(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061412
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】液状組成物の製造方法及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20220411BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220411BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20220411BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20220411BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220411BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20220411BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20220411BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20220411BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K3/36
C08K3/28
C08K5/07
C08K5/10
C08K5/20
C08K5/54
C08L27/12
B32B27/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169404
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA14A
4F100AA20A
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AH06A
4F100AK18A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100EH46A
4F100EJ42A
4F100GB32
4F100GB41
4F100GB43
4F100JA02
4F100JA04A
4F100JG05
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002AC082
4J002BC042
4J002BD122
4J002BD151
4J002BE001
4J002CF002
4J002CH072
4J002CM042
4J002DE027
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002EE037
4J002EL067
4J002EU027
4J002EX018
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX078
4J002EX088
4J002FD016
4J002FD348
4J002GC00
4J002GD00
4J002GF00
4J002GG00
4J002GH00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、他の樹脂又は無機フィラーとを含み、液物性に優れた液状組成物の製造方法の提供。並びに、テトラフルオロエチレン系ポリマーと、他の樹脂又は無機フィラーの物性を高度に具備した積層体の製造方法の提供。
【解決手段】
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子、シランカップリング剤及び液状分散媒を含む分散液を、シランカップリング剤が加水分解する条件に供し、さらに、他の樹脂及び無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の他の材料を含む添加物と混合する液状組成物の製造方法。上記液状組成物を基材層の表面に塗布し加熱して、基材層とポリマー層とを有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子、シランカップリング剤及び液状分散媒を含む分散液を、前記シランカップリング剤が加水分解する条件に供してから、他の樹脂及び無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の他の材料を含む添加物と混合して液状組成物を得る、液状組成物の製造方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、溶融温度が200~325℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記粒子が、さらに、無機物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記粒子が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーをコアとし、前記コアの表面に、前記無機物を有する複合粒子である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記複合粒子における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのコア及び前記無機物が、それぞれ粒子状であり、前記コアの平均粒子径が前記無機物の平均粒子径より大きい、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記シランカップリング剤が、トリアルコキシシリル基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基又はイソシアネート基とを有する化合物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記液状分散媒が、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性液状分散媒である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記分散液における前記粒子の含有量が、20~60質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記分散液における前記粒子の含有量に対する、前記シランカップリング剤の含有量の質量での比が、0.01~0.1である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記他の樹脂が芳香族性樹脂又はフッ素樹脂であり、前記無機フィラーがシリカ又は窒化ホウ素を含む無機フィラーである、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対する、前記他の材料の含有量の質量での比が、0.01以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記添加物が液状である、請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記液状組成物の成分分散層率が60%以上である、請求項1~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法で得た液状組成物を、基材層の表面に塗布し加熱して、ポリマー層を形成し、前記基材層と前記ポリマー層とを、この順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子と、他の樹脂又は無機フィラーとを含む液状組成物の製造方法、並びに、テトラフルオロエチレン系ポリマーと、他の樹脂又は無機フィラーとの物性を高度に具備した積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れており、プリント基板等の種々の産業用途に利用されている。上記物性を基材の表面に付与するために用いるコーティング剤として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液が知られている。
