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特開2022-61380食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061380
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220411BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20220411BHJP
【FI】
A23L7/109 D
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169361
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】笛田 秀人
(72)【発明者】
【氏名】井川 優珠子
(72)【発明者】
【氏名】宮川 俊平
【テーマコード(参考)】
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LE04
4B036LF11
4B036LH04
4B036LH12
4B036LH49
4B036LP03
4B036LP09
4B036LP10
4B036LP14
4B036LP17
4B046LA09
4B046LB07
4B046LB20
4B046LC01
4B046LG02
4B046LG12
4B046LG16
4B046LG46
4B046LP40
(57)【要約】
【課題】適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良することのできる食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺を提供すること。
【解決手段】グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類の食感改良剤を提供する。また、前記食感改良剤を含有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類のミックスも提供する。更に、前記食感改良剤、又は前記ミックスを用いた、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類も提供する。加えて、前記食感改良剤、前記ミックス、又は前記揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類を用いた、揚げ皮食品又は揚げ麺も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、
グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類の食感改良剤。
【請求項2】
請求項1に記載の食感改良剤を含有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類のミックス。
【請求項3】
請求項1に記載の食感改良剤、又は請求項2に記載のミックスを用いた、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類。
【請求項4】
請求項1に記載の食感改良剤、請求項2に記載のミックス、又は請求項3に記載の揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類を用いた、揚げ皮食品又は揚げ麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺に関する。より詳しくは、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良することのできる食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品等の対象製品の品質改良としては、食感、色調、風味、呈味などの点で種々の試みがなされており、特に食感に関する改良法は数多く開発されている。食感は、食品の構成成分、すなわち、水分、油分、澱粉質、蛋白質、繊維質等が複雑に絡み合って影響するものである。
【0003】
例えば、揚げ春巻は、小麦粉を主原料とする春巻皮で具材を巻き、これを油ちょうして製造される。皮部の食感は、パリパリとしたクリスピーな食感が好まれるが、油ちょう後、時間の経過にともない皮部に包まれた具材の水分が皮へ移行し、皮部がふやけてヒキのある食感となりやすい。そのため、油ちょう後、時間が経過しても皮部のクリスピーな食感を維持することが求められる。
【0004】
これに対して、例えば、原料粉に、デキストリン、酸化澱粉、酸処理澱粉、架橋澱粉、ハイアミロースコーンスターチの群から選ばれた1種又は2種以上の低粘度澱粉を使用する方法(特許文献1参照)、小麦粉と、膨潤度5以下の膨潤度抑制澱粉とを含み、膨潤度抑制澱粉の含有割合が、小麦粉及び膨潤度抑制澱粉の合計量に対して、2~70質量%であることを特徴とする揚げ春巻の皮用組成物を用いる方法(特許文献2参照)、小麦粉及び澱粉からなる原料粉、特定の乳化剤(原料粉に対して0.3~3重量%)、DE値が20%以下のデキストリン(原料粉に対し5重量%以上20重量%以下)の春巻き皮を用いる方法(特許文献3参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-121016号公報
【特許文献2】特開2003-199518号公報
【特許文献3】特開2010-178709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの先行技術によっても、未だ十分な食感改良効果が得られていないのが実情である。
【0007】
そこで、本技術では、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良することのできる食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意実験検討を行った結果、オリゴ糖の中でもごく高分子の成分とデキストリンの低分子成分を高含有することを特徴とする澱粉分解物を用いることで、揚げ皮食品又は揚げ麺の食感が改良されることを突き止め、本技術を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本技術では、まず、グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、
グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類の食感改良剤を提供する。
【0010】
また、本技術では、前記食感改良剤を含有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類のミックスも提供する。
【0011】
更に、本技術では、前記食感改良剤、又は前記ミックスを用いた、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類も提供する。
【0012】
加えて、本技術では、前記食感改良剤、前記ミックス、又は前記揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類を用いた、揚げ皮食品又は揚げ麺も提供する。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良することのできる食感改良剤、これを含有するミックス、及びこれらを用いた揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であっても良い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
本技術に係る食感改良剤は、グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有することを特徴とする。
【0016】
本技術に係る食感改良剤は、オリゴ糖の高分子成分とデキストリンの低分子成分(グルコース重合度;DP8~19)を多く含有するため、低分子のオリゴ糖では起こらない直鎖状糖分子同士の相互作用が生じて結晶性が高くなり、この性質を利用することで、本技術に係る食感改良剤を用いて製造される揚げ皮食品又は揚げ麺は、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良することができ、また、その食感を維持することができる。更には、冷凍耐性にも優れるため、前記食感改良剤を用いて製造した揚げ皮食品又は揚げ麺を冷凍保存した後、必要に応じて再油ちょうしたとしても、食感が劣ることはない。そのため、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケットの惣菜コーナー等において、良好な食感の揚げ皮食品又は揚げ麺を提供することができる。また、弁当のおかず等に用いても良好な食感を長時間維持できる。
【0017】
<澱粉分解物について>
本技術に用いる澱粉分解物は、澱粉原料、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、小麦澱粉等の澱粉(地上系澱粉)、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉等のような地下茎又は根由来の澱粉(地下系澱粉)、或いはこれらの加工澱粉等を分解(糖化)することによって得られるものである。使用する澱粉原料は、特に限定されず、あらゆる澱粉原料を用いることができる。
【0018】
本技術に用いる澱粉分解物の組成特性としては、グルコース重合度(以下、「DP」とも称する。)8~19の含有量が32%以上、かつ、DP20以上の含有量が30%以下である。本技術に用いる澱粉分解物は、オリゴ糖の高分子成分とデキストリンの低分子成分(DP8~19)を多く含有するため、一般的なオリゴ糖に比べ、低甘味、低浸透圧、耐吸湿性を示す。また、DP20以上の含有量が少ないため、飲食物等の風味を損なう恐れのあるデキストリン特有の風味が低減される。そのため、甘味を必要としない用途へ、好適に適用することができる。本技術に用いる澱粉分解物は、オリゴ糖の高分子成分とデキストリンの低分子成分(DP8~19)を多く含有するため、低分子のオリゴ糖では起こらない直鎖状糖分子同士の相互作用が生じて結晶化能が高いといった特徴を有する。
【0019】
更に、本技術に用いる澱粉分解物は、オリゴ糖の高分子成分とデキストリンの低分子成分(DP8~19)を多く含有するため、低分子のオリゴ糖では起こらない直鎖状糖分子同士の相互作用が生じる一方で、DP20以上の含有量が少ない、すなわち、DP20以上の直鎖状糖分子も少ないことにより、適度な結晶化能を有する。そのため、製造中や使用中の過度な結晶化が抑制されるため、結晶化を利用した用途に使用可能である。
【0020】
更に、本技術に用いる澱粉分解物は、水に溶けている、又は水に可溶な非結晶化澱粉分解物を効率的に製造することや、澱粉分解物を結晶化前に揚げ皮食品又は揚げ麺の原材料と共に均一に混合した後に結晶化させる使い方ができる。
【0021】
本技術に用いる澱粉分解物は、DP8~19の含量が32%以上であれば、その含量は特に限定されないが、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上である。DP8~19の含量が増加するほど、より結晶性が高く、より良い食感に改良することができるからである。
【0022】
また、本技術に用いる澱粉分解物は、DP20以上の含量が30%以下であれば、その含量は特に限定されないが、好ましくは28%以下、より好ましくは26%以下である。DP20以上の含量が少なくなるほど、水に溶解しやすく、生地中に分散しやすいため、作業性が良好となるからである。
【0023】
本技術に用いる澱粉分解物は、そのヨウ素呈色値が0.15以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。本技術において、澱粉分解物のヨウ素呈色値は、以下のヨウ素呈色値測定方法によって測定された値である。
【0024】
〔ヨウ素呈色値測定方法〕
5mLの水を分注した試験管に、試料(澱粉分解物)を固形分として25mg添加して混合し、ヨウ素呈色液(0.2質量/体積%ヨウ素、及び2質量/体積%ヨウ化カリウム)を100μL添加し、撹拌後、30℃で20分間放置後、分光光度計にて、光路長10mmのガラスセルを用いて、660nmの吸光度を測定し、試料を添加しない場合の吸光度測定値との差をヨウ素呈色値とした。
