(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064439
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】凍結乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 5/06 20060101AFI20220419BHJP
F26B 17/10 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
F26B5/06
F26B17/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173067
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野末 竜弘
(72)【発明者】
【氏名】上松 天
(72)【発明者】
【氏名】西橋 勉
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB10
3L113AC24
3L113AC48
3L113AC67
3L113BA36
3L113CA10
3L113CB16
3L113DA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】真空室の高さを縮小可能とした凍結乾燥装置を提供する。
【解決手段】凍結乾燥装置10は、真空室11と、真空室11内の気体を排気する真空ポンプ22と、真空室11の内部に配置され、原料液を上向きに噴射するノズル12と、ノズル12に原料液を供給する供給部31とを備える。真空室内に配置されたノズルが上向きに原料液を噴射するため、凍結乾燥装置が下向きに原料液を噴射するノズルを備える場合に比べて、原料液から微粒子を生成するために必要とされる真空室の高さを縮小することが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空空間を区画する真空室と、
前記真空室内の気体を排気する真空ポンプと、
前記真空室の内部に配置され、原料液を上向きに噴射するノズルと、
前記ノズルに前記原料液を供給する供給部と、を備える
凍結乾燥装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記原料液を噴射する噴射口を複数有する
請求項1に記載の凍結乾燥装置。
【請求項3】
前記ノズルは、回動可能である
請求項1または2に記載の凍結乾燥装置。
【請求項4】
前記真空室の上面を形成する加熱部を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の凍結乾燥装置。
【請求項5】
前記ノズルは、開口が形成された開口面を備え、
前記開口面に振動を付与して、前記開口面に供給された前記原料液から液滴を形成する振動付与部をさらに備える
請求項1に記載の凍結乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射式の凍結乾燥装置は、真空室内において、凍結乾燥用ノズルから下方に向けて原料液を噴射する。噴射される原料液は、例えば、医薬品、食品、化粧品などの原料を溶媒や分散媒のなかに含む。噴射された原料液は、凍結乾燥用ノズルの下方で、液柱から液滴に変わる。液滴中の原料は、溶媒や分散媒に蒸発潜熱を奪われて自己凍結する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した凍結乾燥装置の真空室には、凍結乾燥用ノズルから噴射された原料液が、液柱から液滴に変わり、かつ、粒子の自己凍結するために十分な滞在時間を得られる距離、すなわち高さを有することが必要とされる。そのため、真空室の高さが数mにも及ぶことから、凍結乾燥装置を設置することが可能な環境が制限され、また、凍結乾燥装置の管理に手間を要する。それゆえに、真空室の高さを縮小可能な凍結乾燥装置が求められている。
【0005】
