(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063652
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤、接合体及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20220415BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20220415BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220415BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J7/21
C09J11/04
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172012
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】福井 崇洋
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真弓
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA08
4J004AA10
4J004AA13
4J004AA14
4J004AA15
4J004AA17
4J004AA18
4J004AB05
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4J004CC02
4J004EA05
4J004FA08
4J004GA01
4J040DD071
4J040DF001
4J040EC001
4J040ED001
4J040EF001
4J040HA136
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA01
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における充分な接着強度の維持とを両立することができる、フィルム状接着剤を提供すること。
【解決手段】無機繊維基材5を含むフィルム状接着剤1であって、第1の熱硬化性接着剤からなり、フィルム状接着剤1の一方の主面2aから露出する上部領域2と、第2の熱硬化性接着剤からなり、フィルム状接着剤1の他方の主面3aから露出する下部領域3と、上部領域2と下部領域3との間に位置し、無機繊維基材5を含む中間領域4と、を備え、一方の主面2a及び他方の主面3aの表面タック力が、0.12N以上である、フィルム状接着剤1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維基材を含むフィルム状接着剤であって、
第1の熱硬化性接着剤からなり、前記フィルム状接着剤の一方の主面から露出する上部領域と、
第2の熱硬化性接着剤からなり、前記フィルム状接着剤の他方の主面から露出する下部領域と、
前記上部領域と前記下部領域との間に位置し、前記無機繊維基材を含む中間領域と、を備え、
前記一方の主面及び前記他方の主面の表面タック力が、0.12N以上である、フィルム状接着剤。
【請求項2】
前記中間領域が、前記上部領域と連続し、前記第1の熱硬化性接着剤を含有する領域と、前記下部領域と連続し、前記第2の熱硬化性接着剤を含有する領域とを含む、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記無機繊維基材がガラス繊維基材である、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記フィルム状接着剤の厚さに対する前記無機繊維基材の厚さの比が0.1~0.9である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記第1の熱硬化性接着剤における無機フィラーの含有量が30質量%以下であり、
前記第2の熱硬化性接着剤における無機フィラーの含有量が30質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤の製造方法であって、
0.12N以上の表面タック力を有し、第1の熱硬化性接着剤からなる第1の接着剤フィルムと、0.12N以上の表面タック力を有し、第2の熱硬化性接着剤からなる第2の接着剤フィルムと、を、前記無機繊維基材を介して貼り合わせる工程を備える、フィルム状接着剤の製造方法。
【請求項7】
前記第1の接着剤フィルムと前記第2の接着剤フィルムの厚さの合計に対する前記無機繊維基材の厚さの比が0.1~0.9である、請求項6に記載のフィルム状接着剤の製造方法。
【請求項8】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を互いに接合する接合部と、を備える、接合体の製造方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤を介在させ、前記第1の部材と前記第2の部材とを熱圧着する工程を備える、接合体の製造方法。
【請求項9】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を互いに接合する接合部と、を備え、
前記接合部が、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤の硬化体を含む、接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、接合体及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密電子機器の分野では、部材の接合(例えば異種部材の接合)のために種々の接着剤が使用されている。これらの接着剤には、接合後において、高温での形態安定性(高温での貯蔵弾性率)に優れること、高温高湿状態において充分な接着強度を維持できる接合信頼性を有すること等が要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いた接着剤が開示されており、当該接着剤を用いることで、高温高湿条件下で発生する界面剥離を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、高温高湿条件下で充分な接着強度を維持することが困難であり、実用に供し得るためには未だ改善の余地がある。また、高温での形態安定性を向上させる手段としては、無機フィラーを高充填させることが考えられるが、それに伴い、接着剤の表面(接着面)の濡れ性が低下し、接着強度が低下する。そのため、この方法では、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態(例えば85℃85%RH)における充分な接着強度の維持とを両立することは難しい。
