(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063291
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220414BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220414BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20220414BHJP
G01N 27/447 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01N21/17 D
G01N21/64 Z
G01N21/05
G01N27/447 315K
G01N27/447 325A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017630
(22)【出願日】2022-02-08
(62)【分割の表示】P 2020525214の分割
【原出願日】2018-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智
(72)【発明者】
【氏名】伊名波 良仁
(72)【発明者】
【氏名】穴沢 隆
(72)【発明者】
【氏名】坂井 友幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佑介
(57)【要約】
【課題】本発明は、蛋白質の解析を高スループットで実行することを可能にした電気泳動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この電気泳動装置は、複数のキャピラリを配列してなるキャピラリアレイと、吸光度測定のための第1測定光を、前記第1レンズアレイを介して前記キャピラリアレイに照射する第1測定光照射部と、前記キャピラリからの光を、同時に、または逐次的に、受光する受光部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャピラリを配列してなるキャピラリアレイと、
吸光度測定のための第1測定光を、前記第1レンズアレイを介して前記キャピラリアレイに照射する第1測定光照射部と、
前記キャピラリからの光を、同時に、または逐次的に、受光する受光部と
を備える
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項2】
前記測定光照射部は、測定光が各キャピラリの泳動方向に照射される、
請求項1に記載の電気泳動装置。
【請求項3】
蛍光測定のための第2測定光照射部をさらに備える、
請求項1または2に記載の電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛋白質の解析等を目的としたキャピラリを用いた電気泳動装置が知られている(例えば特許文献1参照)。従来、市場に提供されている、蛋白質の解析用のキャピラリ電気泳動装置においては、蛋白質の解析のためのキャピラリが1本であり、スループットの向上が難しい。蛋白質の蛍光強度測定と、蛋白質の吸光度測定とを、1つの装置において高スループットで実行可能な装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、蛋白質の解析を高スループットで実行することを可能にした電気泳動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電気泳動装置は、複数のキャピラリを配列してなるキャピラリアレイと、測定光を照射する測定光照射部と、前記複数のキャピラリに対応して配列される複数の第1レンズを含む第1レンズアレイと、前記複数のキャピラリに対応して配列される複数の第2レンズを含む第2レンズアレイと、前記測定光照射部から前記第1レンズアレイを介して前記キャピラリに入射する光を前記第2レンズアレイを介して受光する受光部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蛋白質の解析を高スループットで実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の全体構成の概略図である。
【
図2】測定光照射部及び受光部の構成例を示す概略図(平面図)である。
【
図3】測定光照射部及び受光部の構成例を示す概略図(断面図)である。
【
図4】第2の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の測定光照射部及び受光部の構成例を示す概略図である。
