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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061462
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
G01D5/244 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021124042
(22)【出願日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】20200310
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ミッターライトナー
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA13
2F077CC02
2F077NN05
2F077QQ01
2F077UU03
2F077VV31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定値を温度補償することができる位置測定装置を提供する。
【解決手段】位置測定装置はスケール10、第1の走査ユニット14.1、第2の走査ユニット14.2、及び第1と第2の走査ユニットを支持するための走査キャリア2を備える。第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置が、位置測定装置の所定の温度の場合には、互いに所定の第1の距離で配置されている。位置測定装置は、走査キャリア2の温度を把握するための温度センサ16を有する。位置測定装置は、走査キャリア2の温度における第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の間の第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2によって算出される第2の距離、並びに走査キャリア2の温度に応じて、スケール10のひずみを局所的に分解して決定するように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定目盛(12)を有するスケール(10)、測定目盛(12)を走査するための第1の走査ユニット(14.1)、測定目盛(12)を走査するための第2の走査ユニット(14.2)、及び第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)を支持するための走査キャリア(2)を備える、位置測定装置であって、
第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)の走査位置が、位置測定装置の所定の温度(T)の場合には、互いに所定の第1の距離(a)で配置されている、当該位置測定装置において、
位置測定装置は、走査キャリア(2)の温度(T)を把握するための少なくとも1つのセンサ(16)を有し、並びに、
位置測定装置は、走査キャリア(2)の温度(T)における第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)の走査位置の間の第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)によって算出される第2の距離(a1)に応じて、並びに走査キャリア(2)の温度(T)に応じて、スケール(10)のひずみ(ε)を局所的に分解して決定するように形成されている、ことを特徴とする位置測定装置。
【請求項2】
位置測定装置は、スケール(10)のひずみ(ε)に応じて、スケール(10)の長さ変化(ΔL)を局所的に分解して決定するように形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の位置測定装置。
【請求項3】
位置測定装置は、位置(x)にわたるスケール(10)のひずみ(ε)の数値積分によって、スケール(10)の長さ変化(ΔL)を決定するように形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載されている位置測定装置。
【請求項4】
位置測定装置は、スケール(10)の長さ変化(ΔL)に応じて、熱補償された位置値(X)を局所的に分解して決定するように形成されている、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の位置測定装置。
【請求項5】
センサ(16)は、走査キャリア(2)上に若しくは走査キャリア(2)中に、又は第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)のうちの一方の中に配置されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項6】
センサ(16)は、第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)の走査位置の間の第1の所定位置(Q1)に配置されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項7】
第1の所定位置(Q1)は、第1及び第2の走査ユニット(14.1、14.2)の走査位置の間の中間にある、ことを特徴とする請求項6に記載の位置測定装置。
【請求項8】
