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特開2022-67490信号処理方法、信号処理装置、放射線検出装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067490
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】信号処理方法、信号処理装置、放射線検出装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/36 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
G01T1/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176223
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】枝 直人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 聡史
(72)【発明者】
【氏名】松永 大輔
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA27
2G188BB03
2G188BB15
2G188CC28
2G188EE03
2G188EE06
2G188EE12
(57)【要約】
【課題】ノイズを効果的に抑制することができる信号処理方法、信号処理装置、放射線検出装置及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】複数のチャンネルを有するMCA(マルチチャンネルアナライザ)を用いて、放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする信号処理方法であって、階段波又はパルス波の波高の値と前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶しておき、階段波又はパルス波が得られた場合に、前記関係情報に従って、前記階段波又は前記パルス波の波高の値に応じたチャンネルで前記階段波又は前記パルス波をカウントする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルを有するMCA(マルチチャンネルアナライザ)を用いて、放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする信号処理方法であって、
階段波又はパルス波の波高の値と前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶しておき、
階段波又はパルス波が得られた場合に、前記関係情報に従って、前記階段波又は前記パルス波の波高の値に応じたチャンネルで前記階段波又は前記パルス波をカウントすること
を特徴とする信号処理方法。
【請求項2】
離散的な波高の値は、所定の第1量子化単位を間隔とした離散的な数値で表され、当該波高の値を含み前記第1量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第1範囲に対応しており、
前記複数のチャンネルは、夫々に、所定の第2量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第2範囲に対応しており、
前記関係情報は、
単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は前記単一のチャンネルでカウントすべきであることを記録し、
複数のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は、夫々のチャンネルが対応する第2範囲に前記第1範囲が含まれる割合の分だけ夫々のチャンネルでカウントすべきであることを記録していること
を特徴とする請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項3】
離散的な波高の値は、所定の第1量子化単位を間隔とした離散的な数値で表され、当該波高の値を含み前記第1量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第1範囲に対応しており、
前記複数のチャンネルは、夫々に、所定の第2量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第2範囲に対応しており、
前記関係情報は、
単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は前記単一のチャンネルでカウントすべきであることを記録し、
複数のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は前記複数のチャンネルのいずれか一つでカウントすべきであることと、前記複数のチャンネルが対応する第2範囲の夫々に前記第1範囲が含まれる割合に応じた閾値とを記録しており、
得られた階段波又はパルス波の波高の値について、前記関係情報に前記閾値が記録されている場合は、乱数を生成し、生成した乱数と前記閾値との比較に応じて、前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルを特定し、
前記閾値は、前記複数のチャンネルが対応する第2範囲の夫々に前記第1範囲が含まれる割合に応じた確率で、前記複数のチャンネルのいずれか一つが前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとして特定されるように、定められていること
を特徴とする請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項4】
放射線が検出された時刻を種として乱数を生成すること
を特徴とする請求項3に記載の信号処理方法。
【請求項5】
放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする信号処理装置であって、
複数のチャンネルを有するMCAと、
階段波又はパルス波の波高の値と前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶する記憶部と、
階段波又はパルス波が得られた場合に、前記関係情報に従って、前記階段波又は前記パルス波の波高の値に応じたチャンネルで前記階段波又は前記パルス波をカウントするように前記MCAを制御する制御部と
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
放射線検出時に放射線のエネルギーに応じた階段波を出力する放射線検出器と、
前記階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする請求項5に記載の信号処理装置と、
前記階段波又は前記パルス波の波高及びカウント数に応じて、放射線のスペクトルを生成するスペクトル生成部と
を備えることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項7】
離散的な数値で表された、放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波の波高の値と、MCAが有する複数のチャンネルの中で前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報に従って、取得された階段波又はパルス波の波高の値に応じて、前記階段波又は前記パルス波をどのチャンネルでカウントすべきかを特定し、
前記MCAに、前記階段波又は前記パルス波を特定したチャンネルでカウントさせる
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の検出によって発生する信号を処理するための信号処理方法、信号処理装置、放射線検出装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー分散型の放射線検出装置は、放射線検出器と、放射線検出器が出力する信号を処理する信号処理装置とを備えている。放射線検出器は、半導体放射線検出素子等を用いて構成されており、放射線が検出される都度、階段波を出力する。信号処理装置は、階段波の波高、又は階段波を変換したパルス波の波高を測定する。階段波又はパルス波の波高は放射線のエネルギーに対応する。信号処理装置は、波高別に階段波又はパルス波をカウントすることにより、エネルギー別に放射線をカウントする。
【0003】
