(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068478
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20220427BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220427BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220427BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C23C16/44 G
C23C16/42
H01L21/68 N
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177183
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】窪内 裕太
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA17
4K030AA20
4K030BA37
4K030EA03
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4K030FA10
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4K030KA47
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5F131EB31
5F131EB55
5F131EB66
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】成膜中の破損を抑制して繰り返し用いることができる、成膜対象基板の回転部材を備える成膜装置を提供する。
【解決手段】化学気相成長法によって成膜対象基板に成膜する成膜室と、前記成膜室へ原料ガスを導入する原料ガス導入口と、前記成膜室から原料ガスを排出する原料ガス排出口と、前記成膜対象基板を回転可能に保持する回転軸と、前記回転軸を回転させる回転駆動手段と、を備え、前記回転軸は、前記回転駆動手段から伝達される動力を受ける第1歯車を有し、前記回転駆動手段は、前記第1歯車とかみ合って動力を伝達する第2歯車を有し、前記第1歯車および前記第2歯車が、それぞれ、環状に複数並んで設けられた歯部と、前記歯部の歯元同士の間をつなぐ歯底部と、を有し、前記第1歯車および前記第2歯車において、前記歯部が、それぞれ、当該歯部の表面に形成された第1炭化ケイ素層を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相成長法によって成膜対象基板に成膜する成膜室と、
前記成膜室へ原料ガスを導入する原料ガス導入口と、
前記成膜室から原料ガスを排出する原料ガス排出口と、
前記成膜対象基板を回転可能に保持する回転軸と、
前記回転軸を回転させる回転駆動手段と、を備え、
前記回転軸は、前記回転駆動手段から伝達される動力を受ける第1歯車を有し、
前記回転駆動手段は、前記第1歯車とかみ合って動力を伝達する第2歯車を有し、
前記第1歯車および前記第2歯車が、それぞれ、環状に複数並んで設けられた歯部と、前記歯部の歯元同士の間をつなぐ歯底部と、を有し、
前記第1歯車および前記第2歯車において、前記歯部が、それぞれ、当該歯部の表面に形成された第1炭化ケイ素層を有する、成膜装置。
【請求項2】
前記歯底部が、それぞれ、当該歯底部の表面に形成された第2炭化ケイ素層を有し、前記第1炭化ケイ素層と前記第2炭化ケイ素層とが一体である、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1炭化ケイ素層の厚さが、200μm~1000μmである、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記回転軸および前記回転駆動手段が、黒鉛製である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記回転軸が、前記成膜室の室内において、前記原料ガス導入口と前記原料ガス排出口との間で、長手方向が前記原料ガスの流れる方向と直交するように配され、前記原料ガスの流れる方向に回転し、前記成膜対象基板を前記原料ガスの流れる方向に回転可能に、かつ、前記成膜対象基板の成膜対象面が前記原料ガスの流れる方向と平行となるように保持する、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関し、例えば、化学気相成長法(以下、「CVD法」とする場合がある)により支持基板上に炭化ケイ素(以下、「SiC」とする場合がある)多結晶膜を形成することのできる、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、ケイ素(以下、「Si」とする場合がある)と炭素で構成される化合物半導体材料である。SiCは、絶縁破壊電界強度がSiの10倍であり、バンドギャップがSiの3倍と優れているだけでなく、デバイスの作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲で可能であること等から、Siの限界を超えるパワーデバイス用材料として期待されている。
【0003】
しかしながら、SiC半導体は、広く普及するSi半導体と比較し、大面積のSiC単結晶基板が得られず、工程も複雑であることから、Si半導体と比較して大量生産ができず、高価であった。
【0004】
SiC半導体のコストを下げるため、様々な工夫が行われてきた。例えば、特許文献1には、SiC基板の製造方法であって、少なくとも、マイクロパイプの密度が30個/cm2以下のSiC単結晶基板とSiC多結晶基板を準備し、前記単結晶基板と前記多結晶炭化ケイ素基板とを貼り合わせる工程を行い、その後、単結晶基板を薄膜化する工程を行い、多結晶基板上に単結晶層を形成した基板を製造することが記載されている。
【0005】
