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特開2022-69394流量比率制御装置、流量比率制御装置用制御プログラム、及び、流量比率制御装置の制御方法
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  • 特開-流量比率制御装置、流量比率制御装置用制御プログラム、及び、流量比率制御装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069394
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】流量比率制御装置、流量比率制御装置用制御プログラム、及び、流量比率制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
G05D7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149621
(22)【出願日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020177842
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】ガンダラッチ マックス
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ホーク トーマス
【テーマコード(参考)】
5H307
【Fターム(参考)】
5H307AA02
5H307BB01
5H307CC03
5H307DD01
5H307DD02
5H307EE02
5H307ES02
5H307FF03
5H307FF12
5H307FF27
5H307HH04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、スムーズに切り替える流量比率制御装置を提供する。
【解決手段】メイン流路から分岐した少なくとも2つの分岐流路と、弁体の位置を検出するセンサを有する第1の流体制御バルブと分岐流路の他方に設けた第2の流体制御バルブと、前記メイン流路を流れる流量を前記第1及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための弁体の基準位置を記憶する記憶部と、第1の流体制御バルブをその弁体が基準位置となるように位置制御し、第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量比率を制御する流量比率制御部とを備え、流量比率制御部は、流量制御する第2の流体制御バルブの弁体の位置が基準位置に到達すると、流体制御バルブの位置制御及び流量制御を切り替え、第2の流体制御バルブをその弁体が基準位置となるように位置制御し、第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン流路から分岐した少なくとも第1及び第2の分岐流路と、
前記第1の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第1の流体制御バルブと、
前記第2の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第2の流体制御バルブと、
前記流体制御バルブそれぞれにおいて、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための前記弁体の基準位置を記憶する記憶部と、
前記第1の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御して、前記少なくとも第1及び第2の分岐流路の流量比率を制御する流量比率制御部とを備え、
前記流量比率制御部は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体の位置が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御する、流量比率制御装置。
【請求項2】
前記流量比率制御部は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体を全閉位置から前記基準位置となるように徐々に変位させて前記弁体の位置が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が徐々にゼロとなるように流量制御する、請求項1に記載の流量比率制御装置。
【請求項3】
前記所定の流量比率は、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路と前記第2の分岐流路とに等分配するものであり、
前記基準位置は、前記流体制御弁の全開位置として設定される位置である、請求項1又は2に記載の流量比率制御装置。
【請求項4】
前記第1の流体制御バルブは、前記第1の分岐流路に設けられた流量センサとともに第1の流体制御装置を構成するものであり、