一方、テトラフルオロエチレン系ポリマーは、表面張力が低いため、その粒子を含む分散液は、分散安定性が低い。
特許文献1には、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の分散安定性を向上させるために、所定の分散剤を含む分散液が記載されている。特許文献2には、ポリテトラフルオロエチレンの粒子の表面にシリカを有する複合粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-225710号公報
【特許文献2】国際公開2018/212279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む分散液の分散安定性は、未だ充分ではない。また、かかる分散液から、より高機能な成形物を得るべく、さらに他の機能性材料を分散液にブレンドする場合、ブレンド性自体が低いだけでなく、成分の凝集や変質による発泡、増粘等により、充分な成形物が得られにくい点を、本発明者らは知見している。
本発明者らは、鋭意検討し、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子とシランカップリング剤とを含む分散液において、シランカップリング剤を加水分解せしめてから、他の機能性材料と混合すると液物性に優れた液状組成物が直接、得られる点を知見した。
【0005】
さらに、かかる液状組成物からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーと他の機能性材料とのそれぞれの物性を高度に具備した緻密な成形物を形成できる点、特に、低誘電正接性及び低線膨張性に優れた成形物が得られる点を知見した。
本発明の目的は、液物性に優れる液状組成物の提供、及びかかる液状組成物から得られる、物性に優れた積層体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子、シランカップリング剤及び液状分散媒を含む分散液を、前記シランカップリング剤が加水分解する条件に供してから、他の樹脂及び無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の他の材料を含む添加物と混合して液状組成物を得る、液状組成物の製造方法。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、溶融温度が200~325℃のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]の製造方法。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記粒子が、さらに、無機物を含む、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記粒子が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーをコアとし、前記コアの表面に、前記無機物を有する複合粒子である、[4]の製造方法。
[6] 前記複合粒子における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのコア及び前記無機物が、それぞれ粒子状であり、前記コアの平均粒子径が前記無機物の平均粒子径より大きい、[5]の製造方法。
[7] 前記シランカップリング剤が、トリアルコキシシリル基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基又はイソシアネート基とを有する化合物である、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8]前記液状分散媒が、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性液状分散媒である、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 前記分散液における前記粒子の含有量が、20~60質量%である、[1]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] 前記分散液における前記粒子の含有量に対する、前記シランカップリング剤の含有量の質量での比が、0.01~0.1である、[1]~[9]のいずれかの製造方法。
[11] 前記他の樹脂が芳香族性樹脂又はフッ素樹脂であり、前記無機フィラーがシリカ又は窒化ホウ素を含む無機フィラーである、[1]~[10]のいずれかの製造方法。
[12] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対する、前記他の材料の含有量の質量での比が、0.01以上である、[1]~[11]のいずれかの製造方法。
[13] 前記添加物が液状である、[1]~[12]のいずれかの製造方法。
[14] 前記液状組成物の成分分散層率が60%以上である、[1]~[13]のいずれかの製造方法。
[15] [1]~[14]のいずれかの製造方法で得た液状組成物を、基材層の表面に塗布し加熱して、ポリマー層を形成し、前記基材層と前記ポリマー層とを、この順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子と、他の樹脂又は無機フィラーとを含み、液物性に優れる液状組成物を容易に製造できる。また、かかる液状組成物からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーと他の樹脂又は無機フィラーとのそれぞれの物性を高度に具備した緻密な積層体(特に、低誘電正接性及び低線膨張係数性に優れた積層体)等の成形物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「ポリマーのガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「ポリマーの溶融温度(融点)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「D50」は、粒子、無機物又はフィラーの平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法によって求められる対象物の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって対象物の粒度分布を測定し、対象物の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「D90」は、粒子、無機物又はフィラーの累積体積粒径であり、「D50」と同様にして求められる対象物の体積基準累積90%径である。
