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特開2022-69444後方散乱粒子による埋め込みフィーチャの検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069444
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】後方散乱粒子による埋め込みフィーチャの検出
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20220428BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220428BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220428BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
H01L21/66 J
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016346
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2020514958の分割
【原出願日】2018-09-21
(31)【優先権主張番号】62/563,601
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】リン,チア ウェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ゾンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェー,チャン-チュン
(57)【要約】
【課題】後方散乱粒子を用いて埋め込みフィーチャを検出するための装置(100)及び方法を提供する。
【解決手段】本明細書に開示されるのは、後方散乱粒子を用いて埋め込みフィーチャを検出するための装置(100)及び方法である。一例において、装置は、荷電粒子のソースと、ステージ(30)と、ステージ上に支持されたサンプル(9)に荷電粒子のビームを誘導するよう構成された光学系(16)と、サンプルからのビーム内の荷電粒子の後方散乱粒子を検出するよう構成された信号検出器(5010)と、を備え、信号検出器は角度分解能を有する。一例において、方法は、サンプルの領域からの後方散乱粒子の像を取得することと、この像に基づいて埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することと、を含む。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子のソースと、
ステージと、
前記ステージ上に支持されたサンプルに前記荷電粒子のビームを誘導するよう構成された光学系と、
前記サンプルからの前記ビーム内の前記荷電粒子の後方散乱粒子を検出するよう構成された信号検出器と、
を備え、前記信号検出器は角度分解能を有する、装置。
【請求項2】
前記信号検出器は前記装置の一次ビーム軸を中心として位置決めされている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記信号検出器は後方散乱電子を検出するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記信号検出器は第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントを備え、前記第1の検出器コンポーネント及び前記第2の検出器コンポーネントは前記ビームの軸から異なる角度の後方散乱粒子を検出するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の検出器コンポーネント及び前記第2の検出器コンポーネントは環状であり、同軸上に位置決めされている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記信号検出器は、前記ビームを前記サンプルに到達可能とするアパーチャを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
サンプルの領域からの荷電粒子のビームからの後方散乱粒子の像を取得することであって、前記像は前記ビームからの異なる角度の後方散乱粒子によって形成される、ことと、
前記像に基づいて埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することと、
を含む方法。
【請求項8】
前記サンプル上の構造の設計から前記領域を識別することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記埋め込みフィーチャは埋め込みボイドである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記埋め込みボイドは、前記サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネントを接続するビアである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは前記像を基準像と比較することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記基準像は、前記領域から、前記領域を含む同一のダイから、前記サンプルの別の領域から、又は異なるサンプルから取得される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基準像は前記ビームからの異なる角度の後方散乱粒子によって形成され、又は、前記基準像は、前記領域内の構造の設計から、もしくは前記構造が形成されるプロセス条件からシミュレーションされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を出力する機械学習モデルに前記像を入力することを含み、又は、前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、前記像を処理することを含み、前記処理の結果に基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