更に、特許文献1には、SiC単結晶基板とSiC多結晶基板とを貼り合わせる工程の前に、SiC単結晶基板に水素イオン注入を行って水素イオン注入層を形成する工程を行い、SiC単結晶基板とSiC多結晶基板とを貼り合わせる工程の後、SiC単結晶基板を薄膜化する工程の前に、350℃以下の温度で熱処理を行い、SiC単結晶基板を薄膜化する工程を、水素イオン注入層にて機械的に剥離する工程とするSiC基板の製造方法が記載されている。
【0006】
このような方法により、1つのSiC単結晶インゴットからより多くのSiC基板が得られるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-117533号公報
【特許文献2】特許第3857446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で製造されたSiC貼り合わせ基板は、その大部分がSiC多結晶基板である。このため、SiC貼り合わせ基板が、研磨等のハンドリングの際に損傷しないように、機械的な強度を有するよう十分な厚さのSiC多結晶基板を使用しなければならない。
【0009】
従来、前記SiC多結晶基板は、CVD法によって多数の黒鉛製支持基板(成膜対象基板)上にSiC多結晶膜を成膜した後、SiC多結晶膜で被覆された各支持基板を、SiC多結晶膜の端面を研削する等によりSiC多結晶膜の側面から露出させ、それから酸化雰囲気で焼成する等の手段により、支持基板をSiC多結晶膜から分離し、その後、SiC多結晶膜を平面研削および、必要に応じて研磨加工を施すことで、所望の厚みおよび面状態のSiC多結晶基板を得ていた(例えば、特許文献2)。
【0010】
しかしながら、上記記載の手法では、多数の支持基板をCVD成膜装置の成膜室内に投入して成膜した際に、成膜室内の温度分布や、成膜ガスの濃度勾配により、成膜されるSiC多結晶膜の膜厚に大きなバラつきが生じるおそれがあり、このバラつきが成膜工程の長時間化、成膜後のSiC多結晶膜の平面研削の際の研削量の増加等により、SiC多結晶膜の生産性を低下させ、製造コストを増加させる要因となっていた。
【0011】
また、例えば、膜厚を均一にするために、支持基板を回転させる回転軸を有する支持基板保持具を成膜室内に設置することが考えられる。この場合、回転軸等の支持基板を回転させる部品が成膜中に破損して支持基板の回転が止まると、成膜した膜の厚さを均一にすることが難しくなり、基板の生産性が低下することがある。また、部品のコストの観点から、一度だけではなく、部品を何度も繰り返して用いることができることが望ましい。以上のことから、支持基板を回転させる回転駆動手段を構成する部品には強度が求められる。
【0012】
よって、本発明は、成膜中の破損を抑制して繰り返し用いることができる、成膜対象基板の回転駆動手段を備える成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の成膜装置は、化学気相成長法によって成膜対象基板に成膜する成膜室と、前記成膜室へ原料ガスを導入する原料ガス導入口と、前記成膜室から原料ガスを排出する原料ガス排出口と、前記成膜対象基板を回転可能に保持する回転軸と、前記回転軸を回転させる回転駆動手段と、を備え、前記回転軸は、前記回転駆動手段から伝達される動力を受ける第1歯車を有し、前記回転駆動手段は、前記第1歯車とかみ合って動力を伝達する第2歯車を有し、前記第1歯車および前記第2歯車が、それぞれ、環状に複数並んで設けられた歯部と、前記歯部の歯元同士の間をつなぐ歯底部と、を有し、前記第1歯車および前記第2歯車において、前記歯部が、それぞれ、当該歯部の表面に形成された第1炭化ケイ素層を有する。
【0014】
本発明の成膜装置は、前記歯底部が、それぞれ、当該歯底部の表面に形成された第2炭化ケイ素層を有し、前記第1炭化ケイ素層と前記第2炭化ケイ素層とが一体であってもよい。
【0015】
本発明の成膜装置は、前記第1炭化ケイ素層の厚さが、200μm~1000μmであってもよい。
【0016】
本発明の成膜装置は、前記回転軸および前記回転駆動手段が、黒鉛製であってもよい。
【0017】
本発明の成膜装置は、前記成膜室へ原料ガスを導入する原料ガス導入口と、前記成膜室から原料ガスを排出する原料ガス排出口と、をさらに備え、前記回転軸が、前記成膜室の室内において、前記原料ガス導入口と前記原料ガス排出口との間で、長手方向が前記原料ガスの流れる方向と直交するように配され、前記原料ガスの流れる方向に回転し、前記成膜対象基板を前記原料ガスの流れる方向に回転可能に、かつ、前記成膜対象基板の成膜対象面が前記原料ガスの流れる方向と平行となるように保持してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の成膜装置であれば、互いにかみ合う第1歯車と第2歯車の強度が高くなることから、成膜対象基板を回転させる回転駆動手段を構成する部材の成膜中における破損を抑制して繰り返し用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】成膜中においてウエハ形状の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図である。
【
図2】成膜中においてウエハ形状の複数の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図である。
【
図3】
図2とは異なる態様の、成膜中においてウエハ形状の複数の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図である。
【
図4】
図3とは異なる態様の、成膜中においてウエハ形状の複数の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる成膜装置1000の概略断面図である。
【
図6】ギアボックス530内のギアの構成を示す概略図である。
【
図9】比較例1において用いたギアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[成膜装置]
