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  • 特開-プラズマCVD装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060757
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】プラズマCVD装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/52 20060101AFI20220408BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220408BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
C23C16/52
H05H1/46 M
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168420
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】大竹 文人
(72)【発明者】
【氏名】太田 淳
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亨
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB13
2G084BB14
2G084BB25
2G084BB26
2G084BB31
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084FF07
2G084FF15
4K030EA04
4K030FA03
4K030GA02
4K030KA17
5F045AA08
5F045AF11
5F045BB10
5F045BB15
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH14
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】良好な成膜分布が得られ、パーティクルの発生を抑制することができるプラズマCVD装置を提供する。
【解決手段】プラズマCVD装置は、シャワーボックス5を備える。シャワーボックス5は、シャワーボックス5は、固定プレート30と、シャワープレート40と、固定プレート30とシャワープレート40とを固定する複数の内部固定ピラー50を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理を行うプラズマCVD装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの上方に配置され、高周波電源に電気的に接続された電極フランジと、
前記チャンバの内部に配置され、被処理基板が載置される基板支持部と、
前記チャンバの内部において前記電極フランジと前記基板支持部との間に配置され、配管を通じてガス供給源に連通する内部空間を有するシャワーボックスと、
前記電極フランジと前記シャワーボックスとの間に設けられ、前記シャワーボックスの平坦度を調整可能な複数の支持シャフトと、
を備え、
前記シャワーボックスは、
前記電極フランジに対向するとともに複数の前記支持シャフトによって固定される固定上面と、前記シャワーボックスの前記内部空間に面する固定下面とを有する固定プレートと、
前記シャワーボックスの前記内部空間に面するシャワー上面と、前記基板支持部に対向するシャワー下面と、前記シャワーボックスの前記内部空間と前記チャンバとの間を連通する複数のシャワー孔とを有するシャワープレートと、
前記シャワーボックスの前記内部空間において、前記固定プレートの前記固定下面と、前記シャワープレートの前記シャワー上面とを固定する複数の内部固定ピラーと、
を備える、
プラズマCVD装置。
【請求項2】
前記シャワーボックスは、
前記シャワーボックスの前記内部空間に供給されたガスを分散させる複数の分散孔と、複数の前記内部固定ピラーが貫通する貫通孔とを有し、前記固定プレートと前記シャワープレートとの間に配置された分散プレートを備える、
請求項1に記載のプラズマCVD装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板等の被処理基板に対して成膜処理を施すプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。近年では、ガラス基板の一辺の長さが1800mmであるといった大型基板が採用されており、これに応じて、プラズマCVD装置は、大型基板に対応する大型のシャワープレートを備えている。