命令が記録されている非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記命令はコンピュータによって実行された場合に請求項7に記載の方法を実施する、コンピュータプログラム命令。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2017年9月26日に出願された米国出願番号第62/563,601号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、集積回路(IC)の製造のようなデバイス製造プロセスにおいて使用される、ウェーハ及びマスクのようなサンプルを検査する(例えば観察、測定、及び結像する)ための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] デバイス製造プロセスは、所望のパターンを基板に適用することを含み得る。代替的にマスク又はレチクルと呼ばれるパターニングデバイスを用いて、所望のパターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えばダイの一部、1つのダイ、又はいくつかのダイを含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板上に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが付与される隣接したターゲット部分のネットワークを含む。この転写のためにリソグラフィ装置を使用できる。リソグラフィ装置の1つのタイプはステッパと呼ばれ、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される。リソグラフィ装置の別のタイプはスキャナと呼ばれ、基板を所与の方向と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンをこの所与の方向に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される。また、パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0004】
[0004] デバイス製造プロセスの1つ以上のステップ(例えば露光、レジスト処理、エッチング、現像、ベーキング等)を監視するため、デバイス製造プロセスによってパターン付与された基板又はそれに用いられるパターニングデバイスのようなサンプルを検査し、サンプルの1つ以上のパラメータを測定することができる。1つ以上のパラメータは例えば、基板又はパターニングデバイス上のパターンのエッジと意図されたパターン設計の対応するエッジとの距離であるエッジ配置誤差(EPE:edge place error)を含み得る。また、検査は、パターン欠陥(例えば接続の失敗又は分離の失敗)及び望ましくない粒子を見出すことができる。
【0005】
[0005] デバイス製造プロセスで用いられる基板及びパターニングデバイスの検査は、歩留まりの向上を促進することができる。検査から得られた情報を用いて、欠陥の識別やデバイス製造プロセスの調整を実行できる。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本明細書に開示される装置は、荷電粒子のソースと、ステージと、ステージ上に支持されたサンプルに荷電粒子のビームを誘導するよう構成された光学系と、サンプルからのビーム内の荷電粒子の後方散乱粒子を検出するよう構成された信号検出器と、を備え、信号検出器は角度分解能を有する。
【0007】
[0007] 一実施形態によれば、信号検出器は装置の一次ビーム軸を中心として位置決めされている。
【0008】
[0008] 一実施形態によれば、信号検出器は後方散乱電子を検出するよう構成されている。
【0009】
[0009] 一実施形態によれば、信号検出器は第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントを備え、第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントはビームの軸から異なる角度の後方散乱粒子を検出するよう構成されている。
【0010】
[0010] 一実施形態によれば、第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントは環状であり、同軸上に位置決めされている。
【0011】
[0011] 一実施形態によれば、信号検出器は、ビームをサンプルに到達可能とするアパーチャを有する。
【0012】
[0012] 本明細書に開示される方法は、サンプルの領域からの荷電粒子のビームからの後方散乱粒子の像を取得することと、この像に基づいて埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することと、を含む。
【0013】
[0013] 一実施形態によれば、方法は、サンプル上の構造の設計から領域を識別することを更に含む。
【0014】
[0014] 一実施形態によれば、埋め込みフィーチャは埋め込みボイドである。
