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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065557
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】乾燥水産練り製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20220420BHJP
【FI】
A23L17/00 101C
A23L17/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174224
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田森 はる香
(72)【発明者】
【氏名】山田 真椰
【テーマコード(参考)】
4B034
【Fターム(参考)】
4B034LB03
4B034LK29X
4B034LP14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、復元後の食感が、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の良好な食感を有する、乾燥水産練り製品を提供する。
【解決手段】膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉を含む、乾燥水産練り製品による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉を含むことを特徴とする乾燥水産練り製品。
【請求項2】
前記架橋澱粉が固形分として24~40重量%含まれることを特徴とする請求項1記載の乾燥水産練り製品。
【請求項3】
前記乾燥水産練り製品がイカ、タコまたは貝の何れか1つを少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2記載の乾燥水産練り製品。
【請求項4】
水産物と、
膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉と、を混合し、練り生地を作製する工程と、
作製した前記練り生地を成形する工程と、
成型した前記練り生地を加熱する工程と、
加熱した前記練り生地を所定の形状に切断する工程と、
切断した前記練り生地を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする乾燥水産練り製品の製造方法。
【請求項5】
前記架橋澱粉が、固形分として前記乾燥水産練り製品中に24~40重量%含まれることを特徴とする請求項4記載の乾燥水産練り製品。
【請求項6】
前記水産物が、イカ、タコまたは貝の何れか1つを少なくとも含むことを特徴とする請求項4または5記載の乾燥水産練り製品。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、即席食品などの具材として使用される乾燥水産加工品としては、乾燥カマボコなどの練り製品の他に、イカやタコ、貝などの水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物が用いられている。イカやタコ、貝などの水産物をそのまま使用する場合、見た目や形状などの規格が合わないことを理由に廃棄されることがある。近年、水産資源の減少が問題となっており、持続的に成長可能な社会の実現のため、水産資源の有効利用することが求められている。しかしながら、イカやタコ、貝などの水産物は、独特の食感を有しているため、カマボコのような乾燥水産練り製品として、擂り身などにしてから成形し、乾燥して、復元しても乾燥水産物様の良好な食感が得られにくいといった課題があった。
【0003】
カマボコなどの水産練り製品の品質改良剤としては、特許文献1~3の技術が知られている。特許文献1には、優れた弾力性、ゼリー強度、保水性および安定性を有する水産練り製品を製造する方法として、架橋度0.01~1.0であり、膨潤度1.5~9.5ml、好ましくは架橋度0.02~0.8であり、膨潤度が2.4~9.0mlの架橋エーテル化澱粉および架橋エステル化澱粉の少なくとも1種を添加することを特徴とする水産練り製品の製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献1の方法が、水産練り物の食感改善方法としては優れた方法であるが、即席食品などの具材として使用される乾燥水産練り製品で使用した場合は、十分な食感改善効果は得られなかった。
【0004】
また、特許文献2には、馬鈴薯澱粉等を用いた水産練製品に比べても遜色ないかまたはそれ以上に食感等が向上した改良したタピオカ澱粉を用いた水産練製品として、6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が800BU以上であり且つ該ピーク粘度からボトム粘度を差し引いたブレークダウンが150~500BUであるエステル化タピオカ澱粉であって、タピオカ澱粉、リン酸架橋タピオカ澱粉及びアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉からなる群から選ばれた1種又は2種以上の該エステル化タピオカ澱粉を含有することを特徴とする水産練製品が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載された澱粉を使用しても即席食品などの具材として使用される乾燥水産練り製品においては、十分な食感改善効果は得られないと考える。
【0005】
