(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063759
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】菓子及び菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
A23G3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172162
(22)【出願日】2020-10-12
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 洋子
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅明
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GG06
4B014GL06
4B014GL07
4B014GL09
4B014GL10
4B014GP15
4B014GQ10
(57)【要約】
【課題】タンパク質を高含有に配合した場合であっても、生地の成形性が良好で、硬すぎないソフトな食感を呈する菓子を得る方法を提供する。
【解決手段】この菓子は、脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含み、前記タンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下であり、前記乳化剤は有機酸モノグリセリドを含む、該菓子である。乳化剤は、更にポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含み、前記タンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下であり、前記乳化剤は有機酸モノグリセリドを含むことを特徴とする菓子。
【請求項2】
前記乳化剤は、更にポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、請求項1に記載の菓子。
【請求項3】
少なくとも表面の一部には油性菓子が配置されている、請求項1又は2に記載の菓子。
【請求項4】
バー形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項5】
焼菓子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項6】
脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含む菓子生地であって、前記タンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下であり、前記乳化剤は有機酸モノグリセリドを含むものである該菓子生地を調製し、前記菓子生地を所定形状に成形することを特徴とする菓子の製造方法。
【請求項7】
前記乳化剤は、更にポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、請求項6に記載の菓子の製造方法。
【請求項8】
バー形状に成形する、請求項6~7のいずれか一項に記載の菓子の製造方法。
【請求項9】
前記成形後、焼成して焼菓子を得る、請求項6~8のいずれか一項に記載の菓子の製造方法。
【請求項10】
前記成形を押出成形により行う、請求項6~9のいずれか一項に記載の菓子の製造方法。
【請求項11】
前記生地を第1の生地とし、前記第1の生地の少なくとも表面の一部に油性菓子の生地からなる第2の生地を接合し、焼成する、請求項6~10のいずれか一項に記載の菓子の製造方法。
【請求項12】
前記第1の生地と、前記第2の生地との接合を、該生地同士を二重ノズルから押し出して成形することにより行う、請求項11記載の菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手軽に栄養補給するのに適した菓子及び菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリアルバーやグラノーラバーなど、特定の栄養素や食物繊維などを手軽に栄養補給できるようにしたバー成形食品が知られている。運動中や仕事中などにも素早く喫食することができることから、その食行為自体を楽しむことにもつながっている。近年ではタンパク質の補給を目的としたバー成形食品への要望も高まりつつある。
【0003】
バー成形食品に関し、例えば、特許文献1には、少なくとも15重量%以上の完全穀粒と、約35重量%以上のバインダーと、約5重量%以上の配合コーティング剤とを含むシリアルバーであって、前記シリアルバーは、少なくとも約5重量%以上のタンパク質、約5重量%以上の繊維、およびバー28グラムあたり少なくとも120カロリー以下を提供するのに有効であり、前記シリアルバーは、約0.4から約0.6のAwを有することを特徴とするシリアルバーが開示されている(特許文献1の請求項1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、完全穀粒をバー成形食品の形態とするための成形適性や保形性の確保のために、糖シラップからなるバインダーの結着力に依拠していた。この場合、バインダーには砂糖や水飴が含まれているので、甘味の強い製品となり、甘すぎない風味のものを提供しづらいという側面があった。また、バインダー部の食感としてはヌガー状や飴状の食感となってしまうという側面があった。更に、特許文献1では、タンパク質を、押出し大豆タンパク質ナゲットの形態で配合していた(特許文献1の実施例参照)。このような形態であると、得られるバー成形食品にはそのナゲット部が硬く残ってしまい、食感に悪影響があるという側面があった。
【0005】