【0015】
[0015] 一実施形態によれば、埋め込みボイドは、サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネントを接続するビアである。
【0016】
[0016] 一実施形態によれば、埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは像を基準像と比較することを含む。
【0017】
[0017] 一実施形態によれば、基準像は、領域から、領域を含む同一のダイから、サンプルの別の領域から、又は異なるサンプルから取得される。
【0018】
[0018] 一実施形態によれば、像及び基準像は、ビームからの異なる角度の後方散乱粒子によって形成される。
【0019】
[0019] 一実施形態によれば、基準像は、領域内の構造の設計から、又は構造が形成されるプロセス条件からシミュレーションされる。
【0020】
[0020] 一実施形態によれば、像を基準像と比較することは、像と基準像を位置合わせすること及び対応する画素を減算することを含む。
【0021】
[0021] 一実施形態によれば、埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、埋め込みフィーチャの存在又は位置を出力する機械学習モデルに像を入力することを含む。
【0022】
[0022] 一実施形態によれば、埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、像を処理することを含み、処理の結果に基づく。
【0023】
[0023] 一実施形態によれば、像を処理することは像においてエッジを検出することを含む。
【0024】
[0024] 一実施形態によれば、像を処理することは像の断面を取得すること及び断面の導関数を取得することを含む。
【0025】
[0025] 本明細書に開示されるのは、命令が記録されている非一時的(non-transitory)コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品である。命令は、コンピュータによって実行された場合に上記の方法のいずれかを実施する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】[0026] 荷電粒子ビーム検査を実行することができる装置を概略的に示す。
図2A】[0027] 二次電子の生成を概略的に示す。
図2B】[0028] 後方散乱粒子の一例としての後方散乱電子の生成を概略的に示す。
図3A】[0029] サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネントを接続するビアの断面図を概略的に示す。
図3B】[0030] サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネントを接続する別のビアの断面図を概略的に示す。
図4】[0031] 埋め込みボイドを備えるビアからの後方散乱粒子の立体角当たりの半径方向密度I(任意の単位)を、荷電粒子の入射ビームの軸からの角度θ(単位は度)の関数として概略的に示すと共に、埋め込みボイドを備えていないビアからの後方散乱粒子の荷電粒子のIをθの関数として概略的に示す。
図5A】[0032] 一実施形態に従った図1の装置の一部を概略的に示す。
図5B】[0033] 図5Aの信号検出器の断面及び上面を概略的に示す。
図6】[0034] 一実施形態に従った荷電粒子ビーム検査のための方法のフローチャートを概略的に示す。
図7】[0035] 一実施形態に従った、埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定するためのいくつかの可能な方法のフローチャートを概略的に示す。
図8】[0036] 図7のステップにおける比較の例を示す。
図9】[0037] モデルを用いて後方散乱粒子の像を処理する例を示す。
図10】[0037] モデルを用いて後方散乱粒子の像を処理する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0038] サンプル(例えば基板及びパターニングデバイス)を検査するには様々な技法がある。検査技法の1つの種類である光学検査では、光ビームを基板又はパターニングデバイスへ誘導し、光ビームとサンプルの相互作用(例えば散乱、反射、回折)を表す信号を記録する。検査技法の別の種類である荷電粒子ビーム検査では、荷電粒子(例えば電子)のビームをサンプルへ誘導し、荷電粒子とサンプルの相互作用(例えば二次放出及び後方散乱放出)を表す信号を記録する。
【0028】
[0039] 図1は、荷電粒子ビーム検査を実行することができる装置100を概略的に示す。装置100は、荷電粒子ビームを生成し制御するように構成されたコンポーネントを含み得る。それらのコンポーネントは例えば、自由空間に荷電粒子を生成することができるソース10、ビーム抽出電極11、コンデンサレンズ12、ビームブランキング偏向器13、アパーチャ14、スキャン偏向器15、及び対物レンズ16である。装置100は、E×B荷電粒子迂回デバイス17や信号検出器21のような、荷電粒子ビームとサンプルの相互作用を表す信号を検出するように構成されたコンポーネントを含み得る。また、装置100は、信号を処理するか又は他のコンポーネントを制御するように構成されたプロセッサ等のコンポーネントも含み得る。
【0029】
[0040] 検査プロセスの一例では、荷電粒子ビーム18が、ステージ30上に位置決めされたサンプル9(例えばウェーハ又はマスク)へ誘導される。ビーム18とサンプル9の相互作用を表す信号が、E×B荷電粒子迂回デバイス17によって信号検出器21へ導かれる。プロセッサは、ステージ30を移動させるか又はビーム18をスキャンすることができる。