本発明は、真空室の高さを縮小可能とした凍結乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための凍結乾燥装置は、真空空間を区画する真空室と、前記真空室内の気体を排気する真空ポンプと、前記真空室の内部に配置され、原料液を上向きに噴射するノズルと、前記ノズルに原料液を供給する供給部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、真空室内に配置されたノズルが上向きに原料液を噴射するため、凍結乾燥装置が下向きに原料液を噴射するノズルを備える場合に比べて、原料液から微粒子に変わるまでの原料の軌跡の少なくとも一部が、ノズルよりも上方に位置する分、原料液から微粒子を生成するために必要とされる真空室の高さを縮小することが可能である。
【0008】
上記凍結乾燥装置において、前記ノズルは、前記原料液を噴射する噴射口を複数有してもよい。この構成によれば、単位時間当たりに噴射される原料液の量を増加させる場合に、ノズルが噴射口を1つのみ備える場合に比べて、ノズルから上方に向けた原料液の噴射初速度すなわち噴射距離を大きくせず、これによって、軌跡を起因とする真空室の高さを抑えた条件において、微粒子の生産量を大きくすることができる。
【0009】
上記凍結乾燥装置において、前記ノズルは、回動可能であってもよい。この構成によれば、ノズルが回動可能であることから、原料液は螺旋状の軌跡を描きながら真空室の上面に向けて噴射される。そのため、原料液が直線的に噴射される場合に比べて、回動軌跡の距離が追加されるため、真空室の高さが同一であっても、原料液の乾燥度合い、および、凍結度合いが高められやすい。
【0010】
上記凍結乾燥装置において、前記真空室の上面を加熱する加熱部を備えてもよい。この構成によれば、上面に付着した原料液が、上面において自己凍結することが抑えられる。これにより、上面において凍結した原料液が、上面において凍結することなく形成された微粒子に対して微粒子として混入することが抑えられ、これによって、微粒子の品質を安定化することができる。
【0011】
上記凍結乾燥装置において、前記ノズルは噴射口が形成された開口面を備え、前記開口面に振動を付与して、前記開口面に供給された前記原料液から液滴を形成する振動付与部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ノズルから噴射された原料液は液滴の状態を有するため、原料液が液柱の状態を有する場合に比べて、原料液が自己凍結しやすい。それゆえに、原料液の自己凍結によって微粒子を形成するために必要な真空室の高さを縮小することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の凍結乾燥装置の構成を模式的に示す装置構成図。
【
図2】第2実施形態の凍結乾燥装置において、凍結乾燥用ノズルおよび凍結乾燥用ノズルの周辺構造を模式的に示す装置構成図。
【
図3】第3実施形態の凍結乾燥装置において、凍結乾燥用ノズルおよび凍結乾燥用ノズルの周辺構造を模式的に示す装置構成図。
【
図4】第4実施形態の凍結乾燥装置において、凍結乾燥用ノズルおよび凍結乾燥用ノズルの周辺構造を模式的に示す装置構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1を参照して、凍結乾燥装置の第1実施形態を説明する。
図1が示すように、凍結乾燥装置10は、真空室11、真空ポンプ22、ノズル12、および、供給部31を備えている。
【0015】
真空室11は、例えば、上部11aと下部11bとを有した円筒形状を有する。真空室11は、真空室11の内部空間である真空空間11Aを区画している。真空空間11Aの圧力は、真空ポンプ22の駆動によって、例えば、0.1Pa以上500Pa以下のなかのいずれかの値に調整される。
【0016】
真空室11の上部11a内には、ノズル12が配置されている。真空室11の上部11aが区画する空間は、ノズル12から噴射される原料液が液柱から粒子に至る変化が可能な大きさを有している。真空室11の下部11b内には、トレイ13が配置されている。トレイ13には、粒子の自己凍結によって形成された微粒子Pbが降り積もる。
【0017】
なお、本開示において、微粒子Pbとは原料液が相転移した状態を指し、原料液は液相状態であるが、微粒子は固相である。ここで、固相である微粒子には、ポーラスな固相状態も含まれ、固相としての取扱が可能であれば、言い換えれば、微粒子としての粒子状態が、後工程でも変化しない条件であれば、固相に液相が含有されていても不都合はない。この固相への変化とは、本開示において説明する凍結と同義である。なお、微粒子は原料液から溶媒や分散媒が昇華し、原料が支配的となった状態であってもよい。この場合には、凍結乾燥された微粒子とも表現される。
【0018】
