(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064862
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】タングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いたタングステンパターンウエハの研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220419BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20220419BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220419BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220419BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165411
(22)【出願日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0133040
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】金 元中
(72)【発明者】
【氏名】具 侖永
(72)【発明者】
【氏名】金 亨默
(72)【発明者】
【氏名】朴 泰遠
(72)【発明者】
【氏名】李 義▲ラン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 鍾元
(72)【発明者】
【氏名】趙 娟振
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB01
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3C158CB03
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3C158ED26
5F057AA03
5F057AA05
5F057AA14
5F057AA28
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5F057EA01
5F057EA07
5F057EA16
5F057EA22
5F057EA24
5F057EA26
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】タングステンパターンウエハの研磨速度と平坦性を改善し、スクラッチ欠陥を減らすことのできるタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を提供する。
【解決手段】溶媒および研磨剤を含むタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物であり、前記研磨剤は、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)由来のアミノシランで改質されたシリカを含み、前記CMPスラリー組成物はpHが約4~7のものである、タングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いたタングステンパターンウエハの研磨方法を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒および研磨剤を含むタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物であり、
前記研磨剤は、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)由来のアミノシランで改質されたシリカを含み、
前記組成物はpHが約4~7のものである、タングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンイミン由来のアミノシランは、ポリエチレンイミンと下記化学式1の化合物の反応物、前記反応物から由来する陽イオン又は前記反応物の塩を含むものである、請求項1に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物:
【化1】
前記化学式1中、
Lは、置換または非置換のC
1-C
20アルキレン基、置換または非置換のC
3-C
20シクロアルキレン基、置換または非置換のC
6-C
20アリレン基またはこれらの組合せから選択され、
Xは、-F、-Cl、-Br、-I、エポキシ基およびグリシジルオキシ基から選択され、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、置換または非置換のC
1-C
20アルキル基、置換または非置換のC
3-C
20シクロアルキル基、置換または非置換のC
6-C
20アリール基、置換または非置換のC
1-C
20アルコキシ基および置換または非置換のC
6-C
20アリールオキシ基から選択されるが、R
1~R
3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基、置換または非置換のC
1-C
20アルコキシ基および置換または非置換のC
6-C
20アリールオキシ基から選択される。
【請求項3】
前記化学式1中、LはC1-C5アルキレン基から選択され、
Xは-Cl及びグリシジルオキシ基から選択され、