【0025】
ヨウ素による呈色反応は、DP16以上の直鎖状の糖鎖の存在を示すものであり、DP20以上の含量が多い澱粉分解物においてはDP16以上の直鎖状の糖鎖が多く存在するため呈色反応を示すが、DP20以上の含量が少ない澱粉分解物では通常呈色反応を示さないか、示したとしてもヨウ素呈色値は非常に低い値となる。しかしながら、本技術に用いる澱粉分解物は、DP20以上の含量が少ないにも関わらず、ヨウ素呈色の下限付近であるDP8~19が主成分で、また直鎖状成分が多いためにヨウ素による呈色反応を示す。即ち、DP20以上の含量が少ない澱粉分解物において、ヨウ素呈色値は、直鎖状成分の含有量の程度を示す指標となる。
【0026】
本技術において、ヨウ素呈色値が0.15以上の澱粉分解物を用いることで、低分子のオリゴ糖では起こらない直鎖状糖分子同士の相互作用がより生じやすくなり、結晶化能のより高い食感改良剤を提供することができる。
【0027】
<澱粉分解物の製造方法について>
本技術に用いる澱粉分解物の収得の方法については、本技術の効果を損なわない限り、特に限定されることはない。例えば、澱粉原料を、一般的な酸や酵素を用いた処理や、各種クロマトグラフィー、膜分離、エタノール沈殿等の所定操作を、適宜組み合わせて行うことによって澱粉分解物を得ることができる。
【0028】
本技術に用いる澱粉分解物を効率的に得る方法として、澱粉又は澱粉分解中間物に、少なくとも枝切り酵素と枝作り酵素を作用させる方法がある。枝切り酵素は、澱粉の分岐鎖の分解に関与する酵素であり、枝作り酵素は、澱粉の分岐鎖の合成に用いる酵素である。より詳しくは、「枝切り酵素(debranching enzyme)」とは、澱粉の分岐点であるα-1,6-グルコシド結合を加水分解する反応を触媒する酵素の総称である。「枝作り酵素(branching enzyme)」とは、α-1,4-グルコシド結合でつながった直鎖グルカンに作用して、α-1,6-グルコシド結合を作る働きを持った酵素の総称である。両者は、通常、一緒に用いられることはない。しかし、全く逆の作用を示す両酵素を組み合わせて用いることにより、本技術に用いる澱粉分解物を確実に製造することができる。この場合、両酵素の作用順序としては、同時又は枝作り酵素作用後に枝切り酵素を作用させる。
【0029】
前記枝切り酵素は、特に限定されない。例えば、プルラナーゼ(Pullulanase, pullulan 6-glucan hydrolase)、アミロ-1,6-グルコシダーゼ/4-αグルカノトランスフェラーゼ(amylo-1,6-glucosidase/4-α glucanotransferase)を挙げることができ、より好適な一例としては、イソアミラーゼ(Isoamylase, glycogen 6-glucanohydrolase)を用いることができる。
【0030】
また、前記枝作り酵素も特に限定されない。例えば、動物や細菌等から精製したもの、又は、馬鈴薯、イネ種実、トウモロコシ種実等の植物から精製したもの、市販された酵素製剤等を用いることができる。
【0031】
本技術に用いる澱粉分解物の製造方法では、前記酵素反応の後に、不純物を除去する工程を行うことも可能である。不純物の除去方法としては、特に限定されず、公知の方法を1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。例えば、ろ過、活性炭脱色、イオン精製等の方法を挙げることができる。
【0032】
更に、本技術に用いる澱粉分解物は、酵素反応後の澱粉分解物を含む液状品として用いることも可能であるが、真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等により脱水乾燥し、粉末化することも可能である。また、クロマトグラフィーや膜分離によって一部成分を分画して用いることも可能である。
【0033】
<本技術に用いる澱粉分解物を有する食感改良剤について>
本技術に係る食感改良剤は、前述した澱粉分解物を有するものである。本技術に用いる澱粉分解物は、例えば揚げ皮食品又は揚げ麺の原材料と共に用いることで、これらの食感を改良することができる。
【0034】
本技術に係る食感改良剤のメカニズムは明らかではないが、前述した澱粉分解物が、微細な結晶を形成し、揚げ麺皮食品又は揚げ麺の間隙に存在することで、揚げ皮食品又は揚げ麺の物性の改変が起こると推測される。
【0035】
本技術に係る食感改良剤は、有効成分として本技術に用いる澱粉分解物を含んでいれば、前述した澱粉分解物のみで構成されていてもよいし、本技術の効果を損なわない限り、他の成分を1種又は2種以上、自由に選択して含有させることもできる。他の成分としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、乳化剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される機能を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。前述した澱粉分解物は、食品に分類されるため、当該澱粉分解物以外の成分の選択次第では、本技術に係る食感改良剤を食品として取り扱うことも可能である。
【0036】
本技術に係る食感改良剤の揚げ皮食品又は揚げ麺への適用方法は、特に限定されない。例えば、本技術に係る食感改良剤を揚げ皮食品又は揚げ麺へそのまま配合する方法、本技術に係る食感改良剤を任意の溶媒に溶解又は分散させた状態で揚げ皮食品又は揚げ麺へ含有させる方法、本技術に係る食感改良剤を揚げ皮食品又は揚げ麺へそのまま配合した後、澱粉分解物の一部又は全部を揚げ皮食品又は揚げ麺の原材料と共に結晶化する方法等を挙げることができる。
【0037】
<揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類のミックスについて>
本技術では、上述した本技術に係る食感改良剤を含有する、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類のミックスも提供する。本技術に係るミックスは、本技術の効果を損なわない限り、他の成分や他の材料等を含有していてもよい。