信号処理装置では、階段波又はパルス波はA/D(アナログ/デジタル)変換され、波高の値は、特定の量子化単位に応じた離散的な数値で表される。階段波又はパルス波のカウントは、MCA(マルチチャンネルアナライザ)を用いて行われる。MCAは、夫々に波高(即ち、放射線のエネルギー)が対応する複数のチャンネルを備え、各チャンネルは対応する波高の階段波又はパルス波をカウントする。波高とチャンネルとの対応関係によっては、カウントされる放射線のエネルギーに偏りが生じることがある。
【0004】
例えば、波高の値が0~4の五種類の整数の何れかで表され、MCAがch0、ch1及びch2の三つのチャンネルを備えるとする。波高の値に3/5を乗じた値が0以上1未満の場合にch0がカウントを行い、1以上2未満の場合にch1がカウントを行い、2以上3未満の場合にch2がカウントを行うとする。階段波又はパルス波は、波高の値が0又は1である場合にch0でカウントされ、波高の値が2又は3である場合にch1でカウントされ、波高の値が2である場合にch2でカウントされる。ch0及びch1はch2に比べてカウント数が多くなる。この結果、ch0及びch1に対応するエネルギーを有する放射線は多くカウントされ、ch2に対応するエネルギーを有する放射線は少なくカウントされる。このため、放射線のエネルギーとカウント数との関係を表すスペクトルを生成した際に、スペクトルに周期的なノイズが発生する。特許文献1には、このようなノイズを低減するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5796556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、カウントされる放射線のエネルギーの偏りに起因するノイズを十分に除去することはできない。放射線検出器を大型化した場合等、放射線の検出効率を向上させた場合は、ノイズの影響が大きくなる。このため、放射線検出装置の性能を向上させるためには、ノイズをより効果的に抑制することができる技術が必要となる。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ノイズを効果的に抑制することができる信号処理方法、信号処理装置、放射線検出装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る信号処理方法は、複数のチャンネルを有するMCA(マルチチャンネルアナライザ)を用いて、放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする信号処理方法であって、階段波又はパルス波の波高の値と前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶しておき、階段波又はパルス波が得られた場合に、前記関係情報に従って、前記階段波又は前記パルス波の波高の値に応じたチャンネルで前記階段波又は前記パルス波をカウントすることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る信号処理方法は、離散的な波高の値は、所定の第1量子化単位を間隔とした離散的な数値で表され、当該波高の値を含み前記第1量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第1範囲に対応しており、前記複数のチャンネルは、夫々に、所定の第2量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第2範囲に対応しており、前記関係情報は、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は前記単一のチャンネルでカウントすべきであることを記録し、複数のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は、夫々のチャンネルが対応する第2範囲に前記第1範囲が含まれる割合の分だけ夫々のチャンネルでカウントすべきであることを記録していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る信号処理方法は、離散的な波高の値は、所定の第1量子化単位を間隔とした離散的な数値で表され、当該波高の値を含み前記第1量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第1範囲に対応しており、前記複数のチャンネルは、夫々に、所定の第2量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第2範囲に対応しており、前記関係情報は、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は前記単一のチャンネルでカウントすべきであることを記録し、複数のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、階段波又はパルス波は前記複数のチャンネルのいずれか一つでカウントすべきであることと、前記複数のチャンネルが対応する第2範囲の夫々に前記第1範囲が含まれる割合に応じた閾値とを記録しており、得られた階段波又はパルス波の波高の値について、前記関係情報に前記閾値が記録されている場合は、乱数を生成し、生成した乱数と前記閾値との比較に応じて、前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルを特定し、前記閾値は、前記複数のチャンネルが対応する第2範囲の夫々に前記第1範囲が含まれる割合に応じた確率で、前記複数のチャンネルのいずれか一つが前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとして特定されるように、定められていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る信号処理方法は、放射線が検出された時刻を種として乱数を生成することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る信号処理装置は、放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする信号処理装置であって、複数のチャンネルを有するMCAと、階段波又はパルス波の波高の値と前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶する記憶部と、階段波又はパルス波が得られた場合に、前記関係情報に従って、前記階段波又は前記パルス波の波高の値に応じたチャンネルで前記階段波又は前記パルス波をカウントするように前記MCAを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る放射線検出装置は、放射線検出時に放射線のエネルギーに応じた階段波を出力する放射線検出器と、前記階段波又は前記階段波を変換したパルス波を、離散的な数値で表された波高の値に応じてカウントする本発明に係る信号処理装置と、前記階段波又は前記パルス波の波高及びカウント数に応じて、放射線のスペクトルを生成するスペクトル生成部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るコンピュータプログラムは、離散的な数値で表された、放射線の検出に応じた階段波又は前記階段波を変換したパルス波の波高の値と、MCAが有する複数のチャンネルの中で前記階段波又は前記パルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報に従って、取得された階段波又はパルス波の波高の値に応じて、前記階段波又は前記パルス波をどのチャンネルでカウントすべきかを特定し、前記MCAに、前記階段波又は前記パルス波を特定したチャンネルでカウントさせる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
本発明の一形態においては、放射線の検出により得られた階段波又は階段波を変換したパルス波を、複数のチャンネルを有するMCAを用いてカウントする。階段波又はパルス波の波高の値と階段波又はパルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報に従って、波高の値に応じたチャンネルで階段波又はパルス波がカウントされる。各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制するように関係情報が定められることにより、検出されカウントされる放射線のエネルギーの偏りが抑制される。
【0016】