【
図5】第2の実施の形態の光分岐回路の一例を示す。
【
図6】第2の実施の形態の光分岐回路の一例を示す。
【
図7】第3の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の測定光照射部及び受光部の構成例を示す概略図である。
【
図8】第4の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の測定光照射部及び受光部の構成例を示す概略図である。
【
図10】第5の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の測定光照射部の構成例を示す概略図である。
【
図12】第6の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の測定光照射部及び受光部の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0009】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置1の全体構成の概略図を示す。
キャピラリ電気泳動装置1は、測定対象物であるサンプルを収納する複数のサンプル容器11と、サンプル容器11を保持するサンプルトレイ12と、複数のキャピラリ14から構成されるキャピラリアレイ13と、高電圧をキャピラリ14に印加する高圧電源15と、電気泳動分離時にサンプル注入側のキャピラリアレイ13及び電極が浸されるバッファー液を保持する電極槽10と、サンプル注入側とは反対側のバッファー液を保持する電極槽21と、測定光照射部16と、受光部17と、キャピラリ14内に電気泳動媒体18を注入するポンプユニット19と、キャピラリ14内を一定の温度に保つ恒温槽20とを備える。
【0011】
サンプル容器11と電極槽10は移動台(図示せず)に保持され、サンプルを導入する際にはサンプル容器11が、泳動分離時には電極槽10が、キャピラリアレイ14の端部に移動する。また、図示していないが、このキャピラリ電気泳動装置1は、動作制御するための制御部、データ処理部、表示部、記録部などを備える。
【0012】
キャピラリアレイ13は、管状部材である石英製キャピラリ14を複数本(例えば、4本、8本、12本、16本、24本など)配列させて構成され、それらの一部に光照射部位8を有する。キャピラリ14は通常ポリイミドなどで被覆されているが、光照射部位8ではその被覆が除去され、被覆除去部分が整列されて光照射部位8が構成される。
【0013】
測定光照射部16は、キャピラリアレイ13に設けられた光照射部位8に測定光を照射するため、光源と、光ファイバやレンズなどの投光光学系を有する。また、受光部17は、キャピラリアレイ13の光照射部位8を透過した測定光やサンプル中の成分に付与された蛍光体からの蛍光を受光するための受光素子と、光ファイバやレンズや分光器などの受光光学系を備える。
【0014】
電気泳動媒体18(例えば、ポリマー水溶液)をキャピラリ14内に注入するポンプユニット19は、ゲルブロック23と、シリンジ24と、バルブ22と、キャピラリアレイ13との接続部25を有する。各キャピラリ14内に泳動媒体であるポリマー水溶液を充填する際には、キャピラリアレイ13を接続部25に連結し、例えば、図示しない制御部によって、バルブ22を閉じ、シリンジ24を押し込むことによって、シリンジ24内のポリマー水溶液がキャピラリ14内に注入される。バルブ22から電極槽21までの泳動路にも、バルブ操作によりポリマー水溶液を充填する。なお、
図1は、バルブ22が開閉バルブである例を示しているが、バルブ22を三方バルブなどで構築することも可能である。
【0015】
キャピラリ14へのサンプル導入は、周知のとおり、電気的な手段、圧力印加手段などにより行うことができる。電気的な手段によりサンプルを導入する場合は、サンプル容器11内のサンプル溶液内にキャピラリ14および電極を挿入し、電極槽21との間に電圧を印加することで行う。その後、サンプル容器11から共通の電極槽10に入れ替える。
高圧電源15により電圧が印加されると、サンプル内の成分は、電気泳動により分子量等の性質に従って分離しながらキャピラリ14内を電極槽21に向けて移動する。移動した成分は、キャピラリ14に設けられた光照射部位8で測定光照射部16により測定光が照射され、受光部17にて成分に付与された蛍光や成分を通過した透過光などが検出される。なお、キャピラリアレイ13の各キャピラリ14は、同じ長さになるように調整される。また、放熱特性向上のため、光照射部位以外は、各キャピラリ14は均等に分離して配置させるのが望ましい。
