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特開2022-60555無線給電装置、及び無線給電装置の電流測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060555
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】無線給電装置、及び無線給電装置の電流測定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20220407BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20220407BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028566
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2016227041の分割
【原出願日】2016-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】太矢 隆士
(57)【要約】
【課題】
低電力損失にて駆動電流を測定することが可能な無線給電装置、及び無線給電装置の電流測定方法を提供することを目的とする。
【構成】
送電コイルの一端に接続されている電源ライン及び接地ライン間に並列に接続されており、発振信号に応じて、夫々が駆動ラインに電流を供給する第1~第N(Nは2以上の整数)のスイッチング素子と、電源ライン及び接地ライン間において第1のスイッチング素子と直列に接続されている第1の抵抗と、第1の抵抗の一端の電位に基づき駆動電流の電流量を表す第1の測定電流信号を生成する電流測定回路と、第1~第Nのスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子に接触又は近接して形成され、少なくとも1つのスイッチング素子の温度を測定して温度信号を生成する温度測定回路とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振信号に基づく駆動電流を送電コイルに供給して交流磁界を発生させることにより無線給電を行う無線給電装置であって、
前記送電コイルの一端に接続されている駆動ラインと、
電源ライン及び接地ライン間に並列に接続されており、前記発振信号に応じて、夫々が前記駆動ラインに電流を供給する第1~第N(Nは2以上の整数)のスイッチング素子と、
前記電源ライン及び前記接地ライン間において前記第1のスイッチング素子と直列に接続されている第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の一端の電位に基づき前記駆動電流の電流量を表す第1の測定電流信号を生成する電流測定回路と、
前記第1~第Nのスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子に接触又は近接して形成されており、前記少なくとも1つのスイッチング素子の温度を測定して温度信号を生成する温度測定回路と、を含むことを特徴とする無線給電装置。
【請求項2】
発振信号に基づく駆動電流を送電コイルに供給して交流磁界を発生させることにより無線給電を行う無線給電装置の電流測定方法であって、
前記発振信号に応じて第1~第N(Nは2以上の整数)のスイッチング素子の各々から断続的に電流を出力させ、前記第1~第Nのスイッチング素子の各々から出力された電流を合成した合成電流を前記駆動電流として前記送電コイルに供給し、
前記第1~第Nのスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子のみに直列に接続されている抵抗の一端の電位に基づき、前記駆動電流の電流量を表す測定電流信号を生成し、
前記第1~第Nのスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子に接触又は近接して形成された温度測定回路が、前記少なくとも1つのスイッチング素子の温度を測定して温度信号を生成することを特徴とする無線給電装置の電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で電力を供給する無線給電装置、及び無線給電装置の電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、時計等のウェアラブル機器やICカード(Integrated Circuit)等へ電力を供給するにあたり、非接触で電力を伝送する無線電力伝送システムが提案されている。かかる無線電力伝送システムでは、送電装置側のコイル(送電コイル)と受電装置側のコイル(受電コイル)とを対向するように配置して電力の伝送を行う。
【0003】
また、現在、このような無線電力伝送を行う際の交流磁界の周波数として、6.78MHzや、13.56MHz等の各種周波数が採用されている。ところで、例えば13.56MHzの交流磁界に共鳴して給電を受ける受電装置を含むICカードと、送電装置との間に異物が存在すると、このICカードが発熱して破壊する虞がある。
【0004】
そこで、送電装置側において、送電コイルに流れる電流を検出し、その検出した電流値が所定の閾値を上回る場合には送電を停止するようにした非接触電力伝送装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-92921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した非接触電力伝送装置では、送電コイルに流れる電流を検出する為に、電源ライン及び送電回路間に直列に電流センサを設けているので、当該電流センサ自体で電力損失が生じる。
【0007】
そこで、本発明では、低電力損失にて回路に流れる電流を測定できるようにした無線給電装置、及び無線給電装置の電流測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線給電装置は、発振信号に基づく駆動電流を送電コイルに供給して交流磁界を発生させることにより無線給電を行う無線給電装置であって、前記送電コイルの一端に接続されている駆動ラインと、電源ライン及び接地ライン間に並列に接続されており、前記発振信号に応じて、夫々が前記駆動ラインに電流を供給する第1~第N(Nは2以上の整数)のスイッチング素子と、前記電源ライン及び前記接地ライン間において前記第1のスイッチング素子と直列に接続されている第1の抵抗と、前記第1の抵抗の一端の電位に基づき前記駆動電流の電流量を表す第1の測定電流信号を生成する電流測定回路と、前記第1~第Nのスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子に接触又は近接して形成されており、前記少なくとも1つのスイッチング素子の温度を測定して温度信号を生成する温度測定回路と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る無線給電装置の電流検出方法は、発振信号に基づく駆動電流を送電コイルに供給して交流磁界を発生させることにより無線給電を行う無線給電装置の電流測定方法であって、前記発振信号に応じて第1~第N(Nは2以上の整数)のスイッチング素子の各々から断続的に電流を出力させ、前記第1~第Nのスイッチング素子の各々から出力された電流を合成した合成電流を前記駆動電流として前記送電コイルに供給し、前記第1~第Nのスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子のみに直列に接続されている抵抗の一端の電位に基づき、前記駆動電流の電流量を表す測定電流信号を生成し、前記第1~第Nのスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子に接触又は近接して形成された温度測定回路が、前記少なくとも1つのスイッチング素子の温度を測定して温度信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、並列接続されたN個のスイッチング素子から出力された電流を合成した合成電流を駆動電流として送電コイルに供給する。そして、N個のスイッチング素子のうちの1つのスイッチング素子に電流検出用の抵抗を直列に接続し、当該抵抗の一端の電位に基づき駆動電流の電流量を表す測定電流信号を生成する。また、N個のスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子に接触又は近接して形成された温度測定回路が、少なくとも1つのスイッチング素子の温度を測定して温度信号を生成する。これにより、電流検出用の抵抗に流れる電流を駆動電流の1/Nにすることができるので、電流検出用抵抗での電力損失が低減される。よって、本発明によれば、低電力損失にて、送電コイルに流れる駆動電流の電流量を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る無線給電装置100及び無線受電装置200を含む無線電力伝送システム300の概略構成を示すブロック図である。