本発明の一形態においては、離散的な波高の値は、当該波高の値を含み第1量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第1範囲に対応している。複数のチャンネルは、夫々に、所定の第2量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第2範囲に対応している。単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値に関して、そのチャンネルで階段波又はパルス波がカウントされる。複数のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値に関しては、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合の分だけ夫々のチャンネルで階段波又はパルス波がカウントされる。各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性が解消され、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが解消される。
【0017】
本発明の一形態においては、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値に関して、そのチャンネルで階段波又はパルス波がカウントされる。複数のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値に関しては、乱数と閾値との比較結果に応じて、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合に応じた確率で、いずれか一つのチャンネルで階段波又はパルス波がカウントされる。各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性が解消される。また、1未満のカウント数でカウントを行う必要が無いので、MCAの機能が複雑化することが防止される。
【0018】
本発明の一形態においては、乱数は、放射線が検出された時刻を種として生成される。放射線が検出される事象は完全にランダムに発生するので、放射線が検出された時刻を種とすることにより、容易に乱数が生成され得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、カウントされる放射線のエネルギーの偏りに起因して放射線のスペクトルに含まれるノイズを、効果的に抑制することができる。このため、放射線検出装置の性能を効果的に向上させることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る放射線検出装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】階段波及びパルス波の例を示す模式的特性図である。
図3】実施形態1に係る、離散的な波高の値に対応する第1範囲と複数のチャンネルに対応する第2範囲との関係の例を示す概念図である。
図4】実施形態1に係る関係情報の内容例を示す概念図である。
図5】信号処理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態2に係る、離散的な波高の値に対応する第1範囲と複数のチャンネルに対応する第2範囲との関係の例を示す概念図である。
図7】実施形態2に係る関係情報の内容例を示す概念図である。
図8】実施形態3に係る、離散的な波高の値と、MCAが有する複数のチャンネルとの関係の例を示す概念図である。
図9】実施形態3に係る関係情報の内容例を示す概念図である。
図10】実施形態4に係るカウント部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る放射線検出装置10の機能構成を示すブロック図である。例えば、放射線はX線である。例えば、放射線検出装置10は、蛍光X線分析装置である。放射線検出装置10は、放射線検出器1と、信号処理装置2と、分析部3とを備えている。放射線検出器1は、放射線検出素子11と、プリアンプ12とを備えている。放射線検出素子11は、入射した放射線のエネルギーに応じた電荷を発生し、発生した電荷に応じた電流信号を出力する。例えば、放射線検出素子11は、SDD(Silicon Drift Detector)等の半導体放射線検出素子である。プリアンプ12は、放射線検出素子11が出力した電流信号を電圧信号へ変換し、放射線検出時に一段のステップ状に信号値が上昇する階段波を生成する。放射線検出器1は、プリアンプ12が生成した階段波を含む信号を出力する。
【0022】
放射線検出器1が出力した信号は、信号処理装置2へ入力される。信号処理装置2は、信号処理方法を実行する。信号処理装置2は、A/D(アナログ/デジタル)変換部21を備えている。A/D変換部21は、放射線検出器1から階段波を含む信号を入力され、階段波を含む信号をA/D変換する。A/D変換部21は、連続的な信号が入力され、信号をサンプリングし、サンプリングによって得られた値をA/D変換する。A/D変換部21は、A/D変換により、第1量子化単位を間隔とした離散的な信号値を生成する。第1量子化単位は予め定められている。例えば、信号値は第1量子化単位の倍数で表される。A/D変換部21がA/D変換した後の信号は、離散的で時系列的な信号値列から構成される信号となる。
【0023】
A/D変換部21には波形整形部22が接続されている。波形整形部22は、A/D変換部21から時系列的な信号値列から構成される信号を入力される。波形整形部22は、信号を所定のフィルタに通して、信号の波形を整形することにより、信号に含まれる階段波をパルス波へ変換する。波形整形部22が用いるフィルタは、例えば微分フィルタ又は台形整形フィルタである。波形整形部22での処理により、階段波がパルス波へ変換され、信号に含まれるノイズが低減され、所定の増幅が行われる。波形整形部22は信号を出力する。波形整形部22が出力する信号には、放射線検出器1での放射線の検出に応じて、パルス波が含まれる。
【0024】
図2は、階段波及びパルス波の例を示す模式的特性図である。図中の横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示している。図2Aは放射線検出器1が出力する階段波を含む信号を示している。放射線検出器1は、放射線を検出する都度、一段のステップ状に信号値が上昇する階段波を出力する。一回の放射線検出に応じて、信号値が一段のステップ状に上昇する一つの階段波が生成される。放射線検出器1が放射線を複数回検出した場合、複数の階段波を含む信号が出力される。放射線が検出される都度、信号値は上昇していく。信号値が上昇するステップの高さを階段波の波高とする。階段波の波高は、放射線のエネルギーに対応する。実際には、階段波は完全なステップ状ではなく、信号波形に立ち上がり及びなまりが含まれている。立ち上がりは、信号値が基準値から立ち上がる際の信号波形の歪みであり、なまりは、階段波が終了する際の信号波形の歪みである。
【0025】
図2Bは、図2Aに示す信号を波形整形部22で変換した信号を示す。階段波は、パルス波へ変換される。パルス波は、信号値がゼロになる所定の信号基準から信号値がピーク値まで上昇し、その後信号基準まで下降する信号である。信号基準は例えばゼロである。信号基準からピーク値までの高さをパルス波の波高とする。パルス波の波高は放射線のエネルギーに対応する。
【0026】
波形整形部22には、パルス検出部23及び波高測定部24が接続されている。波形整形部22は、パルス検出部23及び波高測定部24へ信号を入力する。パルス検出部23は、波形整形部22から信号を入力され、信号に含まれているパルス波を検出する。例えば、パルス検出部23は、信号値が所定の閾値を超過した場合に、パルス波を検出したと判定する。パルス検出部23は、波高測定部24に接続されている。パルス検出部23は、パルス波を検出した場合に、パルス波を検出したことを示す情報を波高測定部24へ入力する。
【0027】
波高測定部24は、波形整形部22から信号が入力され、パルス検出部23から信号にパルス波が含まれていることを示す情報が入力される。波高測定部24は、信号にパルス波が含まれていることを示す情報がパルス検出部23から入力された場合に、波形整形部22から入力された信号に含まれるパルス波の波高を測定する。
【0028】
波高測定部24には、カウント部25が接続されている。波高測定部24は、測定したパルス波の波高をカウント部25へ入力する。カウント部25は、MCA(マルチチャンネルアナライザ)を有しており、波高別にパルス波をカウントする。カウント部25がパルス波をカウントする方法は後述する。信号処理装置2は、パルス波の波高とカウント部25がカウントしたカウント数との関係を示すデータを出力する。カウント数は、パルス波の波高に対応するエネルギーを有する放射線を放射線検出器1が検出した回数に対応する。
