(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063609
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
G01D5/20 110D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171953
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 都
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077FF03
2F077FF16
2F077FF39
2F077NN16
2F077UU07
(57)【要約】
【課題】受信手段が受信する磁束の変化の影響を抑制し測定結果の精度を保つことができる電磁誘導式エンコーダの提供。
【解決手段】電磁誘導式エンコーダ1は、スケール2と、スケール2と対向して相対移動するヘッド3と、を備える。ヘッド3は、送信手段4と、複数の受信コイル500を有する受信手段5と、を備える。受信手段5は、少なくとも1個の受信コイル500を有する第1受信部51と、第1受信部51から離間して設けられ、第1受信部51とは異なる少なくとも1個の受信コイル500を有する第2受信部52と、第1受信部51と第2受信部52とを接続する接続配線53と、を備える。第1受信部51および第2受信部52は、受信コイル500が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1として線対称かつ同数に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールコイルを有するスケールと、前記スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダであって、
前記ヘッドは、
前記スケールコイルに磁束を生じさせる送信コイルを有する送信手段と、
前記スケールコイルから磁束の変化を受信する測定方向に沿って同一面に配置される複数の受信コイルを有する受信手段と、を備え、
前記受信手段は、
少なくとも1個の前記受信コイルを有する第1受信部と、
前記第1受信部から離間して設けられ、前記第1受信部とは異なる少なくとも1個の前記受信コイルを有する第2受信部と、
前記第1受信部と前記第2受信部とを接続する接続配線と、を備え、
前記第1受信部および前記第2受信部は、前記受信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称かつ同数に配置されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記接続配線は、測定方向と平行に直線状に配置され、1個分の前記受信コイルにおける前記測定方向と平行な距離の整数倍の距離を有して形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項3】
請求項2に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記接続配線は、1個分の前記受信コイルにおける前記測定方向と平行な距離の奇数倍の距離を有して形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項4】
請求項2に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記接続配線は、1個分の前記受信コイルにおける前記測定方向と平行な距離の偶数倍の距離を有して形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記受信手段は、前記受信コイルを形成するコイル配線が配置される複数の配線層を備え、
前記コイル配線は、前記複数の配線層のそれぞれにおいて前記直交方向を軸として線対称に配置されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記送信コイルは、前記送信コイルが配置される面において前記測定方向と直交する直交方向を軸として線対称に配置されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記送信コイルは、他の部材と接続するために前記送信コイルから伸びて引き出された配線から形成される引出配線部を備え、
前記引出配線部は、前記測定方向、または、前記送信コイルが配置される面において前記測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項8】
請求項4に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記送信手段は、2個の前記送信コイルを有し、
前記2個の送信コイルは、前記測定方向、または、前記送信コイルが配置される面において前記測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項9】
スケールコイルを有するスケールと、前記スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダであって、
前記ヘッドは、
前記スケールコイルに磁束を生じさせる送信コイルを有する送信手段と、
前記スケールコイルから磁束の変化を受信する測定方向に沿って同一面に配置される複数の受信コイルを有する受信手段と、を備え、
前記送信コイルは、前記送信コイルが配置される面において前記測定方向と直交する直交方向を軸として線対称に配置されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項10】
請求項9に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記送信コイルは、他の部材と接続するために前記送信コイルから伸びて引き出された配線から形成される引出配線部を備え、
