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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062879
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】医薬品ディスペンサー機器
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20220414BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20220414BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61K45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171056
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】美尾 篤
【テーマコード(参考)】
4C047
4C084
【Fターム(参考)】
4C047GG15
4C047KK01
4C047KK03
4C047KK06
4C047KK24
4C047KK28
4C084AA17
4C084MA16
4C084NA20
(57)【要約】
【課題】ロボットアームを用いることなく、小型化が可能であり、液状の医薬品組成物を複数回吐出することが可能な医薬品ディスペンサー機器を提供する。
【解決手段】液状の医薬品組成物を吐出する医薬品ディスペンサー機器10であって、医薬品組成物またはその原料が、1回分の使用量を超える量で収容された少なくとも1つのカートリッジ容器11と、カートリッジ容器11の装着および取り外しが可能な装着部12と、医薬品組成物を吐出する吐出部14と、医薬品組成物の吐出に当たり、吐出部14から吐出される医薬品組成物またはその原料の使用量を制御する制御部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の医薬品組成物を吐出する医薬品ディスペンサー機器であって、
前記医薬品組成物またはその原料が、1回分の使用量を超える量で収容された少なくとも1つのカートリッジ容器と、
前記カートリッジ容器の装着および取り外しが可能な装着部と、
前記医薬品組成物を吐出する吐出部と、
前記医薬品組成物の吐出に当たり、前記吐出部から吐出される前記医薬品組成物またはその原料の使用量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする医薬品ディスペンサー機器。
【請求項2】
前記医薬品組成物が、ハザードドラッグ(HD)を含有することを特徴とする請求項1に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項3】
前記医薬品組成物またはその原料の計量と、前記医薬品組成物の吐出とが、それぞれ無菌的に実施可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項4】
前記吐出部には、前記医薬品組成物が吐出される先の液体容器との間に、閉鎖式薬物移送システム(CSTD)のアダプタを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項5】
前記アダプタは、前記吐出部に対して、取り外し、または取り替えが可能であることを特徴とする請求項4に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項6】
前記装着部に装着されたカートリッジ容器と、前記吐出部との間が、閉鎖された管路または容器のみにより連結されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項7】
前記医薬品組成物が、高活性医薬品であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項8】
前記医薬品組成物が、注射剤であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項9】
前記医薬品組成物が、抗がん剤、ステロイド剤、免疫抑制剤、性ホルモン剤、抗ウイルス剤、抗菌剤から選択される1種以上の成分を含有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項10】
前記カートリッジ容器は、他のカートリッジ容器と判別可能な識別子を有し、
前記制御部は、前記使用量の制御に際して、前記識別子により前記カートリッジ容器に収容された収容物に関する情報を認識して、前記吐出部から吐出される前記医薬品組成物の量を制御することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項11】
前記制御部は、前記カートリッジ容器に収容された収容物に設定された少なくとも1種の使用期限を前記識別子により認識して、前記使用期限のいずれかの経過後には前記収容物を使用しないように制御することを特徴とする請求項10に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項12】
前記制御部は、前記吐出部から吐出される前記医薬品組成物またはその原料の使用量を、演算により算出することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項13】
前記カートリッジ容器が2種以上の収容物を収容した複室構造を有することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項14】
