IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

特開2022-70803グラビア印刷用導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサ
<>
  • 特開-グラビア印刷用導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサ 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070803
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】グラビア印刷用導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220506BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220506BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20220506BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01B1/22 A
H01G4/30 311D
H01G4/30 516
H01G4/30 517
C09D11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093300
(22)【出願日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020179986
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】山田 純平
(72)【発明者】
【氏名】舘 祐伺
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 祐司
【テーマコード(参考)】
4J039
5E001
5E082
5G301
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039BA35
4J039BA38
4J039BA39
4J039BC16
4J039BC19
4J039BE12
5E001AB03
5E001AC09
5E001AC10
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH01
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082PP03
5E082PP09
5E082PP10
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】 乾燥膜の表面のうねりを低減することができる、グラビア印刷用導電性ペーストを提供する。
【解決手段】 導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含むグラビア印刷用導電性ペーストであって、有機溶剤は、第1の有機溶剤を含み、
前記第1の有機溶剤は、イソボルニルアセテート、メチルイソブチルケトン、及び、ジイソブチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、グラビア印刷用導電性ペースト。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含むグラビア印刷用導電性ペーストであって、
前記有機溶剤は、イソボルニルアセテート、メチルイソブチルケトン、及び、ジイソブチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、
グラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項2】
さらに、ジカルボン酸を、導電性ペースト全体に対して0.05質量%以上3.0質量%未満含む、請求項1に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項3】
前記有機溶剤は、導電性ペースト全体に対して10質量%以上60質量%以下含まれる、請求項1又は請求項2に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項4】
前記分散剤は、導電性ペースト全体に対して0.01質量%以上3.0質量%以下含まれる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項5】
前記分散剤は、酸系分散剤を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項6】
前記導電性粉末は、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu及びこれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項7】
前記導電性粉末は、平均粒径が0.05μm以上1.0μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項8】
前記セラミック粉末は、チタン酸バリウムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項9】
前記セラミック粉末は、平均粒径が0.01μm以上0.5μm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項10】
前記セラミック粉末は、導電性ペースト全体に対して1質量%以上20質量%以下含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項11】
前記バインダー樹脂が、セルロース系樹脂を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項12】
ずり速度100sec-1での粘度が3Pa・S以下であり、ずり速度10000sec-1での粘度が1Pa・S以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項13】
前記導電性ペーストを印刷速度30m/min、膜厚0.50μm以上2μm以下の条件にてグラビア印刷して得られる乾燥膜のうねり曲線要素の平均高さ(Wc)が0.5μm以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のグラビア印刷用導電性ペースト。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された電子部品。
【請求項15】
誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、
前記内部電極層は、前記1~13のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷用導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器などの電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサなどを含む電子部品についても小型化および高容量化が望まれている。積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層した構造を有し、これらの誘電体層及び内部電極層を薄膜化することにより、小型化及び高容量化を図ることができる。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、例えば、次のように製造される。まず、チタン酸バリウム(BaTiO)などの誘電体粉末及びバインダー樹脂を含有するセラミックグリーンシートの表面上に、内部電極用の導電性ペーストを、所定の電極パターンで印刷し、乾燥して、乾燥膜を形成する。次いで、乾燥膜とセラミックグリーンシートとを、交互に重なるように積層して、積層体を得る。次に、この積層体を加熱圧着して一体化し、圧着体を形成する。この圧着体を切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中にて脱有機バインダー処理を行った後、焼成を行い、焼成チップを得る。次いで、焼成チップの両端部に外部電極用ペーストを塗布し、焼成後、外部電極表面にニッケルメッキなどを施して、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
導電性ペーストを誘電体グリーンシートに印刷する際に用いられる印刷法としては、従来、スクリーン印刷法が一般的に用いられてきたが、電子デバイスの小型化、薄膜化や生産性向上の要求から、より微細な電極パターンを生産性高く印刷することが求められている。
【0005】
導電性ペーストの印刷法の一つとして、製版に設けられた凹部に導電性ペーストを充填し、これを被印刷面に押し当てることでその製版から導電性ペーストを転写する連続印刷法であるグラビア印刷法が提案されている。グラビア印刷法は印刷速度が速く、生産性に優れる。グラビア印刷法を用いる場合、導電性ペースト中のバインダー樹脂、分散剤、溶剤等を適宜選択して、粘度等の特性をグラビア印刷に適した範囲に調整する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、複数のセラミック層および前記セラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜を備える積層セラミック電子部品における前記内部導体膜をグラビア印刷によって形成するために用いられる導電性ペーストであって、金属粉末を含む30~70重量%の固形成分と、1~10重量%のエトキシ基含有率が49.6%以上のエチルセルロース樹脂成分と、0.05~5重量%の分散剤と、残部としての溶剤成分とを含み、ずり速度0.1(s-1)での粘度η0.1が1Pa・s以上であり、かつずり速度0.02(s-1)での粘度η0.02が特定の式で表わされる条件を満たす、チキソトロピー流体である、導電性ペーストが記載されている。
【0007】
また、特許文献2では、上記特許文献1と同様にグラビア印刷によって形成するために用いられる導電性ペーストであって、金属粉末を含む30~70重量%の固形成分と、1~10重量%の樹脂成分と、0.05~5重量%の分散剤と、残部としての溶剤成分とを含み、ずり速度0.1(s-1)での粘度が1Pa・s以上のチキソトロピー流体であって、ずり速度0.1(s-1)での粘度を基準としたときに、ずり速度10(s-1)での粘度変化率が50%以上である、導電性ペーストが記載されている。
【0008】
上記特許文献1、2によれば、これらの導電性ペーストは、ずり速度0.1(s-1)での粘度が1Pa・s以上であるチキソトロピー流体であり、グラビア印刷において高速での安定した連続印刷性が得られ、良好な生産効率をもって、積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品を製造することができるとされている。
【0009】
また、特許文献3には、導電性粉末(A)、有機樹脂(B)、及び有機溶剤(C)、添加剤(D)、及び誘電体粉末(E)を含む積層セラミックコンデンサ内部電極用導電性ペーストであって、有機樹脂(B)は、重合度が10000以上50000以下のポリビニルブチラールと、重量平均分子量が10000以上100000以下のエチルセルロースからなり、有機溶剤(C)は、プロピレングリコールモノブチルエーテル、もしくはプロピレングリコールモノブチルエーテルとプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの混合溶剤、又はプロピレングリコールモノブチルエーテルとミネラルスピリットの混合溶剤のいずれかからなり、添加剤(D)は、分離抑制剤と分散剤からなり、該分離抑制剤としてポリカルボン酸ポリマーもしくはポリカルボン酸の塩を含む組成物からなるグラビア印刷用導電性ペーストが記載されている。特許文献3によれば、この導電性ペーストは、グラビア印刷に適した粘度を有し、ペーストの均一性・安定性が向上し、かつ、乾燥性がよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-187638号公報
【特許文献2】特開2003-242835号公報
【特許文献3】特開2012-174797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
グラビア印刷用の導電性ペーストでは、低粘度であることが要求される。しかしながら、低粘度の導電性ペーストでは、スクリーン印刷用などの高粘度の導電性ペーストと比較して、乾燥膜を形成した際に膜表面のうねりが大きくなりやすい。このような導電性ペーストを用いて積層セラミックコンデンサの内部電極層を形成した場合、得られる内部電極層の膜厚がばらつき、積層セラミックコンデンサの信頼性が低下する。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑み、乾燥膜の表面のうねりが小さいグラビア印刷用の導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様では、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含むグラビア印刷用の導電性ペーストであって、有機溶剤は、イソボルニルアセテート、メチルイソブチルケトン、及び、ジイソブチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、グラビア印刷用導電性ペーストが提供される。
