(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070321
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】強発光性ユウロピウム錯体
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20220506BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220506BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220506BHJP
C07F 5/00 20060101ALN20220506BHJP
C07C 49/92 20060101ALN20220506BHJP
C07F 9/32 20060101ALN20220506BHJP
C07F 9/09 20060101ALN20220506BHJP
C07F 9/53 20060101ALN20220506BHJP
C07F 9/6533 20060101ALN20220506BHJP
C07F 9/572 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
C07F19/00 CSP
C09K11/06
C09K11/06 660
G02B5/20
C07F5/00 D
C07C49/92
C07F9/32
C07F9/09 Z
C07F9/53
C07F9/6533
C07F9/572 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179330
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】本田 寛哉
(72)【発明者】
【氏名】小礒 尚之
【テーマコード(参考)】
2H148
4H006
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA19
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA20
4H048VA45
4H048VA70
4H048VB10
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発光強度の高いユウロピウム錯体を提供する。
【解決手段】例えば、以下の様に酢酸ユウロピウムn水和物、リン系配位子(ジシクロヘキシルホスフィン酸シクロへキシル又はリン酸トリシクロヘキシル)及びヘキサフルオロアセチルアセトンから合成したユウロピウム錯体(1-1)及びユウロピウム錯体(1-2)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるユウロピウム錯体。
【化1】
(式中、Lは一般式(2a)又は(2b)で示されるリン系配位子を表す。Wは炭素数1から6のフルオロアルキル基を表す。複数のWは、同一又は相異なっていてもよい。kは1又は2である。)
【化2】
(式中、Rはシクロヘキシル基、炭素数3から8のシクロアルキルオキシ基又は炭素数2から6の含窒素飽和へテロ環基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよいが、全てが同時にシクロヘキシル基にはなりえない。)
【化3】
(式中、mは2、3又は4である。)
【請求項2】
Wがトリフルロメチル基である請求項1に記載のユウロピウム錯体。
【請求項3】
Rが1-ピロリジル基又はモルホリノ基である請求項1又は2に記載のユウロピウム錯体。
【請求項4】
一般式(1)が、下記式(1-1)から(1-7)のいずれかの式で示されるユウロピウム錯体である請求項1に記載のユウロピウム錯体。
【化4】
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のユウロピウム錯体(1)を含む光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光強度の高いユウロピウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信やディスプレイ等のオプトエレクトロニクスや太陽電池等のエネルギー産業は次代の基幹技術であり、それらに用いる各種の無機ガラス材料やセラミック材料、レーザー材料、有機低分子発光材料、波長変換材料等が創出されている。
【0003】
波長変換材料は、特定の波長の光を吸収して別の波長で発光する材料であり、樹脂材料に添加することで光学材料として用いることができる。
【0004】
このような波長変換材料としてβ-ジケトナト配位子を持つ希土類錯体(例えば、非特許文献1)が報告されている。これら希土類錯体は、紫外光などの短波長域の光を吸収し、より長波長域の可視光を発光することができるため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子と組み合わせることで、種々の発光色の発光装置が実現できると期待される。しかし、現行の波長変換材料は発光強度が低く、さらなる強度向上が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry、第30巻、第5号、1275ページ(1968年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は発光強度の高いユウロピウム錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の配位子を導入したユウロピウム錯体が強い発光を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
[1]一般式(1)で示されるユウロピウム錯体(以下、ユウロピウム錯体(1)ともいう。)にある。
【0009】
【0010】
(式中、Lは一般式(2a)又は(2b)で示されるリン系配位子を表す。式中、Wは炭素数1から6のフルオロアルキル基を表す。複数のWは、同一又は相異なっていてもよい。kは1又は2である。)
【0011】
【0012】
(式中、Rはシクロヘキシル基、炭素数3から8のシクロアルキルオキシ基又は炭素数2から6の含窒素飽和へテロ環基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよいが、全てが同時にシクロヘキシル基にはなりえない。)
【0013】
【0014】
(式中、mは2、3又は4である。);
[2]Wがトリフルロメチル基である[1]に記載のユウロピウム錯体;
[3]Rが1-ピロリジル基又はモルホリノ基である[1]又は[2]に記載のユウロピウム錯体;