図2】送電回路10の内部構成の一例を示す回路図である。
図3】電流測定回路105bの内部構成の他の一例を示す回路図である。
図4】受電回路23の内部構成を示すブロック図である。
図5】過大磁界保護回路231の一例を示す回路図である。
図6】過大磁界保護回路231の電圧電流特性を示す図である。
図7】過大磁界保護回路231の他の一例を示す回路図である。
図8】安定化回路232の構成を示す回路図である。
図9】温度測定回路233の構成を示す回路図である。
図10】温度測定回路233のダイオードD14及びD15の形成位置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る無線給電装置100及び無線受電装置200を含む無線電力伝送システム300の概略構成を示すブロック図である。無線電力伝送システム300では、無線給電装置100に設けられている送電コイル12と、無線受電装置200に設けられている受電コイル20との間の磁気結合によって、無線給電装置100側から無線受電装置200に電力を伝送する。
【0014】
以下に、無線給電装置100及び無線受電装置200の順に夫々の具体的な内部構成について説明する。
[無線給電装置100]
無線給電装置100は、送電回路10、共振キャパシタ11、送電コイル12、セレクタ13、AD(Analog-to-digital)コンバータ14、制御回路15、コンパレータ16及び17を含む。尚、送電回路10、セレクタ13、ADコンバータ14、制御回路15、コンパレータ16及び17は、例えば単一の半導体IC(Integrated Circuit)チップ、或いは複数の半導体ICチップに分割して形成されていても良いし、ディスクリート部品で構成されていても良い。
【0015】
送電回路10は、並列接続された共振キャパシタ11及び送電コイル12からなる共振回路の自己発振周波数(例えば13.56MHz)と略等しい周波数の高周波の交流駆動電流を生成し、駆動ラインL1及びL2を介して当該共振キャパシタ11及び送電コイル12に供給する。かかる交流駆動電流を受けることにより共振キャパシタ11及び送電コイル12は交流磁界を発生する。尚、送電回路10は、制御回路15から電源遮断信号STP1が供給された場合には、共振キャパシタ11及び送電コイル12への電流供給を停止する。
【0016】
また、送電回路10は、上記した交流駆動電流の電流量を測定し、測定した電流量を表す測定電流信号GC1をセレクタ13及びコンパレータ16に供給する。更に、送電回路10は、自身に含まれる素子(後述する)の温度を測定し、測定した温度を表す測定温度信号SM1をセレクタ13及びコンパレータ17に供給する。
【0017】
セレクタ13は、測定電流信号GC1及び測定温度信号SM1のうちから、選択信号SE1によって指定された方を選択してADコンバータ14に供給する。
【0018】
ADコンバータ14は、測定電流信号GC1又は測定温度信号SM1によって表されるアナログの電流値又は温度を、ディジタルの電流データ又は温度データに変換して制御回路15に供給する。
【0019】
制御回路15は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、プログラムに従った制御により、以下のような電流又は温度の異常判定を行う。すなわち、制御回路15は、ADコンバータ14から電流データが供給された場合には、当該電流データによって示される電流量が所定の過電流閾値I1よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合には過電流であると判断して、電源遮断を促す電源遮断信号STP1を送電回路10に供給する
。また、制御回路15は、ADコンバータ14から温度データが供給された場合には、当該温度データによって示される温度が所定の高温閾値T1よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合には異常発熱であると判断して、上記した電源遮断信号STP1を送電回路10に供給する。
【0020】
コンパレータ16は、測定電流信号GC1で示される電流量が所定の過電流閾値I2(I1<I2)よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に過電流検出信号EC1を制御回路15に供給する。コンパレータ17は、測定温度信号SM1で示される温度が所定の高温閾値T2(T1<T2)よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に高温検出信号ES1を制御回路15に供給する。制御回路15は、過電流検出信号EC1又は高温検出信号ES1が供給された場合に、上記した電源遮断信号STP1を送電回路10に供給する。
【0021】
尚、高温閾値T1及び過電流閾値I1は、制御回路15が正常に動作可能な温度環境にある際に得られる電流値及び温度に設定される。また、高温閾値T2及び過電流閾値I2は、制御回路15がプログラムの暴走を招くことになる温度環境にある際に得られる電流値及び温度に設定される。
【0022】
すなわち、制御回路15がプログラムを正常に実施可能な温度環境にある場合には、この制御回路15によって電流又は温度の異常判定を行う。一方、制御回路15がプログラムの暴走を招くような温度環境にある場合には、コンパレータ17及び18によって電流又は温度の異常判定を行う。よって、制御回路15が正常動作しなくなる温度状態にあっても、送電回路10に対して電源遮断制御を行うことが可能となる。
【0023】
図2は、送電回路10の内部構成の一例を示す回路図である。図2に示すように、送電回路10は、発振部101、インバータ102、出力インバータ103及び104、電流測定回路105a、105b、及び温度測定回路106を含む。
【0024】
発振部101は、共振回路(11、12)の自己発振周波数、例えば13.56MHzの発振信号fcを生成し、これをインバータ102、出力インバータ103及び電流測定回路105bに供給する。尚、発振部101は、図1に示す制御回路15から電源遮断信号STP1が供給された場合には、発振信号fcの生成動作を停止する。
【0025】
インバータ102は、発振信号fcの位相を反転させた反転発振信号fcBを出力インバータ104に供給する。
【0026】
出力インバータ103は、発振信号fcに応じて駆動電流PGを生成し、これを駆動ラインL1に印加する。出力インバータ104は、反転発振信号fcBに応じて駆動電流NGを生成し、これを駆動ラインL2に印加する。これにより、出力インバータ103及び104は、交流の駆動電流(PG、NG)を駆動ラインL1及びL2を介して送電コイル12に供給する。
【0027】
電流測定回路105aは、出力インバータ103及び104が駆動ラインL1、L2に供給する駆動電流PG及びNGの実成分を測定し、その実成分を表す測定電流信号GC1rを生成する。
【0028】
電流測定回路105bは、かかる駆動電流PG及びNGの複素成分を測定し、その複素成分を表す測定電流信号GC1iを生成する。