【0038】
他の成分としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、乳化剤等の成分を用いることができる。更に、公知の又は将来的に見出される機能を有する成分を、適宜目的に応じて併用することも可能である。
他の材料としては、例えば、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、ホワイトソルガム粉等の穀粉類;デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、粉末水あめ、砂糖等の糖質;グルテン等の小麦由来たん白質、卵由来たん白質、大豆由来たん白質、乳由来たん白質等のたん白素材;粉末油脂、サラダ油、ショートニング等の油脂;粉末セルロース、結晶セルロース、イヌリン、難消化性澱粉等の食物繊維、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘剤;重曹等の膨張剤;食塩等の塩類;香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、山芋粉、長芋粉等が挙げられる。
【0039】
本技術に係るミックスを用いることで、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良された揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類が得られる。
【0040】
また、本技術に係るミックスを市場で流通させ、工業的に揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類を製造する場合に該ミックスを使用することで、製造工程の簡素化を図ることができる。或いは、市場で流通した本技術に係るミックスを家庭で使用することで、需要者が各材料を混ぜる手間を省くことができ、家庭でも簡便に、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良された揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類、並びに揚げ皮食品又は揚げ麺を得ることが可能となる。そのため、本技術に係るミックスは、工業的に用いられる場合であっても、家庭で用いられる場合であっても、非常に有用である。
【0041】
<揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類について>
本技術に係る食感改良剤は、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類に用いられる。また、本技術に係る揚げ麺皮食品又は揚げ麺用麺皮類のミックスを用いることにより、揚げ皮用食品又は揚げ麺用麺皮類を製造することができる。
揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類とは、揚げ皮食品を揚げる前や具材を包む前の皮、揚げ麺を揚げる前の麺線或いは麺帯等を含む概念である。
【0042】
<揚げ皮食品又は揚げ麺について>
揚げ皮食品又は揚げ麺は、本技術に係る食感改良剤、本技術に係るミックス、又は揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類を用いることにより製造することができる。
【0043】
揚げ皮食品とは、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉や、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、ワキシー米澱粉、小麦澱粉、ワキシー小麦澱粉、サゴ澱粉などの澱粉(地上系澱粉)、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、甘藷澱粉、ワキシー甘藷澱粉などのような地下茎又は根由来の澱粉(地下系澱粉)、これらを原料とした加工でん粉等の澱粉を主成分とする原料粉に、水やその他の材料を入れて混合し、シート状に成形したものを揚げ皮食品麺皮類とし、必要に応じて具材等を包み、油ちょうした食品を意味する。具体的には、バッター状の生地を焼成し、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類としたものとして、揚げ春巻、揚げクレープ等が挙げられる、また、練った生地を圧延し、揚げ皮食品又は揚げ麺用麺皮類としたものとして、揚げ餃子、揚げ焼売、揚げワンタン、揚げラビオリ等が挙げられる。他の材料としては、例えば、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、ホワイトソルガム粉等の穀粉類;デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、粉末水あめ、砂糖等の糖質;グルテン等の小麦由来たん白質、卵由来たん白質、大豆由来たん白質、乳由来たん白質等のたん白素材;粉末油脂、サラダ油、ショートニング等の油脂;粉末セルロース、結晶セルロース、イヌリン、難消化性澱粉等の食物繊維、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘剤;重曹等の膨張剤;食塩等の塩類;香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、山芋粉、長芋粉等が挙げられる。
【0044】
揚げ麺とは、油ちょう済の麺類を意味する。揚げ麺の典型的な例としては、例えば、皿うどん等を挙げることができるが、即席麺などに用いられるフライ麺等も含む。本技術において、揚げ麺は、油ちょうされていれば麺類の種類に特に制限はなく、例えば、中華麺、うどん、そば、そうめん、冷麺、パスタ類などの麺線を油ちょうすることができる。