前記複室構造を有する前記カートリッジ容器は、前記2種以上の収容物を前記カートリッジ容器の内部で混合または溶解させるための連通部を有することを特徴とする請求項13に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【請求項15】
前記カートリッジ容器は、前記医薬品ディスペンサー機器の流路に残留する成分を洗浄するための洗浄液を有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬品ディスペンサー機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品ディスペンサー機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の強い作用を有する医薬品は、ハザードドラッグ(HD:Hazardous Drug)と呼ばれ、投与に関連する作業時の医療従事者の被曝を防止することが求められている。HDの調製は、被曝からの防護処置を施した上で行われる。具体的には、教育訓練を受けた作業者が、被曝防止のためのガウンを着用した上で、生物学的安全キャビネット内の陰圧チャンバー内に個々の医薬品が準備される。
【0003】
医療機関でHDの調製操作をする際には、特に慎重な作業が必要なことから、医療従事者の大きな負担になっている。また、特殊な調製器具、投与器具を使用するため、その調達コストも医療機関の経営の面から望ましくない。
【0004】
さらに、抗がん剤等の一部の医薬品では、薬理作用を期待できる用量と、有害な副作用が現れる用量との差が、一般的な医薬品と比べて非常に狭い場合がある。この種の医薬品の場合、患者の体格に応じて、例えば体重、体表面積などに対する割合として、患者ごとに適切な投与量が算出される。
【0005】
HDは、主にバイアルに密封された状態で医療機関に供給されている。HDが供給される規格は、製薬企業の製造上または流通上の制約により、濃度、量などの水準が単一または少数に限定されていることが多い。患者ごとに投与量が異なる場合は、投与ごとに1個又は複数個のバイアルを開封しても、これらの全量が投与量に一致しないため、一部が未使用のまま余剰となりやすい。
【0006】
バイアルから医薬品を取り出す作業は、栓にシリンジ針を刺し、シリンジで抜き取る操作が行われる。一度開封されたバイアルでは、品質の劣化や微生物の汚染などのリスクが存在している。また、注射用抗がん剤等については、安全な複数回使用のための指針が公的機関から示されているが、3回以上の使用や、最初に針刺しをした当日を超える保管が非推奨である等の制約が多い。このため、バイアルに残留した余剰量は、多くの医療機関で廃棄されているのが実情である。
【0007】
特許文献1、2には、抗がん剤等の医薬品をバイアルから輸液容器に注入する操作を、注射器を保持したロボットアームで実施する混注装置が記載されている。この混注装置は、作業者の安全確保、被曝防止に効果が期待されるものの、チャンバー内にロボットアームを有することから、高価で大規模な機械となっている。このため、導入コストや設置スペースの面から、医療機関への普及は限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-52250号公報
【特許文献2】国際公開第2016/148196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ロボットアームを用いることなく、小型化が可能であり、液状の医薬品組成物を複数回吐出することが可能な医薬品ディスペンサー機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、液状の医薬品組成物を吐出する医薬品ディスペンサー機器であって、前記医薬品組成物またはその原料が、1回分の使用量を超える量で収容された少なくとも1つのカートリッジ容器と、前記カートリッジ容器の装着および取り外しが可能な装着部と、前記医薬品組成物を吐出する吐出部と、前記医薬品組成物の吐出に当たり、前記吐出部から吐出される前記医薬品組成物またはその原料の使用量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする医薬品ディスペンサー機器を提供する。
【0011】
前記医薬品組成物が、ハザードドラッグ(HD)を含有してもよい。
前記医薬品組成物またはその原料の計量と、前記医薬品組成物の吐出とが、それぞれ無菌的に実施可能であってもよい。
前記吐出部には、前記医薬品組成物が吐出される先の液体容器との間に、閉鎖式薬物移送システム(CSTD)のアダプタを備えてもよい。
前記アダプタは、前記吐出部に対して、取り外し、または取り替えが可能であってもよい。
前記装着部に装着されたカートリッジ容器と、前記吐出部との間が、閉鎖された管路または容器のみにより連結されていてもよい。
【0012】
前記医薬品組成物が、高活性医薬品であってもよい。
前記医薬品組成物が、注射剤であってもよい。
前記医薬品組成物が、抗がん剤、ステロイド剤、免疫抑制剤、性ホルモン剤、抗ウイルス剤、抗菌剤から選択される1種以上の成分を含有してもよい。
【0013】
前記カートリッジ容器は、他のカートリッジ容器と判別可能な識別子を有し、前記制御部は、前記使用量の制御に際して、前記識別子により前記カートリッジ容器に収容された収容物に関する情報を認識して、前記吐出部から吐出される前記医薬品組成物の量を制御してもよい。
前記制御部は、前記カートリッジ容器に収容された収容物に設定された少なくとも1種の使用期限を前記識別子により認識して、前記使用期限のいずれかの経過後には前記収容物を使用しないように制御してもよい。
前記制御部は、前記吐出部から吐出される前記医薬品組成物またはその原料の使用量を、演算により算出してもよい。