【0016】
図2及び
図3は、第1の実施の形態の測定光照射部16及び受光部17の構成例を示している。
図2は平面図であり、
図3は断面図である。この
図2の測定光照射部16は、キャピラリアレイ13において一列に並べられた複数のキャピラリ14に対し均一に測定光を照射するのに好適な構成を有している。また、本装置は、同じキャピラリにより、蛋白質の蛍光測定と吸光度測定を実行可能に構成されている。本装置によれば、キャピラリアレイ13の交換をすることなく、蛍光測定及び吸光度測定を測定することができる。
【0017】
この
図2の例の測定光照射部16は、光源101と、集光レンズ102と、光源側ファイバ103と、コリメートレンズ104と、矩形マスク105と、波長選択フィルタ106と、シリンドリカルビームエキスパンダ107と、矩形マスク108と、ミラー109、110と、トロイダルレンズアレイ111とを備えている。集光レンズ102は、光源側ファイバ103の入射端面に光源101からの光を集光させるよう構成されている。コリメートレンズ104は、光源側ファイバ103の出射端面から射出された光を平行光に変換する。矩形マスク105は、コリメートレンズ104から射出された平行光を、矩形状の光に絞るマスクである。波長選択フィルタ106は、測定の種類(吸光度測定、蛍光測定)に応じて、通過される波長を選択する機能を有する。
【0018】
シリンドリカルビームエキスパンダ107は、シリンドリカルレンズを含む光学系であり、矩形マスク105を通過させた矩形のビームをキャピラリアレイ13の配列に沿った方向に拡大するよう構成されている。シリンドリカルビームエキスパンダ107を通過した光は、矩形マスク108の矩形状の開口を通過し、ミラー109、110を介してトロイダルレンズアレイ111に入射する。トロイダルレンズアレイ111は、キャピラリアレイ13中のキャピラリ14の光照射部分の長手方向と同一の方向を長手方向として配列される複数のトロイダルレンズを有する。なお、キャピラリアレイ13の配列間隔やその他の状況によっては、トロイダルレンズに代えて通常のレンズを配列したレンズアレイを採用することも可能である。
【0019】
この測定光照射部16の構成によれば、光源101から発せられた光を、キャピラリアレイ13の配列に従ってシリンドリカルビームエキスパンダ107及び矩形マスク105、108により矩形状に成形する。シリンドリカルビームエキスパンダ107によりビームが拡大されることでビームの輝度はその断面において均一化され、キャピラリアレイ13の配列方向の強度のバラツキが抑えられる。更に、その輝度が均一化された光がトロイダルレンズアレイ111中のトロイダルレンズにより、対応するキャピラリアレイ13中のキャピラリ14に入射する。ビーム断面の輝度が均一化されることで、キャピラリ14の各々に入射する光の光量も均一化される。すなわち、複数のキャピラリ14の間で、入射される光の光量を略等しくすることができるので、複数のキャピラリ14を用いた場合においても、測定条件が均一化されるとともに、複数のキャピラリ14に対し同時に測定を実行することができる。
【0020】
また、受光部17は、レンズアレイ201と、光ファイバアレイ202とを備える。レンズアレイ201は、キャピラリアレイ13を通過した測定光を集光させて光ファイバアレイ202中の光ファイバの入射端面に集光させるよう構成される。レンズアレイ201は、トロイダルレンズアレイ111中のトロイダルレンズの数に対応する数のレンズを配列して構成されている。光ファイバアレイ202は、レンズアレイ201のレンズの数に対応する複数本の光ファイバを配列してなり、レンズアレイ201から入射した光を導光して、図示しない分光器に入射させ、図示しない光検出器にて光検出される。
【0021】
また、ミラー110とトロイダルレンズアレイ111との間には、蛍光用ダイクロイックミラー203が配置されている。この蛍光用ダイクロイックミラー203は、本装置において蛍光測定を行う場合において、光源101からミラー109及び110で反射して到達した測定光を通過させる一方、キャピラリアレイ13から発する蛍光を反射させる機能を有する。蛍光用ダイクロイックミラー203で反射した蛍光は、図示しない光学系を介して分光器に入射し、検出される。
【0022】