揚げ麺は、例えば製麺用の粉体組成物に水を加えて混練し、揚げ麺用麺皮類とし、これを油ちょうすることによって製造される。製麺用の粉体組成物は、原料粉とその他の材料とを含有している。原料粉は、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉や、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、ワキシー米澱粉、小麦澱粉、ワキシー小麦澱粉、サゴ澱粉などの澱粉(地上系澱粉)、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、甘藷澱粉、ワキシー甘藷澱粉などのような地下茎又は根由来の澱粉(地下系澱粉)、これらを原料とした加工でん粉等の澱粉を主成分とし、原料粉の配合は、目的とする揚げ麺類の種類に応じて適宜調整される。他の材料としては、例えば、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、ホワイトソルガム粉等の穀粉類; デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、粉末水あめ、砂糖等の糖質;グルテン等の小麦由来たん白質、卵由来たん白質、大豆由来たん白質、乳由来たん白質等のたん白素材;粉末油脂、サラダ油、ショートニング等の油脂;粉末セルロース、結晶セルロース、イヌリン、難消化性澱粉等の食物繊維、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘剤;重曹等の膨張剤;食塩等の塩類;香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、山芋粉、長芋粉等が挙げられる。
【0045】
本技術において、揚げ皮食品がバッター状の生地を焼成したもの(特に、揚げ春巻)である場合は、本技術に係る食感改良剤を、バッター状の生地を焼成したものの原料粉に対して0.5~50質量%配合することが好ましく、4.5~40質量%配合することがより好ましく、9~35質量%配合することがさらに好ましい。
また、揚げ皮食品が練った生地を圧延したもの(特に、揚げ餃子)である場合は、本技術に係る食感改良剤を、練った生地を圧延したものの原料粉に対して0.3~20質量%配合することが好ましく、0.5~15質量%配合することがより好ましく、4.5~13質量%配合することがさらに好ましい。
更に、揚げ麺である場合は、本技術に係る食感改良剤を、揚げ麺の原料粉に対して0.5~20質量%配合することが好ましく、4.5~18質量%配合することがより好ましく、9~18質量%配合することがさらに好ましい。
【実施例0046】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0047】
<実験例:食感改良剤の製造>
〔試験方法〕
澱粉分解物からなる食感改良剤を製造し、製造した各食感改良剤の糖組成及びヨウ素呈色値を測定した。
【0048】
[枝作り酵素]
本実験例では、枝作り酵素の一例として、Eur. J. Biochem. 59, p615-625 (1975)の方法に則って、精製した馬鈴薯由来の酵素(以下、「馬鈴薯由来枝作り酵素」とする。)と、Branchzyme(ノボザイムズ株式会社製、以下、「細菌由来枝作り酵素」とする。)と、を用いた。
【0049】
枝作り酵素の活性測定は、以下の方法で行った。
基質溶液として、0.1M酢酸緩衝液(pH5.2)にアミロース(シグマ アルドリッチ社製、A0512)を0.1質量%溶解したアミロース溶液を用いた。50μLの基質液に50μLの酵素液を添加し、30℃で30分間反応させた後、ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液(0.39mMヨウ素-6mMヨウ化カリウム-3.8mM塩酸混合用液)を2mL加え反応を停止させた。ブランク溶液として、酵素液の代わりに水を添加したものを調製した。反応停止から15分後に660nmの吸光度を測定した。枝作り酵素の酵素活性量1単位は、上記の条件で試験する時、660nmの吸光度を1分間に1%低下させる酵素活性量とした。
【0050】
[DP8~19及びDP20以上の含有量]
以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析を行い、検出されたピーク面積比率に基づいて、DP8~19及びDP20以上の含有量を測定した。
・カラム:MCI CK02AS(三菱化学株式会社製)
・カラム温度:80℃
・溶離液:水
・流速:1.0mL/min
・検出器:示差屈折計
【0051】
[ヨウ素呈色値測定]
5mLの水を分注した試験管に、試料(澱粉分解物)を固形分として25mg添加して混合した。これに、ヨウ素呈色液(0.2質量/体積%ヨウ素、及び2質量/体積%ヨウ化カリウム)を100μL添加し、撹拌後、30℃で20分間放置後、分光光度計にて、光路長10mmのガラスセルを用いて、660nmの吸光度を測定し、試料を添加しない場合の吸光度測定値との差をヨウ素呈色値とした。
【0052】
〔各食感改良剤の製造方法〕
[食感改良剤1]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE16になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり1500ユニット添加し、65℃で24時間反応させた後、煮沸して反応を停止した。その後枝切り酵素(GODO-FIA、合同酒精株式会社製)を固形分(g)当たり1.5質量%添加し、50℃で24時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度55質量%に濃縮した。該濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤1)を得た。
【0053】
[食感改良剤2]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のタピオカ粉末スラリーに、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE15になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、馬鈴薯由来枝作り酵素を固形分(g)当たり2000ユニット添加し、35℃で30時間反応させた。その後pHを4.2に調整し、枝切り酵素(イソアミラーゼ、シグマアルドリッチ ジャパン株式会社製)を固形分(g)当たり1.0質量%添加し、45℃で30時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度60質量%に濃縮した。該濃縮液を、スプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤2)を得た。