【0029】
分析部3は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されている。分析部3は、信号処理装置2が出力したデータを入力される。分析部3は、パルス波の波高とカウント数との関係から、放射線検出器1が検出した放射線のエネルギーとカウント数との関係を表すスペクトルを生成する処理を行う。分析部3はスペクトル生成部に対応する。分析部3は、更に、生成した放射線のスペクトルに基づいて、放射線源の元素分析等の更なる処理を行ってもよい。例えば、放射線検出器1は蛍光X線を検出し、分析部3は、蛍光X線のスペクトルに基づいて、試料に含まれる元素の定性分析又は定量分析を行う。なお、信号処理装置2は、放射線のスペクトルを生成する機能をも有していてもよい。
【0030】
カウント部25においてパルス波をカウントする方法を説明する。カウント部25は、制御部251と、MCA252と、記憶部253とを有する。制御部251は、演算を行うプロセッサを用いてなり、MCA252を制御するための処理を実行する。MCA252は、夫々に異なる波高の値が対応する複数のチャンネルを含んでいる。記憶部253は、不揮発性である。例えば、記憶部253は、不揮発性の半導体メモリである。記憶部253は、波高の値とパルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶している。
【0031】
前述したように、信号値は第1量子化単位を間隔とした離散的な値であるので、波高の値も、第1量子化単位を間隔とした離散的な数値で表される。パルス波の離散的な波高の値は、夫々に、当該波高の値を含み第1量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第1範囲に対応している。離散的な波高の値は、対応する第1範囲に含まれるいずれかの値がA/D変換によって変換された値である。例えば、ある波高の値は、当該値以上、当該値に第1量子化単位を加算した値未満の第1範囲に対応している。第1範囲は、当該値を含み第1量子化単位の幅を有する範囲であれば、その他の範囲であってもよい。例えば、ある波高の値は、当該値から第1量子化単位の二分の一を減算した値以上、当該値に第1量子化単位の二分の一を加算した値未満に対応してもよい。
【0032】
MCA252が有する複数のチャンネルの夫々は、所定の第2量子化単位の幅を有する連続的な波高の値の第2範囲に対応している。各チャンネルは、対応する第2範囲内に含まれる値を有する波高がカウント部25へ入力された場合にパルス波をカウントするようになっている。一般的に、第1量子化単位と第2量子化単位とは異なっている。
【0033】
図3は、実施形態1に係る、離散的な波高の値に対応する第1範囲と複数のチャンネルに対応する第2範囲との関係の例を示す概念図である。横軸は、波高の値の変化を示し、電圧等の単位で表され、放射線のエネルギーに対応する。ある波高の値をaとし、第1量子化単位をbとする。波高の値は、a,a+b,a+2b,a+3b,a+4b,…を取り得る。例えば、波高の値aはa以上(a+b)未満の第1範囲A0に対応し、波高の値(a+b)は(a+b)以上(a+2b)未満の第1範囲A1に対応し、波高の値(a+2b)は(a+2b)以上(a+3b)未満の第1範囲A2に対応し、波高の値(a+3b)は(a+3b)以上(a+4b)未満の第1範囲A3に対応し、波高の値(a+4b)は(a+4b)以上(a+5b)未満の第1範囲A4に対応する。
【0034】
第2量子化単位を5b/3とする。あるチャンネルは、a以上(a+5b/3)未満の第2範囲C0に対応し、他のチャンネルは、(a+5b/3)以上(a+10b/3)未満の第2範囲C1に対応し、更に他のチャンネルは、(a+10b/3)以上(a+5b)未満の第2範囲C2に対応するとする。
【0035】
従来技術では、各チャンネルは、対応する第2範囲に波高の値が含まれるハルス波をカウントする。即ち、波高の値がaであるパルス波及び波高の値が(a+b)であるパルス波が、第2範囲C0に対応するチャンネルでカウントされる。波高の値が(a+2b)であるパルス波及び波高の値が(a+3b)であるパルス波は、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントされる。波高の値が(a+4b)であるパルス波は、第2範囲C2に対応するチャンネルでカウントされる。結果として、第2範囲C0に対応するチャンネル、及び第2範囲C1に対応するチャンネルは、第2範囲C2に対応するチャンネルに比べて、カウント数が多くなる。このように、従来技術では、カウントされる放射線のエネルギーに偏りが生じ、スペクトルに周期的なノイズが発生する。
【0036】
実施形態1では、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、そのチャンネルでパルス波をカウントする。図3に示す例では、第1範囲A0は、第2範囲C0に全て含まれている。このため、第1範囲A0に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値がaであるパルス波は、第2範囲C0に対応するチャンネルでカウントされる。同様に、第1範囲A2は第2範囲C1に全て含まれており、第1範囲A2に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+2b)であるパルス波は、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントされる。第1範囲A4は第2範囲C2に全て含まれており、第1範囲A4に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+4b)であるパルス波は、第2範囲C2に対応するチャンネルでカウントされる。
【0037】
また、実施形態1では、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合の分だけ夫々のチャンネルでパルス波をカウントする。図3に示す例では、第1範囲A1の中で、(a+b)以上(a+5b/3)未満の範囲は第2範囲C0に含まれ、(a+5b/3)以上(a+2b)未満の範囲は第2範囲C1に含まれている。即ち、第1範囲A1の2/3は第2範囲C0に含まれ、第1範囲A1の1/3は第2範囲C1に含まれている。そこで、第1範囲A1に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+b)であるパルス波に関しては、第2範囲C0に対応するチャンネルで2/3だけカウントし、第2範囲C1に対応するチャンネルで1/3だけカウントする。同様に、第1範囲A3の中で、(a+3b)以上(a+10b/3)未満の範囲は第2範囲C1に含まれ、(a+10b/3)以上(a+4b)未満の範囲は第2範囲C2に含まれている。即ち、第1範囲A3の1/3は第2範囲C1に含まれ、第1範囲A3の2/3は第2範囲C2に含まれている。第1範囲A3に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+3b)であるパルス波に関しては、第2範囲C1に対応するチャンネルで1/3だけカウントし、第2範囲C2に対応するチャンネルで2/3だけカウントする。
【0038】
結果として、波高の値がa、(a+b)、(a+2b)、(a+3b)及び(a+4b)であるパルス波が一つずつ検出された場合、第2範囲C0に対応するチャンネルで(1+2/3)だけカウントし、第2範囲C1に対応するチャンネルで(1+2/3)だけカウントし、第2範囲C2に対応するチャンネルで(1+2/3)だけカウントする。各チャンネルでのカウント数は同一となり、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが解消される。
【0039】
記憶部253は、波高の値とパルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を記録した関係情報を記憶している。図4は、実施形態1に係る関係情報の内容例を示す概念図である。波高の値に関連付けて、当該波高の値を有するパルス波をカウントすべきチャンネルと、パルス波をカウントするときのカウント数とが記録されている。関係情報には、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、そのチャンネルでパルス波をカウントするように、チャンネルとカウント数とが記録されている。例えば、波高の値aには、第2範囲C0に対応するチャンネルと、カウント数1とが関連付けられている。また、波高の値(a+2b)には、第2範囲C1に対応するチャンネルと、カウント数1とが関連付けられ、波高の値(a+4b)には、第2範囲C2に対応するチャンネルと、カウント数1とが関連付けられている。