第1の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置によれば、複数のキャピラリ14の間で入射する光の輝度を均一にすることができ、蛋白質の吸光度を高スループットで測定することができる。光源101から発せられた光を、キャピラリアレイ13の配列に従ってシリンドリカルビームエキスパンダ107及び矩形マスク105、108により矩形状に成形する。シリンドリカルビームエキスパンダ107によりビームが拡大されることでビームの輝度はその断面において均一化される。更に、その輝度が均一化された光がトロイダルレンズアレイ111中のトロイダルレンズにより、対応するキャピラリアレイ13中のキャピラリに入射する。ビーム断面の輝度が均一化されることで、キャピラリ14の各々に入射する光の光量も均一化される。すなわち、複数のキャピラリ14の間で、入射される光の光量を略等しくすることができるので、複数のキャピラリ14を用いた場合においても、測定条件が均一化される。
【0023】
なお、矩形マスク105及び108の開口部の形状は、対向する辺が平行な矩形とすることができるが、これに代えて、
図2の右上に示すような、端部に向かうほどその幅が大きくなる糸巻き型の開口部108Nにしてもよい。キャピラリアレイ13の端部に位置するキャピラリでは、受光される測定光の輝度が中央部のキャピラリ14に比べ小さくなる傾向にある。この糸巻き型の開口部によれば、このような輝度のバラつきを補正することができる。なお、例ではレンズアレイを用いたが、単一レンズを使って結像させてもよい。
【0024】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るキャピラリ電気泳動装置を、
図4を参照して説明する。第2の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の全体構造は、第1の実施の形態(
図1)と同様である。この第2の実施の形態は、測定光照射部16の構成が第1の実施の形態とは異なっている。なお、第1の実施の形態の測定光照射部16の構成要素と共通の構成要素については
図2及び
図3と同一の符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0025】
この第2の実施の形態の測定光照射部16は、光源101、集光レンズ102、光分岐回路114、及びトロイダルレンズアレイ111を備えている。光分岐回路114は、集光レンズ102とトロイダルレンズアレイ111との間に設けられ、光源101からの光を複数の経路に分岐させる機能を有する。なお、
図4では、図示は省略しているが、この第2の実施の形態においても、蛍光測定のための蛍光用ダイクロイックミラー203を含む蛍光測定用の受光光学系を備えることができる。
【0026】
前述した第1の実施の形態では、光源101からの光がシリンドリカルビームエキスパンダ107によりキャピラリアレイ13の配列方向に拡大され、トロイダルレンズアレイ111においてキャピラリアレイ13内のキャピラリ14の本数に対応した数の光束に分割される。これに対し、第2の実施の形態では、光分岐回路114が光を分割する役割を有し、トロイダルレンズアレイ111に光が入射するよりも前に、測定光がキャピラリアレイ13中のキャピラリの本数に対応した数の光束に分割される。
光分岐回路114は、
図5に示すような光導波路であってもよいし、
図6に示すようなプリズムアレイ115であってもよい。この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同一の効果を奏することができる。
【0027】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るキャピラリ電気泳動装置を、
図7を参照して説明する。この第3の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の全体構造は、第1の実施の形態(
図1)と同様である。この第3の実施の形態は、測定光照射部16及び受光部17の構成が第1の実施の形態とは異なっている。
【0028】
第3の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置は、測定光照射部16が、光源101、集光レンズ102’、光ファイバアレイ116、及び集光光学系117を備えている。この測定光照射部16は、複数の光ファイバを配列してなる光ファイバアレイ116により光を複数の光に分割している。光ファイバアレイ116は、キャピラリ14の配列、及びキャピラリ14の数に合わせて複数の光ファイバを配列させて構成されている。ただし、光ファイバアレイ116中の光ファイバは、その出射端側でキャピラリアレイ13中のキャピラリ14の配列と対応して配列されていればよく、入射端側では、集光レンズ102’からの入射光が高効率に入射可能な配列とされていればよく、キャピラリアレイ13での配列と対応させる必要はない。なお、光ファイバアレイ116中の複数の光ファイバのうち、1本または複数の光ファイバを、参照光の導光用の光ファイバとして用いることもできる。光ファイバアレイ116の入射端側では、溶融末端方法により処理し、接着剤をなくし、損失を抑える光ファイバアレイとすることも有効である。