【0006】
そこで、本発明は、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における充分な接着強度の維持とを両立することができる、フィルム状接着剤及びその製造方法、並びに、当該フィルム状接着剤を用いた接合体及びその製造方法を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、以下[1]~[5]に示すフィルム状接着剤に関する。
【0008】
[1]無機繊維基材を含むフィルム状接着剤であって、第1の熱硬化性接着剤からなり、前記フィルム状接着剤の一方の主面から露出する上部領域と、第2の熱硬化性接着剤からなり、前記フィルム状接着剤の他方の主面から露出する下部領域と、前記上部領域と前記下部領域との間に位置し、前記無機繊維基材を含む中間領域と、を備え、前記一方の主面及び前記他方の主面の表面タック力が、0.12N以上である、フィルム状接着剤。
【0009】
[2]前記中間領域が、前記上部領域と連続し、前記第1の熱硬化性接着剤を含有する領域と、前記下部領域と連続し、前記第2の熱硬化性接着剤を含有する領域とを含む、[1]に記載のフィルム状接着剤。
【0010】
[3]前記無機繊維基材がガラス繊維基材である、[1]又は[2]に記載のフィルム状接着剤。
【0011】
[4]前記フィルム状接着剤の厚さに対する前記無機繊維基材の厚さの比が0.1~0.9である、[1]~[3]のいずれかに記載のフィルム状接着剤。
【0012】
[5]前記第1の熱硬化性接着剤における無機フィラーの含有量が30質量%以下であり、前記第2の熱硬化性接着剤における無機フィラーの含有量が30質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のフィルム状接着剤。
【0013】
上記側面のフィルム状接着剤によれば、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における充分な接着強度の維持とを両立することができる。ここで、高温で優れた形態安定性を有することは、フィルム状接着剤を硬化させて得られる硬化体が高温においても高い強度を示すことを意味し、具体的には、当該硬化体が、170℃における動的粘弾性測定において、優れた貯蔵弾性率を示すことを意味する。
【0014】
本発明の他の一側面は、以下[6]~[7]に示すフィルム状接着剤の製造方法に関する。
【0015】
[6][1]~[5]のいずれかに記載のフィルム状接着剤の製造方法であって、0.12N以上の表面タック力を有し、第1の熱硬化性接着剤からなる第1の接着剤フィルムと、0.12N以上の表面タック力を有し、第2の熱硬化性接着剤からなる第2の接着剤フィルムと、を、前記無機繊維基材を介して貼り合わせる工程を備える、フィルム状接着剤の製造方法。
【0016】
[7]前記第1の接着剤フィルムと前記第2の接着剤フィルムの厚さの合計に対する前記無機繊維基材の厚さの比が0.1~0.9である、[6]に記載のフィルム状接着剤の製造方法。
【0017】
本発明の他の一側面は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を互いに接合する接合部と、を備える、接合体の製造方法であって、前記第1の部材と前記第2の部材との間に[1]~[5]のいずれかに記載のフィルム状接着剤を介在させ、前記第1の部材と前記第2の部材とを熱圧着する工程を備える、接合体の製造方法に関する。
【0018】
本発明の他の一側面は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を互いに接合する接合部と、を備え、前記接合部が、[1]~[5]のいずれかに記載のフィルム状接着剤の硬化体を含む、接合体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における充分な接着強度の維持とを両立することができる、フィルム状接着剤及びその製造方法、並びに、当該フィルム状接着剤を用いた接合体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態のフィルム状接着剤を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるフィルム状接着剤の断面の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のフィルム状接着剤の製造方法を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の接合体を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。
【0022】
<フィルム状接着剤>
図1に示すように、一実施形態のフィルム状接着剤1は、当該フィルム状接着剤1の一方の主面2aから露出する上部領域2と、フィルム状接着剤の他方の主面3aから露出する下部領域3と、上部領域2と下部領域3との間に位置し、無機繊維基材5を含む中間領域4とを備える。
【0023】
上部領域2、下部領域3及び中間領域4は、フィルム状接着剤1の主面に垂直な方向に所定の厚みを有し、上部領域2と中間領域4と下部領域3とがこの順で厚さ方向(主面に垂直な方向)に並んでいる。上部領域2、下部領域3及び中間領域4は、フィルム状接着剤1の主面に平行な方向に広がっており、例えば、層状を呈している。
【0024】
上部領域2及び下部領域3は、熱硬化性接着剤からなる。以下では、場合により、上部領域2を構成する熱硬化性接着剤を第1の熱硬化性接着剤といい、下部領域3を構成する熱硬化性接着剤を第2の熱硬化性接着剤という。第1の熱硬化性接着剤と第2の熱硬化性接着剤とは、同一の組成であっても異なる組成であってもよい。また、上部領域2及び下部領域3を構成する第1の熱硬化性接着剤及び第2の熱硬化性接着剤は、無機繊維基材5に由来する無機繊維を含んでいてもよい。熱硬化性接着剤の詳細は後述する。
【0025】
上部領域2の厚さ及び下部領域3の厚さ(それぞれの厚さ)は、充分な接着強度が得られやすい観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。上部領域2の厚さ及び下部領域3の厚さ(それぞれの厚さ)は、例えば、40μm以下であり、30μm以下又は20μm以下であってもよい。
【0026】