R1~R3は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、C1-C5アルキル基およびC1-C5アルコキシ基から選択されるが、R1~R3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基およびC1-C5アルコキシ基から選択されるものである、請求項2に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項4】
前記化学式1の化合物がクロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びグリシジルオキシプロピルトリエトキシシランから選択されるものである、請求項2に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレンイミンは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:gel permeation chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)が、約500g/mol~1,000,000g/molである、請求項1から4のいずれか一項に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項6】
前記ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、表面に陽電荷を備え、約10mV~60mVの表面電位を有し、等電点がpH約6~10で存在するものである、請求項1から5のいずれか一項に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、平均粒径(D50)が約10nm~200nmのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項8】
前記組成物は、酸化剤、触媒および有機酸の1種以上をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項9】
前記組成物は、
前記研磨剤約0.001重量%~20重量%;
前記酸化剤約0.01重量%~20重量%;
前記触媒約0.001重量%~10重量%;
前記有機酸約0.001重量%~20重量%;及び
残量の前記溶媒を含むものである、請求項8に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を使用してタングステンパターンウエハを研磨する段階を含む、タングステンパターンウエハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いたタングステンパターンウエハの研磨方法に関する。より詳しくは、タングステンパターンウエハの研磨速度と平坦性を改善し、スクラッチ欠陥を減らすことができるタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いたタングステンパターンウエハの研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板の表面を研磨(又は平坦化)するための化学的且つ機械的研磨(CMP)組成物および方法は、関連技術分野において広く公知となっている。半導体基板上の金属層(例えば、タングステン)を研磨するための研磨組成物は、水溶液中に懸濁した研磨剤粒子および化学的促進剤、例えば、酸化剤、触媒等を含むことができる。
【0003】
CMPスラリー組成物で金属層を研磨する工程は、初期金属層だけを研磨する段階、金属層とバリア層を研磨する段階、金属、バリア層、酸化膜を研磨する段階で行われる。このうち、金属層、バリア層、酸化膜を研磨する段階でタングステンパターンウエハ研磨組成物が使用されるが、金属層と酸化膜が適切な研磨速度で研磨されなければ、優れた研磨平坦化を達成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、タングステンパターンウエハの研磨速度と平坦性を改善し、スクラッチ欠陥を減らすことのできるタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、前記タングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を用いたタングステンパターンウエハの研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.一側面では、タングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を提供する。前記組成物は、溶媒および研磨剤を含み、前記研磨剤は、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)由来のアミノシランで改質されたシリカを含み、前記組成物はpHが約4~7になり得る。
【0007】
2.前記1において、前記ポリエチレンイミン由来のアミノシランは、ポリエチレンイミンと下記化学式1の化合物の反応物、前記反応物から由来する陽イオン又は前記反応物の塩を含むことができる。
【0008】
【0009】
前記化学式1中、Lは、置換または非置換のC1-C20アルキレン基、置換または非置換のC3-C20シクロアルキレン基、置換または非置換のC6-C20アリレン基またはこれらの組合せから選択され、Xは、-F、-Cl、-Br、-I、エポキシ基およびグリシジルオキシ基から選択され、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、置換または非置換のC1-C20アルキル基、置換または非置換のC3-C20シクロアルキル基、置換または非置換のC6-C20アリール基、置換または非置換のC1-C20アルコキシ基および置換または非置換のC6-C20アリールオキシ基から選択されるが、R1~R3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基、置換または非置換のC1-C20アルコキシ基および置換または非置換のC6-C20アリールオキシ基から選択できる。