本発明の一実施形態にかかる成膜装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の成膜装置は、化学気相成長法によって成膜対象基板(支持基板)に成膜して基板を製造する用途に適用することができる。本実施形態の成膜装置は、例えば、炭化ケイ素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、シリコン(Si)基板の製造に好適に用いることができる。以下においては、炭化ケイ素多結晶基板を製造する場合を例示して説明する。
【0022】
本実施形態の成膜装置は、化学気相成長法によって、成膜対象基板の成膜対象面に所定の物質の薄膜を成膜することのできる装置である。例えば、カーボン製支持基板を成膜対象基板とし、これらの支持基板に任意の炭化ケイ素多結晶膜や炭化ケイ素単結晶膜を成膜することができる。
【0023】
このような成膜装置としては、以下に挙げる成膜室、原料ガス導入口、原料ガス排出口、回転軸および回転駆動手段を備える。
【0024】
〈成膜室〉
成膜室は、室内に成膜対象基板を設置し、化学気相成長法によって成膜対象基板に薄膜を成膜する。成膜室の内部形状は、直方体状や筒状等、任意の形状をとることができる。
【0025】
また、成膜室は黒鉛製であることが好ましい。黒鉛であれば直方体状や筒状への加工が容易であり、また、成膜時に不活性雰囲気下とすることで、高温となる成膜条件に十分な耐久性を持つことができる。
【0026】
成膜室は、後述する原料ガス導入口や原料ガス排出口を備える。これらの口の配置部分は特に限定されないが、例えば、原料ガス導入口が成膜室の床部にあり、原料ガス排出口が成膜室の天井部にあると、成膜工程中に原料ガスが下から上へ上下方向に流れる。
【0027】
〈原料ガス導入口〉
原料ガス導入口は、成膜室へ原料ガスを導入する。例えば、カーボン製支持基板を成膜する場合には、Si系ガスとC系ガスを別々の原料ガス導入口を用いて成膜室へ導入してもよく、事前にこれらを混合した混合ガスを成膜室へ導入してもよい。また、原料ガスはキャリアガスに同伴され、さらにドーパントガスと同伴してもよい。
【0028】
原料ガス導入口を端部に有する原料ガス導入管としては、例えば、カーボン製支持基板を成膜する場合には、黒鉛製の管やステンレス製の管等、任意の管を用いることができる。
【0029】
なお、原料が析出して原料ガス導入口が塞がれないように、原料ガス導入口の温度を制御できるよう、原料ガス導入管を適宜加熱できるヒーターや冷却できるクーラー等の温度制御手段を備えてもよい。
【0030】
〈原料ガス排出口〉
原料ガス排出口は、成膜室から原料ガスを排出する。原料ガス排出口を端部に有する原料ガス排出管としては、黒鉛製の管やステンレス製の管等、任意の管を用いることができる。
【0031】
なお、原料が析出して原料ガス排出口が塞がれないように、原料ガス排出口の温度を制御できるよう、原料ガス排出管を適宜加熱できるヒーターや冷却できるクーラー等の温度制御手段を備えてもよい。
【0032】
〈回転軸〉
回転軸は、成膜対象基板の成膜対象面への炭化ケイ素膜の成膜の偏りを少なくするために、成膜対象基板を回転可能に保持するものである。成膜の偏りをより少なくするために、回転軸は、原料ガスの流れる方向に回転し、成膜対象基板を原料ガスの流れる方向に回転可能に、かつ、成膜対象基板の成膜対象面が原料ガスの流れる方向と平行に保持することが好ましい。
【0033】
成膜工程中において、原料ガスは、成膜室内において原料ガス導入口から原料ガス排出口へ向かって流れる。そこで、成膜対象基板の成膜対象面が原料ガスの流れる方向と平行に保持する場合、回転軸は、成膜室の室内において、原料ガス導入口と原料ガス排出口との間で、長手方向が原料ガスの流れる方向と直交するように配される。回転軸がこのように配されることで、原料ガスの流れる方向に回転可能となり、さらに、成膜対象基板を原料ガスの流れる方向に回転可能に、かつ、成膜対象基板の成膜対象面が原料ガスの流れる方向と平行に保持することができる。
【0034】
(固定部)
回転軸は、成膜対象基板を串刺して固定する固定部を備えることができる。例えば、回転軸本体の長手方向全体に亘ってネジ切り加工がされており、この回転軸本体を成膜対象基板の中心に開いた開口部へ通すことで、成膜対象基板を串刺しにし、さらにナットやワッシャーからなる固定部材を用いて成膜対象基板の両面から固定部材を締結することで、成膜対象基板を固定することができる。
【0035】
例えば、カーボン製支持基板を成膜する場合には、回転軸本体や固定部材は、黒鉛製であることが好ましい。黒鉛製であれば、ネジ切り加工や、ナット状やワッシャー状への加工が容易であり、また、成膜時に不活性雰囲気下とすることで、高温となる成膜条件に十分な耐久性を持つことができる。
【0036】
図1に、固定部による成膜対象基板の固定の態様の一例として、成膜中においてウエハ形状の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図を示す。
【0037】
成膜対象基板100は、その中心に回転軸200を挿通可能な開口部110を有しており、成膜対象基板100の成膜対象面120となるおもて面120aとうら面120bを有している。
【0038】
図1において、成膜対象基板100は、開口部110に回転軸200が挿通され、おもて面120aとうら面120bから、固定部材として2つのナット210を用いて回転軸200に締結することにより、回転軸200に保持されている。
【0039】
回転軸200およびナット210は、化学気相成長法による成膜に耐えられる素材のものを使用することができ、例えばカーボン製の回転軸200およびナット210を使用することが出来る。
【0040】
回転軸200が、例えば矢印Aのように逆時計回りに回転することで、成膜対象基板100を矢印Aのように逆時計回りに回転させることができる。また、回転軸200の回転方向は限定されるものではなく、回転軸200を時計回りに回転させてもよい。
【0041】
なお、成膜処理中の成膜対象基板の回転速度は特に限定されないが、例えば0.1rpm~60rpmに設定することができる。回転速度が0.1rpmより遅い場合には、成膜した膜の厚みが著しく偏る場合があり、また、60rpmより速い場合には回転軸200が損傷するおそれや、回転による気流が発生して成膜に不具合の生じるおそれがある。また、成膜対象基板100のおもて面120aとうら面120bが成膜対象面120であり、成膜対象面120から垂直に出るベクトルを面法線300とする。