【0003】
プラズマCVD装置内において大型のシャワープレートを平行状態で固定するためには、ガラス基板に対向するシャワープレートの下面とは反対側の上面に金属製の複数の支持シャフト(吊具)を取り付けて、複数の支持シャフトによってシャワープレートを吊り上げ固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/244790号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構造を有するプラズマCVD装置においては、基板が大型になるにつれて、基板上において良好な成膜分布を得ることが困難であることが知られている。成膜分布を改善するには、プラズマCVD装置のメンテナンス作業の際に、複数の支持シャフトの各々を上下方向に移動させ、シャワープレートの平坦度を調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、このようなシャワープレートの平坦度の調整においては、支持シャフトの上下方向の移動により、シャワープレートに大きな応力が生じてしまい、シャワープレートと支持シャフトとの間の固定部分において金属摩耗が生じ、パーティクルが発生する懸念がある。プラズマCVD装置を用いて基板上に成膜される膜が半導体膜であれば、パーティクルが半導体膜に悪影響を及ぼし、半導体膜を有するデバイスの歩留まりが大きく低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、良好な成膜分布が得られ、パーティクルの発生を抑制することができるプラズマCVD装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、次の知見(1)~(4)を得た。
(1)シャワープレートと支持シャフトとの間において生じた金属摩耗に起因してパーティクルが発生すると、このパーティクルは、シャワープレートの上面から下面に向かうプロセスガスの流動に伴って、シャワープレートに形成された複数のシャワー孔を通り、基板上の成膜空間に飛散する。成膜空間に飛散したパーティクルは、CVD成膜プロセスに悪影響を及ぼす。シャワープレートの平坦度の調整と、パーティクルの発生とは、トレードオフの関係にある。
【0009】
(2)一方、パーティクルの飛散を防止するためにシャワー孔を埋めた場合には、プロセスガスを成膜空間に供給することはできず、成膜プロセスを行うことができない。
【0010】
(3)シャワープレートの上面に取り付けた支持シャフトによってシャワープレートを吊り上げ固定している従来のプラズマCVD装置では、シャワープレートの平坦度の調整は可能であるが、シャワープレートと支持シャフトとの間において生じた金属パーティクルの成膜空間への飛散を防止することは困難である。
【0011】
(4)大型基板用のプラズマCVD装置において、良好な成膜分布が得られ、基板の表面へのパーティクルの落下(成膜空間へのパーティクルの飛散)を防止し、シャワー孔を有するシャワープレートから成膜空間へプロセスガスを供給するには、従来の装置とは異なるシャワープレート構造が必要である。
上記の知見に基づき、本発明者らは、以下の態様を有するプラズマCVD装置に想到した。
【0012】
本発明の一態様に係るプラズマCVD装置は、プラズマ処理を行うプラズマCVD装置であって、チャンバと、前記チャンバの上方に配置され、高周波電源に電気的に接続された電極フランジと、前記チャンバの内部に配置され、被処理基板が載置される基板支持部と、前記チャンバの内部において前記電極フランジと前記基板支持部との間に配置され、配管を通じてガス供給源に連通する内部空間を有するシャワーボックスと、前記電極フランジと前記シャワーボックスとの間に設けられ、前記シャワーボックスの平坦度を調整可能な複数の支持シャフトと、を備える。前記シャワーボックスは、前記電極フランジに対向するとともに複数の前記支持シャフトによって固定される固定上面と、前記シャワーボックスの前記内部空間に面する固定下面とを有する固定プレートと、前記シャワーボックスの前記内部空間に面するシャワー上面と、前記基板支持部に対向するシャワー下面と、前記シャワーボックスの前記内部空間と前記チャンバとの間を連通する複数のシャワー孔とを有するシャワープレートと、前記シャワーボックスの前記内部空間において、前記固定プレートの前記固定下面と、前記シャワープレートの前記シャワー上面とを固定する複数の内部固定ピラーと、を備える。
【0013】