【0029】
温度測定回路106は、出力インバータ103及び104が発する熱の温度を測定し、
その温度を表す測定温度信号SM1を生成する。
【0030】
以下に、出力インバータ103及び104、電流測定回路105a及び105b、温度測定回路106各々の構成について詳細に説明する。
【0031】
出力インバータ103は、並列接続されたpチャネルMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)型のトランジスタP1~P3、並列接続されたnチャネルMOS型のトランジスタN1~N3、及び電流検出用の抵抗R1を含む。トランジスタP1~P3及びN1~N3各々のドレインは駆動ラインL1に接続されており、各々のゲートには発振信号fcが供給されている。トランジスタN1~N3各々のソースには接地ラインGLを介して接地電位GNDが印加されている。トランジスタP1及びP2各々のソースには電源ラインVLを介して電源電位VDDが印加されており、トランジスタP3のソースには電源ラインVL及び抵抗R1を介して電源電位VDDが印加されている。
【0032】
出力インバータ104は、並列接続されたpチャネルMOS型のトランジスタP4~P6、並列接続されたnチャネルMOS型のトランジスタN4~N6、電流検出用の抵抗R2及びR3を含む。トランジスタP4~P6及びN4~N6各々のドレインは駆動ラインL2に接続されており、各々のゲートには反転発振信号fcBが供給されている。トランジスタN1~N3各々のソースはノードn3によって抵抗R3の一端に接続されている。抵抗R3の他端には接地ラインGLを介して接地電位GNDが印加されている。トランジスタP4及びP5各々のソースには電源ラインVLを介して電源電位VDDが印加されており、トランジスタP6のソースには電源ラインVL及び抵抗R2を介して電源電位VDDが印加されている。
【0033】
電流測定回路105aは、出力インバータ103に含まれる抵抗R1と、ダイオードD1及びD2と、キャパシタC1とを有する。ダイオードD1のアノードは、トランジスタP3のソース及び抵抗R1の一端を接続するノードn1に接続されている。ダイオードD2のアノードは、トランジスタP6のソース及び抵抗R2の一端間を接続するノードn2に接続されている。ダイオードD1及びD2のカソード、及びキャパシタC1の一端は互いに接続されている。キャパシタC1の他端には電源電位VDDが印加されている。
【0034】
上記した構成により、発振信号fcが所定値よりも低レベルにある間は、出力インバータ103のトランジスタP1~P3が全てオン状態になると共に、出力インバータ104のトランジスタN4~N6が全てオン状態になる。これにより、出力インバータ103のトランジスタP1~P3の各々から電流が送出され、各電流を合成した合成電流が駆動電流PGとして、図2の太線矢印にて示すように、駆動ラインL1を介して送電コイル12に流れ込む。
【0035】
ここで、トランジスタP1~P3のサイズ(ゲート幅、ゲート長)を同一とし、電流検出用の抵抗R1の抵抗値がトランジスタP1~P3のオン抵抗に比べて小さい場合には、トランジスタP1~P3の各々には駆動電流PGの1/3の電流が流れる。よって、電流検出用抵抗R1にも駆動電流PGの1/3の電流が流れる。
【0036】
そこで、抵抗R1に流れた電流(PG/3)を電流測定回路105aのダイオードD1によって検波し、更にキャパシタC1にて平滑化することにより、駆動電流PGの実成分に対応した電圧値を有する測定電流信号GC1rが得られる。
【0037】
一方、発振信号fcが所定値よりも高レベルにある間は、出力インバータ103のトランジスタN1~N3が全てオン状態になると共に、出力インバータ104のトランジスタP4~P6が全てオン状態になる。これにより、出力インバータ104のトランジスタP
4~P6の各々から電流が送出され、各電流を合成した合成電流が駆動電流NGとして、図2の太線矢印にて示すように駆動ラインL2を介して送電コイル12に流れ込む。
【0038】
ここで、トランジスタP4~P6のサイズ(ゲート幅、ゲート長)を同一とし、電流検出用の抵抗R2の抵抗値がトランジスタP4~P6のオン抵抗に比べて小さい場合には、トランジスタP4~P6の各々には駆動電流NGの1/3の電流が流れる。よって、抵抗R2にも駆動電流NGの1/3の電流が流れる。
【0039】
そこで、抵抗R2に流れた電流(NG/3)を電流測定回路105aのダイオードD2によって検波し、更にキャパシタC1にて平滑化することにより、駆動電流NGの実成分に対応した電圧値を有する測定電流信号GC1rが得られる。
【0040】
上述したように、出力インバータ103(104)では、単一のpチャネル型トランジスタによって駆動電流PG(NG)を生成するのではなく、並列接続された3つのトランジスタP1~P3(P4~P6)から出力される電流を合成して駆動電流PG(NG)を生成するようにしている。また、電流測定回路105aでは、3つのトランジスタP1~P3(P4~P6)のうちの1つのトランジスタP3(P6)だけに電流検出用の抵抗R1(R2)を直列に接続している。電流測定回路105aでは、当該電流検出用抵抗の電圧降下分を検波及び平滑化することにより、駆動電流PG(NG)の実成分の1/3の電流量を表す測定電流信号GC1rを生成する。この際、測定電流信号GC1rによって表される電流量を3倍すれば、駆動電流PG(NG)の実成分の電流量が求められる。
【0041】
よって、出力インバータ103(104)及び電流測定回路105aによれば、電流検出用の抵抗R1(R2)には当該駆動電流PG(NG)の1/3の電流しか流れないので、電流検出用の抵抗R1(R2)での電力損失が低減される。
【0042】
次に、図2に示される電流測定回路105bについて説明する。
【0043】
電流測定回路105bは、遅延回路DL、乗算回路MP、ダイオードD3及びキャパシタC2を含む。遅延回路DLは、発振信号fcを受けこれを所定遅延時間だけ遅延させた信号を遅延発振信号fcDとして乗算回路MPに供給する。尚、所定遅延時間は、インバータ2の素子遅延と出力インバータ104の素子遅延との総遅延時間と等しい。乗算回路MPは、出力インバータ104の抵抗R3の一端の電位、つまり図に示すノードn3の電位に遅延発振信号fcDを乗算することにより、駆動電流PG(NG)の複素成分を表す複素成分信号Biを生成する。具体的には、乗算回路MPは、自身のソースがノードn3に接続されており、且つ遅延発振信号fcDが自身のゲートに供給されているnチャネルMOS型のトランジスタNTからなる。トランジスタNTは、遅延発振信号fcDが所定値よりも低レベルにある間はオフ状態となる一方、遅延発振信号fcDが所定値以上の高レベルにある間はオン状態となり、遅延発振信号fcDの電位を自身のドレインから出力する。当該トランジスタNTは、自身のドレインに生じた電位を駆動電流PG(NG)の複素成分を表す複素成分信号Biとし、これをダイオードD3のアノードに供給する。ダイオードD3のカソードはキャパシタC2の一端に接続されている。キャパシタC2の他端には接地電位GNDが印加されている。よって、複素成分信号BiをダイオードD3によって検波し、更にキャパシタC2によって平滑化することにより、駆動電流PG(NG)の複素成分に対応した電圧値を有する測定電流信号GC1iが得られる。
【0044】
このように、電流測定回路105bによれば、駆動電流PG(NG)の複素成分を量的に測定することが可能となる。よって、駆動電流PG(NG)の複素成分を表す測定電流信号GC1rに基づき、送電コイル12及び受電コイル20間の結合係数の変化、受電側の負荷抵抗の変化、送電コイル12及び受電コイル20間の異物の存在等を検知すること
が可能となる。
【0045】
例えば、受電側の負荷抵抗がr1、送電コイル12及び受電コイル20間の結合係数がk1である(状態Aと称する)ときに、駆動電流の実成分を表す測定電流信号GCrのレベルがX1、その複素成分を表す測定電流信号CGiのレベルがY1とする。
【0046】
ここで、上記した状態Aから、結合係数がk1からk2に変化すると(状態Bと称する)、測定電流信号GCrのレベルはレベルX1からレベルX2に遷移し、測定電流信号CGiのレベルはレベルY1からレベルY2に遷移する。