【0040】
更に、関係情報には、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合の分だけ夫々のチャンネルでパルス波をカウントするように、チャンネルとカウント数とが記録されている。例えば、波高の値(a+b)には、第2範囲C0に対応するチャンネル、及びカウント数(2/3)が関連付けられ、更に、第2範囲C1に対応するチャンネル、及びカウント数(1/3)が関連付けられている。また、波高の値(a+3b)には、第2範囲C1に対応するチャンネル、及びカウント数(1/3)が関連付けられ、更に、第2範囲C2に対応するチャンネル、及びカウント数(2/3)が関連付けられている。カウント部25で取得し得るパルス波の波高のその他の値についても、同様に、チャンネルとカウント数とが関連付けて記録されている。
【0041】
次に、信号処理装置2が実行する処理を説明する。図5は、信号処理装置2が実行する処理の手順を示すフローチャートである。放射線検出素子11に放射線が入射した場合、放射線検出器1は、放射線のエネルギーに応じた階段波を生成し、階段波を含む信号を出力する。放射線を検出しない場合でも、放射線検出器1は信号を出力している。信号処理装置2は、放射線検出器1から信号が入力される(S1)。A/D変換部21は、入力された信号をA/D変換する(S2)。A/D変換部21は、A/D変換した信号を波形整形部22へ入力する。波形整形部22は、入力された信号の波形を整形する(S3)。波形整形により、波形整形部22は信号に含まれるノイズを低減し、信号に含まれる階段波をパルス波へ変換する。波形整形部22は、整形した信号をパルス検出部23及び波高測定部24へ入力する。
【0042】
パルス検出部23は、入力された信号にパルス波が含まれているか否かを判定する(S4)。S4では、例えば、パルス検出部23は、信号値が所定の閾値を超過した場合に、信号にパルス波が含まれていると判定する。閾値は予めパルス検出部23に記憶されている。信号にパルス波が含まれていない場合は(S4:NO)、信号処理装置2は、処理を終了する。例えば、パルス検出部23は、信号にパルス波が含まれていないことを示す情報を波高測定部24へ入力し、波高測定部24はパルス波の波高の測定を行わないようにする。
【0043】
信号にパルス波が含まれている場合は(S4:YES)、パルス検出部23は、信号にパルス波が含まれていることを示す情報を波高測定部24へ入力する。波高測定部24は、信号にパルス波が含まれていることを示す情報を入力された場合に、波形整形部22から入力された信号に含まれているパルス波の波高を測定する。例えば、波高測定部24は、信号に含まれる最大の信号値をパルス波の波高として測定する。波高測定部24は、測定したパルス波の波高をカウント部25へ入力する。
【0044】
カウント部25では、制御部251は、関係情報254に従って、入力された波高の値に応じて、パルス波をカウントすべきチャンネルを特定する(S6)。S6では、制御部251は、関係情報254を参照し、波高の値に関連付けて記録されたチャンネルを特定することにより、パルス波をカウントすべきチャンネルを特定する。更に、S6では、制御部251は、関係情報254を参照し、波高の値及びチャンネルに関連付けて記録されたカウント数を特定することにより、特定したチャンネルでパルス波をカウントする際のカウント数を特定する。例えば、波高の値がaである場合は、第2範囲C0に対応するチャンネルと、カウント数1とが特定される。波高の値が(a+b)である場合は、第2範囲C0に対応するチャンネル及びカウント数(2/3)と、第2範囲C1に対応するチャンネル及びカウント数(1/3)とが特定される。
【0045】
カウント部25は、次に、パルス波をカウントする(S7)。S7では、制御部251は、MCA252に、特定したチャンネルで、特定したカウント数のカウントを行うように、パルス波をカウントさせる。このようにして、信号処理装置2は、波高の値に応じてパルス波をカウントする。パルス波は、波高別にカウントされる。S7が終了した後は、信号処理装置2は、処理を終了する。信号処理装置2は、S1~S7の処理を個々に繰り返し実行する。
【0046】
信号処理装置2は、MCA252に含まれる各チャンネルのカウント数を示すデータを出力する。チャンネルとカウント数との関係は、パルス波の波高とカウント数との関係に対応し、更に、検出した放射線のエネルギーとカウント数との関係に対応する。分析部3は、信号処理装置2が出力したデータを入力され、データに基づいて、放射線検出器1が検出した放射線のスペクトルを生成する。分析部3は、生成したスペクトルに基づいた分析を行ってもよい。例えば、分析部3は、蛍光X線のスペクトルに基づいた元素分析を行ってもよい。
【0047】
以上のように、MCA252は、(1/3)等の整数ではないカウント数を各チャンネルでカウントする。MCA252は、100又は1000等のある程度桁数の大きい所定の数をカウント数に乗じることによって、カウント数を整数に変換し、変換後のカウント数を各チャンネルでカウントしてもよい。カウント数に所定の数を乗じた後で小数点以下を切り捨てることにより、カウント数を整数に変換してもよい。カウント数は、分析部3での処理等のMCA252以降の処理において、前述の所定の数で除されることによって、元の値へ戻されてもよい。
【0048】
以上詳述した如く、信号処理装置2は、関係情報254を記憶し、関係情報254に従って、放射線の検出により得られたパルス波の波高の値に応じたチャンネルでパルス波をカウントする。関係情報では、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制するように、波高の値とパルス波をカウントすべきチャンネルとの関係を定めてある。このため、放射線検出装置10で検出されカウントされる放射線のエネルギーの偏りが抑制される。
【0049】
関係情報254は、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、そのチャンネルでパルス波をカウントすることを記録している。また、関係情報254は、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合の分だけ夫々のチャンネルでパルス波をカウントすることを記録している。このような関係情報に従って、カウントを行うチャンネルとカウント時のカウント数とを特定することにより、信号処理装置2は、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を解消し、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが解消される。従って、信号処理装置2は、放射線のスペクトルから、カウントされる放射線のエネルギーの偏りに起因するノイズを効果的に除去することができる。放射線検出素子11を大型化した場合等、放射線の検出効率を向上させた場合であっても、ノイズが増大することは無い。このため、放射線検出装置10の性能を効果的に向上させることが可能となる。
【0050】
<実施形態2>
実施形態2に係る放射線検出装置10の構成は、実施形態1と同様である。実施形態1では、MCA252が含む各チャンネルで、1未満のカウント数でパルス波をカウントすることとした。実施形態2では、各チャンネルで確率的にカウントを行うことにより、1未満のカウント数でのカウントを行わないMCA252の使用を可能にする。実施形態2に係る放射線検出装置10は、関係情報の内容が実施形態1と異なる。
【0051】
図6は、実施形態2に係る、離散的な波高の値に対応する第1範囲と複数のチャンネルに対応する第2範囲との関係の例を示す概念図である。横軸は、波高の値の変化を示し、電圧等の単位で表され、放射線のエネルギーに対応する。実施形態2では、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、実施形態1と同様に、そのチャンネルでパルス波をカウントする。即ち、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、確率1で、そのチャンネルでパルス波をカウントする。
【0052】