本発明の一態様に係るプラズマCVD装置においては、前記シャワーボックスは、前記シャワーボックスの前記内部空間に供給されたガスを分散させる複数の分散孔と、複数の前記内部固定ピラーが貫通する貫通孔とを有し、前記固定プレートと前記シャワープレートとの間に配置された分散プレートを備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様に係るプラズマCVD装置によれば、複数の支持シャフトがシャワーボックスを構成する固定プレートの固定上面に接続されているため、複数の支持シャフトがシャワープレートに直接的に取り付けられていない構造が得られている。
【0015】
したがって、シャワープレートに支持シャフトが取り付けられた従来の装置構成とは異なり、支持シャフトとシャワープレートとの間で金属摩耗が生じることが無く、この金属摩耗に起因するパーティクルの発生を防止できる。このため、パーティクルが複数のシャワー孔を通じて成膜空間へ飛散することを防止できる。
【0016】
このため、パーティクルが被処理基板の表面に落下するリスクを低減することができ、プラズマCVD装置によって成膜された膜を有するデバイス(製品)の歩留まりを改善することができる。
【0017】
プラズマCVD装置のメンテナンス作業の際に、複数の支持シャフトの各々を上下方向に移動させるだけで、上述したパーティクル発生を考慮することなく、シャワーボックスの平坦度、すなわち、シャワープレートの平坦度を調整することができ、所望の成膜分布を有する膜を被処理基板上に形成することができる。
【0018】
さらに、本発明の上記態様に係るプラズマCVD装置では、複数の支持シャフトがシャワープレートに取り付けされていないため、複数の支持シャフトは、シャワープレートにおけるプロセスガスの流動やプロセスガス流量の均一化に影響を及ぼすことがない。
【0019】
したがって、シャワーボックスの固定プレートに対して複数の支持シャフトが取り付けられる位置、及び、複数の支持シャフトの本数に関し、設計の自由度が向上する。より多くの本数で支持シャフトをシャワーボックスと電極フランジとの間に設けることができ、シャワープレートの平坦度を微調整することができ、被処理基板上に形成される膜の成膜分布を容易に調整することができる。
【0020】
本発明の上記態様に係るプラズマCVD装置のシャワーボックスは、シャワーボックスの内部空間を囲むように、固定プレートとシャワープレートとが複数の内部固定ピラーによって固定された構造を有する。したがって、1枚のシャワープレートによって成膜空間へのプロセスガスの供給を行う従来の構成に比べて、熱変形に対する強度を向上させることができる。
【0021】
分散プレートによって分散されたプロセスガスは、シャワープレートの複数のシャワー孔を通り、シャワープレートと被処理基板との間の成膜空間に供給される。したがって、分散プレートによって、複数のシャワー孔の各々から成膜空間に供給されるガス流量を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置を示す模式断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置を構成するシャワーボックスを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
以下の説明において、「上下方向」とは、被処理基板の表面に鉛直な方向を意味しており、重力方向と同義である。「上方」とは、上下方向における上向きの方向を意味する。「下方」とは、上下方向における下向きの方向を意味する。
【0024】
(プラズマCVD装置)
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマCVD装置1は、プラズマCVD法による被処理基板に成膜を行う装置である。プラズマCVD装置1は、真空チャンバ2(チャンバ)と、電極フランジ3と、絶縁フランジ4と、シャワーボックス5と、基板支持部6と、支柱7と、高周波電源8と、ガス供給源9と、複数の支持シャフト10と、クリーニングガス供給源11と、真空ポンプ12とを備える。
【0025】
(真空チャンバ)
真空チャンバ2は、アルミニウム等の導電性材料で形成されている。真空チャンバ2は、不図示の開口部と排気口とを有する。開口部には不図示のゲートバルブが接続されている。真空チャンバ2の内部は気密な空間であり、真空チャンバ2は、この空間を真空雰囲気に維持することが可能である。プラズマCVD装置1によってプラズマCVD処理が施される基板S(被処理基板)の搬送は、開口部を介在して、不図示の搬送チャンバと真空チャンバ2との間で行われる。排気口は、排気配管を通じて、真空ポンプ12に接続されている。さらに、真空チャンバ2の底面には、支柱7が配置される支柱開口が設けられている。支柱開口を通じて、支柱7は上下方向に移動することが可能である。