【0047】
一方、上記した状態Aから、負荷抵抗がr1からr2に変化すると(状態Cと称する)、測定電流信号GCrのレベルはレベルX1からレベルX2に遷移し、測定電流信号CGiのレベルはレベルY1からレベルY3に遷移する。つまり、状態Aから状態B(結合係数が変化した状態)に遷移した場合と、状態Aから状態C(負荷抵抗が変化した状態)に遷移した場合とで、駆動電流の実成分を表す測定電流信号GCrのレベルは共にレベルX2となる場合がある。よって、測定電流信号GCrからでは、負荷抵抗の変化と、結合係数の変化とを区別して判断することは出来ない。しかしながら、上述したように、測定電流信号GCiのレベルは、状態Aから状態B(結合係数が変化した状態)に遷移した場合にはレベルY2となり、状態Aから状態C(負荷抵抗が変化した状態)に遷移した場合には、レベルY2とは異なるレベルY3となる。よって、駆動電流の複素成分を表す測定電流信号GCiによれば、負荷抵抗の変化と、結合係数の変化とを区別して判断することが可能となる。
【0048】
尚、図2に示す電流測定回路105bの構成では、発振信号fcを遅延した信号を乗算回路MPのトランジスタNTのゲートに供給しているが、送電コイル12に印加される電圧の振幅値をトランジスタNTのゲートに供給するようにしても良い。
【0049】
図3は、かかる点に鑑みて為された電流測定回路105bの内部構成の他の一例を示す回路図である。尚、図3では、電流測定回路105bの内部構成を除く他の構成は図2に示されるものと同一である。また、図3に示す電流測定回路105bの構成についても、図2に示される遅延回路DLに代えてキャパシタC3及び電圧振幅検出素子AMを採用した点を除く他の構成は図2に示すものと同一である。つまり、図3に示される電流測定回路105bでは、電圧振幅検出素子AMが、駆動ラインL2の電圧をキャパシタC3を介して受け、その電圧の振幅値をトランジスタNTのゲートに供給する。
【0050】
尚、電流測定回路105bに含まれる乗算回路MPの具体的な構成としては、トランジスタNTに代えて、2つの差動回路の出力電流を合成するギルバートセルを採用しても良い。
【0051】
次に、図2又は図3に示される温度測定回路106について説明する。
【0052】
温度測定回路106は電流源A1、スイッチ素子SW1、抵抗R4、温度センサとしてのPN接合のダイオードD4及びD5を含む。
【0053】
抵抗R4は、電源電位VDDに基づくバイアス電流を、ラインLmを介してダイオードD4及びD5各々のアノードに供給する。
【0054】
ダイオードD4は、出力インバータ103の近傍に形成し、トランジスタP1~P3及びN1~N3のうちの少なくとも1つと熱的に結合させる。ダイオードD5は、出力インバータ104の近傍に形成し、トランジスタP4~P6及びN4~N6のうちの少なくと
も1つと熱的に結合させる。すなわち、出力インバータ103及び104、温度測定回路106を単一の半導体ICチップ内に形成する場合には、ダイオードD4(D5)をトランジスタP1~P3及びN1~N3(P4~P6及びN4~N6)のうちの少なくとも1つに隣接して形成する。また、出力インバータ103及び104、温度測定回路106の各素子をディスクリート部品で構成する場合には、ダイオードD4(D5)をトランジスタP1~P3及びN1~N3(P4~P6及びN4~N6)のうちの少なくとも1つと接触させるようにしても良い。
【0055】
ここで、PN接合のダイオードD4及びD5としては、例えば順方向電圧が0.7ボルトであり、温度特性が-1.5[mV/℃]を有するものを採用する。これにより、ダイオードD4及びD5の各々に抵抗R4を介してバイアス電流を流すと、ダイオードD4及びD5各々のアノードの電圧、つまりラインLmの電圧が、トランジスタP1~P3及びN1~N3(P4~P6及びN4~N6)のうちの少なくとも1つが発する熱の温度に応じて変化する。そこで、温度測定回路106は、ラインLmの電圧を測定温度として表す測定温度信号SM1として出力する。尚、測定温度は、ダイオードD4及びD5のうちで高い温度に晒された方の温度となる。よって、温度測定回路106によれば、出力インバータ103及び104のうちで発熱の高い方の温度が測定されるため安全上好ましい。また、温度測定回路106は、出力インバータ(103、104)とは電気的に絶縁されているので、当該出力インバータに流れる大電流の高周波の駆動電流(PG、NG)による雑音の影響をうけず、確実に動作させることができる。
【0056】
更に、温度測定回路106には、自身の温度測定が正常であるのか、異常であるのかをテストする為のテスト回路として、電流源A1及びスイッチ素子SW1が設けられている。電流源A1は、電源電位VDDを受けてテスト用のバイアス電流を生成する。スイッチ素子SW1は、制御回路15から供給された温度センサテスト信号に応じてオン・オフ制御される。例えば、制御回路15は、通常動作時にはスイッチオフ固定を促す温度センサテスト信号をスイッチ素子SW1に供給する一方、温度センサをテストする際にはスイッチオン又はスイッチオフを促す温度センサテスト信号をスイッチ素子SW1に供給する。スイッチ素子SW1は、オン状態に設定されている間に亘り、電流源A1にて生成されたテスト用のバイアス電流を、ラインLmを介してダイオードD4及びD5各々のアノードに供給する。ここで、温度センサテスト時には、制御回路15は、スイッチ素子SW1がオン状態時に得られた測定温度信号SM1の値と、スイッチ素子SW1がオフ状態時に得られた測定温度信号SM1の値とを取り込み、両者が不一致であれば正常、一致していれば異常であると判定する。よって、かかるテスト回路(A1、SW1)によれば、温度測定回路の正常性を、周辺の温度を変化させずに判断することができる。
【0057】
また、上記した測定温度信号SM1に基づき、トランジスタ(P1~P6、N1~N6)に印加される電圧及び電流を推定することができる。従って、測定温度信号SM1に基づき無線給電装置100の電力損失を求めることが可能となる。これにより、制御回路15は、測定温度信号SM1に基づき電力損失が所定の損失量よりも少ないと推定した場合には、良好な電力伝送が行われていると判断する。一方、電力損失が所定の損失量よりも大であると推定した場合には、制御回路15は、電力伝送の効率が悪化していると判断してマッチング変更などの制御を送電回路10に施すことが可能となる。さらに、測定温度信号SM1に基づき電力損失が過大であると判断した場合には、制御回路15は、安全のため、電源遮断信号STP1を送電回路10に供給することにより当該送電回路10の動作を強制的に停止させる等の保護処理を行うことが可能となる。
【0058】
よって、温度測定回路106を設けることにより、無線給電装置100の高効率化及び省電力化を図ると共に、その動作の安全を確保することが可能となる。
【0059】
尚、上記した温度測定回路106では、温度センサとしてPN接合型のダイオードD4及びD5を出力インバータ103及び104の各々の近傍に設けているが、出力インバータ103及び104のうちの一方のみに設けるようにしても良い。また、出力インバータ103及び104の各々の近傍に、温度センサとしてのダイオードを2つ以上の複数個形成するようにしても良い。また、PN接合のダイオードに代えて、二次電池の温度測定用サーミスタ回路を採用しても良い。
【0060】
また、図2に示す出力インバータ103及び104の各々では、pチャネル側のトランジスタを、並列接続された3つのpチャネルMOS型のトランジスタで構成しているが、並列接続するトランジスタの数は3つに限定されるものではない。つまり、出力インバータ103及び104のpチャネル側のトランジスタとしては、並列接続されたN(Nは2以上の整数)個のpチャネルMOS型のトランジスタを採用しても良い。また、各pチャネルMOS型のトランジスタのサイズ(ゲート幅、ゲート長)を1:Nの整数比としても良いし、或いは整数比でなくても良い。尚、送電コイル12に供給する駆動電流をItx(アンペア)とし、電流検出用の抵抗R1及びR2各々の抵抗値をRmeas(オーム)とした場合、測定電流信号GC1rの電圧Vdet(ボルト)は、