【0030】
[0041] 光学検査で使用される光よりも荷電粒子ビーム検査で使用される荷電粒子の方が波長が短いので、荷電粒子ビーム検査は光学検査よりも高い分解能を有し得る。デバイス製造プロセスの進化に伴って基板及びパターニングデバイス上のパターンの寸法が小さくなればなるほど、荷電粒子ビーム検査は広く使用されるようになる。
【0031】
[0042] 信号20は、二次粒子(例えば二次電子(「SE:secondary electron」)、オージェ電子、X線、又はカソードルミネセンス)、後方散乱粒子(例えば後方散乱電子(「BSE:backscattered electron」)とすることができる。二次粒子は、二次放出によってサンプル9から放出される粒子である。二次粒子が「二次」と呼ばれる理由は、例えばこの場合の荷電粒子ビーム内の荷電粒子のような他の粒子(「一次粒子」)の衝撃(bombardment)によって発生するからである。一次粒子は荷電粒子に限定されず、光子又は中性子であることもある。一例では、荷電粒子ビームがサンプル9に衝突した場合、荷電粒子がサンプル9内の電子のイオン化ポテンシャルを超えるエネルギを持っているならば、サンプル9内の電子の一部は荷電粒子からエネルギを受け取ることによってイオン化され得る。二次電子の生成は非弾性のイベントである。図2Aは二次電子の生成を概略的に示す。粒子201は原子202へ誘導される。粒子201が、原子202の電子203の少なくともいくつかのイオン化ポテンシャルを超えるエネルギを持っている場合、粒子201はそのエネルギの一部を電子203の1つに取られ、これが原子202から放出され得る。放出された電子204は二次電子である。
【0032】
[0043] 後方散乱粒子は、サンプル9によって後方に跳ね返った入射粒子である。荷電粒子ビーム内の荷電粒子は、サンプル9内の原子核との弾性散乱相互作用によってサンプル9から反射又は「後方散乱」されることがある。サンプル9内のより重い原子は、より強力に後方散乱する。従って、後方散乱粒子はサンプル9の組成の情報を伝達することができる。後方散乱粒子の生成は概ね弾性イベントである。後方散乱粒子は、ビーム内の荷電粒子と同様のエネルギを有する。図2Bは、後方散乱粒子の一例として後方散乱電子の生成を概略的に示す。電子211(例えばビームからの電子)は、原子213を含むサンプル212へ誘導される。電子211と原子213の核214との相互作用によって、電子211は後方散乱電子215としてサンプル212から後方散乱され得る。
【0033】
[0044] 荷電粒子ビームがサンプル212に衝突した場合、荷電粒子は、相互作用体積(interaction volume)と呼ばれるサンプル212の3次元体積内の原子と相互作用する。相互作用体積は、ビーム面積(footprint)の下方にサンプル表面よりも数ケタ大きい線形寸法を有し得る。相互作用体積の大きさ及び形状は多数のファクタによって影響され得る。そのようなファクタは例えば、荷電粒子の入射エネルギ(landing energy)、サンプル212の原子の原子番号、サンプル212の密度、局所入射エリアに対するビーム入射角である。
【0034】
[0045] 相互作用体積内で発生した全ての信号がサンプル212から脱出して検出されるわけではない。サンプル表面下の深すぎる位置から信号が発生した場合、この信号は脱出することができない。発生した信号が脱出できる最大深さは脱出深さと呼ばれる。例えば、二次電子の脱出深さは約5~50nmであり、後方散乱粒子の脱出深さは500~5000nmである。X線の脱出深さはより大きい。
【0035】
[0046] 脱出深さはサンプル内の構造の寸法に比べて比較的大きいので、荷電粒子ビーム検査を用いてサンプル表面下に埋め込まれたフィーチャを測定することができる。後方散乱粒子は二次粒子よりも脱出深さが大きい傾向がある。従って、後方散乱粒子は二次粒子よりも埋め込みフィーチャの測定に適している傾向がある。
【0036】
[0047] 埋め込みフィーチャの1つの特定の種類に埋め込みボイドがある。埋め込みボイドは、ICの完全性にとって有害である可能性がある。例えばビア内の埋め込みボイドは、異なる深さの回路間の断線を生じ、このためICチップ全体の故障を発生させる恐れがある。
【0037】
[0048] 図3Aは、サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネント3020及び3030を接続するビア3010の断面図を概略的に示す。ビア3010は内部にボイドを含まない。ビア3010に入射する荷電粒子ビーム3040は、サンプルから脱出する後方散乱粒子3041を生成する。図3Bは、サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネント3021及び3031を接続するビア3011の断面図を概略的に示す。ビア3011は、内部にボイド3015を含む点を除いてビア3010と同一である。ボイド3015は、サンプルの表面下で、例えば二次粒子の脱出深さよりも深いが後方散乱粒子の脱出深さ内である深さに埋め込まれていることがある。ビア3011に入射する荷電粒子ビーム3043は、サンプルから脱出する後方散乱粒子3044を生成する。ビア3011は内部にボイド3015を有するので、ビア3011はビア3010よりも、入射粒子を後方散乱できる原子が少ない。従って、荷電粒子ビーム3040及び荷電粒子ビーム3043が同一の強度を有する場合であっても、後方散乱粒子3041の方が後方散乱粒子3044よりも強度が大きい。
【0038】