上部領域2の厚さ及び下部領域3の厚さは、例えば、以下の方法により測定することができる。まず、フィルム状接着剤1を2枚のガラス(厚さ:1mm程度)で挟み込む。次いで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER811、三菱ケミカル株式会社製)100gと、硬化剤(商品名:エポマウント硬化剤、リファインテック株式会社製)10gとからなる樹脂組成物で注型する。その後、研磨機を用いて断面研磨を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:SE-8020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて各領域の厚さを測定する。
【0027】
上部領域2の厚さと下部領域3の厚さは、同一であっても異なっていてもよい。上部領域2の厚さと下部領域3の厚さの比率は、接着力維持の観点から、0.2以上、0.5以上又は1以上であってよい。上部領域2の厚さと下部領域3の厚さの比率は、接着力維持の観点から、3以下、2.5以下又は2以下であってよい。
【0028】
中間領域4は、無機繊維基材5を含む領域であり、中間領域4の厚さは、無機繊維基材5の厚さに等しい。
【0029】
無機繊維基材5は、無機繊維からなる基材であり、例えば、複数の無機繊維が互いに絡み合って構成される網目状構造を有している。無機繊維基材5は、熱硬化性接着剤の硬化物と比較して、熱膨張係数が低く、また、高温での形態安定性に優れる傾向がある。そのため、フィルム状接着剤1が、中間領域4として、無機繊維基材5を含む領域を備えることで、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における充分な接着強度の維持とを両立することができる。
【0030】
無機繊維基材5を構成する無機繊維としては、ガラス繊維、金属繊維(銀繊維、アルミ繊維等)、セラミック繊維などが挙げられる。これらの中でも、高温での形態安定性により優れる観点、及び、フィルム状接着剤1全体としての熱膨張係数をより小さくすることができ、高温高湿状態において接着強度をより維持しやすくなる観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維の材料であるガラスとしては、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でも、無機繊維基材5の熱膨張係数をより小さくすることができ、それによりフィルム状接着剤1全体としての熱膨張係数をより小さくすることができる観点から、Tガラスが好ましい。ガラス繊維で構成される無機繊維基材(ガラス繊維基材)は、ガラス織布であってよく、ガラス不織布であってもよい。
【0031】
無機繊維基材5は、例えば、平板状である。無機繊維基材5の厚さ(中間領域4の厚さ)は、高温での形態安定性により優れる観点、及び、高温高湿状態において接着強度をより維持しやすくなる観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。無機繊維基材5の厚さ(中間領域4の厚さ)は、50μm以下、45μm以下又は40μm以下であってよい。
【0032】
フィルム状接着剤1の厚さ(総厚)に対する無機繊維基材5の厚さの比は、高温での形態安定性により優れる観点、及び、高温高湿状態において接着強度をより維持しやすくなる観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.3以上である。フィルム状接着剤1の厚さ(総厚)に対する無機繊維基材5の厚さの比は、充分な接着強度が得られやすくなる観点から、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.7以下であり、更に好ましくは0.5以下である。これらの観点から、フィルム状接着剤1の厚さ(総厚)に対する無機繊維基材5の厚さの比は、好ましくは0.1~0.9である。
【0033】
中間領域4は、例えば、中間領域4と隣接する領域(以下、「隣接領域」という)のうちの一方又は両方と連続し、熱硬化性接着剤を含有する領域(以下、「接着剤含有領域」という)を含む。中間領域4は、
図2に示すように、上部領域2と連続する接着剤含有領域6Aを含んでいてよく、下部領域3と連続する接着剤含有領域6Bを含んでいてもよく、上部領域2及び下部領域3と連続する接着剤含有領域6Cを含んでいてもよい。
図2に示すフィルム状接着剤1においては、接着剤含有領域6Aと接着剤含有領域6Bとが連続することで接着剤含有領域6Cを構成している。より優れた接着強度が得られる観点では、中間領域4が、隣接領域のうちの両方と連続する接着剤含有領域を含むことが好ましい。
【0034】
接着剤含有領域は、無機繊維基材5の少なくとも一部と、当該無機繊維基材5中に含浸された熱硬化性接着剤とを含む。接着剤含有領域に含まれる熱硬化性接着剤は、好ましくは、隣接領域に含まれる熱硬化性接着剤と同一である。すなわち、上部領域2と連続する接着剤含有領域6Aに含まれる熱硬化性接着剤は、好ましくは第1の熱硬化性接着剤であり、下部領域3と連続する接着剤含有領域6Bに含まれる熱硬化性接着剤は、好ましくは第2の熱硬化性接着剤である。この場合、フィルム状接着剤1内部での剥離が起こり難くなる。
【0035】
中間領域4が、両隣接領域(上部領域2及び下部領域3)と連続する接着剤含有領域を含み、且つ、両隣接領域に含まれる熱硬化性接着剤(第1の熱硬化性接着剤及び第2の熱硬化性接着剤)が互いに異なる場合、接着剤含有領域は、両隣接領域に含まれる熱硬化性接着剤(第1の熱硬化性接着剤及び第2の熱硬化性接着剤)が混在する領域を含んでいてもよい。
【0036】
フィルム状接着剤1の厚さは、1μm以上であってよく、80μm以下であってよい。
【0037】
フィルム状接着剤1の両主面2a,3aの表面タック力(主面2aの表面タック力及び主面3aの表面タック力)は、0.12N以上である。フィルム状接着剤1の主面2a,3aのそれぞれがこのような表面タック力を有することで、例えばラミネート等により、接合部材同士を仮固定することができるため、優れた作業効率が得られる。このような観点から、フィルム状接着剤1の両主面2a,3aの表面タック力は、0.15N以上であってもよい。フィルム状接着剤1の両主面2a,3aの表面タック力は、フィルム状接着剤1の製造時等に主面2a,3a上に基材が配置された場合であっても当該基材を容易に剥離できる観点から、5N以下であってよい。上記表面タック力は実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0038】