Vdet=Itx*(1/N)*Rmeas
にて表される。
【0061】
ここで、各トランジスタのサイズ(ゲート幅、ゲート長)がM倍(Mは実数)になると、測定電流信号GC1rの電圧Vdet(ボルト)は、
Vdet=Itx*[1/(N*M)]*Rmeas
となる。
【0062】
つまり、出力インバータ103及び104を為すpチャネル側の各トランジスタのサイズがM倍になると、駆動電流もM倍程度となる。しかしながら、出力インバータ103(104)及び電流測定回路105aの構成によれば、測定電流信号GC1rの電圧Vdet自体は大幅に変化しない。よって、電流測定回路105aの動作範囲を超える、或いは、逆にレベルが小さすぎて分解能の低下を招くようなことが回避され、最適な測定精度が得られる。
【0063】
要するに、図1図3に示されるような、交流の駆動電流(NG又はPG)を送電コイル(12)に供給して交流磁界を発生させることにより無線給電を行う無線給電装置(100)としては、以下の第1~第Nのスイッチング素子、電流測定用の抵抗及び電流測定回路を備えたものであれば良いのである。つまり、第1~第Nのスイッチング素子(例えばP1~P3、又はP4~P6)の各々は、送電コイルの一端に接続されている駆動ライン(L1又はL2)及び電源ライン(VL)間に並列に接続されており、発振信号(fc又はfcB)に応じて夫々個別に駆動ラインに電流を供給する。電流測定用の抵抗(R1又はR2)は、電源ライン及び駆動ライン間において第1のスイッチング素子(P3又はP6)と直列に接続されている。電流測定回路(105a)は、抵抗(R1又はR2)の一端の電位に基づき駆動電流の電流量を表す測定電流信号(GC1r)を生成する。
【0064】
これにより、電流検出用の抵抗には駆動電流の1/Nの電流しか流れないので、この電流検出用の抵抗での電力損失が低減される。
[無線受電装置200]
次に、図1に示す無線受電装置200の構成について説明する。
【0065】
無線受電装置200は、受電コイル20、共振キャパシタ21、整流回路22、受電回路23、負荷回路24、セレクタ25、ADコンバータ26、制御回路27、コンパレータ28及び29を含む。尚、受電回路23、セレクタ25、ADコンバータ26、制御回
路27、コンパレータ28及び29は、例えば単一の半導体ICチップ、或いは複数の半導体ICチップに分割して形成されていても良いし、ディスクリート部品で構成されていても良い。
【0066】
受電コイル20及び共振キャパシタ21は、送電コイル12が発生する交流磁界に磁気結合し、当該交流磁界に対応した電圧値を有する交流電圧をラインL3及びL4に印加する。
【0067】
整流回路22は、例えば図1に示すように4つの整流用のダイオードが接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタを含み、駆動ラインL3及びL4の交流電圧を全波整流した電圧を平滑化した直流の電圧(以下、受給電圧と称する)をラインL5及びL6を介して受電回路23に供給する。
【0068】
受電回路23は、ラインL5及びL6の受給電圧の電圧値を所定電圧値に一定化した電圧を出力電圧Vgとして生成し、これを負荷回路24に供給する。尚、負荷回路24とは、例えば二次電池を充電する充電回路、或いはICカード等の各種電子機器の電源回路である。
【0069】
更に、受電回路23は、無線給電装置100から発せられた交流磁界の強度の測定、過大交流磁界からの保護、受給電圧の電圧値の測定、負荷回路24に供給される電流及び電圧の測定、受電回路23が発する熱の温度の測定、及び過電圧保護等の各種処理を行う。受電回路23は、例えば測定した電流の電流量を表す測定電流信号GC2をセレクタ25及びコンパレータ28に供給する。更に、受電回路23は、測定した温度を表す測定温度信号SM2をセレクタ25及びコンパレータ29に供給する。
【0070】
セレクタ25は、測定電流信号GC2及び測定温度信号SM2のうちから、選択信号SE2によって指定された方を選択してADコンバータ26に供給する。
【0071】
ADコンバータ26は、測定電流信号GC2又は測定温度信号SM2によって表されるアナログの電流値又は温度をディジタルの電流データ又は温度データに変換して制御回路27に供給する。
【0072】
制御回路27は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、プログラムに従った制御により、以下のような電流又は温度の異常判定を行う。すなわち、制御回路27は、ADコンバータ26から電流データが供給された場合には、当該電流データによって示される電流量が所定の過電流閾値I1よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合には過電流であると判断して、負荷回路24への電源電圧の供給を遮断させるように受電回路23を制御(電源遮断制御)する。また、制御回路27は、ADコンバータ26から温度データが供給された場合には、当該温度データによって示される温度が所定の高温閾値T1よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合には異常発熱であると判断して、上記した電源遮断制御を受電回路23に施す。また、制御回路27は、ADコンバータ26から供給された温度データ又は電流データに基づき、受電回路23の動作を設定(後述する)する為の制御信号を当該受電回路23に供給する。
【0073】
コンパレータ28は、測定電流信号GC2で示される電流量が所定の過電流閾値I2(I1<I2)よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に過電流検出信号EC2を制御回路27に供給する。コンパレータ29は、測定温度信号SM2で示される温度が所定の高温閾値T2(T1<T2)よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に高温検出信号ES2を制御回路27に供給する。制御回路27は、過電流検出信号EC2又は高温検出信号ES2が供給された場合に、上記した電源遮断処理を受電回路23
に施す。
尚、高温閾値T1及び過電流閾値I1は、制御回路27が正常に動作可能な温度環境にある際に得られる電流値及び温度に設定される。また、高温閾値T2及び過電流閾値I2は、制御回路27がプログラムの暴走を招くことになる温度環境にある際に得られる電流値及び温度に設定される。
【0074】
すなわち、制御回路27がプログラムを正常に実施可能な温度環境にある場合には、この制御回路27によって電流又は温度の異常判定を行う。一方、制御回路27がプログラムの暴走を招くような温度環境にある場合には、コンパレータ28及び29によって電流又は温度の異常判定を行う。よって、制御回路27が正常動作しなくなる温度状態にあっても、受電回路23に対して電源遮断制御を行うことが可能となる。
【0075】
図4は、受電回路23の内部構成を示すブロック図である。図4に示すように、受電回路23は、ラインL5及びL6間の電圧を受ける過大磁界保護回路231及び安定化回路232と、温度測定回路233と、を含む。尚、ラインL6は接地電位GNDが印加されている、いわゆる接地ラインである。
【0076】
図5は、過大磁界保護回路231の一例を示す回路図である。図5において、ツェナーダイオードZDのカソードはラインL5に接続されており、アノードが接地ラインとしてのラインL6に接続されている。また、ツェナーダイオードZDには、分圧抵抗としての抵抗R5及びR6が並列に接続されている。図5に示される構成では、ラインL5及びL6間の電圧を抵抗R5及びR6によって分圧して得られた分圧電圧を、無線給電装置100側の送電コイル12による交流磁界の強度を表す磁界強度信号MGとして出力する。
【0077】