一方、例えば、特許文献2には、油脂及び大豆蛋白を含む混練物、並びに水性液とが混合されてなり、大豆蛋白含量が生地の乾燥固形分あたり15~65重量%であり、かつ水分含量が生地中2~15重量%であることを特徴とする可塑性生地、及びその生地から得られるニュートリション・バーである加熱菓子の発明が開示されている(特許文献2の請求項1、5、6参照)。そして、予めチョコレートに大豆蛋白が配合されたチョコレートを製造し、水を混合して菓子生地を調製することにより、連続的な機械生産に十分耐えうる生地が得られ、その生地を焼成して得られた菓子は、適度なさくさく感がある好ましい食感であり、口溶けに優れ、歯付きや起こさないものであった、と記載されている(特許文献2の段落0035、0042参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-130018号公報
【特許文献2】特開2007-97514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、菓子にタンパク質を高含有に配合しようと試みると、生地の成形性や得られる菓子の食感に問題が生じることが明らかとなった。この点、特許文献2では、粉末状大豆蛋白を生地に混合するに際して、チョコレート製造と同じようなリファイニング工程やコンチング工程を実施しているが、一方で、そのような工程を経ないで生地を調製したところ、練り上げた生地はボロボロの状態でとても機械的に成型できる品質ではなかったことが記載されている(特許文献2の段落0036、0038参照)。よって、簡便な混合処理で生地を調製することができなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、タンパク質を高含有に配合した場合であっても、生地の成形性が良好で、硬すぎないソフトな食感を呈する菓子を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、その第1の観点において、脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含み、前記タンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下であり、前記乳化剤は有機酸モノグリセリドを含むことを特徴とする菓子を提供するものである。
【0011】
本発明による菓子においては、前記乳化剤は、更にポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【0012】
本発明による菓子においては、少なくとも表面の一部には油性菓子が配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明による菓子においては、該菓子は、バー形状であることが好ましい。
【0014】
本発明による菓子においては、該菓子は、焼菓子であることが好ましい。
【0015】
本発明は、その第2の観点において、脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含む菓子生地であって、前記タンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下であり、前記乳化剤は有機酸モノグリセリドを含むものである該菓子生地を調製し、前記菓子生地を所定形状に成形することを特徴とする菓子の製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明による菓子の製造方法においては、前記乳化剤は、更にポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【0017】
本発明による菓子の製造方法においては、バー形状に成形することが好ましい。
【0018】
本発明による菓子の製造方法においては、前記成形後、焼成して焼菓子を得ることが好ましい。
【0019】
本発明による菓子の製造方法においては、前記成形を押出成形により行うことが好ましい。
【0020】
本発明による菓子の製造方法においては、前記生地を第1の生地とし、前記第1の生地の少なくとも表面の一部に油性菓子の生地からなる第2の生地を接合し、焼成することが好ましい。
【0021】
本発明による菓子の製造方法においては、前記第1の生地と、前記第2の生地との接合を、該生地同士を二重ノズルから押し出して成形することにより行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含む菓子であって、タンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下である、該菓子において、乳化剤として有機酸モノグリセリドを含むので、生地の成形性が良好で、硬すぎないソフトな食感を呈する菓子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】硬度測定に使用したクサビ形プランジャーの形状を示す概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明により提供される菓子は、脂質、糖質、タンパク質、及び乳化剤を含み、そのタンパク質の含有量が30質量%以上50質量%以下であり、その乳化剤として有機酸モノグリセリドを含むものである。タンパク質の含有量としては、場合によっては、30質量%以上45質量%以下の範囲となってもよく、30質量%以上40質量%以下の範囲となってもよい。
【0025】
本発明により提供される菓子は、菓子の原料として用いられる一般の食品素材を用いて調製することが可能である。すなわち、主にタンパク質の源となるタンパク質素材、主に脂質の源となる脂質素材、主に糖質の源となる糖質素材などの食品素材を用いて調製することが可能である。
【0026】