【0014】
また、導電性ペーストは、さらに、ジカルボン酸を、導電性ペースト全体に対して0.05質量%以上3.0質量%未満含むことが好ましい。また、有機溶剤は、導電性ペースト全体に対して10質量%以上60質量%以下含まれることが好ましい。また、分散剤は、導電性ペースト全体に対して0.01質量%以上3.0質量%以下含まれることが好ましい。また、分散剤は、酸系分散剤を含むことが好ましい。また、導電性粉末は、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu及びこれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を含むことが好ましい。また、導電性粉末は、平均粒径が0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。また、セラミック粉末は、チタン酸バリウムを含むことが好ましい。セラミック粉末は、平均粒径が0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。また、セラミック粉末は、導電性ペースト全体に対して1質量%以上20質量%以下含まれることが好ましい。また、バインダー樹脂が、セルロース系樹脂を含むことが好ましい。また、導電性ペーストは、ずり速度100sec-1での粘度が3Pa・S以下であり、ずり速度10000sec-1での粘度が1Pa・S以下であることが好ましい。また、導電性ペーストを印刷速度30m/min、膜厚0.50μm以上2μm以下の条件にてグラビア印刷して得られる乾燥膜のうねり曲線要素の平均高さ(Wc)が0.5μm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様では、上記の導電性ペーストを用いて形成された電子部品が提供される。
【0016】
本発明の第3の態様では、誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、内部電極層は、上記のグラビア印刷用導電性ペーストを用いて形成された積層セラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性ペーストは、グラビア印刷して乾燥膜を形成した場合でも、乾燥膜の表面のうねりを小さくすることができる。また、本発明の導電性ペーストを用いて形成される内部電極層は、薄膜化した電極を形成する際も、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを生産性高く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[導電性ペースト]
本実施形態の導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0020】
(導電性粉末)
導電性粉末としては、特に限定されず、金属粉末を用いることができ、例えば、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種以上の粉末を用いることができる。これらの中でも、導電性、耐食性及びコストの観点から、Ni、またはその合金の粉末(以下、「Ni粉末」と称する場合がある)が好ましい。Ni合金としては、例えば、Mn、Cr、Co、Al、Fe、Cu、Zn、Ag、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とNiとの合金が用いることができる。Ni合金におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、Ni粉末は、脱バインダー処理の際、バインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度の元素Sを含んでもよい。
【0021】
導電性粉末の平均粒径は、好ましくは0.05μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。導電性粉末の平均粒径が上記範囲である場合、薄膜化した積層セラミックコンデンサ(積層セラミック部品)の内部電極用ペーストとして好適に用いることができ、例えば、乾燥膜の平滑性及び乾燥膜密度が向上する。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率10,000倍にて観察した画像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値(SEM平均粒径)である。
【0022】
導電性粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは30質量%以上70質量%未満であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0023】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用ペーストである場合、適用する積層セラミックコンデンサの種類により適宜、公知のセラミック粉末が選択される。セラミック粉末としては、例えば、Ba及びTiを含むペロブスカイト型酸化物を用いることができ、好ましくはチタン酸バリウム(BaTiO)を含む。
【0024】
セラミック粉末としては、チタン酸バリウムを主成分とし、酸化物を副成分として含むセラミック粉末を用いてもよい。酸化物としては、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物が挙げられる。また、セラミック粉末としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子やTi原子を他の原子、例えば、Sn、Pb、Zrなどで置換したペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末を用いてもよい。
【0025】
内部電極用の導電性ペーストとして用いる場合、セラミック粉末は、積層セラミックコンデンサ(電子部品)のグリーンシートを構成する誘電体セラミック粉末と同一組成の粉末を用いてもよい。これにより、焼結工程における誘電体層と内部電極層との界面での収縮のミスマッチによるクラック発生が抑制される。このようなセラミック粉末としては、上記以外に、例えば、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiO、Ndなどの酸化物が挙げられる。なお、セラミック粉末は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0026】