【0054】
[食感改良剤3]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE8になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり600ユニット添加し、65℃で15時間反応させた。その後枝切り酵素(GODO-FIA、合同酒精株式会社製)を固形分(g)当たり0.5質量%添加し、50℃で40時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度45質量%に濃縮した。該濃縮液を、スプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤3)を得た。
【0055】
[食感改良剤4]
10%塩酸にてpH2に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、130℃の温度条件でDE13まで分解した。常圧に戻した後、10%水酸化ナトリウムを用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり400ユニット添加し、65℃で48時間反応させた。その後枝切り酵素(GODO-FIA、合同酒精株式会社製)を固形分(g)当たり1.0質量%添加し、50℃で60時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、スプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤4)を得た。
【0056】
[食感改良剤5]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE8になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり1000ユニット添加し、50℃で24時間反応させた。その後枝切り酵素(GODO-FIA、合同酒精株式会社製)を固形分(g)当たり1.5質量%添加し、50℃で24時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。該濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤5)を得た。
【0057】
[食感改良剤6]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE9になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり800ユニット添加し、65℃で30時間反応させた。その後、枝切り酵素(GODO-FIA、合同酒精株式会社製)を固形分(g)当たり1.0質量%添加し、50℃で30時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。該濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤6)を得た。
【0058】
[食感改良剤7]
10質量%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE17になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。該濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤7)を得た。
【0059】
[食感改良剤8]
10質量%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE10になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、枝切り酵素(GODO-FIA、合同酒精株式会社製)を固形分(g)当たり0.3質量%添加し、50℃で24時間反応させた。その後αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、80℃に昇温後、継時的にDEを測定し、DE18になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。該濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤8)を得た。
【0060】
[食感改良剤9]
10質量%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.3質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液を95℃で保温し、継時的にDEを測定し、DE30になった時点で、10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。該濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し澱粉分解物(食感改良剤9)を得た。
【0061】
[食感改良剤10]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液のpHを5.5に調整した後、β-アミラーゼ(ナガセケムテックス株式会社製)を固形分(g)当たり0.2%添加し、60℃で一定時間反応させた後に10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度75質量%に濃縮し澱粉分解物(食感改良剤10)を得た。
【0062】
[食感改良剤11]