ただし、本発明により提供される菓子においては、特定種類の乳化剤を配合する必要がある。具体的には、乳化剤として有機酸モノグリセリドを含む必要がある。菓子に特定種類の乳化剤を配合することにより、タンパク質を高含有に配合した場合であっても、生地の成形性が良好で、硬すぎないソフトな食感を呈する菓子を得ることができる。有機酸モノグリセリドとしては、クエン酸モノグリセライド、ジアセチル酒石酸モノグリセライド、乳酸モノグリセライド、コハク酸モノグリセライド、酢酸モノグリセライド、乳酸モノグリセライド等が挙げられる。有機酸モノグリセリドは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。乳化剤としては、任意であるが、ポリグリセリン脂肪酸エステルを更に併用してもよい。有機酸モノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することにより、更なる生地の成形性の向上や食感の改良が期待できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリンエルカ酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明により提供される菓子においては、乳化剤として有機酸モノグリセリドの含有量は0.1質量%5質量%以下であることが典型的である。有機酸モノグリセリドの含有量としては、場合によっては、0.5質量%以上4質量%以下の範囲となってもよく、1質量%以上3質量%以下の範囲となってもよい。また、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを含む場合には、その含有量は0.1質量%10質量%以下であることが典型的である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量としては、場合によっては、0.5質量%以上8質量%以下の範囲となってもよく、1質量%以上5質量%以下の範囲となってもよい。更に、有機酸モノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルを併用する場合に、質量比としては、有機酸モノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルとが1:9~5:5であることが典型的である。質量比としては、場合によっては、2:8~5:5の範囲となってもよく、3:7~5:5の範囲となってもよい。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の乳化剤を配合してもよい。例えば、有機酸モノグリセリド以外のモノグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。この場合、本発明により提供される菓子に含有される有機酸モノグリセリドやポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤の含有量は、有機酸モノグリセリドやポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量を確保する観点から、5質量%以下であることが典型的である。有機酸モノグリセリドやポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤の含有量としては、場合によっては、0.1質量%以上3質量%以下の範囲となってもよく、0.1質量%以上1質量%以下の範囲となってもよい。
【0028】
本発明により提供される菓子に含有されるタンパク質の源となるタンパク質素材としては、例えば、大豆タンパク質を含有する素材、乳タンパク質を含有する素材、コラーゲンを含有する素材などが挙げられる。ただし、これらの種類のタンパク質を含有する素材に限られない。タンパク質素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
具体的に、大豆タンパク質を含有する素材としては、大豆、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、豆乳等の原料から所定条件下で抽出した抽出物、大豆パウダーなどが挙げられる。このような大豆タンパク質素材としては、例えば、不二製油株式会社製の「フジプロAL」、「フジプロSEH」、「プロリーナ700」、「プロリーナ800」、「プロリーナ900」や、日清オイリオ社製の「ソルピー4000H」、「ソルピー5000H」や、ADM社製の「プロファム649」、「プロファム974」、「プロファム781」、「プロファム825」や、Solae社の「SUPRO XT219D」、「SUPRO PM」等が大豆パウダーとして市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。また、特開平8-173052号公報や特開平9-121780号公報には大豆タンパク質を含有する素材の調製方法が記載されているので、そのような公知の方法に準じて調製して用いてもよい。
【0030】
また、乳タンパク質を含有する素材としては、ホエイ蛋白濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白分離物(WPI)、ホエイ蛋白加水分解物(WPH)、濃縮ミルクたんぱく質(MPC)、分離ミルクたんぱく質(MPI)などが挙げられる。このようなホエイ素材としては、例えば、フォンテラ社製の「WPC392」、「WPC472」、「WPI894」、「WPH817」や、TATUA社製の「TATUA901」、「TATUA942」や、森永乳業社製の「W800」等がホエイパウダーとして市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。また、乳タンパク濃縮物としては、ミライ社製の「ミライMC80」や、日本新薬社製の「ミルカMPI」や、Ingredia社製の「Prodiet 87B Fluid」などが挙げられる。また、乳タンパク質を含有する素材としては、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインペプチド等であってもよい。このようなカゼイン素材としては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Calcium Caseinate S」等がカゼインカルシウムとして、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Sodium Caseinate S」等がカゼインナトリウムとして、それぞれ市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。