図6は、ラインL5を介して供給された受給電圧に対する、ツェナーダイオードZDのカソード及びアノード間に流れる電流の特性を表す図である。図6に示すように受給電圧がツェナーダイオードZDのツェナー電圧Vzより低い場合には、当該ツェナーダイオードZDに流れる電流量は微量である。つまり、受電側の共振回路(20、21)に対する負荷インピーダンスが高い状態にある。よって、受給電圧はラインL5を介して次段の安定化回路232に供給される。一方、受給電圧がブレイクダウン電圧Vzを超えると、ツェナーダイオードZDに電流が流れ、負荷インピーダンスが急激に低下する。この際、ラインL5の電圧値はツェナーダイオードZDのブレイクダウン電圧Vzと等しくなり、電圧値がこのブレイクダウン電圧Vzに固定された受給電圧がラインL5を介して安定化回路232に供給される。すなわち、送電コイル12による交流磁界の強度が所定の強度よりも高いが故に受給電圧が過電圧となる場合には、ツェナーダイオードZDは、受給電圧の電圧値を強制的にブレイクダウン電圧Vzに固定することにより、安定化回路232を過電圧から保護するのである。
【0078】
更に、送電コイル12による交流磁界の強度が所定の強度よりも高い場合には、過大磁界保護回路231が上記したように負荷インピーダンスを低下させる。これにより、無線給電装置100の共振回路(11、12)のインピーダンスが増加し、送電コイル12による交流磁界の強度が低下する。
【0079】
例えば、
発振信号fcの周波数:13.56MHz
送電コイル12のインダクタンス:1マイクロヘンリー
送電コイル12の抵抗:1オーム
共振キャパシタ11の静電容量:137ピコファラド
受電コイル20のインダクタンス:1マイクロヘンリー
受電コイル20の抵抗:1オーム
共振キャパシタ21の静電容量:137ピコファラド
駆動回路(103、104)の出力電圧:3.5Vrms
駆動回路(103、104)の抵抗:10オーム
送電コイル12及び受電コイル20間の結合係数:k=0.1
負荷インピーダンス:RLオーム
とした場合に、
条件1(k=0.1、RL=1000オーム)では、無線給電装置100側の駆動点における絶対値インピーダンスは749.8オームとなる。
【0080】
また、条件2(k=0.1、RL=200オーム)では、無線給電装置100側の 駆動点における絶対値インピーダンスは2250オームとなる。
【0081】
つまり、無線給電装置100による送電電力が小さいときには、過大磁界保護回路231でのラインL5及びL6間の電圧が低いので、上記1の条件では、無線給電装置100側の駆動点における絶対値インピーダンスは749.8オームである。一方、送電電力が大きくなり、それ故に過大磁界保護回路231でのラインL5及びL6間の電圧が高くなってその電圧値がブレイクダウン電圧Vzを超えると、上記条件2のように、無線給電装置100側の駆動点における絶対値インピーダンスは2250オームに増大する。これにより、無線給電装置100側でのこれ以上の送電電力の増加を抑制することが可能となるため、無線受電装置200側でのこれ以上の受電電力増大を抑制し、過大入力を防ぎ安全な動作が確保されるようになる。
【0082】
尚、過大磁界保護回路231としては、図5に示す構成に代えて図7に示す構成を採用しても良い。
【0083】
図7に示す構成では、過大磁界保護回路231は、第1のカレントミラー回路を為すnチャネルMOS型のトランジスタMN1及びMN2と、第2のカレントミラー回路を為すpチャネルMOS型のトランジスタMP1及びMP2と、分圧抵抗としての抵抗R5及びR6と、電流を電圧に変換する為の抵抗R7と、を含む。分圧抵抗としての抵抗R5及びR6は図5に示される構成と同様に、ラインL5及びL6間に接続されている。これら抵抗R5及びR6によってラインL5及びL6間の電圧を分圧した分圧電圧が、第1のカレントミラー回路を為すトランジスタMN1及びMN2各々のゲートに供給される。ここで、トランジスタMN1のサイズ(ゲート幅、ゲート長)は例えばトランジスタMN2の1/100である。よって、上記した分圧電圧に対応した電流がトランジスタMN2に流れると、この電流の1/100の電流がトランジスタMN1に流れ、第2のカレントミラー回路の入力側のトランジスタMP1に流れる。これにより、トランジスタMP1に流れた電流と等しい電流がトランジスタMP2に流れ、この電流を抵抗R7によって電圧に変換して得られた信号が、磁界強度信号MGとして出力される。
【0084】
尚、図7に示される構成では、図6に示される非線形特性を実現する為のブレイクダウン電圧Vzに対応した電圧Vは、
V=Vth*(R5+R6)/R6
Vth:トランジスタMN1及びMN2の閾値電圧
となる。
【0085】
以上のように、安定化回路232の前段に設けた過大磁界保護回路231により、無線給電装置100側の送電コイル12による交流磁界の強度(送電電力量)を検出し、その強度を表す磁界強度信号MGを生成する。よって、かかる磁界強度信号MGを、図1に示すようなコンパレータ(28、29)又はADコンバータ(26)を介して、制御回路(
27)に取り込むことにより、当該制御回路において交流磁界の強度に基づく各種の動作制御を行うことが可能となる。また、過大磁界保護回路231は、受電コイル20が所定強度以上の交流磁界を受けた場合には、ラインL5及びL6間の電圧を一定電圧(Vz)に固定することにより、後段の安定化回路232を過大な電圧から保護する。更に、過大磁界保護回路231は、受電コイル20が所定強度よりも大きな強度の交流磁界を受けた場合には、負荷インピーダンスを低下させることにより、無線給電装置100の共振回路(11、12)のインピーダンスを増加させる。よって、過大磁界保護回路231によれば、安定化回路232での電力損失を抑え、且つ無線給電装置100側の無駄な送電を抑えて省電力を実現すると共に、過大入力を防ぎ安全な動作を確保することが可能となる。
【0086】
図8は、安定化回路232の構成を示す回路図である。安定化回路232は、ラインL5及びL6を介して供給された受給電圧に基づき所定の一定の電圧値を有する出力電圧Vgを生成して、負荷回路24に供給する。
【0087】
図8に示すように、安定化回路232は、出力電圧調整用のpチャネルMOS型のトランジスタQP0、負帰還制御部FBC、出力電流検出部IDE及び出力電圧検出部VDEを有する。
【0088】
トランジスタQP0は、ラインL5を介して供給された受給電圧の電圧値を、自身のゲートに供給されたに応じて調整した電圧を出力電圧Vgとして、ラインインL0を介して負荷回路24に供給する。
【0089】
出力電圧検出部VDEは、直列に接続された抵抗RD1~RDn(nは2以上の整数)によってラインL0の電圧値、つまり出力電圧Vgの電圧値を分圧するラダー抵抗と、当該ラダー抵抗の分圧比を変更する分圧比設定スイッチSJと、を含む。分圧比設定スイッチSJは、分圧比を指定する分圧比設定信号VSEを受け、抵抗RD1~RDnにおける抵抗同士の接続点の各々のうちから当該分圧比設定信号VSEにて示される分圧比に対応した接続点の電圧を選択し、その電圧を有する測定電圧信号GVを生成する。
【0090】
出力電流検出部IDEは、pチャネルMOS型のトランジスタQP3~QP7、スイッチ素子SW2~SW5、抵抗R11~R14を含む。トランジスタQP3~QP7の各々のゲートには、負帰還制御部FBCで生成された帰還電圧FVが供給されており、夫々のソースはラインL5に接続されている。
【0091】
ここで、トランジスタQP3~QP6は、夫々のゲートに供給された帰還電圧FVに対応した電流を夫々のドレインから出力する。つまり、ラインL5に流れる出力電流をトランジスタQP3~QP5によって分流する。ここで、トランジスタQP3及びQP4から出力された電流は合成され,スイッチ素子SW2を介して検出電流ラインDLLに送出される。また、トランジスタQP5から出力された電流はスイッチ素子SW3を介して検出電流ラインDLLに送出される。また、トランジスタQP6から出力された電流はそのまま検出電流ラインDLLに送出される。よって、例えばスイッチ素子SW2及びSW3のうちのSW2だけがオン状態に設定されている場合には、トランジスタQP3、QP4及びQP6の各々から出力された電流の合成電流が検出電流ラインDLLに送出される。また、スイッチ素子SW2及びSW3が共にオフ状態に設定されている場合には、トランジスタQP6から出力された電流だけが検出電流ラインDLLに送出される。すなわち、出力電流検出部IDEでは、例えば制御回路27によって実施されるスイッチ素子SW2及びSW3のオン・オフ制御により、検出電流ラインDLLに送出する電流量を変更できるようにしている。