真空室11は、上面11tと側面11sとを備えている。真空室11の上面11tは、加熱部によって形成されている。加熱部は、上面11tの温度を常温に維持する。本実施形態において、常温は、例えば5℃以上35℃以下の範囲に含まれるいずれかの温度である。これにより、ノズル12から噴射された原料液が、上面11tに付着した場合に、原料液が、上面11tにおいて自己凍結することが抑えられ、上面11tにおいて自己凍結した原料液に起因する微粒子に類似した凍結体が真空室11内に飛散することが抑えられる。これによって、上面11tにおいて凍結した原料液が、上面11tにおいて凍結することなく形成された微粒子に対して微粒子として混入することが抑えられる。結果として、微粒子の品質を安定化することができる。真空室11の側面11sは、クライオトラップによって形成されてもよい。これにより、真空室11の実効排気速度をクライオトラップによって調整することが可能である。
【0019】
真空ポンプ22は、真空室11が区画する真空空間11A内の気体を排気する。真空ポンプ22は、コールドトラップ21を介して真空室11の下部11bに接続されている。真空室11の真空度を維持するため、コールドトラップ21および真空ポンプ22による実効排気速度は、例えば0.8m3/s以上であってよい。なお、実効排気速度は、処理条件に応じて適宜選択されてよい。処理条件は、例えば、原料液が噴射された時点での液滴の直径、および、噴射速度、供給部31に供給された原料液の温度、真空室11の高さ方向におけるノズル12の位置、および、真空室11の半径などを含むことができる。
【0020】
ノズル12は、上述したように真空室11の上部11a内に配置されている。ノズル12は、原料液を上向きに噴射する。ノズル12は、原料液を真空空間11Aに向けて噴射する噴射口12Tと、原料液を噴射口12Tへ導入する流路12Fとを備えている。ノズル12は、複数の噴射口12Tを備えることができる。なお、ノズル12は、噴射口12Tを1つのみ備えてもよい。ノズル12は、例えば、ディスペンサーノズルであってよい。ノズル12は、例えば、真空室11の上面11tに向けた錘台筒状を有し、噴射口12Tを先端に有している。流路12Fは、ノズル12の内部において、例えば先端から基端に向けて直線状に延びている。ノズル12は、ノズル12の噴射口12Tから真空室11の上面11tに向かう方向に沿って原料液を噴射する。
【0021】
噴射口12Tを含む部分における差圧を起因とする、上向きの初速度を得て噴射された原料液は、真空室11の高さ方向において、噴射口12Tよりも上方に向かう軌跡を描き、次いで、一定の高さまで上昇すると真空室11の底部11dに向けて降下する(以下、この軌跡を飛程とも表現する)。この際に、原料液は、噴射口12Tから真空室11の底部11dに向かう放物線状の軌跡L3の一部を描く。
【0022】
原料液は、軌跡L3を描きながら真空室11の底部11dに向かう際に、液柱から液滴Paに変わり、さらに、液滴Paは微粒子Pbに変わる。軌跡L3は、原料液が微粒子Pbに変わるまでに、原料液に含まれる原料が描いたと言える軌跡L3であり、当該軌跡L3は原料が描きうる軌跡の一例を示している。液柱は、軌跡L3中、特に見かけの重力加速度が減じられる真空室11の上部11aにおいて、表面張力の作用を支配的に受けることで、複数の液滴Paに分断される。また、液柱および液滴Paに含まれる液体成分は、真空空間11Aにおいて、原料液(液滴Pa)などから蒸発潜熱を奪って蒸発(気化)する。
【0023】
蒸発潜熱を奪われた液滴Paは、自己凍結をはじめ、これによって微粒子Pbに変わる。微粒子Pbに含まれる液体成分の固相分は、微粒子Pbなどから更に昇華潜熱を奪って気化してもよい。これにより、原料液の凍結物または凍結乾燥物である微粒子Pbが、トレイ13の上に堆積する。微粒子Pbは、噴射口12Tの直径に応じた大きさを有し、例えば球形状を有してよい。噴射口12Tの直径は、例えば数十μmから数百μmに設定される。
【0024】
特に、見かけの重力加速度が減じられる真空室11の上部11aにおいて、液滴Paの少なくとも表層が固相となる条件とし微粒子Pbをトレイ13上に堆積させることは、球形における真円度および真球度などが向上する観点から好ましい。
【0025】
なお、液柱の長さは、原料液の粘度、凍結乾燥用ノズルが備える噴射口12Tの内径、噴射口12Tから噴射されるときの圧力、および、真空空間の圧力などによって定まる。そのため、原料液が描く軌跡L3のうちで液柱が占める長さもこれらによって定まる。