「比表面積」は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、室温下(25℃)で回転数が30rpmの条件下で分散液又は液状組成物について測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「モノマーに基づく単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
「成分分散層率」とは、18mLの液状組成物を内容積30mLのスクリュー管に入れ、25℃にて14日静置した際、静置前後の、スクリュー管中の液状組成物全体の高さと分散層の高さとから、以下の式により算出される値である。なお、静置後に成分分散層が確認されず、状態に変化がない場合には、液状組成物全体の高さに変化がないとして、成分分散層率は100%とする。成分分散層率が大きいほど分散安定性に優れる。
成分分散層率(%)=(分散層の高さ)/(液状組成物全体の高さ)×100
【0009】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)を含む粒子(以下、「F粒子」とも記す。)、シランカップリング剤及び液状分散媒を含む分散液を、シランカップリング剤が加水分解する条件に供してから、他の樹脂及び無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の他の材料を含む添加物と混合して液状組成物(以下、「本組成物」とも記す。)を得る方法である。
本法によれば、F粒子と、他の樹脂又は無機フィラーとを含む、液物性(分散安定性、均質性、塗工性等)に優れた本組成物を容易かつ直接に製造できる。また、本組成物からは、Fポリマーと他の樹脂又は無機フィラーのそれぞれの物性を高度に具備した緻密な積層体等の成形物を製造できる。かかる成形物は、特に、低誘電正接性及び低線膨張係数性に優れる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0010】
本法においては、F粒子を含む分散液中で、シランカップリング剤を加水分解せしめてから、分散液と他の材料(他の樹脂又は無機フィラー)とを混合する。両親媒性とも見做せるシランカップリング剤は、分散液中でF粒子の表面と相互作用しやすい状態にある。
かかる状態で、シランカップリング剤を加水分解せしめると、F粒子の周囲でその縮合物が形成され、F粒子の表面がそれで高度に表面処理されやすくなると考えられる。この表面処理されたF粒子は、分散安定性、応力耐性(特に、剪断耐性)及び他の材料との親和性が一層高まり、また、F粒子の粉体動摩擦角が上昇する。これらの要因により、分散液の液物性を向上させていると考えられる。
その結果、分散液と他の材料とを直接混合しても本組成物が得られ、それからテトラフルオロエチレン系ポリマーの物性と他の材料の物性とを高度に具備した成形物を形成できたと考えられる。
【0011】
本法における分散液は、Fポリマーを含むF粒子、シランカップリング剤及び液状分散媒を含む。
本法におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を含むポリマーである。
Fポリマーのフッ素含有量は、70~76質量%であるのが好ましい。かかるフッ素含有量が高く、表面張力が著しく低いFポリマーにおいても、本法によれば、上述した作用機構により、液物性に優れた液状組成物が得られる。
【0012】
Fポリマーは、熱溶融性であってよく、非熱溶融性であってもよい。熱溶融性Fポリマーの溶融温度は、200℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。かかる場合、本組成物が液物性に優れやすく、本組成物から緻密な成形物を形成しやすい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
【0013】
Fポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーが挙げられ、PFA又はFEPが好ましく、PFAがより好ましい。前記ポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3又はCF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0014】
PTFEは、数平均分子量が1~20万の低分子量PTFEであってもよい。なお、PTFEの数平均分子量は、下式(1)に基づいて算出される値である。
Mn = 2.1×1010×ΔHc-5.16 ・・・ (1)
式(1)中、Mnは、PTFEの数平均分子量を、ΔHcは、示差走査熱量分析法により測定されるPTFEの結晶化熱量(cal/g)を、それぞれ示す。PTFEは、TFE単位以外の単位を微量含んでいてもよい。
【0015】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましい。かかるFポリマーは、接着性等の物性に優れ、さらに分散安定性に優れた液状組成物が得られる。
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマー単位に含まれていてもよく、ポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として前記極性基を有するFポリマーや、コロナ処理、プラズマ処理、電離線処理又は放射線処理されたFポリマーが挙げられる。
酸素含有極性基は、水酸基含有基又はカルボニル基含有基が好ましく、カルボニル基含有基が特に好ましい。
【0016】
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CF2CH2OH又は-C(CF3)2OHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH2)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)又はカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
【0017】
Fポリマーとしては、PAVE単位を含み、全単位に対してPAVE単位を1.5~5モル%含む、溶融温度が280~320℃のポリマーが好ましく、PAVE単位を含み、酸素含有極性基を有するポリマー(1)、又はPAVE単位を含み、全モノマー単位に対してPAVE単位を2~5モル%含む、酸素含有極性基を有さないポリマー(2)がより好ましい。これらのポリマーは、成形物中において微小球晶を形成するため、成形物の特性が向上しやすい。
【0018】