【0031】
また、コラーゲンを含有する素材としては、例えば、牛骨、牛皮、豚皮、魚骨等のコラーゲン含有原料からの酸性もしくは中性条件下での熱水抽出物、ゼラチン、コラーゲンペプチド(アミノ酸が2つ以上結合)などが挙げられる。なお、一般にコラーゲンは分子量が大きいとゲル化能が強く、菓子の生地の物性や食感に影響があるので、これを避けるにはコラーゲンペプチドを用いることが好ましい。コラーゲンペプチドの分子量は、重量平均分子量として500~15000程度が適当であり、500~10000程度がより典型的である。コラーゲンペプチドの重量平均分子量が500未満であるとペプチドによる苦味が強くなり、15000を超えると粘度が高くなるので、いずれも好ましくない。コラーゲンペプチドの重量平均分子量は、例えば、パギイ法(写真用ゼラチン試験法 第10版 写真用ゼラチン試験法合同審議会)等により測定することができる。
【0032】
また、本発明における限定されない任意の態様においては、上記タンパク質素材の形状としては、菓子生地への混合のしやすさや、得られる菓子の食感の観点から、粉状の素材を用いることが好ましい。その粒度としては、粒径100μm以下のものが80質量%以上含まれていることが好ましく、粒径60μm以下のものが90質量%以上含まれていることがより好ましい。
【0033】
本発明により提供される菓子に含有される脂質の源となる脂質素材としては、食用として使用可能な脂質素材であればよく、特に制限はない。例えば、植物性油脂、動物性油脂、それらの加工油脂のいずれでもよい。また、油脂の融点も特に限定されず、液状油脂、固形油脂のいずれでもよい。例えば、マーガリン、ショートニング、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、やし油、カカオ脂、パーム油、乳脂などが挙げられる。なかでも、より良好な風味を付与するためには、マーガリン、バター、ショートニング等の加工食用油脂などが好ましく例示される。
【0034】
本発明により提供される菓子においては、脂質の含有量は40質量%以下であることが典型的である。脂質の含有量としては、場合によっては、10質量%以上30質量%以下の範囲となってもよく15質量%以上28質量%以下の範囲となってもよい。
【0035】
本発明により提供される菓子に含有される糖質の源となる糖質素材としては、例えば、砂糖、ショ糖、蜂蜜、水飴、コーンシロップ、ブドウ糖、麦芽糖、異性化糖、トレハロース、各種オリゴ糖、更には、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イノシトール、キシリトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール、グリセリロールなどが挙げられる。なかでも、生地の結合性を高めたり、水分活性を抑制したりする観点からは、単糖又は二糖の非還元糖やグリセリロールなどを用いることが好ましい。糖質素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明により提供される菓子においては、糖質の含有量は30質量%以下であることが典型的である。糖質の含有量としては、場合によっては、10質量%以上28質量%以下の範囲となってもよく、15質量%以上25質量%以下の範囲となってもよい。
【0037】
本発明により提供される菓子においては、任意に食物繊維を含有してもよい。その場合、食物繊維の含有量は30質量%以下であることが典型的である。食物繊維の含有量としては、場合によっては、2質量%以上28質量%以下の範囲となってもよく、5質量%以上25質量%以下の範囲となってもよい。
【0038】
本発明により提供される菓子に含有される食物繊維の源となる食物繊維素材としては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、難消化性グルカン、等の難消化性の多糖類や、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖類などが挙げられる。食物繊維素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明により提供される菓子においては、水分の含有量は20質量%以下であることが典型的である。水分の含有量としては、場合によっては、5質量%以上15質量%以下の範囲となってもよく5質量%以上12質量%以下の範囲となってもよい。水分は、原料由来であってもよい。
【0040】
本発明により提供される菓子においては、必要な場合には、その所望する製品形態に応じて、適宜、上記に説明した以外の他の素材も配合し得る。例えば、食塩、ビタミン、アミノ酸、甘味料、香料、調味料、粒状風味材、粘調剤、膨化剤、pH調整剤、卵製品、乳製品などを配合し得る。
【0041】
例えば、乳製品としては、脱脂粉乳、全粉乳、練乳、生乳、濃縮乳、発酵乳、クリーム、チーズなどが挙げられる。
【0042】