前記第2の流体制御バルブは、前記第2の分岐流路に設けられた流量センサとともに第2の流体制御装置を構成するものである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の流量比率制御装置。
【請求項5】
メイン流路から分岐した少なくとも第1及び第2の分岐流路と、前記第1の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第1の流体制御バルブと、前記第2の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第2の流体制御バルブとを備える流量比率制御装置に用いられる制御プログラムであって、
前記流体制御バルブそれぞれにおいて、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための前記弁体の基準位置を記憶する記憶部と、
前記第1の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御して、前記少なくとも第1及び第2の分岐流路の流量比率を制御する流量比率制御部としての機能をコンピュータに備えさせるものであり、
前記流量比率制御部は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体の位置が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御する、流量比率制御装置用制御プログラム。
【請求項6】
メイン流路から分岐した少なくとも第1及び第2の分岐流路と、前記第1の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第1の流体制御バルブと、前記第2の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第2の流体制御バルブとを備える流量比率制御装置の制御方法であって、
前記流体制御バルブそれぞれにおいて、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための前記弁体の基準位置を記憶する記憶工程と、
前記第1の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御して、前記少なくとも第1及び第2の分岐流路の流量比率を制御する流量比率制御工程とを備え、
前記流量比率制御工程は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体の位置が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御する、流量比率制御装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン流路から分岐する複数の分岐流路を流れる流体の流量比率を制御する流量比率制御装置、当該流量比率制御装置に用いられる制御プログラム、及び、流量比率制御装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流量比率制御装置(フロースプリッタとも呼ばれる。)としては、例えば特許文献1に示すように、メイン流路から分岐した複数の分岐流路それぞれに流体制御バルブを設け、流量を最も大きくする分岐流路の流体制御バルブを流速制御し、その他の分岐流路の流体制御バルブを流量制御することによって、複数の分岐流路を流れる流体の流量比率を制御するものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/047644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の流量比率制御装置において、流量が最も大きい分岐流路の流体制御バルブ(以下、流体制御バルブA)を全開状態とし、その他の分岐流路の流体制御バルブ(以下、流体制御バルブB)を流量制御することによって、複数の分岐流路を流れる流体の流量比率を制御することが考えられている。この構成では、流体制御バルブAを全開状態にすれば良いので、その制御が容易になる。
【0005】
ここで、流量が最も大きい分岐流路を切り替える場合には、流体制御バルブBの流量を徐々に大きくしていき、流体制御バルブBが全開状態となった後に、流体制御バルブAを流量制御に切り替え、流体制御バルブBを全開状態のまま維持することが考えられる。つまり、流量が最も大きい分岐流路が切り替わるタイミングでは、流体制御バルブA、Bの両方が全開状態となる。
【0006】