セラミック粉末の平均粒径は、例えば、0.01μm以上0.5μm以下であり、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下の範囲である。セラミック粉末の平均粒径が上記範囲であることにより、内部電極用ペーストとして用いた場合、十分に細く薄い均一な内部電極を形成することができる。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率50,000倍にて観察した映像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値(SEM平均粒径)である。
【0027】
セラミック粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上15質量%以下である。セラミック粉末の含有量が上記範囲である場合、分散性および焼結性に優れる。
【0028】
また、セラミック粉末の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下である。
【0029】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのブチラール系樹脂などが挙げられる。中でも、溶剤への溶解性、燃焼分解性の観点などから、セルロース系樹脂を含むことが好ましく、エチルセルロースを含むことがより好ましい。
【0030】
また、内部電極用ペーストとして用いる場合、グリーンシートとの接着強度を向上させる観点から、ブチラール系樹脂を含む、又は、ブチラール系樹脂単独で使用してもよい。バインダー樹脂がブチラール系樹脂を含む場合、グラビア印刷に適した粘度に容易に調整することができ、かつ、グリーンシートとの接着強度をより向上させることができる。バインダー樹脂は、例えば、バインダー樹脂全体に対して、ブチラール系樹脂を20質量%以上含んでもよく、30質量%以上含んでもよい。
【0031】
バインダー樹脂が、セルロース系樹脂およびブチラール系樹脂を含む場合、セルロース系樹脂およびブチラール系樹脂の合計含有量(100質量%)に対して、アセタール樹脂を20質量%以上80質量%以下含んでもよく、30質量%以上80質量%以下含んでもよく、30質量%以上60質量%以下含んでもよい。
【0032】
なお、バインダー樹脂の重合度や重量平均分子量は、要求される導電性ペーストの粘度に応じて、上記範囲内で適宜調整することができる。
【0033】
例えば、バインダー樹脂としてセルロース系樹脂を含む場合、重量平均分子量(Mw)は、1万以上30万以下であってもよく、3万以上20万以下であってもよく、5万以上15万以下であってもよい。セルロース系樹脂のMwが上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を好適な範囲に調整しつつ、乾燥膜の表面のうねりを小さくすることができる。
【0034】
また、セルロース系樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、好ましくは0.1mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であり、より好ましくは0.5mgKOH/g以上7mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは1.5mgKOH/g以上3mgKOH/g以下である。セルロース系樹脂の水酸基価が上記範囲である場合、導電性粉末、セラミック粉末の分散性に優れるため、グラビア印刷用の導電性ペーストに好適に用いることができる。なお、水酸基価は、JIS K 0070に準拠して測定される値であり、試料1g中の水酸基に相当する水酸化カリウムのmg数を示す値である。
【0035】
また、セルロース系樹脂のエトキシル基含有量は、特に限定されないが、例えば、40質量%以上55質量%以下であってもよく、45質量%以上52質量%以下であってもよく、48質量%以上50質量%以下であってもよい。
【0036】
例えば、バインダー樹脂としてブチラール系樹脂を含む場合、重量平均分子量(Mw)は、3万以上30万以下であってもよく、5万以上20万以下であってもよく、10万以上15万以下であってもよい。ブチラール系樹脂のMwが上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を好適な範囲に調整しつつ、乾燥膜の表面のうねりを小さくすることができる。
【0037】
バインダー樹脂の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上7質量%以下である。バインダー樹脂の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0038】
バインダー樹脂の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上14質量部以下である。
【0039】
(有機溶剤)
本実施形態に係る導電性ペーストは、有機溶剤として、イソボルニルアセテート(IBA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、及び、ジイソブチルケトン(DIBK)からなる群(以下、「第1の有機溶剤」と称する)から選ばれる少なくとも1種を含み、好ましくは、イソボルニルアセテート、及び、ジイソブチルケトンの一方、又は、両方を含み、より好ましくは、イソボルニルアセテートを含む。導電性ペーストは、上記有機溶剤(以下、「第1の有機溶剤」ともいう。)を含むことにより、乾燥膜を形成した際の膜表面のうねりを少なくすることができる。なお、第1の有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。また、第1の有機溶剤として、2種類以上を含む場合、イソボルニルアセテート、及び、ジイソブチルケトンを含んでもよい。
【0040】
第1の有機溶剤の含有量は、導電性ペースト全量に対して、3質量%以上60質量%以下であってもよく、5質量%以上40質量%以下であってもよく、10質量%以上30質量%以下であってもよく、10質量%以上20質量%以下であってもよい。また、第1の有機溶剤の含有量は、5質量%以上10質量%以下であっても、乾燥膜表面のうねりを低減することができる。
【0041】
また、第1の有機溶剤がイソボルニルアセテート(IBA)を含む場合、イソボルニルアセテートの含有量は、導電性ペースト全量に対して、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。イソボルニルアセテートの含有量が上記範囲である場合、乾燥膜を形成した際の膜表面のうねりをより少なくすることができる。また、イソボルニルアセテートの含有量は、導電性ペースト全量に対して、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0042】