[4]一般式(1)が、下記式(1-1)から(1-7)のいずれかの式で示されるユウロピウム錯体である[1]に記載のユウロピウム錯体。
【0015】
【0016】
[5][1]から[4]のいずれか1項に記載のユウロピウム錯体(1)を含む光学材料;に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のユウロピウム錯体は高い発光強度を有する優れた波長変換材料となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1で得た本発明のユウロピウム錯体(1-1)の発光スペクトルである。
【
図2】実施例2で得た本発明のユウロピウム錯体(1-2)の発光スペクトルである。
【
図3】実施例3で得た本発明のユウロピウム錯体(1-3)の発光スペクトルである。
【
図4】実施例4で得た本発明のユウロピウム錯体(1-4)の発光スペクトルである。
【
図5】実施例5で得た本発明のユウロピウム錯体(1-5)の発光スペクトルである。
【
図6】実施例6で得た本発明のユウロピウム錯体(1-6)の発光スペクトルである。
【
図7】実施例6で得た本発明のユウロピウム錯体(1-7)の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一般式(1)におけるW及びk、一般式(2a)におけるR、並びに一般式(2b)におけるmの定義についてそれぞれ説明する。
【0020】
一般式(1)のWで表される炭素数1から6のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)プロピル基、1,2,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,5,5,5-デカフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロ(シクロペンチルメチル)基等を例示できる。原料が容易に入手できる点でトリフルオロメチル基が好ましい。
【0021】
一般式(1)におけるkは1又は2である。合成が容易な点で、Lが一般式(2a)で表されるリン系配位子の場合、kは2が好ましく、Lが一般式(2b)で表されるリン系配位子の場合、kは1が好ましい。
【0022】
一般式(2a)におけるRで表される炭素数3から8のシクロアルキルオキシ基としてはシクロプロピルオキシ基、2,3-ジメチルシクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、2,5-ジメチルシクロペンチルオキシ基、3-エチルシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4-エチルシクロヘキシルオキシ基、4,4-ジメチルシクロヘキシルオキシ基、2,6-ジメチルシクロヘキシルオキシ基、3,5-ジメチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等を例示できる。合成が容易な点でシクロヘキシルオキシ基が好ましい。
【0023】
一般式(2a)におけるRの炭素数2から6の含窒素飽和ヘテロ環基としては1-アジリジニル基、1-アゼチジニル基、1-ピロリジニル基、3,4-ジメチル-1-ピロリジル基、1-ピペリジル基、4-メチル-1-ピペリジル基、1-アゼパニル基、1-ピペリジノ基、モルホリノ基、4-メチルピペラジン-1-イル基等を例示できる。原料が容易入手可能な点で1-ピロリジニル基、モルホリノ基が好ましい。
【0024】
一般式(2b)におけるmは2、3又は4である。
【0025】
ユウロピウム錯体(1)としては、具体的には下記式(1-1)から(1-7)で表されるユウロピウム錯体を例示することができる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
【0027】
(ユウロピウム錯体(1)の製造方法)
次に、ユウロピウム錯体(1)の製造方法(以下、本発明の製造方法と呼ぶ。)について説明する。
【0028】
ユウロピウム錯体(1)の製造方法として、下記一般式(3)で表されるエノール(以下、エノール(3)と呼ぶ。)と、Lで表される;一般式(2a)で表されるリン系配位子;又は下記一般式(2b)で表されるリン系配位子と、ユウロピウム化合物とを反応させることを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0029】
【0030】
(式中、Wは炭素数1から6のフルオロアルキル基を表す。複数のWは、同一又は相異なっていてもよい。kは1又は2である。)
【0031】
【0032】
(式中、Rはシクロヘキシル基、炭素数3から8のシクロアルキルオキシ基又は炭素数2から6の含窒素飽和へテロ環基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよいが、全てが同時にシクロヘキシル基にはなりえない。)
【0033】
【0034】
(式中、mは2、3又は4である。)
本発明の製造方法において、R、W、m及びkに示した定義及び具体例については、前記一般式(1)におけるR、W、m及びkと同じである。
【0035】
一般式(2a)及び一般式(2b)で表されるリン系配位子(以下、リン系配位子(2a)及びリン系配位子(2b)と呼ぶ。)は、Chemical Reviews、第60巻、243-260ページ、1960年に記載の方法などによって得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0036】
本発明の製造方法における、用いるリン系配位子(2a)としては、具体的には、下記式(2a-1)から(2a-4)で示されるリン系配位子を例示することができる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【0038】
本発明の製造方法における、用いるリン系配位子(2b)としては、具体的には、下記式(2b-1)から(2b-3)で示されるリン系配位子を例示することができる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【0040】
本発明の製造方法で用いるエノール(3)としては、具体的にはヘキサフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,6,6,6-オクタフルオロ-2,4-ヘキサンジオン、1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9-テトラデカフルオロ-4,6-ノナンジオン等を例示できる。本発明の製造方法で用いるエノール(3)は、公知の合成方法により合成したものを用いてもよく、又、市販品を用いてもよい。