【0029】
また、光ファイバアレイ116中の複数の光ファイバの各々は、更に複数の光ファイバの集合であるバンドルファイバとされてもよい。なお、1本のバンドルファイバ中の複数の光ファイバは、入射端では丸形又はマトリクス状(複数行×複数列)に配列される一方で、出射端側では、一列に配置されていてもよい。出射端側の光ファイバがキャピラリ14の長手方向に一列に配置されることで、キャピラリ14に対し光を簡便に、高効率で入射させることが可能になる。
【0030】
光源101からの光は、集光レンズ102’により集光され、集光レンズ102’は光ファイバアレイ116の入射端側において光源101の像を結像させる。なお、図示は省略しているが、集光レンズ102’は、複数のレンズを備えていてもよく、また、光を均一に分散せるための光拡散素子を更に備えてもよい。
【0031】
また、この第3の実施の形態の受光部17は、集光光学系211と、光ファイバアレイ212と、蛍光用ビームスプリッタアレイ213と、集光レンズアレイ214と、光ファイバアレイ215とを備えている。集光光学系211は、キャピラリアレイ13を通過した測定光を集光させて光ファイバアレイ212の入射端面に入射させるよう構成されている。光ファイバアレイ212は、集光光学系211により集光された光を分光器216に向けて導光する機能を有する。光ファイバアレイ212を通過した光は、吸光度測定のための光として分光器216に入射する。
【0032】
一方、光源101から蛍光測定用の測定光(蛍光励起光)が出射されてキャピラリアレイ13に入射すると、キャピラリ14内を通る蛋白質に付加された蛍光体から蛍光が発生する。蛍光用ビームスプリッタアレイ213の各々は、この蛍光を反射させる機能を有する。蛍光用ビームスプリッタアレイ213は、蛍光測定用の測定光は透過させるよう構成されている。
【0033】
蛍光用ビームスプリッタアレイ213で反射した光は、集光レンズアレイ214の各々で集光されて光ファイバアレイ215の光ファイバの入射端面に入射し、分光器216まで導光される。
【0034】
この第3の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置によれば、光源101の光源像が集光レンズ102’で光ファイバアレイ116の入射端面に結像されるので、光ファイバアレイ116の複数の光ファイバへの入射光の輝度を略均一にすることができる。
このため、キャピラリアレイ13の複数のキャピラリ14に均一な輝度の光を照射することができ、複数のキャピラリを用いた場合でも、高いスループットで且つ正確な測定を行うことが可能となる。
【0035】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係るキャピラリ電気泳動装置を、
図8を参照して説明する。この第4の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の全体構造は、第1の実施の形態(
図1)と同様である。この第4の実施の形態は、測定光照射部16の構成が第1の実施の形態とは異なっている。
【0036】
この第4の実施の形態の測定光照射部16は、光源101と、集光レンズ102と、光源側ファイバ103と、コリメートレンズ104と、矩形マスク105と、波長選択フィルタ106と、ミラー118と、ポリゴンミラー119と、fθレンズ120と、トロイダルレンズアレイ111とを備えている。
【0037】
光源101~波長選択フィルタ106は、第1の実施の形態のものと同様のものであってよい。光源101から出て矩形マスク105でビーム成形されてミラー118で反射した測定光は、回転軸を中心に所定の速度で回転するポリゴンミラー119により所定の回転角で走査される。走査された光線は、fθレンズ120により光軸に平行な光に変換される。ポリゴンミラー119とfθレンズ120とにより構成される光走査部により測定光が走査がされることにより、測定光はトロイダルレンズアレイ111の複数のトロイダルレンズに順次入射する。前述の実施の形態では、トロイダルレンズアレイ111中の複数のトロイダルレンズに同時に測定光が入射するが、この第4の実施の形態では、同時ではなく、測定光が順次複数のトロイダルレンズのいずれかに入射する。複数のキャピラリにおいて、測定光の投影タイミングが異なるが、ポリゴンミラー119の回転速度を高速にすることにより、投影時間差の影響を受けずに、複数のキャピラリ14について略同一条件下で測定をすることが可能となる。このため、この第4の実施の形態でも、高スループットで複数のキャピラリを用いた蛋白質の吸光度測定を行うことが可能になる。