しかしながら、複数の分岐流路それぞれのコンダクタンスの違いによって、流体制御バルブA、Bの両方が全開状態であったとしても、複数の分岐流路に流量が均等に分配されない。そのため、流量が最も大きい分岐流路が切り替わるポイント(切り替えポイント)が複数の分岐流路の流量が均等な状態で行われないという問題がある。また、複数の分岐流路に設けられる流体制御バルブには個体差などがあり、それら流体制御バルブを全開状態とするための駆動信号(電圧信号)を入力しても、同一の流量が流れるとは限らない。そうすると、流量が最も大きい分岐流路を他の切り替える際に、分岐流路を流れる流量に急激な変化(スパイク)が発生してしまい、分岐流路の切り替えがスムーズに行われないという問題がある。その結果、上記制御を行う流量比率制御装置を例えば半導体製造処理に用いた場合などに不具合が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものであり、流量比率制御装置において流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、複数の分岐流路の流量が均等な状態で切り替えることができ、分岐流路を流れる流量に急激な変化(スパイク)を生じさせること無く、分岐流路をスムーズに切り替えることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る流量比率制御装置は、メイン流路から分岐した少なくとも第1及び第2の分岐流路と、前記第1の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第1の流体制御バルブと、前記第2の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第2の流体制御バルブと、前記流体制御バルブそれぞれにおいて、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための前記弁体の基準位置を記憶する記憶部と、前記第1の流体制御バルブをその弁体の位置が前記基準位置となるように位置制御し、前記第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御して、前記少なくとも第1及び第2の分岐流路の流量比率を制御する流量比率制御部とを備え、前記流量比率制御部は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御することを特徴とする。
【0009】
このような流量比率制御装置であれば、流体制御バルブそれぞれにおいて所定の基準流量を流すための弁体の基準位置を記憶しておき、当該基準位置に基づいて第1の流体制御バルブと第2の流体制御バルブとを切り替えているので、流量比率制御装置において流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、複数の分岐流路の流量が均等な状態で切り替えることができ、分岐流路を流れる流量に急激な変化(スパイク)を生じさせること無く、分岐流路をスムーズに切り替えることができる。
【0010】
詳細には、複数の分岐流路それぞれに設けられた流体制御バルブの弁体の基準位置を、複数の分岐流路のうち、最低のコンダクタンスとなる分岐流路に設けられた流体制御バルブの弁体の基準位置に基づいて正規化することにより、流量比率制御装置において流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、複数の分岐流路の流量が均等な状態で切り替えることができる。また、このように正規化することによって、システム全体で可能な限り低い差圧を維持することができ、流量比率制御装置から例えばプロセスチャンバへのガス供給の到達時間を短くすることができる。さらに、本発明によれば、複数の分岐流路において流体制御バルブから例えばプロセスチャンバまでの流路のコンダクタンスを正規化することができるので、例えば流路に設けられたフィルタやチャンバに設けられたシャワーヘッド等の下流のコンポーネントで発生するシステム変動をキャンセルすることができる。
【0011】
具体的な流量比率制御装置の動作の一例としては、メイン流路を流れる流体の流量を変化させること無く、流体が流れる分岐流路を第1の分岐流路から第2の分岐流路に連続的に切り替えることが考えられる。この場合、前記流量比率制御部は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体を全閉位置から前記基準位置となるように徐々に変位させて前記弁体の位置が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が徐々にゼロとなるように流量制御することが望ましい。
【0012】
具体的に前記所定の流量比率は、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路と前記第2の分岐流路とに等分配するものであることが考えられる。この場合、前記基準位置は、前記流体制御弁の全開位置として設定される位置とすることが望ましい。
【0013】
前記第1の流体制御バルブは、前記第1の分岐流路に設けられた流量センサとともに第1の流体制御装置を構成するものであり、前記第2の流体制御バルブは、前記第2の分岐流路に設けられた流量センサとともに第2の流体制御装置を構成するものであることが望ましい。
【0014】