【0041】
本発明の製造方法に用いるユウロピウム化合物としては、フッ化ユウロピウム(III)、塩化ユウロピウム(III)、臭化ユウロピウム(III)、ヨウ化ユウロピウム(III)等のハロゲン化物塩若しくはその水和物;シュウ酸ユウロピウム(III)、酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロ酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物;トリス[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド]ユウロピウム(III)、ユウロピウム(III)トリメトキシド、ユウロピウム(III)トリエトキシド、ユウロピウム(III)トリ(イソプロポキシド)等の金属アルコキシド;又はリン酸ユウロピウム(III)、硫酸ユウロピウム(III)、硝酸ユウロピウム(III)等の無機酸塩若しくはそれらの水和物;を挙げることができる。中でも反応収率が良い点で、塩化ユウロピウム(III)、硝酸ユウロピウム(III)等の無機酸塩若しくはそれらの水和物;又は;シュウ酸ユウロピウム(III)、酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロ酢酸ユウロピウム(III);トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物;が好ましく、酢酸ユウロピウム(III);塩化ユウロピウム(III);又は;硝酸ユウロピウム(III)若しくはそれらの水和物;がさらに好ましい。
【0042】
本発明の製造方法で用いるユウロピウム化合物は、市販品を用いることができる。
【0043】
本発明の製造方法は、ユウロピウム錯体(1)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独、又は二種類以上を任意の比率で混合して用いることもできる。ユウロピウム錯体(1)の反応収率が良い点で、ジクロロメタン、クロロホルム、メチルシクロヘキサン、アセトン、メタノール、エタノール又は水が好ましい。
【0044】
本発明の製造方法における、ユウロピウム化合物及びエノール(3)のモル比に関して説明する。ユウロピウム化合物1モルに対して1.0~5.0モルエノール(3)を用いることが好ましく、3.0~4.0モルのエノール(3)を用いることが更に好ましい。
【0045】
本発明の製造方法における、Lがリン系配位子(2a)の場合の、ユウロピウム化合物及びリン系配位子(2a)のモル比に関して説明する。ユウロピウム化合物1モルに対して0.5~5.0モルのリン系配位子(2a)を用いることが好ましく、1.0~3.0モルのリン系配位子(2a)を用いることが更に好ましい。
【0046】
本発明の製造方法における、Lがリン系配位子(2b)の場合の、ユウロピウム化合物及びリン系配位子(2b)のモル比に関して説明する。ユウロピウム化合物1モルに対して0.5~2.5モルのリン系配位子(2b)を用いることが好ましく、1.0~1.5モルのリン系配位子(2b)を用いることが更に好ましい。
【0047】
本発明の製造方法において、反応を促進するために、塩基を加えて実施してもよい。該塩基として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、キノリンなどの有機アミン類;又は;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物塩若しくはアンモニア等の無機塩基を例示することができる。該塩基の当量としては、エノール(3)1モルに対して1.0~10モルの塩基を用いるのが好ましく、2.0~8.0モルの塩基を用いることがより好ましく、3.0~5.0モルの塩基を用いることが更に好ましい。
【0048】
本発明の製造方法に用いるエノール(3)は、塩基を作用させると活性プロトンを喪失し、下記式(3a)に示す有機塩となる。この有機塩(3a)をエノール(3)として用いてもよく、その際の有機塩(3a)のカウンター対カチオンとして示されるMは、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン等の第3級アンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン等の第2級アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、2,6-ジメチルピリジニウムイオン等のピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、N-メチルイミダゾリウムイオンなどのイミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン等を例示することができる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【0050】
本発明の製造方法において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80~120℃から適宜選ばれる反応温度において、1分間~120時間から適宜選ばれる反応時間反応させることによってユウロピウム錯体(1)を収率よく製造することができる。
【0051】
本発明の製造方法で製造したユウロピウム錯体(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、濃縮、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0052】
エノール(3)は、互変異性化を起こしてエノール(3i)又はβ-ジケトン(3ii)を形成しうる。本発明はエノール(3)、エノール(3i)及びβ-ジケトン(3ii)の全てを包含するものであるが、便宜上、本明細書においては、これらの異性体を一般式(3)として表記する。同様にユウロピウム錯体(1)は異性体であるユウロピウム錯体(1i)の共鳴構造でも示されうるが、ユウロピウム錯体(1)はユウロピウム錯体(1i)を含むものである。本明細書においては、ユウロピウム錯体(1i)も一般式(1)として表記する。
【0053】
【0054】
【0055】
本発明のユウロピウム錯体(1)は発光強度が高い。そのため、ユウロピウム錯体(1)を含む材料は強発光性の光学材料として有用であり、該光学材料としては、太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体、セキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料に好適に用いられる。