図6に示す例では、第1範囲A0に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値がaであるパルス波は、確率1で、第2範囲C0に対応するチャンネルでカウントされる。第1範囲A2に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+2b)であるパルス波は、確率1で、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントされる。第1範囲A4に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+4b)であるパルス波は、確率1で、第2範囲C2に対応するチャンネルでカウントされる。
【0053】
また、実施形態2では、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合に応じた確率で、いずれか一つのチャンネルでパルス波をカウントする。一つのチャンネルの第2範囲に第1範囲が含まれる割合が大きいほど、当該チャンネルでパルス波をカウントする確率が高くなる。図3に示す例では、第1範囲A1の2/3は第2範囲C0に含まれ、第1範囲A1の1/3は第2範囲C1に含まれている。そこで、第1範囲A1に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+b)であるパルス波に関しては、確率2/3で、第2範囲C0に対応するチャンネルでカウントし、確率1/3で、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントする。
【0054】
同様に、第1範囲A3の1/3は第2範囲C1に含まれ、第1範囲A3の2/3は第2範囲C2に含まれている。第1範囲A3に対応する波高の値を有するパルス波、即ち波高の値が(a+3b)であるパルス波に関しては、確率1/3で、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントし、確率2/3で、第2範囲C2に対応するチャンネルでカウントする。
【0055】
波高の値がa、(a+b)、(a+2b)、(a+3b)及び(a+4b)であるパルス波が一つずつ検出された場合、第2範囲C0及び第2範囲C2の夫々に対応するチャンネルは、確率1でカウントを行い、更に確率2/3でカウントを行う。また、第2範囲C1に対応するチャンネルは、確率1でカウントを行い、確率1/3でカウントを行い、更に確率1/3でカウントを行う。波高の値がa、(a+b)、(a+2b)、(a+3b)及び(a+4b)であるパルス波が均等に検出された場合、統計的に、各チャンネルでのカウント数は同一となる。このため、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが解消される。
【0056】
図7は、実施形態2に係る関係情報の内容例を示す概念図である。波高の値に関連付けて、所定の閾値と、当該波高の値を有するパルス波をカウントすべきチャンネルと、当該チャンネルでパルス波をカウントするための条件とが記録されている。関係情報には、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、閾値は記録されておらず、当該チャンネルが関連付けて記録され、条件として、全ての場合において当該チャンネルでパルス波をカウントすることが記録されている。
【0057】
更に、関係情報には、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合に応じた確率で、いずれか一つのチャンネルでパルス波をカウントするように、閾値と条件とチャンネルとが記録されている。条件の内容は、乱数と閾値との比較結果である。閾値及び条件は、乱数を閾値と比較して得られる確率が夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合に応じた確率になるように、定められている。図7に示す例では、0以上1未満の閾値が定められ、0以上1未満の乱数を生成したときに、乱数が閾値未満になることが一方のチャンネルでパルス波をカウントするための条件となり、乱数が閾値以上になることが他方のチャンネルでパルス波をカウントするための条件となっている。閾値は、乱数が閾値未満になる確率と乱数が閾値以上になる確率とが、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合に応じた確率になるように、定められている。
【0058】
図7に示す例では、波高の値(a+b)には、閾値2/3が関連付けて記録されている。また、乱数が閾値未満になるという条件と、第2範囲C0に対応するチャンネルとが関連付けて記録され、乱数が閾値以上になるという条件と、第2範囲C1に対応するチャンネルとが関連付けて記録されている。このため、0以上1未満の乱数を生成した場合には、確率2/3で、第2範囲C0に対応するチャンネルでカウントが行われ、確率1/3で、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントが行われる。
【0059】
波高の値(a+3b)には、閾値1/3が関連付けて記録されている。また、乱数が閾値未満になるという条件と、第2範囲C1に対応するチャンネルとが関連付けて記録され、乱数が閾値以上になるという条件と、第2範囲C2に対応するチャンネルとが関連付けて記録されている。このため、確率1/3で、第2範囲C1に対応するチャンネルでカウントが行われ、確率2/3で、第2範囲C2に対応するチャンネルでカウントが行われる。カウント部25で取得し得るパルス波の波高のその他の値についても、同様に、閾値と条件とチャンネルとが関連付けて記録されている。
【0060】
信号処理装置2は、S1~S7の処理を実行する。信号処理装置2が実行するS1~S5の処理は実施形態1と同様である。S6では、制御部251は、関係情報254を参照する。関係情報254において、波高の値に関連付けて、閾値は記録されておらず、単一のチャンネルが関連付けて記録され、条件として、全ての場合において当該チャンネルでパルス波をカウントすることが記録されている場合は、制御部251は、当該チャンネルを、パルス波をカウントすべきチャンネルと特定する。例えば、波高の値がaである場合は、第2範囲C0に対応するチャンネルが特定される。
【0061】
関係情報254において、波高の値に関連付けて、閾値が記録され、複数の条件及びチャンネルが記録されている場合は、制御部251は、0以上1未満の乱数を生成する。制御部251は、乱数を生成する際に、放射線が検出された時刻を種として乱数を生成する。例えば、制御部251は、時刻を計測する機能を有しており、測定されたパルス波の波高がカウント部25に入力された時刻を、放射線が検出された時刻として取得する。放射線が放射線検出素子11へ入射して検出される事象は、完全にランダムに発生するので、放射線が検出された時刻を種とすることにより、容易に乱数を生成することができる。
【0062】
S6では、更に、制御部251は、関係情報254を参照し、波高の値に関連付けて記録された閾値と乱数とを比較し、閾値と乱数との比較結果が該当する条件に関連付けて記録されたチャンネルを、パルス波をカウントすべきチャンネルと特定する。例えば、波高の値が(a+b)である場合は、確率2/3で、第2範囲C0に対応するチャンネルが特定され、確率1/3で、第2範囲C1に対応するチャンネルが特定される。
【0063】
S7では、制御部251は、MCA252に、特定したチャンネルでパルス波をカウントさせる。カウント数は1である。このようにして、信号処理装置2は、波高の値に応じてパルス波をカウントする。パルス波は、波高別にカウントされる。S7が終了した後は、信号処理装置2は、処理を終了する。信号処理装置2は、S1~S7の処理を個々に繰り返し実行する。
【0064】
以上詳述した如く、実施形態2においても、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制するように、波高の値とパルス波をカウントすべきチャンネルとの関係が関係情報254で定められている。関係情報254は、単一のチャンネルが対応する第2範囲に第1範囲が全て含まれている波高の値については、そのチャンネルでパルス波をカウントすることを記録している。また、関係情報254は、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値については、夫々の第2範囲に第1範囲が含まれる割合に応じた確率で、いずれか一つのチャンネルでパルス波をカウントすることを記録している。このような関係情報254に従って、カウントを行うチャンネルを特定することにより、信号処理装置2は、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を解消し、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが解消される。
