(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063610
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
G01D5/20 110D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171954
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 都
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077FF03
2F077FF16
2F077FF39
2F077NN16
2F077UU07
(57)【要約】
【課題】高調波の発生を抑制し高精度化を図ることができる電磁誘導式エンコーダの提供。
【解決手段】電磁誘導式エンコーダ1は、スケールコイル22を有するスケール2と、スケール2と対向して測定方向に沿って相対移動するヘッド3と、を備える。ヘッド3は、スケールコイル22に磁束を生じさせる送信手段4と、スケールコイル22から磁束の変化を受信する受信手段5と、を備える。受信手段5は、スケールコイル22の幅よりも長い幅となるように直交方向の幅が形成され、測定方向に沿って互いに接続して並設される複数の受信コイル50を備える。個々の受信コイル50は、同じ大きさに形成されて直交方向に沿って並設される複数のコイルパターン部52を備える。複数のコイルパターン部52は、一本の配線により形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールコイルを有するスケールと、前記スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダであって、
前記ヘッドは、
前記スケールコイルに磁束を生じさせる送信手段と、
前記スケールコイルから磁束の変化を受信する受信手段と、を備え、
前記受信手段は、
前記スケールと対向する対向面を有し、前記対向面における前記測定方向と直交する直交方向の前記スケールコイルの幅よりも長い幅となるように前記直交方向の幅が形成され、前記測定方向に沿って互いに接続して並設される複数の受信コイルを備え、
個々の前記受信コイルは、
同じ大きさに形成されて前記直交方向に沿って並設される複数のコイルパターン部を備え、
前記複数のコイルパターン部は、一本の配線により形成されることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
複数の前記受信コイルは、等間隔で測定方向に沿って並設され、
前記コイルパターン部は、略環状に形成されるとともに前記測定方向に沿って逆位相となる2つの正弦波を重ね合わせた形状に形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記スケールコイルの前記測定方向の幅は、前記コイルパターン部における前記測定方向の最長の幅の整数倍となるように形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記スケールコイルの前記直交方向の幅は、前記コイルパターン部における前記直交方向の最長の幅の整数倍となるように形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記複数のコイルパターン部は、前記受信コイルの中央を通る前記測定方向と平行な方向を軸として線対称に形成されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スケールコイルを有するスケールと、スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダが知られている。例えば、特許文献1に記載の電磁誘導式エンコーダにおける検出ヘッド(ヘッド)は、磁束を発生する駆動コイルを備える。スケールは、測定軸方向において基本周期λで配列され、駆動コイルが発
生する磁束と電磁結合し、測定軸方向に所定の空間周期で変化する磁束を発生する複数の結合コイルを備える。検出ヘッドは、測定軸方向において基本周期λで配列され、複数の結合コイルが発生する磁束と電磁結合してこの磁束の位相を検出する受信コイルと、を備える。
【0003】
ここで、電磁誘導式エンコーダでは、構造的に光電式エンコーダと比較して得られる信号の周期が粗くなる。しかし近年、電磁誘導式エンコーダは、光電式エンコーダと同様の精度が要求されるようになっている。これに対応するためには、電磁誘導式エンコーダにおいて、検出ヘッドの移動にともなって得られる信号は高調波などによるひずみの無い正弦波形状の信号であるか、信号強度は適切か、信号強度の変動は抑えられているか、等を考慮する必要がある。