【0026】
(電極フランジ、絶縁フランジ)
電極フランジ3は、絶縁フランジ4を介して真空チャンバ2の上方に配置されている。電極フランジ3は、高周波電源8に電気的に接続されている。電極フランジ3は、プラズマCVD装置1の上部電極として機能する。
絶縁フランジ4は、真空チャンバ2の上端に取り付けられ、セラミック等の絶縁材料によって形成されている。
【0027】
(基板支持部、支柱)
基板支持部6は、真空チャンバ2の内部に配置されている。基板支持部6には、基板Sが載置される。基板支持部6は、プラズマCVD装置1の下部電極として機能する。基板支持部6には、不図示のヒータが設けられており、基板支持部6は、基板Sの温度を制御することができる。基板支持部6には、基板支持ピン(不図示)が貫通するピン孔(不図示)が形成されている。基板支持ピンは、搬送ロボットアームと基板支持部6との間で基板Sの搬送が行われる際に用いられる。
【0028】
基板支持部6の下面には支柱7が接続されている。支柱7には不図示の駆動機構が接続されており、駆動機構の駆動によって支柱7は上下方向に移動する。支柱7の上下方向の移動に伴って、基板支持部6は上下方向に移動可能である。このような基板支持部6の移動により、シャワーボックス5を構成するシャワープレート40(後述)と基板Sとの間の距離(ギャップ)を調整することができる。基板支持部6が下方に移動した際には、搬送ロボットアームが基板支持部6の上方の空間に入り、基板Sの搬送が可能となる。基板支持部6が上下方向に移動する場合であっても、真空チャンバ2の真空雰囲気は保たれる。
【0029】
(支持シャフト)
複数の支持シャフト10は、電極フランジ3とシャワーボックス5との間に設けられ、シャワーボックス5の平坦度を調整可能である。シャワーボックス5は、真空チャンバ2の内部において電極フランジ3と基板支持部6との間に配置されている。
【0030】
複数の支持シャフト10の各々は、支持シャフト10を上下方向に移動させる調整機構10Mを備える。調整機構10Mの構造は、特に限定されない。調整機構10Mの構造としては、例えば、公知の工具を用いた回転動作によって支持シャフト10を上下方向に移動させるネジ機構が採用される。メンテナンス作業の容易性を考慮して、調整機構10Mは、電極フランジ3の上方の大気空間に配置されている。これにより、メンテナンス作業を行う作業者は、真空チャンバ2の真空状態を維持した状態で、支持シャフト10を上下方向に移動させることが可能となる。
【0031】
(シャワーボックス)
図2に示すように、シャワーボックス5は、内部空間20(上空間20U、下空間20L)を有する。内部空間20は、配管9Aを通じてガス供給源9に連通しており、配管11Aを通じてクリーニングガス供給源11に連通している。
【0032】
なお、高周波電源8は、電極フランジ3及び支持シャフト10を通じて、高周波電力をシャワーボックス5に供給する。この電力供給経路を表すために、図2においてはシャワーボックス5に高周波電源8が電気的に接続されていることが示されている。
また、図2においては、複数の支持シャフト10が省略されているが、図1に示すように、複数の支持シャフト10は、シャワーボックス5の上部(固定プレート30)に接続されている。
【0033】
なお、配管9A及び配管11Aは、図1に示すように、電極フランジ3とシャワーボックス5との間の空間2Bを貫通し、シャワーボックス5に接続されている。つまり、配管9A及び配管11Aから供給されるガスは、真空チャンバ2の内部空間(空間2B)を供給されずに、シャワーボックス5の内部空間20に供給されている。
【0034】
ガス供給源9及びクリーニングガス供給源11とシャワーボックス5との接続構造や配管経路は、特に限定されない。例えば、複数の配管9Aをシャワーボックス5に接続して、複数の配管9Aを通じてガス供給源9から分散的にプロセスガスをシャワーボックス5の内部空間20に供給してもよい。
【0035】
(シャワーボックスを構成するプレートの構成)
シャワーボックス5は、固定プレート30と、シャワープレート40と、複数の内部固定ピラー50と、分散プレート60とを備える。
固定プレート30、シャワープレート40、内部固定ピラー50、及び分散プレート60を構成する材料としては、金属材料が採用される。これら3つのプレート30、40、60を構成する金属材料の種類は、特に限定されない。例えば、シャワープレート40の材料として、アルミニウムが採用される。固定プレート30、内部固定ピラー50、及び分散プレート60の材料は、シャワープレート40の材料とは異なってもよい。