10%水酸化カルシウムにてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化した。この液化液のpHを5.5に調整した後、β-アミラーゼ(ナガセケムテックス株式会社製)を固形分(g)当たり0.2%、クライスターゼPLF(天野エンザイム株式会社製)を固形分(g)当たり0.1%添加し、60℃で一定時間反応させた後に10%塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度75質量%に濃縮し澱粉分解物(食感改良剤11)を得た。
【0063】
〔測定結果〕
得られた食感改良剤1~11について、DP8~19及びDP20以上の含有量、並びにヨウ素呈色値を、前述した方法で測定した測定結果を、下記表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
<実施例1:揚げ春巻の製造>
〔揚げ春巻の調製方法〕
下記表2~4の配合通り、水と食塩、各食感改良剤を混合して完全に溶解させたあと、小麦粉を投入し分散液を調製した。加水量に関しては試験例の分散液の粘度がほぼ同等になるように調整した。ドラム型焼成機を用いて上記分散液を厚さ0.50~0.55mmとなるよう焼成し、190mm×190mmに切断して春巻皮を製造した。春巻皮に対しあらかじめ調理しておいた具材を乗せ、揚げ用春巻を製造した。製造した春巻は、そのままのものと170~180℃で5分油ちょうしたものを用意し、-40℃、60分で急速冷凍後、-20℃で14日間冷凍保存した。そのまま冷凍した春巻は、170~180℃で5分油ちょうし、油ちょう直後と25℃で3時間放置後に、食感を評価した。油ちょう後に冷凍した春巻は、500Wの電子レンジで30秒間再加熱したものと5時間自然解凍したものについて、食感を評価した。
【0066】
〔生地評価基準〕
調製した各生地を専門パネル10名にて評価した。評価は、下記評価(5段階)について行い、専門パネル10名の平均点を評価点とした。
5:ドラム型焼成機から焼成生地を剥がす際に破けることがなく、具材を包む際皮を非常に強く引っ張っても破けにくい
4:ドラム型焼成機から焼成生地を剥がす際に破けることがほとんどなく、具材を包む際皮を強く引っ張っても破けにくい
3:ドラム型焼成機から焼成生地を剥がす際に破けることが少なく、具材を包むことができる
2:ドラム型焼成機から焼成生地を剥がす際に破けやすく、具材を包む際も破けやすい
1:ドラム型焼成機から焼成生地を剥がす際に破け、具材を包むことができない
【0067】
〔春巻皮部の評価基準〕
調製した各春巻を専門パネル10名にて試食した。試食時の官能評価は、下記評価(5段階)について行い、専門パネル10名の平均点を評価点とした。
5:皮部は、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できる
4:皮部は、硬さ、サクミを有し、好ましいパリパリ感がある
3:皮部は、硬さ、サクミがややあり、パリパリ感をやや感じる
2:皮部は、ヒキのある食感で、パリパリ感は感じられない
1:皮部は、ボソボソしたような食感であり、好ましくない
【0068】
〔食感改良剤の違いによる評価〕
各食感改良剤を用いた場合の評価結果を、下記表2及び3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
〔本技術に用いる食感改良剤の量の違いによる評価〕
本技術に用いる食感改良剤の量を変化させた場合の評価結果を、下記表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
〔考察〕
冷凍後再油ちょうした場合において、試験例1~6は参考例1、試験例7~11と比較して、油ちょう直後及び油ちょう3時間後のいずれも、皮部が、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できるものとなっていた。また、油ちょう後冷凍して評価した場合においても、試験例1~6は参考例1、試験例7~11と比較して、電子レンジ再加熱後及び自然解凍5時間後のいずれも、春巻皮部が、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できるものとなっていた。一方で、食感改良剤9~11を用いた試験例9~11は、食感改良剤9~11に含まれるDP1~7の含有量が多いため、よりヒキのある食感となった。したがって、グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有する食感改良剤を、揚げ皮食品の原材料と共に用いることで、油ちょう直後、油ちょう3時間後、油ちょう後に冷凍し、電子レンジで再加熱した後、及び油ちょう後に冷凍し、自然解凍した後の全てにおいて、皮部が、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できる揚げ春巻を提供できることが示唆された。
【0074】
また、試験例12~17は、油ちょう直後、油ちょう3時間後、油ちょう後に冷凍し、電子レンジで再加熱した後、及び油ちょう後に冷凍し、自然解凍した後の全てにおいて、食感が良好であり、且つ、生地評価が高かった。一方、食感改良剤6を揚げ春巻の原料粉に対して70質量%添加した場合、生地が破れ、具材を包むことができなかった。したがって、揚げ皮食品が揚げ春巻である場合は、本技術に係る食感改良剤を、揚げ春巻の原料粉に対して0.5~50質量%配合することが好ましいことが示唆された。
【0075】
<実施例2:揚げ麺の製造>
〔揚げ麺の調製方法〕
下記表5及び6の配合通り、小麦粉を投入したミキサーに、水と食塩、かんすい、糖類、各食感改良剤を混合して完全に溶解させた水溶液を投入し、攪拌後に生地を得た。加水量に関しては糖類の含水率に応じて適宜調整した。ロール式製麺機を用い上記生地を用い、複合、圧延後、切り丸30番、厚さ1.10mmの麺線を得た。得られた麺線は、生状態のまま170~180℃で4分油ちょうしたものと、麺線を3分間蒸した後、170~180℃で4分油ちょうしたものを製造した。各製造条件で得られた揚げ麺を2週間常温保管後に評価した。
【0076】
〔製麺性基準〕
調製した各麺を専門パネル10名にて評価した。評価は、下記評価(5段階)について行い、専門パネル10名の平均点を評価点とした。
5:製麺時に剥離や破けがなく、非常に良好
4:製麺時に剥離や破けがほとんどなく、良好
3:製麺時に剥離や破けが少しあるが、やや良好
2:製麺時に剥離や破けが多く、不良