例えば、粒状風味材としては、レーズン、クランベリー、カレンズ、ブルーベリー、プルーン、イチジク、アプリコット、オレンジピール、イチゴ、キウイ、リンゴ、マンゴー、パイナップル、パパイヤ、バナナ、ニンジン、カボチャ、オニオン、サツマイモ、ジャガイモ等のドライフルーツ・ドライベジタブル、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、クルミ、ヘイゼルナッツ、ピスタチオ、クリ、ヒマワリの種、カボチャの種等の種実類、ビスケット、クラッカー、ワッフル、ウエハース等の粉砕物、ビスケットクラム、クッキークラム等の菓子粉砕物、小麦、オーツ麦、ライ麦、大麦、玄米、精米、トウモロコシ等の膨化物や焙煎物(例えばコーンフレーク、ブランフレーク、米フレーク)、チョコチップ、キャラメルチップ、マシュマロ、大豆パフ、ホエイパフなどが挙げられる。
【0043】
なお、粒状風味材としては、上記した乳化剤を含めて、タンパク質、脂質、糖質、食物繊維のいずれかの1棲又は2種以上の菓子成分を含有するものであることは勿論であるが、粒状風味材として典型的に長径1mm以上、より典型的には長径1.5mm以上、更により典型的には長径2mm以上の粒状のものについては、一般に水や油脂やその他の菓子材料を合わせても、独自の食感を呈するにとどまり、当該粒状風味材以外の菓子部分の生地物性や食感を与える素材ではないので、本発明の構成の特定に必要とされる「菓子成分」の配合には含まれないものとする。
【0044】
本発明により提供される菓子においては、その水分活性が0.70以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましい。これによれば、常温流通が可能な菓子製品を提供することができる。
【0045】
本発明により提供される菓子においては、その形状としては、棒形状、直方体形状、板形状、球形状、不定形状など、種々の形状にすることができるが、例えば棒形状(バー形状)であれば、手に持って食べやすいので、好ましい。その大きさは、厚さが10~20mm、幅が20~35mm、長さが15~130mmとなるようにすることが好ましい。大きすぎると、保形性が悪くなったり、包装から取り出しにくくなったり、手に持って食べづらくなったりするので、好ましくない。
【0046】
本発明により提供される菓子においては、その硬さとしては、非焼成の菓子又はその生地の状態で、例えば、下記のようにして測定したときの硬度が、0.5kgf以下であることが好ましく、0.4kgf以下であることがより好ましく、0.2kgf以下であることが更により好ましい。
【0047】
(硬度の測定 その1)
デジタルフォースゲージ(「SHIMPO FGS-50E-L」、日本電産シンポ社製)を使用して、円柱(直径10mm)のプランジャーを進入速度180mm/minで進入深度7mmまで進入させたときの最大応力(単位:kgf)を測定する。
【0048】
また、焼成した状態で、例えば、下記のようにして測定したときの硬度が、3000gf以下であることが好ましく、2000gf以下であることがより好ましく、1500gf以下であることが更により好ましい。
【0049】
(硬度の測定 その2)
テクスチャーアナライザー(「TA.XTplus」、英弘精機社製)を使用して、
図1に略形状を示すようにプランジャー柄1及びプランジャー先端2を有するクサビ形のプランジャー(縦縁部2a:8mm×幅縁部2b:80mm、先端頂部2c:60°)を進入速度1mm/secで進入深度5mmまで進入させたときの最大応力(単位:gf)を測定する。
【0050】
以下では、本発明により提供される菓子を製造する方法について、更に具体的に説明する。ただし、本発明により提供される菓子を得る方法としては、以下に説明する具体的な方法に限定されるものではない。
【0051】
本発明により提供される菓子は、通常の当業者に公知の方法で、適宜、原料を混合して菓子生地を調製し、その菓子生地を所定形状に成形することにより得ることができる。すなわち、上記に説明した食品素材を用いて、上記に説明した菓子について規定される菓子成分の組成と同様の菓子生地を調製し、所定形状に成形すればよい。
【0052】
典型例を挙げると、菓子成分として主にタンパク質の源となるタンパク質素材、より詳細には、タンパク質を乾燥分当たり50質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に20質量%以上配合するなどである。タンパク質素材の配合量としては、場合によっては、23質量%以上98質量%以下の範囲であってもよく、25質量%以上95質量%以下の範囲であってもよい。また、タンパク質素材のタンパク質含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり53質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、55質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0053】
また、菓子成分として主に脂質の源となる脂質素材、より詳細には、脂質を乾燥分当たり20質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に5質量%以上配合するなどである。脂質素材の配合量としては、場合によっては、7質量%以上78質量%以下の範囲であってもよく、10質量%以上75質量%以下の範囲であってもよく、10質量%以上30質量%以下の範囲であってもよい。また、脂質素材の脂質含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり25質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、28質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0054】