【0036】
固定プレート30、シャワープレート40、及び複数の内部固定ピラー50は互いに電気的に接続されている。このため、高周波電源8からシャワーボックス5に供給される高周波電力は、シャワープレート40に供給される。
【0037】
固定プレート30、シャワープレート40、及び分散プレート60の厚さは、特に限定されない。また、複数の内部固定ピラー50の長さも、特に限定されない。シャワーボックス5の強度が十分に得られる程度に、これら3つのプレートの厚さ及び内部固定ピラー50の長さが設定される。
【0038】
固定プレート30と分散プレート60との間の距離、及び、シャワープレート40と分散プレート60との間の距離は、内部空間20(上空間20U、下空間20L)にプロセスガスを均一に広がらせて分散されることができれば、特に、限定されない。
例えば、固定プレート30と分散プレート60との間の距離、及び、シャワープレート40と分散プレート60との間の距離は、共に、20mm~30mm程度に設定することができる。
【0039】
(固定プレート)
固定プレート30は、固定上面30Uと固定下面30Lとを有する。固定上面30Uは、電極フランジ3に対向しており、複数の支持シャフト10によって固定されている。固定下面30Lは、シャワーボックス5の上空間20U(内部空間20)に面している。
【0040】
(シャワープレート)
シャワープレート40は、シャワー上面40Uとシャワー下面40Lとを有する。シャワー上面40Uは、シャワーボックス5の下空間20L(内部空間20)に面する。シャワー下面40Lは、基板S(基板支持部6)に対向する。シャワープレート40は、シャワーボックス5の下空間20Lと真空チャンバ2の内部の成膜空間2Aとの間を連通する複数のシャワー孔40Hを有する。
【0041】
(内部固定ピラー)
複数の内部固定ピラー50は、シャワーボックス5の内部空間20において、固定プレート30の固定下面30Lと、シャワープレート40のシャワー上面40Uとを固定する。内部固定ピラー50と固定下面30Lとの固定構造、及び、内部固定ピラー50とシャワー上面40Uとの固定構造は、特に限定されない。溶接により固定構造が実現されてもよいし、ネジ等の締結部材を用いて固定構造が実現されてもよい。
【0042】
シャワーボックス5の強度を十分に得られれば、複数の内部固定ピラー50の2次元配置パターン(下方に向けてシャワーボックス5を見た平面図における配置パターン)は、特に、限定されない。
【0043】
(分散プレート)
分散プレート60は、固定プレート30とシャワープレート40との間に配置されている。分散プレート60は、シャワーボックス5の内部空間20に供給されたプロセスガス(ガス)を分散させる複数の分散孔60Hと、複数の内部固定ピラー50が貫通する貫通孔60Pとを有する。
【0044】
貫通孔60Pと内部固定ピラー50との間の部位において、貫通孔60Pと内部固定ピラー50との間に隙間があってもよいし、貫通孔60Pと内部固定ピラー50とが固定されてもよい。
【0045】
貫通孔60Pと内部固定ピラー50との間に隙間が形成されている構成では、貫通孔60Pと内部固定ピラー50とが互いに接触しない程度の隙間が形成されている。この隙間は、分散プレート60によるガス分散効果が得られるように設定されてもよい。
【0046】
貫通孔60Pと内部固定ピラー50とが固定されている構成では、貫通孔60Pと内部固定ピラー50との間にOリング等の密閉部材が挟まれてもよい。貫通孔60Pと内部固定ピラー50とが溶接等によって接続されてもよい。貫通孔60Pと内部固定ピラー50とが同一材料で構成された一体部材であってもよい。
【0047】
(接続構造)
次に、シャワーボックス5の外周部5Eにおける固定プレート30、シャワープレート40、及び分散プレート60の接続構造について説明する。
固定プレート30は、固定下面30Lの外周領域から下方に突出する下面突起30Tを有する。シャワープレート40は、シャワー上面40Uの外周領域から上方に突出する上面突起40Tを有する。分散プレート60の外端60Eは、下面突起30Tの下端30Eと上面突起40Tの上端40Eとによって挟まれた状態で、下端30Eと上端40Eとに溶接により接続されている。このような接続構造によって、シャワーボックス5の内部空間20が密閉されている。
【0048】
なお、シャワーボックス5の内部空間20が密閉されていれば、本発明は、上述の接続構造に限定されない。シャワーボックス5の外周部5Eにおいて、ネジ等の締結部材を用いて、固定プレート30、シャワープレート40、及び分散プレート60が締結されてもよい。互いに隣り合う2つのプレートの間の隙間からプロセスガスが漏れることを防止するために、シャワーボックス5の外周部5Eにおける2つのプレートの間にOリング等の密閉部材が挟まれてもよい。