また、第1の有機溶剤がジイソブチルケトン(DIBK)を含む場合、ジイソブチルケトンの含有量は、導電性ペースト全量に対して、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。ジイソブチルケトンの含有量が上記範囲である場合、乾燥膜を形成した際の膜表面のうねりをより少なくすることができ、さらに、グラビア印刷に適した粘度へ容易に調整することができる。さらに、ジイソブチルケトン(DIBK)を含む場合、乾燥性に優れ、導電性ペーストをグリーンシート上にグラビア印刷により塗布して、乾燥する工程(製膜工程)を短時間とすることができる。また、ジイソブチルケトンの含有量は、導電性ペースト全量に対して、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、7質量%以下であってもよい。
【0043】
なお、有機溶剤としては、第1の有機溶剤以外の有機溶剤を含有させてもよい。第1の有機溶剤以外の有機溶剤(その他の有機溶剤)としては、特に限定されず、上記のバインダー樹脂を溶解することができる公知の有機溶剤を用いることができる。その他の有機溶剤としては、例えば、グリコールエーテル系溶剤、アセテート系溶剤、ケトン系溶剤、テルペン系溶剤、脂肪族系炭化水素溶剤を含む石油系炭化水素溶剤などが挙げられる。なお、その他の有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0044】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルなどの(ジ)エチレングリコールエーテル類、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(PNB)などのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0045】
アセテート系溶剤としては、例えば、イソボルニルプロピオネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレートや、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシー3-メチルブチルアセテート、1-メトキシプロピル-2-アセテートなどのグリコールエーテルアセテート類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0046】
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0047】
テルペン系溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオール(DHT)、ジヒドロターピニルアセテートなどが挙げられる。
【0048】
脂肪族系炭化水素溶剤を含む石油系炭化水素溶剤としては、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンなどを含む溶剤、ミネラルスピリット(MA)、ナフテン系溶剤などが挙げられる。中でも、ミネラルスピリットを含むことが好ましく、ミネラルスピリットを主成分(石油系炭化水素溶剤中で最も含有量が多い溶剤)として含んでもよい。なお、ミネラルスピリットは、鎖式飽和炭化水素を主成分として含んでもよく、鎖式飽和炭化水素をミネラルスピリット全体に対して、20質量%以上含んでもよい。
【0049】
その他の有機溶剤としては、例えば、テルペン系溶剤および脂肪族系炭化水素溶剤を含んでもよく、テルペン系溶剤のみ、又は、脂肪族系炭化水素溶剤のみを含んでもよい。また、その他の有機溶剤として、例えば、テルペン系溶剤を含む場合、テルペン系溶剤の含有量は、導電性ペースト全量に対して、5質量%以上40質量%以下であってもよく、10質量%以上25質量%以下であってもよい。また、その他の有機溶剤として、例えば、脂肪族系炭化水素溶剤を含む場合、脂肪族系炭化水素溶剤の含有量は、導電性ペースト全量に対して、5質量%以上25質量%以下であってもよく、5質量%以上15質量%以下であってもよい。
【0050】
有機溶剤(全体)の含有量は、導電性ペースト全量に対して、20質量%以上60質量%以下が好ましく、25質量%以上45質量%以下がより好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0051】
有機溶剤の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは50質量部以上130質量部以下であり、より好ましくは60質量部以上90質量部以下である。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0052】
(分散剤)
分散剤としては、公知の分散剤を用いることができる。分散剤として、例えば、酸系分散剤を含んでもよい。また、酸系分散剤としては、後述するジカルボン酸以外のカルボキシル基を有する分散剤などを含んでもよい。なお、本明細書では、後述するように、ジカルボン酸の有する導電性粉末とセラミック粉末との分離抑制効果に着目して、ジカルボン酸は、分散剤とは別に規定する。
【0053】
例えば、分散剤として、くし型カルボン酸を用いた場合、くし型カルボン酸を含有することにより、導電性ペーストの分散性は向上する。なお、分散剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。本実施形態に係る導電性ペーストは、分散剤を含むことにより、分散性が向上する。
【0054】
分散剤として、例えば、炭化水素基を有する酸系分散剤を含んでもよい。このような酸系分散剤としては、例えば、高級脂肪酸、高分子界面活性剤等の酸系分散剤やリン酸系分散剤などが挙げられる。これらの分散剤は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
高級脂肪酸としては、不飽和カルボン酸でも飽和カルボン酸でもよく、特に限定されるものではないが、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸など炭素数11以上のものが挙げられる。中でもオレイン酸、またはステアリン酸が好ましい。
【0056】
それ以外の酸系分散剤としては、特に限定されず、例えば、モノアルキルアミン塩に代表されるアルキルモノアミン塩型などが挙げられる。
【0057】
