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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064483
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】塗料噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20220419BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173141
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智
(72)【発明者】
【氏名】小澤 将平
(72)【発明者】
【氏名】丸山 けい子
(72)【発明者】
【氏名】村井 秀世
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA35
4F041BA59
4F042AA09
4F042AB00
4F042CB08
4F042CB24
4F042CC08
(57)【要約】
【課題】塗料噴射ノズルにおいて、ニードル弁の直進性を維持し、ニードル弁の駆動機構での爆発が生じても、塗料室への延焼を防止することのできる塗料噴射ノズルを提供する。
【解決手段】基体1と、塗料が噴射されるノズル孔2と、前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室3と、前記基体内に進退可能に嵌入され、ノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁4と、前記基体内に設けられ、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構8と、前記基体内において前記ニードル弁の周りを囲うように設けられ、前記ニードル弁の進退動作に伴い該ニードル弁の周面が摺接するベアリング20とを備え、前記ベアリングは、その自重により前記ニードル弁の軸方向に移動可能に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力で供給された塗料を噴射する塗料噴射ノズルであって、
基体と、
塗料が噴射されるノズル孔と、
前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、
前記基体内に進退可能に嵌入され、前記ノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁と、
前記基体内に設けられ、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構と、
前記基体内において前記ニードル弁の周りを囲うように設けられ、前記ニードル弁の進退動作に伴い該ニードル弁の周面が摺接するベアリングとを備え、
前記ベアリングは、前記ニードル弁の軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とする塗料噴射ノズル。
【請求項2】
前記ベアリングが前記ニードル弁の軸方向に移動可能な距離寸法は、少なくとも前記ベアリングの球またはローラの周の長さであることを特徴とする請求項1に記載された塗料噴射ノズル。
【請求項3】
前記ニードル弁の前記駆動機構側の端に一端が連結される駆動ピンを備え、
前記駆動ピンの他端は前記駆動機構に連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された塗料噴射ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程において、例えば車体の表面に2色の塗装(2トーン塗装と称する)を施す場合、スプレーガンによる塗装では霧状に塗料が噴霧されるため、自動車の車体にマスキング処理を施し、その上からスプレーガンによる塗装を行って、境界線を出していた。
【0003】
しかしながら、車体にマスキング処理を施し、塗装後にそれを除去する作業が煩わしく、作業効率が低下するという課題があった。
そのような課題に対し、噴霧幅の狭い塗料噴射ノズルを用いることにより、マスキング処理を行わずに境界線を出す方法が注目されている。
【0004】
例えば、塗料噴射ノズルを用いた塗布装置については、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される塗布(プリント)装置は、塗料が充填されたインクタンクに加圧空気を送り込むことにより高圧の気圧を印加して塗料を遠方に吐出する塗料噴射ノズルが複数配列されたヘッドアレイ(塗料噴射ノズルヘッド)を備えている。
【0005】
この装置は、さらに前記ヘッドアレイを往復直線移動させるリニアレールと、前記リニアレールをロボットアームにより移動させる多関節ロボットと、それらロボットと塗料噴射ノズルの駆動制御を行うコントローラとを備えている。前記ヘッドアレイは、塗料色ごとに複数のノズルが横一列に配列されており、配列方向にリニアレール上を移動(走査)しながら各ノズルからの噴霧がなされる。
【0006】
このような塗布装置によれば、走査方向に沿って直線状に配列された複数のノズルから塗料が吐出されるため、少ない走査で所望の膜厚を形成することができ、マスキング処理を施すことなく、速い速度で境界線のある塗布作業を行うことが可能となる。
【0007】
ところで、従来の塗料噴射ノズルの構造は、例えば特許文献2に開示されている。図6は、特許文献2に開示された塗料噴射ノズルの断面図である。