また、本発明に係る流量比率制御装置用制御プログラムは、メイン流路から分岐した少なくとも第1及び第2の分岐流路と、前記第1の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第1の流体制御バルブと、前記第2の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第2の流体制御バルブとを備える流量比率制御装置に用いられる制御プログラムであって、前記流体制御バルブそれぞれにおいて、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための前記弁体の基準位置を記憶する記憶部と、前記第1の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御して、前記少なくとも第1及び第2の分岐流路の流量比率を制御する流量比率制御部としての機能をコンピュータに備えさせるものであり、前記流量比率制御部は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御することを特徴とする。このような制御プログラムを既存の流量比率制御装置にインストールすることによって、上述した本発明の流量比率制御装置と同様の機能を発揮することができる。
【0015】
また、本発明に係る流量比率制御装置の制御方法は、メイン流路から分岐した少なくとも第1及び第2の分岐流路と、前記第1の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第1の流体制御バルブと、前記第2の分岐流路に設けられ、弁体の位置を検出するポジションセンサを有する第2の流体制御バルブとを備える流量比率制御装置の制御方法であって、前記流体制御バルブそれぞれにおいて、前記メイン流路を流れる流量を前記第1の分岐流路及び前記第2の分岐流路に所定の流量比率で分配するための前記弁体の基準位置を記憶する記憶工程と、前記第1の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第2の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御して、前記少なくとも第1及び第2の分岐流路の流量比率を制御する流量比率制御工程とを備え、前記流量比率制御工程は、流量制御する前記第2の流体制御バルブの弁体が前記基準位置に到達すると、前記流体制御バルブそれぞれの位置制御及び流量制御を切り替え、前記第2の流体制御バルブをその弁体が前記基準位置となるように位置制御し、前記第1の流体制御バルブを流量が目標流量となるように流量制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べた本発明によれば、流量比率制御装置において流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、複数の分岐流路の流量が均等な状態で切り替えることができ、分岐流路を流れる流量に急激な変化(スパイク)を生じさせること無く、分岐流路をスムーズに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る流量比率制御装置の全体模式図である。
図2】同実施形態の流量制御装置を示す模式図である。
図3】同実施形態のフローノーマライゼーションの手順を示す図である。
図4】同実施形態の流体制御バルブの制御内容及び分岐流路の流量を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る流量比率制御装置について、図面を参照して説明する。
【0019】
<1.装置構成>
本実施形態の流量比率制御装置100は、図1に示すように、例えば半導体製造プロセスに用いられるものであり、ウエハを収容する真空チャンバ200内に、半導体プロセス用のガスを、真空チャンバ200の複数の導入口からそれぞれ予め定められた流量比率で導入するために用いられるものである。
【0020】
具体的に流量比率制御装置100は、メイン流路MLと、当該メイン流路L1から分岐した複数の分岐流路BL1~BL4と、複数の分岐流路BL1~BL4それぞれに設けられた複数の流体制御装置MFC1~MFC4と、複数の流体制御装置MFC1~MFC4の制御を統括するマスター制御器COMとを備え、各分岐流路BL1~BL4を流れるガスの流量比率が目標流量比率となるように制御するように構成されている。
【0021】
メイン流路MLは、半導体プロセス用のガスを供給するガス源300に上流側の始端が接続されており、下流側の終端に複数の分岐流路BL1~BL4が接続されている。図1では、4つの分岐流路BL1~BL4が接続された例を示しているが、2つ以上の分岐流路BLであれば特に限定されない。
【0022】
各流体制御装置MFC1~MFC4は、いわゆるマスフローコントローラと呼ばれるものであり、図2に示すように、分岐流路BL1~BL4に連通する内部流路が形成されたブロック2と、当該ブロック2に設けられ内部流路の流量を制御するための流体制御バルブ3と、ブロック2に設けられ、内部流路において流体制御バルブ3の上流側又は下流側に設けられた流量センサ4と、流体制御バルブ3を制御するバルブ制御部5とを備えている。なお、以下では、各流体制御装置MFC1~MFC4の構成部品を区別する場合には、第1の流体制御バルブ31、第2の流体制御バルブ32等という。