【0014】
前記カートリッジ容器が2種以上の収容物を収容した複室構造を有してもよい。
前記複室構造を有する前記カートリッジ容器は、前記2種以上の収容物を前記カートリッジ容器の内部で混合または溶解させるための連通部を有してもよい。
前記カートリッジ容器は、前記医薬品ディスペンサー機器の流路に残留する成分を洗浄するための洗浄液を有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロボットアームを用いることなく、小型化が可能であり、HDを含有する場合であっても、液状の医薬品組成物を複数回吐出することが可能な医薬品ディスペンサー機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の医薬品ディスペンサー機器を示す概略図である。
図2】制御部における処理の一例を示す概略図である。
図3】第2実施形態の医薬品ディスペンサー機器を示す概略図である。
図4】第3実施形態の医薬品ディスペンサー機器を示す概略図である。
図5】第4実施形態の医薬品ディスペンサー機器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。後述する各実施形態の医薬品ディスペンサー機器から吐出される医薬品組成物は、液状の医薬品組成物である。前記医薬品組成物は、ハザードドラッグ(HD)を含有してもよい。前記医薬品組成物は、高活性医薬品であってもよい。
【0018】
上述のHDは、一般に、人体に対する曝露によって健康障害をもたらす医薬品または、健康障害をもたらすことが疑われる医薬品である。健康障害としては、発がん性、催奇性、生殖毒性、臓器毒性、遺伝毒性等が挙げられる。また、健康障害をもたらすことが疑われる場合としては、上述した健康障害をもたらす医薬品に構造または毒性が類似していることが挙げられる。HDの具体例としては、例えば、米国労働安全衛生研究所(NIOSH:National Institute for Occupational Safety and Health)の定義によるHDが挙げられる。
【0019】
上述の高活性医薬品は、少量で人体に強い作用または毒性を有する薬剤であり、無毒性量、許容暴露限界、一日許容摂取量等を判断基準として判別することができる。具体的には、例えば、気中の濃度が1μm/mの低濃度であっても、人体に生理活性作用をもたらす医薬品が挙げられる。
【0020】
前記医薬品組成物として、経口で投与される内服薬、経皮で投与される外用薬、注射により体内に投与される注射剤等が挙げられる。注射剤は、消化器官による代謝や皮膚による防御を経ることなく体内に投与される。このため、注射剤は無菌的に調製する必要がある。後述の医薬品ディスペンサー機器は、無菌調製にも好適に利用することができる。注射剤の投与場所としては、特に限定されないが、皮下、筋肉内、血管内等が挙げられる。
【0021】
前記医薬品組成物は、液状である。前記医薬品組成物が溶液であってもよく、懸濁液であってもよく、乳濁液であってもよい。有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳濁させることにより、前記医薬品組成物を調製することができる。前記医薬品組成物の溶剤としては、精製水、水性溶剤、非水性溶剤などから選択される1種の溶剤でもよく、2種以上の混合溶剤であってもよい。前記医薬品組成物は、添加剤を含有してもよい。
【0022】
前記医薬品組成物の種類は特に限定されないが、例えば、抗がん剤、ステロイド剤、免疫抑制剤、性ホルモン剤、抗ウイルス剤、抗菌剤から選択される1種以上の成分を含有していてもよい。有効成分は、液体でもよく、粉末等の固体であってもよい。前記医薬品組成物が1種の有効成分を含有してもよく、2種以上の有効成分を含有してもよい。添加剤は、液体でもよく、粉末等の固体であってもよい。前記医薬品組成物が1種の添加剤を含有してもよく、2種以上の添加剤を含有してもよい。
【0023】
前記医薬品組成物の投与量とは、医薬品ディスペンサー機器から吐出された医薬品組成物が人体に投与される量、または、投与の目標として設定される量である。投与量は、上述したように、体重、体表面積などに対する割合として薬剤ごとに設定されている場合がある。前記医薬品組成物またはその原料の使用量とは、医薬品ディスペンサー機器に収容された医薬品組成物またはその原料が1回の調製に使用される量、または、調製の目標として設定される量である。使用量は、1回の吐出操作で、医薬品ディスペンサー機器から吐出される量(吐出量)に対応させてもよい。使用量が投与量に等しく設定されてもよい。使用量の一部が人体に投与されずに、容器等に残留する等の事情が想定される場合は、投与量より多い使用量が設定されてもよい。投与量より多い使用量を算出する演算方法としては、特に限定されないが、例えば、一定の差の加算、一定の比率の乗算などが挙げられる。また、医薬品ディスペンサー機器へ吐出量を直接入力してもよい。
【0024】
図1に、第1実施形態の医薬品ディスペンサー機器の概略を示す。医薬品ディスペンサー機器10は、前記医薬品組成物が収容されたカートリッジ容器11と、カートリッジ容器11の装着および取り外しが可能な装着部12を有する本体部13と、前記医薬品組成物を吐出する吐出部14と、を有する。本体部13には、医薬品ディスペンサー機器10の動作の制御等を行う制御部15が内蔵されている。
【0025】
制御部15は、前記医薬品組成物の吐出に当たり、前記医薬品組成物の使用量を制御する。制御部15は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、マイクロコントローラ、IC(集積回路)等が挙げられる。制御部15の機能を本体部13の2箇所以上に配置してもよい。制御部15の機能の一部または全部を、カートリッジ容器11、吐出部14等に配置してもよい。制御部15の機能の一部または全部を、本体部13に接続された外部の電子計算機等で行うことも可能である。