ポリマー(1)は、TFE単位と、PAVE単位と、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するモノマーとを含むポリマーが好ましい。ポリマー(1)は、全単位に対して、TFE単位を90~98モル%、PAVE単位を1.5~9.97モル%、及び上記モノマーに基づく単位を0.01~3モル%、それぞれ含むのが好ましい。上記モノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸;以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。
ポリマー(1)の具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
【0019】
ポリマー(2)は、TFE単位及びPAVE単位のみからなり、全モノマー単位に対して、TFE単位を95~98モル%、PAVE単位を2~5モル%含有するのが好ましい。
ポリマー(2)におけるPAVE単位の含有量は、全モノマー単位に対して、2.1モル%以上が好ましく、2.2モル%以上がより好ましい。
【0020】
なお、ポリマー(2)が酸素含有極性基を有さないとは、ポリマー主鎖を構成する炭素原子数の1×106個あたり、ポリマーが有する酸素含有極性基の数が、500個未満であることを意味する。酸素含有極性基の数は、100個以下が好ましく、50個未満がより好ましい。酸素含有極性基の数の下限は、通常、0個である。
ポリマー(2)は、ポリマー鎖の末端基として酸素原子を含む原子団を生じない重合開始剤や連鎖移動剤等を使用して製造されてもよく、酸素原子を含む原子団を有するFポリマーをフッ素化処理して製造されてもよい。フッ素化処理の方法としては、フッ素ガスを使用する方法(特開2019-194314号公報等を参照)が挙げられる。
【0021】
本法におけるF粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーのみからなる粒子であってもよく、Fポリマーと、Fポリマーとは異なる他の樹脂又は無機フィラーとを含む粒子であってもよい。なお、F粒子(特に、前者のF粒子)には、Fポリマーの製造において使用された成分(重合に際して使用した、界面活性剤、重合開始剤の残渣等)は含まれていてもよい。
F粒子におけるFポリマーの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。Fポリマーの含有量の上限は、100質量%である。
【0022】
F粒子のD50は、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましく、3μm以下が特に好ましい。F粒子のD50は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、F粒子のD90は、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。この場合、本組成物が液物性により優れやすい。
F粒子の比表面積は、1~8m2/gが好ましく、1~3m2/gがより好ましい。
【0023】
Fポリマーとは異なる他の樹脂としては、芳香族ポリイミド、芳香族マレイミド、スチレンエラストマーのような芳香族エラストマー、芳香族ポリアミック酸が挙げられる。
無機物としては、酸化物、窒化物、金属単体、合金及びカーボンが好ましく、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、及びメタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)がより好ましく、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛から選択される元素の少なくとも1種を含有する無機酸化物がさらに好ましく、シリカ及び窒化ホウ素が特に好ましく、シリカが最も好ましい。また、無機物は、セラミックスであってもよい。無機物は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の無機物を混合する場合、2種のシリカを用いてもよく、シリカと金属酸化物とを用いてもよい。
【0024】
無機物は、粒子状であるのが好ましく、無機物の形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機物の具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、平板状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。無機物は中空状であってもよく、中空状の無機物と、非中空状の無機物とを含んでもよい。無機物の形状としては、球状又は鱗片状が好ましい。
無機物の表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよく、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランで表面処理されているのがより好ましい。
【0025】
F粒子は、無機物を含むのが好ましく、シリカを含むのがより好ましい。かかる場合、上述した作用機構が亢進して、得られる液状組成物の物性が一層向上しやすい。
無機物を含むF粒子(以下、「複合粒子」とも記す。)は、粒子状のFポリマーをコアとし、Fポリマーのコアの表面に粒子状の無機物が付着している態様(以下、「態様I」とも記す。)、及び、粒子状の無機物をコアとし、無機物の表面に粒子状又は非粒子状のFポリマーが付着している態様が好ましく、態様Iがより好ましい。態様Iの場合、Fポリマーの表面が無機物で覆われているとも言え、F粒子が変質し難く、また、分散安定性に優れやすい。ここで、「コア」とは、複合粒子の粒子形状を形成するのに必要な核(中心部)を意味し、複合粒子の組成における主成分を意味するのではない。
【0026】
コアの表面に付着する無機物は、コアの表面の一部にのみ付着していてもよく、その大部分乃至全面に亘って付着していてもよい。前者の場合、無機物は埃状にコアの表面にまとわり付くような状態、換言すれば、コアの表面の多くの部分を露出させた状態となっているとも言える。後者の場合、無機物はコアの表面に満遍なくまぶされた態様であるか、又はコアの表面を被覆した状態となっているとも言え、かかる複合粒子は、コアとコアを被覆するシェルとからなるコア・シェル構造を有するとも言える。
【0027】
態様Iの場合、Fポリマーのコアは、Fポリマーの単一粒子で構成されているか、Fポリマーの粒子の集合物で構成されているのが好ましい。態様Iの複合粒子は、FポリマーのコアのD50を無機物のD50よりも大きく設定し、Fポリマーの量を無機物よりも多く設定するのが好ましい。
態様Iの場合、FポリマーのコアのD50は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。FポリマーのコアのD50は、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
態様Iの場合、無機物のD50は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましい。無機物のD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