フィルム状接着剤1の両主面2a,3aの表面タック力は、同一であっても異なっていてもよい。フィルム状接着剤1の両主面2a,3aの表面タック力は、熱硬化性接着剤に含有させる成分(熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填材等)の種類及び量により調整することができる。
【0039】
次に、フィルム状接着剤1が含有する熱硬化性接着剤について説明する。以下で説明する熱硬化性接着剤は、例えば、上部領域2を構成する熱硬化性接着剤、下部領域3を構成する熱硬化性接着剤、及び中間領域4に含まれ得る熱硬化性接着剤からなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性接着剤である。
【0040】
熱硬化性接着剤は、例えば、熱可塑性樹脂と、重合性化合物と、熱重合開始剤と、を含有する。熱硬化性接着剤は、カップリング剤、充填材等を含有してもよい。
【0041】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、可とう性を向上させる観点では、ポリエステルウレタン樹脂であってよい。ポリエステルウレタン樹脂の中でも、芳香族ポリエステル骨格を有するポリエステルウレタン樹脂を用いることで、膜形成性を維持しながら折り曲げ耐性を向上させることができる傾向がある。
【0042】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、膜形成性の観点から、2000以上であってよく、30000以上であってもよく、50000以上であってもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、接着力の観点から、300000以下であってよく、200000以下であってもよく、100000以下であってもよい。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定される値である。
【0043】
熱可塑性樹脂のTg(ガラス転移点)は、常温での膜安定性の観点から、40以上であってよく、50以上であってもよく、60以上であってもよい。熱可塑性樹脂のTgは、樹脂作製時の材料混合性の観点から、200℃以下であってよく、150℃以下であってもよく、100℃以下であってもよい。上記Tgは、示差操作熱量測定によって測定される値である。
【0044】
熱可塑性樹脂の含有量は、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、5~95質量%であってよい。
【0045】
[重合性化合物]
重合性化合物は、熱によって熱重合開始剤が発生させたラジカル、カチオン又はアニオンにより重合する化合物である。重合性化合物は、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれであってもよい。重合性化合物としては、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
重合性化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する。重合性基は、より優れた接着特性が得られる観点から、ラジカルにより反応するラジカル重合性基であることが好ましい。すなわち、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。この場合、熱重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0047】
重合性化合物が有する重合性基の数は、重合後、接続抵抗を低減するために必要な物性(例えば、架橋密度等)を得る観点では、2以上であってよく、重合時の硬化収縮をより抑える観点では、10以下であってよい。なお、架橋密度と効果収縮とのバランスを保つ観点から、重合性基の数が上記範囲内(2~10)の重合性化合物に、重合性基の数が上記範囲外の他の重合性化合物を加えて用いてもよい。
【0048】
重合性化合物の具体例としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、スチレン誘導体、アクリルアミド誘導体、ナジイミド誘導体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリレート化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフォスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルフォスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0050】
マレイミド化合物としては、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-s-ブチル-4-8(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス(1-(4マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシル)ベンゼン、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0051】
ビニルエーテル化合物としては、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0052】
アリル化合物としては、1,3-ジアリルフタレート、1,2-ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0053】
重合性化合物は、硬化反応速度に優れ、硬化後により良好な物性が得られる観点では、(メタ)アクリレート化合物であってよい。(メタ)アクリレート化合物の含有量は、硬化後に更に良好な物性が得られる観点では、例えば、重合性化合物の全質量を基準として、10~40質量%であってよく、40~70質量%であってもよく、70~100質量%であってもよい。
【0054】
重合性化合物は、架橋密度と硬化収縮とのバランスをとることができ、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における接着強度の維持とをより容易に両立しやすくなる観点では、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリマー)の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性基を導入した化合物であってよい。熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にラジカル重合性基を導入した化合物は、より優れた接着特性が得られる観点では、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物であってよい。