【0049】
なお、3つのプレート30、40、60において互いに隣接するプレートがOリング等の密閉部材を介して接続されている構造であっても、固定プレート30とシャワープレート40とが内部固定ピラー50により固定されているので、高周波電源8の高周波電力は、シャワープレート40に到達する構造が得られている。
【0050】
また、下面突起30Tや上面突起40Tに代えて、スペーサを用いてもよい。この場合、スペーサと固定プレート30との間、及び、スペーサとシャワープレート40との間には、Oリング等の密閉部材が挟まれてもよい。
【0051】
本実施形態に係るプラズマCVD装置1によれば、複数の支持シャフト10がシャワーボックス5を構成する固定プレート30の固定上面30Uに接続されているため、複数の支持シャフト10がシャワープレート40に直接的に取り付けられていない構造が得られている。
【0052】
(作用効果)
次に、プラズマCVD装置1によって得られる作用及び効果について説明する。
基板支持部6上に基板Sが配置された状態で、プラズマCVDによる成膜処理が基板Sに対して施される。具体的には、真空ポンプ12によって真空チャンバ2の内部が真空雰囲気に維持された状態で、ガス供給源9は配管9Aを通じてプロセスガスをシャワーボックス5の内部空間20に供給する。
【0053】
シャワーボックス5が分散プレート60を備えるので、内部空間20に供給されたプロセスガスは、分散プレート60によって分散される。分散プレート60によって分散されたプロセスガスは、複数のシャワー孔40Hを通じて、成膜空間2Aに供給される。
【0054】
この状態で、高周波電源8が高周波電力をシャワーボックス5に供給する。
シャワープレート40と基板支持部6との間でプラズマが発生し、プラズマCVDによる成膜処理が基板Sに対して施される。
【0055】
このような成膜処理の処理回数の頻度が増加すると、シャワープレート40が次第に熱変形する。この熱変形は、基板S上に形成される膜の成膜分布に影響を及ぼす。所望の成膜分布が得られない状態に達すると、成膜分布を改善する必要が生じる。この場合、プラズマCVD装置1に稼働を停止し、プラズマCVD装置1のメンテナンス作業が行われる。
【0056】
メンテナンス作業では、成膜分布を改善するために、作業者は、シャワープレート40の平坦度を調整する。作業者は、工具を用いて調整機構10Mを操作し、複数の支持シャフト10の各々を上下方向に移動させる。
【0057】
例えば、上下方向において、シャワープレート40の中央領域を上方に移動させる場合には、シャワーボックス5の中央領域に位置する支持シャフト10Aを上方に引き上げる。すると、シャワーボックス5の内部固定ピラー50がシャワープレート40の中央領域を上方に移動させる。
【0058】
反対に、シャワープレート40の外周領域を下方に移動させる場合には、シャワーボックス5の外周領域に位置する支持シャフト10Dを下方に引き下げる。すると、シャワーボックス5の内部固定ピラー50がシャワープレート40の外周領域を下方に移動させる。
【0059】
なお、必要に応じて、支持シャフト10Aと支持シャフト10Dとの間に位置する支持シャフト10B、10Cを上下方向に移動させることで、この移動に伴って、支持シャフト10B、10Cに対応するシャワープレート40の領域が上下方向に移動する。
【0060】
換言すると、複数の支持シャフト10の各々の箇所においては、各支持シャフト10の上下方向の移動によってシャワーボックス5の平坦度が調整されるが、複数の支持シャフト10によるシャワーボックス5の平坦度の調整は、複数の内部固定ピラー50に固定されているシャワープレート40の平坦度の調整に反映される。
【0061】
したがって、シャワープレートに支持シャフト10が取り付けられた従来の装置構成とは異なり、支持シャフト10とシャワープレート40との間で金属摩耗が生じることが無く、この金属摩耗に起因するパーティクルの発生を防止できる。このため、パーティクルが複数のシャワー孔40Hを通じて成膜空間2Aへ飛散することを防止できる。
【0062】
このため、パーティクルが基板Sの表面に落下するリスクを低減することができ、プラズマCVD装置1によって成膜された膜を有するデバイス(製品)の歩留まりを改善することができる。
【0063】
プラズマCVD装置1のメンテナンス作業の際に、複数の支持シャフト10の各々を上下方向に移動させるだけで、上述したパーティクル発生を考慮することなく、シャワーボックス5の平坦度、すなわち、シャワープレート40の平坦度を調整することができ、所望の成膜分布を有する膜を基板S上に形成することができる。