【0056】
また、本発明のユウロピウム錯体(1)は、樹脂材料、無機ガラス、有機低分子材料からなる群から選ばれる1つ以上を含む光学材料として用いることができ、該材料へのユウロピウム錯体の分散性が高いことから、樹脂材料を含む光学材料とすることが特に好ましい。該樹脂材料として、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリメチルメタクリレート、含フッ素ポリエチルメタクリレート、含フッ素ポリプロピルメタクリレート、含フッ素ポリイソプロピルメタクリレート、含フッ素ポリブチルメタクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリイソブチルメタクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルメタクリレート等のポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、含フッ素ポリメチルアクリレート、含フッ素ポリエチルアクリレート、含フッ素ポリプロピルアクリレート、含フッ素ポリイソプロピルアクリレート、含フッ素ポリブチルアクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルアクリレート、含フッ素ポリイソブチルアクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルアクリレート等のポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、含フッ素ポリエチレン、含フッ素ポリプロピレン、含フッ素ポリブテン等のポリオレフィン、ポリビニルエーテル、含フッ素ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、又はそれらの共重合体;セルロース;ポリアセタール;ポリエステル;ポリカーボネイト;エポキシ樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリウレタン;ナフィオン;石油樹脂;ロジン;シリコーン樹脂等が例示される。
【0057】
その中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;シリコーン樹脂等が好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;シリコーン樹脂が特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0058】
本発明のユウロピウム錯体(1)と樹脂材料を含む光学材料における該ユウロピウム錯体(1)の含有割合は、好ましくは0.001から99重量%の範囲であり、更に好ましくは0.01から50重量%の範囲である。
【0059】
無機ガラスとしては、当業者が通常用いるものでよく、例えば、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、リン酸塩ガラス等が挙げられる。
【0060】
有機低分子材料としては、当業者が通常用いるものでよく、例えば、アミルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラアミルアンモニウムクロリド等のイオン液体;又はペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、パラフィン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0061】
本発明のユウロピウム錯体(1)を含む光学材料を得る方法としては、ユウロピウム錯体(1)を単独で用い光学材料とする方法、ユウロピウム錯体(1)を、樹脂材料、無機ガラス、及び有機低分子材料からなる群から選ばれる1つ以上を含む材料に含有させ光学材料とする方法、上記樹脂材料の重合原料に相当するモノマーとユウロピウム錯体(1)を混合し該混合物を重合することにより光学材料とする方法、ユウロピウム錯体(1)を溶媒に溶解又は分散させ光学材料とする方法等が挙げられる。
【0062】
本発明のユウロピウム錯体(1)を溶媒に溶解又は分散させ光学材料とする場合、用いることが出来る溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;又は水を挙げることができる。その中でも、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、グリコールエーテル類、エーテル類、ケトン類又は炭化水素類が好ましい。これら溶媒は単独又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることができる。
【実施例0063】
以下、実施例、比較例及び評価結果により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0064】
ユウロピウム錯体(1)の同定には、以下の分析方法を用いた。
【0065】
1H-NMR、19F-NMR及び31P-NMRの測定には、BRUKER社製 ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(400MHz、376MHz及び162MHz)又はASCEND AVANCE III HD(400MHz、376MHz及び162MHz)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。19F-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)又は重アセトン(Acetone-d6)を測定溶媒として測定した。31P-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒として測定した。
【0066】
質量スペクトルの測定には、waters社製 waters2695-micromassZQ4000を用いて行い、イオン化法はエレクトロスプレー法、溶媒はメタノールを用いた。
【0067】
また、試薬類は市販品を用いた。
【0068】
なお、本明細書中では、Cyはシクロヘキシル基、Acはアセチル基、hfaはヘキサフルオロアセチルアセトナト配位子を表す。
(参考例1)
【0069】
【0070】