アルキルモノアミン型としては、例えば、グリシンとオレイン酸の化合物であるオレオイルザルコシンや、オレイン酸の代わりにステアリン酸あるいはラウリン酸などの高級脂肪酸を用いたアミド化合物が好ましい。
【0058】
また、分散剤は、酸系分散剤以外の分散剤を含んでもよい。酸系分散剤以外の分散剤としては、塩基系分散剤、非イオン系分散剤、両性分散剤などが挙げられる。これらの分散剤は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
塩基系分散剤としては、例えば、ラウリルアミン、ロジンアミン、セチルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミンなどの脂肪族アミンなどが挙げられる。導電性ペーストは、上記の酸系分散剤と塩基系分散とを含有する場合、より分散性に優れ、経時的な粘度安定性にも優れる。
【0060】
分散剤は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは3質量%以下含有される。分散剤の含有量の上限を含む範囲は、好ましくは、2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。分散剤の含有量の下限を含む範囲は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上である。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの分散性を向上させつつ、ペースト粘度を適切な範囲に調整することができ、また、印刷後の乾燥性の悪化を防止することができ、さらにシートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。
【0061】
また、分散剤は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5質量部以下含有され、より好ましくは0.05質量部以上3質量部以下含有され、さらに好ましくは0.4質量部以上3質量部以下含有される。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性粉末やセラミック粉末の分散性や、塗布後の乾燥電極表面の平滑性により優れ、かつ、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、印刷後の乾燥性の悪化を防止することができ、さらにシートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。また、分散剤は、酸性分散系と塩基系分散剤とを含んでもよい。分散剤として、酸性分散系と塩基系分散剤とを含む場合、塩基性分散剤の含有量より酸系分散剤の含有量が多い方が好ましく、例えば、酸系分散剤の含有量に対して、塩基系分散剤の含有量は、0.1倍以上1倍未満、0.3倍以上0.8倍以下であってもよい。
【0062】
(ジカルボン酸)
本実施形態に係る導電性ペーストは、添加剤として、ジカルボン酸を含んでもよい。グラビア印刷用の導電性ペーストにおいて、ジカルボン酸を特定量で含むことにより、導電性粉末とセラミック粉末との分離を抑制し、導電性ペーストを作成した際にラミック粉末を含む白い分離層が上部に発生する白浮きの発生を抑制したりすることができる。また、本実施形態に係る導電性ペーストを用いて内部電極層を形成した際に高い被覆率を有することができる。
【0063】
ジカルボン酸は、2つのカルボキシル基(COO-基)を有するカルボン酸系の添加剤である。ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数12~28の不飽和脂肪酸の二量化によって生成された二塩基酸、水添加ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2―シクロヘキサンジカルボン酸、4―メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、及び、これらの誘導体を挙げることができ、中でも、コハク酸の誘導体が好ましい。
【0064】
また、ジカルボン酸の平均分子量は、特に限定されないが、例えば、1000以外であってもよく、500以下であってもよく、400以下であってもよい。ジカルボン酸の平均分子量が上記範囲である場合、高い分離抑制効果を得ることができる。ジカルボン酸の平均分子量は、例えば、100以上であってもよく、200以上であってもよい。
【0065】
また、本実施形態に係る導電性ペーストにおいて、ジカルボン酸は、導電性ペースト全体に対して0.05質量%以上3.0質量%未満含まれてもよく、0.1質量%以上1.0質量%以下含まれることが好ましい。また、ジカルボン酸の含有量の上限を含む範囲は、0.5質量%以下であってもよい。ジカルボン酸の含有量が3.0質量%以上である場合、印刷、乾燥工程で、乾燥が不十分となり、内部電極層が柔らかい状態となり、その後の積層工程で積層ズレを生じたり、焼成時に残留したジカルボン酸が気化し、気化したガス成分によって内部応力が発生したり、積層体の構造破壊が生じたりすることがある。
【0066】
なお、導電性ペーストが、分散剤(ジカルボン酸を除く)とジカルボン酸とを含む場合、分散剤とジカルボン酸との含有量の合計が、導電性ペースト全体に対して、0.05質量%以上3.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以上2.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以上1.0質量%以下であってもよい。
【0067】
なお、本実施形態に係る導電性ペーストは、ジカルボン酸を含まなくてもよい。本実施形態に係る導電性ペーストは、ジカルボン酸を含まない場合においても、上述したように、特定の有機溶剤を含むことにより、乾燥膜表面のうねりを低減することができる。
【0068】
(その他の添加剤)
本実施形態の導電性ペーストは、必要に応じて、上記の成分以外のその他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤などの従来公知の添加物を用いることができる。
【0069】
(導電性ペースト)
本実施形態に係る導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。導電性ペーストは、例えば、上記の各成分を、3本ロールミル、ボールミル、ミキサーなどで攪拌・混練することにより製造することができる。なお、ジカルボン酸(分離抑制剤)については、他の材料と同様に、ミキサーなどで撹拌・混錬装置する際に秤量して、添加することが好ましいが、撹拌・混錬(分散)終了後の材料に、分離抑制剤として添加しても同様の分離抑制効果を得ることができる。
【0070】