【0028】
態様Iの複合粒子において、FポリマーのコアのD50は、無機物のD50より大きいのが好ましい。FポリマーのコアのD50は、無機物のD50を基準として、2~1000が好ましく、5~100がより好ましい。
態様Iの複合粒子のD50は、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。態様Iの複合粒子のD50は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
態様Iの複合粒子における、無機物の量は、Fポリマー100質量部に対して1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。無機物の量は、60質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
また、無機物は、Fポリマーのコアに埋入していてもよい。
【0029】
複合粒子は、Fポリマーの粒子と無機物とを、Fポリマーの溶融温度以上の温度かつ浮遊状態にて衝突させる方法、Fポリマーの粒子と無機物とを、押圧又は剪断状態にて衝突させる方法、Fポリマーの粒子と無機物とを含有する液状組成物を剪断処理して、Fポリマーの粒子を凝固させる方法により製造するのが好ましい。
【0030】
本法におけるシランカップリング剤は、加水分解性シリル基と有機基とを有する化合物であり、トリアルコキシシリル基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基又はイソシアネート基とを有する化合物であるのが好ましく、トリアルコキシシリル基と、アミノ基とを有する化合物であるのがより好ましい。
シランカップリング剤の熱分解温度は、200℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。熱分解温度の上限は、400℃が好ましい。この場合、本組成物から形成される成形物が耐熱性に優れやすい。なお、シランカップリング剤の熱分解温度とは、窒素雰囲気下でシランカップリング剤を50℃から400℃まで5℃/分で昇温した際に質量が昇温開始時の50%となる温度である。
【0031】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシキシプロピルトリメトキシシラン、n-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0032】
本法における液状分散媒は、Fポリマーと反応しない液体化合物である。液状分散媒の沸点は、75℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、液状分散媒の沸点は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
液状分散媒は、非プロトン性液状分散媒が好ましく、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性液状分散媒がより好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン又はシクロペンタノンがさらに好ましい。
液状分散媒は、1種でも2種以上の混合物でもよい。液状分散媒は、本組成物から得られる成形物の成分分布の均一性の低下や空隙の抑制の観点から、脱気されているのが好ましい。
【0033】
分散液は、さらにオルガノシラザンを含むのが好ましい。この場合、本組成物の液物性が向上しやすい。オルガノシラザンとしては、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザンが好ましい。
なお、オルガノシラザンは、分散液をシランカップリング剤が加水分解する条件に供してから、分散液と混合してもよい。
分散液は、シランカップリング剤の反応を制御する観点から、さらに、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン、p-メトキシフェノール等の安定剤を含んでいてもよい。
【0034】
分散液におけるF粒子の含有量は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。上記含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
上述した作用機構により、本法によれば、F粒子の含有量が高い分散液からも、液物性に優れた本組成物が直接得られやすい。
分散液におけるシランカップリング剤の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上記含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
分散液におけるF粒子の含有量に対する、シランカップリング剤の含有量の質量での比は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。上記比は、0.3以下が好ましく、0.1以下がさらに好ましい。
シランカップリング剤の含有量、又は上記比(質量比)が、かかる範囲にある場合、上述した作用機構が一層亢進して、液物性に優れた本組成物が直接得られやすい。
分散液における液状分散媒の含有量は、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0036】
分散液の25℃における粘度は、10~10000mPa・sが好ましく、50~5000mPa・sがより好ましい。分散液のチキソ比は、1~2.5が好ましく、1.2~2がより好ましい。この場合、得られる本組成物の物性が更に向上し易い。
分散液は、F粒子と、シランカップリング剤と、液状分散媒とを混合して得られる。分散液は、F粒子及び液状分散媒の混合物と、シランカップリング剤とを混合して得るのが好ましい。
【0037】
本法における添加物は、他の樹脂及び無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の他の材料を含む。添加物に含まれる他の材料は、他の樹脂のみであってもよく、無機フィラーのみであってもよく、他の樹脂及び無機フィラーの両方であってもよい。
添加物は、液状であっても粉状であってもよく、液状であるのが好ましい。
添加物が液状の場合、他の樹脂又は無機フィラーは、添加物中に溶解していてもよく、粒子状に分散していてもよい。粒子状に分散している場合、そのD50は、F粒子のD50より小さいのが好ましい。この場合、上述した作用機構が亢進して、得られる本組成物の物性が一層向上しやすい。
また、添加物が液状である場合、添加物は、液状分散媒を含むのが好ましい。液状分散媒としては、上述の分散液における液状分散媒と同様の液状分散媒が挙げられる。
添加物が粉状の場合、そのD50は、F粒子のD50より小さいのが好ましい。この場合、上述した作用機構が亢進して、得られる本組成物の物性が一層向上しやすい。
【0038】
本法における他の樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。他の樹脂は、芳香族性樹脂及びフッ素樹脂であるのが好ましい。