[0049] 埋め込みボイドの存在は、後方散乱粒子の強度だけでなく、後方散乱粒子の角度依存性にも影響を及ぼし得る。例えば、後方散乱粒子3041及び後方散乱粒子3044は異なる角度依存性を有することがある。図4は、埋め込みボイドを備えるビアからの後方散乱粒子4020の立体角当たりの半径方向密度I(任意の単位)を、荷電粒子の入射ビームの軸からの角度θ(単位は度)の関数として概略的に示すと共に、埋め込みボイドを備えていないビアからの後方散乱粒子4010の荷電粒子のIを、θの関数として概略的に示す。この例では、小さい角度で角度依存性の差が顕著である。
【0039】
[0050] 図5Aは、一実施形態に従った装置100の一部を概略的に示す。装置100は、サンプル9からの後方散乱粒子を検出するよう構成された信号検出器5010を有し、信号検出器5010は角度分解能を有する。信号検出器5010は、装置100の一次ビーム軸を中心として位置決めすることができる。図5Bは、信号検出器5010の断面及び上面を概略的に示す。信号検出器5010は第1の検出器コンポーネント5011及び第2の検出器コンポーネント5012を含み得る。第1の検出器コンポーネント5011及び第2の検出器コンポーネント5012は、異なるθの後方散乱粒子を検出するように構成されている。一例において、第1の検出器コンポーネント5011及び第2の検出器コンポーネント5012は環状であり、同軸上に位置決めされている。信号検出器5010は、ビームをサンプル9に到達可能とするアパーチャ5013を有し得る。
【0040】
[0051] サンプルから得られた後方散乱粒子の像を用いて、埋め込みフィーチャを検出することができる。図6は、一実施形態に従った荷電粒子ビーム検査のための方法のフローチャートを概略的に示す。ステップ6040において、サンプルの領域6030からの後方散乱粒子の像6050を取得する。この方法は任意選択的なステップ6020を含み得る。ステップ6020では、サンプル上の構造の設計6010(例えばGDSファイルによって表現される)から、領域6030を識別する。例えば、設計6010に基づいてサンプル上のビア(例えばビア3010及び3011)の位置を決定し、このようなビアを包含する領域を領域6030として識別すればよい。ステップ6060では、像6050に基づいて埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定する。
【0041】
[0052] ステップ6060における埋め込みフィーチャの存在又は位置の決定は、様々な方法で達成され得る。図7は、一実施形態に従った、この決定のために可能ないくつかの方法のフローチャートを概略的に示す。一例においては、ステップ7020で、像6050を基準像7010と比較する。基準像7010は、同一の領域6030から、領域6030を含む同一のダイから、同一のサンプルの別の領域から、更には異なるサンプルから、取得することができる。また、基準像7010は、領域6030内の構造の設計から、又は構造が形成されるプロセス条件からシミュレーションされた像としてもよい。像6050及び基準像7010は、ビームからの異なる角度の後方散乱粒子によって形成することができる。この比較に基づいて、埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定できる。一例では、埋め込みフィーチャの存在又は位置を出力する機械学習モデル7030に像6050を入力する。別の例では、適切なモデル7040を用いて像6050を処理し、この処理の結果に基づいて埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することができる。
【0042】
[0053] 図8は、ステップ7020における比較の一例を示す。例えば基準像7010と像6050を位置合わせし、対応する各画素を減算することによって、基準像7010と像6050との差8010を得ることができる。この例では、差8010において埋め込みフィーチャ8019を明らかに示すことができる。
【0043】
[0054] 図9は、モデル7040を用いて像6050を処理する一例を示す。この例では、像6050の断面(位置xの関数として信号Iの強度の曲線で表されている)が得られる。位置xの関数として位置xに対する強度Iの導関数(dI/dx)が得られる。この導関数において、埋め込みフィーチャは山と谷の対として出現し得る。
【0044】
[0055] 図10は、モデル7040を用いて像6050を処理する一例を示す。この例では、像6050にエッジ検出を行う。埋め込みフィーチャはリングとして出現し得る。
【0045】
[0056] 以下の条項を用いて、実施形態を更に記載することができる。
【0046】
1. 荷電粒子のソースと、
ステージと、
ステージ上に支持されたサンプルに荷電粒子のビームを誘導するよう構成された光学系と、
サンプルからのビーム内の荷電粒子の後方散乱粒子を検出するよう構成された信号検出器と、
を備え、信号検出器は角度分解能を有する、装置。
【0047】
2. 信号検出器は装置の一次ビーム軸を中心として位置決めされている、条項1に記載の装置。
【0048】
3. 信号検出器は後方散乱電子を検出するよう構成されている、条項1に記載の装置。
【0049】
4. 信号検出器は第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントを備え、第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントはビームの軸から異なる角度の後方散乱粒子を検出するよう構成されている、条項1に記載の装置。
【0050】
5. 第1の検出器コンポーネント及び第2の検出器コンポーネントは環状であり、同軸上に位置決めされている、条項4に記載の装置。
【0051】
6. 信号検出器は、ビームをサンプルに到達可能とするアパーチャを有する、条項1に記載の装置。
【0052】
7. サンプルの領域からの荷電粒子のビームからの後方散乱粒子の像を取得することと、