前記引出配線部は、前記測定方向、または、前記送信コイルが配置される面において前記測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スケールコイルを有するスケールと、スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダが知られている。例えば、特許文献1に記載の電磁誘導型変位検出装置(電磁誘導式エンコーダ)におけるヘッドは、スケールコイルに磁束を生じさせる送信コイルを有する送信手段と、スケールコイルからの磁束の変化を受信する第1の受信部および第2の受信部を有し、第1の受信部および第2の受信部を測定方向に沿ってずらして配設した受信手段と、を備える。第1の受信部および第2の受信部は、測定方向と平行な行方向に沿って配設された複数の受信コイルを有する複数のコイルラインを列方向に沿って並設している。受信手段は、測定方向の一端側および他端側のそれぞれに位置し、複数の受信コイルの密度を疎にした一端部および他端部と、一端部および他端部の間に位置し、複数の受信コイルの密度を密にした中央部と、を備える。
【0003】
ここで、ヘッドは、スケールに対してロール方向、ピッチ方向、およびヨー方向に傾斜して配置され、受信手段が受信する磁束の変化に影響を与えることがある。例えば、ヘッドがスケールに対して回転し、一端側がスケールに近接すると、他端側が離間する。この場合、受信手段の一端側は、受信する磁束の変化の影響が大きくなり、受信手段の他端側は、受信する磁束の変化の影響が小さくなる。また、ヘッドがスケールに対して回転し、一端側がスケールと離間すると、他端側が近接する。この場合、受信手段の一端側は、受信する磁束の変化の影響が小さくなり、受信手段の他端側は、受信する磁束の変化の影響が大きくなる。
【0004】
このような磁束の変化の影響に対して、電磁誘導型変位検出装置における複数の受信コイルの密度を疎にした一端部および他端部は、ヘッドが回転してスケールに対して近接または離間したとしても、複数の受信コイルの密度を密にした中央部と比べて生じる磁束の変化が小さいため、受信手段が受信する磁束の変化の影響を受けにくくすることができる。また、複数の受信コイルの密度を密にした中央部は、ヘッドが回転してスケールに対して近接または離間したとしても、複数の受信コイルの密度を疎にした一端部および他端部と比べて生じる磁束の大きさが大きくなる。これにより、電磁誘導型変位検出装置は、受信手段が受信する磁束の変化を安定させ、磁束の変化による影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の受信手段は、受信手段全体では所定の軸方向、若しくは、回転軸に対して対称性を有しているものの、第1の受信部や第2の受信部等は、対称性を有していない。このため、複数の受信コイルで受信される磁束の変化は、特にヘッドが回転してスケールに対して近接または離間したとき等において、不均一に受信されることがある。磁束の変化が不均一である場合、磁束の変化から検出される測定結果の精度は低下するおそれがあるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、受信手段が受信する磁束の変化の影響を抑制し測定結果の精度を保つことができる電磁誘導式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電磁誘導式エンコーダは、スケールコイルを有するスケールと、スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える。ヘッドは、スケールコイルに磁束を生じさせる送信コイルを有する送信手段と、スケールコイルから磁束の変化を受信する測定方向に沿って同一面に配置される複数の受信コイルを有する受信手段と、を備える。受信手段は、少なくとも1個の受信コイルを有する第1受信部と、第1受信部から離間して設けられ、第1受信部とは異なる少なくとも1個の受信コイルを有する第2受信部と、第1受信部と第2受信部とを接続する接続配線と、を備える。第1受信部および第2受信部は、受信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称かつ同数に配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、受信手段において第1受信部と、第1受信部から離間して設けられる第2受信部とは接続配線により接続され、直交方向を軸として線対称かつ同数に配置される。これにより、例えばヘッドが回転してヘッドの測定方向の一端側または他端側がスケールに対して近接または離間したとしても、受信手段は、接続配線を中心として直交方向を軸に線対称に形成されているため、安定して磁束の変化を検出することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダは、受信手段が受信する磁束の変化の影響を抑制し測定結果の精度を保つことができる。
【0010】
ここで、特許文献1に記載の電磁誘導型変位検出装置は、複数の受信部を重ねて受信手段全体で対称性を実現しているため、製造コストがかかることがある。
しかしながら、本発明によれば、第1受信部および第2受信部は、受信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称かつ同数に配置されることで、複数の受信部を重ねなくとも対称性を実現することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダは、従来と比較して製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
この際、接続配線は、測定方向と平行に直線状に配置され、1個分の受信コイルにおける測定方向と平行な距離の整数倍の距離を有して形成されていることが好ましい。
【0012】
ここで、受信コイルには、送信コイルにより磁束が生じる。複数の受信コイルが隣接している場合、各受信コイルには、複数の受信コイルの隣接方向に沿ってプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束とが交互に生じる。そして、複数の受信コイルを隣接方向に沿って接続配線で接続した場合、接続配線部分には磁束は生じない。このため、接続配線の距離によっては、受信手段が受信する磁束に変化が生じ、測定結果の精度が低下してしまうことがある。
【0013】
しかしながら、このような構成によれば、接続配線は、測定方向と平行に直線状に配置され、1個分の受信コイルにおける測定方向と平行な距離の整数倍の距離を有して形成されているため、磁束が生じない接続配線部分について適切に補間することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダは、受信手段が受信する磁束の変化の影響を抑制し測定結果の精度を保つことができる。