他の樹脂としては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族マレイミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド、スチレンエラストマーのような芳香族エラストマー、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。分散液はブレンド性に優れるため、かかる他の樹脂を含む場合にも、本組成物が液物性に優れやすい。
【0039】
他の樹脂は、芳香族性樹脂又はフッ素樹脂であるのが好ましい。
芳香族性樹脂は、芳香族ポリイミド、芳香族マレイミド、ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリアミック酸、液晶性芳香族ポリエステル又は芳香族エラストマー(スチレンエラストマー等)であるのが好ましい。
フッ素樹脂は、Fポリマーであってもよく、Fポリマー以外のフッ素樹脂であってもよい。フッ素樹脂としては、Fポリマーが好ましい。かかる場合、本組成物から、電気特性に優れた成形物を形成しやすい。
【0040】
無機フィラーは、酸化物、窒化物、金属単体、合金及びカーボンを含む無機フィラーが好ましく、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、及びメタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)を含む無機フィラーがより好ましく、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛から選択される元素の少なくとも1種を含有する無機酸化物を含む無機フィラーがさらに好ましく、シリカ及び窒化ホウ素を含む無機フィラーが特に好ましく、シリカを含む無機フィラーが最も好ましい。また、無機フィラーは、セラミックスであってもよい。無機物は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の無機フィラーを混合する場合、2種のシリカを含む無機フィラー用いてもよく、シリカと金属酸化物とを含む無機フィラーを用いてもよい。
【0041】
無機フィラーは、粒子状であるのが好ましく、無機フィラーの形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機フィラーの具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、平板状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。無機フィラーは中空状であってもよく、中空状の無機フィラーと、非中空状の無機フィラーとを含んでもよい。無機フィラーの形状としては、球状又は鱗片状が好ましい。
無機フィラーのD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。無機フィラーのD50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
【0042】
無機フィラーの好適な具体例としては、シリカフィラー(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカフィラー(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルクフィラー(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイトフィラー(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
【0043】
無機フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、上述したシランカップリング剤が挙げられる。
添加物における他の材料の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上記含有量は、100質量%以下が好ましい。
【0044】
本法においては、分散液を、シランカップリング剤が加水分解する条件(以下、「加水分解条件」とも記す。)に供してから、他の材料を含む添加物と混合して、本組成物を得る。
本法における混合は、シランカップリング剤を部分的に加水分解させた段階で行ってもよく、シランカップリング剤を完全に加水分解させた段階で行ってもよい。つまり、混合は、シランカップリング剤の加水分解が進行している段階で行ってもよい。
【0045】
加水分解条件としては、分散液に有効量のプロトン源を存在せしめる条件であれば、特に限定されず、分散液に有効量の水又はプロトン酸が存在する条件であるのが好ましい。
分散液の含水量は、20ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましい。含水量は、200000ppm以下が好ましく、20000ppm以下がより好ましい。分散液の含水率は、液状分散媒として水を使用して調整してもよく、水以外の液状分散媒やF粒子に含まれる水分量によって調整してもよく、分散液の調製に際する雰囲気の含水率(湿度)から調整してもよく、加水分解条件における雰囲気の含水率(湿度)から調整してもよい。
【0046】
加水分解条件における分散液のpHは、1~7が好ましく、1~5がより好ましい。pHは、プロトン酸(カルボン酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸)により調整してもよい。
また、温度の調整又は触媒の使用によって、加水分解条件、さらにはシランカップリング剤の加水分解の反応速度を調整してもよい。さらに、市販のシランカップリング剤を使用する場合には、それに含まれる安定剤を除去又は失活させて、シランカップリング剤の加水分解の反応速度を調整してもよい。
【0047】
加水分解条件における分散液の温度は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。上記温度は、シランカップリング剤の分解温度未満かつ液状分散媒の沸点未満の温度が好ましく、200℃以下がより好ましい。
なお、加水分解条件に供した後の分散液に含まれるF粒子は、上述した作用機構により、シランカップリング剤により表面処理された状態にあるとも考えられる。そのため、上記分散液から液状分散媒を除去すれば、シランカップリング剤により表面処理されたF粒子が得られる。
【0048】
本法における混合は、加水分解条件に供した分散液に他の材料を含む添加物を加えて行ってもよく、加水分解に供した分散液を他の材料を含む添加物に加えて行ってもよい。本法によれば、いずれの混合態様によっても、上述した作用機構により、液物性に優れた本組成物が容易に得られる。
また、混合において、加水分解条件に供した分散液は、他の材料を含む添加物とそのまま混合してもよく、上記分散液の一部(液状分散媒、加水分解に伴うアルコール等のシランカップリング剤の残渣等)を除去した後に、他の材料を含む添加物と混合してもよい。
【0049】
混合において、分散液の質量に対する、他の材料を含む添加物の質量の比(質量比)は、0.01以上が好ましく、0.01以上がより好ましい。上記比は、3以下が好ましく、1以下がより好ましい。