導電性ペーストは、ずり速度100sec-1の粘度が、好ましくは3Pa・S以下である。ずり速度100sec-1の粘度が上記範囲である場合、グラビア印刷用の導電性ペーストとして好適に用いることができる。上記範囲を超えると粘度が高すぎてグラビア印刷用として適さない場合がある。ずり速度100sec-1の粘度の下限は、特に限定されないが、例えば、0.2Pa・S以上である。
【0071】
また、導電性ペーストは、ずり速度10000sec-1の粘度が、好ましくは1Pa・S以下である。ずり速度10000sec-1の粘度が上記範囲である場合、グラビア印刷用の導電性ペーストとして好適に用いることができる。上記範囲を超えた場合も、粘度が高すぎてグラビア印刷用として適さない場合がある。ずり速度10000sec-1の粘度の下限は、特に限定されないが、例えば、0.05Pa・S以上である。
【0072】
導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサなどの電子部品に好適に用いることができる。積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有する。
【0073】
導電性ペーストを印刷速度30m/min、膜厚0.50μm以上μm以下の条件にてグラビア印刷して得られる乾燥膜は、カットオフ値(λc=0.08mm)を適用した場合のうねり曲線要素の平均高さ(Wc)が0.5μm未満であることが好ましく、0.47μm以下であることがより好ましく、0.45μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.35μm以下であることがさらに好ましい。
【0074】
なお、うねり曲線要素の平均高さ(Wc)は、JIS B 0601:2013に準拠して測定することができる。うねり曲線要素の平均高さ(Wc)とは、基準長さにおけるうねり曲線要素(輪郭曲線要素)の高さ(Zti)の平均値を表したものである。輪郭曲線要素とは隣り合う山と谷を一組としたものであり、輪郭曲線要素の高さとは、隣り合う山と谷の高さの差にあたる。なお、輪郭要素を構成する山(谷)には、最低高さと最低長さの規定があり、高さ(深さ)が最大高さの10%以下、もしくは長さが計算区間の長さの1%以下であるものはノイズとみなして、前後に続く谷(山)の一部とする。
【0075】
[電子部品]
以下、本発明の電子部品等の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。また、部材の位置や方向などを、適宜、図1などに示すXYZ直交座標系を参照して説明する。このXYZ直交座標系において、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0076】
図1A及びBは、実施形態に係る電子部品の一例である、積層セラミックコンデンサ1を示す図である。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層12及び内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と外部電極20とを備える。
【0077】
以下、上記導電性ペーストを使用した積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。まず、セラミックグリーンシート上に、導電性ペーストを印刷し、乾燥して、乾燥膜を形成する。この乾燥膜を上面に有する複数のセラミックグリーンシートを、圧着により積層させて積層体を得た後、積層体を焼成して一体化することにより、内部電極層11と誘電体層12とが交互に積層したセラミック積層体10を作製する。その後、セラミック積層体10の両端部に一対の外部電極20を形成することにより積層セラミックコンデンサ1が製造される。以下に、より詳細に説明する。
【0078】
まず、未焼成のセラミックシートであるセラミックグリーンシートを用意する。このセラミックグリーンシートとしては、例えば、チタン酸バリウム等の所定のセラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール等の有機バインダーとターピネオール等の溶剤とを加えて得た誘電体層用ペーストを、PETフィルム等の支持フィルム上にシート状に塗布し、乾燥させて溶剤を除去したもの等が挙げられる。なお、セラミックグリーンシートからなる誘電体層の厚みは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの小型化の要請の観点から、0.05μm以上3μm以下が好ましい。
【0079】
次いで、このセラミックグリーンシートの片面に、グラビア印刷法を用いて、上述の導電性ペーストを印刷して塗布し、乾燥して、セラミックグリーンシートの片面に乾燥膜を形成したものを複数枚、用意する。なお、導電性ペーストから形成される乾燥膜の厚みは、内部電極層11の薄層化の要請の観点から、乾燥後1μm以下とすることが好ましい。
【0080】
次いで、支持フィルムから、セラミックグリーンシートを剥離するとともに、セラミックグリーンシートとその片面に形成された乾燥膜とが交互に配置されるように積層した後、加熱・加圧処理により積層体を得る。なお、積層体の両面に、導電性ペーストを塗布していない保護用のセラミックグリーンシートを更に配置する構成としても良い。
【0081】
次いで、積層体を所定サイズに切断してグリーンチップを形成した後、グリーンチップに対して脱バインダー処理を施し、還元雰囲気下において焼成することにより、積層セラミック焼成体(セラミック積層体10)を製造する。なお、脱バインダー処理における雰囲気は、大気またはNガス雰囲気にすることが好ましい。脱バインダー処理を行う際の温度は、例えば200℃以上400℃以下である。また、脱バインダー処理を行う際の、上記温度の保持時間を0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。また、焼成は、内部電極層に用いる金属の酸化を抑制するために還元雰囲気で行われ、また、積層体の焼成を行う際の温度は、例えば、1000℃以上1350℃以下であり、焼成を行う際の、温度の保持時間は、例えば、0.5時間以上8時間以下である。
【0082】
グリーンチップの焼成を行うことにより、セラミックグリーンシート中の有機バインダーが完全に除去されるとともに、セラミックの原料粉末が焼成されて、セラミック製の誘電体層12が形成される。また乾燥膜中の有機ビヒクルが除去されるとともに、ニッケル粉末またはニッケルを主成分とする合金粉末が焼結もしくは溶融、一体化されて、内部電極層11が形成され、誘電体層12と内部電極層11とが複数枚、交互に積層された積層セラミック焼成体が形成される。なお、酸素を誘電体層の内部に取り込んで信頼性を高めるとともに、内部電極の再酸化を抑制するとの観点から、焼成後の積層セラミック焼成体に対して、アニール処理を施してもよい。