また、接続配線は、測定方向と平行に直線状に配置されているため、直交方向を軸とした受信手段における複数の受信コイルの配置について対称性を容易に実現することができる。
【0014】
この際、接続配線は、1個分の受信コイルにおける測定方向と平行な距離の奇数倍の距離を有して形成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、接続配線は、1個分の受信コイルにおける測定方向と平行な距離の奇数倍の距離を有して形成されているため、各受信コイルに生じるプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束を乱すことなく磁束が生じない接続配線部分について適切に補間することができる。
【0016】
また、接続配線は、1個分の受信コイルにおける測定方向と平行な距離の偶数倍の距離を有して形成されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、接続配線は、1個分の受信コイルにおける測定方向と平行な距離の偶数倍の距離を有して形成されているため、各受信コイルに生じるプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束を乱すことなく磁束が生じない接続配線部分について適切に補間することができる。
【0018】
この際、受信手段は、受信コイルを形成するコイル配線が配置される複数の配線層を備える。コイル配線は、複数の配線層のそれぞれにおいて、直交方向を軸として線対称に配置されることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、受信コイルを形成するコイル配線は、複数の配線層のそれぞれにおいて、直交方向を軸として線対称に配置されるため、受信手段において対称性の実現を容易にすることができる。
【0020】
この際、送信コイルは、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称に配置されることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、送信コイルは、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称に配置されるため、受信手段だけではなく、送信手段においても対称性を容易に実現することができる。
【0022】
この際、送信コイルは、他の部材と接続するために送信コイルから伸びて引き出された配線から形成される引出配線部を備える。引出配線部は、測定方向、または、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、送信コイルは、引出配線部を有していたとしても、引出配線部は、測定方向、または、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されるため、容易に対称性を実現することができる。
【0024】
この際、送信手段は、2個の送信コイルを有している。2個の送信コイルは、測定方向、または、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されていることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、送信手段は、2個の送信コイルにより構成されていたとしても、2個の送信コイルは、測定方向、または、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されているため、容易に対称性を実現することができる。
【0026】
本発明の電磁誘導式エンコーダは、スケールコイルを有するスケールと、スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える。ヘッドは、スケールコイルに磁束を生じさせる送信コイルを有する送信手段と、スケールコイルから磁束の変化を受信する測定方向に沿って同一面に配置される複数の受信コイルを有する受信手段と、を備える。送信コイルは、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称に配置されることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、送信コイルは、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向を軸として線対称に配置されるため、送信手段において容易に対称性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る電磁誘導式エンコーダを示す斜視図
【
図2】前記電磁誘導式エンコーダに係るスケールを示す上面図
【
図3】前記電磁誘導式エンコーダに係るヘッドを示す上面図
【
図4】前記電磁誘導式エンコーダに係る受信コイルに生じる磁束の原理図
【
図5】前記電磁誘導式エンコーダに係る受信手段の配線層を示す模式図
【
図6】第2実施形態に係る電磁誘導式エンコーダの受信手段を示す上面図
【
図7】第3実施形態に係る電磁誘導式エンコーダの送信手段を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る電磁誘導式エンコーダ1を示す斜視図である。
電磁誘導式エンコーダ1は、
図1に示すように、長尺状のスケール2と、スケール2と対向して測定方向に沿って相対移動するヘッド3と、を備え、測定機器としての電磁誘導式ノギスの内部に設けられている。
【0030】
電磁誘導式ノギスは、スケール2とヘッド3とを測定方向であるX方向に沿って相対移動させ、誘導電流を用いて部材間の移動量を電磁誘導式エンコーダ1にて検出し、検出された移動量に基づき測定結果を図示しない液晶画面などの表示部などに出力する。
なお、以下の説明および各図面において、スケール2の長手方向でありヘッド3の移動方向(測定方向)をX方向と記し、X方向に直交するスケール2の幅方向をY方向と記す。
【0031】
図2は、電磁誘導式エンコーダ1に係るスケール2を示す上面図である。
スケール2は、