さらに、混合において、分散液におけるF粒子の含有量に対する、組成物における他の材料の含有量の質量での比は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。上記比は、3以下が好ましく、1以下がより好ましい。
これらのいずれかの比(質量比)が、かかる範囲にある場合、上述した作用機構が亢進して、液物性に優れた本組成物が直接得られやすい。
【0050】
本法における加水分解条件及び混合は、それぞれ撹拌下にて行うのが好ましい。
撹拌には、撹拌翼によるミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、揺動型混合機、振動型混合機、回転型混合機等が使用でき、具体的には、ホモディスパー、ホモジナイザー、ボールミルが使用できる。
加水分解条件及び混合は、バッチ式、連続式いずれでもよい。バッチ式に際しては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサーまたはプラネタリーミキサーを使用するのが好ましい。
【0051】
本組成物は、分散液を加水分解条件に供した後、他の材料を含む添加物として混合して得られる、F粒子、他の材料及び液状分散媒を含む液状組成物である。本組成物におけるF粒子は、シランカップリング剤により表面処理された状態にあるとも考えられる。そのため、本組成物から液状分散媒を除去すれば、F粒子と他の材料が高度に複合一体化した、コンポジットパウダーを得ることもできる。
【0052】
本組成物におけるFポリマーの含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。Fポリマーの含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
本組成物における他の材料の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。他の材料の含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
本組成物における、Fポリマーの含有量に対する、他の材料の含有量の質量での比は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。他の材料の含有量の質量での比は、3以下が好ましく、1以下がより好ましい。この場合、得られる本組成物の液物性が向上しやすい。
本組成物における液状分散媒の含有量は、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0053】
本組成物の25℃における粘度は、10~10000mPa・sが好ましく、50~5000mPa・sがより好ましい。本組成物のチキソ比は、1~2.5が好ましく、1.2~2がより好ましい。この場合、得られる本組成物の物性が向上しやすい。
本組成物の成分分散層率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。成分分散層率の上限は、100%である。本組成物は、分散安定性に優れるため、かかる成分分散層率に調整しやすい。
【0054】
なお、本法における、分散液、添加物又は本組成物は、分散性を向上する観点から、さらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、ノニオン性であるのが好ましい。界面活性剤としては、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を含む場合、分散液、添加物又は本組成物における界面活性剤の含有量は、1~15質量%が好ましい。
さらに、本法における、分散液、添加物及び本組成物は、さらに、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤を含んでいてもよい。
【0055】
本組成物を、基材の表面に付与し加熱して、ポリマー層を形成すれば、基材層とポリマー層(以下、「F層」とも記す。)とを、この順で有する積層体が得られる。
基材層としては、金属基板(銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等)、耐熱性樹脂フィルム(ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド等の耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムであり、単層フィルムであっても多層フィルムであってもよい)、プリプレグ(繊維強化樹脂基板の前駆体)が挙げられる。
【0056】
本組成物を基材層の表面に付与する方法としては、基材層の表面に本組成物からなる安定した液状被膜(ウェット膜)が形成される方法であればよく、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、塗布法が好ましい。
液状被膜を乾燥する際は、液状被膜を液状分散媒が揮発する温度で加熱し、乾燥被膜を基材の表面に形成する。かかる加熱の温度は、液状分散媒の沸点以下が好ましく、該沸点-20℃以下がより好ましい。乾燥時の具体的な温度は、80℃~200℃が好ましい。なお、液状分散媒を除去する工程で空気を吹き付けてもよい。
乾燥時に、液状分散媒は、必ずしも完全に揮発させる必要はなく、保持後の層形状が安定し、自立膜を維持できる程度まで揮発させればよい。
【0057】
加熱に際する温度は、Fポリマーの焼成が進行する温度であるのが好ましく、380℃以下がより好ましい。
上記加熱は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。
また、加熱雰囲気は、酸化性ガス雰囲気(酸素ガス等)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等)、不活性ガス雰囲気(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)のいずれであってもよい。
加熱時間は、0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
【0058】
F層の厚さは、0.1~150μmが好ましい。具体的には、基材層が金属箔である場合、F層の厚さは、1~30μmが好ましい。基材層が耐熱性樹脂フィルムである場合、F層の厚さは、1~150μmが好ましい。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本組成物を用いれば、F層におけるFポリマーの物性を損なわずに、積層体を容易に形成できる。
【0059】
本組成物は、基材層の一方の表面にのみ付与してもよく、基材層の両面に付与してもよい。前者では、基材層と、基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者では、基材層と、基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。後者の積層体は、より反りが発生しにくいため、その加工に際する取扱い性に優れる。
かかる積層体の具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