【0092】
接地ラインとしてのラインL6と検出電流ラインDLLとの間には、電流電圧変換回路
として、抵抗R11~抵抗R13、スイッチ素子SW4及びSW5が設けられている。抵抗R11~R13各々の一端にはラインL6を介して接地電位GNDが印加されている。抵抗R11の他端は検出電流ラインDLLに接続されている。抵抗R12の他端はスイッチ素子SW5を介して検出電流ラインDLLに接続されている。抵抗R13の他端はスイッチ素子SW4を介して検出電流ラインDLLに接続されている。当該電流電圧変換回路では、スイッチ素子SW4及びSW5が共にオフ状態に設定されている場合には、検出電流ラインDLLに送出された電流は、抵抗R11の抵抗値に対応した電圧値に変換される。また、スイッチ素子SW4及びSW5が共にオン状態に設定されている場合には、検出電流ラインDLLに送出された電流は、抵抗R11~R13の合成抵抗値に対応した電圧値に変換される。また、スイッチ素子SW4及びSW5のうちのSW4だけがオン状態に設定されている場合には、検出電流ラインDLLに送出された電流は、抵抗R11及びR13の合成抵抗値に対応した電圧値に変換される。すなわち、電流電圧変換回路(R11~R13、SW4、SW5)は、出力電流の電流量を電圧値に変換し、その電圧値を有する測定電流信号GC2を生成する。尚、電流電圧変換回路では、例えば制御回路27によって実施されるスイッチ素子SW4及びSW5のオン・オフ制御により、測定電流信号GC2の電圧値を変更できるようにしている。
【0093】
トランジスタQP7は、自身のゲートに供給された帰還電圧FVに対応した電流を抵抗R14の一端に供給する。抵抗R14の他端にはラインL6を介して接地電位GNDが印加されている。よって、抵抗R14の一端には、この抵抗R14の抵抗値と、トランジスタQP7から送出された電流とによって決定する電圧が生じる。この際、抵抗R14の一端の電圧は、出力電流が所定電流値よりも高い過電流の状態にある場合に所定レベルを超えるように、その抵抗値が設定されている。出力電流検出部IDEでは、この抵抗R14の一端の電圧を過電流検出信号BCとして出力する。
【0094】
負帰還制御部FBCは、pチャネルMOS型のトランジスタQP1及びQP2、nチャネルMOS型のトランジスタQN1~QN4、電流源A2、ループフィルタとしての抵抗R10及びキャパシタC4を含む。トランジスタQP1及びQP2はラインL5を介して供給された受給電圧を受けて動作するカレントミラー回路である。トランジスタQN1~QN3各々のドレインはトランジスタQP1のゲート及びドレインに接続されており、これらトランジスタQN1~QN3各々のソースは電流源A2に接続されている。ここで、トランジスタQN1のゲートには測定電圧信号GVが供給されており、トランジスタQN3のゲートには過電流検出信号BCが供給されている。また、トランジスタQN2のゲートにはループフィルタ(C4、R10)を介して測定電流信号GC2が供給されている。トランジスタQN4のソースは電流源A2に接続されており、そのゲートには基準電位VCが印加されている。トランジスタQN4のドレインはトランジスタQP2のドレインに接続されており、その接続点の電圧が帰還電圧FVとして生成される。
【0095】
かかる構成により、負帰還制御部FBCは、測定電圧信号GV、測定電流信号GC2及び過電流検出信号BCのうちで最大の強度を有する信号の電位と、所定の基準電位VCとの差分を求め、当該差分を表す電圧を上記した帰還電圧FVとしてトランジスタQP0、QP3~QP7各々のゲートに印加する。
【0096】
よって、図8に示す安定化回路232は、測定電圧信号GV、測定電流信号GC2及び過電流検出信号BCのうちで最も高電圧の信号のレベルを所定の基準電位VCと等しくさせるように受給電圧の電圧値をトランジスタQP0で調整した電圧を、出力電圧Vgとして出力する。
【0097】
これにより、例えば無負荷、或いは高抵抗の負荷の場合には、測定電流信号GC2及び過電流検出信号BCは共に低電圧となり、測定電圧信号GVが最も高電圧となる。よって
、この際、安定化回路232のトランジスタQP0では、測定電圧信号GVのレベルを基準電位VCと等しくさせる電圧調整が為され、その結果、出力電圧Vgの電圧値が一定に維持される。また、例えば負荷抵抗が小さくなり、出力電流が増大すると、測定電流信号GC2が最も高電圧となる。よって、この際、安定化回路232のトランジスタQP0では、測定電流信号GC2のレベルを基準電位VCと等しくさせる電圧調整が為され、その結果、出力電圧Vgの電圧値が一定に維持される。また、負荷短絡等で大電流が流れる場合には、測定電流信号GC2のみならず過電流検出信号BCの電圧値も上昇するが、この際、過電流検出信号BCの電圧値を基準電位VCと等しくさせる電圧調整が為されるので、その結果、過電流が抑制される。
【0098】
また、図8に示す構成では、スイッチ(SJ、SW2~SW5)のオン・オフ状態を制御することにより、測定電流信号GC2及び測定電圧信号GVのレベルを変更できるようにしている。これにより、電圧及び電流の測定範囲(レンジ)も同時に切り替えることが可能となる。
【0099】
無線電力伝送では、磁界強度の変動に追従させて電圧及び電流の安定化が必要となり、且つ二次電池等の各種の負荷に供給される電圧及び電流の測定が必要となる。図8に示す安定化回路では、電圧測定を行う出力電圧検出部VDE及び電流測定を行う出力電流検出部IDEを、本来、安定化回路の負帰還信号を生成する為に設ける回路と兼用しているので、無駄な電力消費が抑えられ且つ回路規模の小規模化を図ることが可能となる。
【0100】
また、図8に示す安定化回路232では測定電圧又は測定電流のレベルを変更又は設定するにあたり、その測定範囲も追従して切り替えられるので、測定範囲および分解能、測定精度を所望値に維持させることが可能となる。
【0101】
更に、安定化回路232では過電流検出部(QP7、R14)を設け、この過電流検出部で生成された過電流検出信号BCも、出力電圧を調整する為の負帰還制御経路に加えることで、過電流が発生するような異常時にも早期に安全を図る調整が施されるようになる。尚、図8に示す一例では、測定電流用の帰還経路に、安定化の為にループフィルタ(C4、R10)による時定数回路を設けているが、急激な短絡などの場合には時定数回路による遅延が問題となる。しかしながら、図8に示す構成では、測定電流用の帰還経路とは別に設けた過電流検出用の帰還経路(ループフィルタ無し)により、急激な短絡等に迅速に追従させた電流制限が為される。
【0102】
以上、詳述したように、無線受電装置200では、整流後に得られた受給電圧に対して、図4に示す過大磁界保護回路231及び安定化回路232を介してから、その受給電圧に対応した出力電圧Vgを負荷回路24に供給するようにしている。この際、例えば制御回路27では、過大磁界保護回路231にて生成された磁界強度信号MGに基づき入力電力を求め、安定化回路232で測定された測定電流信号GC2及び測定電圧信号GVに基づき出力電力を求め、両者の差を算出することにより余剰電力を求めることができる。よって、かかる余剰電力を示す情報を用いて、無線給電装置100側の電力抑制制御を行えば、システム全体の省電力化を図ることが可能となる。
【0103】
要するに、上記したような、交流磁界を受けた受電コイル(20)にて得られた交流電圧を整流した電圧を受給電圧として受け、受給電圧に基づき所定の電圧値を有する出力電圧(Vg)を生成する無線受電装置(200)は、以下の過大磁界保護回路と、安定化回路とを含むものである。すなわち、過大磁界保護回路(231)は、第1のライン(L5)で受けた受給電圧に基づき交流磁界の強度を表す磁界強度信号(MG)を生成すると共に交流磁界の強度が所定強度よりも高い場合に第1のライン及び接地ライン間の電圧値を所定電圧(Vz)に固定する。安定化回路(232)は、以下の電流検出部、過大電流検