第1の所定位置(Q1)は、走査キャリア(2)の温度(T)が、第1及び第2の走査ユニット(14.1,14.2)の走査位置の間の走査キャリア(2)の温度(T)の平均値に等しい位置である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の位置測定装置。
【請求項9】
第1の所定位置(Q1)は、走査キャリア(2)の温度(T)が、第1および第2の走査ユニット(14.1、14.2)の走査位置の間で走査キャリア(2)の温度(T)の平均値と相違する位置であり、
位置測定装置は、第1および第2の走査ユニット(14.1、14.2)の走査位置の間の走査キャリア(2)の温度(T)の平均値から、走査キャリア(2)の温度(T)の偏差に応じて、補正パラメータを決定するように形成されていて、並びに
補正パラメータに応じて、スケール(10)のひずみ(ε)を決定するために走査キャリア(2)の温度(T)を補正するように形成されている、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の位置測定装置。
【請求項10】
位置測定装置は、スケール(10)をベース本体(1)に固定するための一対の固定要素(20.1、20.2)を有し、
固定要素(20.1、20.2)は、第2の所定位置(Q2)でスケール(10)を、ベース本体(1)に対して測定方向(X)において固定して支持するように形成されていて、
第2の所定位置(Q2)は、スケール(10)の長さ変化(ΔL)がゼロに等しい位置である、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項11】
第1の距離(a)は作業側で決定された距離である、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項12】
走査キャリア(2)の温度(T)及び所定の温度(T)は、同一である、又は互いに異なっている、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項13】
走査キャリア(2)の温度(T)及び位置計測装置によって決定可能なスケール(10)の温度(T)は、同一である、又は互いに異なっている、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項14】
走査キャリア(2)は、ゼロ以外の熱膨張係数(α)である、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【請求項15】
測定目盛(12)は、インクレメンタル目盛又は絶対目盛である、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の前提部による位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(DE 199 19 042 A1)は、簡素化されている走査ヘッドを備える測定システムを開示している。この簡素化されている走査ヘッドにもかかわらず、熱に起因する誤差を補償することが可能である。先ず、基準温度では、2つの測定ポイントの間で距離が算出され、その後の動作では、基準距離と比較して、2つの測定ポイント間の距離の変化から現在の温度が決定される。さらに、現在の温度が分かっている場合には、測定システムの測定値を温度補償することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19919042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡単で低コストの構造を有し、且つ精密な位置計測を可能とする、位置計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する位置測定装置によって解決される。
【0006】
本発明によって形成されている位置測定装置は、測定目盛を有するスケールと、測定目盛を走査するための第1の走査ユニットと、測定目盛を走査するための第2の走査ユニットと、第1及び第2の走査ユニットを支持するための走査キャリアとを備える。位置測定装置が所定の温度の場合、第1及び第2の走査ユニットの走査位置は、互いに第1の所定の距離で配置されている。位置測定装置は、走査キャリアの温度を把握するために少なくとも1つのセンサを有する。位置測定装置は、走査キャリアの温度における、第1及び第2の走査ユニットの走査位置の間での、第1及び第2の走査ユニットによって(又は、第1及び第2の走査ユニットの使用下で)算出される第2の距離に応じて、及び走査キャリアの温度に応じて、スケールのひずみを局所的に分解して決定するように、形成されている。
【0007】
位置測定装置が、スケールのひずみに応じて、スケールの長さ変化を局所的に分解して決定するように形成されている場合には、有利である。
【0008】
さらに、位置測定装置が、スケールの長さ変化に応じて、熱補償された位置値を局所的に分解して決定するように形成されている場合には、有利である。
【0009】
例えば、センサは、走査キャリア上に若しくは走査キャリア中に、又は第1及び第2走査ユニットのうちの一方の中に配置されている。
【0010】
さらに、位置測定装置は、走査キャリアの温度(例えば、温度の平均値)を把握するための2つのセンサを有することができ、2つのセンサのうちの一方は第1の走査ユニット中に配置されていて、2つのセンサのうちの他方は第2走査ユニット中に配置されている。
【0011】
好ましくは、位置測定装置を、スケールの長手方向(測定方向X)での位置測定のために使用する。
【0012】
特に、測定目盛は、インクリメンタル目盛である。インクリメンタル目盛の代わりに、測定目盛を、例えば、擬似ランダムコードとして形成されている絶対目盛にもできる。