【0042】
また、原料ガスが流れる方向を矢印Bで示している。原料ガスとしては、膜を成膜することができれば、特に限定されず、一般的に使用される原料ガスを用いることができる。例えば、炭化ケイ素の多結晶膜を成膜する場合には、Si系原料ガス、C系原料ガスを用いる。Si系原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH4)を用いることができるほか、SiH3Cl、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4などのエッチング作用があるClを含む塩素系Si原料含有ガス(クロライド系原料)を用いることもできる。C系原料ガスとしては、例えば、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、アセチレン(C2H2)を用いることができる。
【0043】
炭化ケイ素以外の多結晶膜を成膜する場合には、成膜する多結晶膜に応じて他の原料ガスを用いることができる。例えば、シリコンの多結晶膜を成膜する場合には、モノシランガス、SiH4ガス等を用いることができる。窒化ガリウムの多結晶膜を成膜する場合には、トリメチルガリウム:Ga(CH3)3ガス、アンモニア:NH3ガス等を用いることができる。
【0044】
また、原料ガスはキャリアガスを同伴してもよい。膜の成膜を阻害することなく、原料ガスを成膜対象基板100へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、炭化ケイ素多結晶膜を成膜する場合には、熱伝導率に優れ、SiCに対してエッチング作用がある水素(H2)を用いることができる。
【0045】
また、これら原料ガスおよびキャリアガスと同時に、第3のガスとして、不純物ドーピングガスを同時に供給することもできる。例えば、導電型をn型とする場合には窒素(N2)、p型とする場合にはトリメチルアルミニウム(TMA)を用いることができる。
【0046】
本実施形態の成膜装置にて成膜する場合には、成膜対象基板100の成膜対象面120の面法線300と、原料ガスの流れる方向Bを直交させると共に、面法線300と成膜対象基板100が回転する回転軸200が平行となる方向に成膜対象基板100を回転させて成膜することが好ましい。このように、成膜対象基板100を回転させながら、成膜対象面120に沿うように原料ガスを供給して成膜することで、原料ガスが成膜対象面120に偏って供給されることを抑制することができるため、成膜対象基板100の成膜対象面120の同一面内における膜厚のバラつきを抑制することができる。
【0047】
なお、原料ガスの流れる方向は、任意に設定することができる。原料ガスの流れる方向は、例えば、成膜対象面120と平行となる方向でもよく、また、
図1に示す矢印Bのように鉛直方向であってもよく、水平方向であってもよい。
【0048】
また、
図2に、成膜中においてウエハ形状の複数の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図を示す。本発明の成膜装置にて成膜する場合には、
図2に示すように複数の成膜対象基板100を成膜する方法であってもよい。一度の処理で成膜可能な枚数の成膜対象基板100を、成膜装置の成膜室中に設置することで、成膜効率を上げることができる。
【0049】
ここで、複数の成膜対象基板100の中心軸130のいずれもが、回転軸200と一致するように設置して成膜することが好ましい。すなわち、いずれの成膜対象基板100も、その中心に回転軸200を挿通可能な開口部110を有しており、開口部110に回転軸200を挿通して串刺し状に複数の成膜対象基板100を配置し、複数のナット210を用いて回転軸200に締結して固定される。このような配置とすることで、複数の成膜対象基板100の中心軸130のいずれもが、回転軸200の回転軸と一致させることができ、いずれの成膜対象基板100についても成膜条件を揃えることができるため、原料ガスがいずれの成膜対象面120に対しても偏って供給されることを抑制できることで、いずれの成膜対象基板100においても、成膜対象面120の同一面内における膜厚のバラつきを抑制することができる。
【0050】
そして、
図2に示すように一度の処理で複数の成膜対象基板100を成膜する場合には、複数の成膜対象基板100の基板間距離140が等間隔であることが好ましい。基板間距離140が等間隔であることにより、いずれの成膜対象面120に対しても原料ガスを偏りなく均等に供給できるため、成膜対象基板100の成膜対象面120の同一面内における膜厚のバラつきを更に抑制することができる。
【0051】
(把持部)
回転軸は、成膜対象基板の端部を把持する把持部を備えることができる。例えば、上記の固定部と同様に、回転軸本体の長手方向全体に亘ってネジ切り加工がされており、さらにナットやワッシャーからなる把持部材を用いて、成膜対象基板の両面からその端部を挟み、その後、把持部材を締結することで、成膜対象基板の端部を把持することができる。また、ナットやワッシャーに代えて、回転軸本体を中通しする開口部を有するスペーサーを把持部材とすることもでき、スペーサーで成膜対象基板の端部を両面から挟みこむことで把持することができる。
【0052】
例えば、カーボン製支持基板を用いて多結晶膜を成膜する場合には、回転軸本体や把持部材は、黒鉛製であることが好ましい。黒鉛製であれば、ネジ切り加工や、ナット状やワッシャー状への加工が容易であり、また、成膜時に不活性雰囲気下とすることで、高温となる成膜条件に十分な耐久性を持つことができる。
【0053】
図3に、固定部による成膜対象基板の固定の態様の一例として、
図2とは異なる態様の、成膜中においてウエハ形状の複数の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図を示す。本発明の製造装置で成膜する場合には、
図3に示すように複数の成膜対象基板100を成膜する方法で行うことにより、一度の処理で成膜可能な枚数の成膜対象基板100を、成膜装置の成膜室中に設置することで、成膜効率を上げることができる。また、