【0023】
流体制御バルブ3は、内部流路の途中に設けられた弁座31と、当該弁座31に対して接離する弁体32と、当該弁体32を移動させる例えばピエゾ素子からなるアクチュエータ33とを有している。なお、流体制御バルブ3は、アクチュエータ33を駆動しない状態で全開状態となるノーマルオープン型のものであっても良いし、アクチュエータ33を駆動しない状態で全閉状態となるノーマルクローズ型のものであっても良い。
【0024】
また、流体制御バルブ3は、弁座31に対する弁体32の位置を検出するポジションセンサ6をさらに有している。ポジションセンサ6は、例えば渦電流式の非接触型の変位センサである。このポジションセンサ6により得られた検出位置は、バルブ制御部5に出力される。
【0025】
流量センサ4は、例えば圧力式のものであり、内部流路に設けられた層流素子41と、当該層流素子41の上流側の圧力を検出する上流側圧力センサ42と、層流素子41の下流側の圧力を検出する下流側圧力センサ43と、各圧力センサ42、43で検出される検出圧力に基づいて、流量を出力する流量出力回路44とを有している。そして、流量出力回路44は、上流側圧力センサ42の検出圧力と下流側圧力センサ43の検出圧力との差圧から流体の流量を算出してバルブ制御部5に出力する。なお、流量センサ4は、熱式のものを用いても良い。
【0026】
バルブ制御部5は、マスター制御器COMの指令に基づいて、流体制御バルブ3を流量制御又は位置制御するものである。また、バルブ制御部5は、マスター制御器COMとともに後述する流量比率制御部8としての機能を発揮する。
【0027】
バルブ制御部5が流体制御バルブ3を流量制御する場合には、予め設定された目標流量とするための目標位置とポジションセンサ6により検出された検出位置との偏差に基づき、当該偏差が小さくなるように流量フィードバック制御を行う(流量制御モード)。この場合、バルブ制御部5は、目標位置と検出位置との偏差に基づいて、ポジションセンサ6の測定位置が検出位置となるように流体制御バルブ3への印加電圧が制御される。なお、バルブ制御部5は、予め設定された目標流量と流量センサ4により測定された測定流量との偏差に基づき、当該偏差が小さくなるように流量フィードバック制御を行っても良い。この場合、目標流量と測定流量の偏差に基づいて目標開度を算出し、ポジションセンサ6の示す開度が目標開度となるように流体制御バルブ3への印加電圧が制御される。
【0028】
また、バルブ制御部5が流体制御バルブ3を位置制御する場合には、予め設定された目標位置とポジションセンサ6により検出された検出位置との偏差に基づき、当該偏差が小さくなるように位置フィードバック制御を行う(位置制御モード)。つまり、バルブ制御部5は、流体制御バルブ3を位置制御する場合には、流量センサ4で測定される測定流量を用いたフィードバック制御は行わない。
【0029】
本実施形態では、目標流量比率の最も大きい分岐流路(ここでは第1の分岐流路BL1)であるマスターラインに設けられた流体制御装置MFC1のバルブ制御部5が、位置制御モードで動作する。一方、上記マスターライン以外の分岐流路BL2~BL4であるスレーブラインに設けられている流体制御装置MFC2~MFC4のバルブ制御部5が、流量制御モードで動作する。
【0030】
ここで、位置制御モードにおける目標位置について説明する。
本実施形態の流量比率制御装置100は、各流体制御バルブ3において、メイン流路MLを流れる流量を複数の分岐流路BL1~BL4に所定の流量比率で分配するための弁体32の基準位置を記憶する記憶部7を有している。なお、記憶部7は、図2に示すように、各流体制御機器MFC1~MFC4のメモリに個別に設けても良いし、マスター制御器COMのメモリに一括して設けても良い。
【0031】
そして、記憶部7には、各流体制御バルブ3において、メイン流路MLを流れる流量を複数の分岐流路BL1~BL4に所定の流量比率で分配するための弁体32の基準位置が記憶されている。ここで、流体制御バルブ3毎に設定された弁体32の基準位置は、流体制御バルブ3の全開位置として設定される位置である。そして、この基準位置が位置制御モードにおける目標位置となる。
【0032】
本実施形態の所定の流量比率は、メイン流路MLを流れる流量(例えば4L)を複数の分岐流路BL1~BL4に等分配(各分岐流路BL1~BL4の流量は1L)したものである。
【0033】
<2.基準位置の設定方法>
ここで、基準位置は、図3に示すように、例えば以下のフローノーマライゼーション手順により予め求められて、流体制御バルブ3毎に記憶部7に記憶される。
【0034】
第1~第4の分岐流路BL1~BL4に設けられた複数の流体制御バルブ3それぞれに物理的な全開状態とするための駆動信号(電圧信号)を入力し、その時にポジションセンサ6により検出される弁体32の位置(全開位置)を取得する(ステップS1)。