図2に示すように、長尺状のガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板21と、ヘッド3に対向して設けられるスケールコイル22と、を備える。
なお、絶縁基板21は、ガラスエポキシ樹脂ではなく、ガラスやシリコン等の材料から構成されていてもよい。
【0032】
スケールコイル22は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料で形成され、X方向に幅Wを有する略矩形状の線状導体から構成されている。
スケールコイル22は、スケール2上においてX方向に沿ってスケールコイル22の幅Wと同じピッチWおきに設けられている。なお、スケールコイル22は、線状導体ではなく、金属プレート等を周期的に配置してもよい。
【0033】
図3は、電磁誘導式エンコーダ1に係るヘッド3を示す上面図である。
ヘッド3は、
図3に示すように、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板31上に設けられる送信手段4と、スケールコイル22からの磁束の変化を受信する受信手段5と、を備える。なお、絶縁基板31は、ガラスエポキシ樹脂ではなく、ガラスやシリコン等の材料から構成されていてもよい。
送信手段4は、スケール2と対向して設けられ、スケールコイル22(
図2参照)に磁束を生じさせる送信コイル41を有する。
【0034】
送信コイル41は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料で形成され、受信手段5を囲うように略矩形状に配置されている。なお、送信コイル41は受信手段5を囲うように略矩形状に配置されていなくてもよく、スケールコイル22に磁束を生じさせることができれば、どのような構成であってもよい。
また、送信コイル41は、送信コイル41が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1として線対称に配置される。
【0035】
送信コイル41は、他の部材と接続するために送信コイル41から伸びて引き出された配線から形成される引出配線部42を備える。
引出配線部42は、測定方向であるX方向、または、送信コイル41が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置される。本実施形態では、引出配線部42は、直交方向であるY方向を軸L1として、線対称に配置される。また、引出配線部42の少なくとも一つの配線は、他の部材と接続するための接続部43を有する。接続部43は、スルーホールやビアホール等である。
【0036】
受信手段5は、送信コイル41の内側に配置されるとともに、スケールコイル22から磁束の変化を受信する測定方向であるX方向に沿って同一面に配置される複数の受信コイル500を有する。また、受信手段5は、少なくとも1個の受信コイル500を有する第1受信部51と、第1受信部51から離間して設けられ、第1受信部51とは異なる少なくとも1個の受信コイル500を有する第2受信部52と、第1受信部51と第2受信部52とを接続する接続配線53と、を備える。第1受信部51および第2受信部52を構成する受信コイル500と接続配線53は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料で形成されている。
【0037】
第1受信部51および第2受信部52は、受信コイル500が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1として線対称かつ同数に配置される。本実施形態では、第1受信部51は、4個の受信コイル500を有し、第2受信部52は、4個の受信コイル500を有し、それぞれ同数の受信コイル500を有している。そして、第1受信部51と第2受信部52は、接続配線53を中心としてY方向を軸L1に線対称に配置されている。なお、本実施形態では、第1受信部51と第2受信部52との受信コイル500の数は4個であるが、4個以上の受信コイル500をそれぞれに有していてもよいし、4個以下の受信コイル500をそれぞれに有していてもよい。
【0038】
接続配線53は、測定方向であるX方向と平行に直線状に配置され、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の整数倍の距離を有して形成されている。具体的には、接続配線53は、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の奇数倍の距離を有して形成されている。本実施形態では、接続配線53は、1個分の受信コイル500におけるX方向と平行な距離D1と同じ距離を有して形成されている。なお、接続配線53は、1個分の受信コイル500におけるX方向と平行な距離D1と同じ距離ではなく、3倍の距離であってもよいし、5倍の距離を有して形成されていてもよい。
また、接続配線53は、接続配線53を延長した線L2が各受信コイル500の直交方向であるY方向と平行な距離D2の中央に位置するように配置されている。
【0039】
図4は、電磁誘導式エンコーダ1に係る受信コイル500に生じる磁束の原理図である。具体的には、
図4(A)は、接続配線53を用いないときに受信コイル500に生じる磁束を示す図である。また、
図4(B)は、接続配線53を用いたときに受信コイル500に生じる磁束を示す図である。
ここで、
図4(A)に示すように、測定方向であるX方向に沿って並設される受信コイル500には、プラス方向の磁束とマイナス方向の磁束とが交互に生じる。このため、接続配線53を任意の距離に形成した場合、このプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束のバランスが崩れ、測定結果の精度が低下するおそれがある。
【0040】
しかしながら、
図4(B)に示すように、接続配線53は、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の奇数倍の距離または同じ距離を有して形成されることで、本来、接続配線53部分に生じるはずだったプラス方向の磁束分を補間することができる。電磁誘導式エンコーダ1は、接続配線53により、第1受信部51と第2受信部52とを線対称に配置するとともに測定結果の低下を抑制することができる。
【0041】