【0026】
図2に、制御部15における処理の一例を示す。入力部21は、制御部15の演算処理に必要な情報を制御部15に入力するために使用される。入力部21としては、例えばキーボード、タッチパネル、カードリーダー、コードリーダー、マウス、スキャナ、カメラ、マイクロフォン等が挙げられる。入力部21を本体部13に設けてもよい。入力部21を外部機器とする場合は、無線または有線により、外部機器として入力部21を本体部13に接続してもよい。入力部21からの情報の入力は、手動で行ってもよく、自動で行われてもよい。
【0027】
制御部15は、演算処理に必要な情報を記憶するための記憶装置として、内部メモリーまたは外部メモリーを有してもよい。例えば、市販されている種々の薬剤に関する情報を、あらかじめ制御部15に記憶しておいてもよい。これにより、入力部21から入力される情報が、演算処理に必要な情報の一部であっても、入力部21から入力される情報を、あらかじめ制御部15に記憶されている情報と組み合わせて、必要な情報を補充することができる。制御部15は、必要に応じて、記憶されている情報の更新、変更、追加、削除等の操作が可能であってもよい。制御部15に記憶されている情報の操作は、例えば、入力部21から入力される情報に基づいて行うことができる。制御部15で演算して得られる使用量は、制御部15に記憶されている情報に依存して決定することができる。医薬品組成物の使用量が吐出操作ごとに異なってもよく、同一になってもよい。患者ごとに投与量または使用量を記憶し、今回の投与量または使用量を前回の投与量または使用量と比較する等の制御に利用してもよい。記憶装置がデータベースを含んでもよい。
【0028】
入力部21から入力される情報として、例えば、第1情報21aは、投与を受ける患者ごとに異なる情報のうち、投与量の決定に必要な情報である。第1情報21aとしては、身長、体重、体表面積などが挙げられる。
第2情報21bは、投与される医薬品組成物の種類による情報である。第2情報21bとしては、有効成分の名称、使用期限などが挙げられる。
第3情報21cは、第1情報21aまたは第2情報21bの補完、確認等に用いられる情報である。第3情報21cとしては、例えば、電子カルテ、処方箋等の情報が挙げられる。
【0029】
医薬品組成物の投与量は、第1情報21aおよび第2情報21bを用いて自動的に算出することができる。投与量の算出は、第1情報21aおよび第2情報21bが入力されたとき、自動で行うことができる。第3情報21cの入力を省略可能にしてもよい。医薬品組成物の種類、医療機関の運用指針等に応じて、第3情報21cの入力を必須にすることも可能である。医薬品組成物の投与量とは異なる使用量を設定する場合は、投与量と使用量との差異に関する情報が第3情報21c等に設定されてもよい。制御部15は、吐出部14から医薬品組成物を吐出する前に、カートリッジ容器11に収容された医薬品組成物の使用量を算出することができる。出力部22は、制御部15の演算結果に応じて、吐出部14等の制御に必要なトリガーを生成する。目標とする医薬品組成物の使用量が、制御部15で算出され、または入力部21から入力されると、医薬品ディスペンサー機器10は、吐出部14から医薬品組成物を吐出する準備状態となる。
【0030】
本体部13は、カートリッジ容器11と吐出部14を連絡する管路16を有する。装着部12に装着されたカートリッジ容器11と、吐出部14との間が、閉鎖された管路16のみにより連結されていてもよい。吐出部14は、吐出先の液体容器(図示せず)に対して、医薬品組成物を吐出する。吐出部14は、ノズル、チューブ等の管路16における鋭利部を有しない先端部であってもよい。吐出先の液体容器がゴム栓等の栓体を有する場合は、吐出部14が注射針であってもよい。
【0031】
吐出先の液体容器は、吐出部14から吐出された医薬品組成物が人体に投与されるまでの間、医薬品組成物を保管するための容器である。吐出先の液体容器は、医薬品組成物を人体に投与するための機能を有してもよい。例えば、医薬品組成物が注射剤の場合は、輸液バッグ等の輸液容器を用いてもよい。吐出先の液体容器の内部が真空または減圧状態にされていてもよい。吐出先の液体容器が伸縮可能で、吐出に従って液体容器の内容積が増加してもよい。吐出先の液体容器には、予め気体や液体等が収容されていてもよい。吐出先の液体容器に輸液、生理食塩水、注射用水等の液体が収容されている場合は、この液体を吐出部14から吐出された医薬品組成物と混合して、調製に用いることができる。
【0032】
吐出部14には、吐出先の液体容器との間に、閉鎖式薬物移送システム(CSTD)のアダプタ18を備えていてもよい。この場合は、吐出部14が吐出先の液体容器と接触することを抑制することができる。アダプタ18は、吐出先の液体容器と連結可能であればよく、形状、構造等は特に限定されない。また、アダプタ18を吐出先の液体容器から取り外したときには、自動的に口部が閉鎖する機能を有してもよい。アダプタ18は、吐出部14に対して、取り外し、または取り替えが可能であってもよい。アダプタ18が、吐出部14から医薬品組成物が吐出される度に廃棄される使い捨てであってもよい。
【0033】
吐出部14から医薬品組成物を吐出する操作は、所定の開始トリガーに応じて開始される。開始トリガーは、例えば、本体部13または外部機器に設けられたスイッチ等の操作により生成されてもよい。制御部15は、開始トリガーに基づいて、カートリッジ容器11から管路16を通じて、吐出部14から医薬品組成物が吐出されるように制御する。吐出部14から吐出された医薬品組成物は、アダプタ18を通じて吐出先の液体容器に移送される。