【0038】
図9は、第4の実施の形態の変形例を示している。この変形例では、
図8の構成に加え、更にミラー118とポリゴンミラー119との間に集光レンズ125を備えている。この集光レンズ125は、fθレンズ120から出た光が光軸に沿った平行光となるよう調整する役割を有する。fθレンズ120から出た光が平行光となることにより、トロイダルレンズアレイ111及びキャピラリアレイ13の光照射部位に対し高効率で測定光を入射させることが可能になる。
【0039】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態に係るキャピラリ電気泳動装置を、
図10を参照して説明する。この第5の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の全体構造は、第1の実施の形態(
図1)と同様である。この第5の実施の形態は、測定光照射部16の構成が前述の実施の形態とは異なっている。
【0040】
この第5の実施の形態の測定光照射部16は、光源101、集光レンズ102、ダイクロイックミラー121、光分岐回路114、トロイダルレンズアレイ111、ダイクロイックミラー122、励起波長単色化フィルタ123、及び集光レンズ124を備えている。光源101、集光レンズ102、光分岐回路114は、第2の実施の形態(
図4)と同様のものであってよい。
【0041】
前述の実施の形態では、吸光度測定の測定光と、蛍光測定の測定光とが同一の投影光路に沿ってキャピラリアレイ13に投影される構成を採用している。これに対し、この第5の実施の形態では、蛍光測定用の測定光は、吸光度測定の測定光とは異なる投影光路に沿って投影される。すなわち、この第5の実施の形態の測定光照射部16は、まずダイクロイックミラー121において、蛍光測定用の測定光は透過させる一方で、吸光度測定の測定光は反射させる。吸光度測定用の測定光は、第2の実施の形態と同様に、光分岐回路114で複数の光束に分岐され、トロイダルレンズアレイ111に入射する。
【0042】
一方、蛍光測定の測定光は、ダイクロイックミラー121を通過した後、ダイクロイックミラー122で反射し、励起波長単色化フィルタ124において、蛍光測定に用いられる波長成分の光のみが通過する。励起波長単色化フィルタ124を通過した蛍光測定用の測定光の1本の光束は、トロイダルレンズアレイ111を通過せず、
図10に示すように、キャピラリアレイ13中の複数のキャピラリ14に、その配列方向から入射する。なお、ダイクロイックミラー122は、蛍光測定に不要な近赤外光を透過させるような波長特性を有したものとすることができる。
蛍光体を付加された蛋白質がキャピラリ14内を通過し、蛍光測定用の測定光を照射されることにより蛍光を発すると、その蛍光はレンズアレイ201に入射し、光ファイバアレイ202により図示しない分光器まで導光される。蛍光測定用の測定光は、レンズアレイ201の主平面とは平行の方向(キャピラリアレイ13の複数のキャピラリ14の配列方向)に導光されるので、測定光は殆どレンズアレイ201には入射されない。このため、この第5の実施の形態によれば、高いS/N比で蛍光測定を実行することができる。
【0043】
この第5の実施の形態によっても、吸光度測定は前述の実施の形態と同様に実施することができ、複数のキャピラリに対し同時に、同一の条件で吸光度測定を実行することができるので、高スループットでの吸光度測定が可能になる。また、蛍光測定に関しては、1本の蛍光測定用の測定光を、1列に配列された複数のキャピラリ14に対し、その配列方向から照射する構成としているので、複数のキャピラリ14に対し同時に測定を行うことが可能になる。
【0044】
図11は、第5の実施の形態の変形例を示している。変形例では、蛍光測定用の測定光が照射する複数のキャピラリの位置が、吸光度測定用の測定光が照射する複数のキャピラリの位置と異なる。このように、吸光度測定の測定光と蛍光測定用の測定光の照射位置(通過位置)を異ならせることにより、異なる測定を、互いに干渉することなく実行することができ、測定のスループットを更に向上させることができる。なお、照射位置が異なることに対応して、受光部17は、吸光度測定の測定光の透過光を導光するための光ファイバアレイ212と、蛍光測定によりキャピラ14リで発生した蛍光を導光するための光ファイバアレイ215とを有している。また、