【0055】
熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にラジカル重合性基を導入した化合物の重量平均分子量は、架橋密度と硬化収縮とのバランスに優れる観点では、3000以上、5000以上又は10000以上であってよい。熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にラジカル重合性基を導入した化合物の重量平均分子量は、他成分との相溶性に優れる観点では、1000000以下、500000以下、又は250000以下であってもよい。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値である。
【0056】
熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にラジカル重合性基を導入した化合物の含有量は、架橋密度と硬化収縮とのバランスにより優れる観点では、例えば、重合性化合物の全質量を基準として、20~40質量%であってよく、40~60質量%であってもよく、60~80質量%であってもよい。
【0057】
重合性化合物は、凝集力をより向上させ、耐熱性(例えば高温での優れた形態安定性)をより向上させる観点では、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物等の高Tg(ガラス転移点)を有する化合物であってもよい。高Tgを有する化合物の含有量は、凝集力を更に向上させ、耐熱性(例えば高温での優れた形態安定性)を更に向上させる観点では、例えば、重合性化合物の全質量を基準として、1~30質量%であってよく、30~60質量%であってもよく、60~95質量%であってもよい。
【0058】
重合性化合物は、無機物(金属等)の表面に対する接着強度を向上させる観点では、リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよい。このような重合性化合物を含有する熱硬化性接着剤は、例えば、回路電極同士の接着に好適に用いられる。
【0059】
リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば、下記式(1)で表される構造を有する。
【化1】
【0060】
式(1)中、nは1~3の整数を示し、R2は、水素原子又はメチル基を示す。
【0061】
リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば、無水リン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0062】
リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、無機物(金属等)の表面に対する接着強度をより向上させる観点では、重合性化合物の全質量を基準として、1~7質量%であってよく、7~14質量%であってもよく、14~28質量%であってもよい。
【0063】
重合性化合物の含有量は、高温でのより優れた形態安定性が得られやすくなる観点、及び、接着強度に優れる観点から、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよい。重合性化合物の含有量は、重合時の硬化収縮を抑えることができ、高温高湿状態において充分な接着強度を容易に維持しやすくなる観点から、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよい。これらの観点から、重合性化合物の含有量は、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、10~90質量%であってよく、20~80質量%であってよく、30~70質量%であってよい。
【0064】
[熱重合開始剤]
熱重合開始剤は、熱によりラジカル、カチオン又はアニオンを発生する重合開始剤(熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤又は熱アニオン重合開始剤)である。熱重合開始剤は、より優れた接着特性が得られる観点から、熱ラジカル重合開始剤であることが好ましい。熱重合開始剤として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
熱ラジカル重合開始剤は、熱により分解して遊離ラジカルを発生する。つまり、熱ラジカル重合開始剤は、外部からの熱エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物である。熱ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている有機過酸化物、アゾ化合物等の化合物の中から任意に選択することができる。
【0066】
熱重合開始剤の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0067】
熱重合開始剤の含有量は、速硬化性により優れる観点から、重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、又は1質量部以上であってよい。熱重合開始剤の含有量は、貯蔵安定性により優れる観点から、重合性化合物100質量部に対して、50質量部以下、25質量部以下、又は10質量部以下であってよい。これらの観点から、熱重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1~50質量部であってよい。
【0068】
[カップリング剤]
カップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミダゾール基等の有機官能基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシチタネート誘導体、ポリジアルキルチタネート誘導体などが挙げられる。カップリング剤は1種を単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。熱硬化性接着剤がカップリング剤を含有する場合、接着性が更に向上する傾向がある。カップリング剤の含有量は、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、20質量%以下であってよく、0.1~20質量%であってよい。なお、本明細書では、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有するシランカップリング剤は、重合性化合物には含まれないものとする。