【0034】
吐出部14から吐出される医薬品組成物の量(吐出量)は、例えばカートリッジ容器11に収容されている医薬品組成物の減少した量、管路16または吐出部14を通過した医薬品組成物の量などを検出することにより、制御してもよい。医薬品組成物の吐出および計量は、医薬品ディスペンサー機器10を用いることにより、無菌的に実施することが可能である。医薬品組成物の吐出量の計量は、質量の測定でもよく、体積の測定でもよい。吐出部14から吐出された医薬品組成物の吐出量が、制御部15により算出された医薬品組成物の使用量に到達したとき、制御部15は、終了トリガーを生成して、吐出部14からの医薬品組成物の吐出が停止するように制御することができる。これにより、過剰な量の医薬品組成物が吐出先の液体容器に移送されることが防止される。
【0035】
カートリッジ容器11に収容される収容物は、吐出部14から吐出される医薬品組成物と同一の医薬品組成物であってもよく、医薬品組成物の原料であってもよい。医薬品組成物の原料は、1種類の原料から医薬品組成物が生成する物質であってもよく、2種以上の原料の混合、反応等により、医薬品組成物が生成する物質であってもよい。HDまたは高活性医薬品を含有する医薬品組成物を2種以上の原料から調製する場合は、そのうちいずれかの原料がHDまたは高活性医薬品を含み、他の原料がHDまたは高活性医薬品を含まなくてもよい。
【0036】
カートリッジ容器11に収容される収容物(医薬品組成物またはその原料)の量(収容量)は、1回分の使用量を超える量である。このため、吐出部14から医薬品組成物を吐出する度にカートリッジ容器11を交換する必要はない。カートリッジ容器11に収容されている収容物の収容量が、使用量の2回分以上であってもよい。この場合は、同一のカートリッジ容器11の収容物を、2回以上の吐出操作に使用することができる。
【0037】
カートリッジ容器11は、他のカートリッジ容器と判別可能な識別子11aを有していてもよい。識別子11aとしては、例えば、ICチップ等の電子的識別子、二次元コード等の光学的識別子、点字またはこれに類する凹凸符号等の構造的識別子などが挙げられる。識別子11aには、カートリッジ容器11に収容された収容物に関する情報を記録することができる。
【0038】
カートリッジ容器11に収容される収容物が製造されたとき、識別子11aに所定の情報を記録してもよい。このような情報としては、特に限定されないが、例えば、カートリッジ容器11の収容物またはその有効成分の量、収容物またはその有効成分の名称、収容物の商品名、製造者名、製造時期、製造場所、未開封における使用期限、開封後の使用期限等が挙げられる。
【0039】
識別子11aが外部から情報の書き込みが可能な記録媒体を有する場合は、識別子11aに対する情報の書き込み機能を、本体部13または外部機器に備えてもよい。カートリッジ容器11を装着部12に装着した後に記録される情報としては、例えば、カートリッジ容器11を開封した時期、カートリッジ容器11から収容物が排出された量などが挙げられる。
【0040】
制御部15は、識別子11aにより収容物の使用期限を認識して、使用期限の経過後には収容物を使用しないように制御することも可能である。例えば、カートリッジ容器11が装着部12に装着されてカートリッジ容器11が開封されたときに識別子11aの読み取りを開始してもよい。この場合は、読み取りの開始時刻を基準時点として、カートリッジ容器11に収容された収容物の使用期限を管理することができる。制御に利用する使用期限は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の使用期限を制御に利用する場合は、そのうちいずれか1種でも使用期限が経過したときに、収容物を使用しないように制御することができる。
【0041】
収容物の使用期限を経過したときには、制御部15が、カートリッジ容器11から収容物を排出すること、または吐出部14から医薬品組成物を吐出することを阻止するように制御してもよい。これにより、品質が低下した医薬品組成物の使用を防止することができる。また、制御部15は、カートリッジ容器11に残留している収容物の量(残留量)を記憶することにより、使用期限内であれば医薬品組成物を複数回繰り返して使用することができるように制御してもよい。
【0042】
カートリッジ容器11の収容物の残留量は、カートリッジ容器11に対する計量により直接、計測してもよい。開封前にカートリッジ容器11に収容されている収容物の量と、開封後にカートリッジ容器11から排出された収容物の量との差からの演算により、収容物の残留量を算出してもよい。収容物の残留量の計量は、質量の測定でもよく、体積の測定でもよい。
【0043】
装着部12に装着されたカートリッジ容器11を交換する場合は、同種の収容物を収容したカートリッジ容器11に交換してもよく、異なる種類の収容物を収容したカートリッジ容器11に交換してもよい。異なる種類の収容物を収容したカートリッジ容器11に交換された場合、上述した識別子11aから得られる情報、または、制御部15の内部メモリー機能を活用することにより、複数種類のHDに対しても、吐出量を算出するための演算式を使い分けることができる。これにより、簡便性を付与することができる。
【0044】
新しく交換されるカートリッジ容器11の収容物に関する情報が、新しいカートリッジ容器11の識別子11aにも制御部15の内部メモリーにも記録されていない場合は、制御部15の内部メモリーを更新して、新しい収容物に関する情報を入力してもよい。これにより、新しい薬剤への対応も容易になる。内部メモリーの更新は、本体部13または外部機器に設けられる入力部21から実施してもよい。
【0045】