【0026】
原料液が噴射口12Tから噴射されるときの初速は、例えば4m/s以下であってよい。これにより、噴射口12Tから噴射された原料液が、真空室11の上面11tに付着することが抑えられる。
【0027】
ノズル12の傾斜角θは、第1直線L1と第2直線L2とが形成する角度である。第1直線L1は、ノズル12の噴射口12Tを通り、かつ、ノズル12の流路12Fに平行な直線である。第2直線L2は、噴射口12Tを通り、かつ、鉛直方向に沿って延びる直線である。すなわち、第2直線L2は、噴射口12Tを通り、かつ、噴射口12Tから真空室11の底部11dに向けて垂直に延びる直線である。
【0028】
真空室11内において、噴射口12Tと真空室11の側面11sとの間の距離が、側面距離Wsである。なお、側面距離Wsは、真空空間11Aのなかで、噴射口12Tから原料液が噴射される領域、すなわち原料が描く軌跡L3を含む空間を挟んだ噴射口12Tと側面11sとの間の距離である。ノズル12の傾斜角θ、原料液の噴射速度における初速V0、側面距離Wsは、以下の式(1)を満たす。
【0029】
θ < 281Ws/V0
2 … 式(1)
傾斜角θ、側面距離Ws、および、初速V0が式(1)を満たすことにより、ノズル12の噴射口12Tから真空空間11Aに噴射された原料液が、原料液から微粒子Pbに変わるまでの間に、原料液、液滴Pa、および、微粒子Pbのいずれかが真空室11の側面11sに接触することが抑えられる。なお、例えば、初速V0が4m/sであり、側面距離Wsが0.2mである場合には、傾斜角θは、3.5°である。また、初速V0が4m/sであり、側面距離Wsが0.3mである場合には、傾斜角θは、5.3°である。
【0030】
また、第1直線L1とノズル12の外表面との距離における最大値が噴射距離Wtである。ノズル12の傾斜角θ、初速V0、および、噴射距離Wtは、以下の式(2)を満たす。
【0031】
θ > 281Wt/V0
2 … 式(2)
傾斜角θ、噴射距離Wt、および、初速V0が式(2)を満たすことにより、ノズル12の噴射口12Tから噴射された原料液に由来する原料液、液滴Pa、および、微粒子Pbのいずれかが、噴射口12Tに向けて降下することが抑えられる。これによって、降下した原料液などが噴射口12Tを塞ぐことが抑えられる。なお、例えば、初速V0が4m/sであり、噴射距離Wtが5cmである場合には、傾斜角θは0.5°よりも大きければよい。
【0032】
なお、凍結乾燥装置10が上向きに噴射するノズル12を備える場合には、凍結乾燥装置10が下向きに噴射するノズルを備える場合に比べて、真空室11の幅を大きくすることが好ましい。この場合には、真空室11におけるコンダクタンスを大きくすることができ、排気効率を高めることが可能である。
【0033】
供給部31は、原料液をノズル12に供給する。供給部31は、例えば、原料液が導入されるシリンジと、シリンジからノズル12へ原料液を流入させる原料供給管とを備えて裏得。シリンジが押圧されることによって、シリンジ内の原料液が原料供給管に押し出され、原料供給管を通じて噴射口12Tまで供給される。
【0034】
供給部31が供給する原料液は、例えば、医薬品、食品、および、化粧品などの原料を含み、原料の粉末が溶媒に溶解された液体や液状体、または、原料の粉末が分散媒に分散した液体や液状体である。液状体は、固体と液体との間に位置付けられる粘度が高い流体である。原料液の一例は、アルブミンを含むアルブミン水溶液、および、マンニトールを含むマンニトール水溶液などであってよい。
【0035】
以上説明したように、凍結乾燥装置の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1‐1)真空室11内に配置されたノズル12が上向きに原料液を噴射する。そのため、原料液から微粒子Pbに変わるまでの原料の軌跡の少なくとも一部が、ノズル12よりも上方に位置する分、原料液の飛程方向が鉛直方向のみの従来技術と同一の滞在時間であっても、原料液から微粒子Pbを生成するために必要とされる真空室11の高さを縮小することが可能である。
【0036】
(1‐2)ノズル12が複数の噴射口12Tを備えることによって、ノズル12が噴射口12Tを1つのみ備える場合に比べて、ノズル12から上方に向けた原料液の初速度すなわち噴射距離を大きくすることせず、これによって、軌跡を起因とする真空室11の高さを抑えた条件において、微粒子の生産量を大きくすることができる。