【0010】
3.前記2において、前記化学式1中、LはC1-C5アルキレン基から選択され、Xは-Cl及びグリシジルオキシ基から選択され、R1~R3は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、C1-C5アルキル基およびC1-C5アルコキシ基から選択されるが、R1~R3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基およびC1-C5アルコキシ基から選択できる。
【0011】
4.前記2または3において、前記化学式1の化合物がクロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びグリシジルオキシプロピルトリエトキシシランから選択できる。
【0012】
5.前記1~4のいずれかにおいて、前記ポリエチレンイミンは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:gel permeation chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)が、約500g/mol~1,000,000g/molになり得る。
【0013】
6.前記1~5のいずれかにおいて、前記ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、表面に陽電荷を備え、約10mV~60mVの表面電位を有し、等電点(Isoelectric point)がpH約6~10で存在できる。
【0014】
7.前記1~6のいずれかにおいて、前記ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、平均粒径(D50)が約10nm~200nmになり得る。
【0015】
8.前記1~7のいずれかにおいて、前記組成物は、酸化剤、触媒および有機酸の1種以上をさらに含むことができる。
【0016】
9.前記8において、前記組成物は、前記研磨剤約0.001重量%~20重量%;前記酸化剤約0.01重量%~20重量%;前記触媒約0.001重量%~10重量%;前記有機酸約0.001重量%~20重量%;及び残量の前記溶媒を含むことができる。
【0017】
10.他の側面によると、タングステンパターンウエハの研磨方法を提供する。前記方法は、前記1~9のいずれかのタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を使用してタングステンパターンウエハを研磨する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、タングステンパターンウエハの研磨速度と平坦性を改善し、スクラッチ欠陥を減らすことのできるタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物およびそれを用いたタングステンパターンウエハの研磨方法を提供する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中、単数の表現は文脈上明確に他の意味を記載していない限り、複数の表現を含む。
【0020】
本明細書中、含むまたは有する等の用語は、明細書上に記載している特徴または構成要素が存在することを意味し、一つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0021】
本明細書中、置換されたC1-C20アルキレン基、置換されたC3-C20シクロアルキレン基、置換されたC6-C20アリレン基、置換されたC1-C20アルキル基、置換されたC3-C20シクロアルキル基、置換されたC6-C20アリール基、置換されたC1-C20アルコキシ基および置換されたC6-C20アリールオキシ基の置換基の少なくとも一つは、C1-C20アルキル基、C3-C20シクロアルキル基およびC6-C20アリール基から選択できる。
【0022】
構成要素を解釈するにおいて、別途の明示的記載がなくても誤差範囲を含むと解釈する。
【0023】
本明細書において、数値範囲を表す「a~b」の「~」は、≧aで≦bと定義する。
【0024】
本発明者は、溶媒および研磨剤を含むタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物において、研磨剤としてポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質された研磨粒子を使用することにより、タングステンパターンウエハ研磨時にタングステンパターンウエハの研磨速度を改善し、エロージョン(erosion)等を低減してタングステンパターンウエハの研磨表面の平坦性を改善し、且つスクラッチ欠陥を改善したことを確認し、本発明を完成させた。また、本発明者はポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカを研磨剤として使用することにより、従来1~3の強酸性のpHに比べて弱酸性のpHでタングステンパターンウエハの研磨速度とタングステンパターンウエハの研磨表面の平坦性を改善することができた。
【0025】
本発明の一具体例にかかるタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物(以下「CMPスラリー組成物」とも言う)は、溶媒および研磨剤を含み、前記研磨剤はポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカを含み、前記組成物はpHが約4~7になり得る。