本体部13は、医薬品ディスペンサー機器10の外部へ情報を出力するための機能を備えていてもよい。例えば、吐出部14から吐出先の液体容器に医薬品組成物を吐出して、医薬品組成物の調製が完了した後に、操作の記録をデータサーバーやプリンター等の外部機器に転送してもよい。本体部13に液晶表示装置等の出力装置を設けてもよい。必要に応じて、操作の記録を電子カルテと連動させてもよい。操作の記録を処方の監査に利用してもよい。操作の記録に基づいて、吐出先の液体容器に貼付するためのラベルを出力することも可能である。
【0046】
医薬品ディスペンサー機器10は、小型であり、かつ、カートリッジ容器11から吐出部14を通じて吐出先の液体容器への薬剤の移送を自動で行うことができる。このため、医療機関における薬剤の投与に先立って、薬剤を調製する作業を容易にすることができる。例えば、注射剤を準備する際には、従来のように、バイアルから注射器を用いて薬剤を抜き取り、輸液バッグ等の液体容器中に注入して混注する操作を置き換えることができる。医薬品ディスペンサー機器10を輸液バッグ等の液体容器に接続して、簡単な操作を行うだけで、所定の量の医薬品組成物が液体容器に注入される。医薬品ディスペンサー機器10から液体容器を取り外す操作も容易であり、液体容器中に調製された医薬品組成物を患者に速やかに投与することができる。薬剤を調製する際に医薬品ディスペンサー機器10を移動させる必要がないため、所定の位置に医薬品ディスペンサー機器10を配置しておけば、薬剤の管理も容易になる。安全キャビネット内で医薬品ディスペンサー機器10を操作する場合も、医薬品ディスペンサー機器10の占有スペースが小さいため、小型の安全キャビネットを使用することができる。
【0047】
医薬品ディスペンサー機器10を用いた操作によれば、ロボットアームを備えた高価な機械を必要とせず、医療従事者が高リスク操作を行う必要もない。医療従事者の安全性を高めると共に、導入コストが相対的に低廉である。医薬品ディスペンサー機器10におけるカートリッジ容器11、識別子11a、制御部15、アダプタ18等の部品には、既存の器具、装置等のインフラを活用してもよい。これにより、従来の製品では導入が難しかった医療機関での使用が促進される。
【0048】
カートリッジ容器11は、バイアル、シリンジ、パウチ、ボトルなど、様々な形態の容器から選択することができる。カートリッジ容器11は、フレキシブルな容器でもよく、リジッドな容器でもよい。カートリッジ容器11の少なくとも一部にフレキシブルな構造を有する場合は、収容物の量の減少に応じて、カートリッジ容器11を変形させ、容量を減少させてもよい。
【0049】
医薬品組成物の投与量または使用量を正確に制御するため、カートリッジ容器11内の収容物の濃度変化を抑制することが好ましい。例えば、収容物が薬剤の水溶液を含有する場合には、水分蒸散を防止するための水蒸気バリア性が付与されることが望ましい。カートリッジ容器11はガラス製でもプラスチック製でもよいが、必要に応じて、水蒸気バリア性を付与することが好ましい。
【0050】
カートリッジ容器11は、収容物に接触して収容する一次容器と、一次容器を収容して、収容物には接触しない二次容器とから形成されていてもよい。水分蒸散を防止するための水蒸気バリア性は、一次容器に付与されてもよく、二次容器に付与されてもよい。二次容器は、ラミネートフィルム製のパウチ、紙箱等から形成されてもよい。装着部12にカートリッジ容器11を装着する際、一次容器を二次容器から取り出して、一次容器のみを装着してもよい。一次容器を収容したままの二次容器を装着部12に装着してもよい。
【0051】
水蒸気バリア性を付与するためのバリア層は、例えば、アルミニウム等の金属を蒸着した蒸着フィルム、アルミナやシリカ等の無機化合物を蒸着した蒸着フィルム、アルミニウム箔等の金属箔から形成することができる。緻密な金属層は、各種のガス成分に対して、高いバリア性を付与することができるので、好ましい。
【0052】
カートリッジ容器11には、必要に応じて収容物の品質低下を抑制するため、遮光性、酸素ガスバリア性等が付与されてもよい。遮光性は、可視光線の遮断に限らず、紫外線または赤外線の遮断であってもよい。容器の外部から内部への光線の遮断は、光線の反射、拡散、吸収等により行うことができる。容器に遮光性を付与する物質としては、有機顔料、無機顔料、染料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤等が挙げられる。酸素ガスバリア性は、上述の蒸着フィルム等に限らず、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン樹脂等のバリア性樹脂を用いて付与することも可能である。
【0053】
図3に、第2実施形態の医薬品ディスペンサー機器20を示す。医薬品ディスペンサー機器20の本体部13には、2つ以上のカートリッジ容器11を装着することができる。各カートリッジ容器11に収容されている収容物は、医薬品組成物またはその原料である。各カートリッジ容器11には、それぞれの収容物が1回分の使用量を超える量で収容されている。
【0054】
本体部13は、各カートリッジ容器11に収容されている収容物を混合するための容器17を内蔵していてもよい。各カートリッジ容器11と容器17との間、および容器17および吐出部14との間が、それぞれ管路16により連結されている。これにより、装着部12に装着された各カートリッジ容器11と、吐出部14との間が、閉鎖された管路16および容器17のみにより連結することができる。
【0055】
各カートリッジ容器11に収容されている収容物は、吐出部14から吐出される医薬品組成物の原料であってもよい。例えば、医薬品組成物の有効成分を第1のカートリッジ容器11に収容し、医薬品組成物の添加剤を第2のカートリッジ容器11に収容してもよい。この場合は、本体部13の容器17内で有効成分と添加剤とを混合して得られる医薬品組成物を吐出部14から吐出することができる。有効成分が粉末等の固体である場合には、添加剤は、有効成分を溶解、懸濁または乳濁させる溶剤であってもよい。添加剤が、有効成分の原液を希釈する溶剤であってもよい。