【0004】
これに対して、特許文献1に記載の電磁誘導式エンコーダは、基本周期λの周期で構成される正弦波形状である正弦波パターンで受信コイルを形成している。これにより、受信コイルの各出力信号は、基本周期λの正弦波信号となる。したがって、電磁誘導式エンコーダは、検出ヘッドの移動にともなって得られる信号について、高調波などによるひずみが抑制された正弦波形状の信号を得ることができ、高精度化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7は、従来の電磁誘導式エンコーダ100を示す概念図である。具体的には、
図7(A)は、受信コイル500がスケールコイル200に対してズレを有することなく対向している図である。また、
図7(B)は、受信コイル500がスケールコイル200に対してズレを有して対向している図である。なお、以下の説明および各図面において、スケールの長手方向でありヘッドの移動方向(測定方向)をX方向と記し、スケールコイル200等が配置される面においてX方向に直交するスケールの幅方向をY方向と記す。
【0007】
ここで、
図7(A)に示すように、受信コイル500がスケールコイル200に対してズレを有することなく対向している場合は、前述のように、電磁誘導式エンコーダ100は、図示しないヘッドの移動にともなって、ひずみが抑制された正弦波形状の信号を得ることができる。このとき、受信コイル500とスケールコイル200とが対向し重なりあうことで生じる対向面積は、欠けの無い状態となる。なお、対向面積とは、受信コイル500とスケールコイル200とが対向して重なり合う部分の面積をいう。
図7では、この対向面積を斜線にて記す。また、受信コイル500には、図示しない送信コイルにより磁束が生じる。複数の受信コイル500は隣接して設けられているため、各受信コイル500には、複数の受信コイル500の隣接方向に沿ってプラス方向の磁束とマイナス方向の磁束とが交互に生じる。
図7では、プラス方向の磁束については「+」とし、マイナス方向の磁束については「-」として記す。
【0008】
しかしながら、
図7(B)に示すように、例えば受信コイル500がスケールコイル200に対して測定方向であるX方向と直交する方向であるY方向にズレを有して対向している場合、ズレを有していないときと比較して、受信コイル500に欠けが生じ、対向面積が小さくなる。対向面積が小さくなると、受信コイル500にて受信する信号の強度が低下するおそれがある。
【0009】
また、
図7(A)に示すように、受信コイル500がスケールコイル200に対してY方向にズレを有していない場合、対向面積は、測定方向と平行な方向であるX方向を軸Lとして線対称となっている。しかしながら、
図7(B)に示すように、受信コイル500がスケールコイル200に対してY方向にズレを有している場合、対向面積は、測定方向と平行な方向であるX方向を軸Lとした線対称を形成しない。対向面積が対称性を有しない場合、ヘッドの移動にともなって得られる正弦波形状の信号において、ひずみの原因となる高調波が発生することがある。これにより、ヘッドの移動にともなって得られる正弦波形状の信号の精度は、低下するおそれがあるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、高調波の発生を抑制し高精度化を図ることができる電磁誘導式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁誘導式エンコーダは、スケールコイルを有するスケールと、スケールと対向して測定方向に沿って相対移動するヘッドと、を備える。ヘッドは、スケールコイルに磁束を生じさせる送信手段と、スケールコイルから磁束の変化を受信する受信手段と、を備える。受信手段は、スケールと対向する対向面を有する。受信手段は、対向面における測定方向と直交する直交方向のスケールコイルの幅よりも長い幅となるように直交方向の幅が形成され、測定方向に沿って互いに接続して並設される複数の受信コイルを備える。個々の受信コイルは、それぞれ同じ大きさに形成されるとともに直交方向に沿って並設される複数のコイルパターン部を備える。複数のコイルパターン部は、一本の配線により形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、受信手段が備える受信コイルは、スケールコイルの直交方向の幅よりも長い幅となるように直交方向の幅が形成されている。これにより、受信コイルがスケールコイルに対して直交方向にズレを有して配置されたとしても、対向面積が小さくなることを防ぎ、受信コイルが受信する信号の強度が低下することを抑制することができる。また、受信コイルは、それぞれ同じ大きさに形成されるとともに直交方向に沿って並設される複数のコイルパターン部を備え、一本の配線により形成される。これにより、受信コイルがスケールコイルに対して直交方向にズレを有して配置されたとしても、一本の配線にて形成された複数のコイルパターン部により、高調波が発生することを抑制することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダは、受信コイルがスケールコイルに対してズレを有して配置されたとしても、高調波の発生を抑制し高精度化を図ることができる。