【0026】
以下、本発明の一具体例にかかるCMPスラリー組成物中の構成成分について詳しく説明する。
【0027】
溶媒
【0028】
溶媒は、タングステンパターンウエハを研磨剤で研磨する際の摩擦を減らすことができる。溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒またはこれらの組合せを使用することができ、例えば水(例えば、超純水、脱イオン水等)、有機アミン、有機アルコール、有機アルコールアミン、有機エーテル、有機ケトン等が使用できる。一具体例によると、溶媒は超純水または脱イオン水になり得るが、これに限定されるものではない。溶媒は、CMPスラリー組成物中残量として含むことができる。
【0029】
研磨剤
【0030】
研磨剤は、絶縁層膜(例えば、シリコン酸化膜)とタングステンパターンウエハを速い研磨速度で研磨することができる。
【0031】
研磨剤、例えば、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、球形または非球形の粒子であり、粒子の平均粒径(D50)は、例えば、約10nm~200nm(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200nm)、別の例を挙げると約20nm~180nm、また別の例を挙げると約40nm~130nmになり得、前記範囲で本発明の研磨対象である絶縁層膜とタングステンパターンウエハに対する研磨速度を出すことができ、研磨後の表面欠陥(スクラッチ等)が発生しなくなり得るが、これに限定されるものではない。ここで、「平均粒径(D50)」とは、当業者に知られている通常の粒径を意味し、研磨剤を体積基準で最小から最大順序に分布させた時、約50体積%に該当する粒子の粒径を意味する。
【0032】
研磨剤、例えば、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、CMPスラリー組成物中、例えば約0.001重量%~20重量%、別の例を挙げると約0.01重量%~10重量%、また別の例を挙げると約0.05重量%~5重量%、また別の例を挙げると約0.5重量%~3重量%で含むことができ、前記範囲で絶縁層膜とタングステンパターンウエハを十分な研磨速度で研磨することができ、スクラッチが発生しなくなり得、且つ組成物の分散安定性に優れ得るが、これに限定されるものではない。
【0033】
研磨剤は、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカを含み得る。
【0034】
ポリエチレンイミンは、アミン基とCH2CH2スペーサー(spacer)で構成された反復単位を有するアミン系高分子として多数の窒素原子を含む。多数の窒素原子を有するポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、非改質のシリカまたは少数の窒素原子(例えば、1個または2個の窒素原子)を有するアミノシランで改質されたシリカに比べて、タングステンパターンウエハの研磨速度と平坦性の改善効果が非常に高い。また、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、従来の強酸性に比べてpHが高い弱酸性のpH範囲で高いタングステンパターンウエハの研磨速度と平坦性改善効果を具現することができる。
【0035】
ポリエチレンイミンは、直鎖型ポリエチレンイミン、分枝鎖形ポリエチレンイミン又はこれらの組合せを含むことができる。直鎖型ポリエチレンイミンは、下記化学式Aで表すことができ、分枝鎖形ポリエチレンイミンは下記化学式Bで表すことができるが、これに限定されるものではない:
【0036】
【0037】
【0038】
一具体例によると、ポリエチレンイミンはGPCで測定した重量平均分子量(Mw)が約500g/mol~1,000,000g/mol、例えば約1,000g/mol~500,000g/mol、別の例を挙げると約2,500g/mol~250,000g/mol、また別の例を挙げると約5,000g/mol~50,000g/molになり得、前記範囲で本発明の研磨対象である絶縁層膜とタングステンパターンウエハに対する研磨速度を出すことができ、研磨後の表面欠陥(スクラッチ等)が発生しなくなり得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
一具体例によると、シリカは後述するポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質することができる。ポリエチレンイミン由来のアミノシランは、ポリエチレンイミンと下記化学式1の化合物の反応物、前記反応物から由来した陽イオンまたは前記反応物の塩を含むことができる。
【0040】
【0041】
ここで、「ポリエチレンイミンと前記化学式1の化合物の反応物から由来した陽イオン」とは、前記反応物に存在する窒素原子の少なくとも一つが陽電荷(つまり、N+)を帯びることを意味し得る。一方、「ポリエチレンイミンと前記化学式1の化合物の反応物の塩」において、陽イオンは上述の通りであり、陰イオンは、例えば、ハロゲン陰イオン(例:F-,Cl-,Br-,I-);炭酸陰イオン(例:CO3
2-,HCO3
-)、酢酸陰イオン(CH3COO-)、クエン酸陰イオン(HOC(COO-)(CH2COO-)2)等の有機酸陰イオン;及び/又は窒素含有陰イオン(例:NO3
-,NO2
-);リン含有陰イオン(例:PO4
3-,HPO4
2-,H2PO4
-);硫黄含有陰イオン(例:SO4
2-,HSO4
-);シアニド陰イオン(CN-)等の無機酸陰イオンになり得る。
【0042】