【0056】
容器17において2種類以上の収容物を混合する場合は、振動等により、収容物を撹拌してもよい。容器17において収容物が混合されるまでの間、容器17と吐出部14との間の管路16を閉鎖してもよい。
【0057】
制御部15は、吐出部14からの医薬品組成物の吐出に当たり、各カートリッジ容器11に収容されている医薬品組成物のそれぞれの原料の使用量を演算し、管路16を通じて容器17に供給してもよい。有効成分の投与量は、患者の身長、体重、体表面積などにより演算してもよい。添加剤の使用量は、患者の身長、体重、体表面積などにより演算してもよく、有効成分の投与量または使用量に応じて演算してもよい。各原料の使用量を、医薬品組成物の吐出量から演算してもよい。
【0058】
図4に、第3実施形態の医薬品ディスペンサー機器30を示す。医薬品ディスペンサー機器30の本体部13には、複室構造のカートリッジ容器11Aを装着することができる。カートリッジ容器11Aは、2種類の収容物を収容するための2つの収容室11b,11cを有する。それぞれの収容室11b,11cに収容されている収容物は、いずれも、医薬品組成物またはその原料である。それぞれの収容室11b,11cには、それぞれの収容物が1回分の使用量を超える量で収容されている。
【0059】
収容室11bには、HDを含有する液状の医薬品組成物が収容されている。収容室11cには、洗浄液が収容されている。医薬品として使用可能な洗浄液としては、例えば、生理食塩水、注射用水等が挙げられる。制御部15は、吐出部14からの医薬品組成物の吐出に当たり、医薬品組成物の使用量を制御し、収容室11bから管路16を通じて吐出部14に供給してもよい。
【0060】
所定の投与量に応じた医薬品組成物を収容室11bから排出した後で、医薬品組成物の一部が流路に残留する場合がある。洗浄液は、医薬品ディスペンサー機器30の内部の流路に残留する成分を洗浄することができる。本実施形態の医薬品ディスペンサー機器30において、流路は、管路16および吐出部14から形成されている。
【0061】
吐出部14から所定量の医薬品組成物が吐出された後、収容室11cから洗浄液を吐出して、フラッシング操作をすることができる。これにより、管路16および吐出部14を洗浄して、医薬品組成物が流路に残留することを抑制することができる。吐出部14からアダプタ18および吐出先の液体容器を取り外したとき、HDを含有する成分の漏出に由来する被曝を抑制することができる。
【0062】
フラッシング操作は、吐出部14に吐出先の液体容器が接続されているときに実施してもよい。これにより、流路に残留した医薬品組成物を、吐出先の液体容器に吐出させることができる。その結果、カートリッジ容器11Aから排出されたHDの量と、吐出先の液体容器に供給されたHDの量との差を低減することができる。
【0063】
フラッシング操作は、吐出部14から吐出先の液体容器を取り外した後に実施してもよい。吐出部14には、廃棄される薬剤を受容する液体容器を接続してもよい。これにより、流路に残留した医薬品組成物に変質、劣化が生じていても、吐出先の液体容器に混入することなく、流路を洗浄することができる。
【0064】
特に図示しないが、複室構造のカートリッジ容器11Aが、3以上の収容室を有してもよく、3種類以上の収容物を収容してもよい。カートリッジ容器11Aの構成は、2以上の収容室11b,11cを有すること以外は、第1実施形態のカートリッジ容器11と同様としてもよい。カートリッジ容器11Aは、収容室ごとに異なる排出口を有することにより、異なる収容室に収容されている収容物を、それぞれ異なる排出口から排出することができる。
【0065】
図5に、第4実施形態の医薬品ディスペンサー機器40を示す。医薬品ディスペンサー機器40の本体部13には、複室構造のカートリッジ容器11Bを装着することができる。カートリッジ容器11Bは、2種類の収容物を収容するための2種類の収容室11b,11cを有する。各収容室11b,11cに収容されている収容物は、いずれも、医薬品組成物またはその原料である。各収容室11b,11cには、それぞれの収容物が1回分の使用量を超える量で収容されている。
【0066】
カートリッジ容器11Bは、2種の収容物をカートリッジ容器11Bの内部で混合または溶解させるための連通部11dを有する。連通部11dに対する連通操作により、収容室11b,11cを連通させることができる。連通部11dは、連通操作を行う前には、収容室11b,11cの間を閉鎖し、連通操作の後には、収容室11b,11cの間に内部流路を形成することができる。連通部11dは、例えば、内部流路に配置された弁の開閉、接着または溶着された領域の剥離などにより形成することができる。
【0067】
カートリッジ容器11Bにおける連通部11dの連通操作は、カートリッジ容器11Bを装着部12に装着する前に実施してもよく、カートリッジ容器11Bを装着部12に装着した後に実施してもよい。機器等を用いて自動で連通操作を実施してもよく、手作業で連通操作を実施してもよい。
【0068】
各収容室11b,11cに収容されている収容物は、吐出部14から吐出される医薬品組成物の原料であってもよい。例えば、医薬品組成物の有効成分を収容室11bに収容し、医薬品組成物の添加剤を収容室11cに収容してもよい。この場合は、カートリッジ容器11B内で有効成分と添加剤とを混合して得られる医薬品組成物を吐出部14から吐出することができる。有効成分が粉末等の固体である場合には、添加剤は、有効成分を溶解、懸濁または乳濁させる溶剤であってもよい。添加剤が、有効成分の原液を希釈する溶剤であってもよい。