図11では、吸光度測定において、キャピラリ14の泳動路をいわゆるZ型になるように配置している。すなわち、不透明な絶縁体ブロックに両端が開口した中空部を設け、両開口端を透明窓材でシールし、また中空部の両端部に絶縁体外に通じる孔を設けた流路を複数配置したZ型流路アレイユニット300を設け、複数の孔にキャピラリ14を接続し、電気泳動路とする。中空部の径を十分小さくすることで、吸光度測定のための光路長を、蛍光測定のための光路長に比べ長くすることができる。中空部の内面は反射コーティング処理することで感度向上できる。
【0045】
なお、この第5の実施の形態及び変形例においては、
図11の左上に示すように、キャピラリアレイ13は、サンプルの泳動路となるキャピラリ13Rに加え、それらの間に適宜ダミーキャピラリ13Dを配置したものとすることができる。この場合、蛍光測定用の測定光は、キャピラリ13Rとダミーキャピラリ13Dとを通過する。キャピラリ13Rは、所定間隔だけ間隔を空けて配置されるが、その場合、
図10のように蛍光測定用の測定光を入射させると、測定光の伝搬がしにくくなる。ダミーキャピラリ13Dをキャピラリ13Rの間に配置することで、測定光が伝搬しやすくなる。なお、ダミーキャピラリとしては、内部をポリマーで満たした同じ断面形状のキャピラリのほか、ガラスロッドなどを使うことができる。
【0046】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態に係るキャピラリ電気泳動装置を、
図12を参照して説明する。この第6の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の全体構造は、第1の実施の形態(
図1)と同様である。この第6の実施の形態は、測定光照射部16の構成が前述の実施の形態とは異なっている。この第6の実施の形態は、吸光度測定用の測定光と、蛍光測定用の測定光の投影経路が互いに異なる構成を有しており、この点、第5の実施の形態と共通している。ただし、この第6の実施の形態では、トロイダルレンズアレイ111の主平面に対し斜め方向から蛍光測定用の測定光(励起光)が入射される構成としている。
【0047】
第6の実施の形態のキャピラリ電気泳動装置の測定光照射部16は、光源101、集光レンズ102、ダイクロイックミラー131、シャッタ132、吸光度測定光用光学フィルタ133、ミラー134、シリンドリカルビームエキスパンダ135、及びトロイダルレンズアレイ111を備えている。また、測定光照射部16は、シャッタ141、蛍光励起用光学フィルタ142、ミラー143、シリンドリカルビームエキスパンダ144を備えている。光源101~シリンドリカルビームエキスパンダ135は、吸光度測定のための測定光を照射するための光学系であり、また、光源101~シリンドリカルビームエキスパンダ144は、蛍光測定のための測定光を照射するための光学系である。
【0048】
シャッタ132は、吸光度測定を行う場合には、その光路から退避され、蛍光測定を行う場合には光路に挿入される。吸光度測定用光学フィルタ133は、吸光度測定のための波長帯の光のみを通過させる機能を有する。シリンドリカルビームエキスパンダ135は、第1の実施の形態のシリンドリカルビームエキスパンダ107と同一のものであってよい。なお、吸光度測定用光学フィルタ133とミラー134との間には、吸光度測定用の測定光のモニタのため、ビームスプリッタ136、集光レンズ137、及び光検出器138が設けられる。
【0049】
シャッタ141は、蛍光測定を行う場合には、その光路から退避され、吸光度測定を行う場合には光路に挿入される。すなわち、シャッタ132と141は、いずれか一方が選択的に対応する光路に挿入され、他方は退避される関係にある。蛍光測定用光学フィルタ142は、蛍光測定のために用いる波長帯の光のみを通過させる機能を有する。シリンドリカルビームエキスパンダ144は、第1の実施の形態のシリンドリカルビームエキスパンダ107と同一のものであってよい。
【0050】