前記化学式1中、Lは、置換または非置換のC1-C20アルキレン基、置換または非置換のC3-C20シクロアルキレン基、置換または非置換のC6-C20アリレン基またはこれらの組合せから選択できる。例えば、Lは置換または非置換のC1-C10アルキレン基、別の例を挙げると、置換または非置換のC1-C5アルキレン基である得る。一具体例によると、Lはn-プロピレン基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0043】
前記化学式1中、Xは、-F、-Cl、-Br、-I、エポキシ基およびグリシジルオキシ基から選択できる。一具体例によると、Xは-Cl及びグリシジルオキシ基から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記化学式1中、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、置換または非置換のC1-C20アルキル基、置換または非置換のC3-C20シクロアルキル基、置換または非置換のC6-C20アリール基、置換または非置換のC1-C20アルコキシ基および置換または非置換のC6-C20アリールオキシ基から選択されるが、R1~R3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基、置換または非置換のC1-C20アルコキシ基および置換または非置換のC6-C20アリールオキシ基から選択できる。例えば、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、置換または非置換のC1-C10アルキル基および置換または非置換のC1-C10アルコキシ基から選択されるが、R1~R3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基および置換または非置換のC1-C10アルコキシ基から選択できる。別の例を挙げると、R1~R3は、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、C1-C5アルキル基およびC1-C5アルコキシ基から選択されるが、R1~R3の少なくとも一つは、ヒドロキシル基およびC1-C5アルコキシ基から選択できる。一具体例によると、R1~R3は、それぞれ独立して、メトキシ基およびエトキシ基から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0045】
一具体例によると、前記化学式1の化合物は、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びグリシジルオキシプロピルトリエトキシシランから選択できる。
【0046】
ポリエチレンイミンと前記化学式1の化合物の反応物、前記反応物から由来する陽イオンまたは前記反応物の塩で改質されたシリカは、非改質のシリカに改質しようとする化合物、陽イオン又は塩を添加した後、所定期間反応させることにより行うことができる。非改質のシリカは、コロイダルシリカ及びヒュームドシリカの1種以上を含むことができ、好ましくはコロイダルシリカを含むことができる。
【0047】
一具体例によると、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカは、表面に陽電荷を備え、約10mV~60mV(例えば、10、20、30、40、50、又は60mV)の表面電位を有し、等電点がpH約6~10、例えばpH約6~8、別の例を挙げるとpH約7~8で存在し得る。
【0048】
CMPスラリー組成物は、溶媒および研磨剤以外に、酸化剤、触媒および有機酸の1種以上をさらに含むことができる。
【0049】
酸化剤
【0050】
酸化剤は、タングステンパターンウエハを酸化させてタングステンパターンウエハの研磨を容易にさせることができる。
【0051】
酸化剤の例としては、無機過化合物、有機過化合物、臭素酸またはその塩、硝酸またはその塩、塩素酸またはその塩、クロム酸またはその塩、ヨウ素酸またはその塩、鉄またはその塩、銅またはその塩、希土類金属酸化物、遷移金属酸化物、重クロム酸カリウム等を挙げることができ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。ここで、「過化合物」は、一つ以上の過酸化基(-O-O-)を含むか、最高酸化状態の元素を含む化合物を意味し得る。一具体例によると、酸化剤は過化合物(例えば、過酸化水素、過ヨウ素化カリウム、過硫酸カルシウム、フェリシアンカリウム等)を含むことができる。別の具現例によると、酸化剤は過酸化水素であり得るが、これに限定されるものではない。
【0052】
酸化剤は、CMPスラリー組成物中、例えば約0.01重量%~20重量%、別の例を挙げると約0.05重量%~10重量%、また別の例を挙げると約0.1重量%~5重量%で含まれ得、前記範囲でタングステンパターンウエハの研磨速度を向上させることができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
触媒
【0054】
触媒は、タングステンパターンウエハの研磨速度を向上させることができ、その例としては、鉄イオン化合物、鉄イオンの錯化合物、その水和物等を挙げることができる。
【0055】
鉄イオン化合物は、例えば、鉄3価陽イオン含有化合物を含むことができる。鉄3価陽イオン含有化合物は、鉄3価陽イオンが水溶液状態でフリー陽イオンで存在する化合物であれば、特に制限されず、これらの例としては、塩化鉄(FeCl3)、硝酸鉄(Fe(NO3)3)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