図5は、電磁誘導式エンコーダ1に係る受信手段5の配線層を示す模式図である。具体的には、
図5(A)は、接続配線53を用いないときのコイル配線55を示す図である。また、
図5(B)は、接続配線53を用いたときのコイル配線55を示す図である。
受信手段5は、受信コイル500を形成するコイル配線55が配置される図示しない複数の配線層を備える。コイル配線55は、複数の配線層にわたって設けられ、複数の配線層のそれぞれにおいて直交方向であるY方向を軸L1として線対称に配置される。
【0042】
具体的には、コイル配線55には、複数の配線層にわたって少なくとも2本のコイル配線55a,55bが用いられる。なお、
図5では、説明の都合上、コイル配線55aを実線で記し、コイル配線55aとは異なるもう1本のコイル配線55bを破線で記す。
図5(A)に示すように、接続配線53を用いないとき、コイル配線55a,55bは、直交方向であるY方向を軸L1として線対称には配置されない。Y方向を軸L1として線対称に配置されない場合、検出される磁束のバランスが崩れ、測定結果の精度が低下するおそれがある。
【0043】
しかしながら、
図5(B)に示すように、接続配線53を介することで、電磁誘導式エンコーダ1は、コイル配線55a,55bを直交方向であるY方向を軸L1として線対称に配置することができる。電磁誘導式エンコーダ1は、接続配線53により、コイル配線55a,55bを線対称に配置するとともに測定結果の低下を抑制することができる。
【0044】
このような第1実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)受信手段5において第1受信部51と、第1受信部51から離間して設けられる第2受信部52と、は接続配線53により接続され、直交方向であるY方向を軸L1として線対称かつ同数に配置される。これにより、例えばヘッド3が回転してヘッド3の測定方向であるX方向の一端側または他端側がスケール2に対して近接または離間したとしても、受信手段5は、接続配線53を中心として直交方向であるY方向を軸L1に線対称に形成されているため、安定して磁束の変化を検出することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダ1は、受信手段5が受信する磁束の変化の影響を抑制し測定結果の精度を保つことができる。
【0045】
(2)第1受信部51および第2受信部52は、受信コイル500が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1として線対称かつ同数に配置されることで、対称性を実現することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダ1は、従来と比較して製造コストの低減を図ることができる。
(3)接続配線53は、測定方向であるX方向と平行に直線状に配置され、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離の整数倍の距離を有して形成されているため、磁束が生じない接続配線53部分について適切に補間することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダ1は、受信手段5が受信する磁束の変化の影響を抑制し測定結果の精度を保つことができる。
(4)接続配線53は、測定方向であるX方向と平行に直線状に配置されているため、直交方向であるY方向を軸L1とした受信手段5における複数の受信コイル500の配置について対称性を容易に実現することができる。
【0046】
(5)接続配線53は、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離の奇数倍の距離を有して形成されているため、各受信コイル500に生じるプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束を乱すことなく磁束が生じない接続配線53部分について適切に補間することができる。
(6)受信コイル500を形成するコイル配線55は、複数の配線層のそれぞれにおいて、直交方向であるY方向を軸L1として線対称に配置されるため、受信手段5において対称性の実現を容易にすることができる。
【0047】
(7)送信コイル41は、送信コイル41が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1として線対称に配置されるため、受信手段5だけではなく、送信手段4においても対称性を容易に実現することができる。
(8)送信コイル41は、引出配線部42を有していたとしても、引出配線部42は、測定方向であるX方向、または、送信コイル41が配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向Y方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されるため、容易に対称性を実現することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を
図6に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る電磁誘導式エンコーダ1Aの受信手段5Aを示す上面図である。第2実施形態におけるヘッド3(
図3参照)は、受信手段5Aを除き、前記第1実施形態のヘッド3と略同様の構成を備える。
【0049】
前記第1実施形態における受信手段5の接続配線53は、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の奇数倍の距離を有して形成されていた。
第2実施形態における受信手段5Aの接続配線53Aは、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離の偶数倍の距離を有して形成されている点で前記第1実施形態と異なる。
【0050】
具体的には、
図6に示すように、接続配線53Aは、1個分の受信コイル500におけるX方向と平行な距離D1の偶数倍である2倍の距離を有して形成されている。なお、接続配線53Aは、1個分の受信コイル500におけるX方向と平行な距離D1の2倍の距離ではなく、4倍の距離であってもよいし、6倍の距離を有して形成されていてもよい。