【0037】
(1‐3)上記式(1)が満たされることによって、真空空間11Aに噴射された原料液が、原料液から微粒子Pbに変わるまでの間に、原料液、液滴Pa、および、微粒子Pbのいずれかが、真空室11の側面11sに接触することが抑えられる。
【0038】
(1‐4)上記式(2)が満たされることによって、ノズル12の噴射口12Tから噴射された原料液に由来する原料液、液滴Pa、および、微粒子Pbのいずれかが、噴射口12Tに向けて降下することが抑えられる。これによって、降下した原料液などが噴射口12Tを塞ぐことが抑えられる。
【0039】
なお、上述した第1実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[ノズル]
・ノズルは、円筒状を有してよいし、矩形筒状を有してもよい。
【0040】
・ノズル12の傾斜角θ、初速V0、および、側面距離Wsは、上述した式(1)を満たさなくてもよい。この場合であっても、凍結乾燥装置10が原料液を上向きに噴射するノズル12を備える以上は、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることはできる。
【0041】
・ノズル12の傾斜角θ、初速V0、および、噴射距離Wtは、上述した式(2)を満たさなくてもよい。この場合であっても、凍結乾燥装置10が原料液を上向きに噴射するノズル12を備える以上は、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることはできる。
【0042】
[真空室]
・上面11tは、加熱部によって形成されなくてもよい。この場合であっても、凍結乾燥装置10が、原料液を上向きに噴射するノズル12を備える以上は、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることはできる。
【0043】
[コールドトラップ]
・コールドトラップ21から排出される熱は、トレイ13に堆積した微粒子Pbの乾燥に用いられてもよい。この場合は、凍結乾燥装置10は、コールドトラップ21から排出される熱をトレイ13の近傍に導く乾燥機構を備えればよい。これにより、微粒子Pbを乾燥するために必要な時間を短くすることができる。
【0044】
[トレイ]
・トレイ13は、微粒子Pbを加熱するための加熱部を備えてもよい。加熱部によって微粒子Pbを加熱することによって、微粒子Pbの乾燥に必要な時間を短くすることができる。
【0045】
[第2実施形態]
図2を参照して、第2実施形態の凍結乾燥装置を説明する。第2実施形態では、第1実施形態に比べて、複数のノズルを備える点が異なる。そのため以下では、こうした相違点について主に説明し、第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態と同一の符号を付すことによって、当該構成の詳しい説明を省略する。
【0046】
図2は、凍結乾燥装置の模式的な構成を示している。なお、
図2では、図示の便宜上、凍結乾燥装置のなかで、真空室11の下部11b、下部11bの周辺構造、および、供給部31の図示が省略されている。
【0047】
図2が示すように、凍結乾燥装置10Aは、第1ノズル121および第2ノズル122を備えている。第1ノズル121が原料液を噴射する方向と、第2ノズル122が原料液を噴射する方向とは、互いに異なっている。第1ノズル121から噴射された原料の軌跡が第1軌跡L31であり、第2ノズル122から噴射された原料の軌跡が第2軌跡L32である。真空空間11Aにおいて、第1軌跡L31が含まれる領域と、第2軌跡L32が含まれる領域とは異なることが好ましい。すなわち、第1ノズル121および第2ノズル122は、第1軌跡L31と第2軌跡L32とが互いに異なる領域に含まれるように、原料液を噴射することが好ましい。
【0048】
第1ノズル121において、第1直線L11と第2直線L2とが形成する角度が、第1傾斜角θ1である。第2ノズル122において、第1直線L12と第2直線L2とが形成する角度が第2傾斜角θ2である。
図2が示す例では、第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2とは、互いに異なる大きさを有する。なお、第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2とは、互いに等しい大きさを有してもよい。