【0069】
[充填材]
充填材としては、例えば、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。充填材は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子;窒化物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよく、コア-シェル型構造を有していてもよい。
【0070】
充填材の含有量は、例えば、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよく、30質量%以下、28質量%以下又は25質量%以下であってよい。特に、高温での形態安定性がより向上する観点から、無機フィラーの含有量の下限値が上記の値であることが好ましく、より優れた接着強度が得られる観点から、無機フィラーの含有量の上限値が上記の値であることが好ましい。
【0071】
[その他の成分]
熱硬化性接着剤は、上述した成分以外の成分(その他の成分)を更に含有してもよい。その他の成分としては、例えば、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等が挙げられる。その他の成分の含有量は、熱硬化性接着剤の全質量を基準として、0.1~50質量%であってよい。
【0072】
以上説明したフィルム状接着剤1によれば、高温での優れた形態安定性と、高温高湿状態における充分な接着強度の維持とを両立することができる。また、フィルム状接着剤1は無機繊維基材5を含むことから、フィルム状接着剤1によれば、作業時の視認性を向上させることができ、作業プロセスを容易にすることができる。したがって、上記フィルム状接着剤1を用いることで、接合部の高温での形態安定性に優れる共に、高温高湿状態における接合信頼性に優れる接合体を簡便に製造することができる。
【0073】
上記フィルム状接着剤1は、特に、異種の材料で構成される部材(異種部材)同士の接着において好適に用いられる。
【0074】
以上、フィルム状接着剤1について説明したが、本発明のフィルム状接着剤は上記実施形態に限定されない。
【0075】
例えば、フィルム状接着剤は、上部領域と中間領域との間、及び/又は、下部領域と中間領域との間に他の領域を備えていてもよい。例えば、フィルム状接着剤は、上部領域と中間領域との間に第1の熱硬化性接着剤以外の熱硬化性接着剤からなる領域を備えていてもよく、下部領域と中間領域との間に第2の熱硬化性接着剤以外の熱硬化性接着剤からなる領域を備えていてもよい。
【0076】
例えば、フィルム状接着剤は、中間領域となる無機繊維基材を含む領域を複数含んでいてよい。例えば、フィルム状接着剤は、上部領域と下部領域の間に、無機繊維基材を含む領域と、熱硬化性接着剤からなる領域と、無機繊維基材を含む領域と、がこの順に並ぶ領域を含んでいてよい。
【0077】
<フィルム状接着剤の製造方法>
フィルム状接着剤1の製造方法は、例えば、
図3に示すように、第1の接着剤フィルム11と第2の接着剤フィルム21とを無機繊維基材5を介して貼り合わせる工程を備える。フィルム状接着剤1の製造方法は、第1の接着剤フィルム11、第2の接着剤フィルム21及び無機繊維基材5を用意する工程を更に備えていてもよい。
【0078】
第1の接着剤フィルム11は第1の熱硬化性接着剤からなり、第2の接着剤フィルム21は第2の熱硬化性接着剤からなる。第1の接着剤フィルム11及び第2の接着剤フィルム21は、0.12N以上の表面タック力を有している。第1の接着剤フィルム11の表面タック力及び第2の接着剤フィルム21の表面タック力は、フィルム状接着剤1の両主面2a,3aの表面タック力と同じであってよい。
【0079】
第1の接着剤フィルム11及び第2の接着剤フィルム21は、例えば、
図3に示すように、基材12,22上に形成されている。すなわち、フィルム状接着剤1の製造方法では、基材と、基材上に形成された接着剤フィルムとを備える、基材付き接着剤フィルム(第1の基材付き接着剤フィルム10、第2の基材付き接着剤フィルム20)を用いてよい。
【0080】
基材付き接着剤フィルムは、例えば、以下の方法で用意することができる。まず、上述した熱硬化性接着剤に含まれる各成分を、溶剤(例えば有機溶剤)中に加え、攪拌混合、混練等により、溶解又は分散させて、ワニス組成物(熱硬化性接着剤のワニス)を調製する。その後、離型処理を施した基材上に、ワニス組成物をナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗布した後、加熱により溶剤を揮発させて熱硬化性接着剤からなる層(接着剤フィルム)を形成する。これにより、基材付き接着剤フィルムが得られる。
【0081】
ワニス組成物の調製に用いる溶剤としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。ワニス組成物の調製の際の攪拌混合及び混練は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0082】
基材としては、溶剤を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる基材(例えばフィルム)を用いることができる。
【0083】
基材へ塗布したワニス組成物から溶剤を揮発させる際の加熱条件(乾燥条件)は、溶剤が充分に揮発する条件とすることが好ましい。加熱条件(乾燥条件)は、例えば、40℃以上120℃以下で0.1分間以上10分間以下であってよい。また、接着剤フィルムには、溶剤の一部が除去されずに残っていてもよい。接着剤フィルムにおける溶剤の含有量は、例えば、接着剤フィルムの全質量を基準として、0.01質量%以下としてよい。
【0084】
第1の接着剤フィルム11の厚さ及び第2の接着剤フィルム21の厚さは、上部領域2及び下部領域3の厚さを上述した範囲に調整しやすい観点から、1μm以上、5μm以上又は10μm以上であってよく、50μm以下、45μm以下又は40μm以下であってよい。
【0085】
第1の接着剤フィルム11の厚さと第2の接着剤フィルム21の厚さは、同一であっても異なっていてもよい。第1の接着剤フィルム11の厚さと第2の接着剤フィルム21の厚さの比率は、上部領域2の厚さと下部領域3の厚さの比率を上述した範囲に調整しやすい観点から、0.2以上、0.5以上又は1以上であってよく、3以下、2.5以下又は2以下であってよい。