【0013】
本発明によって、走査キャリアの温度を把握するための少なくとも1つのセンサを使用することで、測定方向Xでの熱補償位置測定が達成される。この目的のために、走査キャリアの温度が既知である場合に、走査キャリアの熱膨張の影響が、温度補償で考慮される。従って、走査キャリアの熱膨張とスケールの熱膨張とを、いわば区別する、即ち、別々に考察する。従って、熱補償位置測定の場合には、走査キャリア及び/又はスケールのために、例えばゼロデュア(独語:Zerodur)のようなゼロ膨張材料の使用を省略することができる。それによって、一方では、簡単で低コストの構造が達成される。他方では、それによって、位置測定の高い精密さが可能である。
【0014】
本発明の有利な発展形態は従属請求項で見られる。
【0015】
本願発明のさらに詳細な点及び利点が、図と併せて、本発明の可能な実施形態に関する以下の説明に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一つの実施例による位置測定装置の側面図を示す。
図2図1に係る位置計測装置の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
同一の要素又は機能的に同一の要素は、図中で同一の参照記号を付されている。
【0018】
一つの実施例は、図1及び2を参照して、以下に説明する。実施例による位置測定装置を、測定方向Xへ互いに移動可能な2つの物体の相対位置を測定するために使用する。測定方向Xは、線形自由度(自由度X)に対応する。
【0019】
実施例による位置測定装置は、ベース本体1(例えば、静止基準部分)上に配置されているスケール10を備える。更に、実施例による位置計測装置は、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2を支持するための、スケール10に対して相対的に移動可能に配置されている走査キャリア2を備える。第1及び第2の走査ユニット14.1,14.2は、走査キャリア2の下側に配置されている。走査キャリア2は、少なくとも自由度Xで移動可能であり、被測定物に固定可能である。
【0020】
図2に示したように、スケール10は、測定目盛12(インクリメンタル目盛)を備える。第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2は、それぞれ、測定目盛12を走査するために役立つ。図1及び図2を参照し、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置が、位置計測装置の所定の温度T(例えば、T=20℃)の場合に、互いに第1の所定の距離aで配置されている。特に、最初の距離aは、作業側で、決定された距離である。
【0021】
実施例による位置測定装置は、走査キャリア2の温度T(例えば、T=25℃)を把握するためのセンサ16を有する。図1を参照すると、センサ16は、走査キャリア2の中、特に止まり穴18の内側に配置されている。代替的には、センサ16は、第1の走査ユニット14.1の中に又は第2の走査ユニット14.2の中にも配置されていてもよい(図の中では示されていない)。実施例による位置測定装置は、走査キャリア2の温度Tにおける、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の間での、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2によって算出される第2の距離aに応じて、並びに走査キャリア2の温度Tに応じて、スケール10のひずみεを局所的に分解して決定するように形成されている。特に、この目的のために、次の関係式、
【0022】
【数1】
が使用される。
【0023】
この場合、ε、a及びTは、位置x(測定方向XにおけるX位置又は位置)の各関数、即ちε=ε(x)、a=a(x)、T=T(x)であり、a及びTは、第1の距離(基準距離)若しくは所定の温度(基準温度)であり、αは、走査キャリア2の熱膨張係数である。
【0024】
更に、位置測定装置は、スケール10のひずみεに応じて、スケール10の長さ変化ΔLを局所的に分解して決定するように形成されている。この場合、スケール10の長さ変化ΔLは、位置xにわたるスケール10のひずみεの数値積分によって決定し、特に次の関係式、
【0025】
【数2】
を参照する。
【0026】
この場合、ΔL位置xの関数、即ち、ΔL=ΔL(x)である。
【0027】
さらに、位置測定装置は、スケール10の長さ変化ΔLに応じて、熱補償された位置値Xを局所的に分解して決定するように形成されている。特に、この目的のためには、次の関係式、
【0028】
【数3】
が使用される。
【0029】
この場合、Xは位置xの関数、即ちX=X(x)であり、Xは、第1及び/又は第2の走査ユニット14.1、14.2によって算出されている位置値(測定値又は検出された位置値)並びに位置xの関数、即ちX=X(x)である。
【0030】
従って、実施例による位置測定装置は、パラメータε、ΔL及びX(式1から式3を参照)の局所的に分解された決定を実現する為に使用し、従って、熱補償された位置測定を実現するために使用する。
【0031】