【0060】
かかる積層体は、電気特性に優れるF層を有するため、プリント基板材料として好適であり、具体的にはフレキシブル金属張積層板やリジッド金属張積層板としてプリント基板の製造に使用でき、特に、フレキシブル金属張積層板としてフレキシブルプリント基板の製造に好適に使用できる。
かかるプリント基板の製造においては、伝送回路上に層間絶縁膜を形成してもよく、伝送回路上にソルダーレジストを積層してもよく、伝送回路上にカバーレイフィルムを積層してもよい。これらの層間絶縁膜、ソルダーレジスト及びカバーレイフィルムを、本組成物で形成してもよい。
【0061】
かかる積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。
【実施例0062】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[粒子]
粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、酸素含有極性基を有するポリマー1(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.1μm)
粒子2:70質量部の粒子1と30質量部の球状シリカフィラー(D50:250nm)とを混合した粒子をハイブリダイゼーション法によって処理して得られる、ポリマー1をコアとし、このコアの表面に前記シリカフィラーが付着してシェルが形成されたコア・シェル構造の球状の複合粒子(D50:3μm)
粒子3:TFE単位及びPPVE単位からなる、酸素含有極性基を有さないポリマー(溶融温度305℃)からなる粒子(D50:1.8μm)
なお、ハイブリダイゼーション法とは、円筒状の容器内で高速で回転する撹拌翼により、粒子を攪拌しつつ、容器の内壁と撹拌体との間で粒子を挟持して応力を加える粉体処理方法であって、それらの間に応力を付与して異種の粒子を複合化する方法である。
【0063】
[シランカップリング剤]
剤1:ビニルトリメトキシシラン
剤2:n-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
[液状分散媒]
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
[無機フィラー]
フィラー1:球状シリカフィラー(D50:3μm)
[他の樹脂]
ワニス1:熱可塑性の芳香族ポリイミド(PI1)がNMPに溶解したワニス(PI1の含有量:20質量%)
【0064】
2.液状組成物の調製
(例1)
槽内に、50質量部の粒子1と5質量部の剤1と45質量部のNMPとを投入して、槽内を撹拌して分散液1を調製した。
別の槽内に、10質量部のフィラー1と90質量部のワニス1を投入し、槽内を撹拌して添加物1を調製した。
分散液1の含水率が8000ppmに調整されたことを確認した後に、槽内を撹拌しながら、槽内温度を60℃に保持して、酸性条件下、触媒により剤1を加水分解させた。
次に、槽内の分散液1と等質量分の組成物1を槽内に加えて撹拌し、液状組成物1を得た。
【0065】
(例2)
剤1に変えて剤2を使用した以外は、例1と同様にして、液状組成物2を得た。
(例3)
粒子1に変えて粒子2を使用した以外は、例1と同様にして、液状組成物3を得た。
(例4)
粒子1に変えて粒子3を、かつ、剤1に変えて剤2を使用した以外は、例1と同様にして、液状組成物4を得た。
(例5)
槽内に、50質量部の粒子3、5質量部の剤2、45質量部のNMP、10質量部のフィラー1及び90質量部のワニス1を投入し、そのまま撹拌して液状組成物5を得た。
【0066】
3.積層体の製造
長尺の銅箔(厚さ18μm)の表面に、バーコーターを用いて液状組成物1を塗布して、液状被膜を形成した。次いで、この液状被膜が形成された銅箔を、120℃にて5分間、乾燥炉に通し、加熱により乾燥させて、乾燥被膜を得た。その後、窒素オーブン中で、乾燥被膜を380℃にて3分間、加熱した。これにより、銅箔と、その表面にポリマー1の溶融焼成物を含むポリマー層(厚さ10μm)とを有する積層体1を製造した。
液状組成物1を、液状組成物2~5のそれぞれに変更した以外は、積層体1と同様にして、積層体2~5をそれぞれ製造した。
【0067】
4.評価
4-1.液状組成物の分散安定性
液状組成物1~5のそれぞれ18mLを、内容積30mLのスクリュー管に入れ、25℃にて14日間静置した。静置前後の、スクリュー管中の液状組成物の全体の高さと成分分散層の高さとから、以下の式により成分分散層率を算出した。
成分分散層率(%)=(成分分散層の高さ)/(液状組成物の全体の高さ)×100
なお、静置後に沈降が確認されず、状態に変化がない場合には、液状組成物の全体の高さに変化がないとして、成分分散層率は100%とした。
そして、液状組成物の分散安定性を、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:成分分散層率が80%以上である。
△:成分分散層率が60%以上80%未満である。
×:成分分散層率が60%未満である。
【0068】
4-2.ポリマー層の線膨張係数
積層体1~5のそれぞれについて、積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して単独のポリマー層を作製した。
単独のポリマー層から180mm角の四角い試験片を切り出し、JIS C 6471:1995に規定される測定方法にて、25℃以上260℃以下の範囲における、ポリマー層の線膨張係数を測定した。
そして、ポリマー層の線膨張係数を、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:ポリマー層の線膨張係数が、30ppm/℃以下である。
×:ポリマー層の線膨張係数が、30ppm/℃超である。
【0069】
4-3.ポリマー層の電気特性
積層体1~5のそれぞれについて、積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して単独のポリマー層を作製した。
SPDR(スプリットポスト誘電体共振)法にて、ポリマー層の誘電正接(測定周波数:10GHz)を測定した。
そして、ポリマー層の電気特性を、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:ポリマー層の誘電正接が0.0010未満である。
△:ポリマー層の誘電正接が0.0010以上0.0025以下である。
×:ポリマー層の誘電正接が0.0025超である。
【0070】
それぞれの評価結果を、下表1にまとめて示す。
【表1】
本発明の液状組成物は、液物性に優れ、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性と、無機フィラー又は他の樹脂に基づく特性とを具備した成形物(フィルム、プリプレグ等の含浸物、積層板等)の製造に使用できる。本発明によって製造される積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、テンションロープ、構造部材、石油掘削機器、石油輸送ホース、スポーツ用品、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィンや金属放熱板として有用である。