【0065】
特に、実施形態2では、カウントを行うチャンネルを確率的に特定することにより、一つのパルス波につき、MCA252の各チャンネルでのカウント数を1とすることができる。MCA252は、1未満のカウント数でカウントを行う必要が無い。このため、MCA252の機能が複雑化することが防止され、信号処理装置2のコストが増大することが抑制される。
【0066】
実施形態2においても、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが解消されるので、信号処理装置2は、放射線のスペクトルから、カウントされる放射線のエネルギーの偏りに起因するノイズを効果的に除去することができる。放射線の検出効率を向上させた場合には、ノイズが増大することは無いので、放射線検出装置10の性能を効果的に向上させることが可能となる。
【0067】
以上の実施形態1及び2においては、二つのチャンネルが対応する第2範囲の両方に亘って第1範囲が含まれている波高の値に関する処理を行う形態を示した。信号処理装置2は、三つ以上のチャンネルが対応する第2範囲に亘って第1範囲が含まれている波高の値に関する処理を行う形態であってもよい。この形態でも、実施形態1又は2と同様に、波高の値と複数のチャンネルとの関係が関係情報に記録される。信号処理装置2は、関係情報に従って、波高の値に応じたチャンネルでパルス波のカウントを行うことにより、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を解消する。
【0068】
<実施形態3>
実施形態3に係る放射線検出装置10の構成は、実施形態1と同様である。実施形態3に係る放射線検出装置10は、関係情報の内容が実施形態1と異なる。図8は、実施形態3に係る、離散的な波高の値と、MCA252が有する複数のチャンネルとの関係の例を示す概念図である。横軸は、波高の値の変化を示し、電圧等の単位で表され、放射線のエネルギーに対応する。第1量子化単位をbとして、波高の値は、a,a+b,a+2b,a+3b,a+4b,…を取り得る。MCA252が有するチャンネルは、第2量子化単位を5b/3として、値a,a+5b/3,a+10b/3,…に対応するとする。
【0069】
実施形態3では、あるチャンネルが対応する値に一致する波高の値については、当該チャンネルでパルス波をカウントする。図8に示す例では、波高の値がaであるパルス波は、値aに対応するチャンネルでカウントされる。
【0070】
また、実施形態3では、二つのチャンネルが対応する値の間にある波高の値については、夫々のチャンネルが対応する値と波高の値との差の絶対値の比に応じて、夫々のチャンネルでパルス波をカウントする。このとき、波高の値により近い値に対応するチャンネルでのカウント数がより大きくなるように、カウントを行う。カウント数の合計は1になるようにする。具体的には、二つのチャンネルが対応する値の差の絶対値に対して、一方の値と波高の値との差の絶対値が占める割合を、他方の値に対応するチャンネルでのカウント数とする。また、二つのチャンネルが対応する値の差の絶対値に対して、他方の値と波高の値との差の絶対値が占める割合を、一方の値に対応するチャンネルでのカウント数とする。
【0071】
図8に示す例では、波高の値(a+b)は、二つのチャンネルが対応する値aと(a+5b/3)との間にある。値aに対応するチャンネルと値(a+5b/3)に対応するチャンネルとでパルス波をカウントする。aと(a+5b/3)との差の絶対値に対して、aと(a+b)との差の絶対値は3/5を占め、(a+b)と(a+5b/3)との差の絶対値は2/5を占める。このことに応じて、値aに対応するチャンネルでのカウント数を(2/5)とし、値(a+5b/3)に対応するチャンネルでのカウント数を(3/5)とする。夫々のチャンネルでのカウント数は、夫々のチャンネルが対応する値a及び(a+5b/3)と波高の値(a+b)との差の絶対値の比に応じたカウント数となり、かつ、波高の値により近い値に対応するチャンネルでのカウント数がより大きくなる。
【0072】
波高の値(a+2b)は、二つのチャンネルが対応する値(a+5b/3)と(a+10b/3)との間にある。値(a+5b/3)に対応するチャンネルと値(a+10b/3)に対応するチャンネルとでパルス波をカウントする。(a+5b/3)と(a+10b/3)との差の絶対値に対して、(a+5b/3)と(a+2b)との差の絶対値は1/5を占め、(a+2b)と(a+10b/3)との差の絶対値は4/5を占める。このことに応じて、値(a+5b/3)に対応するチャンネルでのカウント数を(4/5)とし、値(a+10b/3)に対応するチャンネルでのカウント数を(1/5)とする。
【0073】
波高の値(a+3b)は、二つのチャンネルが対応する値(a+5b/3)と(a+10b/3)との間にある。値(a+5b/3)に対応するチャンネルと値(a+10b/3)に対応するチャンネルとでパルス波をカウントする。(a+5b/3)と(a+10b/3)との差の絶対値に対して、(a+5b/3)と(a+3b)との差の絶対値は4/5を占め、(a+3b)と(a+10b/3)との差の絶対値は1/5を占める。このことに応じて、値(a+5b/3)に対応するチャンネルでのカウント数を(1/5)とし、値(a+10b/3)に対応するチャンネルでのカウント数を(4/5)とする。
【0074】
波高の値(a+4b)は、二つのチャンネルが対応する値(a+10b/3)と(a+5b)との間にある。値(a+10b/3)に対応するチャンネルと値(a+5b)に対応するチャンネルとでパルス波をカウントする。(a+10b/3)と(a+5b)との差の絶対値に対して、(a+10b/3)と(a+4b)との差の絶対値は2/5を占め、(a+4b)と(a+5b)との差の絶対値は3/5を占める。このことに応じて、値(a+10b/3)に対応するチャンネルでのカウント数を(3/5)とし、値(a+5b)に対応するチャンネルでのカウント数を(3/5)とする。
【0075】
波高の値が(a-b)、a、(a+b)、(a+2b)、(a+3b)及び(a+4b)であるパルス波が一つずつ検出された場合、値aに対応するチャンネルは、波高の値(a-b)に応じて(2/5)だけカウントし、波高の値aに応じて1カウントし、波高の値(a+b)に応じて(2/5)だけカウントする。結果として、値aに対応するチャンネルは、(1+4/5)だけカウントする。値(a+5b/3)に対応するチャンネルは、波高の値(a+b)に応じて(3/5)だけカウントし、波高の値(a+2b)に応じて(4/5)だけカウントし、波高の値(a+3b)に応じて(1/5)だけカウントする。結果として、値(a+5b/3)に対応するチャンネルは、(1+3/5)だけカウントする。同様に、値(a+10b/3)に対応するチャンネルは、(1+3/5)だけカウントする。従来の技術に比べて、各チャンネルでのカウント数の差が小さくなり、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが抑制される。
【0076】
図9は、実施形態3に係る関係情報の内容例を示す概念図である。波高の値に関連付けて、当該波高の値を有するパルス波をカウントすべきチャンネルと、パルス波をカウントするときのカウント数とが記録されている。関係情報には、チャンネルが対応する値に一致する波高の値については、当該チャンネルでパルス波をカウントするように、チャンネルとカウント数とが記録されている。例えば、波高の値aには、値aに対応するチャンネルと、カウント数1とが関連付けられている。
【0077】
更に、関係情報には、二つのチャンネルが対応する値の間にある波高の値については、夫々のチャンネルでパルス波をカウントし、夫々のチャンネルが対応する値と波高の値との差の絶対値の比に応じて、波高の値により近い値に対応するチャンネルでのカウント数がより大きくなるように、チャンネルとカウント数とが記録されている。例えば、波高の値(a+b)には、値aに対応するチャンネル、及びカウント数(2/5)が関連付けられ、更に、値(a+5b/3)に対応するチャンネル、及びカウント数(3/5)が関連付けられている。波高の値(a+2b)には、値(a+5b/3)に対応するチャンネル、及びカウント数(4/5)が関連付けられ、更に、値(a+10b/3)に対応するチャンネル、及びカウント数(1/5)が関連付けられている。波高の値(a+3b)には、値(a+5b/3)に対応するチャンネル、及びカウント数(1/5)が関連付けられ、更に、値(a+10b/3)に対応するチャンネル、及びカウント数(4/5)が関連付けられている。波高の値(a+4b)には、値(a+10b/3)に対応するチャンネル、及びカウント数(3/5)が関連付けられ、更に、値(a+5b)に対応するチャンネル、及びカウント数(2/5)が関連付けられている。カウント部25で取得し得るパルス波の波高のその他の値についても、同様に、チャンネルとカウント数とが関連付けて記録されている。