【0035】
また、第1~第4の分岐流路BL1~BL4に設けられた複数の流体制御バルブ3それぞれに物理的な全閉状態とするための駆動信号(電圧信号)を入力し、その時にポジションセンサ6により検出される弁体32の位置(全閉位置)を取得する(ステップS2)。
【0036】
そして、第1~第4の分岐流路BL1~BL4を流れる流体の分流比率が所定の分流比率(ここでは分流比率が同じ(各25%))となるように流体制御バルブ3を全開状態として、そのときの第1~第4の分岐流路BL1~BL4を流れる流体の分流比率を求める(ステップS3)。
【0037】
ステップS3により求めた分流比率と前記所定の分流比率とを比較して(ステップS4)、それらの差が所定の閾値よりも大きい場合には、第1~第4の分岐流路BL1~BL4に設けられた複数の流体制御バルブ3のうち、何れかの流体制御バルブ3の全開位置を変更する(ステップS5)。例えば、最も差の大きい分岐流路に設けられた流体制御バルブ3の全開位置を変更する。
【0038】
そして、変更後の全開位置を用いて、上記のステップS3に戻り、第1~第4の分岐流路BL1~BL4を流れる流体の分流比率と前記所定の分流比率との差が前記所定の閾値未満となるまで、流体制御バルブ3の全開位置の変更を繰り返す。これにより求めた各流体制御バルブ3の全開位置を基準位置として記憶部7に記憶させる(ステップS6)。
【0039】
マスター制御器COMは、ユーザから受け付けられた各分岐流路BL1~BL4を流れるガスの目標流量比率に基づいて、各流体制御機器MFC1~MFC4に指令を入力し、マスターラインとなる分岐流路BL1に設けられた流体制御装置MFC1には位置制御を行うための位置制御モードを実行させ、その他の分岐流路BL2~BL4に設けられた流体制御装置MFC2~MFC4には目標流量比率から算出される個別の目標流量を入力して流量制御モードを実行させる。なお、このマスター制御器COMと各流量制御装置MFC1~MFC4のバルブ制御部5とが協働することにより、以下に示す流量比率制御部8としての機能を発揮する。
【0040】
このとき、流量比率制御部8は、マスターラインとなる分岐流路BL1に設けられた流体制御装置MFC1の流体制御バルブ3をその弁体32の位置が基準位置となるようにポジションセンサ6により検出された検出位置に基づいて位置制御し、スレーブラインとなる分岐流路BL2~BL4に設けられた流体制御装置MFC2~MFC4の流体制御バルブ3を流量が目標流量となるように流量制御して、複数の分岐流路BL1~BL4の流量比率を制御する。
【0041】
<3.マスターラインの切り替え動作>
そして、流量比率制御部8は、メイン流路MLを流れる流体の流量を変化させること無く、目標流量比率の最も大きい分岐流路(マスターライン)を第1の分岐流路BL1から第2の分岐流路BL2に連続的に切り替えることが考えられる。なお、ここでは、第1の分岐流路BL1と第2の分岐流路BL2との間で切り替える場合を例示するが、その他の分岐流路間で切り替える場合も同様である。
【0042】
この場合、流量比率制御部8は、図4に示すように、第2の分岐流路BL2に設けられた第2の流体制御バルブ3を流量制御モードにより、その弁体32を全閉位置から基準位置となるように徐々に変位させる。ここでは、第2の分岐流路BL2を流れる流量が直線的に増大するように弁体32を徐々に変位させる。
【0043】
そして、第2の分岐流路BL2に設けられた第2の流体制御バルブ3の弁体32の位置が基準位置に到達すると、第2の流体制御バルブ3を流量制御から位置制御に切り替え、第2の流体制御バルブ3をその弁体32が基準位置となるように位置制御し、第1の分岐流路BL1に設けられた第1の流体制御バルブ3を第1の分岐流路BL1の流量が徐々に減少してゼロとなるように流量制御する。ここでは、第1の分岐流路BL1を流れる流量が直線的に減少するように弁体32を徐々に変位させる。なお、第1の分岐流路BL1から第2の分岐流路BL2に連続的に切り替える一連の動作において、第1の分岐流路BL1を流れる流量が直線的に減少し、第2の分岐流量BL2を流れる流量が直線的に増加する。これにより、目標流量比率の最も大きい分岐流路(マスターライン)が第1の分岐流路BL1から第2の分岐流路BL2に連続的に切り替えられる。なお、図4では、マスターラインを「第1の分岐流路BL1」から「第2の分岐流路BL2」に切り替えた後、再び、マスターラインを「第2の分岐流路BL2」から「第1の分岐流路BL1」に切り替えた場合を例示している。
【0044】
また、図4のような切り替え動作を行うことによって、流量比率制御装置100の分岐流路BL1、Bl2を切り替える動作の性能評価も行うことができる。つまり、第1の分岐流路BL1と第2の分岐流路BL2との相互の切り替えポイントが、分岐流路BL1、Bl2を流れる流量に急激な変化(スパイク)が生じているか否かを判定することにより、流量比率制御装置100の性能評価を行うことができる。
【0045】