【0013】
この際、複数の受信コイルは、等間隔で測定方向に沿って並設される。コイルパターン部は、略環状に形成されるとともに測定方向に沿って逆位相となる2つの正弦波を重ね合わせた形状に形成されていることが好ましい。
【0014】
ここで、前述のように、受信コイルを正弦波形状に形成することで、受信コイルの出力信号は、ひずみが抑制された正弦波信号となる。
したがって、このような構成によれば、コイルパターン部は、略環状に形成されるとともに、測定方向に沿って逆位相となる2つの正弦波を重ね合わせた形状に形成されているため、受信コイルがスケールコイルに対して直交方向にズレを有していたとしても、ズレを有していないときの対向面積と同じ面積の対向面積を得つつ、ひずみが抑制された正弦波信号を得ることができる。
【0015】
この際、スケールコイルの測定方向の幅は、コイルパターン部における測定方向の最長の幅の整数倍となるように形成されていることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、スケールコイルの測定方向の幅は、コイルパターン部における測定方向の最長の幅の整数倍となるように形成されているため、測定方向において、対向面積が小さくなることを防ぎ、受信コイルにて受信される信号に高調波などによるひずみが生じることを抑制することができる。
【0017】
この際、スケールコイルの直交方向の幅は、コイルパターン部における直交方向の最長の幅の整数倍となるように形成されていることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、スケールコイルの直交方向の幅は、コイルパターン部における直交方向の最長の幅の整数倍となるように形成されているため、直交方向において、対向面積が小さくなることを防ぎ、受信コイルにて受信される信号に高調波などによるひずみが生じることを抑制することができる。
【0019】
この際、複数のコイルパターン部は、受信コイルの中央を通る測定方向と平行な方向を軸として線対称に形成されていることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、受信コイルがスケールコイルに対してズレを有して配置されたとしても、複数のコイルパターン部が測定方向と平行な方向を軸として線対称に形成されていることで、ズレを有していないときの対向面積と同じ面積の対向面積を得ることができる。したがって、電磁誘導式エンコーダは、測定結果の精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る電磁誘導式エンコーダを示す斜視図
【
図2】前記電磁誘導式エンコーダに係るスケールを示す上面図
【
図3】前記電磁誘導式エンコーダに係るヘッドを示す上面図
【
図4】前記電磁誘導式エンコーダに係るスケールコイルと受信コイルとの関係を示す概念図
【
図5】前記電磁誘導式エンコーダに係るスケールコイルに対して受信コイルがズレを有して配置された際の関係を示す概念図
【
図6】前記電磁誘導式エンコーダに係るスケールコイルに対して受信コイルがズレを有して配置された際の効果を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。
図1は、一実施形態に係る電磁誘導式エンコーダ1を示す斜視図である。
電磁誘導式エンコーダ1は、
図1に示すように、長尺状のスケール2と、スケール2と対向して測定方向であるX方向に沿って相対移動するヘッド3と、を備え、測定機器としての電磁誘導式ノギスに用いられているリニアエンコーダである。
【0023】
電磁誘導式エンコーダ1は、電磁誘導式ノギスの内部に設けられている。電磁誘導式ノギスは、スケール2とヘッド3とを測定方向であるX方向に沿って相対移動させ、誘導電流を用いて部材間の移動量を電磁誘導式エンコーダ1にて検出し、検出された移動量に基づき測定結果を図示しない液晶画面などの表示部などに出力する。
【0024】
図2は、電磁誘導式エンコーダ1に係るスケール2を示す上面図である。
スケール2は、