【0049】
第1ノズル121において、噴射口12Tと第1側面11s1との間の距離が第1側面距離Ws1である。第2ノズル122において、噴射口12Tと第2側面11s2との間の距離が第2側面距離Ws2である。第1側面11s1と第2側面11s2とは、真空室11内において対向している。なお、各側面距離Ws1,Ws2は、第1実施形態の側面距離Wsに対応する。
図2が示す例において、第1側面距離Ws1と第2側面距離Ws2とが、互いに異なる長さである。なお、第1側面距離Ws1と第2側面距離Ws2とは、互いに等しい長さでもよい。
【0050】
第1側面距離Ws1と第2側面距離Ws2とが互いに異なる場合には、上記式(1)を満たす第1傾斜角θ1および第2傾斜角θ2の値も互いに異なる。また、第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2とが互いに異なる場合には、真空室11の高さ方向において、第1軌跡L31における頂部の位置、および、第2軌跡L32における頂部の位置も互いに異なる。
【0051】
以上説明したように、上述した第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(2‐1)凍結乾燥装置10Aが複数のノズル121,122を備えるため、凍結乾燥装置がノズルを1つのみ備える場合に比べて、ノズル121,122の噴射速度を高めることなく、単位時間当たりに噴射される原料液の量を増やすことが可能である。これにより、真空室11の高さ方向において、各軌跡L31,L32の頂部の位置が高くなることを抑えることが可能である。そのため、単位時間当たりに噴射される原料液の量を増やしつつ、真空室11の高さが拡大されることが抑えられる。
【0052】
なお、上述した第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、第2実施形態は、上述した第1実施形態、および、第1実施形態の変更例と組み合わせて実施することが可能である。
【0053】
[ノズル]
・各ノズル121,122が原料液を噴射する方向は、上述したように第1軌跡L31と第2軌跡L32とが互いに異なる領域に含まれる方向であることが好ましいが、各方向は、第1軌跡L31と第2軌跡L32との一部が重なる方向でもよい。
【0054】
・凍結乾燥装置10Aは、3つ以上のノズルを備えてもよい。この場合であっても、凍結乾燥装置10Aが複数のノズルを備える以上は、上述した(2‐1)に準じた効果を得ることはできる。
【0055】
[第3実施形態]
図3を参照して、第3実施形態の凍結乾燥装置を説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態に比べて、ノズルが回動可能である点が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態と同一の符号を付すことによって、当該構成の詳しい説明を省略する。
【0056】
図3は、凍結乾燥装置の模式的な構成を示している。なお、
図3では、図示の便宜上、凍結乾燥装置のなかで、真空室11の下部11b、下部11bの周辺構造、および、供給部31の図示が省略されている。
【0057】
図3が示すように、凍結乾燥装置10Bは、ノズル12を回転させるための駆動部14を備えている。駆動部14は、ノズル12に接続されている。駆動部14は、回転軸Aを中心にノズル12を回転させる。これにより、ノズル12が回動する。第1実施形態と同様、ノズル12は、第1直線L1と第2直線L2とによって形成される傾斜角θを有する。こうした傾斜角θは、ノズル12が回転軸Aを中心に回転されても、回転方向におけるノズル12の位置に関わらず維持される。そのため、傾斜角θ、初速V
0、および、側面距離Wsは、ノズル12の回転方向における全体において、言い換えれば、真空室11の全周にわたって、上記式(1)が満たされることが好ましい。すなわち、凍結乾燥装置10Bにおいては、噴射口12Tと第1側面11s1との間の距離も、噴射口12Tと第2側面11s2との間の距離も、上記式(1)を満たすことが好ましい。
【0058】