図2を参照すると、センサ16は、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の間の第1の所定位置Q1に配置されている。第1の所定位置Q1は、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の中間にある。特に、第1の所定位置Q1は、走査キャリア2の温度Tが、第1及び第2の走査ユニット14.1,14.2の走査位置の間の走査キャリア2の温度Tの平均値に等しい位置である。代替的には、第1の所定位置Q1は、走査キャリア2の温度Tが、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の間で走査キャリア2の温度Tの平均値と相違する位置であってもよい。この場合、位置測定装置は、第1および第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の間の走査キャリア2の温度Tの平均値から、走査キャリア2の温度Tの偏差に応じて、補正パラメータを決定するように形成されていて、並びに、補正パラメータに応じて、スケール10のひずみεを決定するために走査キャリア2の温度Tを補正するように形成されている。
【0032】
さらに、図2を参照し、位置測定装置は、スケール10をベース本体1に固定するための一対の固定要素20.1、20.2を有する。固定要素20.1、20.2は、Y方向、即ち測定方向Xに対して垂直に伸びる方向に互いに向かい合って存在する。固定要素20.1、20.2は、第二の所定位置Q2でスケール10を、ベース本体1に対して測定方向Xにおいて固定して支持するように形成されている。特に、第2の所定の位置Q2は、スケール10の長さ変化ΔLがゼロに等しい位置である。これにより、数値積分の積分定数を決定するための境界条件が確定される(式2)。特に、これは、次の関係式、
【0033】
【数4】
が、有効である。
【0034】
この場合、xFixは、温度に依存しない固定点のX位置であり、第2の所定位置Q2に対応する。
【0035】
例えば、固定要素20.1、20.2は、それぞれスケール10をベース本体1と接続するための隅肉溶接部(隅肉溶接接合部)を備える。
【0036】
図示されている実施例では、走査キャリア2の温度T及び所定の温度T(基準温度)は、同じ又は互いに異なってもよい。走査キャリア2の温度Tと所定の温度Tが同じである場合でのみ、走査キャリア2の熱膨張の影響は、温度補償中に消失する。
【0037】
更に、図示されている実施例では、走査キャリア2の温度T及び位置測定装置によって決定可能なスケール10の温度Tは、同じ又は互いに異なってもよい。特に、走査キャリア2の温度Tとスケール10の温度Tとが同じでなければならないことは、温度補償での必要条件ではない。代わりに、走査キャリア2の温度T及びスケール10の温度Tも互いに異なってもよく、従って、位置測定装置の共通温度(システム温度)を持たない。
【0038】
特に、走査キャリア2は、ゼロ以外の熱膨張係数αである。その結果、一方では、走査キャリア2(従って、位置計測装置)の製造は比較的低コストであり、他方で構造自由度の縮小や制限はない。
【0039】
走査位置は、それぞれ第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の位置測定の基準点として定義されている。図2では、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の各々の内部の走査位置が、小さな円で記号的に記載されている。
【0040】
走査キャリア2の温度Tの平均値は、例えば、次の関係式、
【0041】
【数5】
によって与えられている。
【0042】
この場合、TA1及びTA2は、第1の走査ユニット14.1の走査位置及び第2の走査ユニット14.2の走査位置における走査キャリア2のそれぞれの温度である。
【0043】
好ましくは、走査キャリア2は、温度プロファイルがある。この温度プロファイルは、対称面(即ち、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置の間の中心点を通って、及び測定方向Xに対して横に延びる平面)に対して対称である。
【0044】
本発明は、測定目盛12が光学的に走査可能であるように形成されている場合に、特に高分解能の位置測定が可能になる。代替的には、測定目盛12は、磁気的、誘電的又は容量的に、走査可能に形成されていてもよい。
【0045】
さらに、位置測定装置は、スケール10の長さ変化ΔLに応じて、スケール10の温度Tを局所的に分解して決定するように形成されていてもよい。この目的の為に、次の関係式、
【0046】
【数6】
を使用することができる。
【0047】
この場合、T及びΔLは、それぞれ、位置xの関数、即ちT=T(x)及びΔL=ΔL(x)であり、αは、スケール10の熱膨張係数である。他のパラメータa、T、T及びαは、式1に対応する。
【0048】
本発明によって、例えばゼロデュア製の費用がかさむ走査キャリア2を使用しなくても、正確な温度補償を達成することができる。
【0049】
個別の走査位置(即ち、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の走査位置)における廃熱のため、及び外部の温度の影響に基づいても、温度Tは、走査キャリア2上に、通常均一に分布されない。走査キャリア2上の2つの走査位置の温度に伴う距離の変化を、可能な限り正確に算出する為に、センサ16は、好ましくは、温度測定値(温度T)が2つの走査位置の間の平均温度に対応するように配置されている。センサ配置に関しては、例えば、局所的な温度源の取付状況などのような、所定の外側の境界条件の下で、適切な測定場所(即ち、第一の所定の場所Q1)を決定するために、実験または数値シミュレーションを実行することが望ましい。この場合、測定されている温度Tの平均温度からの考えられる偏差も決定することができる。例えば、このようにして算出した補正パラメータは位置測定装置の評価ユニット(不図示)に格納され、測定された温度Tは、スケール10のひずみεを決定するための式1で(若しくは、長さ変化ΔLを決定する為に式2で)使用される前にこの補正パラメータで補正される。