図2に示すように、長尺状のガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板21と、ヘッド3に対向して設けられるスケールコイル22と、を備える。
なお、絶縁基板21は、ガラスエポキシ樹脂ではなく、ガラスやシリコン等の材料から構成されていてもよい。
【0025】
スケールコイル22は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料で形成され、X方向に幅Wを有する略矩形状の線状導体から構成されている。また、スケールコイル22は、スケール2における配置面20に配置されている。
スケールコイル22は、スケール2上においてX方向に沿ってスケールコイル22の幅Wと同じピッチWおきに設けられている。なお、スケールコイル22は、線状導体ではなく、金属プレート等を周期的に配置してもよい。
【0026】
図3は、電磁誘導式エンコーダ1に係るヘッド3を示す上面図である。
ヘッド3は、
図3に示すように、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板31上に、スケールコイル22(
図2参照)に磁束を生じさせる送信手段4と、スケールコイル22からの磁束の変化を受信する受信手段5と、を備える。なお、絶縁基板31は、ガラスエポキシ樹脂ではなく、ガラスやシリコン等の材料から構成されていてもよい。
送信手段4は、スケール2と対向して設けられ、スケールコイル22に磁束を生じさせる送信コイル41を有する。
【0027】
送信コイル41は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料で形成され、受信手段5を囲うように矩形状に配置されている。なお、送信コイル41は受信手段5を囲うように矩形状に配置されていなくてもよく、スケールコイル22に磁束を生じさせることができれば、どのような構成であってもよい。
【0028】
受信手段5は、送信コイル41の内側に配置されるとともに、スケールコイル22から磁束の変化を受信する複数の受信コイル50を有する。また、受信手段5は、スケール2と対向する対向面30を有する。受信コイル50は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料で形成されている。
複数の受信コイル50は、対向面30における測定方向であるX方向に沿って互いに接続部51で接続されて並設されている。具体的には、複数の受信コイル50は、等間隔で測定方向であるX方向に沿って並設される。
【0029】
また、個々の受信コイル50は、それぞれ同じ大きさに形成されるとともに直交方向であるY方向に沿って並設される複数のコイルパターン部52を備える。
コイルパターン部52は、略環状に形成されるとともに測定方向であるX方向に沿って逆位相となる2つの正弦波を重ね合わせた形状に形成されている。コイルパターン部52をこのように形成することで、複数の受信コイル50から出力信号は、ひずみが抑制された正弦波信号となる。
【0030】
また、複数のコイルパターン部52は、受信コイル50の中央を通る測定方向であるX方向と平行な方向を軸Lとして線対称に形成されている。そして、複数のコイルパターン部52は、一本の配線により形成されている。すなわち、単一の受信コイル50は、一本の配線で複数のコイルパターン部52をY方向に沿って連結することで形成されている。受信手段5は、このように形成された複数の受信コイル50を接続部51で接続するとともに測定方向であるX方向に並設することで形成されている。
【0031】
図4は、電磁誘導式エンコーダ1に係るスケールコイル22と受信コイル50との関係を示す概念図である。
図4に示すように、複数の受信コイル50は、対向面30における測定方向であるX方向と直交する直交方向であるY方向のスケールコイル22の幅よりも長い幅となるように直交方向であるY方向の幅が形成されている。具体的には、スケールコイル22は、直交方向であるY方向と平行な方向に幅S1を有して形成されている。複数の受信コイル50は、直交方向であるY方向と平行な方向に幅D1を有して形成されている。受信コイルの幅D1は、スケールコイル22の幅S1よりも長い幅となるように形成されている。これにより、受信手段5がスケールコイル22に対してY方向にズレを有して配置されたとしても、ズレた移動方向に受信コイル50が延長されて設けられているため、対向面積が小さくなり受信する信号が減衰することを抑制することができる。
【0032】