図3に示す態様の場合には、複数の成膜対象基板100が回転対称に回転軸200に配置された回転対称基板群400を構成する。各成膜対象基板100は、固定手段として一対のナット210によって回転軸200に把持して固定されている。固定手段としては、特に限定されないが、例えば中通ししたナット210の他にも、ワッシャー等によって成膜対象基板100を挟んで把持することにより、成膜対象基板100を固定することができる。
【0054】
回転対称基板群400は、同一平面上にある複数の成膜対象基板100から構成されており、
図3では4枚の成膜対象基板100を示しているが、これに限定されず、2~8枚程度で任意の枚数の成膜対象基板100により回転対称基板群400を構成し、回転対称基板群400を一対のナット210によって回転軸200に把持して固定することができる。複数の成膜対象基板100によって回転対称基板群400を構成し、これを回転させることにより、いずれの成膜対象基板100についても成膜条件を揃えることができる。そのため、原料ガスがいずれの成膜対象面120に対しても偏って供給されることを抑制できることで、いずれの成膜対象基板100においても、成膜対象面120の同一面内における膜厚のバラつきを抑制することができる。
【0055】
また、
図4に、
図3とは異なる態様の、成膜中においてウエハ形状の複数の成膜対象基板100が回転軸200に保持される態様の一例を示す概略図を示す。ここで、複数の回転対称基板群400の回転軸410のいずれもが一致することが好ましい。すなわち、いずれの回転対称基板群400の成膜対象基板100も、同一の回転軸200に固定する配置を取る。このような配置とすることで、複数の回転対称基板群400の回転軸410のいずれもが、回転軸200の回転軸と一致させることができ、いずれの成膜対象基板100についても成膜条件を揃えることができるため、原料ガスがいずれの成膜対象面120に対しても偏って供給されることを抑制できることで、いずれの成膜対象基板100においても、成膜対象面120の同一面内における膜厚のバラつきを抑制することができる。
【0056】
そして、
図4に示すように一度の処理で複数の回転対称基板群400の成膜対象基板100を成膜する場合には、複数の回転対称基板群400の間における基板間距離420が等間隔であることが好ましい。基板間距離420が等間隔であることにより、いずれの成膜対象面120に対しても原料ガスを偏りなく均等に供給できるため、成膜対象基板100の成膜対象面120の同一面内における膜厚のバラつきを更に抑制することができる。基板間距離420を等間隔にすることは、例えばナット210の幅を調整することや、ナット210の他にスペーサー等を用いることにより可能である。
【0057】
以上のように、成膜対象基板100を回転させながら成膜を行うことにより、成膜対象基板の成膜対象面の同一面内における膜厚のバラつきを抑制することができる。これにより、成膜時間の短縮、平面研削における研削量の削減等により、生産性の向上や製造コストを低減させることができる。
【0058】
〈回転駆動手段〉
回転駆動手段は、成膜対象基板を保持する回転軸を回転するものである。原動機としてモーターを用いることができる。後述するように、モーターから延びるシャフトに設けられた歯車と回転軸に設けられた歯車とがかみ合うことで、シャフトの回転の向きを変えて回転軸を回転させることにより、回転軸に保持された支持基板を回転させることができる。
【0059】
なお、特に、回転駆動手段を構成するシャフト等の部材が成膜室内に設けられる場合には、これらの部材は黒鉛製であることが好ましい。黒鉛製であれば、加工が容易であり、また、黒鉛製であれば、成膜時に不活性雰囲気下とすることで、高温となる成膜条件に十分な耐久性を持つことができる。回転駆動手段が成膜室の筐体より外部に備えられる場合には、成膜環境に対応できる素材である必要は無く、金属製やFRP製等の、常温常圧で大気雰囲気下において一般的に使用することのできる回転駆動手段であればよい。
【0060】
ここで、回転駆動手段を構成する部品が成膜中に破損して成膜対象基板の回転が止まると、成膜した膜の厚さを均一にすることが難しくなり、基板の生産性が低下することがある。また、部品のコストの観点から、一度だけではなく、何度も繰り返して用いることができることが望ましい。以上のことから、支持基板を回転させる回転駆動手段を構成する部品、特に、最も力が加わる、回転軸の第1歯車と、回転軸の第1歯車にかみ合って回転軸を回転させるシャフトの第2歯車には、強度が求められる。ところが、成膜室内の成膜環境に適用するために、回転駆動手段を構成する、第1歯車と第2歯車を含む部材を黒鉛製にした場合、何度も繰り返して用いることができる強度をもたせることが難しかった。
【0061】
本実施形態の成膜装置における回転駆動手段は、成膜対象基板を保持するとともに、第1歯車を有する回転軸と、第1歯車にかみ合って前記回転軸を回転させる第2歯車を有する。また、第1歯車および第2歯車において、歯部が、それぞれ、当該歯部の表面に形成された第1炭化ケイ素層を有するものである。これにより、第1歯車と第2歯車の強度が高くすることができる。以上のことから、互いにかみ合う第1歯車と第2歯車とが黒鉛製であっても、成膜対象基板を回転させる回転部材(回転軸および回転駆動手段)の成膜中における破損を抑制して、回転部材を繰り返し用いることができる。
【0062】
また、前述の第1歯車および第2歯車が、それぞれ、歯部を保持する円板部をさらに有し、円板部が、それぞれ、当該円板部の表面に形成され、第1炭化ケイ素層と一体の第2炭化ケイ素層を有していてもよい。このような歯車は、円板部と歯部とが一体にされた部材の表面に炭化ケイ素層を形成することにより製造することができる。これにより、回転部材の強度がより高くなり、回転部材の成膜中における破損を抑制して繰り返し用いることができる。
【0063】
(その他の構成)
成膜装置としては、上記以外の構成を備えることができる。例えば、成膜室内の温度を制御するヒーター、ヒーターの外側にあり、成膜装置の外装となる水冷されたステンレス製の筐体等を備えることができる。
【0064】
(成膜装置1000)
以下、本発明の一実施形態である成膜装置について、図面を参照しつつ説明する。