図6において、塗料噴射ノズルは、基体51の前面に設けられたノズル孔52と 、ノズル孔52に塗料を供給する塗料室53と、塗料室53中にあって、先端にてノズル孔52を閉鎖又は開放するニードル弁54とを備える。また、ニードル弁54の駆動機構(圧電素子)として、ニードル弁54の後方に固定される可動鉄心58と、可動鉄心58に対向して設けられる固定鉄心61と、電磁ソレノイド62と、可動鉄心58と固定鉄心61との間に設けられるバネ材60を備える。
【0008】
前記駆動機構を収容する駆動機構収容空間59に塗料室53の塗料が流出しないようにするためにニードル弁54を囲うように弾性体隔膜57が設けられ、塗料室53の塗料には塗料入力通路55を介して圧力Pがかけられている。
加圧された塗料が弾性体隔膜57とニードル弁54の間から洩れ出すのを防ぐために駆動機構収容空間59の中の気体又は液体に対し、加圧通路63を介して塗料にかけられた圧力と同程度の圧力Pが加えられている。
【0009】
図6ではニードル弁54がノズル孔52を閉鎖しているところを示す。この時、ソレノイド62には電流が流されていないため、バネ材60の働きにより可動鉄心58とそれに続くニードル弁54が前方に押され、その結果ノズル孔52が閉鎖される。
一方、ソレノイド62に電流が流されると、固定鉄心61に可動鉄心58が吸着され、ニードル弁54は後方に下がってノズル孔52が開放されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015-027636号公報
【特許文献2】特開2004-142382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、自動車塗装ラインで空気中に浮遊する気化塗料が仮に駆動機構(圧電素子)に侵入した場合、駆動機構で生じる摩擦により火花が生じると、駆動機構に侵入した気化塗料に引火して爆発が生じ、弾性体隔膜57を破壊して塗料室53へ延焼する虞があった。
【0012】
本願発明者は、基体内にニードル弁を進退可能に嵌入する構成とすることを前提に鋭意研究を行い、本発明をするに至った。
本発明の目的は、塗料噴射ノズルにおいて、駆動機構からの塗料室への引火を防止することのできる塗料噴射ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗料噴射ノズルは、所定の圧力で供給された塗料を吐出する塗料噴射ノズルであって、基体と、塗料が噴射されるノズル孔と、前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、前記基体内に進退可能に嵌入され、前記ノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁と、前記基体内に設けられ、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構と、前記基体内において前記ニードル弁の周りを囲うように設けられ、前記ニードル弁の進退動作に伴い該ニードル弁の周面が摺接するベアリングとを備え、前記ベアリングは、前記ニードル弁の軸方向に移動可能に設けられていることに特徴を有する。
尚、前記ベアリングが前記ニードル弁の軸方向に移動可能な距離寸法は、少なくとも前記ベアリングの球またはローラの周の長さであることが望ましい。
また、前記ニードル弁の前記駆動機構側の端に一端が連結される駆動ピンを備え、前記駆動ピンの他端は前記駆動機構に連結されている構成でもよい。
【0014】
このようにニードル弁の周囲に、該ニードル弁が摺動するベアリングを設け、ベアリングを軸方向に移動させることにより、ベアリングの球やローラにグリスを行き渡らせて、グリス切れを防止することができる。
また、ニードル弁と基体内壁との隙間寸法を小さく制限することができるため、駆動機構への気化塗料の流入を抑制し、仮に駆動機構で火花が発生した際に駆動機構外に流出し塗料室での引火を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗料噴射ノズルにおいて、駆動機構からの塗料室への引火を防止することのできる塗料噴射ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施の形態に係る塗料噴射ノズルの主要構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、図1の塗料噴射ノズルのリニアガイドを含むその周辺の一部拡大断面図である。
図3図3は、図2のリニアガイドを正面側からみた断面図(図1のC-C矢視断面図)である。
図4図4(a)、(b)は、図2のリニアガイドの状態を示す断面図である。
図5図5は、本発明の塗料噴射ノズルの変形例を示す断面図である。
図6図6は、従来の塗料噴射ノズルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる塗料噴射ノズルの実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本実施の形態に係る塗料噴射ノズルは、例えば自動車製造ラインにおける塗布装置に用いられ、例えば(他色の塗装との境界線を有する)2トーン塗装のために塗料を吐出するものである。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る塗料噴射ノズルの主要構成を模式的に示すブロック図である。
塗料噴射ノズル100は、基体1に設けられたノズル孔2と、ノズル孔2に塗料を供給する塗料室3と、基体1内に進退可能に嵌入され、ノズル孔2を閉鎖又は開放するニードル弁4と、ニードル弁4に連結される駆動機構としてのピエゾ素子8とを備える。
【0019】