鉄イオン錯化合物は、例えば、鉄3価陽イオン含有錯化合物を含むことができる。鉄3価陽イオン含有錯化合物は、鉄3価陽イオンが水溶液状態で、例えば、カルボン酸類、リン酸類、硫酸類、アミノ酸類、及びアミン類の1種以上の官能基を有する有機化合物または無機化合物と反応して形成された化合物を含むことができる。前記有機化合物または無機化合物の例としては、シトレート、アンモニウムシトレート、パラトルエンスルホン酸(pTSA)、PDTA(1,3-propylenediaminetetraacetic acid)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、DTPA(diethylenetriaminepentaacetic acid)、NTA(nitrilotriacetic acid)、EDDS(ethylenediamine-N,N'-disuccinic acid)等を挙げることができる。鉄3価陽イオン含有錯化合物の具体例としては、クエン酸鉄(ferric citrate)、クエン酸鉄のアンモニウム塩(ferric ammonium citrate)、Fe(III)-pTSA、Fe(III)-PDTA、Fe(III)-EDTA等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
触媒、例えば、鉄イオン化合物、鉄イオンの錯化合物、及びその水和物の1種以上は、CMPスラリー組成物中、例えば約0.001重量%~10重量%、別の例を挙げると約0.001重量%~5重量%、また別の例を挙げると約0.001重量%~1重量%、また別の例を挙げると約0.001重量%~0.5重量%で含むことができ、前記範囲でタングステンパターンウエハの研磨速度を向上させることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
有機酸
【0059】
有機酸は、CMPスラリー組成物のpHを安定して保つことができる。有機酸の例としては、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸等のカルボキシ酸や、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アルギニン、システイン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、リジン等のアミノ酸を挙げることができる。
【0060】
有機酸は、CMPスラリー組成物中、例えば約0.001重量%~20重量%、別の例を挙げると約0.01重量%~10重量%、また別の例を挙げると約0.01重量%~5重量%、また別の例を挙げると約0.01重量%~1重量%で含むことができ、前記範囲でCMPスラリー組成物のpHを安定して保つことができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
CMPスラリー組成物は、pHが約4~7、例えば約4超過~7、別の例を挙げると約4~6、また別の例を挙げると約4超過~6、また別の例を挙げると約4.5~6、また別の例を挙げると約4.5超過~6、また別の例を挙げると約5~6であり得る。本発明は、上述の改質されたシリカを研磨剤として使用することにより、従来の強酸性に比べて弱酸性のpHで高いタングステンパターンウエハの研磨速度を具現することができる。
【0062】
CMPスラリー組成物は、前記pHを合わせるために、pH調節剤をさらに含むことができる。
【0063】
pH調節剤
【0064】
pH調節剤としては、無機酸、例えば硝酸、リン酸、塩酸、及び硫酸の一つ以上を含むことができ、有機酸、例えばpKa値が約6以下の有機酸として、例えば酢酸、及びフタル酸の1種以上を含むことができる。pH調節剤は、塩基、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムの1種以上を含むことができる。
【0065】
CMPスラリー組成物は、上述の成分以外にも、必要に応じて、殺生物剤、界面活性剤、分散剤、改質剤、表面活性剤等の通常の添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、前記組成物中、例えば約0.001重量%~5重量%、別の例を挙げると約0.001重量%~1重量%、また別の例を挙げると約0.001重量%~0.5重量%で含むことができ、前記範囲で研磨速度に影響を及ぼさないと共に、添加剤の効果を具現することができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
他の側面によると、タングステンパターンウエハの研磨方法が提供される。前記研磨方法は、上述のタングステンパターンウエハ研磨用CMPスラリー組成物を使用してタングステンパターンウエハを研磨する段階を含むことができる。
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が限定されると解釈してはならない。
【0068】
実施例
【0069】
下記実施例と比較例で使用した成分の具体的な仕様は次の通りである。
【0070】
(1)改質前の研磨剤:平均粒径(D50)が120nmのコロイダルシリカ(PL-7,Fuso社)
【0071】
(2)pH調節剤:硝酸またはアンモニア水
【0072】
実施例1
【0073】
前記改質前の研磨剤の固形分含量当り0.04mmolに該当するトリメトキシシリルプロピル変性ポリエチレンイミン(Trimethoxysilylpropyl Modified Polyethylenimine,50% In Isopropanol,Product Code:SSP-060,Gelest)と前記改質前の研磨剤を混合し、pH2.5条件で25℃で72時間反応させて、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカ(平均粒径(D50):125nm)を製造した。
【0074】