【0083】
そして、作製した積層セラミック焼成体に対して、一対の外部電極20を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1が製造される。例えば、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22を備える。外部電極層21は、内部電極層11と電気的に接続する。なお、外部電極20の材料としては、例えば、銅やニッケル、またはこれらの合金が好適に使用できる。なお、電子部品は、積層セラミックコンデンサ以外の電子部品を用いることもできる。
【実施例0084】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0085】
[評価方法]
(導電性ペーストの粘度)
導電性ペーストの製造後の粘度を、レオメーター(株式会社アントンパール・ジャパン製:レオメーターMCR302)を用いて測定した。粘度は、コーン角度1°、直径25mmのコーンプレートを用いて、ずり速度(せん断速度)100sec-1、および、10000sec-1の条件で測定した場合の値を用いた。
【0086】
(乾燥膜の評価)
導電性ペーストを誘電体シート上に小型グラビア印刷機(倉敷紡績株式会社製、GP-10TYPEII)にて、印刷速度30m/min、導電性粉末(Ni粉末)が0.7mg/cmの割合となる塗布量で印刷したのち、80℃、4分間のボックス型乾燥器にて乾燥させ、取り出し、評価用の乾燥膜(横2.5mm×縦5mm)を得た。乾燥膜の膜厚は、0.50μm以上2μm以下であった。
【0087】
乾燥膜表面のうねりは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-100、測定対物レンズ×20、測定長さ:2000μm)を用いて、カットオフ値(λc=0.08mm)を適用した場合のうねり曲線要素の平均高さ(Wc)で評価した。なお、うねり曲線要素の平均高さ(Wc)は複数回行った平均値を用いた。
【0088】
[使用材料]
(導電性粉末)
導電性粉末としては、Ni粉末(SEM平均粒径0.2μm)を使用した。
【0089】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、チタン酸バリウム(BaTiO;SEM平均粒径0.10μm)を使用した。
【0090】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース使用した。
【0091】
(添加剤)
添加剤として、ジカルボン酸を用いた。
【0092】
(分散剤)
分散剤として、酸系分散剤、及び、塩基系分散剤を用いた。また、酸系分散剤として、くし形カルボン酸、及び、リン酸系分散剤を用い、また、塩基系分散剤として、オレイルアミンを用いた。
【0093】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、イソボルニルアセテート(IBA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、及び、ジイソブチルケトン(DIBK)、ジヒドロターピネオール(DHT)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(PNB)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)、ミネラルスピリット(MA)を使用した。
【0094】
[実施例1]
導電性粉末50質量%、セラミック粉末12.5質量%、分散剤0.5質量%(酸系分散剤0.3質量%、塩基系分散剤0.2質量%)、ジカルボン酸0.2質量%、バインダー樹脂2.5質量%(ポリビニルブチラール樹脂:エチルセルロース=1:2(質量比))、及び、有機溶剤としてIBA4.1質量%、MA12.0質量%およびDHT残部を添加して、全体として100質量%となるよう配合し、これらの材料を混合して導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの添加剤等の含有量及びうねりの平均高さの評価結果Wcを表1に示す。
【0095】
[実施例2~18]
実施例2~18では、添加剤の添加の有無、有機溶剤の種類および含有割合を表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様に導電性ペーストを作製して、評価した。導電性ペーストの添加剤等の含有量及びうねりの平均高さの評価結果Wcを表1に示す。
【0096】
[比較例1~4]
有機溶剤として、MA13.7質量%およびPNB残部(比較例1)、MA13.7質量%及びDHT残部(比較例2)、MA12質量%、PMA5.9質量%及びDHT残部(比較例3)、MA12質量%、DEGME5.9質量%及びDHT残部(比較例4)
を用いた以外は、実施例1と同様に導電性ペーストを作製して、評価した。導電性ペーストの添加剤等の含有量及びうねりの平均高さの評価結果Wcを表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
(評価結果)
実施例1~18の導電性ペーストは、第1の有機溶剤(IBA、MIBK、DIBK)を用いない比較例1~4の導電性ペーストと比較して、乾燥膜におけるうねり曲線要素の平均高さ(Wc)が小さかった。
【0099】
また、表1に示す、すべての実施例、及び、比較例の導電性ペーストにおいて、ずり速度100sec-1での粘度が3Pa・S以下であり、ずり速度10000sec-1での粘度が1Pa・S以下であり、グラビア印刷に適した粘度を有することを確認している。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の導電性ペーストを積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いた場合、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを生産性高く得ることができる。よって、本発明の導電性ペーストは、特に携帯電話やデジタル機器などの小型化が進む電子機器のチップ部品である積層セラミックコンデンサの内部電極用の原料として好適に用いることができ、グラビア印刷用の導電性ペーストとして好適に用いることができる。
【0101】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0102】
1 積層セラミックコンデンサ
10 セラミック積層体
11 内部電極層
12 誘電体層
20 外部電極
21 外部電極層
22 メッキ層
図1