【0050】
走査キャリア2にわたって温度分布を均一化するために、適切な材料選択(高い熱伝導率)及び幾何学的形状の選択(大きな断面積)によって、走査キャリア2の熱伝導を最大化することが有利であり得る。
【0051】
位置測定装置で実施可能な温度補償のための例示的な方法が、以下で詳細に説明される。熱膨張を決定するために、第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2の2つの走査位置は、互いに走査キャリア2上に定義された距離で配置されている。2つの走査位置の正確な距離(即ち、基準距離若しくは所定の第1の距離a)は、基準温度Tで決定される。この目的のために、全体の測定システムを一定の基準温度T、好ましくはT=20℃にする。絶対目盛を使用する場合、第1及び第2の走査ユニット14.1,14.2が2つの走査位置で出力した位置信号(X位置値)の差分から直接、基準距離aを算出することができる。インクリメンタル目盛を使用する場合、スケール10の基準点(図には示されていない)で基準距離aが決定される。第1の走査ユニット14.1の走査位置(又は第2の走査ユニット14.2の走査位置)が基準点を通過すると、カウンタをスタートし、そして第2の走査ユニット14.2の走査位置(又は第1の走査ユニット14.1の走査位置)が同じ基準点を通過するとカウンタを停止する。このように算出したカウンタ値が、基準距離aに相当する。基準距離aは一旦算出され、基準温度Tとともに評価ユニットに格納される。温度補償の可能な限り高い精度を達成するためには、基準距離aが算出される位置xにおけるスケール10の長さ偏差が可能な限り小さくなるように、基準距離aを算出するときに、留意しなければならない。精度を最大にするには、理想的な条件下で、基準距離aを作業側で、決定することを推奨する。
【0052】
位置測定装置の動作中には、2つの走査位置の間の現在の距離(即ち、第2の距離a)が、減法(即ち、2つの走査位置において第1及び第2の走査ユニット14.1、14.2によって出力される位置信号の差分の形成)を用いて連続して算出され、したがって、局所的に分解して決定される。これは即ち、a=a(x)である。インクリメンタル目盛を使用する場合には、2つの走査ユニット14.1、14.2は、特に初期化(即ち、カウンタをゼロに設定)される。加えて、センサ16(温度センサ、例えばPT100)を使って、走査キャリア2の現在の温度Tが連続的に決定され、したがって、局所的に分解して決定される。これは即ち、T=T(x)である。従って、走査キャリア2の既知の線膨張係数αと共に、温度測定を介して走査キャリア2の熱膨張を決定することが可能である。
【0053】
式1によって、2つの走査位置の間の局所的なスケールひずみ(すなわちひずみε)が決定され、及びこのスケールひずみが移動経路(位置)xにわたって積分される(式2参照)。この場合、2つの走査位置の間のスケール10のひずみεは一定であると仮定される。その結果、現在のX位置におけるスケール10の長さ変化ΔL、即ちΔL=ΔL(x)、が得られる。ΔLを決定する際に、走査キャリア2の熱膨張の影響が排除される。
【0054】
スケール10のひずみεは、評価ユニットにおいて連続的に数値積分(式2参照)され、従ってスケール10の局所的に分解された長さ変化ΔLが算出される。スケール10の温度に依存しない固定点(即ち、第2の所定位置Q2)は、積分定数を決定するための境界条件として使用される。この固定点は、スケール10が取り付けられているベース本体1とスケール10との間に相対的な移動がない点として定義されている。従って、固定点におけるスケール10の長さΔLの変化がゼロに等しいこと(式4参照)、温度に依存しない固定点の局所的な位置(例えば、X位置、XFix)が既知であり、評価ユニットに格納されているというこの条件を適用する。
【0055】
ドリフト効果の影響を最小にするため、温度に依存しない固定点を通過するごとには、ΔLをゼロに設定することは有利である。温度に依存しない固定点を実装するために、スケール10は、堅い構造接着剤で点状に基板に接続することも、又は追加のホルダーでクランプすることもできる。
【0056】
補償された位置値Xを決定するために、式3を使用して、スケール10の長さ変化ΔLについて、測定された位置値Xを局所的に分解して補償する(式2参照)。
【0057】
スケール10と走査キャリア2との間の明白な温度差は、多くの用途において一般的である。このような場合にも(前記スケール10と走査キャリア2との間の明白な温度差の場合)本発明によれば、例えばゼロデュア製の高価な、しかも構成上の可能性の制限をもたらす走査キャリア2及び/又は高価なスケール10を使用する必要がなく、位置測定の高い精密さは達成することができ若しくは維持することができる。
【0058】
加えて、多くの用途において、温度Tは、スケール10の長さにわたって、非常に不均一である。従って、スケール10の熱膨張および温度制限された長さ変化ΔLも、スケール長さにわたって対応して強く変化する。式2による数値積分によって、これらの効果が考慮されている。従って、位置測定の高い精密さを、達成することができる若しくは維持することができる。
【0059】
本発明は、一次元測定システムに限定されない。位置測定装置は、多次元測定システム(複数の自由度で測定するための位置測定装置、例えば、いわゆる1Dplusエンコーダ)とすることもできる。
図1
図2
【外国語明細書】