出部、電圧検出部、及び電圧調整部を含む。つまり、電流検出部(IDE)は、第1のラインに流れる電流の電流量を測定してこの電流量を表す測定電流信号(GC2)を生成する。過大電流検出部(QP7、R14)は、第1のラインに流れる過大電流を検出して過大電流を表す過大電流検出信号(BC)を生成する。電圧検出部(VDE)は、出力電圧(Vg)の電圧値を測定してこの電圧値を表す測定電圧信号(GV)を生成する。電圧調整部(FBC、QP0)は、これら測定電流信号、過大電流検出信号及び測定電圧信号のうちで最大の強度を有する信号の電位と基準電位(VC)との差分に基づいて第1のラインの電圧値を調整した電圧を出力電圧(Vg)として出力する。
【0104】
次に、図4に示す温度測定回路233について説明する。図9は温度測定回路233の構成を示す回路図である。
【0105】
図9に示すように、温度測定回路233は、抵抗R14、温度センサとしてのPN接合のダイオードD14及びD15を含む。
【0106】
抵抗R14は、電源電位VDDに基づくバイアス電流をダイオードD14及びD15各々のアノードに供給する。ダイオードD14は、例えば図10に示すように、過大磁界保護回路231の近傍に形成し、過大磁界保護回路231を構成する各素子のうちの少なくとも1つと熱的に結合させる。ダイオードD15は、例えば図10に示すように、安定化回路232の近傍に形成し、当該安定化回路232を構成する各素子のうちの少なくとも1つと熱的に結合させる。すなわち、過大磁界保護回路231及び安定化回路232を1つのICチップ内に形成する場合には、ダイオードD14(D15)を、過大磁界保護回路231(安定化回路232)を構成する各素子のうちの少なくとも1つに隣接して形成する。また、過大磁界保護回路231及び安定化回路232の各素子をディスクリート部品で構成する場合には、ダイオードD14(D15)を上記した各素子のうちの少なくとも1つと接触させるようにしても良い。
【0107】
ここで、PN接合のダイオードD14及びD15としては、例えば順方向電圧が0.7ボルトであり、温度特性が-1.5[mV/℃]を有するものを採用する。これにより、ダイオードD14及びD15の各々に抵抗R14を介してバイアス電流を流すと、ダイオードD14及びD15各々のアノードの電圧が、過大磁界保護回路231及び安定化回路232が発する熱の温度に応じて変化する。そこで、温度測定回路233は、ダイオードD14及びD15各々のアノードの電圧を測定温度として表す測定温度信号SM2として出力する。尚、測定温度は、ダイオードD14及びD15のうちで高い温度に晒された方の温度となる。よって、温度測定回路233によれば、過大磁界保護回路231及び安定化回路232のうちで発熱の高い方の温度が測定されるため安全上好ましい。また、温度測定回路233は、過大磁界保護回路231及び安定化回路232とは電気的に絶縁されているので、当該過大磁界保護回路231及び安定化回路232に流れる高周波の電流による雑音の影響をうけず、確実に動作させることができる。
【0108】
また、温度測定回路233によって生成された測定温度信号SM2に基づき、過大磁界保護回路231及び安定化回路232に形成されているトランジスタ又はダイオードに掛かる電圧及び電流を推定することができる。従って、測定温度信号SM2に基づき無線受電装置200の電力損失を求めることが可能となる。これにより、制御回路27は、測定温度信号SM2に基づき、電力損失が所定の損失量よりも少ないと推定した場合には、良好な電力伝送が行われていると判断する。一方、電力損失が所定の損失量よりも大であると推定した場合には、制御回路27は、電力伝送の効率が悪化していると判断してマッチング変更などを促す指示を無線給電装置100側に通知することが可能となる。さらに、測定温度信号SM2に基づき電力損失が過大であると判断した場合には、制御回路27は、安全のため、ラインL5及び受電回路23間の電気的接続を遮断させる等の保護処理を
行うことが可能となる。
【0109】
よって、温度測定回路233を設けることにより、無線受電装置200の高効率化及び省電力化を図ると共に、その動作の安全を確保することが可能となる。
【0110】
尚、温度測定回路233では、温度センサとしてPN接合型のダイオードD14及びD15を、過大磁界保護回路231及び安定化回路232各々の近傍に設けているが、過大磁界保護回路231及び安定化回路232のうちの一方のみに設けるようにしても良い。また、過大磁界保護回路231及び安定化回路232各々の近傍に、温度センサとしてのダイオードを2つ以上形成するようにしても良い。また、PN接合のダイオードに代えて、二次電池の温度測定用サーミスタ回路を採用しても良い。
【0111】
尚、図1図3に示す構成では、送電コイル12の一端及び他端に夫々駆動回路(103、104)を接続し、受電コイル20の両端に整流回路を接続する構成を採用している。しかしながら、送電コイル12の一端を接地電位GNDとし、他端に駆動回路を接続すると共に、受電コイル20の一端を接地電位GNDとし、他端に整流回路を接続する構成を採用しても良い。
【0112】
また、図1に示す一例では、送電コイル12と並列に共振キャパシタ11を接続し、受電コイル20と並列に共振キャパシタ21を接続した、いわゆる並列共振回路を採用しているが、共振キャパシタをコイルと直列に接続した直列共振回路等の他の回路方式を採用しても良い。
【0113】
また、図2又は図3に示す一例では、電流測定用の抵抗R1を出力インバータ103のpチャネルMOS型のトランジスタP3のソースに接続し、電流測定用の抵抗R2を出力インバータ104のpチャネルMOS型のトランジスタP6のソースに接続している。しかしながら、電流測定用の抵抗については、出力インバータ103及び104のうちのいずれか一方だけに設けるようにしても良く、或いは複数のpチャネルMOS型のトランジスタ各々のソースに個別に接続するようにしても良い。また、また、当該電流測定用の抵抗をnチャネルMOS型のトランジスタのソースに接続するようにしても良い。
【0114】
要するに、無線給電装置100としては、以下の第1~第Nのスイッチング素子、電流測定用の抵抗及び電流測定回路を備えたものであれば良いのである。つまり、第1~第Nのスイッチング素子(例えばP1~P6又はN1~NT6)の各々は、電源ライン(VL)及び接地ライン(GL)間に並列に接続されており、発振信号(fc又はfcB)に応じて夫々個別に、送電コイル(12)の一端に接続されている駆動ライン(L1、L2)に電流を供給する。電流測定用の抵抗(R1又はR2)は、電源ライン及び接地ライン間において第1のスイッチング素子(例えばP3、P6、N3、NT6)と直列に接続されている。電流測定回路(105a)は、抵抗(R1又はR2)の一端の電位に基づき駆動電流の電流量を表す測定電流信号(GC1r)を生成する。
【0115】
また、図1に示す整流回路22では、ダイオードにより高周波信号を整流・検波しているが、駆動回路のトランジスタは片方向にのみ電流を流しているので等価的に整流・検波を行う場合がある、よって、その場合には整流回路22のダイオードを省略するようにしても良い。
【0116】
また、温度測定回路(106、233)の温度センサとしては、PN接合型のダイオードのほか、複数のPN接合型ダイオード、バイポーラトランジスタ、或いはMOSの閾値を利用したものを採用しても良い。更に、PTAT回路(絶対温度比例回路)、抵抗の温度特性を用いるもの、サーミスタ等を温度センサとして利用しても良い。
【0117】
また、図8に示される安定化回路232では、pチャネルMOS型のトランジスタQP0のゲート電圧制御によるシリーズレギュレータ回路(リニアレギュレータ)を採用しているが、これに代えて負帰還制御を持つスイッチングレギュレータを採用しても良い。
【符号の説明】
【0118】
10 送電回路
12 送電コイル
20 受電コイル
23 受電回路
103、104 出力インバータ
105a、105b 電流測定回路
106、233 温度測定回路
231 過大磁界保護回路
232 安定化回路
300 無線電力伝送システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10