像に基づいて埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することと、
を含む方法。
【0053】
8. サンプル上の構造の設計から領域を識別することを更に含む、条項7に記載の方法。
【0054】
9. 埋め込みフィーチャは埋め込みボイドである、条項7に記載の方法。
【0055】
10.埋め込みボイドは、サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネントを接続するビアである、条項9に記載の方法。
【0056】
11.埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは像を基準像と比較することを含む、条項7に記載の方法。
【0057】
12.基準像は、領域から、領域を含む同一のダイから、サンプルの別の領域から、又は異なるサンプルから取得される、条項11に記載の方法。
【0058】
13.像及び基準像は、ビームからの異なる角度の後方散乱粒子によって形成される、条項11に記載の方法。
【0059】
14.基準像は、領域内の構造の設計から、又は構造が形成されるプロセス条件からシミュレーションされる、条項11に記載の方法。
【0060】
15.像を基準像と比較することは、像と基準像を位置合わせすること及び対応する画素を減算することを含む、条項11に記載の方法。
【0061】
16.埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、埋め込みフィーチャの存在又は位置を出力する機械学習モデルに像を入力することを含む、条項7に記載の方法。
【0062】
17.埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、像を処理することを含み、処理の結果に基づく、条項7に記載の方法。
【0063】
18.像を処理することは像においてエッジを検出することを含む、条項17に記載の方法。
【0064】
19.像を処理することは像の断面を取得すること及び断面の導関数を取得することを含む、条項17に記載の方法。
【0065】
20.命令が記録されている非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、命令はコンピュータによって実行された場合に条項7から19のいずれかに記載の方法を実施する、コンピュータプログラム命令。
【0066】
[0057] 本明細書に開示される概念は、クロムオンガラス(chrome on glass)等、シリコンウェーハ又はパターニングデバイスのようなサンプルに対する検査のために使用できるが、開示される概念は、例えばシリコンウェーハ以外のサンプルの検査のように、任意のタイプのサンプルと共に使用できることは理解されよう。
【0067】
[0058] 上述の記載は、限定でなく例示を意図している。従って、以下に述べる特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく記載されるように変更が実施されることは当業者には明らかであろう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令はコンピュータによって実行される際に、方法を実施し、
前記方法は、
荷電粒子のビームを誘導されたサンプルの領域により後方散乱された前記ビーム内の荷電粒子である後方散乱粒子の像を取得することであって、前記像は前記荷電粒子のビームの軸に対して異なる角度の後方散乱粒子によって形成される、ことと、
前記ビームの軸に対する複数の角度の前記後方散乱粒子の角度依存性に基づいて、埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項2】
前記サンプル上の構造の設計から前記領域を識別することを更に含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項3】
前記埋め込みフィーチャは埋め込みボイドである、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項4】
前記埋め込みボイドは、前記サンプルの表面下の異なる深さにある2つの電気コンポーネントを接続するビア内に埋め込まれている、請求項3に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項5】
前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは前記像を基準像と比較することを含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項6】
前記基準像は、前記領域から、前記領域を含む同一のダイから、前記サンプルの別の領域から、又は異なるサンプルから取得される、請求項5に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項7】
前記基準像は前記ビームからの異なる角度の後方散乱粒子によって形成され、又は、前記基準像は、前記領域内の構造の設計から、もしくは前記構造が形成されるプロセス条件からシミュレーションされる、請求項5に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【請求項8】
前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を出力する機械学習モデルに前記像を入力することを含み、又は、前記埋め込みフィーチャの存在又は位置を決定することは、前記像を処理することを含み、前記処理の結果に基づく、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読媒体
【外国語明細書】