また、特許文献3には、化学的に合成された澱粉を使用することなく、耐熱性、煮込み耐性、冷凍耐性、経時安定性、食感及び風味に優れた水産練り製品として、湿熱処理タピオカ澱粉を含有する水産練り製品であって、湿熱処理タピオカ澱粉が、固形分濃度6.0重量%でアミログラフ測定する場合の50℃から95℃までの昇温時のピーク粘度と95℃達温時の粘度の差が200BU以下であることを特徴とする、水産練り製品が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載された澱粉も即席食品などの具材として使用される乾燥水産練り製品で使用した場合は、十分な食感改善効果は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭61-36898号公報
【特許文献2】特許第5770545号公報
【特許文献3】特許第5425334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、復元後の食感が、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の良好な食感を有する乾燥水産練り製品提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、イカやタコ、貝などの水産物をカットしてそのまま乾燥し使用していた乾燥水産物を製造ロス削減のため、水産物を擂り潰して成形した練り物を乾燥することで、規格外原材料や端物を使用し、ロスを削減する方法を検討した。しかしながら、単純に擂り潰して成形し、乾燥するだけでは、カマボコのような練り物の食感となるだけで、イカやタコ、貝などの水産物が本来持つ弾力のある食感が再現できなかった。そこで鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0009】
すなわち、膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉を含むことを特徴とする乾燥水産練り製品である。
【0010】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品には、架橋澱粉が固形分含量として24~40重量%含まれることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品は、イカやタコ貝などの乾燥水産物の代替として使用することが好ましく、水産物中にイカ、タコまたは貝の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品の製造方法としては、水産物と、膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉と、を混合し、練り生地を作製する工程と、作製した練り生地を成形する工程と、成型した練り生地を加熱する工程と、加熱した練り生地を所定の形状に切断する工程と、切断した練り生地を乾燥する工程と、を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品の製造方法においては、架橋澱粉が、固形分として乾燥水産練り製品中に24~40重量%含まれることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品は、イカやタコ、貝などの乾燥水産物の代替として使用することが好ましく、本発明に係る乾燥水産練り製品の製造方法においては、水産物中にイカ、タコまたは貝の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、復元後の食感が、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の良好な食感を有する乾燥水産練り製品を提供するができる。また、本発明により、通常使用していなかった規格外品や乾燥水産物を切断した端物なども再利用でき、製造ロスが削減でき、水産資源の有効利用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0017】
1.原材料
本発明に係る乾燥水産練り製品の原材料としては、水産物としてタラ、タイ、マグロ、サケなどの魚類の魚肉や、イカ、タコなどの頭足類の胴や足などの可食部、ホタテ貝やイタヤ貝などの貝柱、カニ・エビなどの節足類のむき身などが使用できる。水産物は擂り身として使用するため、形状などの規格は特に限定なく、また、乾燥水産物の製造において発生した端物を再利用することもできる。
【0018】
本発明においては、イカやタコなどの頭足類、ホタテ貝やイタヤ貝など貝類の乾燥水産物が独特の食感を有するものを対象として、乾燥水産物様の食感を有する乾燥水産練り製品を製造することが好ましい。本発明に係る乾燥水産練り製品は、目的とする乾燥水産物に使用されている水産物を使用するだけでなく、風味に影響が無くボディー感を出すためにタラやタイなどの白身魚の魚肉を使用することが好ましい。本発明に係る水産物の使用量としては、後述する練り生地中に50~75重量%となるように添加することが好ましい。少なすぎると水産物様の風味が弱くなり、多すぎると食感改良のための澱粉の添加が少なくなる。
【0019】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品の原材料としては、 膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉を使用する。
【0020】
従来より、特許文献1及び特許文献3に記載されているように低膨潤性のリン酸架橋澱粉や湿熱処理澱粉が水産練り製品に品質改良剤として使用されてきたが、これらの従来技術では、乾燥水産練り製品では、食感改善効果は不十分であり、復元してもカマボコ様の練り物としての食感しか得られず、復元後にイカやタコ、ホタテ貝やイタヤ貝などの乾燥水産物様の独特の食感を得ることができない。本発明に係る架橋澱粉のように極度に膨潤が抑制され且つ粘度発現がほとんどない澱粉を用いることにより、はじめて乾燥水産練り製品において、イカやタコ、ホタテ貝やイタヤ貝などの乾燥水産物様の独特の食感を得ることができる。