本実施形態の場合、各受信コイル500に生じる磁束の方向については、直交方向であるY方向を軸L1として線対称にはならないものの、受信手段5A全体では、直交方向であるY方向を軸L1として線対称に形成されている。したがって、接続配線53Aは、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の偶数倍の距離を有して形成されることで、本来、接続配線53A部分に生じるはずだった磁束を適切な距離を有して補間することができる。
【0051】
このような第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(4),(6)~(8)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(9)接続配線53Aは、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離の偶数倍である2倍の距離を有して形成されているため、各受信コイル500に生じるプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束を乱すことなく磁束が生じない接続配線53A部分について適切に補間することができる。
【0052】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を
図7に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図7は、第3実施形態に係る電磁誘導式エンコーダ1Bの送信手段4Bを示す上面図である。第3実施形態におけるヘッド3(
図3参照)は、送信手段4Bを除き、前記第1実施形態のヘッド3と略同様の構成を備える。
【0053】
前記第1実施形態では、送信手段4は、1個の送信コイル41から形成され、受信手段5を囲うように略矩形状に配置されていた。
第3実施形態では、送信手段4Bは、2個の送信コイル41Bを有し、2個の送信コイル41Bは、測定方向であるX方向、または、送信コイル41Bが配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されている点で前記第1実施形態と異なる。
【0054】
具体的には、
図7に示すように、2個の送信コイル41Bは、測定方向であるX方向に沿って並設されている。なお、2個の送信コイル41Bは、Y方向に沿って並設されていてもよい。
そして、引出配線部42Bは、送信手段4Bの測定方向であるX方向に沿った両端部に設けられ、測定方向であるX方向を軸L2、および、送信コイル41Bが配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1、双方を軸として線対称に配置されている。
なお、送信手段4Bと受信手段5(
図3参照)とを同一平面に配置できない場合、送信手段4Bと受信手段5とをそれぞれ別部材に配置してもよい。具体的には、送信手段4Bと受信手段5とを対向して配置し、送信手段4Bと受信手段5との間にスケール2を配置してもよい。このような配置により、受信手段5は、送信手段4Bおよび受信手段5の間に配置されたスケール2との部材間の移動量を検出することができる。
【0055】
このような第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(7)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(10)送信手段4Bは、2個の送信コイル41Bにより構成されていたとしても、2個の送信コイル41Bは、測定方向であるX方向を軸L2、および、送信コイル41Bが配置される面30において測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向を軸L1、双方を軸として、線対称に配置されているため、容易に対称性を実現することができる。
【0056】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、電磁誘導式エンコーダ1,1A~1Bは、測定機器としての電磁誘導式ノギスに用いられていたが、ダイヤルゲージ(テストインジケータ)やマイクロメータ等の他の測定機器に用いられていてもよい。すなわち、電磁誘導式エンコーダは、用いられる測定機器の形式や方式などについて特に限定されるものではなく、その他の測定機器などにおいても利用可能であり、本発明の電磁誘導式エンコーダを何に実装するかについては、特に限定されるものではない。
また、電磁誘導式エンコーダは、センサ等の測定器以外のものに用いられていてもよい。
前記各実施形態では、電磁誘導式エンコーダ1,1A~1Bは、長尺状のスケール2を備えるいわゆるリニアエンコーダであったが、スケールが円弧状に形成されるいわゆるロータリエンコーダであってもよい。
【0057】
前記第1実施形態における受信手段5の接続配線53は、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の奇数倍の距離を有して形成され、前記第2実施形態における受信手段5Aの接続配線53Aは、1個分の受信コイル500における測定方向であるX方向と平行な距離D1の偶数倍の距離を有して形成されていたが、接続配線は、任意の距離を有して形成されていてもよい。また、接続配線53,53Aは、測定方向であるX方向と平行に直線状に配置されていたが、直線状に配置されていなくてもよい。要するに、接続配線は、第1受信部と第2受信部とを接続することができればよい。
【0058】
前記第1実施形態および前記第3実施形態の引出配線部42,42Bは、一対だけであったが、送信手段4,4Bにおいて複数設けられていてもよい。要するに、引出配線部は、測定方向、または、送信コイルが配置される面において測定方向と直交する直交方向の少なくともいずれか一方向を軸として、線対称に配置されていればよい。
前記各実施形態では、送信手段4,4Bも線対称に配置されていたが、送信手段は線対称に配置されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明は、電磁誘導式エンコーダに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 電磁誘導式エンコーダ
2 スケール
3 ヘッド
4,4B 送信手段
5,5A 受信手段
51 第1受信部
52 第2受信部
53 接続配線
500 受信コイル