【0078】
信号処理装置2は、S1~S7の処理を実行する。信号処理装置2が実行するS1~S5の処理は実施形態1及び2と同様である。S6では、制御部251は、関係情報254を参照し、波高の値に関連付けて記録されたチャンネルを特定することにより、パルス波をカウントすべきチャンネルを特定する。更に、S6では、制御部251は、関係情報254を参照し、波高の値及びチャンネルに関連付けて記録されたカウント数を特定することにより、特定したチャンネルでパルス波をカウントする際のカウント数を特定する。例えば、波高の値がaである場合は、値aに対応するチャンネルと、カウント数1とが特定される。波高の値が(a+b)である場合は、値aに対応するチャンネル及びカウント数(2/5)と、値(a+5b/3)に対応するチャンネル及びカウント数(3/5)とが特定される。
【0079】
S7では、制御部251は、MCA252に、特定したチャンネルでパルス波をカウントさせる。カウント数は1である。このようにして、信号処理装置2は、波高の値に応じてパルス波をカウントする。パルス波は、波高別にカウントされる。S7が終了した後は、信号処理装置2は、処理を終了する。信号処理装置2は、S1~S7の処理を個々に繰り返し実行する。実施形態1と同様に、MCA252は、カウント数を整数に変換し、変換後のカウント数を各チャンネルでカウントしてもよい。
【0080】
以上詳述した如く、実施形態3においても、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制するように、波高の値とパルス波をカウントすべきチャンネルとの関係が関係情報254で定められている。関係情報254は、あるチャンネルが対応する値に一致する波高の値については、当該チャンネルでパルス波をカウントすることを記録している。また、関係情報254は、二つのチャンネルが対応する値の間にある波高の値については、夫々のチャンネルでパルス波をカウントし、夫々のチャンネルが対応する値と波高の値との差の絶対値の比に応じて、波高の値により近い値に対応するチャンネルでのカウント数がより大きくなることを記録している。このような関係情報254に従って、カウントを行うチャンネルを特定することにより、信号処理装置2は、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制し、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが抑制される。
【0081】
実施形態3においては、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが抑制されるので、信号処理装置2は、カウントされる放射線のエネルギーの偏りに起因して放射線のスペクトルに含まれるノイズを、効果的に抑制することができる。放射線の検出効率を向上させた場合であっても、ノイズは小さいので、放射線検出装置10の性能を効果的に向上させることが可能となる。
【0082】
<実施形態4>
図10は、実施形態4に係るカウント部25の機能構成を示すブロック図である。制御部251は、プロセッサを用いて構成されている。制御部251は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。制御部251は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。記憶部253は、コンピュータプログラム255を記憶している。コンピュータプログラム255は、図示しない記録装置により、コンピュータプログラム255を記憶する光ディスク等の記録媒体250から読み出され、記憶部253に書き込まれることによって、記憶部253に記憶される。制御部251は、コンピュータプログラム255に従ってカウント部25に必要な処理を実行する。
【0083】
制御部251は、コンピュータプログラム255に従って情報処理を実行することにより、実施形態1~3におけるカウント部25に必要な処理を実行する。このようにして、実施形態1~3におけるカウント部25が実現される。放射線検出器1及び分析部3の構成及び機能は、実施形態1~3と同様である。信号処理装置2の、カウント部25以外の部分の構成及び機能は、実施形態1~3と同様である。信号処理装置2及び放射線検出装置10は、実施形態1~3と同様の処理を実行する。
【0084】
実施形態4においても、信号処理装置2は、関係情報254に従って、波高の値に応じたチャンネルでパルス波のカウントを行うことにより、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制する。これにより、カウントされる放射線のエネルギーの偏りが抑制される。信号処理装置2は、カウントされる放射線のエネルギーの偏りに起因して放射線のスペクトルに含まれるノイズを、効果的に抑制又は除去することができる。放射線の検出効率を向上させた場合には、ノイズの影響は小さいので、放射線検出装置10の性能を効果的に向上させることが可能となる。
【0085】
以上の実施形態1~4においては、関係情報254が単一である形態を示したが、信号処理装置2は、複数の関係情報254を記憶する形態であってもよい。例えば、信号処理装置2は、第2量子化単位を変更し、MCA252が有する各チャンネルが対応する第2範囲を変更することができる形態であってもよい。この形態では、記憶部253は、複数通りの各チャンネルと第2範囲との対応関係に応じて、複数の関係情報254を記憶している。カウント部25は、各チャンネルと第2範囲との対応関係に応じて、利用すべき関係情報254を選択し、選択した関係情報254に従って、パルス波をカウントする。例えば、信号処理装置2は、信号の増幅、信号の補完、又はA/D変換部21の設定変更等の処理により、第1量子化単位を変更することができる形態であってもよい。この形態では、記憶部253は、複数の第1量子化単位に応じて、複数の関係情報254を記憶している。カウント部25は、第1量子化単位に応じて、利用すべき関係情報254を選択し、選択した関係情報254に従って、パルス波をカウントする。
【0086】
関係情報254の内容は、変更が可能であってもよい。例えば、所定の標準物質から発生する特定のエネルギーを有する放射線が特定のチャンネルでカウントされるように、関係情報254の内容が調整されてもよい。例えば、定期的に、所定の標準物質を用いて較正が行われ、記憶部253が記憶する関係情報254の内容が調整されてもよい。
【0087】
実施形態1~4においては、カウント部25でパルス波をカウントする形態を示したが、信号処理装置2は、階段波をカウントする形態であってもよい。この形態では、信号処理装置2は、波形整形部22を備えていなくてもよく、パルス検出部23の代わりに階段波の検出部を備えていてもよい。例えば、階段波の検出部は、信号値の増加量が所定値以上である場合に階段波を検出したとする。波高測定部24は、階段波の波高を測定する。例えば、波高測定部24は、ステップ状に変化した信号値の増加量を波高として測定する。この形態においても、信号処理装置2は、関係情報254に従って、波高の値に応じたチャンネルで階段波のカウントを行うことにより、各チャンネルでのカウントのし易さの不均一性を抑制することができる。
【0088】
実施形態1~4においては、信号処理装置2が関係情報254を利用する形態を示したが、信号処理装置2は関係情報254を利用せずに処理を行う形態であってもよい。この形態では、カウント部25は、関係情報254を参照して実行する処理と同等の処理を実行するためのアルゴリズムに従って、処理を実行する。例えば、コンピュータプログラム255は、関係情報254を参照して実行する処理と同等の処理を実行するためのアルゴリズムに従った処理を制御部251に実行させる。
【0089】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 放射線検出器
10 放射線検出装置
11 放射線検出素子
2 信号処理装置
25 カウント部
250 記録媒体
251 制御部
252 MCA
253 記憶部
254 関係情報
255 コンピュータプログラム
3 分析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10