前記塗料室3の側部には、塗料入力通路5が接続され、反対側のインク室3の側部には塗料回収通路6が接続されている。
塗料室3には、図示しない塗料供給部から前記塗料入力通路5を通じて常に塗料が供給され、塗料回収通路6から回収されることによって、塗料が滞留することなく塗料が充填される。ノズル孔2が閉状態にあっては、塗料入力通路5からの塗料流量が調整されることによって塗料室3内に所定の圧力がかかった状態が維持されるようになっている。
【0020】
前記ピエゾ素子8は、図示しない電圧印加部により所定以上の電圧が印加されると、ニードル弁4の軸方向に長さを変化させ、ニードル弁4をノズル孔2に向けて移動させて(前進させて)、ニードル弁4の先端がノズル孔2を閉鎖するようになされている(ノズル孔閉状態)。
【0021】
一方、ピエゾ素子8は、ノズル閉状態から印加電圧が降下されると、ニードル弁4をノズル孔2から離す方向に変形し、ニードル弁4の先端がノズル孔2から離れるようになされている(ノズル孔開状態)。ノズル孔2が開くと、図1に示すように塗料室3内の圧力によりノズル孔2から塗料液滴17がワークに向けて吐出される。
【0022】
このピエゾ素子8は、基体1中に形成された駆動機構収容空間9に収容され、ニードル弁4の軸方向に対しノズル孔2側と逆の端側に樹脂12が充填されることによりピエゾ素子8への引き込み電線の絶縁がなされている。前記駆動機構収容空間9は、前記塗料室3とは、二重のOリング10、11によって分離され、塗料室3の塗料が駆動機構収容空間9に流出しないようになされている。
【0023】
また、図示するようにOリング10とOリング11との間には、ニードル弁4の径方向周囲にベアリングからなるリニアガイド20が配置されている。
図2は、リニアガイド20を含むその周辺の一部拡大断面図であり、図3は、リニアガイド20を正面側からみた断面図(図1のC-C矢視断面図)である。前記したようにニードル弁4は基体1内に前後方向に進退可能に嵌入されている。ニードル弁4の軸方向への移動を可能とし、Oリング10、11により塗料室3と駆動機構収容空間9とを隔離するために、ニードル弁4と基体1内壁との隙間s1を設定されている。また、リニアガイド20と基体1内壁との隙間s2を設定されている。
【0024】
リニアガイド20は、軸方向と周方向にそれぞれ複数の剛球21が回転自在に配置されている。各剛球21はグリスによって滑らかに回転するように設けられ、複数の剛球21がニードル弁4の周面を支持しつつニードル弁4の軸方向への移動に伴い回転することによって、ニードル弁4の直進性が維持されるように構成されている。尚、ニードル弁4に対し摺動するリニアガイド20はベアリングであるため火花が発生せず安全である。
【0025】
また、リニアガイド20は、これが配置される円筒状の空間25内において、軸方向に移動可能に設けられている。図2に示すように空間25内において軸方向の遊びA+Bは、少なくとも剛球21の周の長さを有する、即ち剛球21の直径をLとすると、少なくともL×πの長さを有するように構成されている。
このように構成することにより、リニアガイド20が軸方向にA+Bの長さを移動することで、剛球全体にグリスを行き渡らせることができ、グリス切れを防止することができる。
【0026】
尚、塗料噴射ノズル100を使用する際は、図示しないロボットアームの先端に塗料噴射ノズル100を保持し、ワークに向けて塗料の吐出を行うが、吐出の前後時間において、ノズル先端を上方、或いは下方に向けることにより、図4(a)、(b)に示すように前記空間25内においてリニアガイド20を自重で軸方向に移動させ、グリスを剛球全体に容易に行き渡らせることができる。
【0027】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ニードル弁4の周囲に、該ニードル弁4が摺動するリニアガイド20(ベアリング)を設けたことにより、ニードル弁4が基体1内に進退可能に嵌入された状態、即ちニードル弁4と基体1内壁との隙間寸法が小さく制限されても直進性を維持することができ、塗装精度を向上させることができる。また、基体1内においてリニアガイド20を設ける空間25内において、軸方向にリニアガイド20の剛球21の周長さ以上の遊びを設けたことにより、リニアガイド20を自重で移動させ、全ての剛球21にグリスを行き渡らせて、グリス切れを防止することができる。
また、ニードル弁4と基体1内壁との隙間寸法が小さく制限されるため、駆動機構側への気化塗料の流入を抑制し、仮に駆動機構側で火花が発生した際に塗料室3での引火を防止することができる。
【0028】
尚、前記実施の形態にあっては、リニアガイド20においてニードル弁4が摺動する部材を剛球21としたが、本発明にあっては、それに限定されるものではなく、球体ではなく円盤、円柱等のローラであってもよい。
【0029】
また、前記実施の形態においては、ニードル弁4の後端にピエゾ素子8(駆動機構)が連結されるものとしたが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではない。例えば、図5に示すように前記ニードル弁4の後端に一端が連結される駆動ピン13を備え、前記駆動ピン13の他端がピエゾ素子8(駆動機構)に連結されている構成としてもよい。そのように構成することにより、駆動機構で爆発しても、損傷を駆動ピン13にとどめ、ニードル弁4及び塗料室3の損傷を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 基体
2 ノズル孔
3 塗料室
4 ニードル弁
8 ピエゾ素子(駆動機構)
20 リニアガイド(ベアリング)
100 塗料噴射ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6