【0021】
本発明に係る膨潤度の測定方法としては、特許文献1に記載された方法により測定することができる。また、本発明に係る固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度については、特許文献3の方法に従って測定することができる。
【0022】
また、本発明に係る乾燥水産練り製品に使用する架橋澱粉の澱粉の種類としては、特に限定はなく、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉など各種澱粉のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉を使用することができる。リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の方がリン酸架橋澱粉よりもお湯で復元した際の舌ざわりがよく好ましい。
【0023】
また、これらの架橋澱粉の添加量としては、後述する乾燥水産練り製品の練り生地中に10~20重量%、乾燥後の乾燥水産練り製品中に固形分含量として24~40重量%含まれることが好ましい。架橋澱粉の添加量が少なくなると、復元後の食感がカマボコ様の食感となり、添加量が多くなると硬くなる。
【0024】
その他の原材料として、擂り身の作製や味付けのために使用する食塩や、グルタミン酸ソーダ、アルギニン、アラニンなどのアミノ酸類、香料などの風味成分、大豆蛋白、卵白、メチルセルロースなどの結着材、本発明に係る架橋澱粉以外の各種澱粉、食用油脂、増粘剤、乳化剤、カルシウム塩などの食感改良剤、色素などを適宜使用することができる。風味成分は後述する練り生地中に3~10重量%程度、結着剤や食感改良剤は後述する練り生地中に5~15重量%程度添加することが好ましい。特に、本発明に係る架橋澱粉自体には、生地を保形する機能がないため、保形性を出すために卵白粉や大豆蛋白、メチルセルロースを添加することが好ましい。
【0025】
2.練り生地作製
本発明に使用する原材料を混合して練り生地を作製する。練り生地の作製方法としては、水産物をサイレントカッターなどにより擂り潰して擂り身を作製し、作製した擂り身に香料やアミノ酸などを混合し、サイレントカッターなどで撹拌した後、卵白、本発明に係る架橋澱粉などの粉体物を添加して、粉体物が均質に混ざるようにさらに撹拌して練り生地を作製する。水産物は予め擂り身となったものを使用してもよい。
【0026】
3.加熱工程
作製した練り生地は成形し、加熱し、タンパク質を変性させ、保形及び殺菌する。加熱方法は特に限定はなく、ボイル、スチーム、焼成などの方法により、練り生地中に含まれる水産物由来のタンパク質や卵白などが凝固すればよい。また、加熱方法は1つに限らず、例えばボイルした後にスチームしたり、スチームした後に焼成することもできる。好ましくは、加熱工程により練り生地中の中心温が70~80℃となるまで加熱することが好ましく、そうすることで生地中のタンパク質が加熱凝固するだけでなく、殺菌される。
【0027】
また、着色剤は、練り生地作製時に添加してもよいが、加熱工程の前後に成形した生地の表面に塗布することで、外観を目的とする乾燥水産物様に似せることができる。
【0028】
4.切断
加熱した練り生地は、所定の形状に切断する。切断方法は特に限定はなく、スライサーや包丁を用いて切断すればよい。形状にも特に限定はなく、1~3mm厚の扁平状のスライス形状や5~15mm角のダイズ形状などの形状が挙げられる。このとき、加熱した練り生地を一度凍結しておくことにより、切断時に形状が壊れることが少なくなる。凍結方法は特に限定はなく、従来技術を適用することができる。例えば、エアブラスト式のトンネルフリーザー、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザーや急速凍結庫、ブライン式のフレキシブルフリーザー等の商業用の凍結装置だけでなく、一般的な業務用、家庭用の冷凍庫も適用できる。冷凍は、例えば約-35℃の急速凍結庫を利用して急速凍結してもよく、業務用の-18℃の冷凍庫に入れて凍結させてもよい。冷凍した練り生地は、使用されるまで-18℃の冷凍庫で保存することができる。
【0029】
5.乾燥工程
切断した練り生地を乾燥し、乾燥水産練り製品とする。乾燥方法は特に限定はなく、熱風乾燥、真空凍結乾燥、マイクロ波乾燥などの各種乾燥手段により水分が10重量%以下となるように乾燥すればよい。熱風乾燥の場合は、50~150℃の熱風で30分~2時間乾燥することが好ましい。通常、熱風乾燥は、乾燥と同時にタンパク質が収縮するため、乾燥後の乾燥水産練り製品の固形分の密度が高くなり、復元時の吸水性は、他の乾燥方法に劣るが、本発明に係る乾燥水産練り製品においては、かえって都合がよく、良好な硬さや弾力のある食感が得られやすくなる。
【0030】
以上のように、膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の少なくとも1つの架橋澱粉を乾燥水産練り製品に使用することで、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、復元後の食感が、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の良好な食感を有する乾燥水産練り製品を提供することができる。
【0031】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例0032】
<実験1>澱粉の検討