吸光度測定用のシリンドリカルビームエキスパンダ135は、トロイダルレンズアレイ111のトロイダルレンズの主平面に対し略垂直に測定光を投影するよう構成されている。一方、蛍光測定用のシリンドリカルビームエキスパンダ144は、トロイダルレンズアレイ111のトロイダルレンズの主平面に対し斜めに測定光を投影するように構成されている。すなわち、この実施の形態では、吸光度測定用の測定光と、蛍光測定用の測定光とが、トロイダルレンズアレイ111に対し異なる角度で投影される。図示の例では、前者がトロイダルレンズアレイ111のトロイダルレンズの主平面に対し垂直に、後者が斜め方向に入射されるが、これに限定されるものではない。後者が斜め方向から入射され、前者が後者とは異なる入射角度とされていればよい。
【0051】
この第6の実施の形態の動作を、
図13~
図15を参照して説明する。吸光度測定を行う場合には、前述のようにシャッタ132が光路外に退避され、シャッタ141は光路に挿入される。吸光度測定用の測定光は、光源101~ミラー134を通ってシリンドリカルビームエキスパンダ135によりキャピラリアレイ13の複数のキャピラリ14の配列方向に拡大され、
図13に示すように、トロイダルレンズアレイ111の主平面に対し略垂直に入射し、キャピラリアレイ13の複数のキャピラリ14を均一に照射する。これにより、前述の実施の形態と同様にして吸光度の測定を行うことができる。
【0052】
一方、蛍光測定を行う場合には、前述のようにシャッタ141が光路外に退避され、シャッタ132は光路に挿入される。蛍光測定用の測定光は、光源101~ミラー143を通ってシリンドリカルビームエキスパンダ144によりキャピラリアレイ13の複数のキャピラリの配列方向に拡大され、
図14に示すように、トロイダルレンズアレイ111のレンズ主平面に対し斜め方向から入射する。これにより、キャピラリアレイ13中の複数のキャピラリが、蛍光測定用の測定光により、斜め方向から均一に照射される。この測定光の照射によりキャピラリ内を泳動する蛋白質などから発せられた蛍光は、レンズアレイ201に入射し、光ファイバアレイ202により図示しない分光器まで導光される。蛍光測定用の測定光は、トロイダルレンズアレイ111のレンズ主平面に対し斜め方向から入射されるため、レンズアレイ201及び光ファイバアレイ202には入射することが回避される。これにより、蛍光測定のS/N比を向上させることができる。
なお、蛍光測定の測定光は、
図14とは反対の斜め方向(トロイダルレンズアレイ111から見て斜め左方向)から入射させてもよいし、
図15に示す様に、トロイダルレンズ例111の左右両側から入射させてもよい。
【0053】
[その他]
上述の実施形態の各々において、キャピラリアレイ13のキャピラリは、
図16右上に示すように、円筒状のガラス管であり、断面は円形となっている。なお、光照射部位以外は、ポリイミドなどで被覆されている。これに代えて、
図16の右下に示すように、キャピラリの断面を矩形形状とし、その矩形形状の一辺に対し略垂直に測定光が当たり、入射効率が上がるように測定光照射部16を調整することができる。外形が円形、内形が矩形形状であっても、その逆でもよい。形状はキャピラリ全体のほか、光照射部位近傍のみ異なっていてもよい。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…キャピラリ電気泳動装置、 11…サンプル容器、 12…サンプルトレイ、 13…キャピラリアレイ、 14…キャピラリ、 15…高圧電源、 16…測定光照射部、 17…受光部、 18…電気泳動媒体、 19…ポンプユニット、 20…恒温槽、 21:電極槽、 22:バルブ、 101…光源、 102、102’…集光レンズ、 103…光源側ファイバ、 104…コリメートレンズ、 105…矩形マスク、 106…波長選択フィルタ、 107…シリンドリカルビームエキスパンダ、 108…矩形マスク、 109、110…ミラー、 111…トロイダルレンズアレイ、 114…光分岐回路、 116…光ファイバアレイ、 117…集光光学系、 118…ミラー、 119…ポリゴンミラー、 120…fθレンズ、 121、122…ダイクロイックミラー、 123…励起波長単色化フィルタ、 124…集光レンズ、125…集光レンズ、 131…ダイクロイックミラー、 132…シャッタ、 133…吸光度測定用光学フィルタ、 134…ミラー、 135…シリンドリカルビームエキスパンダ、 136…ビームスプリッタ、 137…集光レンズ、 138…光検出器、 141…シャッタ、 142…蛍光励起用光学フィルタ、 143…ミラー、 144…シリンドリカルビームエキスパンダ、 201…レンズアレイ、 202…光ファイバアレイ、 211…集光光学系、 212、215…光ファイバアレイ、 213…蛍光用ビームスプリッタアレイ、 214…集光レンズアレイ、 215…光ファイバアレイ、 216…分光器。