図5に、本発明の一実施形態である成膜装置として、成膜装置1000の概略断面図を示す。
【0065】
成膜装置1000は、成膜室1010の底面から原料ガスを導入し、天井より排出するホットウォール型の熱CVD装置であり、原料ガスが上下方向に流れる構造を有する。成膜装置1000は、複数のナット210を用いて回転軸200に回転可能に保持された成膜対象基板100を成膜する成膜室1010と、成膜室1010へ原料ガスやキャリアガスを導入する導入口1020と、成膜室1010より排出された原料ガスやキャリアガスを成膜装置1000の外部へ排気する排気口1030と、成膜室1010より排出された原料ガスやキャリアガスを排気口1030へ導入する排出ガス導入室1040と、排出ガス導入室を覆うボックス1050と、ボックス1050の外部より成膜室1010内の温度を制御するヒーター1060と、ヒーター1060の外側にあり、成膜装置1000の外装となる水冷されたステンレス製の筐体1100と、を備える。
【0066】
また、成膜装置1000には、回転軸200を回転させる回転駆動手段として、筐体1100の外壁の上部中央に接地するモーター500から、シャフト520がモーター500から筐体1100、ボックス1050、排出ガス導入室1040を貫通して、成膜室1010の内部に伸びている。また、成膜室1010の内部にギアボックス530があって、ギアボックス530より左右に回転軸200が伸びて、ギアボックス530の左右で成膜対象基板100を保持している。さらに、回転軸の両端がベアリング510によりボックス1050に固定されている。
【0067】
なお、回転軸200の回転数は、回転数を制御できるスイッチ等により制御可能であり、ブレーキ等の機械的または電気的制御手段によっても回転を制御することができる。また、回転軸200のギアボックス530とは反対にある端部は、ボックス1050の外壁に接地するベアリング510により、回転軸200の回転を阻害しないようボックス1050に固定されている。
【0068】
図6に、ギアボックス530内のギアの構成を示す概略図を示す。ギアボックス530の内部では、シャフト520の端部付近に設けられた第2歯車520aと、回転軸200においてその長手方向の両端から等距離の部分またはその部分の付近に設けられた第1歯車200aが噛み合うように備えられており、シャフト520による水平方向の回転(矢印C)を回転軸200の上下方向の回転(矢印D)に変換することができる。
【0069】
また、本実施形態において、回転軸200とシャフト520は黒鉛製である。これにより、ギアボックス530が成膜室1010内に設けられていても、成膜環境に適用することができる。
【0070】
ここで、
図8(A)は、第1歯車200aのすべての歯部201の中心軸を通るとともに回転軸200の回転方向と平行な面における、第1歯車200aの断面図である。
図8(A)において、記号Rは、歯部201の直径を示している。第1歯車200aは、回転駆動手段であるシャフト520から伝達される動力を受ける平歯車である。
【0071】
図6、
図8(A)に示すように、第1歯車200aは、回転軸200の周方向の表面に環状に複数(本実施形態においては8本)等間隔に並んで設けられた円柱状の歯部201と、歯部201の歯元202同士の間をつなぐ歯底部203と、を有する。歯底部203は、全体として円環状に形成されている。また、歯部201は、それぞれ、歯部201の表面に形成された第1炭化ケイ素層201aを有する。また、歯底部203は、歯底部203の表面に形成された第2炭化ケイ素層203aを有し、第1炭化ケイ素層201aと第2炭化ケイ素層203aとは一体である。
【0072】
また、
図8(B)は、第2歯車520aのすべての歯部521の中心軸を通るとともにシャフト520の回転方向と平行な面における、第2歯車520aの断面図である。
図8(B)において、記号rは、歯部521の直径を示している。第2歯車520aは、第1歯車200aとかみ合って動力を伝達する平歯車である。
【0073】
図6、
図8(B)に示すように、第2歯車520aは、シャフト520の周方向の表面に環状に複数(本実施形態においては4本)等間隔に並んで設けられた円柱状の歯部521と、歯部521の歯元522同士の間をつなぐ歯底部523と、を有する。歯底部5233は、全体として円環状に形成されている。また、歯部521は、それぞれ、歯部521の表面に形成された第1炭化ケイ素層521aを有する。また、歯底部523は、歯底部523の表面に形成された第2炭化ケイ素層523aを有し、第1炭化ケイ素層521aと一体の第2炭化ケイ素層523aとは一体である。
【0074】
図6に示すように、ギアボックス530内において、第1歯車200aの歯部201と第2歯車520aの歯部521とが外接することにより、第1歯車200aと第2歯車520aとがかみ合い、(回転駆動手段)シャフト520からの動力を第2歯車520aに伝達して、回転軸200を回転させることができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、第1歯車200aが歯数の多いギア、第2歯車520aが歯数の少ないピニオンとして構成されているが、歯車の大小関係は特に限定されない。また、歯車の形状、歯車の構成等は本実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0076】
また、第1炭化ケイ素層と第2炭化ケイ素層の厚さは、例えば200μm~1000μm程度とすることができる。薄すぎると、強度が不十分となることがあり、厚すぎると、駆動可能な機械寸法公差を逸脱することがある。よって、上記範囲とすることにより、第1歯車200aと第2歯車520aの強度を十分に高めることができ、また、駆動可能な機械寸法公差を逸脱することを抑制することができる。
【0077】
また、上記のような第1炭化ケイ素層と第2炭化ケイ素層の形成方法は特に限定されないが、第1炭化ケイ素層と第2炭化ケイ素層は、部材に対して化学気相成長法により炭化ケイ素多結晶膜を成膜することにより形成することができる。
【0078】