また、菓子成分として主に糖質の源となる糖質素材、より詳細には、糖質を乾燥分当たり50質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に40質量%以下配合するなどである。糖質素材の配合量としては、場合によっては、0.1質量%以上35質量%以下の範囲であってもよく、1質量%以上30質量%以下の範囲であってもよい。また、糖質素材の糖質含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり55質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、58質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0055】
また、菓子成分として主に食物繊維の源となる食物繊維素材、より詳細には、食物繊維を乾燥分当たり50質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に2質量%以上60質量%以下配合するなどである。食物繊維素材の配合量としては、場合によっては、5質量%以上55質量%以下の範囲であってもよく、7質量%以上50質量%以下の範囲であってもよい。また、食物繊維素材の食物繊維含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり53質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、55質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0056】
また、乳化剤は、上記菓子について説明した菓子成分の含有量となるよう、それに応じた配合量で菓子生地中に含有せしめればよい。
【0057】
菓子生地には、適宜、水を配合することにより、原料の混合状態や生地物性を調整することができる。水は、原料由来であってもよい。
【0058】
菓子生地へ配合する他の素材、菓子生地組成、水分活性、形状等の態様については、上記菓子について説明した態様と同様であってよい。
【0059】
菓子生地の成形は、例えば、ロータリーモールドで一定の厚さに成形する方法や、デポジッターやワイヤーカットにより分注する方法、また、必要に応じて、ロールで展延したり、押し出したりして成形する方法等を採用しもよい。なかでも、本発明における菓子生地は、所定の径ないし口径を有する吐出口から菓子生地を押し出して成形する押出成形にとって、好適な生地物性である。
【0060】
菓子生地は、所定形状に成形した後、焼成してもよい。あるいは、他の菓子生地を接合したうえ所定形状に成形した後、焼成してもよい。その焼成の方法に特に制限はなく、例えば、オーブン、ガスバーナー、電子レンジ、電気ヒーター(トースター)等の焼成装置を用いることができ、所定温度で所定時間焼成することにより、焼菓子(ないし焼複合菓子)と成すことができる。焼成条件としては、100~800℃、10~300秒などであればよい。
【0061】
一方、本発明の別の観点は、上記に説明した菓子を利用し、更に別の菓子を利用した複合菓子にかかるものである。すなわち、上記に説明した菓子に他の菓子を接合してなる複合菓子を提供するものである。他の菓子としては、適宜、所望する菓子の風味や食感、あるいは焼成の処理に適合した性質を有するものを使用すればよく、特に制限はない。例えば、チョコレート、チョコレート風味菓子、チーズ風味菓子、バター風味菓子、抹茶風味菓子、小豆風味菓子、さつまいも風味菓子、イチゴ風味菓子、クッキー、ビスケット、クリーム、ジャム等が挙げられる。複合菓子は、上記した菓子を他の菓子と接合したり、上記に説明した菓子の生地を、他の菓子と接合したうえ所定形状に成形したり、上記に説明した菓子の生地を、他の菓子の菓子生地と接合したうえ所定形状に成形したり、上記に説明した菓子の生地を、他の菓子と接合したうえ所定形状に成形したりすることにより得られたものであってもよい。また、焼成されていてもよい。成形や焼成の態様については、上記に説明した菓子について上述したのと同様の態様を採用してもよい。
【0062】
例えば、本発明の限定されない任意の態様において、その複合菓子は、上記に説明した菓子と、その一部又は全部を覆う油性菓子を含む複合菓子である。このような複合菓子によれば、一方の菓子と油性菓子からなる他方の菓子が相まって、よりバラエティーに富んだ菓子製品を提供することができる。また、その外層をなす油性菓子の少なくとも表層は、所望に応じて、焼成により、手で持ったときにべとつかない程度に熱変性させることができる。これによれば、例えば棒形状(バー形状)であれば、手に持って食べやすい。なお、「油性菓子」とは、典型的に、脂質含量が15質量%以上、より典型的に18質量%以上70質量%以下、更により典型的に20質量%以上50質量%以下の菓子をいうものとする。例えば、チョコレート、チョコレート風味菓子、チーズ風味菓子、バター風味、抹茶風味菓子、小豆風味、さつまいも風味、イチゴ風味等を含む意味である。
【0063】
上記外層をなす油性菓子としては、特に制限されないが、適宜含気して用いてもよい。一般に含気により、成形したチョコレート等の油性菓子を加熱する際の焼ダレが抑制される傾向がある。また、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、マシュマロなどの具材を併せて、含有させてもよい。
【0064】
上記に説明した菓子と、上記外層をなす油性菓子との接合方法には、特に制限はなく、例えば、上記に説明した菓子を焼成後、これにエンローバーを用いて上記外層をなす油性菓子の生地でコーティングする方法であってもよく、あるいは、押出成形により、押出成形装置のノズルの外側部からは上記外層をなす油性菓子の生地を、ノズルの内側部からは上記に説明した菓子の生地を、それぞれが接合するように、その二重ノズルから生地同士を押し出し、所定形状になるように切断する方法であってもよい。あるいは、モールド成形により、モールド(型)内に、上記外層をなす油性菓子の生地によってシェル、上記に説明した菓子の生地によってセンター、上記外層をなす油性菓子の生地によってボトムを、順次作製する方法や、被覆成形により、所定形状にした上記に説明した菓子の生地を、エンローバーを用いて上記外層をなす油性菓子の生地でコーティングする方法や、ワンショットデポジターを用いて、外側ノズルから上記外層をなす油性菓子の生地の押出しを開始した後、内側ノズルから上記に説明した菓子の生地の押出しを行い、内側ノズルからの押出しを終了した後、外側ノズルからの押出しを終了させる方法、等を適宜採用することができる。