シクロヘキサノール(411mg,4.10mmol)にテトラヒドロフラン(4.0mL)を加え、0℃でn-ブチルリチウムの2.76Mヘキサン溶液(1.50mL,4.14mmol)を滴下し、0℃で15分間撹拌した。反応液にジシクロへキシルホスホニルクロリド(1.02g,4.10mmol)を加え、室温にて1時間30分撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(5.0mL)、水(3.0mL)とクロロホルム(10mL)を入れ、分液後、水層をクロロホルム(10mL)で3回抽出した。併せた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、ジシクロヘキシルホスフィン酸シクロへキシル(収量1.16g,収率91%)の白色固体を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):4.36(m,1H),1.99-1.64(m,16H),1.59-1.14(m,16H).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):57.6(s)。
(参考例2)
【0071】
【0072】
シクロヘキサノール(1.24g,12.4mmol)にテトラヒドロフラン(12mL)を加え、0℃でn-ブチルリチウムの2.76Mヘキサン溶液(4.50mL,12.4mmol)を滴下し、0℃で15分間撹拌した。反応液に塩化ホスホリル(360μL,3.94mmol)を入れ、0℃で15分間、室温にて16時間撹拌した。反応液に飽和アンモニウム水溶液(5.0mL)、水(2.0mL)とクロロホルム(20mL)を入れ、分液後、水層をクロロホルム(10mL)で2回抽出した。併せた有機層を水(5.0mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、リン酸トリシクロヘキシル(収量1.28g,収率94%)の無色油状物を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):4.33(m,3H),1.98-1.88(m,6H),1.79-1.68(m,6H),1.60-1.44(m,9H),1.39-1.18(m,9H).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-3.0(s)。
(合成実施例1)
【0073】
【0074】
酢酸ユウロピウムn水和物(75.0mg,2.5水和物として200μmol)と参考例1で得たジシクロヘキシルホスフィン酸シクロへキシル(125mg,400μmol)にジクロロメタン(2.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.2Mジクロロメタン溶液(500μL,600μmol)を滴下後、室温で12時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン/メタノールで再結晶することで、ビス(ジシクロヘキシルホスフィン酸シクロへキシル)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-1)の白色固体を得た(収量201mg,収率72%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-78.5(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-65.0(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1191.5[M-hfa]+。
(合成実施例2)
【0075】
【0076】
酢酸ユウロピウムn水和物(75.0mg,2.5水和物として200μmol)と参考例2で得たリン酸トリシクロヘキシル(138mg,401μmol)にジクロロメタン(2.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.2Mジクロロメタン溶液(500μL,600μmol)を滴下後、室温で12時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン/メタノールで再結晶することで、ビス(リン酸トリシクロヘキシル)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-2)の白色固体を得た(収量202mg,収率69%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-79.3(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-172.9(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1255.7[M-hfa]+。
(合成実施例3)
【0077】
【0078】
酢酸ユウロピウムn水和物(112mg,2.5水和物として299μmol)とトリモルホリノホスフィンオキシド(183mg,599μmol)にジクロロメタン(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.8Mジクロロメタン溶液(500μL,900μmol)を滴下後、室温で10時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶することで、ビス(トリモルホリノホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-3)の白色固体を得た(収量359mg,収率86%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-78.5(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-164.5(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1175.0[M-hfa]+。
(合成実施例4)
【0079】
【0080】
酢酸ユウロピウムn水和物(112mg,2.5水和物として299μmol)とトリピロリジノホスフィンオキシド(154mg,598μmol)にジクロロメタン(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.8Mジクロロメタン溶液(500μL,900μmol)を滴下後、室温で10時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶することで、ビス(トリピロリジノホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-4)の白色固体を得た(収量278mg,収率72%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-78.0(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-176.0(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1181.0[M-hfa]+。