また、スケールコイル22の測定方向であるX方向の幅は、コイルパターン部52における測定方向であるX方向の最長の幅の整数倍となるように形成されている。具体的には、スケールコイル22は、測定方向であるX方向と平行な方向に幅S2を有して形成されている。コイルパターン部52は、測定方向であるX方向と平行な方向における最長の幅として幅D2を有して形成されている。コイルパターン部52の最長の幅D2は、スケールコイル22の幅S2と同じ幅となるように形成されている。すなわち、スケールコイル22の測定方向であるX方向の幅S2は、コイルパターン部52における測定方向であるX方向の最長の幅D2の整数倍である等倍となるように形成されている。なお、スケールコイル22の測定方向の幅は、コイルパターン部52における測定方向の最長の幅の等倍ではなく、2倍や3倍等となるように形成されていてもよい。
【0033】
また、スケールコイル22の直交方向であるY方向の幅は、コイルパターン部52における直交方向であるY方向の最長の幅の整数倍となるように形成されている。具体的には、スケールコイル22は、直交方向であるY方向と平行な方向に幅S1を有して形成されている。コイルパターン部52は、直交方向であるY方向と平行な方向における最長の幅として幅D3を有して形成されている。コイルパターン部52の最長の幅D3は、スケールコイル22の幅S1と同じ幅となるように形成されている。すなわち、スケールコイル22の直交方向であるY方向の幅S1は、コイルパターン部52における直交方向であるY方向の最長の幅D3の整数倍である等倍となるように形成されている。なお、スケールコイル22の直交方向の幅は、コイルパターン部52における直交方向の最長の幅の等倍ではなく、2倍や3倍等となるように形成されていてもよい。
このようにスケールコイル22を形成することで、受信コイル50は、対向面積を最大限に大きくすることができるとともに高精度に信号をすることができる。
【0034】
図5は、電磁誘導式エンコーダ1に係るスケールコイル22に対して受信コイル50がズレを有して配置された際の関係を示す概念図である。
図5に示すように、複数の受信コイル50を有する受信手段5が直交方向であるY方向(紙面上方向)にズレを有して配置された場合、対向面積は、
図4におけるズレを有していないときの対向面積とは異なる形状となる。このとき、
図7(B)に示すように、従来は、ズレにより対向面積は小さくなっていたが、
図5に示す受信手段5においては、ズレを有していたとしても、対向面積は小さくならず、ズレを有しない場合と同じ面積を有する。
【0035】
図6は、電磁誘導式エンコーダ1に係るスケールコイル22に対して受信コイル50がズレを有して配置された際の効果を示す概念図である。具体的には、
図6(A)は、スケールコイル22に対して受信コイル50がズレを有さずに配置された
図4の部分拡大図である。また、
図6(B)は、スケールコイル22に対して受信コイル50がズレを有して配置された
図5の部分拡大図である。
以下、
図6を用いて、スケールコイル22に対して受信コイル50がズレを有して配置された場合でも、対向面積は変化しない理由について説明する。
【0036】
図6に示すように、受信手段5が直交方向である紙面上方向(Y方向)に距離D4のズレを有して配置された場合、対向面積の位置は、
図6(A)に示す位置から
図6(B)に示す位置に距離D4を有して移動する。このとき、受信コイル50は、コイルパターン部52によりY方向に延長されて形成されているため、ズレを有して配置されたとしても、対向面積を得ることができる。そして、ズレを有しないときの
図6(A)の距離D4部分の面積Nは、ズレを有する
図6(B)の移動先の面積Nと同じ形の対向面積となる。
【0037】
これにより、電磁誘導式エンコーダ1は、スケールコイル22に対して直交方向に受信手段5がズレを有して配置されたとしても、ズレを有していないときと同じ面積の対向面積を得ることができる。なお、受信手段5が直交方向である紙面下方向(Y方向)にズレを有して配置された場合であっても、同様に、電磁誘導式エンコーダ1は、ズレを有していないときと同じ面積の対向面積を得ることができる。
【0038】
このような一実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)受信コイル50は、スケールコイル22の直交方向であるY方向の幅よりも長い幅となるように直交方向であるY方向の幅が形成されている。これにより、受信コイル50がスケールコイル22に対して直交方向であるY方向にズレを有して配置されたとしても、対向面積が小さくなることを防ぎ、受信コイル50が受信する信号の強度が低下することを抑制することができる。また、受信コイル50は、それぞれ同じ大きさに形成されるとともに直交方向であるY方向に沿って並設される複数のコイルパターン部52を備え、一本の配線により形成される。これにより、受信コイル50がスケールコイル22に対して直交方向であるY方向にズレを有して配置されたとしても、一本の配線にて形成された複数のコイルパターン部52により、高調波が発生することを抑制することができる。したがって、電磁誘導式エンコーダ1は、受信コイル50がスケールコイル22に対してズレを有して配置されたとしても、高調波の発生を抑制し高精度化を図ることができる。