下記表1に示した資材を、記載の配合割合となるように、スケソウダラ擂り身、イカ擂り身をサイレントカッターに入れ撹拌しながら、次いで食塩を入れ撹拌し、混ざったところで、サラダ油と乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)を添加し、撹拌して混ざったところで、塩化カルシウム、アルギニン、グルタミン酸ソーダ、アラニン、核酸を混ぜた粉体物を添加し、撹拌して混ざったところで、卵白粉、下記表2記載の試験例1~13の各種澱粉を粉体混合したものを添加し、撹拌して均質な生地となったところで撹拌をやめ、乾燥水産練り製品用の練り生地とした。なお、試験例1~13に記載された澱粉は、1:NOVELOSE(登録商標) W(イングレディオン社)、2:パインスターチRT(松谷化学工業社)、3:パインベーク(登録商標)CC(松谷化学工業社)、4:フードスターチNE-1(松谷化学工業社)、5:SF-1900(昭和産業社)、6:松谷ゆり8(松谷化学工業社)、7:松谷ゆうがお(松谷化学工業社)、8:松谷はまゆり(松谷化学工業社)、9:松谷華(松谷化学工業社)、10:WMS(松谷化学工業社)、11:SMS747(松谷化学工業社)、12:エマルスター(登録商標)1(松谷化学工業社)、13:特許文献3の製法に従って作製した湿熱処理澱粉、をそれぞれ使用した。
【0033】
作製した練り生地をφ20mm、長さ20cm程度の円柱形状に成形し、95℃で1分間ボイルした後、80℃で10分間スチームし、冷却した後、-35℃の急送凍結庫でし、スライサーで厚み1.5mmとなるように切断した。切断した生地を65℃風速2m/sで1~2時間水分が10重量%±0.5重量%となるように乾燥し、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)サンプルとした。
【0034】
試験例1~13について、10人の熟練パネラーによる官能評価を行った。官能評価については、各試験区の乾燥水産練り製品サンプル5gを紙製のカップに入れ、沸騰水100gを入れ、蓋をして3分間静置し、3分後に喫食し、評価を行った。評価項目は、硬さ、弾力、歯切れについて総合的に評価し、乾燥イカ様の食感があり非常に良好なものを5、良好なものを4、概ね可なものを3、劣るものを2、著しく劣るものを1とした。
【0035】
また、各試験区の澱粉については、膨潤度、固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度について測定を行った。測定方法は、特許文献1及び特許文献3に記載された方法に従って行った。
【0036】
各試験区の膨潤度、固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析におけるピーク粘度、官能評価結果を下記に表2に示す。また、官能評価におけるコメントを表3に示す
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
実験1の試験例1~13の結果より、試験例1及び2の膨潤度が1ml以下且つ固形分濃度6質量%でのアミログラフィー分析においてピーク粘度が10BU以下のリン酸架橋澱粉またはリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉を用いることにより、カマボコ様の練り物っぽい柔らかく、グリグリとした弾力がありつつも、歯切れのよい食感ではなく、全体的に密度感のある硬さがあり、グリグリとした弾力が抑えられ、カマボコ様の歯切れの良さがなく、イカ様の噛むたびに繊維組織が残るような繊維感のある食感となった。試験例1と試験例2では、試験例1のリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の方が食感もよく、粉っぽさも少ないため、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の方が良好な結果となった。
【0041】
それに対し、特許文献1や特許文献3などに記載されている澱粉や通常の水産練り物の食感改良に使用されている他のリン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸リン酸架橋澱粉、湿熱処理澱粉では、カマボコっぽい食感を感じるため、乾燥水産練り製品における食感改良効果は弱い結果となった。特に、アミログラフィー分析により粘度をほとんど示さない試験例3、4の澱粉やブレークダウンを示さない試験例3~5、7~11、13の澱粉であっても、膨潤度が1ml以下でなければ、乾燥水産練り製品では、良好な食感改善効果は得られなかった。また、特許文献2に記載されている澱粉については、検証できなかったが、アミログラフィーのピーク粘度の値からして、恐らく、乾燥水産練り製品(乾燥イカ様練り製品)においては、食感改良効果は弱いと考える。
【0042】
<実験2>澱粉の添加量について
試験例1で使用したリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉を使用し、下記表4のように
練り生地の配合を変更して乾燥水産練り製品を作製し、実験1同様に評価を行った。評価
結果についても表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
実験2で示すように澱粉の添加量が少なくなると、生地中の水産物の添加量が多くな
り、風味や舌触りが良くなるが、カマボコ様の食感に近くなる傾向がある。逆に澱粉の
添加量が多くなると、生地中の水産物の添加量が少なくなり、風味や澱粉由来のザラツキ
による舌ざわりが悪く、硬くなる傾向がある。よって好ましい澱粉の添加量としては、練
り生地中に10~20重量%、乾燥水産練り製品中に固形分含量として24~40重量%
含まれることが好ましいと考える。

【手続補正書】
【提出日】2021-09-03
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、湯かけ調理などで復元可能な即席食品などで使用される乾燥水産練り製品において、復元後の食感が、水産物をそのまま乾燥した乾燥水産物様の良好な食感を有する乾燥水産練り製品提供することを目的とする。