酸処理馬鈴薯澱粉(アセチル化なし)を用いて、チーズ様食品を作製した。実験6の各実施例の原料の割合(質量%)は表6に示す通りである。実験6においても、酸処理馬鈴薯澱粉と水との割合(澱粉/水)を本発明の範囲内(0.55以上0.92以下)とした。
【0101】
実験6では、酸処理馬鈴薯澱粉を使用した。また、キサンタンガムには三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、ビストップ(登録商標)D-3000-Sを使用した。また、なたね油(株式会社J-オイルミルズ社製)を使用した。なお、これ以外のチーズ様食品の原料については実験1と同様である。また、実験6にかかるチーズ様食品の作製方法および評価方法についても、実験1と同様である。
【0102】
表6に示すように、実施例6-1~実施例6-4の全てにおいて、各評価結果が基準(C)を満たしていた。よって、酸処理アセチル化馬鈴薯澱粉の代わりに酸処理馬鈴薯澱粉を用いても、本発明の目的を満たすチーズ様食品を作製することができた。
【0103】
実施例6-2では、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の代わりにキサンタンガムを用いたが、実施例6-2においても各評価結果が基準(C)を満たしていた。よって、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉の代わりにキサンタンガムを用いても、本発明の目的を満たすチーズ様食品を作製することができた。
【0104】
実施例6-3では、パーム油の代わりになたね油を用いたが、実施例6-3においても各評価結果が基準(C)を満たしていた。よって、パーム油の代わりになたね油を用いても、本発明の目的を満たすチーズ様食品を作製することができた。
【0105】
実施例6-4では、澱粉として酸処理馬鈴薯澱粉とヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉とを用いた。実施例6-4では、実験6の他の実施例と比べて食感の評価結果が特に良好であった。また、実施例6-1~実施例6-4では全体的に、硬化速度の評価結果(A)が良好であった。
【0106】
【0107】
この出願は、2020年4月6日に出願された日本出願特願2020-068441を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。