【0069】
制御部15は、吐出部14からの医薬品組成物の吐出に当たり、各収容室11b,11cに収容されている医薬品組成物のそれぞれの原料の使用量を演算し、管路16を通じて容器17に供給してもよい。有効成分の投与量は、患者の身長、体重、体表面積などにより演算してもよい。添加剤の使用量は、患者の身長、体重、体表面積などにより演算してもよく、有効成分の投与量または使用量に応じて演算してもよい。
【0070】
特に図示しないが、カートリッジ容器11Bが、3以上の収容室を有してもよく、3種類以上の収容物を収容してもよい。カートリッジ容器11Bの構成は、2以上の収容室11b,11cおよび連通部11dを有すること以外は、第1実施形態のカートリッジ容器11と同様としてもよい。連通部11dを有するカートリッジ容器11Bは、異なる収容室に収容されている収容物を同一の排出口から排出することができる。
【0071】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。また、2以上の実施形態に用いられた構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【0072】
例えば、第4実施形態のカートリッジ容器11Bにおいて、第3実施形態のカートリッジ容器11Aのように、洗浄液を収容する収容室を追加してもよい。この場合のカートリッジ容器(図示せず)は、有効成分を収容する収容室と、添加剤を収容する収容室と、洗浄液を収容する収容室とを有する。有効成分を収容する収容室と、添加剤を収容する収容室との間が連通部により連通されていてもよい。洗浄液を収容する収容室は、他の収容室とは別の排出口に接続されていてもよい。
【0073】
カートリッジ容器11,11A,11Bをプラスチックから形成する場合は、例えば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、エラストマーなどを用いることができる。カートリッジ容器11,11A,11Bが1種のプラスチックから形成されてもよく、2種以上のプラスチックから形成されてもよい。
【0074】
プラスチックは、フィルム、シート、チューブ、成形品などとして容器に用いることができる。プラスチックを含む積層体から容器を形成する場合は、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート、共押出、多層ブロー成形、積層射出成形、コーティング等により各層を積層することができる。積層体は、プラスチックから形成された層に加えて、金属または無機化合物を含む層を有してもよい。
【0075】
カートリッジ容器11,11A,11Bと本体部13の管路16との間には、収容室を開放および閉鎖するための開閉構造を有してもよい。開閉構造は、カートリッジ容器11,11A,11Bから収容物を排出するときに開放され、それ以外のときは閉鎖されるように制御されてもよい。開閉構造をカートリッジ容器11,11A,11Bに形成してもよい。カートリッジ容器11,11A,11Bの開閉構造が、カートリッジ容器11,11A,11Bを装着部12に装着したときに開封状態となる場合は、本体部13の管路16側に開閉構造を配置してもよい。
【0076】
カートリッジ容器11,11A,11Bは、医薬品ディスペンサー機器10,20,30,40とは別々に流通させることも可能である。カートリッジ容器11,11A,11Bを医薬品ディスペンサー機器10,20,30,40に装着させた状態で流通させることも可能である。カートリッジ容器11,11A,11Bを交換することにより、収容物を容易に補充することができる。カートリッジ容器11,11A,11Bは、使い捨てで廃棄してもよい。医薬品ディスペンサー機器10,20,30,40は、使い捨てまたは数回程度の使用で廃棄してもよい。
【0077】
容器の製造工程の任意の過程で、滅菌操作に付すことで、無菌性を保持したプラスチック容器を製造することができる。また、所望に応じて、容器への充填の前に、防塵フィルターを用いた濾過等の操作を行ってもよい。プラスチック容器の滅菌方法としては、例えば、γ線、電子線、X線等の照射による放射線滅菌法、エチレンオキサイドや過酸化水素等を用いたガス滅菌法、熱水浸漬滅菌法、熱水シャワー滅菌法、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)法等が挙げられる。
【0078】
医薬品ディスペンサー機器を用いた医薬品組成物の調製方法としては、例えば次のような手順が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)カートリッジ容器の収容物を吐出部から液体容器に吐出することで、医薬品組成物が収容された液体容器を得る。
(2)カートリッジ容器の収容物を混合し、得られた医薬品組成物を吐出部から液体容器に吐出することで、医薬品組成物が収容された液体容器を得る。
(3)カートリッジ容器の収容物を吐出部から液体容器に吐出し、液体容器の収容物と混合することで、医薬品組成物が収容された液体容器を得る。
(4)カートリッジ容器の収容物を吐出部から液体容器に吐出した後、液体容器に他の医薬品組成物または原料を注入して混合することで、医薬品組成物が収容された液体容器を得る。
【符号の説明】
【0079】
10,20,30,40…医薬品ディスペンサー機器、11,11A,11B…カートリッジ容器、11a…識別子、11b,11c…収容室、11d…連通部、12…装着部、13…本体部、14…吐出部、15…制御部、16…管路、17…容器、18…アダプタ、21…入力部、21a…第1情報、21b…第2情報、21c…第3情報、22…出力部。
図1
図2
図3
図4
図5