【0065】
上記に説明した菓子と、上記外層をなす油性菓子の質量比としては、典型的には、例えば25:75~65:35などであり、場合によっては、例えば35:65~55:45などである。
【0066】
そして、必要に応じて、上記のように接合した状態で、上記に説明した菓子の製造の場合と同様の焼成装置にて焼成を施すことにより、その加熱により外層をなす油性菓子の少なくとも表層を、例えば、手で持ったときにべとつかない程度に熱変性させることができる。焼成条件としては、100~800℃、10~300秒などであればよい。
【0067】
上記外層をなす油性菓子には、食物繊維を含有せしめてもよい。これによれば、栄養素として、上記に説明した菓子の蛋白分と共に食物繊維も一緒に摂取することができる。食物繊維としては、上記に説明した菓子同様に食用として使用可能であればよく、特に制限はない。例えば、イヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イソマルトデキストリン等の水溶性食物繊維や、セルロース、レジスタントスターチ等の不溶性食物繊維などが挙げられる。このうちイヌリンが好ましい。イヌリンによれば、更に、焼成する際の焼きダレを抑制する効果にも優れている。食物繊維の含有量は、食物繊維の種類や企図する一食分の摂取量に応じて適宜設定すればよいが、典型的には上記外層をなす油性菓子中に1質量%以上60質量%以下などである。ただし、上記範囲を超えると成形不良を招く可能性がある。食物繊維の含有量は、必要に応じて、その含有量が10質量%以上50質量%以下の範囲となってもよく、20質量%以上40質量%以下の範囲となってもよい。
【0068】
なお、本明細書における「タンパク質の含有量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、ケルダール法等で測定することができる。
【0069】
また、本明細書における「脂質の含有量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、塩酸分解後ソックスレー抽出法等で測定することができる。
【0070】
また、本明細書における「水の含有量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、常圧加熱乾燥助剤法(105℃、5時間)等で測定することができる。
【0071】
また、本明細書における「水分活性」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、重量平衡法等で測定することができる。
【0072】
また、本明細書における「食物繊維の含有量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、CODEX分析法AOAC Method2001.03等で測定することができる。
【0073】
また、本明細書における「灰分の含有量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、直接灰化法等で測定することができる。
【0074】
また、本明細書における「糖質の含有量」は、食品分析の周知の方法で算定することができ、例えば、菓子や菓子生地の総量から、上記した測定方法により求められた、水分、灰分、脂質含量、タンパク質含量、食物繊維含量や、その他の糖質以外の成分量を控除して求めることができる。
【実施例0075】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0076】
<試験例1>
菓子に配合するタンパク質の含有量が、生地の成形性や得られる菓子の硬さにどのように影響を与えるかについて調べた。そのために表1に示す原料配合により、調製例1-1~8の菓子を調製した。
【0077】
具体的には、原料をミキサーに投入して混合し、得られた生地の成形性について、以下のようにして評価した。
【0078】
(成形性)
◎ 押出成形機による成形が可能
〇 一つの生地としてまとまり、成形適性が高い
△ ある程度塊となり、成形可能な範囲である
× 生地がまとまらない、あるいはそぼろ状で、成形不可である
【0079】
また、硬度を以下のようにして測定した。
【0080】
(硬度の測定)
200mLのアイス用プラカップに生地を詰め、デジタルフォースゲージ(「SHIMPO FGS-50E-L」、日本電産シンポ社製)を使用して、円柱(直径10mm)のプランジャーを進入速度180mm/minで進入深度7mmまで進入させたときの最大応力(単位:kgf)を測定した。
【0081】
【0082】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0083】
(1)調製例1-1に示されるように、タンパク質の含有量が45.3質量%では、生地のまとまりが悪くなって、成形性を確保できなかった。また、得られる菓子の物性が硬くなる傾向があった。
(2)調製例1-2に示されるように、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを配合しても、タンパク質の含有量が45.8質量%では、調製例1-1と同様に、生地のまとまりが悪くなって、成形性を確保できなかった。また、得られる菓子の物性が硬くなる傾向があった。