【0086】
第1の接着剤フィルム11と第2の接着剤フィルム21の厚さの合計に対する無機繊維基材5の厚さの比は、フィルム状接着剤1の厚さ(総厚)に対する無機繊維基材5の厚さの比を上述した範囲に調整しやすい観点から、0.1以上、0.2以上又は0.3以上であってよく、0.9、0.7以下又は0.5以下であってよい。上記観点から、第1の接着剤フィルム11と第2の接着剤フィルム21の厚さの合計に対する無機繊維基材5の厚さの比は、0.1~0.9であってよい。
【0087】
第1の接着剤フィルム11と第2の接着剤フィルム21とを無機繊維基材5を介して貼り合わせる工程は、例えば、加圧下で実施してよい。具体的には、例えば、
図3に示すように、第1の基材付き接着剤フィルム10の第1の接着剤フィルム11側の面と、第2の基材付き接着剤フィルム20の第2の接着剤フィルム21側の面とが対向するように、第1の基材付き接着剤フィルム10と、無機繊維基材5と、第2の基材付き接着剤フィルム20とをこの順で積層し、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等により、積層方向(
図3の矢印で示す方向)に加圧することで、第1の接着剤フィルム11と第2の接着剤フィルム21とを無機繊維基材5を介して貼り合わせてよい。貼り合わせ後、基材12,22を除去することで、
図1に示すフィルム状接着剤1が得られる。
【0088】
加圧時の圧力は、例えば、0.25~2MPaであってよい。加圧時の温度は、23~70℃であってよい。
【0089】
<接合体及びその製造方法>
図4に示すように、一実施形態の接合体30は、第1の部材31と、第2の部材32と、第1の部材31及び第2の部材32を互いに接合する接合部33と、を備える。
【0090】
第1の部材31及び第2の部材32は、互いに同じであっても異なっていてもよい。第1の部材31と第2の部材32とは、好ましくは、互いに異なる材料で構成される異種部材である。第1の部材31及び第2の部材32は、半導体、ガラス、セラミック等の無機基板;TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)、COF(Chip On Film)等に代表されるポリイミド基板;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の基板等であってよい。これらは複数の組み合わせであってもよい。
【0091】
接合部33は、フィルム状接着剤1の硬化体を含む。接合部33は、例えば、第1の部材31側に位置し、第1の熱硬化性接着剤の硬化物からなる領域34と、第2の部材32側に位置し、第2の熱硬化性接着剤の硬化物からなる領域35と、これらの領域の間に位置し、無機繊維基材を含む領域36と、を含む。図示していないが、無機繊維基材を含む領域36は、例えば、熱硬化性接着剤の硬化物(例えば、第1の熱硬化性接着剤の硬化物、第2の熱硬化性接着剤の硬化物、第1の熱硬化性接着剤と第2の熱硬化性接着剤の混合物の硬化物)を含む。
【0092】
接合体30は、例えば、第1の部材31と第2の部材32との間にフィルム状接着剤1を介在させ、第1の部材31と第2の部材32とを熱圧着することで製造することができる。具体的には、対向配置された第1の部材31と第2の部材32との間にフィルム状接着剤1を配置した後、フィルム状接着剤1を加熱しながら、第1の部材31及び/又は第2の部材32に対してフィルム状接着剤1の厚み方向に加圧することで、第1の部材31、フィルム状接着剤1及び第2の部材32を圧着する。この際、フィルム状接着剤1中の熱硬化性接着剤が硬化することで接合部33が形成され、接合部33によって、第1の部材31と第2の部材32とが接合される。
【0093】
加圧時の圧力は、例えば、0.25~10MPaであってよい。加圧時の温度は、70~300℃であってよい。
【実施例0094】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
<熱硬化性接着剤のワニス(ワニス組成物)1~3の調製>
以下に示す成分を表1に示す配合量(質量部)で混合し、ワニス組成物1~3を得た。
(A)熱可塑性樹脂
A1:ポリエステルウレタン樹脂(商品名:UR-8210、東洋紡株式会社製)
A2:ポリエステルウレタン樹脂(商品名:UR-4800、東洋紡株式会社製)
(B)ラジカル重合性化合物
B1:トリシクロデカン骨格を有するジアクリレート(商品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)
B2:ポリウレタンアクリレート(商品名:UN-5500、根上工業株式会社製)
B3:2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製)
(C)ラジカル重合開始剤
C1:ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT-K40、日油株式会社製)
(D)カップリング剤
D1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業株式会社製)
(E)充填材
E1:シリカ微粒子(商品名:R805、日本アエロジル株式会社製、平均粒径(一次粒径):12nm)
E2:チタン粒子(商品名:タイペーク CR-50、石原産業株式会社製)
(F)溶剤
F1:メチルエチルケトン
【0096】
【0097】
<実施例1~2>
(第1の接着剤フィルムの作製)
ワニス組成物1を厚さ50μmのPETフィルム1(商品名:ピューレックスフィルムUH4U、帝人株式会社製)に塗工装置を用いて塗布した。この際、乾燥後の厚さが表2に示す値となるように調整した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム1上に表2に示す厚さの第1の接着剤フィルム1を作製した。また、ワニス組成物1に代えてワニス組成物2を用いたこと以外は、同様にして、第1の接着剤フィルム2を作製した。
【0098】
(第2の接着剤フィルムの作製)
ワニス組成物1を厚さ38μmのPETフィルム2(商品名:A-3171-38、帝人株式会社製)に塗工装置を用いて塗布した。この際、乾燥後の厚さが表2に示す値となるように調整した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム2上に表2に示す厚さの第2の接着剤フィルム1を作製した。また、ワニス組成物1に代えてワニス組成物2を用いたこと以外は、同様にして、第2の接着剤フィルム2を作製した。
【0099】
(フィルム状接着剤の作製)