噴射口12Tから噴射された原料液は、回転軸Aからノズル12に伝達される遠心力を受けるため、噴射口12Tから噴射された原料は、水平方向において弧を描く軌跡L3を有し、これによって、螺旋状に上面11tに向けて噴射される。螺旋状に噴射される原料液は、直線的に噴射される原料液に比べて、真空室11の高さ方向において、同一の位置における原料液の乾燥度合いまたは凍結度合いが高められやすい。
【0059】
以上説明したように、凍結乾燥装置の第3実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(3‐1)ノズル12が回動可能であることから、原料液は螺旋状の軌跡L3を描きながら真空室11の上面11tに向けて噴射される。そのため、原料液が直線的に噴射される場合に比べて、真空室11の高さ方向において、同一の位置における原料液の乾燥度合い凍結度合いが高められやすい。
【0060】
なお、上述した第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、第3実施形態は、第1実施形態の構成、および、第1実施形態の変更例のうち、ノズルに関わる構成を除く構成と組み合わせて実施することが可能である。
【0061】
[ノズル]
・凍結乾燥装置10Bは、複数のノズルを備えてもよい。この場合には、1つの回転軸Aを中心に回転するように、複数のノズルが駆動部14に接続されてもよい。あるいは、複数のノズルは、互いに異なる回転軸Aを中心に回転するように、駆動部14に接続されてもよい。
【0062】
[第4実施形態]
図4を参照して、第4実施形態の凍結乾燥装置を説明する。なお、第4実施形態では、第1実施形態と比べて、ノズルの構成が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態と同一の符号を付すことによって、当該構成の詳しい説明を省略する。
【0063】
図4は、凍結乾燥装置の模式的な構成を示している。なお、
図4では、図示の便宜上、凍結乾燥装置のなかで、真空室11の下部11b、下部11bの周辺構造、および、供給部31の図示が省略されている。
【0064】
図4が示すように、凍結乾燥装置10Cは、ノズル123と、振動付与部32とを備えている。ノズル123は、開口123aが形成された開口面123bを備えている。振動付与部32は、開口面123bに振動を付与して、開口面123bに供給された原料液から液滴を形成する。供給部31からノズル123に供給された原料液は、開口123aを通じて開口面123bに流出する。流出した原料液は、振動付与部32が開口面123bを振動させることによって開口面123bに濡れ広がり、これによって、開口面123b上に所定の厚さを有した液膜が形成される。振動付与部32が開口面123bにさらに振動を付与することによって、波だった液膜から複数の液滴が分断される。これにより、真空空間11Aに複数の液滴が飛散する。ノズル123は、第1直線L1に対して放射状に複数の液滴を放出する。振動付与部32は、第1直線L1に沿う振動を開口面123bに付与する。
【0065】
ノズル123から放出される液滴の直径は、開口面123bに付与される振動の周波数に依存する。そのため、同一の周波数を有した振動を開口面123bに付与することによって、ノズル123から飛散する液滴の直径におけるばらつきを抑えることが可能である。
【0066】
以上説明したように、第4実施形態の凍結乾燥装置によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(4‐1)ノズル123から噴射された原料液は液滴の状態を有するため、原料液が液柱の状態を有する場合に比べて、原料液が自己凍結しやすい。それゆえに、原料液の自己凍結によって微粒子Pbを形成するために必要な真空室11の高さを縮小することが可能である。
【0067】
なお、上述した第4実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[ノズル]
・凍結乾燥装置10Cは、2つ以上のノズル123を備えてよい。
【符号の説明】
【0068】
10,10A,10B,10C…凍結乾燥装置、11…真空室、11a…上部、11A…真空空間、11b…下部、11d…底部、11s…側面、11s1…第1側面、11s2…第2側面、11t…上面、12,123…ノズル、12F…流路、12T…噴射口、13…トレイ、14…駆動部、21…コールドトラップ、22…真空ポンプ、31…供給部、32…振動付与部、121…第1ノズル、122…第2ノズル、123a…開口、123b…開口面、A…回転軸、Pa…液滴、Pb…微粒子。