(3)調製例1-3に示されるように、タンパク質の含有量が45.1質量%であっても、乳化剤としてクエン酸モノグリセリドを配合すると、ある程度生地が塊となり、成形可能な範囲であった。また、硬度は0.5kgf以下であり、ソフトな食感を呈する菓子が得られた。
(4)調製例1-4に示されるように、タンパク質の含有量が45.1質量%であっても、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルに加えてクエン酸モノグリセリドを配合すると、一つの生地としてまとまることができた。また、硬度は0.28kgf以下であり、ソフトな食感を呈する菓子が得られた。
(5)調製例1-5に示されるように、調製例1-4の配合において、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル及びクエン酸モノグリセリドの配合量を更に高めると、生地の成形性がより良好となり、押出成形機に適性のある生地となった。また、硬度は0.13kgfであり、ソフトな食感を呈する菓子が得られた。
(6)調製例1-6~8に示されるように、調製例1-4の配合において、クエン酸モノグリセリドに変えて、他の種類の有機酸モノグリセリドを配合しても、同様に、生地の成形性を良好にする効果が認められた。また、硬度はそれぞれ、0.28kgf、0.15kgf、0.26kgfであり、いずれもソフトな食感を呈する菓子が得られた。
【0084】
<試験例2>
表2に示す原料配合とした以外は試験例1と同様にして、調製例2-1~4の菓子を調製し、菓子に配合するタンパク質の含有量が、生地の成形性や得られる菓子の硬さにどのように影響を与えるかについて調べた。
【0085】
【0086】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0087】
(1)調製例2-1に示されるように、乳由来タンパク質の含有量が34.9質量%では、生地のまとまりが悪くなって、成形性を確保できなかった。また、得られる菓子の物性が硬くなる傾向があった。
(2)調製例2-2に示されるように、乳由来タンパク質の含有量が34.9質量%であっても、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルに加えてクエン酸モノグリセリドを配合すると、一つの生地としてまとまることができた。また、硬度は0.35kgfであり、ソフトな食感を呈する菓子が得られた。
(3)調製例2-3に示されるように、乳由来タンパク質及び大豆由来タンパク質の合計含有量が34.9質量%では、生地のまとまりが悪くなって、成形性を確保できなかった。また、焼成後の物性が硬くなる傾向があった。また、得られる菓子の物性が硬くなる傾向があった。
(4)調製例2-4に示されるように、乳由来タンパク質及び大豆由来タンパク質の合計含有量が34.9質量%であっても、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルに加えてクエン酸モノグリセリドを配合すると、生地の成形性が良好となり、押出成形機に適性のある生地となった。また、硬度は0.06kgfであり、ソフトな食感を呈する菓子が得られた。
【0088】
<試験例3>
表3に示す原料配合とした以外は試験例1と同様にして、調製例3-1~2の菓子を調製し、菓子に配合するタンパク質の含有量が、生地の成形性や得られる菓子の硬さにどのように影響を与えるかについて調べた。
【0089】
【0090】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0091】
(1)調製例3-1に示されるように、大豆由来タンパク質の含有量が31.4質量%では、ある程度塊となる傾向がみられたが、そぼろ状で、一つの生地としてまとまることがなかった。なお、硬度は0.5kgf以下であった。
(2)調製例3-2に示されるように、大豆由来タンパク質の含有量が30.1質量%であっても、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルに加えてクエン酸モノグリセリドを配合すると、生地の成形性が良好となり、押出成形機に適性のある生地となった。また、硬度は0.01kgfであり、ソフトな食感を呈する菓子が得られた。
【0092】
[製造例1]
調製例2-4で調製した同じ菓子生地を用いて、押出成形機により、口径20×7mmのノズルを有する吐出口から200cm/秒の速さで押し出し、コンベア上に延べたところをカットすることにより、幅20mm×長さ20mm×高さ7mmの形状に成形して、菓子を得た。
【0093】
[製造例2]
表4に示す各原材料を配合し、常法に従って混合して、リファイニングを行った後、コンチングを行って、チョコレート原液を調製した。
【0094】
【0095】
得られたチョコレート原液を使用して、表5に示す配合で、更にココアパウダーとイヌリンを配合し、常法に従って混合して、チョコレート風味菓子の生地を得た。
【0096】
【0097】
製造例1で調製した菓子の100質量部に対して、上記チョコレート風味菓子の生地の100質量部をコーティングし、得られた複合成形物をコンベクションオーブンにより200℃で30秒間焼成した。
【0098】
その結果、チョコレート風味菓子からなる外層には、焼成の際の焼きダレによる目立った変形がなく、手指を汚さずに手に持って食べることができる、菓子を得ることができた。
【0099】
[製造例3]
製造例2で調製したチョコレート原液を使用して、表6に示す配合で、更にココアパウダーを配合し、常法に従って混合して、チョコレート風味菓子の生地を得た。
【0100】
【0101】
製造例1で調製した菓子の100質量部に対して、上記チョコレート風味菓子の生地の100質量部をコーティングし、得られた複合成形物をコンベクションオーブンにより200℃で30秒間焼成した。
【0102】
その結果、外層にはチョコレート風味菓子が配され、手指を汚さずに手に持って食べることができる、菓子を得ることができた。