無機繊維基材としてガラスクロス(商品名:1017、厚さ:16μm、日東紡株式会社製)を上記で得られた第1の接着剤フィルム1上に載せ、その上(ガラスクロスの第1の接着剤フィルムとは反対側の面上)に上記で得られた第2の接着剤フィルム1を載せ、ホットロールラミネータで重ねてラミネートした。これにより、実施例1のフィルム状接着剤を得た。また、第1の接着剤フィルム1及び第2の接着剤フィルム1に代えて、第1の接着剤フィルム2及び第2の接着剤フィルム2を用いたこと以外は、同様にして、実施例2のフィルム状接着剤を得た。なお、フィルム状接着剤の作製後、第1の接着剤フィルムと第2の接着剤フィルムとの剥離が生じない場合をラミネート性が良好である(ラミネート性○)と評価し、第1の接着剤フィルムと第2の接着剤フィルムとの剥離が生じた場合をラミネート性が不良である(ラミネート性×)と評価した。
【0100】
(表面タック力の測定)
実施例1~2のフィルム状接着剤の両主面の表面タック力を、タックテスター(装置名:TAC-II(株)レスカ社製)を用いて、測定温度30℃、荷重20gf(荷重制御)、引き上げ速度5mm/sの条件で測定した。フィルム状接着剤は、20mm×20mm角に切り出し、タックテスターのプローブがフィルム状接着剤の主面に押し付けられるように固定して、それぞれ5回測定した。5回の平均値を求め、両主面の表面タック力(平均値)が0.12N以上5N以下である場合をタック性○とし、一方又は両方の主面の表面タック力(平均値)が0.12N未満又は5N超である場合をタック性×とした。結果を表2に示す。
【0101】
(フィルム状接着剤の厚さの測定)
以下の方法で実施例1~2のフィルム状接着剤の厚さを測定した。結果を表2に示す。フィルム状接着剤の厚さは、まず、基材(PETフィルム1及びPETフィルム2)が着いた状態のフィルム状接着剤(基材付きフィルム状接着剤)からPETフィルム2を剥がし、フィルム状接着剤とPETフィルム1の総厚を接触式厚み測定器を用いて測定した。その後、PETフィルム1を剥がしPETフィルム1のみの厚さを同様に測定し、上記総厚からPETフィルム1の厚さを差し引いた値をフィルム状接着剤の厚さとした。
【0102】
(接合体の作製)
実施例1~2のフィルム状接着剤をそれぞれ用いて評価用接合体を作製した。具体的には、アルミ箔(商品名:XPH1Y251-025、昆山漢品電子社製)と、銅箔(商品名:XPH0A01-025、昆山漢品電子社製)との間に、フィルム状接着剤を挟み、熱圧着装置(加熱方式:パルスヒート型、株式会社大橋製作所製)を用いて、130℃、2MPaで10秒間の条件で加熱加圧し、フィルム状接着剤を硬化させることで、幅1mmにわたりアルミ箔と銅箔とを接合した。これにより、アルミ箔と、銅箔と、これらを接合する接合部(フィルム状接着剤の硬化体からなる接合部)とを備える接合体(評価用接合体)を作製した。なお、接合体の作製の際に、フィルム状接着剤が配置されている箇所の確認が容易であり、位置合わせが容易であった場合を視認性(作業性)が良好である(視認性○)と評価し、フィルム状接着剤が配置されている箇所を確認し難く、位置合わせが容易でなかった場合を視認性(作業性)が不良である(視認性×)と評価した。実施例1~2のフィルム状接着剤は無機繊維基材を含むため、当該フィルム状接着剤が配置されている箇所(存在箇所)の確認が容易であり、視認性の評価は○であった。
【0103】
<比較例1>
接着剤フィルムの厚さを20μmに調整したこと以外は、実施例1と同様にして、第1の接着剤フィルム3及び第2の接着剤フィルム3を作製した。次いで、無機繊維基材を使用せず、表2に示す第1の接着剤フィルム3と第2の接着剤フィルム3とをホットロールラミネータで重ねてラミネートした。これにより、比較例1のフィルム状接着剤を得た。次いで、得られたフィルム状接着剤を用いたこと以外は、実施例1~2と同様にして、比較例1の接合体を得た。なお、フィルム状接着剤のラミネート性、タック性、厚さ及び視認性は、実施例1~2と同様に評価した。
【0104】
<比較例2>
(第3の接着剤フィルムの作製)
ワニス組成物3を厚さ38μmのPETフィルム2(商品名:A-3171-38、帝人株式会社製)に塗工装置を用いて塗布した。この際、乾燥後の厚さが15μmとなるように調整した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、に厚さ15μmの第3の接着剤フィルム1を作製した。
【0105】
(フィルム状接着剤の作製)
無機繊維基材に代えて、第3の接着剤フィルム1を用いたこと以外は、実施例1~2と同様にして、比較例2のフィルム状接着剤を得た。次いで、得られたフィルム状接着剤を用いたこと以外は、実施例1~2と同様にして、比較例2の接合体を得た。なお、フィルム状接着剤のラミネート性、タック性、厚さ及び視認性は、実施例1~2と同様に評価した。
【0106】
<評価>
(形態安定性評価)
実施例及び比較例のフィルム状接着剤からPETフィルム2を剥がし、耐熱板の上にフィルム状接着剤を固定した。耐熱板に固定したフィルム状接着剤を180℃のオーブンに1時間入れて硬化させ、フィルム状接着剤の硬化体を得た。次いで、DMA(装置名:RSA-G2、TAインスツルメント社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で、動的粘弾性測定を行い、170℃におけるフィルム状接着剤の硬化体の貯蔵弾性率を求めた。本評価では、貯蔵弾性率が1×108Pa以上である場合に、高温での形態安定性に優れる(形態安定性○)と評価し、貯蔵弾性率が1×108Pa未満である場合に、高温での形態安定性に劣る(形態安定性×)と評価した。結果を表2に示す。
【0107】
(接着強度の評価)
実施例及び比較例の接合体を85℃85%RHの条件に設定した恒温槽に投入し、100h後取り出して接着強度を測定した。接合体の接着強度(接合強度)はJIS-Z0237に準じて90度剥離法で測定した。90度剥離法による測定は、テンシロンUTM-4(東洋ボールドウィン株式会社製)を用いて、剥離速度50mm/分、25℃の条件で行った。本評価では、上記高温高湿試験後の接着強度が8N/cm以上である場合に、高温高湿状態において充分な接着強度を維持することができている(接着強度〇)と評価し、接着強度が8N/cm未満である場合に、高温高湿状態において充分な接着強度を維持できていない(接着強度×)と評価した。結果を表2に示す。
【0108】
1…フィルム状接着剤、2…上部領域、2a…一方の主面、3…下部領域、3a…他方の主面、4…中間領域、5…無機繊維基材、11…第1の接着剤フィルム、21…第2の接着剤フィルム、30…接合体、31…第1の部材、32…第2の部材、33…接合部。