【0039】
(2)コイルパターン部52は、略環状に形成されるとともに、測定方向であるX方向に沿って逆位相となる2つの正弦波を重ね合わせた形状に形成されているため、受信コイル50がスケールコイル22に対して直交方向であるY方向にズレを有していたとしても、ズレを有していないときの対向面積と同じ面積の対向面積を得つつ、ひずみが抑制された正弦波信号を得ることができる。
(3)スケールコイル22の測定方向であるX方向の幅S2は、コイルパターン部52における測定方向であるX方向の最長の幅D2の整数倍である等倍に形成されているため、測定方向であるX方向において、対向面積が小さくなることを防ぎ、受信コイル50にて受信される信号に高調波などによるひずみが生じることを抑制することができる。
【0040】
(4)スケールコイル22の直交方向であるY方向の幅S1は、コイルパターン部52における直交方向であるY方向の最長の幅D1の整数倍である等倍となるように形成されているため、直交方向であるY方向において、対向面積が小さくなることを防ぎ、受信コイル50にて受信される信号に高調波などによるひずみが生じることを抑制することができる。
(5)受信コイル50がスケールコイル22に対してズレを有して配置されたとしても、複数のコイルパターン部52が測定方向であるX方向と平行な方向を軸Lとして線対称に形成されていることで、ズレを有していないときの対向面積と同じ面積の対向面積を得ることができる。したがって、電磁誘導式エンコーダ1は、測定結果の精度の低下を抑制することができる。
【0041】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、電磁誘導式エンコーダ1は、測定機器としての電磁誘導式ノギスに用いられていたが、ダイヤルゲージ(テストインジケータ)やマイクロメータ等の他の測定機器に用いられていてもよい。すなわち、電磁誘導式エンコーダは、用いられる測定機器の形式や方式などについて特に限定されるものではなく、その他の測定機器などにおいても利用可能であり、本発明の電磁誘導式エンコーダを何に実装するかについては、特に限定されるものではない。
また、電磁誘導式エンコーダは、センサ等の測定器以外のものに用いられていてもよい。
【0042】
前記実施形態では、複数の受信コイル50は、測定方向であるX方向に沿って互いに接続部51で接続されていたが、接続部51ではなく、例えば、コイルパターン部の一部を延長させて複数の受信コイルを接続してもよい。要するに、複数の受信コイルは、測定方向に沿って互いに接続して並設されていればよい。
【0043】
前記実施形態では、複数の受信コイル50は、等間隔で測定方向であるX方向に沿って並設されていたが、等間隔に並設されていなくてもよい。また、コイルパターン部52は、略環状に形成されるとともに、測定方向であるX方向に沿って逆位相となる2つの正弦波を重ね合わせた形状に形成されていたが、コイルパターン部は、例えば略矩形状に形成されていてもよいし、楕円状に形成されていてもよい。また、前記実施形態では、複数のコイルパターン部52は、受信コイルの中央を通る測定方向であるX方向と平行な方向を軸Lとして線対称に形成されていたが、線対称に形成されていなくてもよい。要するに、複数のコイルパターン部は、直交方向に沿って並設され、一本の配線により形成されていればよい。
【0044】
前記実施形態では、スケールコイル22の測定方向であるX方向の幅S2は、コイルパターン部52の測定方向であるX方向の最長の幅D2の等倍となるように形成され、スケールコイル22の直交方向であるY方向の幅S1は、コイルパターン部52における直交方向であるY方向の最長の幅D1の等倍となるように形成されていたが、スケールコイル22は、任意の幅を有して形成されていてもよく、また、任意の形状に形成されていてもよい。要するに、スケールコイルは、送信コイルにより磁束を生じ、受信コイルがその磁束の変化を受信することができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明は、電磁誘導式エンコーダに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 電磁誘導式エンコーダ
2 スケール
22 スケールコイル
3 ヘッド
4 送信手段
5 受信手段
50 受信コイル
52 コイルパターン部