【0064】
従来の装置構成では、支持シャフト10がシャワープレート40の上面(本実施形態のシャワー上面に相当)に取り付けられていた。このため、支持シャフト10の位置、及び、支持シャフト10の本数は、複数のシャワー孔40Hの各々の位置を考慮して、プロセスガスの流動やプロセスガス流量の均一化に影響を及ぼさないように設定する必要があった。
【0065】
これに対し、上述した実施形態に係るプラズマCVD装置1では、複数の支持シャフト10がシャワープレート40に取り付けない構造が採用されている。このため、複数の支持シャフト10は、シャワープレートにおけるプロセスガスの流動やプロセスガス流量の均一化に影響を及ぼすことがない。
【0066】
したがって、シャワーボックス5の固定プレート30に対して複数の支持シャフト10が取り付けられる位置、及び、複数の支持シャフト10の本数に関し、設計の自由度が向上する。より多くの本数で支持シャフト10をシャワーボックス5と電極フランジ3との間に設けることができ、シャワープレート40の平坦度を微調整することができ、基板S上に形成される膜の成膜分布を容易に調整することができる。
【0067】
上述した実施形態に係るプラズマCVD装置1のシャワーボックス5は、シャワーボックス5の内部空間20を囲むように、固定プレート30とシャワープレート40とが複数の内部固定ピラー50によって固定された構造を有する。したがって、1枚のシャワープレートによって成膜空間へのプロセスガスの供給を行う従来の構成に比べて、熱変形に対する強度を向上させることができる。
【0068】
分散プレート60によって分散されたプロセスガスは、シャワープレート40の複数のシャワー孔40Hを通り、シャワープレート40と基板Sとの間の成膜空間2Aに供給される。したがって、分散プレート60によって、複数のシャワー孔40Hの各々から成膜空間2Aに供給されるガス流量を均一にすることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明し、上記で説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
【0070】
上述した本実施形態では、シャワーボックス5が分散プレート60を備えた構成について説明した。本発明は、本実施形態に限定されない。ガス供給源9から内部空間20に供給されたプロセスガスを内部空間20内で均一に広がらせ、プロセスガスを均一な流速で複数のシャワー孔40Hから成膜空間2Aに供給することができれば、シャワーボックス5の構成から分散プレート60を除いてもよい。
【0071】
上述した本実施形態では、シャワーボックス5に1枚の分散プレート60が配置された構成について説明した。本発明は、本実施形態に限定されない。シャワーボックス5は、複数の分散プレート60を備えてもよい。
【0072】
また、分散プレート60の外端60Eは、固定プレート30の下端30Eとシャワープレート40の上端40Eとの間に挟まれなくてもよい。つまり、固定プレート30の下端30Eとシャワープレート40の上端40Eとが直接的に接続された構造が採用されてもよい。この場合、分散プレート60は、シャワーボックス5の内部空間20において、固定プレート30とシャワープレート40との間に配置される。分散プレート60を支持する支持部材は、必要に応じて、シャワーボックス5の内部空間20に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、良好な成膜分布が得られ、パーティクルの発生を抑制することができるプラズマCVD装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 プラズマCVD装置、2 真空チャンバ(チャンバ)、2A 成膜空間、2B 空間、3 電極フランジ、4 絶縁フランジ、5 シャワーボックス、5E 外周部、6 基板支持部、7 支柱、8 高周波電源、9 ガス供給源、9A、11A 配管、10、10A、10B、10C、10D 支持シャフト、10M 調整機構、11 クリーニングガス供給源、12 真空ポンプ、20 内部空間、20L 下空間(内部空間)、20U 上空間(内部空間)、30 固定プレート、30E 下端、30L 固定下面、30T 下面突起、30U 固定上面、40 シャワープレート、40E 上端、40H シャワー孔、40L シャワー下面、40T 上面突起、40U シャワー上面、50 内部固定ピラー、60 分散プレート、60E 外端、60H 分散孔、60P 貫通孔、S 基板。
図1
図2