例えば、成膜装置1000に成膜対象基板100を設置せず、炭化ケイ素層のないシャフトと回転軸を設置したうえで成膜装置1000を運転し(いわゆる成膜装置1000の空運転を行い)、第2歯車と第1歯車の表面に炭化ケイ素多結晶膜を成膜することにより、第1炭化ケイ素層と第2炭化ケイ素層を形成してもよい。なお、第1炭化ケイ素層、第2炭化ケイ素層を形成するときに、炭化ケイ素層が不要の箇所には表面にマスキングしておき炭化ケイ素層を形成したあとにマスキングを除去することにより、所望の箇所にのみ炭化ケイ素層を形成することができる。
【0079】
成膜装置1000においては、このようなモーター500、シャフト520、ギアボックス530内の第1歯車521、第2歯車201を備える回転駆動手段によって、モーターの駆動によりシャフト520が回転し、さらに、回転軸200を回転させることができる。
【0080】
なお、上述の実施形態においては、第1歯車200aと第2歯車520aの表面全体に炭化ケイ素層が形成されている例を示したが、歯部のみに炭化ケイ素層が形成されていてもよい。
【0081】
図7は、上述したギアボックス530内のギアの変形例を示す図である。
図7に示すギアは、回転軸に設けられた第1歯車200bと、シャフト520に設けられた第2歯車と、を有する。上述したギアボックス530内のギア(
図6)とは異なり、第1歯車200bは、炭化ケイ素層として、歯部201の表面に形成された第1炭化ケイ素層201aのみを有するが、第2炭化ケイ素層203aを有しない。また、第2歯車520bは、炭化ケイ素層として、歯部521の表面に形成された第1炭化ケイ素層521aのみを有するが、第2炭化ケイ素層523aを有しない。このように、第1歯車と第2歯車において最も力が加わる箇所は歯部201、521であることから、
図7に示すように、第1歯車200aと第2歯車520aには、歯部201、521のみに炭化ケイ素層(すなわち、第1炭化ケイ素層201a、521aのみ)が形成されていてもよい。
【0082】
なお、上述した実施形態の成膜装置において、成膜室内には、基板へのコンタミを防止するために、可能な限り、目的の基板を構成する物質以外の物質が存在しないようにすることが好ましい。すなわち、炭化ケイ素多結晶基板を製造する場合には、成膜装置を構成する材料として、炭化ケイ素と、成膜後に除去可能な黒鉛等以外の物質を用いないことが好ましい。このことから、前述した実施形態と同様の成膜装置を用いて窒化ガリウム(GaN)基板、シリコン(Si)基板等の炭化ケイ素以外の基板を製造する場合には、ギアボックス内の歯車が有する炭化ケイ素層に替えて、窒化ガリウム層、シリコン層を設けることができる。
【0083】
[基板の製造方法の一例]
次に、前述した実施形態の成膜装置を用いた基板の製造方法について、その一例を説明する。以下の説明においては、
図5に示した成膜装置1000を用いて、炭化ケイ素多結晶基板を製造する方法を例示する。
【0084】
まず、
図5に示す成膜装置1000の成膜室1010において、複数の成膜対象基板100を回転軸200に固定する。そして、成膜室1010内から大気を除去するために、ロータリーポンプ等で成膜室1010内を真空引きした後、Ar等の不活性ガスで成膜室1010内を大気圧に戻し、不活性ガスを流しながら成膜室1010内を反応温度まで昇温させる。成膜室1010内が反応温度に達したら、不活性ガスを止め、モーター500を動かして回転軸200を回転させることにより、成膜対象基板100を回転させながら原料ガスおよびキャリアガス等を成膜室1010内へ流す。これにより、成膜対象基板100に膜を成膜することができる。
【0085】
また、基板の製造方法として、炭化ケイ素多結晶基板の製造方法を例として挙げると、かかる製造方法は、以下に説明する露出工程と燃焼除去工程を更に含む。
【0086】
〈露出工程〉
露出工程の一例としては、上記した成膜方法により得た、表面に炭化ケイ素多結晶膜が成膜したカーボン支持基板に対し、成膜した炭化ケイ素多結晶膜の端部を除去してカーボン支持基板を露出させる工程が挙げられる。この工程により、カーボン支持基板が露出され、後述する燃焼除去工程によりカーボン支持基板を気化させ易くなる。
【0087】
成膜工程によって、カーボン支持基板の側壁には炭化ケイ素多結晶膜が成膜されるため、これを例えば端面加工装置に投入して、成膜した炭化ケイ素多結晶膜の端面から内側へ2~4mm研削して、カーボン支持基板の端面を露出させることができる。なお、炭化ケイ素多結晶膜の成膜前に、カーボン支持基板の外周部をリング状の黒鉛等でマスクしておけば、端面加工は不要であり、この場合には、マスクを除去することが露出工程となる。
【0088】
または、所望の直径(例えば、6インチ径)となるように、表面に炭化ケイ素多結晶膜が成膜したカーボン支持基板をコアドリル等でくり抜くことで、カーボン支持基板を側面外周において露出させることができる。
【0089】
〈燃焼除去工程〉
燃焼除去工程の一例としては、大気雰囲気中において、圧力を1気圧、温度800℃の条件下に、露出工程後のカーボン支持基板を100時間以上保持する工程が挙げられる。本工程により、カーボン支持基板を燃焼させて除去できるため、炭化ケイ素多結晶基板を得ることができる。
【0090】
(研磨工程)
炭化ケイ素多結晶基板の製造方法では、燃焼除去工程後、成膜した炭化ケイ素多結晶膜の表面を研磨する研磨工程を含んでもよい。炭化ケイ素多結晶基板は、半導体の製造に用いられる基板とするのであれば、半導体製造プロセスで使用できる面精度が必要となる。そこで、本工程により、炭化ケイ素基板の表面を平滑化することが好ましい。
【0091】
例えば、炭化ケイ素基板をダイアモンドスラリーでラップ処理し、ダイアモンドとアルミナとの混合スラリーでハードポリッシュした後に、シリカスラリー(コロイダルシリカ、pH11)でポリッシュするという工程を経て、炭化ケイ素基板の表面を平滑化することができる。
【0092】
(その他の工程)
上述した製造方法においては、上記の工程以外にも、他の工程を含むことができる。例えば、研磨工程による炭化ケイ素基板への付着物を除去するための洗浄工程等が挙げられる。また、本発明の基板の製造方法としては、炭化ケイ素多結晶基板とは異なる基板を製造する場合において、基板を製造するための任意の工程を含むことができる。
【0093】