(合成実施例5)
【0081】
【0082】
酢酸ユウロピウムn水和物(112mg,2.5水和物として299μmol)と1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(1,1-ジシクロヘキシルホスフィンオキシド)(136mg,299μmol)にジクロロメタン(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.8Mジクロロメタン溶液(500μL,900μmol)を滴下後、室温で15時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、メタノールで洗浄することで、[1,1’-(1,2-エタンジイル)]ビス(1,1-ジシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-5)の白色固体を得た(収量296mg,収率80%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-78.9(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-78.2(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1021.4[M-hfa]+。
(合成実施例6)
【0083】
【0084】
酢酸ユウロピウムn水和物(112mg,2.5水和物として299μmol)と1,1’-(1,3-プロパンジイル)ビス(1,1-ジシクロヘキシルホスフィンオキシド)(141mg,301μmol)にジクロロメタン(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.8Mジクロロメタン溶液(500μL,900μmol)を滴下後、室温で15時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、メタノールで洗浄することで、[1,1’-(1,3-プロパンジイル)]ビス(1,1-ジシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-6)の白色固体を得た(収量206mg,収率55%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-78.9(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):-48.3(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1033.6[M-hfa]+。
(合成実施例7)
【0085】
【0086】
酢酸ユウロピウムn水和物(112mg,2.5水和物として299μmol)と1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス(1,1-ジシクロヘキシルホスフィンオキシド)(145mg,300μmol)にジクロロメタン(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトンの1.8Mジクロロメタン溶液(500μL,900μmol)を滴下後、室温で15時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、メタノールで洗浄することで、[1,1’-(1,4-ブタンジイル)]ビス(1,1-ジシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-7)の白色固体を得た(収量328mg,収率87%)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-79.1(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:1049.4[M-hfa]+。
(合成比較例1)
【0087】
【0088】
酢酸ユウロピウムn水和物(8.00g,2.5水和物として21.4mmol)に純水(100mL)を加え、室温で10分撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトン(16.7g,80.2mmol)を滴下後、50℃で3時間撹拌した。得られた白色懸濁液をろ別し、得られた白色固体を水(200mL)、トルエン(200mL)で洗浄することで、ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(2-1)を白色固体として得た(収量11.6g,酢酸ユウロピウム2.5水和物を21.4mmol使用したとして収率68%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d6),δ(ppm):-81.2(brs).ESI-MS(m/z):566.8[M-hfa]+。
(評価結果)
合成実施例及び合成比較例で得たユウロピウム錯体(1)の発光スペクトル測定用サンプルは、ユウロピウム錯体の粉末を乳鉢で微粉末となるまで粉砕し、粉末セル(日本分光株式会社製、PSH-002)に充填することで作製した。
【0089】
実施例で得たユウロピウム錯体(1)の発光スペクトルの測定結果を
図1から7に表す。発光スペクトルの測定条件は、励起光380nm、励起側スリット1nm、蛍光側スリット1nmとした。Eu(III)錯体に特徴的なf-f電子遷移に基づく約593nm、615nm、653nm及び699nmの発光が観察された。
【0090】
発光量子収率の測定には絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920-03及びC11347-01)を用いて測定した。
【0091】
合成実施例1から7及び合成比較例で得たユウロピウム錯体の励起光波長380nmでの発光量子収率の評価結果を表1に示す。
【0092】
【0093】
表1に表したように、本発明のユウロピウム錯体(1)は高い発光量子収率を示し、高い発光強度を有するものである。
本発明のユウロピウム錯体(1)は発光強度が高い。そのため、太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体及びセキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料として有用である。