<4.本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の流量比率制御装置100によれば、流体制御バルブ3それぞれにおいて所定の基準流量を流すための弁体の基準位置を記憶しておき、当該基準位置に基づいて第1の流体制御バルブ3と第2の流体制御バルブ3とを切り替えているので、流量比率制御装置100において流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、複数の分岐流路BL1~BL4の流量が均等な状態で切り替えることができ、分岐流路BL1、Bl2を流れる流量に急激な変化(スパイク)を生じさせること無く、分岐流路をスムーズに切り替えることができる。
【0046】
詳細には、複数の分岐流路BL1~BL4それぞれに設けられた流体制御バルブ3の弁体32の基準位置を、複数の分岐流路BL1~BL4のうち、最低のコンダクタンスとなる分岐流路に設けられた流体制御バルブ3の弁体32の基準位置に基づいて正規化することにより、流量比率制御装置100において流量が最も大きい分岐流路を切り替える際に、複数の分岐流路BL1~BL4の流量が均等な状態で切り替えることができる。また、このように正規化することによって、システム全体で可能な限り低い差圧を維持することができ、流量比率制御装置100から例えばプロセスチャンバへのガス供給の到達時間を短くすることができる。さらに、本実施形態によれば、複数の分岐流路BL1~BL4において流体制御バルブ3から例えばプロセスチャンバまでの流路のコンダクタンスを正規化することができるので、例えば流路に設けられたフィルタやチャンバに設けられたシャワーヘッド等の下流のコンポーネントで発生するシステム変動をキャンセルすることができる。
【0047】
例えば半導体プロセスに用いられる真空チャンバ200に接続された複数の分岐流路BL1~B4において、真空チャンバ200の中央部に接続された分岐流路と真空チャンバ200の外周部に接続された分岐流路との主従関係(マスター-スレーブ関係)を切り替える場合に、その切り替えをスムーズに行うことができるので、半導体製造プロセスの品質を向上させることができる。なお、上記の主従関係を切り替える場合には、例えば真空チャンバ200の外周部への流量が多いプロセス制御時から、真空チャンバ200の中央部への流量が多いパージ制御時に移行する場合が該当する。
【0048】
<5.その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0049】
前記実施形態の基準位置は、分流比率が同じになる流量(等分配した流量)を流すための弁体32の位置としていたが、分流比率が互いに異なる流量を流すための弁体32の位置としても良い。つまり、図4の例でいうと、第1の分岐流路BL1と第2の分岐流路BL2との分流比率が同じ(50:50)ではなく、第1の分岐流路BL1と第2の分岐流路BL2との分流比率が例えば49:51や52:48などとなる流量を流すための弁体32の位置であっても良い。また、所定の基準流量が流体制御バルブ3の分解能(例えばフルスケールの0.2%)の範囲内に収まる程度で所定の基準流量に幅を持たせておき、前記実施形態の基準位置を、この幅を持った基準流量となる弁体32の位置とすることで、基準位置に幅を持たせても良い。つまり、流体制御バルブ3の位置制御と流量制御との切り替わるタイミングは1点ではなく、切り替わるタイミングに幅を持たせても良い。
【0050】
また、図4の例でいうと、第1の分岐流路BL1と第2の分岐流路BL2との制御を切り替えるタイミングに幅をもたせても良い。この場合、マスターラインを第1の分岐流路BL1から第2の分岐流路BL2に切り替える際には、第1の流体制御バルブ3と第2の流体制御バルブ3との両方が位置制御(又は流量制御)される期間を経た後に、第1の流体制御バルブ3が流量制御となり、第2の流体制御バルブが位置制御となる。
【0051】
また、前記実施形態では流体制御装置MFCはパッケージ化されたマスフローコントローラであったが、その他の流体制御装置が各分岐流路に設けられていてもよい。例えばマスフローコントローラのようにパッケージ化されていない流体制御バルブと流量センサとを流体制御装置として取り扱ってもよい。
【0052】
前記実施形態では目標流量比率に基づき、流体の流量が最も多い分岐流路に設けられている流体制御バルブを位置制御するように構成されていたが、例えば流体の流量が2番目又は3番目に多い分岐流路をマスターラインとして、それ以外の分岐流路をスレーブラインとし、マスターラインに設けられている流体制御バルブを位置制御するように構成しても良い。
【0053】
さらに、前記実施形態では、流量比率制御装置を半導体製造プロセスに用いた例を示したが、その他の用途に用いることもできる。
【0054】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・流量比率制御装置
ML・・・メイン流路
BL1~BL4・・・分岐流路
3・・・流体制御バルブ
32・・・弁体
6・・・ポジションセンサ
7・・・記憶部
8・・・流量比率制御部
図1
図2
図3
図4