CMPスラリー組成物の総重量に対して、研磨剤として前記で製造された改質されたシリカ1.5重量%、触媒としてFe(III)-EDTA 0.01重量%、有機酸として酢酸0.15重量%、残りは溶媒として脱イオン水を含ませてCMPスラリー組成物を製造した。CMPスラリー組成物に対してpH調節剤を使用してpH5.5に調節した。その後、酸化剤として過酸化水素0.3重量%を添加した。
【0075】
実施例2
【0076】
トリメトキシシリルプロピル変性ポリエチレンイミンの代わりに、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン([3-(2,3-epoxypropoxy)propyl]trimethoxysilane(EPO,98% purity,Sigma-Aldrich))1.0mmolと、超分岐ポリエチレンイミン(Hyperbranched polyethyleneimine(PEI,Mw=60,000,Sigma-Aldrich))3.0mmolをトルエン150mLに溶かして80℃で24時間撹拌した後、減圧乾燥して製造したポリエチレンイミン由来のアミノシランを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によりCMPスラリー組成物を製造した。
【0077】
比較例1
【0078】
研磨剤として改質前の研磨剤を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によりCMPスラリー組成物を製造した。
【0079】
比較例2
【0080】
トリメトキシシリルプロピル変性ポリエチレンイミンの代わりに、アミノプロピルトリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane 99%,Sigma-Aldrich)を使用してシリカを改質したことを除いては、実施例1と同じ方法によりCMPスラリー組成物を製造した。
【0081】
比較例3
【0082】
pH調節剤を使用してCMPスラリー組成物のpHを3.9に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施してCMPスラリー組成物を製造した。
【0083】
比較例4
【0084】
pH調節剤を使用してCMPスラリー組成物のpHを7.1に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法を実施してCMPスラリー組成物を製造した。
【0085】
実施例および比較例で製造したタングステン研磨用CMPスラリー組成物に対して、下記の研磨評価条件により研磨評価を行い、その結果を下記表1に示した。
【0086】
[研磨評価条件]
【0087】
1.研磨機:Reflexion LK 300mm(AMAT社)
【0088】
2.研磨条件
-研磨パッド:VP3100/Rohm and Haas社
-Head速度:35rpm
-Platen速度:33rpm
-研磨圧力:1.5psi
-Retainer Ring Pressure:8psi
-スラリー流量:250ml/分
-研磨時間:60秒
【0089】
3.研磨対象
-商業的に入手可能なタングステンパターンウエハ(MIT 854,300mm)を使用
-タングステン研磨用CMPスラリーSTARPLANAR7000(サムスンSDI社)と脱イオン水を1:2の重量比で混合した後、作られた混合液に対して前記混合液の重量の2%に該当する過酸化水素を追加した混合液で前記タングステンパターンウエハをReflexion LK300mm研磨機でIC1010/SubaIV Stacked(Rodel社)研磨パッドを使用して、Head速度101rpm、Platen速度33rpm、研磨圧力2psi、Retainer Ring Pressure 8psi、混合液流量250ml/分の条件で60秒間1次研磨した。これにより、タングステン金属膜層を除去して酸化物/金属パターンが表に現れるようにした。
【0090】
4.分析方法
-研磨速度(単位:Å/分):タングステン金属膜の研磨速度は、前記研磨条件で評価時に研磨前後の膜厚の差を電気抵抗値から換算して求めた。絶縁層膜の研磨速度は、前記研磨条件として評価時の研磨前後の膜厚の差を光干渉厚さ測定器(Reflectometer)で換算して求めた。
-平坦性(エロージョン,単位:Å):前記研磨条件を用いて実施例および比較例で製造したCMPスラリー組成物で研磨した後、パターンのプロファイルをInSight CAP Compact Atomic Profiler(bruker社)で測定した。エロージョンは、研磨したウエハの0.18/0.18μmパターン領域でperi oxideとcell oxideの高さの差で計算した。スキャン速度は、100μm/秒、スキャン長さは2mmにした。
【0091】
【0092】
前記表1から確認できるように、ポリエチレンイミン由来のアミノシランで改質されたシリカを含み、pHが本発明の範囲内に属する実施例1及び2のCMPスラリー組成物を使用してタングステンパターンウエハを研磨する場合は、そうでない比較例1~4に比べて研磨速度および平坦性に優れた。
【0093】
これまで、本発明に対して実施例を中心に検討した。本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形した形態で具現できることを理解すると考える。そのため、開示した実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮しなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に記載しており、その同等な範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれると解釈しなければならない。