1:製麺できない
【0077】
〔揚げ麺の評価基準〕
調製した各揚げ麺を専門パネル10名にて試食した。試食時の官能評価は、下記評価(5段階)について行い、専門パネル10名の平均点を評価点とした。
5:適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できる
4:硬さ、サクミを有し、好ましいパリパリ感がある
3:やや硬さ、サクミがあり、パリパリ感をやや感じる
2:粉っぽい食感で、パリパリ感は感じられない
1:ボソボソしたような食感であり、好ましくない
【0078】
〔食感改良剤の違いによる評価〕
各食感改良剤を用いた場合の評価結果を、下記表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
〔本技術に用いる食感改良剤の量の違いによる評価〕
本技術に用いる食感改良剤の量を変化させた場合の評価結果を、下記表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
〔考察〕
試験例18、19は参考例2、試験例20~24と比較して、蒸し後油ちょうした場合及び生めん油ちょうした場合のいずれも、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できるものとなっていた。一方で、食感改良剤9~11を用いた試験例22~24は、食感改良剤9~11に含まれるDP1~7の含有量が多いため、よりヒキのある食感となった。したがって、グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有する食感改良剤を、揚げ麺の原材料と共に用いることで、蒸し後油ちょうした場合及び生めん油ちょうした場合のいずれにおいても、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できる揚げ麺を提供できることが示唆された。
【0083】
また、試験例25~27は、蒸し後油ちょうした場合及び生めん油ちょうした場合のいずれも、食感が良好であり、且つ、製麺性評価が高かった。一方、食感改良剤6を揚げ麺の原料粉に対して30質量%添加した場合、生地がまとまらず、製麺不可であった。したがって、揚げ麺である場合は、本技術に係る食感改良剤を、揚げ麺の原料粉に対して0.5~20質量%配合することが好ましいことが示唆された。
【0084】
<実施例3:揚げ餃子の製造>
〔揚げ餃子の調製方法〕
下記表7及び8の配合通り、小麦粉を投入したミキサーに、水と食塩、糖類、各食感改良剤を混合して完全に溶解させた水溶液を投入し、攪拌後に生地を得た。加水量に関しては糖類の含水率に応じて適宜調整した。ロール式製麺機を用い上記生地を用い、圧延後、直径90mm、厚さ0.60mmの餃子皮を製造した。餃子皮に対し具材を包み、包餡生餃子を製造した。製造した生餃子は、そのままのものと10分間蒸したものを用意し、-40℃、60分で急速冷凍後、-20℃で14日間冷凍保存した。各冷凍餃子は、170~180℃で4分油ちょうし、油ちょう直後と25℃で4時間放置後、ホットケース4時間保管後に食感を評価した。
【0085】
〔製皮性基準〕
調製した各餃子皮を専門パネル10名にて評価した。評価は、下記評価(5段階)について行い、専門パネル10名の平均点を評価点とした。
5:製皮時に剥離や破けがなく、非常に良好
4:製皮時に剥離や破けがほとんどなく、良好
3:製皮時に剥離や破けが少しあるが、やや良好
2:製皮時に剥離や破けが多く、不良
1:製皮できない
【0086】
〔揚げ餃子の評価基準〕
調製した各揚げ餃子を専門パネル10名にて試食した。試食時の官能評価は、下記評価(5段階)について行い、専門パネル10名の平均点を評価点とした。
5:皮部は、適度な硬さ、良好なサクミを有し、パリパリ感を堪能できる
4:皮部は、硬さ、サクミを有し、好ましいパリパリ感がある
3:皮部は、硬さ、サクミがややあり、パリパリ感をやや感じる
2:皮部は、ヒキのある食感で、パリパリ感は感じられない
1:皮部は、ボソボソしたような食感であり、好ましくない
【0087】
〔食感改良剤の違いによる評価〕
各食感改良剤を用いた場合の評価結果を、下記表7に示す。
【0088】
【表7】
【0089】
〔本技術に用いる食感改良剤の量の違いによる評価〕
本技術に用いる食感改良剤の量を変化させた場合の評価結果を、下記表8に示す。
【0090】
【表8】
【0091】
〔考察〕
試験例28は参考例3、試験例29~31と比較して、油ちょう直後、油ちょう4時間後、油ちょう後ホットケース4時間保管後のいずれも、適度な硬さ、良好なサクミが有り、パリパリ感を堪能できるものとなっていた。更には、歯切れや崩壊感もあり、総じて良好であった。一方で、食感改良剤9を用いた試験例31は、食感改良剤9に含まれるDP1~7の含有量が多いため、よりヒキのある食感となった。したがって、グルコース重合度(DP)8~19の含有量が32%以上、グルコース重合度(DP)20以上の含有量が30%以下、である澱粉分解物を有する食感改良剤を、揚げ皮食品の原材料と共に用いることで、油ちょう直後、油ちょう4時間後、及び油ちょう後ホットケース4時間保管後の全てにおいて、適度な硬さ、良好な歯切れと崩壊感を堪能できる揚げ餃子を提供できることが示唆された。
【0092】
また、試験例32~35は、油ちょう直後、油ちょう4時間後、油ちょう後ホットケース4時間保管後の全てにおいて、食感が良好であり、且つ、製皮性評価が高かった。一方で、食感改良剤6を揚げ餃子の原料粉に対して30質量%添加した場合、生地がまとまらず、製皮不可であった。したがって、揚げ皮食品が揚げ餃子である場合は、本技術に係る食感改良剤を、揚げ餃子の原料粉に対して0.3~20質量%配合することが好ましいことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本技術によれば、適度な硬さやサクミ、パリパリ感に改良された揚げ皮食品又は揚げ麺を提供することができる。そのため、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケットの惣菜コーナー等において、良好な食感の揚げ皮食品又は揚げ麺を提供することができる。また、弁当のおかず等に用いても良好な食感を長時間維持できる。