本実施形態の成膜装置であれば、互いにかみ合う第1歯車と第2歯車とが黒鉛製であっても、第1歯車と第2歯車の強度が高くなることから、成膜対象基板を回転させる回転部材(回転軸および回転駆動手段)の成膜中における破損を抑制して繰り返し用いることができる。よって、成膜装置の部品コストを低減することにより、基板の製造コストを抑えることができる。
【0094】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、前述した実施形態の変形等も本発明に含まれる。
【0095】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例0096】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。ここでは、成膜対象
基板としてカーボン支持基板を使用し、カーボン支持基板に炭化ケイ素多結晶膜を成膜し
た。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
炭化ケイ素多結晶膜の成膜に使用した成膜装置1000としては、成膜室1010の底面から原料ガスを導入し、天井より排出するホットウォール型の熱CVD装置用いた。また、前述の実施形態において説明したように、第1歯車200aと第2歯車520aとに、第1炭化ケイ素層(厚さ500μm)と第2炭化ケイ素層(厚さ500μm)とが形成されている回転駆動手段を用いた。成膜対象基板100としては、厚み5mmで直径400mmのウエハ形状であり、中心に直径50mmの開口部110を有するカーボン支持基板を使用した。
図2、
図5に示す態様のように、成膜対象基板100を、その面法線300が回転軸200と平行であり、かつ原料ガスの流れる方向と直交するように、成膜室1010内に配置した。成膜に使用した成膜対象基板100は6枚であり、各成膜対象基板100の向かい合う成膜対象面120の基板間距離140がいずれも20mmとなるように、回転軸200に串刺し状に固定した。なお、成膜対象基板100の間を通過する原料ガスの流れが均等となるように、成膜室1010の内壁と、その内壁と対向する成膜対象面120との距離も20mmとなるように設置した。
【0098】
成膜室1010内を排気ポンプにより真空引きを行って減圧状態とした後、Arガスを導入して成膜室1010内の圧力を大気圧に戻し、Arガスをフローさせながら、成膜室1010内を1400℃まで加熱した。原料ガスとして、SiCl4、CH4を使用し、キャリアガスとしてH2を用いた。成膜対象基板100をいずれも1rpmの回転速度で回転させながら、ガスの流量比がSiCl4:CH4:H2=1:1:10となる条件で、成膜対象面120のおもて面120aとうら面120bに対し、2.5時間の成膜を実施した。このときの成膜室1010内の圧力は、20kPaとなるよう圧力制御を実施した。
【0099】
成膜工程終了後、炭化ケイ素多結晶膜が成膜した成膜対象基板100を内径が151mmのコアドリルを用いて、1枚の成膜対象基板100から直径150mmの基板を4枚くりぬいた。くりぬいた各基板の外周部は、成膜対象基板100であるカーボン支持基板が露出した状態である。この基板を大気雰囲気で800℃、100時間以上加熱することで、カーボン支持基板を燃焼除去し、1枚の成膜対象基板100あたり合計8枚の炭化ケイ素多結晶基板を分離した。残り5枚の炭化ケイ素多結晶膜が成膜した成膜対象基板100についても、同様の露出工程と燃焼除去工程による処理をすることで、1バッチ当たり合計48枚の炭化ケイ素多結晶基板を得た。
【0100】
上記の製造工程を1回として、同じシャフト520と回転軸200を繰り返し用いて、製造工程を30回繰り返して行った。なお、1回目の製造工程には、新品のシャフトと回転軸を用いた。その結果、シャフトと回転軸の歯車には損傷、破損はなく、目視にて確認したところ、さらに製造に用いることができる状態であった。また、得られた炭化ケイ素多結晶基板の厚さを確認したところ、最も薄い箇所は130μm、最も厚い箇所は400μmであった。また、基板を目視にて確認したところ、後工程において問題となるような異常等はなく、良好な基板が得られたことが分かった。
【0101】
(比較例1)
成膜装置において、第1歯車と第2歯車とに、第1炭化ケイ素層と第2炭化ケイ素層とが形成されていない回転駆動手段を用いたこと以外は前述の実施例1と同様にして炭化ケイ素多結晶基板を製造した。
【0102】
すなわち、比較例1の成膜装置においては、
図9に示すギアを用いた。
図9に示すギアは、回転駆動手段(シャフト720)から伝達される動力を受ける第1歯車600aを有する回転軸と、第1歯車600aとかみ合って動力を伝達する第2歯車720aを有するシャフト720と、を有する。第1歯車600aは歯部601を有し、第2歯車720aは歯部721を有しており、歯部601、721の表面には炭化ケイ素層は形成されていない。第1歯車600aの歯部600と第2歯車720aの歯部721がかみ合うことにより、シャフト720の回転(矢印E)を回転軸の回転(矢印F)に変換することができる。
【0103】
このような成膜装置を用いて製造工程を繰り返し行ったところ、製造24回目において回転が停止した。回転が停止した成膜工程後に成膜装置内を確認したところ、第2歯車が破損しており、これによりモーターの回転を回転軸に伝えることができずに、回転軸の回転が停止したことが分かった。また、得られた炭化ケイ素多結晶基板の厚さを確認したところ、最も薄い箇所は100μm、最も厚い箇所は460μmであり、得られた基板には成膜の偏りがあったことが分かった。
【0104】
(まとめ)
本発明の例示的態様である成膜装置1000を用いた実施例1の結果から、第1歯車と第2歯車に炭化ケイ素層を形成することにより、互いにかみ合う第1歯車と第2歯車の強度が高くなり、成膜対象基板を回転させる回転駆動手段を構成する部材の成膜中における破損を抑制して、妥当な交換時期まで繰り返し用いることができることが示された。また、このような回転駆動手段を用いて成膜対象基板を回転させながら成膜させることにより、炭化ケイ素多結晶膜の成膜の偏りを抑制して、同一面内における膜厚のバラつきを抑制して、生産性の向上や製造コストを低減させることができることが示された。